説明

変位検出装置

【課題】 測定期間中に得られた可動部の変位量に基づいて検出信号を生成する際の検出精度を向上させた変位検出装置を提供する。特に、ヘッドユニットを退避位置に移動させても可動部が復帰しない不具合が生じた場合に、その不具合を検知することができる変位検出装置を提供する。
【解決手段】 検査対象物に接触させた可動部21の変位量を測定期間中に測定し、検査対象物が非測定期間中に交換される変位検出装置であって、可動部21を挿抜可能に保持するホルダー25と、可動部21を検査対象物側へ付勢するスプリング28と、ホルダー25に対する可動部21の変位量を検出する変位量算出回路1と、測定期間中に得られた変位量の検出値に基づいて、検出信号を生成する検出信号生成部2と、変位量の検出値を閾値と比較し、非測定期間中に可動部21の変位量が閾値を越えて変化しなかった場合に、エラー信号を出力させるエラー処理部3により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位検出装置に係り、さらに詳しくは、検査対象物に接触させた可動部の変位量を測定期間中に測定し、上記検査対象物が非測定期間中に交換される変位検出装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物に接触させてその表面における凹凸などの形状変化を検出する検出装置として、測長センサーが知られている。この測長センサーは、可動部の先端に設けられた接触子を検査対象物に接触させて可動部の変位量を検出する変位検出装置であり、変位量の検出には、例えば、可動部の変位量に応じてコイルのインダクタンス(磁気誘導係数)が変化する現象が利用される。具体的には、可動部と、コイルが設けられ、可動部を挿抜可能に保持するホルダーとから検出装置を構成し、可動部には、コイルの磁心となるコアが設けられる。ホルダーに対する可動部の変位量に応じてコアを出し入れさせると、コイルのインダクタンスが上記変位量に応じて変化する。このインダクタンスの微小な変化を検出することによって可動部の変位量、すなわち、検査対象物表面の形状変化を検知することができる。
【0003】
通常、測長センサーは、測定の際に所定位置まで検査対象物に近づけられ、測定が終了すると、所定位置から退避位置まで移動させて検査対象物から遠ざけられる。検査対象物の測定は、PLC(Programmable Logic Controller:プラグラマブルロジックコントローラ)などの外部機器から入力されるタイミング信号に基づいて行われ、変位量の検出値に応じた検出信号が出力される。具体的には、タイミング信号の立ち下がりに基づいて変位量の検出値に基づく演算処理が開始され、検出値に応じた検出信号が生成されるとともに、当該タイミング信号の立ち上がりに基づいてその演算処理が終了される。この演算処理は、例えば、変位量の検出値が許容範囲内にあるか否かを所定の閾値に基づいて判定する処理であり、検出値が許容範囲内にある場合と、許容範囲内にない場合とで電圧レベルの異なる信号が検出信号として出力される。ユーザは、この様な検出信号に基づいて、検査対象物の表面形状が所定の範囲内にあるか否かを検知することができる。
【0004】
図11は、測長センサーにおける動作例を示した図であり、外部機器から入力されたタイミング信号110に基づいて出力される検出信号120の様子が示されている。この測長センサーでは、ホルダー101及び可動部102からなるヘッドユニット100が製造ライン上に配置され、測定ごとに退避位置から所定位置まで移動させている。可動部102は、ホルダー101内に設けられているばねにより挿抜方向に付勢されており、ヘッドユニット100を所定位置に移動させることによって、その先端が検査対象物A100〜A104に押し付けられる。退避位置では、ばねの付勢力によって可動部102がホルダー101から最大限引き出された状態、すなわち、可動部102が可動範囲の上限位置に達した状態となる。一方、所定位置では、可動部102が検査対象物A100〜A104からの抗力によって、可動範囲の上限位置よりもホルダー101内に押し込まれた状態となる。
【0005】
タイミング信号110は、ヘッドユニット100が所定位置にあるときにその電圧レベルが切り替えられ、この電圧レベルの切り替えに基づいて演算処理が開始される。この例では、検査対象物A100〜A104の高さが可動部102の変位量として検出され、演算処理の判定結果を示す検出信号120が生成されている。
【0006】
