説明

変性ゼオライト含有触媒の調製方法および軽質オレフィン類のオリゴマー化におけるそれの使用

【課題】先行技術より優れた変性ゼオライト含有触媒の調製方法を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも1種の変性ゼオライトを含有する触媒の調製方法であって、該ゼオライトは、変性される前には7Å以下の最大細孔開口直径を呈するものであり、該方法は、少なくとも下記の工程を包含する:a)元素周期表第VIBおよびVIII族の金属類のうちから選ばれた少なくとも1種の金属を少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする担体の表面に導入する工程、b)該ゼオライトを、珪素原子を少なくとも1個含有する少なくとも1種の分子化合物の存在下に処理する工程であって、該化合物は、該ゼオライトの細孔の最大開口直径よりも大きい直径をもち、該ゼオライトの外表面上に気相から析出させる工程、c)少なくとも1つの熱処理工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素類の種々の化学転化方法に使用するのに有利な触媒を得るための、ミクロ細孔および/または中間細孔(すなわち最大細孔開口直径が7Å以下の細孔)を有する、変性ゼオライトを主成分とした触媒の調製方法に関する。とりわけ、本発明は、軽質オレフィン系原料のオリゴマー化方法における該変性ゼオライト含有触媒の使用に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトZSM−5などの形態の選択性をもつゼオライトをオレフィン類のオリゴマー化反応に用いることは古くから知られている。1980年代に開発され、とりわけ特許文献1および特許文献2に記載されているモービル社のオレフィン類オリゴマー化方法は、ブテン類をオリゴマー類に転化させるために、ZSM−5タイプのゼオライトを使用する。得られた生成物は、きわめて低い枝分れ度をもち、良質のジェット燃料およびディーゼル燃料の溜分となる。この方法は、ディーゼル溜分(200℃〜360℃でのオリゴマー化物の溜出後に得られる溜分)の収率がきわめて低いので、主としてジェット燃料の製出に用いられる。
【0003】
すでに、いくつもの特許がゼオライト類を変性する方法について述べている。とくに、特許文献3は、ゼオライトの細孔の内部に少なくとも0.3重量%の無定形シリカを水相から析出させる工程を包含するゼオライト基触媒の調製方法を記述している。特許文献4は、ゼオライト骨格中に存在するアルミニウム原子を珪素原子によって置換する方法を記述しており、該方法は、フルオロ珪酸塩類を用いて、水性媒質中で実施される。特許文献5は、有機珪素物質を気相または液相中で析出させる工程を包含するゼオライト系触媒の調製法を記述しており、対象とするゼオライト類は、マクロ細孔のゼオライト類、とくにゼオライトYである。
【0004】
特許文献6は、Si/Al比が12を超え、制約指数(CI:Constraint Index)が1〜12であるゼオライトを含有し、ゼオライトの重量に対して少なくとも0.1重量%のシリカが添加されている触媒を使用するプロピレンオリゴマー化方法を記述している。この特許文献6において得ようとされている触媒は、出発材料よりも1%少ないn−ヘキサンの吸着を示す。
【特許文献1】米国特許第4,150,062号明細書
【特許文献2】米国特許第4,227,992号明細書
【特許文献3】米国特許第4,402,867号明細書
【特許文献4】米国特許第4,996,034号明細書
【特許文献5】米国特許第4,451,572号明細書
【特許文献6】米国特許第5,057,640号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記先行技術より優れた変性ゼオライト含有触媒の調製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1種の変性ゼオライトを含有する触媒の調製方法に関するものであり、該ゼオライトは、変性される前には7Å以下の最大細孔開口直径を呈するものであり、該方法は、少なくとも下記の工程を包含する:
a)元素周期表第VIBおよびVIII族の金属類のうちから選ばれた少なくとも1種の金属を少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする担体の表面に導入する工程、
b)該ゼオライトを、珪素原子を少なくとも1個含有し、該ゼオライトの細孔の最大開口直径よりも大きい直径をもち、該ゼオライトの外表面上に気相から析出(気相蒸着)させた少なくとも1種の分子化合物の存在下に処理する工程、
c)少なくとも1つの熱処理工程。
【0007】
当該ゼオライトは、好ましくは、構造タイプMEL、MFI、ITH、NES、EUO、ERI、FER、CHA、MFS、MWW、MTT、TONおよびMORのゼオライト類のうちから選ばれる。
【0008】
本発明は、また、1分子当り2〜12個の炭素原子をもつ炭化水素分子を含有するオレフィン系原料のオリゴマー化方法における前記触媒の使用に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
驚くべきことに、少なくともa)元素周期表第VIBおよびVIII族の金属類のうちから選ばれた少なくとも1種の金属を少なくとも1種のプロトン化(プロトン型)ゼオライトを主成分とする担体の表面に導入する工程、b)該ゼオライトを、珪素原子を少なくとも1個含有し、該ゼオライトの細孔の最大開口直径よりも大きい直径をもつ少なくとも1種の分子化合物の存在下に処理する工程、c)少なくとも1つの熱処理工程を包含する方法に従って調製された変性ゼオライト含有触媒が、とりわけ、1分子当り2〜12個、好ましくは1分子当り3〜7個、とくに好ましくは1分子当り4〜6個の炭素原子を有する炭化水素分子を含有するオレフィン系原料のオリゴマー化反応におけるディーゼル溜分の収率および選択性の上で、改善された触媒性能を発揮するに至ることが見出された。
