説明

壁面緑化装置

【課題】 構造物の外壁面に緑化面と非緑化面を画然と形成し、かつ保持することができる壁面緑化装置を提供する。
【解決手段】(a)壁面緑化装置を、フレームと、パネル取付材と、ネットパネルと、ルーバーパネルとから構成し、(b)フレームは、複数本の支柱を複数本の横材で連結して構成された骨組みであり、建造物の外壁面から離間して立設され、(c)パネル取付材は、フレームの外面に上下方向にネットパネル及びルーバーパネルの高さとほぼ等しい間隔をもって取り付けられ、(d)ネットパネルは、枠体の内側に植物が絡まって生長可能なメッシュのネットを張設してなり、パネル取付材に取り付けられ、(e)ルーバーパネルは、枠体の内側に植物が絡まることができない間隔でルーバーを配設してなり、パネル取付材に取り付けられるものであることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物その他の構造物の外壁面を緑化するための壁面緑化装置、とくに、構造物の外壁面に取り付けられるフレームと、そのフレームに支持され、植栽を保持するパネルとを構成要素とする壁面緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に都市部において、構造物の外壁面に植栽を施して緑化する壁面緑化が行なわれている。壁面緑化は、構造物への太陽熱・太陽光の照射を遮断(遮熱・遮光)して、空調負荷軽減による省エネルギー効果をもたらすばかりでなく、近年頓に問題視されている温暖化ガス発生量の削減に資するとともに、ヒートアイランド現象の緩和、大気中炭酸ガスの吸収などの環境改善効果をもたらし、また、建造物の景観改善により都市生活者に癒し効果を与えることが期待されるため、商品化が望まれている。
【0003】
既知の壁面緑化装置には、特許文献1に記載された、建築物の外壁に突設した複数の腕木と、その腕木に支持した複数のフレーム材と、そのフレーム材に架設したネットと、フレーム材の下端側の建築物の外面に沿って地上に置いた複数のプランターとから構成したものがある。この壁面緑化装置では、プランター内に植えられる植物は、落葉蔓性植物のツタであり、ツタが上方に設けたネットやフレーム材に絡まりながら成育することにより、外壁面を緑化する。
【0004】
また、既知の壁面緑化装置には、特許文献2に記載された、上下の横枠材と左右の縦枠材と仕切枠材と底板とからなり、複数の方形状の箱を備えたフレーム枠と、そのフレーム枠の複数の箱に収容される植栽基盤とを備えて緑化パネルを構成し、フレーム枠に取付けたブラケットをアンカーボルトで建築物の壁面に固定することにより、緑化パネルを建築物に支持するようにしたものがある。この壁面緑化装置では、箱内の植栽基盤に植生した植物により壁面を緑化する。
【0005】
また、既知の壁面緑化装置には、特許文献3に記載された、断面ほぼ凹状の複数の樋部材をそれぞれ開口部側を上方に向けた状態で水平方向に延設して、上下方向に間隔をあけて構造物の壁面に支持し、上下方向に隣り合う一対の樋部材の間に、植栽が施される倍土基盤とその倍土基盤を保持する枠部材とを備える緑化ユニットを、前記枠部材を樋部材に着脱自在に支持して、設置するようにしたものがある。この壁面緑化装置では、樋部材の任意の位置に緑化ユニットを設置することができるので、構造物の壁面に緑化を施すデザインの自由度が高く、緑化ユニットを壁面の全面配置、ライン状配置、あるいはFなどの文字状配置が可能であり、緑化ユニットが着脱可能であるため、緑化ユニットの個別のメンテナンスや構造物の壁面の塗り替えなどに柔軟に対応でき、緑化ユニットを構造物の壁面に沿って設置するため、植物選定の自由度が高い。また、緑化ユニットと樋部材からなるので、構成がシンプルで緑化に掛かるコストの低減が可能である。
【0006】
また、既知の壁面緑化装置には、特許文献4に記載された、建築物の外側に垂直支柱と梁部材と横架材とで骨組み(フレーム)を形成し、横架材に植栽用容器を載置するようにしたものがある。
【0007】
さらに、既知の壁面緑化装置には、特許文献5に記載された、支柱と架材を直方体の稜線に沿って配設し接続してなるフレームの相対向する面にフレーム部の内側にネット部を張設してなるネットを備えたものがある。
【特許文献1】特開2002−34350号公報
