説明

変性ポリフェニレンエーテル、それを用いた硬化性樹脂組成物及び硬化性材料、並びに硬化材料及びその積層体

【課題】誘電特性及び耐熱性に優れ、かつ銅箔剥離強度が高い積層板を得ることができる変性ポリフェニレンエーテル、硬化性樹脂組成物及び硬化性材料、並びに硬化材料及び該硬化材料を用いた積層体を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される構造を少なくとも1つ以上分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテルとすること。


(式中、Xは置換基を有していてもよいアルキル基を有し、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、又はカルボキシル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリフェニレンエーテル、それを用いた硬化性樹脂組成物、及び硬化性材料、並びに硬化材料及びその積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、接合、実装技術の向上とともに、電子機器に搭載される半導体デバイスの高集積化とパッケージの精緻化、プリント配線板の高密度配線化に伴い、電子機器は継続して進展している。この種の電子機器を構成するプリント配線板では、多層化と微細配線化が同時進行している。情報処理の高速化に要求される信号伝達速度の高速化には、使用される材料の誘電率を低減することが有効である。ポリフェニレンエーテル(PPE)は誘電率や誘電損失等の高周波特性(誘電特性)が優れているので、高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板用の材料として好適である。
【0003】
特許文献1には、耐熱性の向上と寸法安定性の向上を図った樹脂組成物と、この樹脂組成物を用いた硬化性材料、及びこの硬化性材料を用いた積層体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、低分子量のポリフェニレンエーテルからなる樹脂組成物とすることにより、溶融樹脂の流動性が良好で、通常のプレス成形温度において、成形性に優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物と、このポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いた硬化性複合材料、及びこの硬化性複合材料を用いた積層体が開示されている。
【0005】
特許文献3には、特定の構造を有するポリフェニレンエーテルを用いた硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−231847号公報
【特許文献2】特開2002−265777号公報
【特許文献3】特開2004−59644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、誘電特性及び耐熱性が優れ、かつ銅箔剥離強度が優れた積層体とすることができる変性ポリフェニレンエーテル、それを用いた硬化性樹脂組成物及び硬化性材料、並びに硬化性材料を硬化して得られる硬化材料は未だ知られていないのが実情である。
【0008】
特許文献1に開示されている樹脂組成物は、樹脂自身の融点が高く、通常のプレス成形温度では溶融時の粘度が高すぎ、多層プリント配線板として内層導体パターン層を充填できないため、多層化が困難である。
特許文献2に開示されているポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルの分子量を小さくしていくと、得られる積層板の耐熱性が低下するという問題がある。
特許文献3に開示されているポリフェニレンエーテルは、銅箔剥離強度が十分ではないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、誘電特性及び耐熱性が優れ、かつ銅箔剥離強度が高い積層板を得ることができる変性ポリフェニレンエーテル、それを用いた硬化性樹脂組成物及び硬化性材料、並びに硬化材料及びその硬化材料を用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する変性ポリフェニレンエーテルを用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
下記一般式(1)で表される構造を少なくとも1つ以上分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテル(a)。
【化1】


(式中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、又はカルボキシル基を表す。)
[2]
数平均分子量が1000〜6000である、[1]に記載の変性ポリフェニレンエーテル。
[3]
[1]又は[2]に記載の変性ポリフェニレンエーテル(a)と、架橋型硬化剤(b)と、反応開始剤(c)と、を含み、
変性ポリフェニレンエーテル(a)と架橋型硬化剤(b)との合計100質量部に対して、架橋型硬化剤(b)が2〜60質量部であり、反応開始剤(c)が1〜10質量部である、硬化性樹脂組成物。
[4]
さらに難燃剤を含む、[3]に記載の硬化性樹脂組成物。
[5]
[3]又は[4]に記載の硬化性樹脂組成物が基材に含浸された硬化性材料。
[6]
[5]に記載の硬化性材料を硬化させて得られうる硬化材料。
[7]
[6]に記載の硬化材料の層と、該硬化材料の層に積層された金属箔の層と、を含む積層構造を有する積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、誘電特性及び耐熱性が優れ、かつ銅箔剥離強度が高い積層板を得ることができる変性ポリフェニレンエーテル、それを用いた硬化性樹脂組成物及び硬化性材料、並びに硬化材料及び該硬化材料を用いた積層体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
