説明

変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルム及びそれを用いた積層複合材

【課題】 軽量で剛性が高く、かつ、高温下であっても、剛性の変化が少ないことから、携帯電話などに使用するダイナミック型平面スピーカーの振動膜の部材に好適に使用しうる積層複合材を提供すること。
【解決手段】 ポリフェニレンエーテル系樹脂10〜60重量%とポリスチレン系樹脂40〜90重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる、密度60〜300kg/m、厚み0.1〜0.5mm、厚み方向の平均セル径Aと押出方向の平均セル径B、幅方向平均セル径Cの比A/BおよびA/Cがいずれも0.2〜1であることを特徴とする変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルム及びそれを用いた積層複合材に関する。更に詳しくは、携帯電話などに使用するダイナミック型平面スピーカーの振動膜の部材として好適に使用しうる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡フィルム及びそれを用いた積層複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの移動通信端末の小型化、高機能化に伴い、搭載されるスピーカーに対しても、小型化、省電力化、音質改良に対する要求が高まっている。
【0003】
スピーカーを小型化する技術として、従来同様、磁石とコイルを用いて振動膜を振動させるダイナミック型以外に、セラミックなどの圧電材料を用いた圧電型スピーカーが挙げられ、小型化、特に薄肉化に関しては、圧電型の方が有利とされている。しかしながら、音質の観点、特に低音域の音の再現性に関してはダイナミック型の方が優れており、音質を重視する場合にはダイナミック型が採用される傾向にある。
【0004】
しかしながら、圧電型に比べ音質に優れるダイナミック型においても、小型のものは振動膜が平面である場合が多く、振動膜がコーン形状の場合に比べ中音域の音質が劣る傾向にあり、まだ改良の余地が残されていた。
【0005】
ダイナミック型平面スピーカーの音質を改良する試みとしては、特許文献1では、振動膜における、低次の振動モードに基づく振動の振幅を抑えて中音領域の音質を改良する目的で、振動膜にPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などの発泡体を貼付する試みが提案されている。また特許文献2では、独立気泡の低発泡ポリエチレンの両面にアルミニウムの面材を積相した複合板を振動板とすることが提案されている。しかしながら、ポリエチレンは耐熱性が低く、80℃程度の温度下では剛性が大きく低下し、音質が変化することから携帯電話などへの適用は好ましくない。また、ポリエチレンテレフタレートもガラス転移温度が高くないため耐熱性は充分ではない。一方、ポリエチレンナフタレートは耐熱性が高く、80℃程度では剛性低下が小さいため好ましいが、樹脂が高価であるため、汎用性に欠ける。更には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートは、押出発泡性に乏しいため、高圧容器中で炭酸ガスなどの不活性ガスを浸透させ、圧力開放した後加熱発泡するなどの煩雑なバッチプロセスを適用せざるを得ず、製造コストが高いなどの欠点があった。
【0006】
更には、市場において、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂の予備発泡粒子を型内成型し、薄くスライスした発泡フィルムの両面にアルミニウム箔を積層した複合積層材を振動板に貼付したスピーカーが使用されている。しかしながら、予備発泡粒子のセル径のばらつきが大きい上に、粒子の融着面は粒子中央部よりも高密度となるため、得られる複合積層材が均一性に欠けるなどの欠点があった。
【0007】
一方、特許文献3では、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂からなる、特定方向への加熱収縮率が大きな積層発泡シートが提案されており、ここで厚み0.25〜0.5mmの発泡フィルムが開示されている。しかしながら、この発泡フィルムは加熱収縮率を大きくする目的で押出方向に強く延伸して得るため、セルが厚み方向に大きく扁平しており、剛性に欠けるものであった。
【特許文献1】WO2003/073787号公報
【特許文献2】特開2004−64726号公報