【0010】
とりわけ、かかる触媒は、技術水準に属する触媒を用いて得られるところと比較して、ディーゼル溜分の歩留りを顕著に上昇させることができる。ディーゼル溜分中に存在する炭化水素鎖の直線性を表わし、該ディーゼル溜分の品質を示すセタン価も、この反応において得られるディーゼル溜分が通常示すものと比較して、有利に改善される。1分子当り2〜12個、好ましくは1分子当り3〜7個、とくに好ましくは1分子当り4〜6個の炭素原子を有する炭化水素分子を含有するオレフィン系原料のオリゴマー化方法において上記のごとき触媒を使用することにより、適合した分溜点で蒸留後に製油所のディーゼル燃料プールに統合できて有利なきわめて良質のオリゴマー化物の製造が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の対象は、少なくとも1種の変性ゼオライトを含有する触媒の調製方法であり、該ゼオライトは、変性される前には最大細孔開口直径が7Å以下のものであり、該方法は、少なくとも下記の工程を包含する:
a)元素周期表第VIBおよびVIII族の金属類のうちから選ばれた少なくとも1種の金属を少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする担体の表面に導入する工程、
b)該ゼオライトを、珪素原子を少なくとも1個含有し、該ゼオライトの細孔の最大開口直径よりも大きい直径をもち、該ゼオライトの外表面上に気相から析出(すなわち蒸着)させた少なくとも1種の分子化合物の存在下に処理する工程、
c)少なくとも1つの熱処理工程。
【0012】
本発明に従えば、本発明の方法に従って調製される触媒中に含まれるべき未変性の初期ゼオライトは、7Å以下の、好ましくは6.5Å未満の、最大細孔開口直径を有する。該ゼオライトは、「ゼオライト構造タイプアトラス(Atlas of Zeolite Structure Types)」、W.M.Meier,D.H.OlsonおよびCh.Baeriocher、第5改訂版、2001年、エルゼビア社」の分類中で定義されているゼオライト類のうちから選ばれ、本出願もこれに準拠するが、それらは、7Å以下の最大細孔開口直径を呈するすべてのゼオライトであってよい。「ゼオライト構造タイプアトラス」に登録されているゼオライト類は、そこでは、それらの構造タイプに従って分類されている。7Å以下の、好ましくは6.5Å未満の、最大細孔開口直径を有するすべてのゼオライトが、本発明に従った調製方法の実施に、とりわけ本発明に従った方法の処理工程b)の実施に、適している。本発明によれば、あるゼオライトの最大細孔開口直径は、構造タイプの各々について「ゼオライト構造タイプアトラス」に挙げられている細孔開口の最大直径(「環状寸法」)に対応する。本発明の方法に従って調製される触媒に含まれるべき、最初に、変性されるよりも前に、用いられるゼオライトは、10個の酸素原子を含有する環(10MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路(チャネル)または12個の酸素原子を含有する環(12MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路を、あるいは8個の酸素原子を含有する環(8MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路および10個の酸素原子を含有する環(10MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路を同時に、あるいは8個の酸素原子を含有する環(8MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路および12個の酸素原子を含有する環(12MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路を同時に、あるいは8個の酸素原子を含有する環(8MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路および10個の酸素原子を含有する環(10MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路ならびに12個の酸素原子を含有する環(12MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路を同時に、有していることが有利であり、それらの流路は相互に連結していてもよい。12個の酸素原子を含有する環(12MR)によって規定された開口をもつ流路を少なくとも有するゼオライトは、それが7Å以下の最大細孔開口直径を呈するゆえに、本発明に従った触媒調製方法の実施にとくに適している。とくに、8個の酸素原子を含有する環(8MR)によって規定された開口をもつ1つ以上の流路および12個の酸素原子を含有する環(12MR)によって規定される開口をもつ1つ以上の流路を同時に有している構造タイプMORのゼオライトが、本発明に従った調製方法の実施に適している。構造タイプMORのゼオライト類は、7.0Åという最大細孔開口直径を有している。
【0013】
