説明

塩害防止外気導入装置及びそれを備えた屋外構造物

【課題】屋外構造物の内部に外気を導入する際の塩害等による腐食を防止することができる塩害防止外気導入装置及びそれを備えた屋外構造物を提供する。
【解決手段】外気11を導入する外気導入口12を備えた外気導入通路14(14−1、14−2)と、前記外気導入口12内の近傍に設置される前段側腐食センサ13と、前記腐食センサ13の後流側で、導入する外気11を少なくとも2以上に分岐された第1の外気導入通路14−1、第2の外気導入通路14−2と、前記第1及び第2の外気導入通路14−1、14−2に各々設けられ、通路を開閉自在とする通路開閉手段である第1及び第2の通路開閉バルブ15−1、15−2と、第2の外気導入通路14−2の内部に設置される除塩フィルタ16と、分岐された第1及び第2の外気導入通路14−1、14−2を集合させ、外気11を屋外構造物20の内部に供給する供給通路17とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外構造物の内部に外気を導入する際の塩害等による腐食を防止することができる塩害防止外気導入装置及びそれを備えた屋外構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば海上や沿岸近傍で設置される屋外構造物の内部に、トランス等の大型発熱体等を有する場合には、外部から外気を導入して、内部をファン等で撹拌しつつ、必要に応じて冷却装置を用いて冷却するようにしている。
この際、外部から塩が同伴された外気を取り入れてしまうような場合には、内部に設けたトランス、制御盤等が塩害により腐食することが懸念されている。
【0003】
現在では、台風や暴風雨の場合には、外部から同伴される塩害を防止するために、外気導入部を閉じて、積極的に内部に設置された冷却装置を用いて、内部を冷却しているのが現状である。
【0004】
また、塩分除去用のフィルタを外気導入通路内に設置して、外気に同伴される塩分を除去することの提案がある。
この塩害除去用の除塩フィルタとしては、例えば密度の異なるガラス繊維不織布を積層して濾材としたもの(特許文献1)や、撥水性を有する繊維からなる密度の異なる不織布を積層して濾材としたもの(特許文献2)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−12332号公報
【特許文献2】実開平1−122824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記除塩フィルタを用いる場合には、そのフィルタの寿命が短いので、頻繁に交換する必要があり、その手間と費用が嵩むという問題がある。
【0007】
このため、屋外構造物内部への外気の取り込みの際に、塩分を除去するために、従来では、外気導入ガラリを設け、外気中塩分が屋外構造物の内部に直接入りにくいようにしているが、外気中の塩分が屋外構造物の内部の入ることを抑制するものではないので、長期間に亙って外気の導入を続けると、屋外構造物内部に塩分の堆積を招き、腐食の要因となるので、その対策が望まれている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、屋外構造物の内部に外気を導入する際の塩害等による腐食を防止することができる塩害防止外気導入装置及びそれを備えた屋外構造物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、外気を導入する外気導入口を備えた外気導入通路と、前記外気導入口内の近傍に設置される前段側腐食センサと、前記腐食センサの後流側で、導入する外気を少なくとも2以上に分岐された外気導入通路と、前記外気導入通路に各々設けられ、通路を開閉自在とする通路開閉手段と、2番目以降に分岐された外気導入通路の内部に各々設置される除塩フィルタと、分岐された外気導入路を集合させ、外気を屋外構造物の内部に供給する供給通路とを具備することを特徴とする塩害防止外気導入装置にある。
【0010】