<変性ポリフェニレンエーテル(a)>
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテル(a)は、下記一般式(1)で表される構造を少なくとも1つ以上分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテルであり、銅箔剥離強度が非常に優れる。また、下記一般式(1)で表される構造を分子末端に有することにより、変性ポリフェニレンエーテルの粘度が低下し、かつ、その硬化物の接着力が優れたものとなる。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、又はカルボキシル基を表す。)
【0017】
ここで変性ポリフェニレンエーテルとは、一般に下記一般式(2)で表される構造を少なくとも繰り返し単位として有する樹脂であり、本実施形態では、下記一般式(2)で表される構造を少なくとも繰り返し単位として有することにより、その硬化物の電気特性と耐熱性が優れたものとなる。
【0018】
【化2】



【0019】
(式中、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、又はカルボキシル基を表す。)
【0020】
〜Rのハロゲン原子としては、特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0021】
X及びR〜Rの置換基を有していてもよいアルキル基の「アルキル基」としては、特に限定されず、例えば、炭素数が1〜6、好ましくは1〜4の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。それらの中でも、直鎖状よりも分岐鎖状の方が高耐熱性となる傾向にあるため、好ましくはイソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基であり、より好ましくはtert−ブチル基である。
【0022】
〜Rの置換基を有していてもよいアルコキシ基の「アルコキシ基」としては、特に限定されず、例えば、炭素数が1〜6、好ましくは1〜4の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
【0023】
〜Rの置換基を有していてもよいアリール基の「アリール基」としては、特に限定されず、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、立体障害による硬化性の違いから好ましくはフェニル基である。
【0024】
〜Rのアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアミノ基は、置換可能な位置が、1以上の置換基で置換されていてもよい。上記「置換基を有していてもよい」の「置換基」としては、特に限定されず、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)等が挙げられる。
【0025】
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテル(a)の数平均分子量は、1000〜6000であることが好ましく、より好ましくは1500〜5000、さらに好ましくは2000〜4000である。変性ポリフェニレンエーテル(a)の数平均分子量が1000以上であれば、より優れた誘電特性を得ることができ、6000以下であれば溶融粘度が高くならずより優れた樹脂流れ性を得られるため好ましい。
【0026】
本実施形態において変性ポリフェニレンエーテル(a)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、移動相としてテトラヒドロフランを用い、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた数平均分子量である。
【0027】
<変性ポリフェニレンエーテル(a)の製造方法>
本実施形態で用いる変性ポリフェニレンエーテル(a)を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、フェノール性水酸基を2個以上有するフェノール性化合物を種結晶として、2,6−キシレノールを付加させていく方法や、高分子量ポリフェニレンエーテルを再分配反応に供し、数平均分子量を前記の好ましい範囲に調整する方法等が挙げられる。
【0028】
高分子量ポリフェニレンエーテルを再分配反応する方法は、例えば、Journal of Organic Chemistry,34,297〜303(1968)に示されている方法を用いることができる。具体的には、高分子量ポリフェニレンエーテルをラジカル開始剤の存在下で、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ピロガロール等のポリフェノール化合物と反応させて、高分子量ポリフェニレンエーテルの分子量を低下させる方法等を用いることができる。
【0029】
ラジカル開始剤としては、特に限定されず、例えば、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルクミルパーオキシヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサン、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン〔1,4(又は1,3)−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンともいう〕、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゼン、過酸化ベンゾイル等の過酸化物を用いることができる。この際、ラジカル開始剤の触媒として、さらに、ナフテン酸コバルト、4級アンモニウム塩やアミン化合物等を用いてもよい。