本発明の方法のそれぞれの工程に従って変性されるゼオライトは、最初には、すなわち変性される前には、少なくとも珪素およびアルミニウムを、Si/Al原子比が好ましくは2〜200、より好ましくは5〜100、さらに好ましくは8〜80となるような割合で含有している。それが、ゼオライト骨格中に四面体形態で組込まれる珪素およびアルミニウム以外の少なくとももう1つの元素Wを含有していることが有利である。該元素Wは、鉄、ゲルマニウム、硼素およびチタンのうちから選ばれ、酸素原子以外のゼオライト骨格構成原子の全体の5〜30%の重量割合を占めていることが好ましい。その時、そのゼオライトは、2〜200、好ましくは5〜100、とくに好ましくは8〜80の(Si+W)Al比を呈し、Wは上に定義した通りである。
【0014】
本発明方法のそれぞれの工程に従って変性されるゼオライトは、構造タイプMEL、MFI、ITH、NES、EUO、ERI、FER、CHA、MFS、MWW、MTT、TONおよびMORのゼオライト類のうちから選ばれることが好ましく、構造タイプMFI、MORおよびFERのゼオライト類のうちから選ばれることがより好ましい。構造タイプMELのゼオライト類のうちでは、ゼオライトZSM−11が好ましい。構造タイプMFIのゼオライト類のうちでは、ゼオライトZSM−5が好ましい。構造タイプITHのゼオライト類のうちでは、ゼオライトITQ−13が好ましい(US6,471,941)。構造タイプNESのゼオライト類のうちでは、ゼオライトNU−87が好ましい。構造タイプEUOのゼオライト類のうちでは、ゼオライトEU−1が好ましい。構造タイプERIのゼオライト類のうちでは、エリオナイトゼオライトが好ましい。構造タイプFERのゼオライト類のうちでは、フェリエライトゼオライトおよびゼオライトZSM−35が好ましい。構造タイプCHAのゼオライト類のうちでは、チャバザイトゼオライトが好ましい。構造タイプMFSのゼオライト類のうちでは、ゼオライトZSM−57が好ましい。構造タイプMWWのゼオライト類のうちでは、ゼオライトMCM−22が好ましい。構造タイプMTTのゼオライト類のうちでは、ゼオライトZSM−23が好ましい。構造タイプTONのゼオライト類のうちでは、ゼオライZSM−22が好ましい。構造タイプMORのゼオライト類のうちでは、モルデナイトゼオライトが好ましい。これらのゼオライト類およびそれらの調製方法は、当業者には周知である。
【0015】
本発明に従えば、本発明の触媒調製方法の最初の工程は、工程a)もしくは工程b)である。工程a)の前または後で実施される工程b)に引続いて直ちに工程c)を行なうことが好ましい。
【0016】
本発明に従った触媒調製方法の最初の工程の実施のために用いられる、すなわち、元素周期表第VIBおよび/またはVIII族の金属の少なくとも1種の存在下に行なわれる工程a)の実施のために、または少なくとも1個の珪素原子を含有し、きわめて一定した直径を有する分子化合物の存在下に行なわれる工程b)の実施のために用いられるゼオライトは、カ焼された形態にあり、少なくとも1個のプロトンを含有していて、プロトン化された(H水素型)形態にあり、H以外のカチオンの含量が総カチオン数の30%未満、好ましくは20%未満、とくに好ましくはゼオライト表面の総カチオン数に対して15%未満である。本発明に従った触媒調製方法の最初の工程(工程a)または工程b))を実施するに先立って、変性すべきゼオライトがそれの調製に用いた有機構造物をなお含有する粗製合成品の形態にある場合には、300〜700℃、好ましくは400〜600℃の温度で該ゼオライトのカ焼を行なえばよく、つぎに、ゼオライトがアルカリ/アルカリ土類金属を1種以上含有している場合には、少なくとも1種のアンモニウム塩、たとえば硝酸アンモニウムNHNOを含有する溶液による1回以上のイオン交換を行なって、ゼオライト中に存在するアルカリ性陽イオンの少なくとも一部、好ましくはほとんど全てを除去する。乾燥空気流下、通常は約400〜500℃の温度でのカ焼工程は、アンモニアの脱着によってゼオライト中でのプロトン生成を惹起させて、ゼオライトを水素型に導き、本発明の調製方法の最初の工程の実施に備えることをも目的としている。
【0017】
本発明の触媒調製方法の最初の工程の実施に用いるゼオライトは、70〜100%、好ましくは80〜100%、とくに好ましくは85〜100%のプロトンH形態の補償陽イオンを含有する酸性ゼオライトであり、残余の陽イオンは好ましくは元素周期表第IAおよびIIA族の金属のうちから選ばれ、とりわけ、該陽イオンはNa、Li、K、Rb、Cs、Ba2+およびCa2+のうちから選ばれる。
【0018】
本発明の触媒調製方法の工程a)は、元素周期表第VIBおよびVIII族の金属のうちから選ばれた少なくとも1種の金属を少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする担体の表面に導入する工程である。元素周期表第VIBおよびVIII族の金属のうちから選ばれた該金属は、ニッケル、鉄、パラジウム、ルテニウムおよびクロムのうちから選ばれたものであることが好ましく、ニッケルおよびクロムのうちから選ばれたものであることがとくに好ましい。第VIII族の金属がニッケルであることがとくに有利である。第VIB族金属のうちでは、クロムが好ましい。本発明に従って触媒を調製するためには、第VIBおよびVIII族金属のうちから選ばれた少なくとも1種の金属の沈積(担持)は、通常、当業者には周知の諸方法に従った乾式含浸、過剰による含浸またはイオン(単数または複数)交換によって、好ましくはイオン交換によって行なわれる。イオン交換によってニッケルを導入する場合には、酸化度+2のニッケル、たとえば硫酸ニッケルを含有する水溶液を用いることが好ましい。