第2の発明は、外気を導入する外気導入口と、外気導入口近傍に設置される前段側腐食センサと、前記前段側腐食センサの後流側で、導入する外気を少なくとも2以上に分岐させる外気導入通路と、前記外気導入通路に各々設けられる通路開閉手段と、2番目以降の外気導入通路の内部に各々設置される除塩フィルタと、分岐された外気導入路を集合させ、外気11を屋外構造物の内部に供給する供給通路と、前記外気導入通路内に設置された除塩フィルタの後流側に設置される後段側腐食センサと、分岐された外気導入路を集合させ、外気を屋外構造物の内部に供給する供給通路とを具備することを特徴とする塩害防止外気導入装置にある。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記除塩フィルタを洗浄する洗浄手段を有することを特徴とする塩害防止外気導入装置にある。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、前記屋外構造物内部の空気を循環する循環ファンの余熱空気を洗浄後の除塩フィルタに供給することを特徴とする塩害防止外気導入装置にある。
【0013】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記除塩フィルタを各々の外気導入通路内に直列に2以上設けることを特徴とする塩害防止外気導入装置にある。
【0014】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記前段側腐食センサ近傍に、湿度計を設けてなることを特徴とする塩害防止外気導入装置にある。
【0015】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの塩害防止外気導入装置を、屋外構造物の空気導入部に設けてなることを特徴とする屋外構造物にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、屋外構造物の内部への外気の導入の際に、腐食性因子である塩害を抑制すると共に、長期間に亙ってその防止を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1に係る塩害防止外気導入装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例1に係る他の塩害防止外気導入装置の概略図である。
【図3−1】図3−1は、実施例2に係る塩害防止外気導入装置の概略図である。
【図3−2】図3−2は、実施例2に係る他の塩害防止外気導入装置の概略図である。
【図3−3】図3−3は、実施例2に係る他の塩害防止外気導入装置の概略図である。
【図4−1】図4−1は、実施例3に係る塩害防止外気導入装置の概略図である。
【図4−2】図4−2は、実施例3に係る他の塩害防止外気導入装置の概略図である。
【図5】図5は、実施例4に係る塩害防止外気導入装置の概略図である。
【図6】図6は、本実施例に係る腐食センサの平面図である。
【図7−1】図7−1は、腐食センサの概略図である。
【図7−2】図7−2は、腐食センサの腐食計測時における概略図である。
【図8】図8は、切替え操作のフローチャートである。
【図9】図9は、相対湿度と腐食電流値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0019】
本発明による実施例に係る塩害防止外気導入装置及びそれを備えた屋外構造物について、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る塩害防止外気導入装置の概略図である。図1に示すように、本実施例に係る塩害防止外気導入装置10Aは、外気11を導入する外気導入口12を備えた外気導入通路14(14−1、14−2)と、前記外気導入口12内の近傍に設置される前段側腐食センサ13と、前記腐食センサ13の後流側で、導入する外気11を少なくとも2以上(本実施例では2つ)に分岐された第1の外気導入通路14−1、第2の外気導入通路14−2と、前記第1及び第2の外気導入通路14−1、14−2に各々設けられ、通路を開閉自在とする通路開閉手段である第1のバルブ15−1、第2のバルブ15−2と、第2の外気導入通路14−2の内部に設置される除塩フィルタ16と、分岐された第1及び第2の外気導入通路14−1、14−2を集合させ、外気11を屋外構造物(トランス等の発熱体は省略する)20の内部に供給する供給通路17とを具備するものである。なお、図1中、符号19は湿度計、21は循環ファン、22は制御装置を各々図示する。
【0020】
本実施例において、前記腐食センサ13としては、二つの異種金属(基板と導電部)を互いに絶縁部で絶縁した状態とし、両者の端部を測定した環境へ露出させると、その環境に応じて両金属間を水膜が連結するので腐食電流が流れ、この電流は卑な金属の腐食速度に対応するので、この電流を電流計13aにより測定し、腐食の度合いを計測している。