【0030】
このようにして得られた化合物を、アリルグリシジルエーテルなどのアリル基を持ったグリシジル化物と反応させることにより、変性ポリフェニレンエーテル(a)を得ることができる。
【0031】
<硬化性樹脂組成物>
本実施形態では、変性ポリフェニレンエーテル(a)と、架橋型硬化剤(b)と、反応開始剤(c)と、を含む、硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0032】
<架橋型硬化剤(b)>
本実施形態で用いる架橋型硬化剤(b)は、加熱することにより変性ポリフェニレンエーテル(a)と化学的に結合するものであれば、特に限定されず、その中でも変性ポリフェニレンエーテル(a)との相溶性が良好なものが好ましい。
【0033】
架橋型硬化剤(b)の具体例としては、例えば、ジビニルベンゼンやジビニルナフタレンやジビニルビフェニルなどの多官能ビニル化合物;フェノールとビニルベンジルクロライドの反応から合成されるビニルベンジルエーテル系化合物;スチレンモノマー,フェノールとアリルクロライドの反応から合成されるアリルエーテル系化合物;トリアルケニルイソシアヌレートなどが挙げられる。それらのなかでも、相溶性が良好なトリアルケニルイソシアヌレートが好ましく、具体的にはトリアリルイソシアヌレート(以下、「TAIC」という。)やトリアリルシアヌレート(以下、「TAC」という。)が好ましい。これらを使用すると、誘電特性がよく、かつ耐熱性の高い硬化物を得ることができる。
【0034】
また、架橋型硬化剤(b)の別の具体例としては、メタクリレート化合物又はアクリレート化合物が挙げられる。メタクリレート化合物又はアクリレート化合物を架橋型硬化剤(b)として用いることで、プレス時の樹脂流れの向上と架橋密度の向上をもたらし、最終的に得られる積層板の耐熱性を更に高めることができる。また、プレス時の樹脂流れを向上させることにより、例えば、パターンを形成した配線板などをきれいに埋め込むことができる。それらの中でも、3〜5官能基のメタクリレート化合物又はアクリレート化合物が好ましい。
【0035】
3〜5官能基のメタクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)等が挙げられる。3〜5官能基のアクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
【0036】
<反応開始剤(c)>
本実施形態で用いる反応開始剤(c)は、加熱時にラジカルを発生させ、変性ポリフェニレンエーテル(a)と架橋型硬化剤(b)の架橋反応を開始するものであれば特に制限されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。また、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も反応開始剤(c)として使用できる。
【0037】
本実施形態の硬化性樹脂組成物において、成分(a)の含有量と成分(b)の含有量の合計100質量部に対する成分(b)の含有量は、好ましくは2〜60質量部であり、より好ましくは5〜50質量部である。架橋型硬化剤(b)の含有量が2質量部以上であれば耐薬品性が優れ、60質量部以下であれば誘電特性、難燃性及び給水特性が優れ、かつ硬化後の物理的物性が優れる。
【0038】
成分(a)の含有量と成分(b)の含有量の合計100質量部に対する成分(c)の含有量は、好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは2〜8質量部である。反応開始剤(c)の含有量が1質量部以上であれば十分な架橋を得ることができ、10質量部以下であればボイドが発生せず、金属に対する接着力が低下しない。
【0039】
<難燃剤(d)>
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、難燃剤(d)を更に含有することが好ましい。本実施形態の難燃剤(d)は、燃焼のメカニズムを阻害する機能を有するものであれば特に制限されず、例えば、芳香族臭素化合物や酸化アンチモン等が挙げられる。本実施形態では、1種又は2種以上の難燃剤を用いることができる。
【0040】
芳香族臭素化合物としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。それらの中でも、少なくとも一つのイミド環を含む臭素化芳香族化合物が好ましく、デカブロモジフェニルエタン,4,4−ジブロモビフェニル,エチレンビステトラブロモフタルイミド等が挙げられる。
【0041】
<その他添加物>
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、その用途に応じた所望の性能を付与させる目的で、本来の性質を損なわない範囲で、その他の充填剤や添加剤などを配合してもよい。
【0042】
充填剤は、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、雲母、ガラスビーズ、ガラス中空球等が挙げられる。充填材の形状は、特に限定されず、繊維状であっても粉末状であってもよい。
【0043】
添加剤は、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤等が挙げられる。
【0044】
酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシハイドロシンメナート))メタン等のラジカル連鎖禁止剤、及びジステリアルペンタエリスリトールジホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等の過酸化物分解剤が挙げられる。
