説明

塩基増殖剤及び塩基反応性硬化性組成物

【課題】例えばエポキシ系化合物などの架橋反応に用いることができる塩基増殖剤であって、塩基の作用によって新たな塩基を発生し、かつ塩基増殖反応が効率的に進行し得る塩基増殖剤及び該塩基増殖剤を用いた塩基反応性硬化性組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される塩基増殖剤。
【化1】


(上記式(1)中、Xは水素原子、置換されているアルキル基、または無置換のアルキレン基を示し、Yは置換または無置換のアルキル鎖を示し、nは1〜4の整数を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基の作用によって分解し、新たな塩基を発生する塩基増殖剤に関し、より詳細には、例えばエポキシ系化合物などの塩基反応性物質の架橋反応に用いることができる塩基増殖剤及び該塩基増殖剤を用いた塩基反応性硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光の照射によって酸を発生する酸発生剤を含む感光性樹脂組成物が、フォトレジスト材料や光硬化材料などの様々な分野で応用されている。酸発生剤から発生した酸は、触媒あるいは重合開始剤として作用する。
【0003】
上記感光性樹脂組成物をフォトレジスト材料として用いてパターンを形成する場合には、例えば酸発生剤に光を照射して強酸を発生させる。酸発生剤から発生した強酸は触媒として作用し、樹脂成分を化学変性させる。樹脂成分が化学変性すると溶解性が変化し、パターンが形成される。
【0004】
多種多様のフォトレジスト材料が開発されているが、フォトレジスト材料には、解像度及び感度が高いことが求められている。さらに、フォトレジスト材料には、耐エッチング性が高いパターンを形成し得ることも求められている。特に、深紫外線レジスト材料として、酸素プラズマエッチングに耐性を持つパターンを形成し得る材料が求められている。
【0005】
一方、モノマー、オリゴマーまたはポリマー等の硬化速度を高めるための種々の試みがなされている。最も広く開発の対象とされているのは、光の照射により発生したラジカル種を開始剤として用いて、多数のビニルモノマーを連鎖的に重合させるラジカル重合系である。他方、光の照射により発生した酸を触媒として用いるカチオン重合系も開発の対象とされている。
【0006】
ラジカル重合系の場合には、空気中の酸素によって重合反応が阻害されるため、特に薄膜パターンを形成する際の硬化速度が遅いため、重合反応時に酸素を遮断する必要があった。一方、カチオン重合系は、空気中の酸素によって重合反応が阻害されない利点を有する。しかしながら、硬化後に酸が残存するため、酸により腐食が生じたり、樹脂が変性する可能性がある。
【0007】
そこで、解像度及び感度が高く、耐エッチング性が高いパターンを形成できるとともに、空気中の酸素により重合反応が阻害されず、強酸のような腐食性物質を生成しない感光性樹脂組成物が強く望まれていた。
【0008】
このような課題を克服し得るものとして、塩基触媒による重合反応や化学反応を用いることが提案されている。例えば、光を照射したり、熱を与えることによって塩基を発生する塩基発生剤を用いて、塩基発生剤から発生した塩基を触媒として樹脂成分を化学変性させる方法が挙げられる。
【0009】
エポキシ基を有するエポキシ系化合物は、塩基の作用により架橋反応を起こし、硬化する。そこで、例えば塩基発生剤に光を照射したり、熱を与えることによってエポキシ系化合物を含む層中でアミン類を発生させることで、アミン類が開始剤あるいは触媒として作用し、エポキシ系化合物を硬化させることができる。しかしながら、アミン類を開始剤あるいは触媒として用いた場合でも、エポキシ系化合物の硬化速度は遅かった。エポキシ系化合物を十分に硬化させるためには、長時間を要し、さらに硬化速度を高めるために高温下で加熱処理等を行う必要があるため、実用化されるには至っていない。
【0010】
下記の非特許文献1には、光の作用によって発生する塩基性化合物を二次的に増強し得る塩基増殖反応が開示されている。さらに、下記の特許文献1及び特許文献2には、塩基増殖反応を起こすウレタン系化合物である塩基増殖剤を含有する感光性組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2000−330270号報
【特許文献2】特開2002−128750号報
【非特許文献1】M.Miyamoto,K.Arimitsu and K.Ichimura,J.Photopolym.Sci.Technol.,12,315(1999),K.Arimitsu,M.Miyamoto and K.Ichimura,J.Photopolym.Sci.Technol.,12,317(1999),K.Arimitsu,M.Miyamoto and K.Ichimura,Angew.Chem.,Int.Ed.,39,3425(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記非特許文献1及び特許文献1,2に記載の塩基増殖反応で発生する塩基は、主として1級あるいは2級の脂肪族アミンである。感光性組成物を構成する際に、これらアミンを発生する塩基増殖剤は、例えば光塩基発生剤及び塩基反応性物質と組み合わせて用いられる。
【0012】
感光性組成物において、塩基増殖反応を効率よく進行させるためには、通常加熱処理を行う必要がある。しかしながら、開放系で塩基増殖反応を行った場合に、加熱処理の過程で、塩基増殖反応により発生したアミンが蒸発飛散しがちであった。例えば、アミンの作用によりエポキシ系化合物を硬化させる場合に、塩基増殖剤を多量に添加しても、その添加効果が十分に得られないことがあった。また、特許文献1、2に記載のウレタン系化合物は、有機溶媒に対する溶解性が低かった。例えば、ウレタン系化合物は、比較的極性の低い液状のエポキシ系化合物に対して十分な溶解性を有するものではなかった。さらに、これら塩基増殖剤を含む感光性組成物をフォトレジスト材料として用いてパターンを形成する場合には、塩基増殖剤自体にもパターンの耐エッチング性能を阻害しないことが求められていた。
【0013】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、例えばエポキシ系化合物などの架橋反応に用いることができる塩基増殖剤であって、塩基の作用によって新たな塩基を発生し、かつ塩基増殖反応が効率的に進行し得る塩基増殖剤及び該塩基増殖剤を用いた塩基反応性硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る塩基発生剤は、下記式(1)で表される。
【0015】
【化1】