最初の測定(1回目の測定)では、変位量の検出値が許容範囲内にあり、検査対象物A101は、表面形状が所定の範囲内にあるもの(正常ワーク)とみなされる。このとき、検出信号120は、タイミング信号110の立ち下がりに同期して、信号レベルがハイ(High)状態に切り替えられ、次の測定時まで保持される。次の測定(2回目の測定)においても、変位量の検出値が許容範囲内にあり、検査対象物A102は、正常ワークであるとみなされている。このとき、検出信号120の信号レベルはさらに次の測定時までハイ状態のまま保持される。3回目の測定では、変位量の検出値が許容範囲内になく、検査対象物A103は、表面形状が所定の範囲内にないもの(不良ワーク)とみなされる。このとき、検出信号120は、タイミング信号110の立ち下がりに同期して、信号レベルがハイ状態からロー(Low)状態に切り替えられる。ユーザは、この様な検出信号120の信号レベルに基づいて、検査対象物A100〜A104が正常ワークであるか否かを識別することができる。
【0007】
しかしながら、この様な測長センサーでは、付勢手段としてのばねのへたり(疲労)などのために、ヘッドユニット100を退避位置に移動させても、可動部102が可動範囲の上限位置に復帰しない場合が生じることがあった。この様な不具合が生じても不具合を検知することができないので、測定時に可動部102が検査対象物に接触しないケースが生じ、検出精度が低下するという問題があった。
【0008】
図12は、従来の測長センサーにおける動作例を示した図であり、ヘッドユニット100の可動部102に不具合が生じた場合の検出信号120の様子が示されている。この例では、検査対象物A111(正常ワーク)の測定後に可動部102が可動範囲の上限位置に復帰しない不具合が発生し、次の検査対象物A112(不良ワーク)の測定では、不良ワークであるにもかかわらず正常ワークであることを示す検出信号(信号レベルがハイ状態のまま)の出力状態A120となっている。すなわち、正常ワークの測定後に不具合が生じると、この正常ワークよりも低い高さの不良ワークを次に測定する際には、可動部102の先端が不良ワークに接触しないこととなるので、当該不良ワークの高さを正しく検出することができなかった。
【0009】
測定時には、可動部がエアーポンプから供給されるエアーによって可動範囲の上限位置に移動され、非測定時には、エアー供給を停止することによって可動範囲の下限位置に移動されるエアー駆動方式の変位検出装置がある。この様な変位検出装置では、エアー抜けが良くないなどの不具合が生じると、非測定時に可動部が下限位置に復帰せず、検査対象物を取り替える際に可動部が検査対象物に衝突してしまうという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した通り、従来の変位検出装置では、ヘッドユニットを退避位置に移動させた際に可動部が可動範囲の上限位置に復帰しない不具合が生じても、この不具合を検知することができないので、測定時に可動部が検査対象物に接触しない場合が生じ、検出精度が低下するという問題があった。また、エアー抜けが良くないなどの不具合が生じても検知することができないので、非測定時に可動部を下限位置に復帰させることができず、検査対象物を取り替える際に可動部が検査対象物に衝突するという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、測定期間中に得られた可動部の変位量に基づいて検出信号を生成する際の検出精度を向上させた変位検出装置を提供することを目的とする。特に、ヘッドユニットを退避位置に移動させても可動部が復帰しない不具合が生じた場合に、その不具合を検知することができる変位検出装置を提供することを目的とする。また、エアー抜けが良くないなどのために非測定時に可動部が復帰しない不具合が生じた場合に、その不具合を検知することができる変位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の本発明による変位検出装置は、検査対象物に接触させた可動部の変位量を測定期間中に測定し、上記検査対象物が非測定期間中に交換される変位検出装置であって、上記可動部を挿抜可能に保持するホルダーと、上記可動部を上記検査対象物側へ付勢する付勢手段と、上記ホルダーに対する上記可動部の変位量を検出する変位量検出手段と、上記測定期間中に得られた上記変位量の検出値に基づいて、検出信号を生成する検出信号生成手段と、上記変位量の検出値を閾値と比較し、上記非測定期間中に上記可動部の変位量が上記閾値を越えて変化しなかった場合に、エラー信号を出力するエラー信号出力手段とを備えて構成される。
