説明

変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン及び接着促進剤としてのそれらの使用

本発明は、1種又はそれ以上の多官能価アルコールで変性された少なくとも1種の塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを含む溶剤系及び水系プライマー組成物を提供する。この塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは、ポリオレフィンと、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルモノマー、アクリルモノマー及びそれらの混合物の少なくとも1種との反応と、それに続く塩素化によって得られる。これらの塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは次に更に、1種又はそれ以上の多官能価アルコールとの反応よって変性させる。これらの多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンはまた、アミン又は無機塩基と親水性塩を形成する傾向があるために多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを水分散性にするカルボキシ側鎖を含むことができる。これらのプライマー組成物は、種々のプラスチック及び金属基材へのペイント、接着剤及びインキの接着を有意に改善するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆組成物(coating composition)の分野に、詳細にはプライマーとして有用な変性ポリオレフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品は、自動車、トラック、家庭電化製品、グラフィックアーツなどにおいて広く用いられている。これらのプラスチック成形品は、ポリエチレン、エチレンコポリマー、ポリプロピレン、プロピレンコポリマーのようなポリオレフィン、及び他のポリマーとのポリオレフィンブレンドから製造されることが多い。このようなブレンドの1つが、ゴム変性ポリプロピレンである熱可塑性ポリオレフィン(TPO)である。これらのプラスチック成形品は、自動車、家庭電化製品又は他の品目中にも存在する被覆金属部品の色に一致させるために塗装する必要がある場合が多い。典型的なペイントは、これらのプラスチック成形品にうまく接着しない。従って、ポリオレフィン材料へのペイントの接着を改善するために、接着促進プライマーが必要とされる。
【0003】
塩素化ポリオレフィン、特に塩素化され、マレイン化された結晶性ポリプロピレンポリマーがこの目的で効果的であるが、それらは芳香族溶剤又は塩素化溶剤以外の溶剤への溶解性が極めて限られる。塩素化ポリオレフィンの塩素含量を増加させることによって種々の溶剤への塩素化ポリオレフェンの溶解性を改善することが可能である。しかし、塩素化ポリオレフィンの塩素含量の増加は、湿気及びガソリンへの暴露後には特に、不良な被覆接着をもたらすことが多い。一般に、24重量%を超える塩素含量は、湿気及びガソリンへの暴露後に不良な接着をもたらすおそれがある。
【0004】
自動車及び家電製品業界用の水系ペイント及びプライマーを提供する試みがなされているが、これらのシステムは一般的に溶剤系のシステムほど有効ではないと考えられている。ポリオレフィン表面へのペイントトップコート用接着促進プライマー組成物を提供するためのポリオレフィンの改質に関して、いくつかの特許が発行されている。
【0005】
特許文献1は溶融状態の結晶性ポリオレフィンを、環中にシス型非共役二重結合を有する脂環式カルボン酸、例えばシス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸若しくはエンドビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸又はいずれかの無水物;或いは不飽和カルボン酸又はその無水物、例えば無水マレイン酸若しくは又はアクリル酸と反応させて、残留カルボン酸モノマーを含む変性結晶性ポリオレフィンを生成させることを記載している。その後、ポリオレフィンを多価アルコール又はポリアミンと反応させ、それによって残留モノマーをポリマー中に固定する。これらの変性ポリオレフィンは、その結晶性のために、液体被覆に使用される溶剤に実質的に不溶となり、従って、液体被覆組成物には不適当になる。これらのポリマーは代わりに固体状態(solid state)で被覆として使用され、ポリマーの更なる加熱、溶融及び成形が必要となる。残留モノマーのポリマーへの固定は、固定を行わなければポリマーのその後の加熱、溶融及び成形時においてモノマーの放出によって生じるであろう臭気を低下させることが教示されている。
【0006】
特許文献2はマレイン酸又は無水マレイン酸とのグラフト共重合による、変性プロピレン−エチレンコポリマーの製造方法を記載している。プロピレンエチレンコポリマーは、50〜75モル%のプロピレン含量と2〜20%の結晶化度(X線回折方によって測定)を有する。グラフト化されるマレイン酸又は無水マレイン酸の量は0.5〜15重量%である。変性ポリマーは少なくとも0.3の極限粘度数(intrinsic viscosity)を有し、有機溶剤中に10〜100kg/cm3の濃度で溶解される。得られる処理剤は、ポリオレフィン製品のアンダーコートとして適当であり、接着が著しく改善されたペイントの被覆を可能にする。
【0007】
特許文献3はペイントを被覆するポリオレフィン造形品の表面にアンダーコートとして使用される表面処理剤を記載している。この表面処理剤は、変性ポリマーの有機溶剤中溶液からなる。この変性ポリマーは、プロピレン−エチレンコポリマーとモノオレフィン性ジカルボン酸のアルキルエステルとのグラフト共重合によって製造される。このアルキルエステルのアルキル部分は、一般式Cn2n+1によって表され、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソプロピル、オクチル又は2−エチルヘキシルである。