【0016】
(上記式(1)中、Xは水素原子、置換されているアルキル基、または無置換のアルキル基を示し、Yは置換または無置換のアルキレン鎖を示し、nは1〜4の整数を示す)
【0017】
本発明に係る塩基増殖剤のある特定の局面では、上述した式(1)中、Yはメチレン鎖である。
【0018】
本発明に係る塩基増殖剤の他の特定の局面では、上述した式(1)中、Xはエチル基である。
【0019】
本発明に係る塩基増殖剤のさらに他の特定の局面では、上述した式(1)中、nは3である。
【0020】
本発明に係る塩基増殖剤のさらに別の特定の局面では、上述した式(1)中、nは4である。
【0021】
本発明に係る塩基反応性硬化性組成物は、上述した式(1)で表される塩基増殖剤と、塩基発生剤と、塩基の作用により硬化する硬化性化合物とを含有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る塩基反応性硬化性組成物のある特定の局面では、硬化性化合物はエポキシ系化合物である。
【0023】
本発明に係る塩基反応性硬化性組成物の他の特定の局面では、エポキシ系化合物は液状エポキシ樹脂である。
【0024】
本発明に係る塩基反応性硬化性組成物のさらに他の特定の局面では、塩基発生剤は、光の照射により塩基を発生する光塩基発生剤である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る上述した式(1)で表される塩基増殖剤は、カルバメート基を有するため、熱や光により構造変化を起こし、増殖的に塩基を発生する。よって、例えば、アミン等と反応するエポキシ系化合物などの塩基反応性物質中に塩基増殖剤を共存させると、エポキシ系化合物を効果的に硬化させることができる。
【0026】
上述した式(1)中、Xがエチル基である場合には、Xにおける立体障害が小さいため、塩基増殖反応が効果的に起こり易い。
【0027】
上述した式(1)中、Yがメチレン鎖である場合には、Yにおける立体障害が小さいため、塩基増殖反応が効果的に起こり易い。
【0028】
上述した式(1)中、Xがエチル基であり、Yがメチレン鎖であり、nが3である場合には、同一分子内に3つのカルバメート基が存在するため、塩基増殖反応がより一層効果的に起こり易い。
【0029】
上述した式(1)中、Yがメチレン鎖であり、nが4である場合には、同一分子内に4つのカルバメート基が存在するため、塩基増殖反応がより一層効果的に起こり易い。
【0030】
本発明に係る塩基反応性硬化性組成物は、上述した式(1)で表される塩基増殖剤と、塩基発生剤と、塩基の作用により硬化する硬化性化合物とを含有する。塩基反応性硬化性組成物に例えば光を照射したり、熱を与えると、塩基発生剤から塩基が発生する。塩基発生剤から発生した塩基は触媒として機能し、塩基増殖剤から新たな塩基が発生する。塩基発生剤及び塩基増殖剤から発生した塩基の作用により硬化性化合物が硬化する。よって、本発明に係る塩基反応性硬化性組成物では、塩基発生剤及び塩基増殖剤から多数の塩基が発生するため、硬化性に優れている。
【0031】
硬化性化合物がエポキシ系化合物である場合には、塩基の作用によりエポキシ系化合物の架橋反応が効率的に進行するため、優れた硬化性を有する。
【0032】
エポキシ系化合物が液状エポキシ樹脂である場合に、本発明に係る塩基増殖剤を用いることで、固形ではなく液状のエポキシ樹脂であっても高い硬化性を有するものとなる。液状エポキシ樹脂は固形エポキシ樹脂に比べて硬化性に劣るが、塩基増殖剤から増殖的に多数の塩基が発生するため、液状エポキシ樹脂の硬化速度が高められる。
【0033】
塩基発生剤が、光の照射により塩基を発生する光塩基発生剤である場合には、塩基を発生させるために高温下で加熱処理を行う必要がない。また、開放系で硬化反応を行った場合に、発生したアミン等の塩基が蒸発飛散し難いので、硬化反応がより一層効率的に進行する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0035】
本発明に係る塩基増殖剤は、上記式(1)で表される化合物である。本発明に係る塩基増殖剤は、塩基増殖反応によって分解して、新たにアミンを発生する。さらに、発生したアミンが新たな触媒として機能し、増殖的に多数のアミンを生成する。
【0036】
上記式(1)中Xは、水素原子、置換されているアルキル基、または無置換のアルキル基を示す。
【0037】
上記式(1)中Xの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。塩基増殖反応が効果的に起こるため、Xは無置換のアルキル基であることが好ましい。なかでも、Xにおける立体障害も小さくなり、塩基増殖反応がより一層効果的に起こり易いため、Xはエチル基であることがより好ましい。
【0038】
上記式(1)中Yは、置換または無置換のアルキレン鎖を示す。
【0039】
上記式(1)中Yの具体例としては、メチレン鎖、エチレン鎖、プロピレン鎖などが挙げられる。上記塩基増殖反応が効果的に起こるため、Yは無置換のアルキレン鎖であることが好ましい。なかでも、Yにおける立体障害も小さくなり、塩基増殖反応がより一層効果的に起こり易いため、Yはメチレン鎖であることがより好ましい。
【0040】
上記式(1)中nは、1〜4の整数を示す。上記(1)式で表される塩基増殖剤が同一分子内に複数のカルバメート基を有する場合には、発生した塩基の触媒作用によって塩基増殖反応がより一層効果的に起こり易い。よって上記式(1)中nは、3又は4の整数であることが好ましい。
【0041】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(2),(3)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
上記(2)式及び上記(3)式で表される塩基増殖剤は、同一分子内に複数のカルバメート基を有する。よって、発生した塩基の触媒作用によって塩基増殖反応が進行し易いという特徴を有する。
【0045】
本発明に係る塩基増殖剤の塩基増殖反応では、活性な水素原子が塩基によって引き抜かれて、カルバニオンを生成する。次いで、カルバミン酸が脱離し、さらに分解が進行し、塩基と二酸化炭素とを生成する。上述した式(2)で表される塩基増殖剤を一例として、塩基増殖剤の塩基増殖反応を下記式(4)に示す。下記式(4)に示すように、塩基増殖反応では、塩基増殖剤からアミン化合物と、二酸化炭素と、オレフィンとを生成する。
【0046】
【化4】