【特許文献3】特開平2−151429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、軽量で剛性が高く、かつ、高温下であっても、剛性の変化が少ないことから、携帯電話などに使用するダイナミック型平面スピーカーの振動膜の部材に好適に使用しうる押出発泡フィルム、および、該押出発泡フィルムから作製される積層複合材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる、セルの扁平の少ない押出発泡フィルムが、軽量かつ剛性に優れ、かつ80℃の高温下においても剛性の変化が小さいことを見出し、該押出発泡フィルムの両側にアルミニウム箔を積層してなる積層複合材がスピーカーの振動膜として好適に使用しうることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明の第1は、ポリフェニレンエーテル系樹脂10〜60重量%とポリスチレン系樹脂40〜90重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる、密度60〜300kg/m、厚み0.1〜0.5mm、厚み方向の平均セル径Aと押出方向の平均セル径B、幅方向平均セル径Cの比A/BおよびA/Cがいずれも0.2〜1であることを特徴とする変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムに関する。
【0011】
本発明の第2は、前記記載の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡フィルムの両面にアルミニウム箔を積層することを特徴とする積層複合材に関し、本発明の第3は、前記記載の積層複合材を用いてなるスピーカーに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムは、軽量かつ剛性に優れ、80℃の高温下においても剛性の変化が小さい。
【0013】
従って、本発明の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムの両面にアルミニウム箔を積層した積層複合材は、軽量で剛性に優れ、80℃の高温下においても剛性の変化が小さいことから、平面スピーカーの振動膜の剛性を改良する部材に好適に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムの基材樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル系樹脂10〜60重量%とポリスチレン系樹脂40〜90重量%からなる。
【0015】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などがあげられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
また前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレンまたはその誘導体、例えばα−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレンなどを主成分とする樹脂があげられる。したがって、ポリスチレン系樹脂はスチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体に限らず他の単量体と共重合することによって作られた共重合体であってもよい。
【0017】
本発明において、両樹脂の配合割合は、ポリフェニレンエーテル系樹脂10〜60重量%およびポリスチレン系樹脂40〜90重量%であり、好ましくはポリフェニレンエーテル系樹脂30〜50重量%およびポリスチレン系樹脂50〜70重量%である。変性ポリフェニレンエーテル系樹脂中のポリフェニレンエーテル系樹脂が10重量%より少ないと、耐熱性が劣り、ポリフェニレンエーテル系樹脂が60重量%を超えると、加熱流動時の粘度が上昇し発泡成形が困難になる。
【0018】
なお、市販の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル系樹脂に少量のポリスチレン系樹脂が配合されている場合があるが、所望の配合比率でない場合、別途ポリスチレン系樹脂を配合して前記配合割合になるように調整してもよい。
【0019】
本発明における変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムの密度としては、60〜300kg/mであり、好ましくは70〜250kg/mである。密度が60kg/mを下回ると剛性が低下するため、スピーカーの振動膜に貼付した際の音質改良効果が低下する。一方、密度が300kg/mを超えると、軽量性が損なわれ消費電力が増加する。
【0020】
本発明における変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムの厚みとしては、0.1〜0.5mmであり、好ましくは0.2〜0.4mmである。厚みが0.1mmを下回ると剛性が低下し、平面スピーカーの振動膜に貼付した際の音質改良効果が低下する。一方、厚みが0.5mmを超えると、平面スピーカーの振動膜に貼付した場合に振動膜からの突出が大きくなりスピーカーの容積が増大する。