ゼオライト担体上に導入される第VIBおよびVIII族のうちから選ばれた金属の重量含量は、本発明方法に従って調製される触媒の重量に対して、有利には0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。本発明方法の工程a)の第一の実施態様に従えば、少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする担体は、細孔の最大開口直径、化学構造および化学組成の点から上記の特性を呈する該プロトン化ゼオライトから全体が構成されたものである。本発明方法の工程a)の第二の実施態様に従えば、少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする担体は、マトリックスおよび場合によっての結合剤とともに成形された該プロトン化ゼオライトからなる。
【0019】
本発明に従った触媒調製方法は、プロトン化された形態にあるゼオライトを選択性付与処理(selectivation)する工程b)を包含し、該選択性付与処理工程は、第VIBおよび/またはVIII族の少なくとも1種の金属を前記工程a)に従って導入する工程の前に、あるいは該工程a)ののちに実施することができる。「選択性付与処理」とは、本発明においては、各々のゼオライト結晶の外表面の酸性を中和することをいう。該酸性の中和は、当業者に既知のあらゆる方法によって行なうことができる。ゼオライト外表面の酸性部位の特異的選択性付与処理を実施するために、慣用的方法は、通常、ゼオライトの細孔の開口直径より大きい動力学的直径をもつ分子を用いる。より明確に言えば、選択性付与処理工程b)は、プロトン化された形態にあり、場合により前もって前記工程a)に付されたゼオライトを、少なくとも1個の珪素原子を含有し、工程b)に従って処理すべきゼオライトの細孔の最大開口直径より大きい直径をもつ分子化合物の存在下に処理することにある。本発明の触媒調製方法は、ただ1回だけの工程b)を包含することが好ましい。
【0020】
ゼオライトの外表面を不動態化または選択性化するために通常用いられる化合物は、ゼオライト結晶の各々の外表面の部位と相互作用しうる原子を含有する化合物である。本発明に従って使用する化合物は、1個以上の珪素原子を含有する有機または無機の分子である。従って、本発明方法の処理工程b)に従えば、場合により前もって前記工程a)に付されたプロトン化ゼオライトを、少なくとも1個の珪素原子を含有する少なくとも1種の分子化合物の存在下で処理する工程に付す。該工程b)は、少なくとも1個の珪素原子を含有する該分子化合物の層をゼオライトの外表面に沈積(蒸着)することを可能ならしめ、それは、工程c)ののちには、ゼオライト結晶の各々の外表面に無定形シリカの層に変化している。少なくとも1個の珪素原子を含有する分子化合物は、式Si−RおよびSi−Rの化合物類のうちから選択することが好ましく、式中のRは、水素、アルキル、アリールまたはアシル基、アルコキシ基(O−R’)、ヒドロキシル基(−OH)あるいはハロゲン、好ましくはアルコキシ基(O−R’)であることができる。同一のSi−RまたはSi−R分子中で、Rは同一であっても異なっていてもよい。たとえば、上記の式に従って、式SiまたはSi(C(CH)の分子化合物を選択することができる。このように、本発明方法の工程b)で用いる少なくとも1個の珪素原子を含有する分子化合物は、シラン、ジシラン、アルキルシラン、アルコキシシランまたはシロキサンタイプの化合物であってよい。前記分子化合物が、一般式Si−(OR’)の組成をもっていることがとくに好ましく、式中のR’は、アルキル、アリールまたはアシル基、好ましくはエチル基である。本発明方法の工程b)の実施に用いる該分子化合物は、ゼオライトの細孔の最大開口直径より大きい直径を有し、好ましくは1分子当り2個以上の珪素原子を含有する。9.6Åに等しい直径を有する式Si(OCHCHの分子化合物オルト珪酸テトラエチル(TEOS)が、本発明方法の工程b)の実施にきわめて有利である。とくに、TEOSは、最大細孔開口直径が7Åの構造タイプMORのゼオライト、最大細孔開口直径が5.6Åの構造タイプMFIのゼオライトまたは最大細孔開口直径が5.4Åの構造タイプFERのゼオライトを処理する場合に有利である。
【0021】
場合により前もって工程a)に付されたプロトン化ゼオライトを少なくとも1個の珪素原子を含有する分子化合物の存在下に処理することにある本発明の該工程b)は、該化合物をゼオライトの外表面に蒸着させることによって実現される。本発明に従えば、該工程b)は、少なくとも1個の珪素原子を含有する該分子化合物の気相からの析出を行なうことによって実現される。
【0022】
本発明方法の工程b)は、固定床反応器中で実施する。該固定床反応器中での気相からの析出反応(CVD、化学蒸着)に先立って、ゼオライトを活性化することが好ましい。固定床反応器中でのゼオライトの活性化は、酸素、空気または不活性ガスあるいは空気と不活性ガスまたは酸素と不活性ガスとの混合物のもとで実施する。ゼオライトの活性化温度は、100〜600℃が有利であり、300〜550℃がとくに有利である。ゼオライト結晶の各々の外表面に析出されるべき少なくとも1個の珪素原子を含有する分子化合物は、気相で反応器へ送られ、該分子化合物は、水素(H)、空気、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)あるいは窒素(N)であってよいキャリヤーガスで希釈され、キャリヤーガスは、Ar、HeおよびNのうちから選ばれた不活性ガスであることが好ましい。少なくとも1個の珪素原子を含有する該分子化合物は、いかなる炭化水素化合物も存在しない状態で、気相から該ゼオライトの外表面に析出させられる。ゼオライト外表面に最適品質の無定形シリカ層を得るためには、少なくとも1個の珪素原子を含有する分子化合物を析出させるための操作条件をうまく選択することが必要である。とくに、蒸着の間のゼオライト床の温度は、10〜300℃であることが好ましく、50〜200℃であることがとくに好ましく、ゼオライト外表面に析出されるべき分子化合物の気相中の分圧は、好ましくは0.001〜0.5バール、とくに好ましくは0.01〜0.2バールであり、蒸着時間は、好ましくは10分〜10時間、とくに好ましくは30分〜5時間、さらに好ましくは1〜3時間である。