【0047】
本発明に係る塩基増殖剤は、特に限定されないが例えばフルオレニルメタノールとイソシアネート誘導体との付加反応や、フルオレニルカルバメート基を有するアクリレートモノマーとポリチオール誘導体との付加反応によって合成される。前者の付加反応にはすず触媒を適切に用いることにより、上記化合物の合成を簡便に行うことができる。後者の付加反応には塩基触媒を適切に用いることにより、上記化合物の合成を簡便に行うことができる。
【0048】
本発明に係る塩基反応性硬化性組成物は、上述した式(1)で表される塩基増殖剤と、塩基発生剤と、塩基の作用により硬化する硬化性化合物とを含有する。
【0049】
塩基増殖剤の配合割合は、塩基反応性硬化性組成物100重量%中、10〜45重量%の範囲であることが好ましい。塩基増殖剤が10重量%未満であると、塩基増殖反応により発生する塩基が少なく、硬化速度に劣ることがある。塩基増殖剤が45重量%を超えると、塩基増殖剤が塗膜中に析出することがある。
【0050】
上記塩基発生剤は、光を照射したり、熱を与えることによって塩基を発生する物質である。塩基発生剤としては、特に限定されないが、光の照射により塩基を発生する光塩基発生剤、または熱を与えることにより塩基を発生する熱潜在性塩基発生剤が好ましく用いられる。なかでも、塩基を発生させるために高温下で加熱処理を行う必要がないため、光塩基発生剤がより好ましく用いられる。
【0051】
上記光塩基発生剤としては、特に限定されないが、従来知られているo−ニトロベンジル型光塩基発生剤、(3,5−ジメトキシベンジルオキシ)カルボニル型光塩基発生剤、アミロキシイミノ基型光塩基発生剤、ジヒドロピリジン型光塩基発生剤等が挙げられる。なかでも、塩基発生効率と合成の簡便性に優れているため、o−ニトロべンジル型光塩基発生剤が好ましく用いられる。
【0052】
上記熱潜在性塩基発生剤としては、特に限定されないが、加熱により脱炭酸して分解する有機酸と塩基との塩、分子内求核置換反応、ロッセン転位反応またはベックマン転位反応等により分解してアミン類を放出する化合物や、加熱により何らかの反応を起こして塩基を放出するものが好ましく用いられる。なかでも、塩基発生効率に優れているため、加熱により脱炭酸して分解する有機酸と塩基との塩が好ましく用いられる。
【0053】
上記熱潜在性塩基発生剤としては、例えば英国特許第998,949号記載のトリクロロ酢酸の塩、米国特許第4,060,420号に記載のアルファースルホニル酢酸の塩、特開昭59−157637号に記載のプロピール酸類の塩、2−カルボキシルカルボキサミド誘導体、特開昭59−168440号に記載の塩基成分に有機塩基の他にアルカリ金属、アルカリ土類金属を用いた熱分解性酸との塩、特開昭59−180537号に記載のロッセン転位を利用したヒドロキサムカルバメート類、加熱によりニトリルを生成する特開昭59−195237号に記載のアルドキシムカルバメート類、英国特許第998,945号、米国特許第3,220,846号、英国特許第279,480号、特開昭50−22625号、同61−32844号、同61−51139号、同61−52638号、同61−51140号、同61−53634号、同61−53640号、同61−55644号、同61−55645号等に記載の熱塩基発生剤が挙げられる。
【0054】
上記熱潜在性塩基発生剤の具体例としては、トリクロロ酢酸グアニジン、トリクロロ酢酸メチルグアニジン、トリクロ酢酸カリウム、フェニルスルホニル酢酸グアニジン、p−クロロフェニルスルホニル酢酸グアニジン、p−メタンスルホニルフェニルスルホニル酢酸グアニジン、フェニルプロピオール酸カリウム、フェニルプロピオール酸グアニジン、フェニルプロピオール酸セシウム、p−クロロフェニルプロピオール酸グアニジン、p−フェニレン−ビス−フェニルプロピオール酸グアニジン、フェニルスルホニル酢酸テトラメチルアンモニウム、フェニルプロピオール酸テトラメチルアンモニウムが挙げられる。
【0055】
塩基発生剤の配合割合は、塩基反応性硬化性組成物100重量%中、1〜30重量%の範囲であることが好ましい。塩基発生剤が1重量%未満であると、塩基発生剤から発生する塩基の量が少なすぎるために塩基増殖剤の添加効果が十分に得られないことがある。塩基発生剤が30重量%を超えると、塩基発生剤の添加効果を得るのに過剰となることがある。
【0056】
上記硬化性化合物は、塩基発生剤及び塩基増殖剤から発生した塩基の作用により架橋反応が進行し、硬化するものである。硬化性化合物としては、特に限定されないが、エポキシ系化合物、アクリレート系オリゴマー、イソシアネート系オリゴマー等が挙げられる。なかでも、塩基の作用により架橋反応が効率的に進行するため、エポキシ系化合物が好ましく用いられる。
【0057】
上記エポキシ系化合物としては、高粘度あるいは固形エポキシ樹脂及び液状エポキシ樹脂のいずれも用いることができる。なかでも、液状エポキシ樹脂がより好ましく用いられる。液状エポキシ樹脂は、取扱性に優れているが、固形エポキシ樹脂に比べて硬化性に劣る。しかしながら、本発明に係る塩基増殖剤を用いることで、液状のエポキシ樹脂であっても高い硬化性を有する塩基反応性硬化性組成物となる。
【0058】
上記高粘度あるいは固形エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、東都化成社カタログ記載のBPF型エポキシ樹脂、BPA型エポキシ樹脂、BPF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ社カタログ記載のエピコ−ト基本固形タイプ、エピコートビスF固形タイプ、ダイセル化学工業社カタログ記載のEHPE脂環式固形エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、強靭な塗膜が得られるため、ビスフェノール系のエポキシ樹脂、ノボラック系のエポキシ樹脂がさらに好ましく用いられる。
【0059】
高粘度あるいは固形のエポキシ樹脂を用いる場合には、単官能性エポキシ化合物を反応性希釈剤として含有することが好ましい。単官能性エポキシ化合物としては、ナガセケムテックス社カタログ記載のデナコールシリーズであるEX−111、EX−121、EX−141、EX−145、EX−146、EX−171、EX−192、EX−111、EX−147、共栄社化学社カタログ記載のエポライトシリーズであるM−1230、EHDG−L、100MF等を挙げることができる。