【0045】
熱安定剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系熱安定剤;2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等のビスフェノール系熱安定剤;1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン等の高分子型フェノール系熱安定剤等が挙げられる。
【0046】
帯電防止剤としては、例えば、モノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、モノオレイルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、モノラウリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩、モノアセチルアルコールエチレンオキサイドリン酸エステルトリエタノールアミン塩、モノノニルフェノールエチレンオキサイドリン酸エステルトリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0047】
可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−カプリエート等が挙げられる。
【0048】
顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン及び珪酸アルミニウムや鉄、コバルト、クロム、ニッケル、銅、マンガンなどの金属で構成されるものがある。これらの中で好ましいものとしては、鉄、コバルト、クロム、及びニッケルからなる群から選択した金属2種以上からなる複合金属酸化物等が挙げられる。
【0049】
染料としては、例えば、クロム酸(1−),[1−[(2−ヒドロキシ−4−ニトロフェニル)アゾ]−2−ナフタレノラト(2−)][1−[(2−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)アゾ]−2−ナフタレノラト(2−)]の3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1−プロパンアミン水素(1:1)化合物が挙げられる。
【0050】
さらに、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を1種又は2種以上配合してもよい。具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、多官能性アクリロイル化合物、多官能性メタクリロイル化合物、多官能性マレイミド、多官能性シアン酸エステル、多官能性イソシアネート、不飽和ポリエステル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン・スチレン−ブタジエン−スチレン等の架橋性ポリマーなどのような熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−ペンテン)等のポリオレフィン類及びその誘導体、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12などのポリアミド類及びその誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポチエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート・ポリエチレングリコールブロック共重合体などのポリエステル類及びその誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ポリ塩化ビニリデン及びその共重合体、ポリメチルメタクリレート類、(メタ)アクリル酸エステル共重合体類、ポリスチレン類、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン系共重合体等のポリスチレン類及びその共重合体類、ポリ酢酸ビニル類、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール類、エチレン酢酸ビニル共重合体及びその加水分解物類、ポリビニルアルコール類、スチレンブタジエンブロック共重合体類、ポリブタジエン、ポリイソプレン類のゴム類、ポリメトキシエチレン、ポリエトキシエチレン等のポリビニルエーテル類、ポリアクリルアマイド、ポリホスファーゼン類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、側鎖に液晶成分を含有する側鎖型液晶ポリマーなどのような熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0051】
<基材(e)>
本実施形態で用いる基材(e)は、上記の(a)〜(d)に溶解することなく耐熱性の高いものであれば特に制限されず、各種公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラス布、アスベスト布、金属繊維布、及びその他合成又は天然の無機繊維布;ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維等の合成繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維;炭素繊維;クラフト紙、コットン紙、紙−ガラス混繊紙等の天然セルロース系布等が挙げられる。
【0052】
基材(e)の形状や大きさ等は、特に制限されず、例えば、プレート状、シート状等の形状であってもよい。
【0053】
<硬化性材料>