【特許文献2】特開2002−95347号公報
【特許文献3】特開2007−222015号公報
【特許文献4】特開2007−274948号公報
【特許文献5】特開2008−79519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された壁面緑化装置では、地上に設置したプランターから建築物の外壁面を覆うように設けた上方のネットに蔓性植物であるツタを生育させて緑化するものであるから、ツタの生育範囲を画然と仕切ることは困難である。すなわち、壁面の緑化を施す面と、緑化を施さない面の画然とした仕切が不可能又は困難であり、遮光を望まない窓面まで意に反して遮光されてしまうという問題がある。
【0009】
特許文献2に開示された壁面緑化装置では、フレーム枠が植栽基盤を収容するため比較的堅牢に形成されるため、緑化に掛かるコストが高くつくという問題があるとともに、そのフレーム枠が建築物の壁面にアンカーボルトで固定されるため、フレーム枠の箱内に収容した植栽基盤の交換や、建築物の壁面の塗り替えなど、壁面緑化装置や建築物のメンテナンスに柔軟に対応することができないという問題がある。
【0010】
特許文献3に開示された壁面緑化装置では、緑化ユニットはいずれも共通の垂直面上に設置され、樋部材も緑化ユニットと共通の垂直面上に存在するため、樋部材の倍土基盤に蔓性植物を植栽する場合は、その植物の育成範囲又は繁殖範囲が樋部材の上方の一つの緑化ユニットに制限されず、その緑化ユニットを越えて上側の樋部材の上方の緑化ユニット、あるいはさらにその上方まで限りなく伸長することが考えられる。
従って、ある緑化ユニットの上側に植物により覆われない、採光窓、透視窓、又は、非常時避難用窓などを確保することは困難であるから、これらの窓の下側には、蔓性植物を植栽することはできない。
【0011】
さらに、上記先行技術は、いずれも、壁面を覆う植物を管理するには、植物の被覆層の外側(建築物と反対側)で作業をしなければならず、危険を伴う高所作業となる問題がある。
【0012】
特許文献4に開示された壁面緑化装置では、フレームに対する容器の配置態様が一定であり、容器には中木、高木等の樹木、蔦植物,蔓植物などが植栽されるので、遮熱・遮光効果は少なく、壁面全面が一律のデザインであり、デザインの自由性に乏しい。また、壁面の任意の一部に所定形状の採光部・透視部を設けることはできない。
【0013】
そして、特許文献5に開示された壁面緑化装置では、フレームの表裏両面にネットを備えるので、高い遮熱・遮光率が得られる場合があるが、ネット部はいずれも同様の外観を有するので、デザインの自由性に乏しく、装置のメンテナンスは容易でなく、植栽の管理も容易でない。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、解決しようとする第1の課題は、構造物の外壁面に緑化面と非緑化面、換言すると、遮光面(遮熱面を含む。以下、同じ。)と非遮光面(非遮熱面を含む。以下、同じ。)を画然と形成し、かつ保持することができる壁面緑化装置を提供することにある。
また、本発明の第2の課題は、緑化面と非緑化面のデザインの自由度が高められ、メンテナンスが容易にできる壁面緑化装置を提供することにある。
さらに、本発明の第3の課題は、非常避難口を確保することができる壁面緑化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記第1の課題を解決するため、(a)壁面緑化装置を、フレームと、パネル取付材と、ネットパネルと、ルーバーパネルとから構成したこと、(b)前記フレームは、複数本の支柱を複数本の横材で連結して構成された骨組みであり、建造物の外壁面から離間して立設されるものであること、(c)前記パネル取付材は、前記フレームの外面に上下方向に前記ネットパネル及び前記ルーバーパネルの高さとほぼ等しい間隔をもって取り付けられるものであること、(d)前記ネットパネルは、枠体の内側に植物が絡まって生長可能なメッシュのネットを張設してなり、前記パネル取付材に取り付けられるものであること、(e)前記ルーバーパネルは、枠体の内側に前記植物が絡まることができない間隔でルーバーを配設してなり、前記パネル取付材に取り付けられるものであることを特徴としている(請求項1)。
【0016】