【0060】
上記液状エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ナガセケムテックス社カタログ記載のデナコールシリーズであるEX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−614、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−313.EX−314、EX−321、EX−201、EX−211、EX−212、EX−252、EX−810、EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−861、EX−911、EX−941、EX−920、EX−721、EX−221、EM−150、EM−101、EM−103、東都化成社カタログ記載のYD−115、YD−115G、YD−115CA、YD−118T、YD−127、共栄社化学社カタログ記載のエポライトシリーズである40E、100E、200E、400E、70P、200P、400P、1500NP、1600、80MF、100MF、4000、3002、1500などを挙げることができる。
【0061】
さらに、上記液状エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ化合物であるダイセル化学工業社カタログ記載のセロキサイド2021、セロキサイド2080、セロキサイド3000、エポリードGT300、エポリードGT400、エポリードD−100ET、エポリードD−100OT、エポリードD−100DT、エポリードD−100ST、エポリードD−200HD、エポリードD−200E、エポリードD−204P、エポリードD−210P、エポリードD−210P、エポリードPB3600、エポリードPB4700などを挙げることができる。
【0062】
なかでも、硬化特性に優れているため、エポキシ系化合物としてグリシジル基を3つ以上有するエポキシ化合物がさらに好ましく用いられる。
【0063】
硬化性化合物の配合割合は、塩基反応性硬化性組成物100重量%中、50〜80重量%の範囲であることが好ましい。硬化性化合物が50重量%未満であると、塩基発生剤や塩基増殖剤が塗膜中に析出することがある。硬化性化合物が80重量%を超えると、硬化性に劣ることがある。
【0064】
塩基反応性硬化性組成物は、増感剤を含有することが好ましい。塩基反応性硬化性組成物が増感剤を含有すると、感度が高められる。
【0065】
上記増感剤としては、特に限定されないが、例えばベンゾフェノン、p,p′−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p′−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、アントロン、9−エトキシアントラセン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェノチアジン、ベンジル、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、9,10−ジフェニルアントラセン、9−フルオレノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3′−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)又はコロネン等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0066】
増感剤の配合割合は、塩基反応性硬化性組成物100重量%中、1〜20重量%の範囲であることが好ましい。増感剤が1重量%未満であると、感度が十分に高められないことがある。増感剤が20重量%を超えると、感度を高めるのに過剰となることがある。
【0067】
塩基反応性硬化性組成物は、適宜の溶媒をさらに含有してもよい。塩基反応性硬化性組成物に溶媒を配合することにより、塗布性を高めることができる。
【0068】
上記溶媒としては、特に限定されないが、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物;シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、テトラヒドロナフタレン、スクワランなどの飽和または不飽和炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、ステアリン酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0069】
上記溶媒の配合割合は、例えば基材上に塩基反応性硬化性組成物を塗工し、塩基反応性硬化性組成物層を形成する際に、均一に塗工されるように適宜選択すればよい。
【0070】
塩基反応性硬化性組成物には、必要に応じて、他の添加剤をさらに添加してもよい。このような添加剤としては、充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、可塑促進剤、タレ防止剤などが挙げられる。
【0071】
上記のように、塩基反応性硬化性組成物は、本発明に係る塩基増殖剤と、光塩基発生剤と、例えばエポキシ系化合物等の硬化性化合物とを用いて構成される。塩基反応性硬化性組成物は、例えば高感度紫外線硬化材料や高感度レジスト材料に好適に用いることができる。
【0072】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0073】
(実施例1:塩基増殖剤Flu3の合成)
上述した式(2)で示される塩基増殖剤Flu3は下記(A)〜(C)の順で合成した。
【0074】
(A)フルオレニルメタノールの合成
下記式(5)に従ってフルオレニルメタノールを合成した。
【0075】
【化5】