【0021】
本発明における変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムの厚み方向の平均セル径Aと押出方向の平均セル径B、幅方向平均セル径Cの比A/BおよびA/Cがいずれも0.2〜1であり、好ましくは0.4〜1である。A/BまたはA/Cが0.2を下回ると剛性が低下するだけでなく、厚み方向と垂直な方向のセル径が大きくアルミニウム箔を積層した場合に複合材の表面平滑性が損なわれる。一方、A/BまたはA/Cが1を越えるセルとするには、押出後に発泡フィルムの上下面の面積が増加しないよう拘束しつつ、加熱により体積を増加させるなどの特殊な処理が必要となり、プロセスが複雑になるだけでなく、表面平滑性も損なわれる。
【0022】
また、本発明における変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムの厚み方向の平均セル径Aは、押出発泡フィルムの厚みを超えなければ特に限定は無いが、0.02〜0.2mmの範囲であることが好ましい。Aが0.02mmを下回ると剛性が低下する傾向にあり、0.2mmを超えると厚み方向のセル数が減少し、アルミニウム箔との積層複合材とした場合に部位によって物性のばらつきが大きくなる傾向にある。
【0023】
なお、本発明における押出発泡フィルムの厚み方向の平均セル径Aと押出方向の平均セル径B、幅方向平均セル径Cは、発泡フィルムの押出方向に平行な断面と幅方向に平行な断面を顕微鏡にて150倍に拡大し、顕微鏡に付属のスケールを用い、各断面で20個のセルについて厚み方向および押出方向、幅方向のセル径を読み取り、算術平均により算出する。
【0024】
本発明における変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムは、例えば、押出機内(150〜300℃)で前記変性ポリフェニレンエーテル系樹脂および発泡剤を溶融混練後、押出機内において発泡温度(130〜200℃)に調節し、環状のリップを有するサーキュラーダイスを用い、そのダイスのリップから大気圧中に押し出して円筒状の発泡体を得、次いで、その円筒状発泡体を引き取りながら、冷却筒(マンドレル)による成形加工によって冷却後、切り開く方法によって製造される。またサーキュラーダイスの代わりにTダイを用いてフィルム状に発泡体を得、ロールなどで引き取る方法によっても製造される。
【0025】
本発明における発泡フィルムは厚みが薄いが、厚く吐出された発泡体を速く引き取ることで厚みを薄くすると、厚み方向の平均セル径Aと厚み方向と垂直な方向の平均セル径Bの比A/Bが小さくなる傾向がある。速く引き取ることなく所望の厚みの発泡フィルムを得るには、ダイギャップを所望の発泡フィルム厚みの0.1〜0.5倍程度にするのが好ましい。
【0026】
本発明における変性ポリフェニレンエーテル系押出発泡フィルムの製造に使用される発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、などの脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、窒素、炭酸ガス、空気などの無機ガスがあげられる。これらは単独または2種以上混合して使用してよい。
【0027】
前記発泡剤の添加量(混練量)は、発泡剤の種類および目標密度により異なるが、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して、1〜5重量部の範囲内にあることが好ましい。
【0028】
本発明においては、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムの厚み方向のセル数を前記範囲にコントロールするために、必要に応じて、タルクなどの造核剤を併用してもよい。必要に応じて用いられる該造核剤の添加量は、特に制限はないが、通常、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂100重量部に対して、0.01〜1重量部であることが好ましい。
【0029】
さらに本発明においては、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムの製造において、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂の発泡性を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂や、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、造核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。