本実施形態の硬化性材料とは、上記の硬化性樹脂組成物を基材(e)に含浸させることにより得ることができる。基材(e)に硬化性樹脂組成物を含浸させることにより、機械的強度が高められ、かつ寸法安定性が増大される。含浸は浸漬、塗布等によって行うことができる。含浸は必要に応じて複数回繰り返してもよく、成分やその濃度が異なる複数の含浸液を用いてもよい。このように含浸条件を調節することで、所望の物性の硬化性材料を得ることができる。
【0054】
本実施形態において、硬化性材料を硬化させる方法は特に限定されず、熱、光又は電子線等のエネルギー線による方法を採用できる。本実施形態では、加熱、光照射及び電子線等のエネルギー線照射等を併用してもよい。
【0055】
得られた硬化性材料は、赤外吸収スペクトル法、高分解能固体核磁気共鳴スペクトル法、熱分解ガスクロマトグラフィー等の方法を用いて、その組成を解析できる。これにより、一般式(1)や一般式(2)等の構造も確認できる。
【0056】
<硬化材料>
本実施形態の硬化材料は、上記の硬化性材料を加熱等の方法により硬化することによって得られるものである。本実施形態の硬化材料の製造方法は特に限定されず、例えば本実施形態の硬化性材料を複数枚重ね合わせ、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化を行い、所望の厚みの硬化材料とする方法が挙げられる。
【0057】
また、一度、接着硬化させた硬化材料に、別の硬化性材料を組み合わせて新たな層構成の硬化複合材料とすることもできる。積層成形と硬化は、通常熱プレス等を用い同時に行われるが、両者をそれぞれ単独で行ってもよい。すなわち、あらかじめ積層成形して得た未硬化あるいは半硬化の硬化性複合材料を、熱処理又は別の方法で処理することによって硬化させることができる。
【0058】
成形及び硬化の条件は、特に限定されず、好ましくは、温度80〜300℃、圧力0.1〜1000kg/cm、時間1分〜10時間の範囲で行うことができ、より好ましくは、温度120〜250℃、圧力1〜100kg/cm、時間1分〜5時間の範囲で行うことができる。
【0059】
<積層体>
本実施形態の積層体は、硬化材料の層と、この硬化材料の層に積層された金属箔の層と、を含む積層構造を有する積層体である。即ち、硬化材料の層と金属箔の層とを含む積層構造を有するものである。
【0060】
本実施形態の積層体の製造方法としては、特に限定されず、例えば、硬化性材料と、金属箔を目的に応じた層構成で積層し、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化させる方法などが挙げられる。
【0061】
本実施形態の積層体においては、硬化性材料と金属箔の層構成は限定されない。例えば、金属箔は表層としても中間層としても用いることができる。例えば、本実施形態の硬化性材料と金属板より構成される2層構造の積層板や、金属箔と硬化材料と金属板より構成される3層構造の金属張り積層板等も製造できる。
本実施形態の積層板としては、金属板をベースとしその片面又は両面に硬化材料が積層されるものであってもよい。
【0062】
金属張り積層板においては、金属板をベースとしその片面又は両面に硬化性材料を介して金属箔が積層される。この際、金属箔の層は最表層として用いられるが、最表層以外に中間層として用いてもよい。
上記の他、積層と硬化を複数回繰り返して多層化することも可能である。
金属箔及び金属板の接着には接着剤を用いることもできる。接着剤としては、エポキシ系、アクリル系、フェノール系、シアノアクリレート系等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0063】
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルによれば、誘電特性及び耐熱性に優れ、かつ銅箔剥離強度が高い積層板を得ることができる硬化性樹脂組成物、硬化性材料、硬化材料とすることができる。これらは各種電子機器のプリント配線板の材料等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下の実施例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0065】
各物性は以下の方法によって測定した。
(1)数平均分子量
測定装置(東ソー株式会社製「HLC−8320GPC」)、昭和電工社製shodex A−804、A−803、A−802、A802をカラムとして使用して、移動相としてテトラヒドロフランを使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析を行い、分子量既知のポリスチレンの溶出時間との比較で数平均分子量を求めた。
【0066】
(2)銅箔引き剥し強さ
JIS C 6481に基づき測定した。すなわち、測定する積層体から幅20mm、長さ100mmの試験片を切り出し、銅箔面に幅10mmの平行な切り込みを入れた後、銅箔面に対して垂直なる方向に50mm/分の速さで連続的に銅箔を引き剥し、その時の応力を引張り試験機(島津製作所製「AGS−H 5kN」)にて測定し、その応力の最低値を銅剥離強度とした。
【0067】
(3)積層板の誘電率、誘電正接
JIS C 6481に基づき、アジレントテクノロジー社製「LCRメーター4284A」を用いて、各積層板の誘電率(ε)と誘電正接(tanδ)を測定した。
【0068】
(4)ガラス転移温度
オリエンテック株式会社製の動的粘弾性測定装置「DDV−25FP」(商標)を用い、長さ40mm×幅10mm×厚さ2mmの試験片を、2℃/分で昇温させ、tanδが最大となる温度を測定した。
【0069】
<製造例1:変性ポリフェニレンエーテル樹脂>