【0076】
フルオレン60g(0.36mol)を脱水THF1500mlに溶かした。しかる後、0℃、アルゴンガス雰囲気下でブチルリチウム−ヘキサン溶液(1.6M)225mlをゆっくり滴下した。次に、パラホルムアルデヒド12gを加え、室温で5時間撹拌した。攪拌後、飽和重曹水600mlを加え、ジエチルエーテルで抽出を行い、有機層を飽和食塩水で2回洗浄した。次に、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を留去した。得られたペースト状の固体をヘキサンとエタノールとの混合溶媒で再結晶することにより、フルオレニルメタノールの白色針状結晶50gを得た。得られた化合物の構造が上述した式(5)に示す構造であることを、H−NMRを測定することにより確認した。以下融点およびH−NMRの測定結果を示す。
【0077】
収率71%
融点 98−101℃
H−NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):1.71(1H,s,OH),3.6−4.3(3H,m,CH,CH),7.2−7.5(4H,m,ArH),7.54(2H,d,J=7.3Hz,ArH),7.73(2H,d,J=7.3Hz,ArH).
【0078】
(B)アクリレートモノマーの合成
下記式(6)に従ってアクリレートモノマーを合成した。
【0079】
【化6】

【0080】
上述した式(5)に従って合成されたフルオレニルメタノール2.08g(10.6mmol)に、脱水ベンゼン60mlおよび触媒としてジ−n−ブチルチンジラウリレート100mgを加えた。しかる後、還流下で2−イソシアナトエチルアクリレート1.41g(10mmol)と、重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール50mgとを含むベンゼン溶液20mlをゆっくり滴下した。9時間還流した後、室温まで冷却して溶媒を留去した。得られた褐色のオイルに少量のジエチルエーテルと大量のヘキサンとを加えた。冷凍庫で保存することにより再結晶を行い、アクリレートモノマーの白色結晶を得た。得られた化合物の構造が上述した式(6)に示す構造であることを、H−NMRを測定することにより確認した。以下融点およびH−NMRの測定結果を示す。
【0081】
収率 71%
融点 101−103℃
H−NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):3.3−3.7(2H,m,NH−CH),4.0−4.6(4H,m,O−CH),5.06(1H,s,NH),5.85(1H,d,J=10.3Hz,C=CH),6.0−6.2(1H,m,C=CH),6.44(1H,d,J=17.0Hz,C=CH),7.1−7.5(4H,m,ArH),7.57(2H,d,J=7.3Hz,ArH),7.76(2H,d,J=7.3Hz,ArH).
【0082】
(C)塩基増殖剤Flu3の合成
下記式(7)に従って塩基増殖剤Flu3を合成した。
【0083】
【化7】