【0013】
この変位検出装置では、測定期間中に得られた変位量の検出値に基づいて検出信号が生成され、非測定期間中に可動部の変位量が閾値を越えて変化しなかった場合には、エラー信号が出力される。この様な構成により、検査対象物が交換される非測定期間中に可動部の変位量が閾値を越えて変化しなければエラー信号が出力されるので、ユーザは、このエラー信号に基づいて非測定期間中に生じた可動部の不具合を検知することができる。ここで、エラー信号は、非測定時における可動部の待機位置に応じて、可動部の変位量が閾値を検査対象物側に越えて変化しなければ出力される場合と、検査対象物とは反対側に越えて変化しなければ出力される場合とがあるものとする。
【0014】
第2の本発明による変位検出装置は、上記構成に加え、上記検査対象物側について上記可動部の可動範囲を制限するストッパーを備え、上記エラー信号出力手段が、上記可動部の変位量が上記閾値を上記検査対象物側に越えて変化しなかった場合に、上記エラー信号を出力するように構成される。この様な構成によれば、可動部の変位量が閾値を検査対象物側に越えて変化しなければエラー信号が出力されるので、ヘッドユニットを退避位置に移動させても可動部が可動範囲の上限位置に復帰しない不具合を検知することができる。
【0015】
第3の本発明による変位検出装置は、上記構成に加え、上記ホルダーに対して上記可動部の挿抜方向に移動可能に設けられ、上記検査対象物側について上記可動部の可動範囲を制限するストッパーと、上記ストッパーを駆動し、測定時には上記検査対象物側にストッパーを移動させ、非測定時には上記検査対象物とは反対側にストッパーを移動させるストッパー駆動手段とを備え、上記エラー信号出力手段が、上記可動部の変位量が上記閾値を上記検査対象物とは反対側に越えて変化しなかった場合に、上記エラー信号を出力するように構成される。この様な構成によれば、可動部の変位量が閾値を検査対象物とは反対側に越えて変化しなければエラー信号が出力されるので、エアー抜けが良くないなどのために可動部が可動範囲の下限位置に復帰しない不具合を検知することができる。
【0016】
第4の本発明による変位検出装置は、上記構成に加え、外部機器からタイミング信号が入力される信号入力手段を備え、上記測定期間が上記タイミング信号に基づいて決定されるように構成される。
【0017】
第5の本発明による変位検出装置は、上記構成に加え、上記変位量検出手段が、上記ホルダーに設けられたコイルと、上記コイルに交流電流を供給する駆動回路と、上記コイルの出力に基づいて上記可動部の変位量を算出する変位量算出回路とからなるように構成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明による変位検出装置によれば、検査対象物が交換される非測定期間中に可動部の変位量が閾値を越えて変化しなければエラー信号が出力されるので、ユーザは、このエラー信号に基づいて非測定期間中に生じた可動部の不具合を検知することができる。特に、可動部の変位量が閾値を検査対象物側に越えて変化しなければエラー信号が出力されるので、ヘッドユニットを退避位置に移動させても可動部が可動範囲の上限位置に復帰しない不具合を検知することができる。また、可動部の変位量が閾値を検査対象物とは反対側に越えて変化しなければエラー信号が出力されるので、エアー抜けが良くないなどのために可動部が可動範囲の下限位置に復帰しない不具合を検知することができる。従って、測定期間中に得られた変位量の検出値に基づいて検出信号を生成する際の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による変位検出装置の概略構成の一例を示した図であり、変位検出装置の一例として測長センサー10が示されている。この測長センサー10は、ヘッドユニット20、接続ケーブル30及び制御ユニット40からなり、ヘッドユニット20の可動部21を検査対象物に接触させて表面形状の検出を行っている。
【0020】
ヘッドユニット20は、検査対象物に接触させる接触子が先端に設けられた棒状の可動部21と、この可動部21を挿抜可能に保持するホルダーからなり、コイルのインダクタンスの変化を利用してホルダーに対する可動部21の変位量に応じた検出信号を生成する計測ユニットである。ここでは、ヘッドユニット20が製造ライン上に配置され、ベルトコンベアA2により搬送されるワークA1を検査対象物として表面形状の検出が行われるものとする。