数平均分子量17000の高分子量ポリフェニレンエーテル(旭化成ケミカルズ株式会社製)100g及びビスフェノールA(旭化成ケミカルズ株式会社製)8gをトルエン150gに加熱溶解させた。さらに、ナフテン酸コバルト0.1gを加え溶液の温度を90℃まで加熱した。これに、過酸化ベンゾイルとそのメチル置換体の混合物のキシレン40%溶液(「ナイパーBMT−K40」(商標、日油株式会社製))12.5g(過酸化ベンゾイル及びそのメチル置換体混合物5gに相当)とトルエン37.5gを混合した溶液を2時間かけて滴下した。
【0070】
滴下終了後、反応溶液の温度を90℃に保ち、120分間攪拌して再分配反応させた。その後、反応溶液の温度を70℃まで低下させ、さらに「ナイパーBMT−K40」25g(過酸化ベンゾイル及びそのメチル置換体10gに相当)にトルエン75gを混合した溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液の温度を70℃に保ち、さらに180分攪拌して再分配反応を行い、変性ポリフェニレンエーテル(rPPE)を得た。
反応溶液をゲル浸透クロマトグラフィーで測定した結果、得られた変性ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は1900であった。
【0071】
<実施例1:アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−1)>
アリルグリシジルエーテル「ネオアリルG」(商標、ダイソー株式会社製)100gを100℃に加熱し攪拌した。十分に混合した後、触媒としてNaOCHを0.005g添加し、約15分攪拌した。その後、165℃まで加熱して、製造例1で得られた変性ポリフェニレンエーテル溶液204g(変性ポリフェニレンエーテルに換算して50g)を90分かけて添加した。この際、反応容器に窒素を流すことで溶剤のトルエンを常圧又は減圧下で反応系より除去した。
続いて、165℃で5時間攪拌し、その後、180℃へ加熱し、減圧下により未反応のアリルグリシジルエーテルを除去して、アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−1)を得た。得られた樹脂(A−1)の数平均分子量は2200であった。得られた樹脂(A−1)30gをトルエン70gに入れ、室温で振盪させたところ、20分で固形分のない透明な液を得た。
得られた樹脂(A−1)のH−NMRの測定により、一般式(1)を少なくとも1つ以上分子末端に持ち、一般式(2)を繰り返し単位として有することを確認した。
【0072】
<実施例2:アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−2)>
製造例1において、ビスフェノールAを15gにして、「ナイパーBMT−K40」の1回目の滴下量を25gにする以外は製造例1と同様にして変性ポリフェニレンエーテルを製造し、該変性ポリフェニレンエーテルを用いて実施例1と同様に製造して、アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−2)を得た。得られた樹脂(A−2)の数平均分子量は1050であった。得られた樹脂(A−2)30gをトルエン70gに入れ、室温で振盪させたところ、30分で固形分のない透明な液を得た。
得られた樹脂(A−2)のH−NMRの測定により、一般式(1)を少なくとも1つ以上分子末端に持ち、一般式(2)を繰り返し単位として有することを確認した。
【0073】
<実施例3:アリル化ポリフェニレンエーテル(A−3)>
製造例1において、ビスフェノールA8gの代わりにフェノールノボラック「レジトップPSM4326」(商標、群栄化学株式会社製)4gを使用する以外は製造例1と同様にして変性ポリフェニレンエーテルを製造し、該変性ポリフェニレンエーテルを用いて実施例1と同様に製造して、アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−3)を得た。得られた樹脂(A−3)の数平均分子量は5900であった。得られた樹脂(A−3)30gをトルエン70gに入れ、室温で振盪させたところ、30分で固形分のない透明な液を得た。
得られた樹脂(A−3)のH−NMRの測定により、一般式(1)を少なくとも1つ以上分子末端に持ち、一般式(2)を繰り返し単位として有することを確認した。
【0074】
<比較例1:ビニル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−4)>
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた2Lの縦長反応器にCuCl1.3 g(0.012mol)、ジ−n−ブチルアミン70.7g(0.55mol)、メチルエチルケトン400gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、あらかじめ800gのメチルエチルケトンに溶解させた2価のフェノール2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール43.2g(0.16mol)と2,6−ジメチルフェノール58.6g(0.48mol)を2L/minの空気のバブリングを行いながら120分かけて滴下した。さらに滴下終了後60分間、2L/minの空気のバブリングを続けながら撹拌を行った。これにエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。その後、1Mの塩酸水溶液で3回洗浄を行った後、イオン交換水で洗浄を行った。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行い、一般式(2)で示される樹脂96.7g得た。この樹脂の数平均分子量は810であった。
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に、得られた樹脂50g、クロロメチルスチレン(東京化成製)26g、テトラヒドロフラン200g、炭酸カリウム24g、18−クラウン−6−エーテル6gを仕込み、反応温度30℃で攪拌を行った。NMR測定で反応を経時的に追跡し、攪拌6時間で反応を止めた。