【0023】
本発明方法の工程c)に従えば、少なくとも1個の珪素原子を含有する分子化合物を、好ましくは200〜700℃、より好ましくは300〜500℃で実施される熱処理によって分解させる。該熱処理工程は、空気、酸素、水素、窒素、アルゴンあるいは窒素とアルゴンとの混合物のもとで行なう。この処理の時間は1〜5時間とするのが有利である。該熱処理が終わると、無定形シリカ層がゼオライト結晶の各々の外表面に担持されている。本発明に従えば、ゼオライト結晶の各々の内表面には、無定形シリカ層の担持がないことが好ましい。本発明方法に従って調製された触媒中に存在する変性ゼオライトの最大細孔開口直径は、未変性初期ゼオライトのそれと比較して変化していないことが好ましい。従って、本発明方法に従って調製された触媒中に含まれている変性ゼオライトは、7Å以下、好ましくは6.5Å未満の最大細孔開口直径を呈していることが好ましい。
【0024】
本発明方法の工程a)の実施のために用いた少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする担体が、マトリックスおよび場合によっての結合剤とともに成形された該プロトン化ゼオライトからなる場合には(工程a)の第二の実施態様)、第VIBおよびVIII族の金属類のうちから選ばれた金属は、ほとんどすべてが該マトリックス上に、あるいは一部がゼオライト上に、一部が該マトリックス上に導入されていてもよく、あるいは、好ましくはほとんどすべてがゼオライト上に導入されていてもよく、これらは、当業者に既知の方法で、たとえば当該金属の前駆体の特性などの当該蒸着時に用いる諸パラメータを適宜選択することによって実現される。
【0025】
本発明方法の工程a)の実施のために用いた少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする担体が、細孔の最大開口直径、構造、化学組成に関する特性が本明細書において上述したところに適合するプロトン化ゼオライトのみから構成されている場合には(工程a)の第一の実施態様)、第VIBおよびVIII族の金属類のうちから選ばれた金属は、好ましくは粉末形態にあるプロトン化ゼオライト上に直接導入される。プロトン化ゼオライトとマトリックスおよび場合によっての結合剤との成形は、工程d)の間に行なわれる。該成形工程d)は、プロトン化ゼオライト表面への金属導入工程a)ののち直ちに、本発明方法の工程b)およびc)に先立って行なわれてもよく、本発明方法の工程a)、b)およびc)ののちに行なわれてもよく、あるいは、本発明方法の工程b)およびc)が工程a)よりも前に実施されるときには、該工程b)およびc)の実施後に該工程a)の前に行なわれてもよい。
【0026】
ゼオライトを主成分とする担体がマトリックスとともに成形された該ゼオライトから構成されている場合の本発明方法の工程a)に先立って行なわれる、またはプロトン化されたゼオライトを主成分とする担体がもっぱら該ゼオライトから構成されている場合の本発明方法の工程d)の間に行なわれるプロトン化ゼオライトの成形に用いられるマトリックスは、酸化物タイプの無定形または十分には結晶化していない多孔性無機マトリックスである。それは、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、クレー類、とりわけカオリン、ベントナイトなどの天然クレー類、マグネシア、酸化チタン、酸化硼素、ジルコニア、燐酸アルミニウム類、燐酸チタン類、燐酸ジルコニウム類および炭素のうちから選ばれる。アルミン酸塩類のうちのマトリックスを選択することもできる。該マトリックスは、当業者に既知のあらゆる形態のアルミナであることが好ましく、ガンマアルミナであることが好ましい。前記ゼオライトの少なくとも1種のマトリックスとの成形は、通常は、触媒が押出し成形された円柱形または多葉形、たとえば直線状またはらせん状の双葉形、三つ葉形、多葉形の形状をとるごときものであるが、場合により、触媒が粉砕された粉末、錠剤、リング、ボール、円盤の形状をとるごときものであってもよい。ゼオライトの成形条件、マトリックスの選択、場合によってのゼオライトの事前の粉砕、ペプチゼーションの方法、発泡剤の添加、混練時間、触媒を押出し成形する場合の押出し圧、乾燥速度および乾燥時間は、各マトリックスについて、当業者に周知の原則・慣例に従って決定される。ゼオライトと上記したごとき少なくとも1種のマトリックスとの成形は、本発明方法の異なる段階で実施できる。より詳しくは、工程a)の間に用いられるゼオライトを主成分とする担体がマトリックスとともに成形された該ゼオライトから構成されているときには、該成形は、本発明方法の工程a)の実施に先立って行なわれる。工程a)の間に用いられる該ゼオライトを主成分とする担体が該ゼオライト単独から構成されている場合には、該成形は、工程a)終了後、工程b)およびc)の実施前に、または、該工程b)およびc)が工程a)に先行するときには該工程b)およびc)の実施後、工程a)の実施前に、あるいは工程a)、b)およびc)の実施後に、行なわれる。