【0021】
制御ユニット40は、駆動回路41及び演算回路42からなり、接続ケーブル30を介してヘッドユニット20に接続される。駆動回路41は、ヘッドユニット20のホルダー筐体内に設けられる1次コイルに交流電流を供給する電力供給手段である。具体的には、所定の周波数(例えば、20kHz)の正弦波信号が1次コイルの駆動用信号として供給される。
【0022】
演算回路42は、1次コイル及び2次コイルの各出力に基づいて可動部21の変位量を検出し、検出信号を生成する処理を行っている。具体的には、PLC(Programmable Logic Controller:プラグラマブルロジックコントローラ)などの外部機器から入力されるタイミング信号に基づいて演算処理が行われ、変位量の検出値に応じた検出信号が出力される。タイミング信号は、変位量の検出値に基づいて検出信号を生成する処理の開始及び終了を指示するための制御信号である。
【0023】
ここでは、検査対象物に接触させた可動部21の変位量が測定期間中に測定され、得られた変位量の検出値に基づいて検出信号が生成されるものとする。また、検査対象物は、非測定期間中に交換されるものとする。すなわち、非測定期間中に、ヘッドユニット20を所定位置から退避位置まで移動させ、ヘッドユニット20が退避位置にある状態で検査対象物が取り替えられる。そして、取り替え後の新たな検査対象物を次の測定対象とすべくヘッドユニット20が退避位置から所定位置まで移動される。
【0024】
図2は、図1の測長センサー10におけるヘッドユニット20の構成例を示した外観図であり、可動部21及びホルダー25からなるヘッドユニット20の詳細が示されている。可動部21は、一端にコアが形成され、他端にコンタクト部22を有するロッド部23と、一端がホルダー25に取り付けられ、他端がロッド部23に取り付けられたダストブーツ24からなる。ダストブーツ24は、塵埃などがホルダー25内に入るのを防ぐためのカバーであり、軸方向に伸縮可能な蛇腹状の樹脂部材からなる。
【0025】
ホルダー25は、直方体形状の筐体からなり、回路基板26を内蔵している。ホルダー25の長手方向の一方の端面に可動部21が配置され、他方の端面に接続ケーブル30が配置されている。ここでは、可動部21が、軸方向をホルダー25に対する挿抜方向とし、さらに、軸方向をホルダー25の長手方向に一致させて配置されているものとする。
【0026】
回路基板26は、可動部21の変位量を検出するための回路が設けられたプリント基板であり、1次コイルの制御回路、増幅回路、個体バラツキに関するデータを記憶する不揮発性の半導体メモリ、動作状態を示すインジケータの制御回路などが形成されている。個体バラツキに関するデータとは、演算回路42が1次コイル及び2次コイルの各出力に基づいて可動部21の変位量を求める際に、ヘッドユニット20の個体バラツキによって生じる誤差をデジタル処理にて補正させるためのデータである。
【0027】
図3は、図2のヘッドユニット20内部の構成例を示した断面図であり、B−B線による切断面の様子が示されている。このヘッドユニット20のコンタクト部22は、交換可能な接触子となっており、例えば、金属球22aと、金属球22aの保持部22bからなる。保持部22bは、ロッド部23の端面に設けられた係合孔に係止され、測定時には、金属球22aを検査対象物に押し付けた状態で変位量の検出が行われる。
【0028】
ホルダー25内には、円筒状のボールケージ27a、スプリング28、1次コイル及び2次コイル53が形成されたボビン52、円筒状の金属シールド54が配置されている。また、ホルダー25の可動部21とは反対側の端面には、封止部材29が設けられている。
【0029】
ボールケージ27aは、多数の金属ボール27bが周面に配置された軸受けであり、ロッド部23のブレを防止するとともに、ロッド部23が軸方向に移動する際のロッド部23及びホルダー25間の摩擦抵抗を低減させている。
【0030】
スプリング28は、ロッド部23をホルダー25に対して軸方向に付勢するためのコイル状のばねである。このスプリング28は、可動部21を検査対象物側へ付勢する付勢手段であり、ここでは、可動部21がホルダー25から引き出される向き、すなわち、ロッド部23をホルダー25内から押し出す向きに付勢している。
【0031】