【0008】
特許文献4はイミド結合を介してポリオレフィンをヒドロキシル官能基でグラフト変性させる方法を記載している。これらの変性ポリオレフィンは、無水物官能基をポリオレフィン鎖にグラフトさせ、次いで無水物基をアミン置換有機アルコールと反応させてイミドを形成することによって製造される。ポリオレフィン上の得られたイミド基は、種々のトップコートとの架橋に使われるヒドロキシル基を含む。これらのポリオレフィンは、熱可塑性成形用組成物の製造に有用であると教示されている。
【0009】
特許文献5はイミド結合を介して塩素化ポリオレフィンをヒドロキシル官能基でグラフト変性させる方法を記載している。これらの変性ポリオレフィンは、無水物官能基を塩素化ポリオレフィンにグラフトさせ、次いで無水物基をアミン置換有機アルコールと反応させてイミドを形成することによって製造される。塩素化ポリオレフィン上の得られたイミド基は、種々のトップコートとの架橋に使われるヒドロキシル基を含む。
【0010】
特許文献6はモノアルコール及びポリエポキシドと反応させられた酸−又は無水物−グラフト化塩素化ポリオレフィンを記載している。特許文献6に記載された組成物は、不飽和酸又は無水物を塩素化ポリオレフィンにグラフトさせて酸−又は無水物−変性塩素化ポリオレフィン樹脂を生成することによって製造される。この樹脂は次に、有機一価アルコールと反応させて、酸官能基を含むエステル化生成物を生成する。得られたエステル化生成物は次に更にポリエポキシドと反応させて、ゲル化されていない変性塩素化ポリオレフィン樹脂を形成する。次いで、得られた生成物は熱可塑性ポリオレフィン基材用の被覆組成物に配合される。
【0011】
特許文献7は溶剤中で塩素化ポリオレフィンに不飽和カルボン酸をグラフト重合させ、反応系中に存在する全ての不飽和カルボン酸をエステル化し、そして得られた組成物をウレタンプレポリマーと混合することによって得られる被覆樹脂組成物を開示している。
【0012】
特許文献8は無水マレイン酸及びアクリル変性水素化ポリブタジエンによる塩素化ポリオレフィンの変性方法を記載している。この方法は、過酸化物開始剤の存在下における混合物の加熱による、塩素化ポリオレフィンと無水マレイン酸及びアクリレート変性水素化ポリブタジエンとの共重合を含む。これによって、アクリル−及び無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンが得られる。
【0013】
特許文献9は塩素化ポリオレフィン(C)にグラフトされたアクリルモノマー(A)及びポリジエン(B)のグラフトコポリマーを含む樹脂組成物を記載している。アクリルオリゴマーからなるポリオレフィン樹脂組成物は、ヒドロキシル若しくはカルボキシル基及び/又はある種のアクリルオリゴマーを含む。
【0014】
特許文献10はグラフト化工程の間にポリオレフィンを膨潤させるために有機溶剤を使用する、ポリオレフィンへの種々の不飽和モノマーのグラフト化を記載している。
【0015】
特許文献11はポリオレフィン表面にプライマーレス着色ベースコートとして使用するためのグラフトコポリマーの製造方法を記載している。このグラフトコポリマーは、アクリルモノマー、不飽和カルボン酸及びヒドロキシル基を含むアクリルモノマーをある種の塩素化ポリオレフィンと共重合させることによって得られる。
【0016】
特許文献12はグラフト共重合樹脂を基剤とする被覆樹脂組成物の製造方法を記載している。この被覆樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を含むモノマー並びにエチレン性不飽和結合及びヒドロキシル基を両方含むモノマーを、(1)不飽和カルボン酸若しくは無水物をポリオレフィンに共重合させてから塩素化することによって得られたカルボキシル基含有塩素化ポリオレフィン樹脂及び(2)空気、酸素及びオゾンから選ばれた少なくとも1種の酸化剤、硬化剤としてのイソシアネート化合物又はアルキル−エーテル化アミノ樹脂を用いてポリオレフィンの酸化と塩素化を同時に行うことによって得られた塩素化ポリオレフィン樹脂との混合樹脂にグラフト共重合させることによって製造されたグラフト共重合樹脂を含む。
【0017】
特許文献13は末端ヒドロキシル基を有する、実質的に飽和されたポリヒドロキシル化ポリジエンのポリマーと塩素化ポリオレフィンとの混合物、皮膜形成ポリマー及びキャリア材料を含む液体被覆組成物を記載している。この被覆はプラスチック基材に適用して、次に適用される被覆の接着を改善することができる。
【0018】
特許文献14は特許文献13に記載されたのと同様な組成物を記載し、また、熱可塑性及び熱硬化性プラスチック基材上に直接適用できる接着促進被覆としてのその用途を記載している。
【0019】
特許文献15は特定の分子量範囲を有する不飽和カルボン酸無水物変性ポリオレフィンを特定の分子量範囲を有するポリアミドと反応させることによって得られるポリアミド変性ポリオレフィン組成物を開示している。
【0020】
特許文献16は0.5〜40重量%の変性ポリオレフィンとエステル溶剤、ケトン溶剤、脂肪族溶剤、芳香族溶剤及びそれらの混合物からなる群から選ばれた溶剤とを含む溶剤系プライマー組成物を記載している。特許文献16に記載されたポリオレフィンは、不飽和酸、無水物又はエステルでグラフト変性されている。これらの変性ポリオレフィンは、メラミン系及び二液型ポリウレタンペイントで上塗りされる場合に、ポリオレフィン基材用のプライマーとして優れた有用性を有することが報告されている。これらの変性ポリオレフィンは、メラミン系トップコートの良好な初期クロスハッチ接着及び適用後の良好な耐溶剤性を提供するが、これらは耐水性が、高温高湿条件下では、特に欠如している。