本発明は、上記第2の課題を解決するため、上記壁面緑化装置において、パネル取付材は、フレームに着脱自在に取り付けられ、前記ネットパネル及び前記ルーバーパネルは、前記パネル取付材に着脱自在に取り付けられることを特徴としている(請求項2)。
【0017】
本発明は、また、上記第2の課題を解決するため、上記壁面緑化装置において、ルーバーパネルは、パネル取付材に取り付けられる枠体の内側にルーバーを下側のネットパネルに保持される蔓性植物が登攀できない間隔で配設してなることが好ましい(請求項3)。
【0018】
本発明は、上記第1の課題を解決するため、上記壁面緑化装置において、パネル取付材として、ネットパネル取付材とルーバーパネル取付材の2種類を形成し、前記ルーバーパネル取付材の出幅は、前記ネットパネル取付材の出幅よりも大きくして、前記ネットパネル取付材の外側面に取り付けたネットパネルに保持される植物がそのネットパネルの上側のルーバーパネル取付材の外側面に取り付けたルーバーパネルに登攀できないようにしたことを特徴としている(請求項4)。
【0019】
また、本発明は、上記第2の課題を解決するため、フレームは、支持部材により建築物の外壁面から外側に持ち出して取り付けられ、ネットパネル及びルーバーパネルと前記建築物の外壁面との間にその外壁面に沿って連通する空間が形成され、等しい高さに存在する支持部材にプランター支持台又は作業者歩行路として用いられる棚板が設けられていることを特徴としている(請求項5)。
【0020】
さらに、本発明は、上記第3の課題を解決するため、、上記壁面緑化装置において、ルーバーパネルの少なくとも1つを、非常避難口とほぼ等しい面積を有するものとし、フレームに開閉自在に取り付けたことを特徴としている(請求項6)。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、ネットパネルには植物が絡まって生長・繁茂し、太陽熱・太陽光を遮断するが、ルーバーパネルには植物が登攀又は付着しないので、建造物の外壁面に緑化面と非緑化面を備えることができる。非緑化面においては、採光、採熱又は透視が可能である。
【0022】
請求項2の発明によれば、ネットパネルとルーバーパネルを任意の位置に取付可能であり、緑化面と非緑化面野配置を任意にデザイン可能である。すなわち、デザインに自由性がある。
【0023】
請求項3の発明によれば、緑化面から非緑化面への植物の伸長・登攀が阻止されるので、緑化面と非緑化面の画然とした仕切が可能である。
【0024】
請求項4の発明によれば、緑化面から非緑化面への植物の伸長・登攀を確実に阻止することができる。従って、採光面又は透視面の確保が可能である。
【0025】
請求項5の発明によれば、プランターの設置、植栽又はパネルのメンテナンス、ネットパネル又はルーバーパネルの取付位置の変更などをフレームの内側から安全容易に行なうことができる。
【0026】
請求項6の発明によれば、非常避難口が植物により遮蔽されてしまうことがない壁面緑化装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。本発明は、木造建築物、軽量鉄骨造建築物、鉄筋コンクリート造建築物に適用可能であるが、以下には、鉄筋コンクリート造建築物に適用した場合の例について説明する。
【0028】
図1は本発明に係る壁面緑化装置を取り付けた建築物の斜視図、図2はその建築物から壁面緑化装置を引き離した状態で示す斜視図、図3は壁面緑化装置を主たる構成要素別に分解して示す斜視図、図4は図3の下側の支持部材群及び中間の支持部材群と下側の桁の詳細を示す斜視図、図5は図4の一部の拡大図、図6は図3の上側の支持部材群と上側の桁の詳細を示す斜視図、図7は図3のフレームの詳細を示すフレームの拡大分解斜視図、図8は支柱と横材の接続構造の一例を示す斜視図、図9はパネル取付材群の詳細を示す斜視図、図10はパネル取付材を構成するネットパネル取付材とルーバーパネル取付材の接続構造の一例を示す斜視図、図11は建築物に取り付けられたフレームの側面図であり、(a)は下半部分、(b)は上半部分の側面図である。図12は図11のX−X線断面図、図13は図11のY−Y線断面図、図14はネットパネルの正面図、図15は同じく拡大縦断面図、図16は同じく拡大横断面図、図17はルーバーパネルの正面図、図18は同じく拡大縦断面図、図19は同じく拡大横断面図、図20はパネル取付材にネットパネルとルーバーパネルを取り付けた状態の横断面図、図21はネットパネルとルーバーパネルの配置例を示すパネル群の一部の拡大図、図22は同パネル群に育成した植栽が付着している様子の一例を示す斜視図である。