【0030】
また本発明の変性ポリフェニレンエーテル系押出発泡フィルムの製造において、発泡フィルムの厚みや厚みムラを調整する目的で、厚み方向と垂直な面でスライスを行ってもよい。
【0031】
本発明における変性ポリフェニレンエーテル系押出発泡フィルムはこの様にして得ることができる。
【0032】
以上のようにして得られた変性ポリフェニレンエーテル系押出発泡フィルムの両面にアルミニウム箔を積層することにより本発明の積層複合材が得られる。
【0033】
本発明において変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムに積層されるアルミニウム箔は、厚さが0.005〜0.12mmであることがより好ましく、厚さが0.03〜0.1mmであることがより好ましい。厚みが0.005mmを下回ると剛性が低下するため、平面スピーカーの振動膜として使用した際の音質改良効果が低下する傾向にある。一方、厚さが0.12mmを超えると、軽量性が損なわれ消費電力が増加する傾向にある。
【0034】
本発明において変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルムにアルミニウム箔を積層する方法に特に制限は無く、接着剤や熱融着などの方法が採用可能だが、生産性や積層複合材の厚み精度の観点から、接着剤による積層が好ましい。
【0035】
前記積層に使用する接着剤としては、無溶剤系で収縮が小さいことが好ましく、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ウレタン系接着剤、ホットメルト接着剤などが例示される。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
〈押出発泡フィルムの密度測定〉
JIS−K6767に準拠し、測定した。
【0038】
〈押出発泡フィルムの厚み測定〉
厚みゲージを用いて、幅方向に20mm間隔で厚みを測定し、算術平均により算出した。
【0039】
〈押出発泡フィルムのセル構造評価〉
押出発泡フィルムの厚み方向の平均セル径Aと押出方向の平均セル径B、幅方向平均セル径Cは、発泡フィルムの押出方向に平行な断面と幅方向に平行な断面を顕微鏡にて150倍に拡大し、顕微鏡に付属のスケールを用い、各断面で20個のセルについて厚み方向および押出方向、幅方向のセル径を読み取り、算術平均により算出した。
【0040】
〈押出発泡フィルムの圧縮剛性評価〉
押出発泡フィルムを3cm×3cmに10枚切り出して重ねて測定試料とし、23℃雰囲気下、オートグラフを用いて2mm/minの速度で圧縮し、測定試料厚みをD(cm)、測定試料厚みの10%圧縮時の応力W10(kg)と、20%圧縮時の応力W20(kg)から、以下の式に基づき初期圧縮反発力(kg/cm/cm)を算出し、以下の基準にて圧縮剛性を評価した。
(初期圧縮反発力)=(W20−W10)/(0.1×D×3×3)
○:初期圧縮反発力が50kg/cm/cm以上
×:初期圧縮反発力が50kg/cm/cm未満
【0041】
〈押出発泡フィルムの耐熱性評価〉
オートグラフの付帯設備である高温槽を用いて、80℃雰囲気下にて上記初期圧縮反発力を評価し、以下の基準にて耐熱性を評価した。
○:初期圧縮反発力が25kg/cm/cm以上
×:初期圧縮反発力が25kg/cm/cm未満
【0042】
(実施例1)
ポリフェニレンエーテル70重量%とポリスチレン30重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル樹脂(日本GEプラスチックス(株)製、ノリルEFN−4230)57.1重量部およびポリスチレン(A&Mスチレン(株)製、G8102)42.9重量部とを混合し、ポリフェニレンエーテル樹脂成分40重量%およびポリスチレン樹脂成分60重量%となるように調整した混合樹脂100重量部に対して、気泡核形成剤としてタルク0.32重量部を添加しリボンブレンダーにて撹拌混合した配合物を、65−90mmφタンデム型押出機に供給し、シリンダー温度270℃に設定した第1段押出機(65mmφ)中にて溶融させた後、iso−ブタンを主成分とする炭化水素系発泡剤(iso−ブタン/n−ブタン=85/15重量%)1.2重量部を圧入混合し、196℃に設定した第2段押出機(90mmφ)中で冷却し、ダイギャップを0.1mmに設定したサーキュラーダイ(75mmφ)より大気圧下に吐出し、外径200mmおよび本体長さ400mmの冷却筒にて成形しながら13m/minで引き取りつつ延伸・冷却し円筒型発泡体を得、これをカッターで切り開くことにより、厚み0.3mm、密度200kg/m、厚み方向の平均セル径Aが0.3mm、Aと押出方向平均セル径との比A/Bが0.6、Aと幅方向平均セル径との比A/Cが0.5の押出発泡フィルムを得た。なお、吐出量は30kg/hであった。この押出発泡フィルムの初期圧縮反発力を測定したところ、23℃雰囲気下で61kg/cm/cm、80℃雰囲気下で44kg/cm/cmであり、圧縮剛性評価、耐熱性評価いずれも○であった。評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

