説明

壁パネル

【課題】従来に比して強度に優れるとともに、コストの削減が可能となり、さらに、壁パネル同士を接合するに際して容易に位置決めができる壁パネルの提供を目的とする。
【解決手段】四角形状の板材2の両面の少なくとも周縁部に、縦横の框材3a,3b,3c,3d、4a,4b,4c,4dを四角枠状に組み立てた枠体3,4を取り付けてなり、板材2の一面側に取り付けられた枠体3の縦框材3a,3bのうち、一方の縦框材3aは、板材2の周縁部よりも横方向外側に突出し、他方の縦框材3bは、板材2の周縁部よりも横方向内側に引込んでいる壁パネル1。これにより、枠体によって板材を両面側から挟み込むことができる。また、使用する板材の量を2枚から1枚に減らすことができる。その上、隣接する壁パネル同士の一方の縦框材の位置と、他方の縦框材の位置とを合わせるだけで、容易に位置決めできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物に用いられる壁パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅等の建物の構築についてはその工業化が進み、例えば壁や床、屋根といった構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てることにより住宅を構築するパネル工法が一部に採用されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1で用いられる壁パネルは、縦芯材と横芯材とが矩形枠状に組み立てられるとともに、この矩形枠の内部に補強芯材が縦横に組まれて枠体とされ、さらに、この枠体内にグラスウール等の断熱材が充填された状態で枠体の表裏両面に合板等の面材が貼着されたものである。
【特許文献1】特開平11−269982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1に記載のような壁パネルに対して、剪断方向や捻れ方向などに大きな変形力が加わった場合、この壁パネルの大部分を構成する両面材や、これら両面材と枠体との取付部分などが多大な影響を受けてしまう場合がある。このため、近年、地震対策等の観点から、面材や、面材と枠体との接合部分が影響を受けにくく、強度に優れる壁パネルの技術開発が望まれていた。
しかしながら、壁パネルの強度を向上させるために、例えば、強度の高い金属を取り付けたり、制振等の特殊な機能を付属させるとコストの増加を招く場合がある。
【0004】
さらに、従来、上記特許文献1のような壁パネルを隣接させて接合する際は、壁パネルの側端面同士を互いに突き合わせつつ、これら側端面同士を接着剤によって接着する方法などが採用されている。
しかしながら、従来の壁パネルの側端面は平らに形成されているため、側端面同士を付き合わせると、互いに面方向にずれてしまい、その位置決めが難しい場合がある。
【0005】
本発明の課題は、従来に比して強度に優れるとともに、コストの削減が可能となり、さらに、壁パネル同士を接合するに際して容易に位置決めができる壁パネルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、壁パネル1であり、例えば図1および図2に示すように、四角形状に形成された板材2の両面の少なくとも周縁部に、縦横の框材3a,3b,3c,3d、4a,4b,4c,4dを四角枠状に組み立てた枠体3,4を取り付けてなり、
前記板材2の一面側に取り付けられた枠体3の縦框材3a,3bのうち、一方の縦框材3aは、前記板材2の周縁部よりも横方向外側に突出し、他方の縦框材3bは、前記板材2の周縁部よりも横方向内側に引込んでいることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、四角形状に形成された板材2の両面の少なくとも周縁部に、縦横の框材3a,3b,3c,3d、4a,4b,4c,4dを四角枠状に組み立てた枠体3,4を取り付けてなるので、前記枠体3,4によって板材2を両面側から挟み込むことができ、地震等による板材2の変形を抑制することができる。すなわち、前記板材2に対して、剪断方向や捻れ方向などに大きな変形力が加わった場合、この板材2は様々な方向に向かって変形しようとする。例えば板材2が、側面視くの字に変形しようとすれば、板材2両面の前記一方の縦框材3a,4aおよび他方の縦框材3b,4bによって変形を抑制し、板材2が、平面視くの字に変形しようとすれば、板材2両面の前記一方の横框材3c,4cおよび他方の横框材3d,4dとによって変形を抑制することができる。また、例えば板材2が、捻れるように変形しようとすれば、板材2両面の前記枠体3,4全体で変形を抑制することができる。したがって、前記板材2が、いずれの方向に変形しても前記枠体3,4によって変形を抑制することができるので、前記板材2や、この板材2と両枠体3,4との取付部分に影響が出にくく、地震等に対する強度を向上させることが可能となる。