【0029】
図1及び図2は、本発明に係る壁面緑化装置Aを、一例として4階建ての建築物Bの2階から4階までの窓面側に取り付け、各階に上下方向には2枚ずつ、横方向には5枚ずつのパネルNP,RPを近接して取り付けた状態を示している。なお、図面の簡明化のため、図1と図2には、図3に示されているフレーム100、パネル取付材200が省略されている。
【0030】
本発明に係る壁面緑化装置Aは、概括的には、図3に示すように、建築物の外側に設置されるフレーム100と、そのフレームの所定の位置の外側面に水平方向に延長させて取り付けられるパネル取付材200と、そのパネル取付材に取り付けられるパネル群300とから構成されている。
【0031】
パネル群300は、2種類のパネルNP,RPを近接して設置して構成される。図1〜図3において、NPはネットパネルであり、植栽による緑化を望む面に取り付けられる。RPはルーバーパネルであり、植栽による緑化を望まない面に取り付けられる。いずれのパネルも同一の面積を有する。そして、ネットパネルNPとルーバーパネルRPの配置位置及び配置パターンは、後述されるフレーム100の構造上の制限を受けるほかは任意であり、デザインに対する好み、緑化による遮光を望む領域、緑化による遮光を望まない領域等に対応して、任意に設定することができる。
【0032】
続いて、2種類のパネルNP,RPを任意の位置に取り付けることを可能にするためのフレーム100の構成及び建築物に対する取付構造、パネル取付材200の構成、及び各パネルNP,RPの構成について順次詳細に説明する。
【0033】
フレーム100は、複数本の支柱120同士を横材130で連結して構成された骨組みであり、建築物Bの外壁面に突設される複数の支持部材110により建築物Bの外壁面から所定距離を隔てた状態で建築物Bの外側に立設される。
【0034】
支持部材110は、支柱120及び/又は横材130を建築物Bに固定する機能と、後述される棚板140を支持する機能を有すれば、その構造・形状は任意である。
図示の例では、支持部材110に、2種類の支持部材110a、110b;110cを用いている。1種類の支持部材110a、110bは、図4及び図6に示すように、壁面 にねじn1などにより固着される垂直材111の一端に水平材112の一端を固着し、その水平材112の他端と垂直材111の他端の間に方杖113を設けて直角三角形状に形成されている。下側の支持部材110aは水平材112を上側に位置させた状態で各支柱120に対応する垂直線の中間位置における一つの水平線に沿って外壁面に固定される。上側の支持部材110bは、水平材112を下側に位置させた状態で各支柱120の上端部に対応する1つの水平線に沿って下側の支持部材110aの間隔と等しい間隔で外壁面に固定される。
【0035】
支持部材のもう1種類である支持部材110cは、ブラケット114a,114bと持ち出し材115とで構成されていて、各支柱120の下部に対応する一つの水平線に沿って支持部材110a、110bの間隔と等しい間隔で壁面にブラケット114a,114bにより取り付けられている。支持部材110cのブラケット114bには、建築物の外壁面から支持部材110aの水平材112の先端と共通する垂直面まで延長する持ち出し材115が溶接などにより設けられている。そして、図5に示すように、各支持部材110cの先端に1本の桁116がボルトナットなどにより固着されている。外壁面に突設された上側の支持部材110bの水平材の先端にも、桁116と同様の桁116がボルトナットなどにより固着されている。これらの桁116は、支持部材110を相互に連結して支持部材の建築物に対する取付強度を相互増長するとともに、これらの桁116に各支柱120をボルトナットなどで固着するためのものである。図4,5,6において、115’は支持部材110b,110cを桁116に接続する補強部材である。
【0036】