【0021】
この腐食センサ13は、「大気腐食モニタ」(Atmospheric Corrosion Monitor)あるいはACM型腐食センサと一般に称されている(特開2008−157647号公報参照)。このセンサの一例を図6及び図7−1、7−2に示す。図6及び図7−1に示すように、ACM型腐食センサ(以下、「腐食センサ」という。)13は、厚さ0.8mmの炭素鋼板を64mm×64mmに切り出し、基板41としており、この基板41の上に、厚膜IC用精密スクリーン印刷機を用いて絶縁ペースト(厚さ30〜35μm)の絶縁部42を塗布し、硬化させている。
続いて、導電ペースト(厚さ30〜40μm、フィラー:Ag)を、基板41との絶緑が保たれるように、絶縁部42のパターン上に積層印刷し、硬化させて導電部43とし、腐食センサ13を構成している(http://www.nims.go.jp/mdss/corrosion/ACM/ACM1.htm参照)。
ここで、前記基板41を第1の導電部とすると共に、導電部43をストライプ状の第2の導電部としている。
【0022】
そして、図7−2に示すように、湿度や海塩(塩化物イオン等)等の水膜44により、導電部43と基板41とが短絡し、これに起因するFe−Agのガルバニック対の腐食電流を電流計45で計測している。なお、図6中、符号46a、46bは端子である。
ここで、前記腐食センサ13としては、例えば「ACMデータロガー」(商品名:株式会社シュリンクス)等を例示することができる。
【0023】
本実施例における除塩フィルタ16は、海塩粒子を補足できるものであり、例えば基材層の第1層上に、塩分吸収層の第2層、さらに撥水性を有する第3層の複層構造として、低圧低損失なものを例示することができる。
ここで、前記除塩フィルタ16としては、例えば「塩害フィルター」(商品名:日本エコフィルター株式会社)等を例示することができる。
【0024】
本実施例では、腐食センサ13の近傍に、湿度計19を設置し、その湿度に応じた海塩付着量を計測するようにしている。
ここで、図8は相対湿度と腐食電流値との関係を示す。図8では、予め所定量の海塩を付着させておき、恒温槽中で測定した各海塩付着量における腐食センサ13のセンサ出力(電流値:I1)と湿度との関係図であり、腐食センサ13で電流を計測し、湿度計19で湿度を計測することで、海塩付着量を推定できるものである(材料と環境「ACMセンサによる環境腐食性評価」 54、375−8(2005)参照)。
【0025】
本実施例においては、塩害防止外気導入装置10Aを屋外構造物20の外気導入部に設け、前記腐食センサ13にて、計測電流(I)から求めた海塩付着量が単位時間あたりの付着海塩量の増加が閾値を超えたことが確認された場合、高い塩分を含む外気が導入されていると判断し、通常の外気11を導入していた除塩フィルタ16を設置していない第1の外気導入通路14−1から、除塩フィルタ16を設置した第2の外気導入通路14−2に流路を切り替える制御を制御装置22により行うようにしている。
【0026】
単位時間としては、5〜1000分間の範囲であり、15〜45分間が好適である。閾値としては、5〜100mg/m2の範囲であり、8〜12mg/m2の範囲が好適である。
【0027】
制御装置22では、腐食センサ13により単位時間あたりの付着海塩量の増加が閾値を超えたことを確認した後、第2の外気導入通路14−2の通路開閉バルブ15−2を開け、次に第1の外気導入通路14−1の通路開閉バルブ15−1を閉じるようにしている。
ここで、本実施例では通路開閉手段としてバルブを例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば仕切り弁や、通気口等に設置される扉等を用いることができる。
【0028】
また、本実施例では外気導入通路を2系統しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、3系統以上に分岐させ、2番目以降の除塩フィルタ16を有する第2の外気導入通路14−2をさらに複数本設けるようにして、屋外構造物に外気を導入するようにしてもよい。
【0029】
この結果、屋外構造物20の内部への外気11の導入の際に、腐食性因子である塩害を抑制することができるので、屋外構造物20の内部の腐食を長期間に亙って抑制することができる。
【0030】