また、前記板材2の両面に枠体3,4が取り付けられてなるので、従来に比して、使用する板材2の量を2枚から1枚に減らすことができ、コストを削減することができる。
その上、前記板材2の一面側に取り付けられた枠体3の縦框材3a,3bのうち、一方の縦框材3aは、前記板材2の周縁部よりも横方向外側に突出し、他方の縦框材3bは、前記板材2の周縁部よりも横方向内側に引込んでいるので、前記一方の縦框材3aと他方の縦框材3bとは、凹凸の関係性を有していることとなる。したがって、壁パネル1同士を隣接させて接合する際は、突出している一方の壁パネル1の一方の縦框材3aと、引込んでいる他方の壁パネル1の他方の縦框材3bとの位置を合わせるようにしながら、隣接する壁パネル1の側端面同士を密接させるだけで、従来に比して、容易に位置決めを行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1に記載の壁パネル1において、
前記一方の縦框材3aの突出寸法は、前記他方の縦框材3bの引込み寸法と略等しい寸法となっていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記一方の縦框材3aの突出寸法は、前記他方の縦框材3bの引込み寸法と略等しい寸法となっているので、壁パネル1同士を隣接させて接合する際に、突出している一方の壁パネル1の一方の縦框材3aと、引込んでいる他方の壁パネル1の他方の縦框材3bとの位置を正確に合わせることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、請求項1または2に記載の壁パネル1において、
前記板材2の両面側は、この板材2の両面の周縁部に枠体3,4が取り付けられることによって、一面側が開放された凹部空間5,6となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記板材2の両面側は、この板材2の両面の周縁部に枠体3,4が取り付けられることによって、一面側が開放された凹部空間5,6となっていることから、これら凹部空間5,6を、例えば断熱材の設置スペースとしたり、パイプスペースとしたり、また棚を取り付けて収納スペースとするなど、多目的に利用することができるので、利便性が高い。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、請求項3に記載の壁パネル1において、
前記板材2の両面側の凹部空間5,6内には、前記縦框材3a,3b、4a,4bと平行する縦棧材5a,6aが、対向する横框材3c,3d、4c,4d間に配置され、前記横框材3c,3d、4c,4dと平行する横棧材5b,6bが、前記縦棧材5a,6aと直交するようにして、対向する縦框材3a,3b、4a,4b間に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前記凹部空間5,6内には、前記縦框材3a,3b、4a,4bと平行する縦棧材5a,6aが、対向する横框材3c,3d、4c,4d間に配置され、前記横框材3c,3d、4c,4dと平行する横棧材5b,6bが、前記縦棧材5a,6aと直交するようにして、対向する縦框材3a,3b、4a,4b間に配置されていることから、これら縦横の棧材5a,5b、6a,6bによって前記枠体3,4の補強を行うことができるので、地震等に対する強度をより向上させることが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば図5に示すように、請求項4に記載の壁パネル1において、
前記板材2の一面側の枠体3および縦棧材5aの表面には、これら枠体3および縦棧材5a間に架け渡されるようにして、複数の外装材7が取り付け固定されており、
これら複数の外装材7は、幅方向一端に下サネ7aを他端に上サネ7bを備えることによって、これら上サネ7bおよび下サネ7aが互いに重なり合うようにして隣接配置されており、
前記板材2の一面側の枠体3のうち、一方の縦框材3aの表面には、この一方の縦框材3aの外側端部と下サネ7aの側端部とを揃えるようにして外装材7が固定され、他方の縦框材3bの表面には、この他方の縦框材3bの外側端部よりも上サネ7bの側端部を突出させるようにして外装材7が固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、前記板材2の一面側の枠体3のうち、一方の縦框材3aの表面には、この一方の縦框材3aの外側端部と下サネ7aの側端部とを揃えるようにして外装材7が固定され、他方の縦框材3bの表面には、この他方の縦框材3bの外側端部よりも上サネ7bの側端部を突出させるようにして外装材7が固定されているので、壁パネル1同士を隣接させて接合する際に、突出している一方の壁パネル1の一方の縦框材3aと、引込んでいる他方の壁パネル1の他方の縦框材3bとの位置を合わせるのと同時に、前記一方の壁パネル1の一方の縦框材3aの表面に固定された外装材7の下サネ7aと、前記他方の壁パネル1の他方の縦框材3bの表面に固定された外装材7の上サネ7bとを互いに重ね合わせることができ、施工性に優れる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、例えば図6および図7に示すように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の壁パネル1において、