スプリング28は、ロッド部23と同軸に配置されており、ロッド部23端部に取り付けられているスプリング受け23aに一端が当接している。ストッパー25aは、ロッド部23に対して挿抜方向の可動範囲を制限するための係止部材であり、ホルダー25内に形成されている。このストッパー25aは、検査対象物側について可動部21の可動範囲を制限し、スプリング受け23aがストッパー25aに当接することにより、可動部21の抜け落ちを防止している。
【0032】
コア51は、1次コイル及び2次コイル53の共通の磁心であり、細長いパイプ状に加工された磁性体からなる。このコア51は、中心軸をロッド部23の中心軸に一致させて配置されている。
【0033】
ボビン52は、コイルを構成する線材を巻き付ける巻き線の保持手段であり、PPS(ポリフェニレンサルファイド)などの樹脂部材からなる。2次コイルとは、1次コイルと電磁結合させるコイルのことであり、1次コイルと同軸に形成されている。
【0034】
ボビン52には、コア51を挿抜可能に係合させるための係合孔(ここでは、貫通孔となっている)が形成されており、一端側からコア51が挿入される。
【0035】
金属シールド54は、磁気を遮断するためのコイルカバーであり、ボビン52の巻き線形成領域を取り囲むように配置される。例えば、SUS(Stainless Used Steel:ステンレス鋼)が金属シールド55を構成する部材として用いられる。この金属シールド55により、各コイル53及び54を流れる電流によって生じる磁界の漏出を抑制することができるとともに、金属シールド55外の金属部材による上記磁界への影響を抑制することができる。
【0036】
ボビン52は、ホルダー25内に固定されており、可動部21がホルダー25に押し込まれた際、スプリング受け23aがボビン52の端面に当接することにより、ホルダー25に対するロッド部23の移動が止められる。
【0037】
図4は、図1の測長センサー10の要部における構成例を示したブロック図であり、演算回路42内の機能構成の一例が示されている。この演算回路42は、変位量算出回路1、検出信号生成部2、エラー処理部3、信号入力部4及び信号出力部5からなる。変位量算出回路1は、1次コイル及び2次コイル53の各出力に基づいて、ホルダー25に対する可動部21の変位量を算出する動作を行っている。
【0038】
ここでは、挿抜方向に関する可動部21の位置と、基準位置との差分が変位量の検出値として算出されるものとする。基準位置としては、例えば、外部機器からのトリガ信号が指定し、或いは、ユーザが指定するタイミングで得られた可動部21の位置が予め定められる。
【0039】
信号入力部4は、外部機器からタイミング信号が入力されるインターフェースである。検出信号生成部2は、測定期間中に得られた変位量の検出値に基づいて、検出信号を生成する処理を行っている。測定期間は、タイミング信号に基づいて決定され、測定終了から次の測定開始までの期間が非測定期間となる。
【0040】
ここでは、タイミング信号によって測定開始及び測定終了がいずれも指示されるものとする。検出信号としては、例えば、変位量の検出値が許容範囲内にあるか否かに応じて信号レベルの異なる信号や、検出値が許容範囲を越えていることを示す信号が生成される。ここでいう許容範囲とは、検査対象物などに応じてユーザが予め指定する範囲のことであり、通常、2つの閾値(上限値及び下限値)によって指定される。
【0041】
エラー処理部3は、変位量算出回路1による変位量の検出値を閾値と比較し、その比較結果に基づいてエラー信号を出力させる動作を行っている。具体的には、非測定期間中に可動部21の変位量が閾値を越えて変化しなかった場合に、エラー信号が出力される。
【0042】
ここでは、可動部21がホルダー25から最大限引き出された状態を待機状態と呼ぶことにし、この待機状態では、可動部21が挿抜方向に関する可動範囲の上限位置にあるものとする。エラー判定のための上記閾値は、この様な可動部21の可動範囲内に予め定められる。例えば、可動部21の変位量における許容範囲の上限値よりも大きな値が閾値として定められる。
【0043】
変位量の測定は、通常、可動部21がホルダー25内に押し込まれた状態で行われることから、この様な状態から待機状態に遷移する際には、変位量の検出値は必ず閾値を検査対象物側、すなわち、可動部21の可動範囲の上限位置側に越えて変化することとなる。エラー処理部3は、このことを利用して、非測定期間内に可動部21が待機状態に復帰しないという不具合の発生の検出を行っている。例えば、非測定期間中、変位量の検出値を繰り返しチェックし、検出値が閾値を1回でも越えれば、判定用フラグを有効化する。次の測定期間の開始時には、この判定用フラグを参照することにより、非測定期間中に検出値が閾値を越えたか否かを判別することができ、不具合の発生を検出することができる。