本実施例では、腐食センサ13を用いて単位時間あたりの付着海塩量の増加により、塩分濃度を求めているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばレーザ誘起ブレイクダウン分光法、イオンクロマトグラフ法等を用いることができる。
前記レーザ誘起ブレイクダウン分光法は大気中のNa+濃度を測定することで、塩分濃度を計測するものである。
なお、腐食センサは、簡易な構成で付着海塩の測定が連続して可能であり、腐食センサは単位時間(例えば分、時間等)あたりの海塩付着量の変化量を求めることで、通路の使い分けが可能となる。
【0031】
また、図2に示す本実施例の他の塩害防止外気導入装置10Bのように、屋外構造物20の内部に外気11を供給する供給通路17に、冷却装置23を介装するようにしてもよい。なお、符号27はバイパス通路、15−3は第3の通路開閉バルブ、15−4は第4の通路開閉バルブを図示する。
この実施例では、腐食センサ13からの腐食電流が既定値を超えた場合、海塩を含んだ水分が流入したと判断し、第1乃至第3のバルブ15−1〜15−3を閉じて、外気導入を停止し、バイパス通路27と冷却装置23を用いて屋外構造物20の内部を強制的に循環冷却するようにしている。
このような場合とは、例えば台風や嵐等の塩害被害が大きい場合をいい、塩害対策に効果的である。
【0032】
ここで、本発明の外気導入の切り替えについて実施する工程について図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
工程1) 先ず、第1の工程では、腐食センサ13からの腐食電流(I)を計測し、腐食電流が規定値(a)か否かを判断する(S1)。ここで、工程1)の既定値(a)としては、1μA程度とするのが好適である。
前記工程1)の判断の結果、「a≦電流量計測値(I)」の場合には、雨がかり状態であるとして、外気11の導入を停止し、屋外構造物20内を内部循環空冷へと切替える(S2)。すなわち、屋外構造物20内の循環ファン21と冷却装置23とバイパス通路27により内部循環を行う。そして、工程1)に戻り、腐食電流を引き続き計測する。
【0033】
工程2) 第2の工程では、前記工程1)の判断の結果、「電流量計測値(I)<aの場合」に、センサの腐食電流(I)から海塩付着量を算出し、単位時間当たりの海塩付着量の増加量(s)が、閾値(b)か否かを判断する(S3)。ここで、工程2)の閾値(b)としては、10mg/h程度とするのが好適である。
【0034】
工程3) 第3の工程では、第2の工程の判断の結果、「閾値(s)<b」の場合、第1のバルブ15−1を開けて、第1の通路14−1により、外気を屋外構造物20内に直接導入する。これに対し、第2の通路14−2においては、第2のバルブ15−2を閉じて第2の通路14−2に介装された除塩フィルタ16への外気導入を停止するようにしている(S4)。
これにより、海塩が少ない場合に、除塩フィルタ16を通過させないようにしているので、フィルタのダメージが少ないものとなり、この結果、除塩フィルタの高寿命化を図ることができる。
【0035】
工程4) 第4の工程では、「閾値(s)≧b」の場合には、外気に海塩同伴量が多いこととなるので、バルブ15−2を開けて、第2の通路14−2に通し、除塩フィルタ16で除塩した外気を屋外構造物20内に導入するようにしている(S5)。この際、第1のバルブ15−1を閉じて、第1の通路14−1からの外気導入を停止するようにしている。
【0036】
本実施例においては、塩害防止外気導入装置10A、10Bを屋外構造物20の外部に設置するようにしているが、本発明はこれに限定されず、屋外構造物20の内部に設置するようにしてもよい。
【実施例2】
【0037】
本発明による実施例に係る塩害防止外気導入装置及びそれを備えた屋外構造物について、図面を参照して説明する。図3−1は、本実施例に係る塩害防止外気導入装置の概略図である。図3−1に示すように、本実施例に係る塩害防止外気導入装置10C−1は、外気11を導入する外気導入口12と、外気導入口12近傍に設置される前段側腐食センサ13Aと、前記前段側腐食センサ13Aの後流側で、導入する外気11を少なくとも2以上(本実施例では2つ)に分岐させる第1及び第2の外気導入通路14−1、14−2と、前記外気導入通路14−1、14−2に各々設けられる通路開閉バルブ15−1、15−2と、第2の外気導入通路14−2の内部に設置される除塩フィルタ16と、分岐された第1及び第2の外気導入路14−1、14−2を集合させ、外気11を屋外構造物20の内部に供給する供給通路17と、前記第2の外気導入通路14−2内に設置された除塩フィルタ16の後流側に設置される後段側腐食センサ13Bと、を具備するものである。