建築物の外壁面に突設された下側の支持部材110aの水平材112の上面には、後述する棚板140を載置して固定することができるようになっている。
【0037】
支柱120は、図7に示すように、建築物Bの1階分又は複数階分の高さに相当する所定長さの支柱材を、連結金具121により、緑化を希望する階までの長さになるように連結して用いられる。支柱材と連結金具121の接続構造は、とくに限定されない。図7,8に示す例では、支柱120と連結金具121を共に径の異なるチャンネル状に形成し、連結金具121の両側部分を支柱120の溝の中に挿入し、ボルトナットbなどで固着している。
【0038】
そして、建築物Bの外壁面に沿って整列される各支柱120は、その建築物の窓の幅にほぼ対応する間隔をもって離間し、隣接する支柱120同士をその上下端部又はこれに加えて、もしくはこれに代えて、中間部などにおいて横材130により架橋し、その横材130をブラケット131により支柱120に固着して、格子状に組み立てられている。
【0039】
支柱120の下端部には、外面に突出する張り出し材141を固着するとともに、両端部に位置する支柱120の間を連続する桁142をその裏面側に各支柱に対向して突出する挿入部材143を張り出し材141に挿入して固着し、それらの張り出し材141と桁142との上面に棚板140を載置固定することができるようにしてある。
【0040】
建築物Bの外側に取り付けられた上記フレーム100には、その外面に、上下方向に所定の間隔を持ってパネル取付材200が着脱自在に取り付けられている。このパネル取付材200は、図9に示すように、所定長の薄帯板で構成され、幅寸法が小さいネットパネル取付材200Sと幅寸法が大きいルーバーパネル取付材200Lとを任意の順序で、図10に例示するように、ブラケット151とボルトナットなどn2により連結して構成され、フレーム100の支柱120に固着される。所定長とは、後述されるネットパネルNP及びルーバーパネルRPの単位長と等しい長さである。ネットパネル取付材200Sとルーバーパネル取付材200Lの配置位置又は配置パターンは、当該建築物の外面のうち、どの領域を植栽により遮光したいか、どの領域を遮光したくない(採光したい)かにより、決定される。施主の緑化パターンのデザインに対する好み応じて決定することもできる。
【0041】
上記支持部材110(110a,110b,11c)及び上下の桁116を介して支柱120と横材130からなるフレーム100が、建築物の外側に立設される。図11は、その立設されたフレーム100の下部から上部までの縦断面図である。(a)は下半部であり、(b)は上半部である。
【0042】
図12は図11のX−X線に沿った断面図、図13は図11のY−Y線に沿った断面図である。図11、図12において、140は持ち出し材115の上面に載置固定された、すなわち、フレーム100から外側に張り出して設けられた棚板である。棚板140には、植栽をするためのプランターPL(図1,2参照)を載置することができる。また、図11、図13において、140’はフレーム100の内側に、下側の支持部材110aの水平材112に載置固定された棚板であり、ここには植栽をするためのプランター(図示省略)を載置してもよいが、植栽あるいはフレームのメンテナンス、あるいはパネル取付位置の変更などを行う作業者がこの棚板に載って作業を行うための歩行路として使用することができる。従って、フレーム100の内側で安全かつ容易に作業を行うことができる。
【0043】
プランターを載せる棚板140又はメンテナンス用棚板140’をフレーム100に設ける高さ位置は、植栽やパネルのメンテナンスや交換などが容易にできれば、とくに限定されない。
【0044】
さて、上記ネットパネルNP及びルーバーパネルRPの構成について、引き続き説明する。ネットパネルNPは、これにプランターPLに植栽される植物を絡ませて、又は登攀させて、遮光させる目的で使用される緑化パネルである。このようなネットパネルNPは、図14に例示するように、好ましくは矩形の枠体11の内側にワイヤー又は付着根を有する蔓性植物などが絡まり易いように表面処理をしたワイヤーもしくは棒材を格子状に接続したもの、あるいは、金網などのネット材12を張設して構成することができる。ネット材12には、植栽がネット材に絡まって又は付着根により付着して生長できる大きさのメッシュを有するものが使用される。従って、植栽される植物の生長の性質に応じて、メッシュの大きさが異なるネット材12を枠材11に固着又はブラケット13により交換可能に取り付けて用いることができる。そして、枠体11が上記パネル取付材200のうち、ネットパネル取付材200Sの外面にビス又はボルトナットなどにより、着脱可能に取り付けられる。