前記板材2は、この板材2の幅方向に沿ってスリット20を形成することによって、複数に分割されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、前記板材2は、この板材2の幅方向に沿ってスリット20を形成することによって、複数に分割されていることから、これら分割された板材20a,20b(20a,20b,20c)どうしが、地震等による変形力を互いに伝達させにくくなるので、これら分割された板材20a,20b(20a,20b,20c)に対して、地震等による大きな力が必要以上にかかることを抑えることができ、これら分割された板材20a,20b(20a,20b,20c)が破壊されることを確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、板材の両面の周縁部に取り付けられた枠体によって板材を両面側から挟み込むことができ、板材が、いずれの方向に変形しても枠体によって変形を抑制することができるので、板材や、この板材と両枠体との取付部分に影響が出にくく、地震等に対する強度を向上させることが可能となる。
また、板材の両面に枠体が取り付けられてなるので、従来に比して、使用する板材の量を2枚から1枚に減らすことができ、コストを削減することができる。
その上、板材の一面側に取り付けられた一方の縦框材と他方の縦框材とは、凹凸の関係性を有していることとなるので、壁パネル同士を隣接させて接合する際は、突出している一方の壁パネルの一方の縦框材と、引込んでいる他方の壁パネルの他方の縦框材との位置を合わせるようにしながら、隣接する壁パネルの側端面同士を密接させるだけで、従来に比して、容易に位置決めを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
本実施の形態の壁パネル1は、図1および図2に示すように、四角形状に形成された板材2の両面の少なくとも周縁部に、縦横の框材3a,3b,3c,3d、4a,4b,4c,4dを四角枠状に組み立てた枠体3,4を取り付けてなり、前記板材2の一面側に取り付けられた枠体3の縦框材3a,3bのうち、一方の縦框材3aは、前記板材2の周縁部よりも横方向外側に突出し、他方の縦框材3bは、前記板材2の周縁部よりも横方向内側に引込んでいる。
【0021】
ここで、本実施の形態の板材2として、材料に合板が用いられているが、これに限るものではない。すなわち、例えば樹種を変更したり、木片等を合成樹脂で固めたパーティクルボードを使用してもよく、地震等に対する強度を向上させることが可能であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0022】
なお、前記板材2は、1枚板で構成するようにしてもよいが、図3に示すように、上下に分割するようにして構成してもよいものとする。このように板材2を上下に分割することで、上側の板材2aの変形を下側の板材2bに伝達させにくく、下側の板材2bの変形を上側の板材2aに伝達させにくいので、好ましい。
【0023】
前記枠体3,4は、図1および図2に示すように、離間して対向配置された縦框材3a,3b、4a,4bの上下端部間に、それぞれ横框材3c,3d、4c,4dが架設されることで、四角枠状に形成されている。
【0024】
また、ただ単に前記板材を分割するだけでなく、図6に示すように、前記板材2の幅方向に沿ってスリット20を形成して、前記板材2を複数に分割することが望ましい。すなわち、分割された板材20a,20b間に細隙が形成されることになることから、これら分割された板材20a,20bどうしが、地震等による変形力を、互いに、より伝達させにくくなるので、これら分割された板材20a,20bに対して、地震等による大きな力が必要以上にかかることを抑えることができ、これら分割された板材20a,20bが破壊されることを、より確実に防ぐことができる。
【0025】
なお、前記板材2に形成するスリット20の本数は、図6に示すように、1本でも良いし、図7に示すように、2本以上であっても良い。
また、本実施の形態のスリット20とは、互いに接触していない状態の板材20a,20b(20a,20b,20c)間に形成される細い隙間のことを指している。
【0026】
また、上述したように、前記板材2の一面側に取り付けられた枠体3の縦框材3a,3bのうち、一方の縦框材3aは、前記板材2の周縁部よりも横方向外側に突出し、他方の縦框材3bは、前記板材2の周縁部よりも横方向内側に引込んでいる。