【0044】
信号出力部5は、検出信号生成部2により生成された検出信号を外部機器へ出力するとともに、エラー処理部3による制御に基づいてエラー信号を出力するインターフェースである。ここでは、可動部21に上述した不具合が発生すると、通常の検出信号とは異なる検出信号がエラー信号として出力されるものとする。
【0045】
図5は、図1の測長センサー10における動作の一例を示したタイミングチャートであり、非測定期間T1中にヘッドユニット20の可動部21に不具合が生じた場合の検出信号C21〜C23の様子が示されている。この例では、検査対象物A11(正常ワーク)の測定後に可動部21が待機状態に復帰しない不具合が発生し、次の検査対象物A12の測定時に、不具合の発生を示すエラー信号の出力状態C30となっている。
【0046】
ここでは、タイミング信号C11における信号レベルの切り替わりに基づいて検出信号C21〜C23を生成する処理が行われている。具体的には、タイミング信号C11の立ち下がりから次の立ち上がりまでの期間(タイミング信号のオフ状態)が測定期間T2であり、タイミング信号C11の立ち上がりから次の立ち下がりまでの期間(タイミング信号のオン状態)が非測定期間T1となっている。
【0047】
検出信号C21は、変位量の検出値が許容範囲の上限値を上回っているか否かに応じて電圧レベルを異ならせて生成される信号である。検出信号C22は、変位量の検出値が許容範囲内にあるか否かに応じて電圧レベルを異ならせて生成される信号である。検出信号C23は、変位量の検出値が許容範囲の下限値を下回っているか否かに応じて電圧レベルを異ならせて生成される信号である。
【0048】
最初の測定(1回目の測定)では、変位量の検出値が許容範囲内にあり、検査対象物A11は、表面形状が所定の範囲内にあるもの(正常ワーク)とみなされる。このとき、検出信号C22は、タイミング信号C11の立ち下がりに同期して、信号レベルがロー状態からハイ状態に切り替えられ、次の測定時まで保持される。
【0049】
次の測定(2回目の測定)時には、1回目の測定後に生じた不具合が変位量の検出値に基づいて検知され、検出信号C22が、タイミング信号C11の立ち下がりに同期して、信号レベルがハイ状態からロー状態に切り替えられる。また、検出信号C21及びC23についても、タイミング信号C11の立ち下がりに同期して、いずれも信号レベルがロー状態からハイ状態に切り替えられ、エラー信号の出力状態C30となる。ユーザは、この様な検出信号C21及びC23の信号レベルに基づいて、不具合の発生を検知することができる。
【0050】
図6のステップS101〜S110は、図4の演算回路42における動作の一例を示したフローチャートである。まず、エラー処理部3は、非測定期間の初めに不具合発生の判定用フラグを初期化し、変位量の検出値が閾値を越えているか否かを判別する(ステップS101,S102)。このとき、検出値が閾値を越えていれば、判定用フラグを有効化し(ステップS103)、タイミング信号がオン状態からオフ状態となるまで待機する(ステップS104)。一方、変位量の検出値が閾値を越えていなければ、タイミング信号がオン状態からオフ状態となるまで繰り返し検出値をチェックする(ステップS106)。
【0051】
次に、エラー処理部3は、タイミング信号がオン状態からオフ状態となると、判定用フラグを参照し、この判定用フラグが有効化されているか否かを判別する(ステップS105)。このとき、判定用フラグが有効化されていなければ、不具合が発生したものとみなされ、エラー信号が出力される。一方、判定用フラグが有効化されていれば、測定が開始され、検出信号が生成される(ステップS107,S108)。次に、検出信号生成部2は、タイミング信号がオフ状態からオン状態となるまで検出信号を生成し(ステップS109)、タイミング信号がオン状態となると、今回の測定を終了する(ステップS110)。
【0052】
本実施の形態によれば、非測定期間中に可動部21の変位量が閾値を越えて変化しなかった場合に、エラー信号が出力されるので、ユーザは、このエラー信号に基づいて非測定期間中に生じた可動部21の不具合を検知することができる。特に、可動部21の変位量が閾値を検査対象物側に越えて変化しなければエラー信号が出力されるので、ヘッドユニット20を退避位置に移動させても可動部21が待機状態に復帰しない不具合の発生を検知することができる。
【0053】
実施の形態2.