【0021】
特許文献17はある種のポリオレフィンを不飽和無水物、不飽和酸又は不飽和エステルで変性させるための溶液法を記載している。
【0022】
特許文献18はハロゲン化ポリオレフィンポリマーとヒドロキシルを末端基とするポリブタジエンとの反応から形成されたグラフトコポリマーを記載している。
【0023】
特許文献19は多官能価アルコールによる非塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの変性及びプラスチック基材への被覆の接着を改善するためのプライマーとしてのそれらの使用を記載している。
【0024】
【特許文献1】米国特許第4,146,590号
【特許文献2】米国特許第4,299,754号
【特許文献3】米国特許第4,461,809号
【特許文献4】米国特許第4,632,962号
【特許文献5】米国特許第4,966,947号
【特許文献6】米国特許第4,997,882号
【特許文献7】米国特許第5,030,681号
【特許文献8】米国特許第5,135,984号
【特許文献9】米国特許第5,143,976号
【特許文献10】米国特許第5,523,358号
【特許文献11】米国特許第5,587,418号
【特許文献12】米国特許第5,811,489号
【特許文献13】米国特許第5,863,646号
【特許文献14】米国特許第6,001,469号
【特許文献15】欧州特許出願番号第1036817 A1号明細書
【特許文献16】米国特許第6,310,134号
【特許文献17】米国特許第6,262,182号
【特許文献18】米国特許第6,593,423号
【特許文献19】米国特許出願番号第20020151656号明細書
【発明の開示】
【0025】
本発明は、多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン、並びに溶剤系及び水系接着促進プライマー組成物へのそれらの使用を提供する。本発明の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルモノマー、アクリルモノマー又はそれらの混合物と反応させて、カルボキシル化ポリオレフィンを生成させることによって製造する。次いで、カルボキシル化ポリオレフィンは、少なくとも1種の塩素化剤との反応によって塩素化する。塩素化カルボキシル化オレフィンは次に更に、1種又はそれ以上の多官能価アルコールとの反応によって変性させる。これらの変性は、接着性能(特にガソリンへの暴露時の)を犠牲にすることなく、典型的な被覆溶剤への改善された溶解性を有する塩素化ポリオレフィンを提供し、溶剤系及び水系の被覆組成物、インキ組成物及び接着剤組成物において有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の物質組成及び方法を開示及び説明する前に、本発明は、特に断りのない限り、特定の方法又は個々の配合物に限定されず、従って開示とは異なることができることを理解されたい。更に、使用する用語は個々の実施態様の説明のみを目的とするのであって、本発明の範囲を制限することを目的としないことも理解されたい。
【0027】
単数形の表現(“a”、“an”、“the”)は、前後関係からそうでないことが明白に示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0028】
「任意の」又は「場合によっては」は、その後に記載される事象又は状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味する。その記載は、その事象又は状況が起こる場合と起こらない場合を含む。
【0029】
範囲は、本明細書中では、約を前置した「一方の特定値」から及び/又は約を前置した「もう一方の特定値」までと表すことができる。このような範囲が表される場合、「一方の特定値」から及び/又は「もう一方の特定値」までは、前記範囲内の全ての組合せと共に別の実施態様である。
【0030】
本明細書の全体を通して、特許又は刊行物を引用する場合、本発明が関連する最新技術をより詳しく説明するために、これらの参考文献が本明細書の記載と矛盾する場合を除いて、これらの参考文献の開示全体を引用することによって本明細書に組み入れるものとする。
【0031】
用語「変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン」及び「変性ポリオレフィン」は、用語「多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン」と等しい。
【0032】
本発明は、多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと溶剤系及び水系接着促進プライマー組成物へのそれらの使用を提供する。従って、第一の実施態様において、本発明は、少なくとも1種の塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと少なくとも1種の多官能価アルコールとの反応生成物を含む多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを提供する。
【0033】
塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは典型的には、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルモノマー、アクリルモノマー又はそれらの混合物と反応させることによって製造する。次いで、カルボキシル化ポリオレフィンを、少なくとも1種の塩素化剤との反応によって塩素化する。塩素化剤は、ポリオレフィンを塩素化することができる、当業界で知られた任意のものであることができる。しかし、これらの2つの工程の順序は本発明には重要でない。本発明において有用な塩素化カルボキシル化ポリオレフィンはまた、カルボキシル含有化合物の導入前にポリオレフィンを塩素化することによって製造することもできる。塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは次に更に、1種又はそれ以上の多官能価アルコールとの反応によって変性させる。