そして、前記一方の縦框材3aの突出寸法は、前記他方の縦框材3bの引込み寸法と略等しい寸法となっており、壁パネル1同士を隣接させて接合する際に、突出している一方の壁パネル1の一方の縦框材3aと、引込んでいる他方の壁パネル1の他方の縦框材3bとの位置を正確に合わせることができるようになっている。
【0027】
なお、前記一方の縦框材3aの突出寸法は、図1に示すように、例えば一方の縦框材3aのうち、前記板材2の周縁部から横方向外側に突出していない部分の幅寸法の値を「10」とすると、前記板材2の周縁部から横方向外側に突出している部分の幅寸法の値が「5」となっている。
対して、前記他方の縦框材3bの幅寸法の値は、前記一方の縦框材3aの突出していない部分と同じく「10」となっており、前記板材2の周縁部よりも横方向内側に引込んだ分の引込み寸法の値は、前記一方の縦框材3aの突出している部分と同じく「5」となっている。
すなわち、前記一方の縦框材3aが突出する分だけ、他方の縦框材3bが引込んだ形態となっている。ただし、以上説明した各値はこれに限定されない。
【0028】
一方、前記板材2の他面側に取り付けられた枠体4は、図1に示すように、前記板材2の周縁部に沿って正確に取り付けられており、前記板材2の一面側に取り付けられた枠体3よりも、奥行き寸法が長く形成されている。
【0029】
そして、前記板材2の両面側は、図1および図2に示すように、この板材2の両面の周縁部に枠体3,4が取り付けられることによって、一面側が開放された凹部空間5,6となっており、多目的に利用することができるので、利便性が高い。
【0030】
すなわち、前記凹部空間5,6は、図5に示すように、例えば断熱材8,9の設置スペースとして使用されたり、パイプスペース10として使用されたり、また、図示はしないが、棚を取り付けて収納スペースとすることも可能となっている。
特に、前記板材2の両面側に設けられた凹部空間5,6の双方に断熱材8,9を設置すると、従来の、断熱材を柱や枠材の内部に埋設する充填断熱方法や、柱や枠材の外部に断熱材を貼り付ける外張り断熱方法に比して、同性能の断熱材を用いた場合は、その断熱性を格段に向上させることができる。
【0031】
また、前記板材2の両面側の凹部空間5,6内には、図1および図2に示すように、前記縦框材3a,3b、4a,4bと平行する縦棧材5a,6aが、対向する横框材3c,3d、4c,4d間に配置され、前記横框材3c,3d、4c,4dと平行する横棧材5b,6bが、前記縦棧材5a,6aと直交するようにして、対向する縦框材3a,3b、4a,4b間に配置されている。
なお、前記凹部空間5,6内に、これら縦横の棧材5a,5b、6a,6bが配置される際は、これら縦横の棧材5a,5b、6a,6bを避けて前記断熱材8,9が設置されることとなる。
【0032】
なお、前記板材2の一面側の縦棧材5aは、前記板材2の一面側の一方の縦框材3aよりも幅広に形成されており、これによって、例えば図5に示すように、前記板材2の一面側に外装材7を取り付ける際に、前記板材2の一面側の縦棧材5aに対して外装材7の端部を固定できるようになっている。
また、前記板材2の他面側の横棧材6bは、図2に示すように、その奥行き寸法が、前記板材2の他面側の横框材4c,4dの奥行き寸法に比して、短く設定されており、例えば電気ケーブル等を壁パネル1の上下方向に連通させることができる。
【0033】
そして、以上のように前記板材2の両面側の凹部空間5,6内に、前記縦框材3a,3b、4a,4bと平行する縦棧材5a,6aが、対向する横框材3c,3d、4c,4d間に配置され、前記横框材3c,3d、4c,4dと平行する横棧材5b,6bが、前記縦棧材5a,6aと直交するようにして、対向する縦框材3a,3b、4a,4b間に配置されていることから、これら縦横の棧材5a,5b、6a,6bによって前記枠体3,4の補強を行うことができるので、地震等に対する強度をより向上させることが可能となっている。
【0034】
一方、前記板材2の一面側の枠体3および縦棧材5aの表面には、図5に示すように、これら枠体3および縦棧材5a間に架け渡されるようにして、複数の外装材7が取り付け固定されている。さらに、これら複数の外装材7は、幅方向一端に下サネ7aを他端に上サネ7bを備えることによって、これら上サネ7bおよび下サネ7aが互いに重なり合うようにして隣接配置されている。
また、前記板材2の他面側の枠体4および縦横の棧材6a,6bの表面には、防湿シート12aを介して石膏ボード12が取り付けられている。
さらに、前記板材2の両面側の凹部空間5,6のうち、一面側の凹部空間5には、パイプスペース10が形成されるとともに断熱材8が設置されており、他面側の凹部空間6には、断熱材9が設置されている。
【0035】