実施の形態1では、非測定期間中に変位量の検出値が閾値を検査対象物側に越えて変化したか否かで不具合の発生が検出される場合の例について説明した。これに対し、本実施の形態では、非測定期間中に変位量の検出値が閾値を検査対象物とは反対側に越えて変化したか否かに基づいて不具合の発生を検出する場合について説明する。
【0054】
図7は、本発明の実施の形態2による変位検出装置の要部における構成例を示した断面図であり、ホルダー61に設けられたストッパー72をエアー駆動させるヘッドユニット60が示されている。このヘッドユニット60は、ホルダー61、可動部62及びスプリング63からなり、ホルダー61には、シリンダー部71、ストッパー72、スプリング73及びエアー供給管74が設けられている。
【0055】
ストッパー72は、ホルダー61に対して可動部62の挿抜方向に移動可能に設けられ、検査対象物側について可動部62の可動範囲を制限するための係止部材である。スプリング73は、スプリング63の付勢方向とは反対方向にストッパー72を付勢する付勢手段であり、その一端はストッパー72に取り付けられ、他端はシリンダー部71に取り付けられている。
【0056】
シリンダー部71は、エアー供給管74を介してエアーポンプから供給されるエアー(空気)の圧力によってストッパー72をスプリング63の付勢方向に移動させるための部材である。ここでは、エアーが供給されていない状態を待機状態と呼ぶことにする。この待機状態では、ストッパー72が移動可能な範囲の下限位置にあり、可動部62はホルダー61内に押し込まれた状態となっている。
【0057】
スプリング73が収縮しようとしてストッパー72に及ぼす弾性力は、スプリング63が伸張しようとして可動部62に及ぼす弾性力よりも大きいものとする。従って、可動部62の係合部62aと係合する係合部72aを有するストッパー72が下限位置に移動することにより、可動部62がホルダー61内に押し込まれる。
【0058】
エアー供給管74を介してシリンダー部71内にエアーを供給すると、エアーの圧力によってストッパー72は、移動可能な範囲の上限位置に移動される。シリンダー部71内に供給されるエアーの圧力は、スプリング73が収縮しようとしてストッパー72に及ぼす弾性力よりも大きいものとする。ここでは、ストッパー72が上限位置にあり、可動部62がホルダー61から最大限引き出された状態を準備状態と呼ぶことにする。つまり、エアーポンプ及びスプリング73は、測定時には検査対象物側にストッパー72を移動させ、非測定時には検査対象物とは反対側にストッパー72を移動させるストッパー駆動手段となっている。
【0059】
図8(a)及び(b)は、図7のヘッドユニット60における動作の一例を示した図である。図8(a)には、準備状態にあるヘッドユニット60の様子が示され、図8(b)には、測定時におけるヘッドユニット60の様子が示されている。準備状態では、スプリング63が伸張しようとして可動部62に及ぼす弾性力によって、可動部62は可動範囲の上限位置に移動する。
【0060】
測定時には、ワークA1からの効力によって可動部62がホルダー61内に押し込まれ、ストッパー72及び可動部62間の係合が外れた状態となる。
【0061】
この様な変位検出装置では、エラー判定のための閾値が、例えば、可動部62の変位量における許容範囲の下限値よりも小さな値として定められる。変位量の測定は、通常、可動部62が待機時における位置よりも検査対象物側に引き出された状態で行われることから、この様な状態から待機状態に遷移する際には、変位量の検出値は必ず閾値を検査対象物とは反対側に越えて変化することとなる。このことを利用して、非測定期間内にエアー抜けが良くないなどの不具合が発生したか否かが検出される。
【0062】
図9は、実施の形態2による変位検出装置における動作の一例を示した図であり、タイミング信号C41に基づいて行われる測定の様子が示されている。この例では、タイミング信号C41の立ち下がりに同期して測定が終了され、次の立ち上がりまでの期間(タイミング信号のオフ状態)、ワークA21について測定された検出信号が出力される。この期間は、バルブを介してシリンダー部71内のエアーを排出させる期間となっており、この期間内にヘッドユニット60は待機状態に移行する。
【0063】
タイミング信号C41の立ち上がりから次の立ち下がりまでの期間は、検査対象物を取り替えて新たなワークA22について測定を行うための期間である。ここでは、タイミング信号C41の立ち上がりから所定時間経過すると、測定が開始されるものとする。
【0064】
図10は、実施の形態2による変位検出装置における動作の一例を示した図であり、ヘッドユニット60の可動部62に不具合が生じた場合の様子が示されている。この例では、ワークA21の測定後に可動部62が待機状態に復帰しない不具合が発生し、タイミング信号C41の立ち上がりに同期してエラー信号が出力されている。
【0065】
エアー駆動方式の変位検出装置では、エアー抜けの不良や、スプリング73のへたり(疲労)などのために、ストッパー72が下限位置まで移動せず、可動部62が待機状態に復帰しないという不具合が生じることがある。この様な不具合が生じた状態で検査対象物を取り替えようとすると、可動部62が検査対象物と衝突し、ヘッドユニット60や検査対象物を破損してしまうこととなる。
【0066】