【0027】
たとえば、本発明に従った触媒調製の好ましい方法は、プロトン化ゼオライトを第VIBおよびVIII族の金属類のうちから選ばれた少なくとも1種の金属、好ましくは酸化度+2のニッケルと交換することにある。該イオン交換に続いて、300〜550℃の間の温度でのゼオライト活性化工程を行ない、つぎに、該ゼオライトの外表面に蒸着させたオルト珪酸テトラエチル(TEOS)の存在下に50〜200℃の間の温度でゼオライトを処理する。TEOSは、通常300〜500℃の間の温度で空気下において実施される熱処理によって分解される。かくして、プロトン化された形態で変性され、外表面に無定形シリカの層を有するゼオライトが得られる。該変性ゼオライトを、つぎに、マトリックス、たとえばアルミナの湿潤ゲル(通常少なくとも1種の酸とマトリックス粉末との混合によって得られる)中に、得られるペーストの良好な均質性が得られるのに必要な時間、たとえば約10分間、混練混合し、該ペーストを押出物成形用の、たとえば直径が0.4〜4mm(両限界を含む)、好ましくは0.4〜2.5mm(両限界を含む)、より好ましくは0.8〜2.0mm(両限界を含む)のダイを通過させることによって押出すことにより成形する。かくして成形された押出物を、つぎに、乾燥室中、約120℃で数時間の乾燥ならびにたとえば約400℃で約2時間の最後のカ焼工程に付す。それらの成形物は、通常、10〜90重量%、好ましくは30〜80重量%の該変性ゼオライトからなり、残余はマトリックスからなる。
【0028】
本発明の他の一対象は、本発明の方法に従って調製された変性ゼオライト含有触媒の、炭化水素の化学的転化、とりわけ1分子当り2〜12個の炭素原子を有する炭化水素分子を含有するオレフィン系原料のオリゴマー化方法での使用である。該オリゴマー化方法の実施のために使用する原料は、1分子当り3〜7の炭素原子、とくに好ましくは1分子当り4〜6個の炭素原子を含む炭化水素分子を含んでいることが好ましい。本発明の方法に従って調製された触媒は、別の場所で(ex−citu)前記工程a)、b)およびc)に従って処理されている:それを、本発明の触媒調製方法の前記工程a)、b)およびc)が実施されたのち、1分子当り3〜7個の炭素原子を含有する炭化水素分子のオリゴマー化を実施するための反応器に導入する。本発明に従ったオリゴマー化方法で用いる原料は、20〜100重量%、好ましくは25〜80重量%のオレフィン類を含有する。
【0029】
本発明のオリゴマー化方法において使用するオレフィン系原料として可能な供給源は、流動床クラッキング(流動接触分解、FCC)、水蒸気分解の軽質溜分およびエーテル化プラントの排出液である。
【0030】
該オリゴマー化方法は、以下の操作条件下で実施することが好ましい:全圧0.1〜10MPa、好ましくは0.3〜7MPa、温度40〜600℃、好ましくは100〜400℃、空間速度(VVH)0.01〜100h−1、好ましくは0.4〜20h−1
【0031】
明確に言えば、本発明によるとき、当該オリゴマー化方法は、主として2〜6個に限定された単量体類または基礎分子類の付加に相当するものであり、該単量体類はオレフィン類である。
【0032】
以下の実施例は、本発明を分りやすく説明するもので、制限するものではない。
【0033】
実施例
【実施例1】
【0034】
(本発明):変性ZSM−5ゼオライトを主成分とする触媒の調製
ゼオライトH−ZSM−5(Si/Al=45)40gを、硫酸ニッケル4.3g/lを含有する溶液500mlに浸漬してイオン交換させる。イオン交換は80℃で24時間行なう。濾過し、洗浄したのち、かくしてニッケルと交換されたゼオライトを120℃で一夜乾燥する。つぎに、これを固定床反応器に導入し、そこでそれをまず窒素気流下、450℃での活性化に付す。つぎに、反応器温度を150℃に戻したのち、分圧0.15バールのTEOS[Si(OCHCH]を窒素気流中に加える。2時間反応後、ゼオライトを150℃で2時間ストリッピング処理して、未反応TEOSを排出する。空気下、450℃で3時間にわたってTEOSの分解を行なう。かくして、プロトン化された形態の、構造タイプがMFIで、外表面に無定形シリカの層を有する変性ゼオライトZ1が得られる。
【0035】
つぎに、ゼオライトZ1をアルミナゲルとともに押出成形し、120℃で乾燥し、乾燥空気下、450℃でカ焼したのちに、60重量%の変性ゼオライトZ1と40重量%のアルミナとを含有する触媒が得られる。
【実施例2】
【0036】
(本発明):変性MORゼオライトを主成分とする触媒の調製
ゼオライトH−MOR(Si/Al=55)40gを、硫酸ニッケル4.3g/lを含有する溶液500mlに浸漬してイオン交換させる。イオン交換は80℃で24時間行なう。濾過し、洗浄したのち、かくしてニッケルと交換されたゼオライトを120℃で一夜乾燥する。つぎに、これを固定床反応器に導入し、そこでそれをまず窒素気流下450℃での活性化に付す。つぎに、反応器の温度を150℃に戻したのち、分圧0.15バールのTEOS[Si(OCHCH]を窒素気流中に加える。2時間反応後、ゼオライトを150℃で2時間ストリッピング処理して、未反応TEOSを排出する。空気下、450℃で3時間にわたってTEOSの分解を行なう。かくして、プロトン化された形態の、構造タイプがMORで、外表面に無定形シリカの層を有する変性ゼオライトZ2が得られる。
【0037】
つぎに、ゼオライトZ2をアルミナゲルとともに押出成形し、120℃で乾燥し、乾燥空気下、450℃でカ焼したのちに、60重量%の変性ゼオライトZ2と40重量%のアルミナとを含有する触媒が得られる。
【実施例3】
【0038】
(本発明):変性FERゼオライトを主成分とする触媒の調製