テトラヒドロフランをエバポレーターで除去した後、トルエン200gで希釈した後、水洗を行った。有機層を濃縮し、メタノール中へ滴下して再沈殿を行い、濾過により固体を回収し、真空乾燥してビニル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−4)44gを得た。得られた樹脂の数平均分子量は993であった。得られた樹脂30gをトルエン70gに入れ、室温で震とうさせたが、1日では溶解せずに固形の残存し、濁ったままだった。
得られた樹脂(A−4)をH−NMRの測定したところ、一般式(2)の存在は確認したが、一般式(1)中の水酸基のHの存在は確認できなかった。
【0075】
<実施例4〜7、比較例2〜4>
表1に示すように各組成物を仕込み、得られた硬化材料の物性を測定した。
<実施例4>
(a)成分として実施例1で得られたアリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−1)70質量部、(b)成分として、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)30質量部、(c)成分としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日油株式会社製「パークミルP」(商標))6質量部をトルエン溶液で混合し、硬化性樹脂組成物を調製した。
上記硬化性樹脂組成物をガラスクロス(旭シュエーベル株式会社製、商品名「2116」)に含浸させ、乾燥することにより樹脂含有量50質量%の硬化性材料を得た。
得られた硬化性材料を6枚重ね、その上下に厚み35μmの銅箔を重ね合わせたものを温度190℃、圧力20kg/cmの条件下で60分加熱加圧することにより両面銅張積層板を得た。
得られた積層板の銅剥離強度は1.3kg/cmであり、誘電率(ε)は3.5であり、誘電正接(tanδ)0.005であり、ガラス転移温度は200℃であった。
【0076】
<実施例5>
(a)成分として実施例1で得られたアリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−1)70質量部、(b)成分として、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)30質量部、(c)成分としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日油株式会社製「パークミルP」(商標))4質量部、(d)成分として、デカブロモジフェニルエタン(エチルコーポレーション社製「SAYTEX8010」(商標))20質量部をトルエン溶液中で混合し、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例4と同様の方法で積層板を得た。
得られた積層板の銅剥離強度は1.2kg/cmであり、誘電率(ε)は3.4であり、誘電正接(tanδ)0.005であり、ガラス転移温度は205℃であった。
【0077】
<実施例6>
(a)成分として実施例1で得られたアリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−1)70質量部、(b)成分として、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)30質量部、(c)成分としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日油株式会社製「パークミルP」(商標))6質量部、スチレンポリマー(出光興産株式会社製「5003P」(商標))5質量部をトルエン溶液中で混合し、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例4と同様の方法で積層板を得た。
得られた積層板の銅剥離強度は1.6kg/cmであり、誘電率(ε)は3.3であり、誘電正接(tanδ)0.003であり、ガラス転移温度は195℃であった。
【0078】
<実施例7>
(a)成分として実施例2で得られたアリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−2)50質量部、(b)成分として、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)50質量部、(c)成分としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日油株式会社製「パークミルP」(商標))6質量部をトルエン溶液中で混合し、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例4と同様の方法で積層板を得た。
得られた積層板の銅剥離強度は1.6kg/cmであり、誘電率(ε)は3.7であり、誘電正接(tanδ)0.007であり、ガラス転移温度は190℃であった。
【0079】
<実施例8>
(a)成分として実施例3で得られたアリル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−3)80質量部、(b)成分として、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)20質量部、(c)成分としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日油株式会社製「パークミルP」(商標))6質量部を混合し、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例4と同様の方法で積層板を得た。
得られた積層板の銅剥離強度は1.5kg/cmであり、誘電率(ε)は3.3であり、誘電正接(tanδ)0.005であり、ガラス転移温度は220℃であった。