【0084】
上述した式(6)に従って合成されたアクリレートモノマー0.36g(1.0mmol)、TMTG(トリチオール誘導体)1.0g(3.0mmol)、及び触媒としてトリ−n−ブチルアミン19mg(0.1mmol)を脱水ジクロロメタン7mlに溶解させて、室温で4日間撹拌を行った。攪拌後、2M塩酸、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。しかる後、溶媒を減圧留去することにより得られたオイルを、冷凍庫で凍結することによりFlu3を得た。得られた化合物の構造が上述した式(2),(7)に示す構造であることを、H−NMRおよびMALDIを測定することにより確認した。以下、H−NMRおよびMALDIの測定結果を示す。
【0085】
〔Flu3〕
無色オイル
収率 89%
H−NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):0.8−1.2(3H,m,CH),1.4−1.6(2H,m,CH),2.5−2.8(6H,m,CH),2.8−3.1(6H,m,CH),3.2−3.6(12H,m,CH),4.0−4.6(18H,m,CH),5.2−5.5(3H,m,NH),7.2−7.5(12H,m,ArH),7.58(6H,d,J=7.3Hz,ArH),7.74
(6H,d,J=7.3Hz,ArH).
MALDI(m/z):1390.1(M+Na)),1406.1(M+K)).
【0086】
(実施例2:塩基増殖剤Flu4の合成)
上述した式(3)で示される塩基増殖剤Flu4は以下のように合成した。下記式(8)に従って塩基増殖剤Flu4を合成した。
【0087】
【化8】