【0045】
ルーバーパネルRPは、これにプランターPLに植栽される植物を付着させずに、又は登攀させずに、透視、採光及び/又は通風機能を維持するための非緑化パネルである。そして、このようなルーバーパネルRPは、図17に例示するように、ネットパネルNPの枠体11と同じ大きさの枠体11の内側に複数本のルーバー14,14’を、所定以上の間隔をもって配設して構成することができる。そして、枠体11が上記パネル取付材200のうち、ルーバーパネル取付材200Sの外面にビス又はボルトナットなどにより、着脱可能に取り付けられる。所定以上の間隔とは、プランターPLに植栽される植物が絡まり付いたり、登攀したりすることができない程度の間隔である。付着又は登攀の可能性が無ければ、図20に例示するように、各ルーバー14,14’の太さや配置パターンは任意であり、好みのデザインにすることができる。
【0046】
上記のネットパネルNPに対しては登攀させ、ルーバーパルRPには登攀させない植物として適する種類の一例を挙げれば、モッコーバラ、カロライナジャスミン、ジャスミンポリアンツム、ツタ、その他の付着根を有する植物や蔓性植物などがある。
【0047】
ネットパネルNPに対しては登攀させ、ルーバーパルRPには登攀させないためには、ルーバー13の間隔の設定により上記2種類のパネルを共通の垂直面に取り付けることも可能であるが、植物がルーバーパルRPに登攀することを確実に阻止するため、上述のように、パネル取付材のうち、ルーバーパネル取付材200Lの出幅をネットパネル取付材200Sの出幅よりも大きくすることが有効である。すなわち、ルーバーパネルRPをネットパネルNPよりも外側に張り出させ、そのルーバーパネルRPの下面をルーバーパネル取付材200Lで遮蔽することにより、ネットパネルNPに沿って生長する植物は、そのネットパネルから上方又は側方のルーバーパネルに絡まって生長すること又は登攀することが阻止される。従って、緑化領域と非緑化領域を画然と仕切ることができ、その建築物を外側から見た場合の景観が美麗であるばかりでなく、遮光したい部分は緑化による遮光機能が発揮され、採光したい窓の採光機能が植物により損なわれることがない。
【0048】
ネットパネルNP及びルーバーパネルRPは、いずれもフレーム100に対して同様に着脱自在に取り付けられるから、任意の位置に取付け又は取付位置を変えることができる。従って、デザインの自由性に富んでいる。本発明の実施の形態によれば、図21に示すように、ネットパネルNPには植物が付着して緑化面が形成され、ルーバーパネルRPには植物が付着しない非緑化面が形成される。
【0049】
また、建築物Bの非常避難口(図示省略)に対応する位置にルーバーパネルRPを既知の回転支持装置(図示省略)及び閉鎖状態に保持するラッチ装置(図示省略)を用いて開閉可能に取り付ければ、非常避難口が設けられている建築物においても、壁面緑化を、避難時に障害物となることなく、施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る壁面緑化装置を取り付けた建築物の斜視図。
【図2】その建築物から壁面緑化装置を引き離した状態で示す斜視図。
【図3】壁面緑化装置を主たる要素別に分解して示す斜視図。
【図4】図3の下側ブラケット及び中間ブラケット群と下側桁の詳細を示す斜視図。
【図5】図4の一部の拡大図。
【図6】図3の上側ブラケット群と上側桁の詳細を示す斜視図。
【図7】図3のフレームの詳細を示すフレームの拡大分解斜視図。
【図8】支柱と横材の接続構造の一例を示す斜視図。
【図9】パネル取付材群の詳細を示す斜視図。
【図10】パネル取付材のネットパネル取付部分とルーバーパネル取付部の接続構造の一例を示す斜視図。
【図11】建築物に取り付けられたフレームの側面図であり、(a)は下半部分、(b)は上半部分の側面図。
【図12】図11のX−X線断面図。
【図13】図11のY−Y線断面図。