ゼオライトH−FER(Si/Al=26)40gを、硫酸ニッケル4.3g/lを含有する溶液500mlに浸漬してイオン交換させる。イオン交換は80℃で24時間行なう。濾過し、洗浄したのち、かくしてニッケルと交換されたゼオライトを120℃で一夜乾燥する。つぎに、これを固定床反応器に導入し、そこでそれをまず窒素気流下450℃での活性化に付す。つぎに、反応器の温度を150℃に戻したのち、分圧0.15バールのTEOS[Si(OCHCH]を窒素気流中に加える。2時間反応後、ゼオライトを150℃で2時間ストリッピング処理して、未反応TEOSを排出する。空気下、450℃で3時間にわたってTEOSの分解を行なう。かくして、プロトン化された形態の、構造タイプがFERで、外表面に無定形シリカの層を有する変性ゼオライトZ3が得られる。
【0039】
つぎに、ゼオライトZ3をアルミナゲルとともに押出成形し、120℃で乾燥し、乾燥空気下、450℃でカ焼したのちに、60重量%の変性ゼオライトZ3と40重量%のアルミナとを含有する触媒が得られる。
【実施例4】
【0040】
(比較例):金属との交換をしていないZSM−5ゼオライトを主成分とする触媒の調製
ゼオライトH−ZSM−5(Si/Al=45)40gを固定床反応器に導入し、そこでそれをまず窒素気流下450℃での活性化に付す。つぎに、反応器の温度を150℃に戻したのち、分圧0.15バールのTEOS[Si(OCHCH]を窒素気流中に加える。2時間反応後、ゼオライトを150℃で2時間ストリッピング処理して、未反応TEOSを排出する。空気下、450℃で3時間にわたってTEOSの分解を行なう。かくして、プロトン化された形態の、構造タイプがMFIで、外表面に無定形シリカの層を有するゼオライトZ4が得られる。
【0041】
つぎに、ゼオライトZ4をアルミナゲルとともに押出成形し、120℃で乾燥し、乾燥空気下、450℃でカ焼したのちに、60重量%のゼオライトZ4と40重量%のアルミナとを含有する触媒が得られる。
【実施例5】
【0042】
(比較例):金属との交換をしていないMORゼオライトを主成分とする触媒の調製
ゼオライトH−MOR(Si/Al=55)40gを固定床反応器に導入し、そこでそれをまず窒素気流下450℃での活性化に付す。つぎに、反応器の温度を150℃に戻したのち、分圧0.15バールのTEOS[Si(OCHCH]を窒素気流中に加える。2時間反応後、ゼオライトを150℃で2時間ストリッピング処理して、未反応TEOSを排出する。空気下、450℃で3時間にわたってTEOSの分解を行なう。かくして、プロトン化された形態の、構造タイプがMORで、外表面に無定形シリカの層を有するゼオライトZ5が得られる。
【0043】
つぎに、ゼオライトZ5をアルミナゲルとともに押出成形し、120℃で乾燥し、乾燥空気下、450℃でカ焼したのちに、60重量%のゼオライトZ5と40重量%のアルミナとを含有する触媒が得られる。
【実施例6】
【0044】
(比較例):金属との交換をしていないFERゼオライトを主成分とする触媒の調製
ゼオライトH−FER(Si/Al=26)40gを固定床反応器に導入し、そこでそれをまず窒素気流下450℃での活性化に付す。つぎに、反応器の温度を150℃に戻したのち、分圧0.15バールのTEOS[Si(OCHCH]を窒素気流中に加える。2時間反応後、ゼオライトを150℃で2時間ストリッピング処理して、未反応TEOSを排出する。空気下、450℃で3時間にわたってTEOSの分解を行なう。かくして、プロトン化された形態の、構造タイプがFERで、外表面に無定形シリカの層を有するゼオライトZ6が得られる。
【0045】
つぎに、ゼオライトZ6をアルミナゲルとともに押出成形し、120℃で乾燥し、乾燥空気下、450℃でカ焼したのちに、60重量%のゼオライトZ6と40重量%のアルミナとを含有する触媒が得られる。
【実施例7】
【0046】
(本発明):変性MFIゼオライトを主成分とする触媒の調製
ゼオライトH−ZSM−5(Si/Al=45)40gを、酢酸クロム20g/lを含有する溶液500mlに浸漬してイオン交換させる。イオン交換は70℃で24時間行なう。濾過し、洗浄したのち、かくしてクロムと交換されたゼオライトを120℃で一夜乾燥し、つぎに空気下、550℃で2時間カ焼する。つぎに、これを固定床反応器に導入し、そこでそれをまず窒素気流下、450℃での活性化に付す。つぎに、反応器温度を150℃に戻したのち、分圧0.15バールのTEOS[Si(OCHCH]を窒素気流中に加える。2時間反応後、ゼオライトを150℃で2時間ストリッピング処理して、未反応TEOSを排出する。空気下、450℃で3時間にわたってTEOSの分解を行なう。かくして、プロトン化された形態の、構造タイプがMFIで、外表面に無定形シリカの層を有する変性ゼオライトZ7が得られる。
【0047】
つぎに、ゼオライトZ7をアルミナゲルとともに押出成形し、120℃で乾燥し、乾燥空気下、450℃でカ焼したのちに、60重量%の変性ゼオライトZ7と40重量%のアルミナとを含有する触媒が得られる。
【実施例8】
【0048】
変性ゼオライトZ1、Z2、Z3およびZ7を主成分とする触媒ならびにゼオライトZ4、Z5およびZ6を主成分とする触媒の軽質オレフィン類オリゴマー化における触媒作用評価
上記実施例1〜7に従って調製した触媒の性能を、パラフィン類混合物中に58%のC4オレフィン類を含有する軽質オレフィン溜分のオリゴマー化反応において評価した。
【0049】
試験の操作条件はつぎの通りである:
温度:230℃
圧力:6MPa
VVH(h−1)[触媒体積/装入物の体積流量]:1h−1
それぞれの触媒は、その場で、前もって、N下、450℃で2時間活性化する。