【0088】
上述した実施例1の式(6)に従って合成されたアクリレートモノマー2.0g(6.0mmol)、PETG(テトラチオール誘導体)0.65g(1.5mmol)、及び触媒としてトリ−n−ブチルアミン40mgを脱水ジクロロメタン15mlに溶解させて、室温で3日間撹拌を行った。攪拌後、2M塩酸、次いで飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した。しかる後、溶媒を減圧留去することにより得られたオイルを、冷凍庫で凍結することにより化合物Flu4を得た。化合物の構造が上述した式(3),(8)に示す構造であることを、H−NMRおよびMALDIを測定することにより確認した。以下、H−NMRおよびMALDIの測定結果を示す。
【0089】
〔Flu4〕
無色オイル
収率 72%
H−NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):2.5−2.8(8H,m,CH),2.8−3.1(8H,m,CH),3.2−3.6(16H,m,CH),4.0−4.6(24H,m,CH),5.3−5.5(4H,m,NH),7.2−7.5(16H,m,ArH),7.60(8H,d,J=7.3Hz,ArH),7.77(8H,d,J=7.3Hz,ArH).
MALDI(m/z):1804.5(M+Na)),1820.5(M+K)).
【0090】
(比較例1:塩基増殖剤Flu2の合成)
塩基増殖剤Flu2は下記式(9)に従って合成した。
【0091】
【化9】

【0092】
上述した実施例1の式(5)に従って合成されたフルオレニルメタノール7.85g(40mmol)に、脱水ベンゼン60mlと、触媒としてジ−n−ブチルチンジラウリレート100mgとを加えた。しかる後、還流下でトリメチルヘキシルジイソシアネート4.21g(20mmol)のベンゼン溶液20mlをゆっくり滴下した。7時間還流した後、室温まで冷却して溶媒を留去した。次に、得られた褐色のオイルに、少量のジエチルエーテルと大量のヘキサンとを加えた。冷凍庫で保存することにより再結晶を行い、化合物Flu2の白色結晶を得た。得られた化合物Flu2の構造が上述した式(9)に示す構造であることを、H−NMRおよびESI−MSを測定することにより確認した。以下融点、H−NMRおよびESI−MSの測定結果を示す。
【0093】
〔Flu2〕
収率 93%
融点 72−74℃
H−NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):0.7−1.8(14H,m,CH,CH),2.8−3.3(4H,m,NH−CH),4.19(2H,s,fluoreneCH),4.2−4.5(4H,m,O−CH),4.6−5.3(2H,m,NH),7.2−7.4(8H,m,ArH),7.57(4H,d,J=7.3Hz,ArH),7.73(4H,d,J=7.3Hz,ArH).
ESI−MS(m/z):625.4(M+Na)).
【0094】
(光塩基発生剤)
光塩基発生剤として、下記式(10)で示される化合物PBG−2を用意した。
【0095】
【化10】

【0096】
(ビスピペリジル型光塩基発生剤PBG−2の合成)
上述した式(10)で示される光塩基発生剤PBG−2は以下のように合成した。
【0097】
(A−1)2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジル−4′−ニトロフェニルカーボネートの合成
下記式(11)に従って2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジル−4′−ニトロフェニルカーボネートを合成した。
【0098】
【化11】

【0099】
o−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジルアルコール9.4g(44mmol)及びトリエチルアミン4.8g(47mmol)を、THFとジクロロメタンとの混合溶媒(1:1(v/v))50mlに溶かした。しかる後、アルゴン雰囲気下、0℃で4−ニトロフェニルクロロホルメートのTHF溶液10.3g(48mmol)/20mlをゆっくりと滴下した。滴下後、アルゴンガスの通気をやめ、10時間還流を行った。室温まで冷まし、溶媒を除去した後、ジクロロメタンを加え、水で3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を留去した。次に、エタノールとトルエンとの混合溶媒を用いて再結晶し、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジル−4′−ニトロフェニルカーボネートを得た。得られた化合物の構造が上述した式(11)に示す構造であることを、融点およびH−NMRを測定することにより確認した。測定結果を以下に示す。
【0100】
収率 67%
融点 149−150℃
H−NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):3.99(3H,s,OCH),4.03(3H,s,OCH),5.72(2H,s,CH),7.11(1H,s,ArH),7.42(2H,d,J=8.9Hz,ArH),7.77(1H,s,ArH),8.30(2H,d,J=8.9Hz,ArH).
【0101】
(A−2)下記式(12)に従って光塩基発生剤PBG−2を合成した。
【0102】
【化12】