【図14】ネットパネルの正面図。
【図15】同じく拡大縦断面図。
【図16】同じく拡大横断面図。
【図17】ルーバーパネルの正面図。
【図18】同じく拡大縦断面図。
【図19】同じく拡大横断面図。
【図20】パネル取付材にネットパネルとルーバーパネルを取り付けた状態の横断面図。
【図21】ネットパネルとルーバーパネルの配置例を示すパネル群の一部の拡大図。
【図22】同パネル群に育成した植栽が付着している様子の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0051】
A 壁面緑化装置
B 建築物
NP ネットパネル
RP ルーバーパネル
PL プランタ
100 フレーム
110 支持部材
120 支柱
130 横材
200 パネル取付材
200S ネットパネル取付材
200L ルーバーパネル取付材
140 棚板
140’ 棚板
300 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、パネル取付材と、ネットパネルと、ルーバーパネルとからなり、
前記フレームは、複数本の支柱を複数本の横材で連結して構成された骨組みであり、建造物の外壁面から離間して立設されるものであり、
前記パネル取付材は、前記フレームの外面に上下方向に前記ネットパネル及び前記ルーバーパネルの高さとほぼ等しい間隔をもって取り付けられるものであり、
前記ネットパネルは、枠体の内側に植物が絡まって生長可能なメッシュのネットを張設してなり、前記パネル取付材に取り付けられるものであり、
前記ルーバーパネルは、枠体の内側に前記植物が絡まることができない間隔でルーバーを配設してなり、前記パネル取付材に取り付けられるものである、
ことを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の壁面緑化装置において、パネル取付材は、フレームに着脱自在に取り付けられ、前記ネットパネル及び前記ルーバーパネルは、前記パネル取付材に着脱自在に取り付けられることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の壁面緑化装置において、
ルーバーパネルは、パネル取付材に取り付けられる枠体の内側にルーバーを下側のネットパネルに保持される蔓性植物が登攀できない間隔で配設してなることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の壁面緑化装置において、
パネル取付材として、ネットパネル取付材とルーバーパネル取付材の2種類を形成し、前記ルーバーパネル取付材の出幅は、前記ネットパネル取付材の出幅よりも大きくして、前記ネットパネル取付材の外側面に取り付けたネットパネルに保持される植物がそのネットパネルの上側のルーバーパネル取付材の外側面に取り付けたルーバーパネルに登攀できないようにしたことを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4に記載の壁面緑化装置において、
フレームは、支持部材により建築物の外壁面から外側に持ち出して取り付けられ、ネットパネル及びルーバーパネルと前記建築物の外壁面との間にその外壁面に沿って連通する空間が形成され、等しい高さに存在する支持部材にプランター支持台又は作業者歩行路として用いられる棚板が設けられていることを特徴とする壁面緑化装置。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5に記載の壁面緑化装置において、
ルーバーパネルの少なくとも1つは、建造物の外壁面に設けてある非常避難口とほぼ等しい面積を有し、フレームに開閉自在に取り付けられていることを特徴とする壁面緑化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−115117(P2010−115117A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288363(P2008−288363)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【出願人】(507150585)株式会社町田ひろ子アカデミー (1)
【Fターム(参考)】