【0050】
構造タイプMFIのゼオライトを主成分とする触媒の性能を、表1に示す。
【表1】

【0051】
構造タイプFERのゼオライトを主成分とする触媒の性能を、表2に示す。
【表2】

【0052】
構造タイプMORのゼオライトを主成分とする触媒の性能を、表3に示す。
【表3】

【0053】
表1、2および3に示した触媒性能は、変性ゼオライトを含有し、本発明方法に従って調製された触媒が、軽質オレフィン類のオリゴマー化反応において試験するとき、ディーゼル油溜分の収率を顕著に増大させうることを示している。このディーゼル油の品質は、そのセタン価(IC)によって測定するとき、本発明方法によって変性されていないゼオライトを含有する触媒を用いて得られるディーゼル油溜分が示すものと比較してやはり改善される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の変性ゼオライトを含有する触媒の調製方法であって、該ゼオライトは、変性される前には7Å以下の最大細孔開口直径を呈するものであり、該方法は、少なくとも下記の工程を包含する:
a)元素周期表第VIBおよびVIII族の金属類のうちから選ばれた少なくとも1種の金属を少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする担体の表面に導入する工程、
b)該ゼオライトを、珪素原子を少なくとも1個含有する少なくとも1種の分子化合物の存在下に処理する工程であって、該化合物は、該ゼオライトの細孔の最大開口直径よりも大きい直径をもち、該ゼオライトの外表面上に気相から析出させる工程、
c)少なくとも1つの熱処理工程。
【請求項2】
該ゼオライトが、変性される前には、少なくとも珪素およびアルミニウムを、原子比Si/Alが2〜200となる割合で含有するものである請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
該ゼオライトが、構造タイプMEL、MFI、ITH、NES、EUO、ERI、FER、CHA、MFS、MWW、MTT、TONおよびMORのゼオライト類のうちから選ばれる請求項1または請求項2に記載の調製方法。
【請求項4】
該ゼオライトが構造タイプMFI、MORおよびFERのゼオライト類のうちから選ばれる請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
元素周期表第VIBおよびVIII族の金属類のうちから選ばれた金属が、ニッケル、鉄、パラジウム、ルテニウムおよびクロムのうちから選ばれたものである請求項1〜4のいずれかに記載の調製方法。
【請求項6】
該金属がニッケルおよびクロムのうちから選ばれたものである請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
該工程a)を実施するために用いる少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする該担体が、全体として、該プロトン化担体からなる請求項1〜6のいずれかに記載の調製方法。
【請求項8】
該プロトン化ゼオライトを、マトリックスおよび場合によっての結合剤とともに成形する工程を包含する請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
該工程a)を実施するために用いる少なくとも1種のプロトン化ゼオライトを主成分とする該担体が、マトリックスおよび場合によっての結合剤とともに成形された該プロトン化ゼオライトからなる請求項1〜6のいずれかに記載の調製方法。
【請求項10】
珪素原子を少なくとも1個含有する該分子化合物が、式Si−RおよびSi−R(式中、Rは水素、アルキル基、アリール基またはアシル基、アルコシキ基(O−R’)、ヒドロキシル基(−OH)またはハロゲンであってよく、Rは同一または異なっていてよい)の化合物類のうちから選ばれる請求項1〜9のいずれかに記載の調製方法。
【請求項11】
該分子化合物が、一般式Si−(OR’)(式中、R’はアルキル、アリールまたはアシル基である)の組成を有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の調製方法。
【請求項12】
該工程b)を、珪素原子を少なくとも1個含有する該分子化合物の気相からの析出を実施することによって行なう請求項1〜11のいずれかに記載の調製方法。
【請求項13】
該工程b)を固定床反応器中で実施する請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに従って調製された触媒の、1分子当り2〜12個の炭素原子を有する炭化水素分子を含有するオレフィン系原料のオリゴマー化方法における使用。
【請求項15】
該オリゴマー化方法を、温度40〜600℃、全圧0.1〜10MPa、空間速度(VVH)0.01〜100h−1で実施する請求項14に記載の触媒の使用。

【公表番号】特表2009−519824(P2009−519824A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546502(P2008−546502)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002466
【国際公開番号】WO2007/080240
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(500393413)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (32)
【Fターム(参考)】