なお、前段側腐食センサ13Aの近傍に前段側湿度計19Aを設けると共に、後段側腐食センサ13Bの近傍にも後段側湿度計19Bを設置して、外気の湿度を検知するようにしている。
【0038】
本実施例では、前記除塩フィルタ16の寿命となる前に、後段側腐食センサ13Bによりその寿命を事前に検知するようにしている。
すわなち、後段側腐食センサ13Bにより、腐食電流が所定の値以上となったことを確認したら、制御装置22により、除塩フィルタ16の劣化が近づいていることを知らせ、所定の対策(交換又は洗浄等)を講じるようにしている。
【0039】
この後段側腐食センサ13Bでの除塩フィルタ16の劣化が発生したことを検知した際に、洗浄対策を講じる場合には、図3−2に示すような洗浄手段31を用いるようにしている。
図3−2に示すように、塩害防止外気導入装置10C−2では、除塩フィルタ16の表面を洗浄水30で洗浄する洗浄手段31を設置し、除塩フィルタ16に対して洗浄水30を噴射し、その洗浄作用により塩分を洗い流すようにしている。なお、ドレン水30aは別途外部に排出するようにしている。
【0040】
その際、屋外構造物20の内部空気を循環させる循環ファン21の余熱空気24を用いて、除塩フィルタ16の洗浄後の乾燥に利用するようにしてもよい。余熱空気24は、バルブ25を備えた余熱空気供給通路26により、供給するようにしている。
【0041】
ここで、前段の腐食センサ13Aは、入口近傍に設置されるので、暴露環境によっては、腐食劣化しやすいこととなる。
このため、腐食センサ13Aの劣化度合いを例えばカラーアナライザや色差計等で監視し、対策を講ずるようにしている。
【0042】
また、海塩付着量が多いとき(例えば500〜1000mg/m2)、海塩の脱落の影響を考慮する必要がある。
【0043】
図9は、時間の経過と海塩付着量との関係図である。図9によれば、時間の経過と共に、腐食センサ13へ付着する海塩の量が多くなる傾向にあり、ある付着量を超えると海塩の付着とその脱落とが交互に行われ、例えば1000mg/m2に近づいてほぼ横ばいとなるのが確認される。
よって、海塩付着量に所定の閾値(例えば200〜500g/m2)を設け、この所定の閾値を超えた海塩付着量が検出された場合には、腐食センサ13の表面を洗浄又は交換するようにしている。
【0044】
図3−3では、腐食センサ13の表面を洗浄水30で洗浄するための洗浄手段32を設けており、所定の閾値となった場合には、洗浄水30で洗浄して、再生させ、再利用を図り、除塩フィルタの延命を図るようにしている。
【実施例3】
【0045】
本発明による実施例に係る塩害防止外気導入装置及びそれを備えた屋外構造物について、図面を参照して説明する。図4−1は、本実施例に係る塩害防止外気導入装置の概略図である。図4−1に示すように、本実施例に係る塩害防止外気導入装置10D−1は、実施例2の塩害防止外気導入装置10C−2において、第2の外気導入通路14−2内に、2つの除塩フィルタ16A、16Bを直列に複数(本実施例では2つ)設けたものである。
そして、各々の除塩フィルタ16A、16Bの近傍には、第1のバルブ25−1、第2のバルブ25−2を備えた余熱空気供給通路26により循環ファン21の余熱空気24を供給するようにしている。
【0046】
なお、余熱空気24により乾燥した塩分を効率よく脱落させるために、除塩フィルタ16A、16Bのフィルタ部分を振動させる振動手段(図示せず)を設け、積極的に脱落させるようにしてもよい。
【0047】
また、図4−2のように、前段側の除塩フィルタ16Aを迂回するバイパス通路33を設け、除塩フィルタ16Aの圧力損失が上昇しても、後段側除塩フィルタ16Bにより、除塩機能を発揮させ、外気導入を継続させるようにしてもよい。
【実施例4】
【0048】
本発明による実施例に係る塩害防止外気導入装置及びそれを備えた屋外構造物について、図面を参照して説明する。図5は、本実施例に係る塩害防止外気導入装置の概略図である。図5に示すように、本実施例に係る塩害防止外気導入装置10Eは、実施例2の塩害防止外気導入装置10C−1において、除塩フィルタ16を有する第2の外気導入通路14−2をさらに複数(本実施例では合計3本)設けたものである。