また、図5に示すように、前記凹部空間5には断熱材8が設置されている。そして、この断熱材8の厚みを薄く形成しておくことによって、断熱材8の表面と、板材2の一面側の枠体3の表面に取り付けられた外装材7の裏面との間に、壁パネル1の上下方向に連通する通気層11を形成できるので、外装材7の裏面側に雨水が浸入したとしても、通気性に優れるので、壁パネル1内部の乾燥状態を維持することが可能となる。
なお、この時、前記横棧材5bには、この横棧材5bの上方の通気層11と、下方の通気層11とを連通する通気孔(図示せず)が形成されている。
【0036】
そして、前記板材2の一面側の枠体3のうち、一方の縦框材3aの表面には、この一方の縦框材3aの外側端部と下サネ7aの側端部とを揃えるようにして外装材7が固定され、他方の縦框材3bの表面には、この他方の縦框材3bの外側端部よりも上サネ7bの側端部を突出させるようにして外装材7が固定されている。
これによって、壁パネル1同士を隣接させて接合する際に、突出している一方の壁パネル1の一方の縦框材3aと、引込んでいる他方の壁パネル1の他方の縦框材3bとの位置を合わせるのと同時に、前記一方の壁パネル1の一方の縦框材3aの表面に固定された外装材7の下サネ7aと、前記他方の壁パネル1の他方の縦框材3bの表面に固定された外装材7の上サネ7bとを互いに重ね合わせることができ、施工性に優れる。
【0037】
なお、本実施の形態の壁パネル1とは別に、例えば建物の壁の端部に位置したり、建物の壁面から突出する袖壁などを形成したい場合には、図4に示すような壁パネル13を使用してもよい。
この壁パネル13は、板材14の両面に枠体15,16および棧材15c,16aが取り付けられており、板材14の一面側に取り付けられた枠体15の一方の縦框材15aも、板材14の周縁部より横方向外側に突出しておらず、他方の縦框材15bも、板材14の周縁部より横方向内側に引込んでいない構成となっている。
【0038】
次に、本実施の形態の壁パネル1の作用について詳細に説明する。
ここで、本実施の形態の壁パネル1は、図1および図2に示すように、四角形状に形成された板材2の両面の少なくとも周縁部に、縦横の框材3a,3b,3c,3d、4a,4b,4c,4dを四角枠状に組み立てた枠体3,4を取り付けてなるものであり、前記板材2に対して、剪断方向や捻れ方向などに大きな変形力が加わった場合、この板材2は様々な方向に向かって変形しようとする構成となっている。
【0039】
例えば板材2が、側面視くの字に変形しようとすれば、板材2両面の前記一方の縦框材3a,4aおよび他方の縦框材3b,4bによって変形を抑制する。
すなわち、例えば前記板材2の一面側が外側に向くように位置し、他面側が内側に向くように位置するようにして、前記板材2が側面視くの字に変形する場合、前記板材2の一面側に取り付けられた一方の縦框材3aおよび他方の縦框材3bも、前記板材2の一面側と同様の方向に変形しようとし、前記板材2の他面側に取り付けられた一方の縦框材4aおよび他方の縦框材4bも、前記板材2の他面側と同様の方向に変形しようとする力が働く。
【0040】
これに対して、前記板材2の一面側に取り付けられた一方の縦框材3aおよび他方の縦框材3bには、変形に対する復帰力が生じて元の状態に戻ろうとし、前記板材2の他面側に取り付けられた一方の縦框材4aおよび他方の縦框材4bにも、変形に対する復帰力が生じて元の状態に戻ろうとする。
【0041】
このため、前記板材2は、この板材2両面に取り付けられた一方の縦框材3a,4aおよび他方の縦框材3b,4bの、変形しようとする力と、変形に対する復帰力とによって挟み込まれることとなる。
【0042】
すなわち、前記板材2が、側面視くの字に変形しようとしても、前記板材2の両面に取り付けられた一方の縦框材3a,4aおよび他方の縦框材3b,4bによって変形を抑制され、また側面視逆くの字に変形しようとしても、前記板材2の両面に取り付けられた一方の縦框材3a,4aおよび他方の縦框材3b,4bによって変形を抑制されることとなる。
【0043】
一方、例えば、前記板材2が、平面視くの字に変形しようとしても、上述のごとく、前記板材2両面の前記一方の横框材3c,4cおよび他方の横框材3d,4dとによって、その変形が抑制されることとなる。
また、例えば板材2が、捻れるように変形しようとしても、前記板材2両面の縦横の框材3a,3b,3c,3d、4a,4b,4c,4dからなる枠体3,4全体で変形を抑制することができるようになっている。
【0044】
しかも、前記板材2の両面側の凹部空間5,6には、前記縦横の棧材5a,5b、6a,6bが設けられているので、これら縦横の棧材5a,5b、6a,6bによって前記枠体3,4の補強を行うことができ、この補強された枠体3,4によって板材2の変形を抑制する力が強化されることとなる。
【0045】
したがって、前記板材2が、いずれの方向に変形しても前記枠体3,4および縦横の棧材5a,5b、6a,6bによって変形を抑制することができるので、前記板材2や、この板材2と両枠体3,4との取付部分に影響が出にくく、地震等に対する強度を向上させることが可能となる。