本実施の形態では、可動部62の変位量が閾値を検査対象物とは反対側に越えて変化しなければエラー信号が出力されるので、エアー抜けが良くないなどのために可動部62が待機状態に復帰しない不具合の発生を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1による変位検出装置の概略構成の一例を示した図であり、変位検出装置の一例として測長センサー10が示されている。
【図2】図1の測長センサー10におけるヘッドユニット20の構成例を示した外観図であり、ヘッドユニット20の詳細が示されている。
【図3】図2のヘッドユニット20内部の構成例を示した断面図であり、B−B線による切断面の様子が示されている。
【図4】図1の測長センサー10の要部における構成例を示したブロック図であり、演算回路42内の機能構成の一例が示されている。
【図5】図1の測長センサー10における動作の一例を示したタイミングチャートであり、不具合が生じた場合の検出信号C21〜C23の様子が示されている。
【図6】図4の演算回路42における動作の一例を示したフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態2による変位検出装置の要部における構成例を示した断面図であり、ストッパー72をエアー駆動させるヘッドユニット60が示されている。
【図8】図7のヘッドユニット60における動作の一例を示した図である。
【図9】実施の形態2による変位検出装置における動作の一例を示した図であり、タイミング信号C41に基づいて行われる測定の様子が示されている。
【図10】実施の形態2による変位検出装置における動作の一例を示した図であり、ヘッドユニット60の可動部62に不具合が生じた場合の様子が示されている。
【図11】測長センサーにおける動作例を示した図であり、外部機器から入力されたタイミング信号110に基づいて出力される検出信号120の様子が示されている。
【図12】従来の測長センサーにおける動作例を示した図であり、ヘッドユニット100の可動部102に不具合が生じた場合の検出信号120の様子が示されている。
【符号の説明】
【0068】
1 変位量算出回路
2 検出信号生成部
3 エラー処理部
4 信号入力部
5 信号出力部
10 測長センサー
20 ヘッドユニット
21 可動部
22 コンタクト部
22a 金属球
22b 保持部
23 ロッド部
24 ダストブーツ
25 ホルダー
25a ストッパー
26 回路基板
27a ボールケージ
27b 金属ボール
28 スプリング
29 封止部材
30 接続ケーブル
40 制御ユニット
41 駆動回路
42 演算回路
51 コア
52 ボビン
53 1次コイル及び2次コイル
54 金属シールド
60 ヘッドユニット
61 ホルダー
62 可動部
63,73 スプリング
71 シリンダー部
72 ストッパー
74 エアー供給管
A1 ワーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物に接触させた可動部の変位量を測定期間中に測定し、上記検査対象物が非測定期間中に交換される変位検出装置において、
上記可動部を挿抜可能に保持するホルダーと、
上記可動部を上記検査対象物側へ付勢する付勢手段と、
上記ホルダーに対する上記可動部の変位量を検出する変位量検出手段と、
上記測定期間中に得られた上記変位量の検出値に基づいて、検出信号を生成する検出信号生成手段と、
上記変位量の検出値を閾値と比較し、上記非測定期間中に上記可動部の変位量が上記閾値を越えて変化しなかった場合に、エラー信号を出力するエラー信号出力手段とを備えたことを特徴とする変位検出装置。
【請求項2】
上記検査対象物側について上記可動部の可動範囲を制限するストッパーを備え、
上記エラー信号出力手段は、上記可動部の変位量が上記閾値を上記検査対象物側に越えて変化しなかった場合に、上記エラー信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の変位検出装置。
【請求項3】
上記ホルダーに対して上記可動部の挿抜方向に移動可能に設けられ、上記検査対象物側について上記可動部の可動範囲を制限するストッパーと、
上記ストッパーを駆動し、測定時には上記検査対象物側にストッパーを移動させ、非測定時には上記検査対象物とは反対側にストッパーを移動させるストッパー駆動手段とを備え、
上記エラー信号出力手段は、上記可動部の変位量が上記閾値を上記検査対象物とは反対側に越えて変化しなかった場合に、上記エラー信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の変位検出装置。
【請求項4】
外部機器からタイミング信号が入力される信号入力手段を備え、
上記測定期間が上記タイミング信号に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の変位検出装置。
【請求項5】
上記変位量検出手段が、上記ホルダーに設けられたコイルと、上記コイルに交流電流を供給する駆動回路と、上記コイルの出力に基づいて上記可動部の変位量を算出する変位量算出回路とからなることを特徴とする請求項1に記載の変位検出装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−240225(P2007−240225A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60458(P2006−60458)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】