また、本実施例では、屋外構造物への供給通路17には、内部を冷却する冷却装置23を介装している。
【0049】
そして、第2の外気導入通路14−2の除塩フィルタ16の劣化が生じた場合には、第3の外気導入通路14−3、第4の外気導入通路14−4と順に切り替え、長期間に亙っての外気11の導入を継続するようにしている。
【0050】
以上のように、本発明の塩害防止外気導入装置を用いるころで、屋外構造物内部への外気導入に伴う、従来のような塩害による腐食を大幅に抑制することができることとなる。このような屋外構造物としては、海岸等の塩害対策が必要な例えば橋梁設備、太陽電池設備、風力発電装置、発電プラント設備、鉄筋建造物、鉄道設備等を例示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係る塩害防止外気導入装置は、屋外構造物の内部を冷却する外気の導入の際に、腐食状況を監視しつつ、塩害防止対策に切り替えるようにしているので、屋外構造物の内部への外気の導入の際に、腐食性因子である塩害を抑制すると共に、長期間に亙ってその防止を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
10A、10B、10C−1、10C−2、10D−1、10D−2、10E 塩害防止外気導入装置
11 外気
12 外気導入口
13 腐食センサ
14 外気導入通路
14−1 第1の外気導入通路
14−2 第2の外気導入通路
15−1 第1の通路開閉バルブ
15−2 第2の通路開閉バルブ
16 除塩フィルタ
17 供給通路
20 屋外構造物
21 循環ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する外気導入口を備えた外気導入通路と、
前記外気導入口内の近傍に設置される前段側腐食センサと、
前記腐食センサの後流側で、導入する外気を少なくとも2以上に分岐された外気導入通路と、
前記外気導入通路に各々設けられ、通路を開閉自在とする通路開閉手段と、
2番目以降に分岐された外気導入通路の内部に各々設置される除塩フィルタと、
分岐された外気導入路を集合させ、外気を屋外構造物の内部に供給する供給通路とを具備することを特徴とする塩害防止外気導入装置。
【請求項2】
外気を導入する外気導入口と、
外気導入口近傍に設置される前段側腐食センサと、
前記前段側腐食センサの後流側で、導入する外気を少なくとも2以上に分岐させる外気導入通路と、
前記外気導入通路に各々設けられる通路開閉手段と、
2番目以降の外気導入通路の内部に各々設置される除塩フィルタと、
分岐された外気導入路を集合させ、外気を屋外構造物の内部に供給する供給通路と、
前記外気導入通路内に設置された除塩フィルタの後流側に設置される後段側腐食センサと、
分岐された外気導入路を集合させ、外気を屋外構造物の内部に供給する供給通路とを具備することを特徴とする塩害防止外気導入装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記除塩フィルタを洗浄する洗浄手段を有することを特徴とする塩害防止外気導入装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記屋外構造物内部の空気を循環する循環ファンの余熱空気を洗浄後の除塩フィルタに供給することを特徴とする塩害防止外気導入装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記除塩フィルタを各々の外気導入通路内に直列に2以上設けることを特徴とする塩害防止外気導入装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記前段側腐食センサ近傍に、湿度計を設けてなることを特徴とする塩害防止外気導入装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つの塩害防止外気導入装置を、屋外構造物の空気導入部に設けてなることを特徴とする屋外構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−80715(P2011−80715A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234444(P2009−234444)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】