【0046】
本実施の形態によれば、前記板材2の両面の周縁部に取り付けられた前記枠体3,4によって板材2を両面側から挟み込むことができ、板材2が、いずれの方向に変形しても枠体3,4によって変形を抑制することができるので、前記板材2や、この板材2と両枠体3,4との取付部分に影響が出にくく、地震等に対する強度を向上させることが可能となる。
また、前記板材2の両面に枠体3,4が取り付けられてなるので、従来に比して、使用する板材2の量を2枚から1枚に減らすことができ、コストを削減することができる。
その上、前記板材2の一面側に取り付けられた枠体3の縦框材3a,3bのうち、一方の縦框材3aは、前記板材2の周縁部よりも横方向外側に突出し、他方の縦框材3bは、前記板材2の周縁部よりも横方向内側に引込んでいるので、前記一方の縦框材3aと他方の縦框材3bとは、凹凸の関係性を有していることとなる。したがって、壁パネル1同士を隣接させて接合する際は、突出している一方の壁パネル1の一方の縦框材3aと、引込んでいる他方の壁パネル1の他方の縦框材3bとの位置を合わせるようにしながら、隣接する壁パネル1の側端面同士を密接させるだけで、従来に比して、容易に位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る壁パネルを示すとともに、隣接する壁パネル同士の接合形態の概略を示す平断面図である。
【図2】図1に示す壁パネルの正面図、側断面図および底断面図である。
【図3】図1に示す壁パネルの板材の割付例を示す正面図である。
【図4】その他の壁パネルの例を示す平断面図である。
【図5】壁パネル同士の接合状態および周辺設備を示す平断面図である。
【図6】壁パネルの板材に1本のスリットを形成した状態を示す斜視図および側断面図である。
【図7】壁パネルの板材に2本のスリットを形成した状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 壁パネル
2 板材
3 枠体
3a 一方の縦框材
3b 他方の縦框材
4 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形状に形成された板材の両面の少なくとも周縁部に、縦横の框材を四角枠状に組み立てた枠体を取り付けてなり、
前記板材の一面側に取り付けられた枠体の縦框材のうち、一方の縦框材は、前記板材の周縁部よりも横方向外側に突出し、他方の縦框材は、前記板材の周縁部よりも横方向内側に引込んでいることを特徴とする壁パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の壁パネルにおいて、
前記一方の縦框材の突出寸法は、前記他方の縦框材の引込み寸法と略等しい寸法となっていることを特徴とする壁パネル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の壁パネルにおいて、
前記板材の両面側は、この板材の両面の周縁部に枠体が取り付けられることによって、一面側が開放された凹部空間となっていることを特徴とする壁パネル。
【請求項4】
請求項3に記載の壁パネルにおいて、
前記板材の両面側の凹部空間内には、前記縦框材と平行する縦棧材が、対向する横框材間に配置され、前記横框材と平行する横棧材が、前記縦棧材と直交するようにして、対向する縦框材間に配置されていることを特徴とする壁パネル。
【請求項5】
請求項4に記載の壁パネルにおいて、
前記板材の一面側の枠体および縦棧材の表面には、これら枠体および縦棧材間に架け渡されるようにして、複数の外装材が取り付け固定されており、
これら複数の外装材は、幅方向一端に下サネを他端に上サネを備えることによって、これら上サネおよび下サネが互いに重なり合うようにして隣接配置されており、
前記板材の一面側の枠体のうち、一方の縦框材の表面には、この一方の縦框材の外側端部と下サネの側端部とを揃えるようにして外装材が固定され、他方の縦框材の表面には、この他方の縦框材の外側端部よりも上サネの側端部を突出させるようにして外装材が固定されていることを特徴とする壁パネル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の壁パネルにおいて、
前記板材は、この板材の幅方向に沿ってスリットを形成することによって、複数に分割されていることを特徴とする壁パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−285989(P2008−285989A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276405(P2007−276405)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】