【0103】
上述した式(11)に従って合成された2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジル−4′−ニトロフェニルカーボネート5.0g(13.2mmol)と、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール0.55gとを200mlの脱水ジクロロメタンに溶かし、アルゴン雰囲気下で還流を行った。しかる後、1,3−ジ(4−ピペリジル)プロパンのジクロロメタン溶液(5.45g(23.7mmol)/80ml)をゆっくり滴下し、その後5時間還流を行った。次に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで、食塩水を用いて洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥した後、留去した。減圧乾燥して得られた黄色の固体を大量のメタノール中で攪拌して洗浄した。生成した黄色の沈殿を吸引ろ過し、減圧乾燥して、PBG−2を得た。得られた化合物PBG−2の構造が上述した式(10),(12)に示す構造であることを、H−NMRを測定することにより確認した。測定結果を以下に示す。
【0104】
〔PBG−2〕
収率 51%
H−NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):1.0−1.9(16H,m,CH,CH),2.6−3.0(4H,m,N−CH),3.97(3H,s,OCH),4.00(3H,s,OCH),4.1−4.3(4H,m,N−CH),5.51(4H,s,Ar−CH),6.98(2H,s,ArH),7.69(2H,s,ArH).
【0105】
(エポキシ系化合物)
エポキシ系化合物としては、下記式(13)で示される化合物PGMA、下記式(14)で示される化合物YDCN−701または下記式(15)で示される化合物EX−622を用いた。
【0106】
【化13】

【0107】
【化14】

【0108】
【化15】

【0109】
(実施例1,2及び比較例1の塩基増殖剤の評価)
実施例1,2及び比較例1で得られた塩基増殖剤である化合物Flu2〜4と、上記光塩基発生剤と、上記エポキシ系化合物とを、溶媒に溶解させて混合液を得た。塩基増殖剤、光塩基発生剤、エポキシ系化合物及び溶媒の種類と配合量は、下記表1、2のようにした。
【0110】
得られた混合液を、1000rpm,30秒の条件でガラス基板上にスピンキャストした。しかる後、100℃ホットプレート上で1分間乾燥させた。次に、下記表1、2に記載の所定の時間、365nmの単色光(13−15mWcm−2)を照射した。しかる後、下記表1、2に示す温度(PEB温度)のホットステージで、下記表1、2に示す時間(PEB時間)、加熱処理を行った。次に、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセタート(PEGMEA)を用いて30秒現像処理し、さらにメタノール洗浄処理した。
【0111】
目視により成膜性および硬化の有無(硬化性)を確認した。また、成膜性および硬化の有無の確認を容易とするために、ブロムチモールブルー−エタノール溶液にガラス基板を10分間浸漬することにより、残膜部位の染色処理を行った。成膜性及び硬化性は、下記評価基準で評価した。
【0112】
〔成膜性の評価基準〕
○:均一な膜が生成
×:均一な膜が生成しない
〔硬化性の評価基準〕
○:光照射部のみ、均一に硬化
×:光照射部が未硬化、もしくは光未照射部も硬化
結果を下記表1、表2に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される塩基増殖剤。
【化1】

(上記式(1)中、Xは水素原子、置換されているアルキル基、または無置換のアルキル基を示し、Yは置換または無置換のアルキレン鎖を示し、nは1〜4の整数を示す)
【請求項2】
上記式(1)中、Yがメチレン鎖である、請求項1に記載の塩基増殖剤。
【請求項3】
上記式(1)中、Xがエチル基である、請求項1または2に記載の塩基増殖剤。
【請求項4】
上記式(1)中、nが3である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塩基増殖剤。
【請求項5】
上記式(1)中、nが4である、請求項1または2に記載の塩基増殖剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の塩基増殖剤と、塩基発生剤と、塩基の作用により硬化する硬化性化合物とを含有することを特徴とする、塩基反応性硬化性組成物。
【請求項7】
前記硬化性化合物がエポキシ系化合物である、請求項6に記載の塩基反応性硬化性組成物。
【請求項8】
前記エポキシ系化合物が液状エポキシ樹脂である、請求項7に記載の塩基反応性硬化性組成物。
【請求項9】
前記塩基発生剤が、光の照射により塩基を発生する光塩基発生剤である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の塩基反応性硬化性組成物。

【公開番号】特開2006−282657(P2006−282657A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43517(P2006−43517)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】