(比較例1)
円筒型発泡体の引き取り速度を48m/minに変更した以外は、実施例1と同様な方法により、厚み0.08mm、密度220kg/m、厚み方向の平均セル径Aが0.06mm、Aと押出方向平均セル径との比A/Bが0.1、Aと幅方向平均セル径との比A/Cが0.3の押出発泡フィルムを得た。この押出発泡フィルムの初期圧縮反発力を測定したところ、23℃雰囲気下で47kg/cm/cm、80℃雰囲気下で20kg/cm/cmであり、圧縮剛性評価、耐熱性評価いずれも×であった。
【0044】
(実施例2)
炭化水素系発泡剤圧入量を1.8重量部に変更し、第2段押出機の設定温度を194℃に変更した以外は、実施例1と同様な方法により、厚み0.5mm、密度130kg/m、厚み方向の平均セル径Aが0.2mm、Aと押出方向平均セル径との比A/Bが0.7、Aと幅方向平均セル径との比A/Cが0.6の押出発泡フィルムを得た。この押出発泡フィルムの初期圧縮反発力を測定したところ、23℃雰囲気下で58kg/cm/cm、80℃雰囲気下で35kg/cm/cmであり、圧縮剛性評価、耐熱性評価いずれも○であった。
【0045】
(比較例2)
変性ポリフェニレンエーテル樹脂を配合せず、ポリスチレン(A&Mスチレン(株)製、G8102)100重量部を使用し、第1段押出機の設定温度を220℃、第2段押出機の設定温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様な方法により、厚み0.3mm、密度190kg/m、厚み方向の平均セル径Aが0.1mm、Aと押出方向平均セル径との比A/Bが0.6、Aと幅方向平均セル径との比A/Cが0.6の押出発泡フィルムを得た。この押出発泡フィルムの初期圧縮反発力を測定したところ、23℃雰囲気下で55kg/cm/cm、80℃雰囲気下で21kg/cm/cmであり、圧縮剛性評価は○だが、耐熱性評価は×であった。
【0046】
(比較例3)
炭化水素系発泡剤圧入量を5.1重量部に変更し、第2段押出機の設定温度を191℃に変更し、円筒型発泡体の引き取り速度を48m/minに変更した以外は、実施例1と同様な方法により、厚み0.5mm、密度45kg/m、厚み方向の平均セル径Aが0.2mm、Aと押出方向平均セル径との比A/Bが0.5、Aと幅方向平均セル径との比A/Cが0.7の押出発泡フィルムを得た。この押出発泡フィルムの初期圧縮反発力を測定したところ、23℃雰囲気下で41kg/cm/cm、80℃雰囲気下で18kg/cm/cmであり、圧縮剛性評価、耐熱性評価いずれも×であった。
【0047】
(実施例3)
実施例1の押出発泡フィルムの両面に、厚さ0.07mmのアルミニウム箔をエポキシ型接着剤(セメダイン(株)製、EP001)を用いて接着した。この積層複合材の初期圧縮反発力を測定したところ、23℃雰囲気下で68kg/cm/cm、80℃雰囲気下で45kg/cm/cmであり、圧縮剛性評価、耐熱性評価いずれも○であった。
【0048】
(実施例4)
実施例2の押出発泡フィルムの両面に、厚さ0.007mmのアルミニウム箔をホットメルト接着剤(倉敷紡績(株)製、クランベターX−2200)を用いて110℃にて接着した。この積層複合材の初期圧縮反発力を測定したところ、23℃雰囲気下で53kg/cm/cm、80℃雰囲気下で31kg/cm/cmであり、圧縮剛性評価、耐熱性評価いずれも○であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル系樹脂10〜60重量%とポリスチレン系樹脂40〜90重量%からなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂からなる、密度60〜300kg/m、厚み0.1〜0.5mm、厚み方向の平均セル径Aと押出方向の平均セル径B、幅方向平均セル径Cの比A/BおよびA/Cがいずれも0.2〜1であることを特徴とする変性ポリフェニレンエーテル系樹脂押出発泡フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡フィルムの両面にアルミニウム箔を積層することを特徴とする積層複合材。
【請求項3】
請求項2記載の積層複合材を用いてなるスピーカー。

【公開番号】特開2009−35709(P2009−35709A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40293(P2008−40293)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】