【0080】
<比較例2>
(a)成分として比較例1で得られたビニル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−4)70質量部、(b)成分として、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)30質量部、(c)成分としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日油株式会社製「パークミルP」(商標))6質量部をトルエン溶液中で混合し、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例4と同様の方法で積層板を得た。
得られた積層板の銅剥離強度は0.7kg/cmであり、誘電率(ε)は3.4であり、誘電正接(tanδ)0.004であり、ガラス転移温度は192℃であった。
【0081】
<比較例3>
(a)成分として比較例1で得られたビニル化ポリフェニレンエーテル樹脂(A−4)70質量部、(b)成分として、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)30質量部、(c)成分としてジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(日油株式会社製「パークミルP」(商標))4質量部、(d)成分として、デカブロモジフェニルエタン(エチルコーポレーション社製「SAYTEX8010」(商標))20質量部をトルエン溶液中で混合し、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例4と同様の方法で積層板を得た。
得られた積層板の銅剥離強度は0.6kg/cmであり、誘電率(ε)は3.4であり、誘電正接(tanδ)0.004であり、ガラス転移温度は195℃であった。
【0082】
<比較例4>
イソシアネート変性エポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製「AER4152(商標)」)100質量部をアセトン30質量部に溶解し、溶解した液にジシアンジアミド(和光株式会社試薬)3.2質量部及びイミダゾール系硬化促進剤(2−メチルイミダゾール、和光株式会社試薬)0.05質量部をジメチルアセトアミド(和光株式会社試薬)28.8質量部に溶解させた溶液を混合して、硬化性樹脂組成物を調整した以外は実施例4と同様の方法で積層板を得た。
得られた積層板の銅剥離強度は1.6kg/cmであり、誘電率(ε)は4.6であり、誘電正接(tanδ)0.016であり、ガラス転位温度は180℃であった。
【0083】
【表1】

【0084】
表1に示されるように、実施例4〜8は、いずれも銅剥離強度が高く、誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)が小さく、ガラス転移温度が高いことが示された。一方、比較例2〜4は、銅剥離強度、誘電率、誘電正接及びガラス転移温度の少なくともいずれかが劣る結果であった。
一般式(1)で表される構造を分子末端に含む樹脂組成物は、銅箔の接着力の向上が見られた。また、一般式(2)で表される構造を含むと電気特性と耐熱性の向上が見られた。
以上より、本実施例によれば、本実施形態に係る変性ポリフェニレンエーテルを用いることで、誘電特性及び耐熱性に優れ、かつ銅箔剥離強度が高い積層板を得ることができる硬化性樹脂組成物、硬化性材料及び硬化材料とできることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の変性ポリフェニレンエーテルによれば、誘電特性及び耐熱性に優れ、かつ銅箔剥離強度が高い積層板を得ることができる硬化性樹脂組成物、硬化性材料、硬化材料とすることができ、これらは各種電子機器のプリント配線板の材料等として幅広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を少なくとも1つ以上分子末端に有する変性ポリフェニレンエーテル(a)。
【化1】


(式中、Xは、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、又はカルボキシル基を表す。)
【請求項2】
数平均分子量が1000〜6000である、請求項1に記載の変性ポリフェニレンエーテル(a)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の変性ポリフェニレンエーテル(a)と、架橋型硬化剤(b)と、反応開始剤(c)と、を含み、
前記変性ポリフェニレンエーテル(a)と前記架橋型硬化剤(b)との合計100質量部に対して、前記架橋型硬化剤(b)が2〜60質量部であり、前記反応開始剤(c)が1〜10質量部である、硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに難燃剤を含む、請求項3に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の硬化性樹脂組成物が基材に含浸された硬化性材料。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化性材料を硬化させて得られうる硬化材料。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化材料の層と、該硬化材料の層に積層された金属箔の層と、を含む積層構造を有する積層体。

【公開番号】特開2010−195970(P2010−195970A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43937(P2009−43937)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】