【0034】
本発明における出発原料として有用なポリオレフィンとしては、エチレン及び炭素数3〜約10のα−オレフィンから製造されたエチレンコポリマー、ポリプロピレン、エチレン又は炭素数4〜約10のα−オレフィンから製造されたプロピレンコポリマー、ポリ(1−ブテン)、エチレン又は炭素数3〜約10のα−オレフィンから製造された1−ブテンコポリマー、エチレン及び/又は炭素数4〜約10のα−オレフィンから製造されたプロピレンターポリマーなどが挙げられる。更に、単一ポリオレフィンの使用とは対照的に、前記ポリオレフィンの混合物もこの方法に使用できる。
【0035】
出発原料ポリオレフィンのカルボキシル化において有用なモノマーの例としては、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルモノマー及びアクリルモノマーが挙げられる。一実施態様において、このようなモノマーとしては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、グルタコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−プロピル、マレイン酸ジイソプロピル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ−n−プロピル、フマル酸ジイソプロピル、イタコン酸ジメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル及びそれらの混合物。
【0036】
好ましくは、カルボキシル化用モノマーの濃度は、ポリオレフィンの濃度に基づき、約1〜約25重量%の範囲である。より好ましい範囲は約2〜約20重量%である。約4〜約18重量%の範囲が特に好ましい。
【0037】
これらの前記モノマーは、溶液又は溶融相において、有機過酸化物又はアゾ化合物のようなラジカル開始剤を開始剤として用いて、ポリオレフィンに容易にグラフト化される。一実施態様において、前記モノマーは、米国特許第6,262,182号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載された方法に従って、溶液法でポリオレフィンにグラフト化する。比較的低沸点の溶媒は典型的には除去がより容易であるので、この方法への使用により望ましい。好ましい溶媒としては、クロロベンゼン(b.p.132℃)、tert−ブチルベンゼン(b.p.169℃)及びアニソール(b.p.154℃)が挙げられる。別の実施態様において、前記モノマーは、米国特許第6,046,279号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載された方法に従って押出法でポリオレフィンにグラフト化する。
【0038】
本発明において有用なカルボキシル化ポリオレフィンは更に、少なくとも1種の塩素化剤と反応させて、塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを生成する。望ましくは、前記の溶液法によって製造されたカルボキシル化ポリオレフィンは、カルボキシル化ポリオレフィンの製造に使用した溶媒中で塩素化することができる。別法として、溶媒をカルボキシル化ポリオレフィンから除去して、塩素との反応に適当な任意の溶媒と交換することもできる。前記押出法によって製造されたカルボキシル化ポリオレフィンは典型的には、塩素化反応前に適当な溶媒中に溶解させるものとする。一実施態様において、カルボキシル化ポリオレフィンは、米国特許第4,954,573号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたようにして塩素化する。別の実施態様において、カルボキシル化ポリオレフィンは、米国特許第5,436,079号(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたようにして塩素化する。本発明において有用な塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの塩素含量は、約1〜約40重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲である。
【0039】
本発明の方法において、塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは更に、1種又はそれ以上の多官能価アルコールと反応させる。適当なアルコールは、少なくとも2つのヒドロキシル基又は少なくとも1つのヒドロキシル基と塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと優先的に反応することができるもう1つの官能基を有するものとする。このような優先的に反応する官能基には、アミノ、エポキシなどがある。本発明の一実施態様において、多官能価アルコールの少なくとも1つのヒドロキシル基は、塩素化カルボキシル化ポリオレフィンとは本質的に未反応のままである。
【0040】
多官能価アルコールの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、グルコース、スクロース、2−アミノ−1−プロパノール、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノールなど。一実施態様において、多官能価アルコールは、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群から選ばれる。特に好ましいのは、1つの一級ヒドロキシル基及び1つの二級又は三級ヒドロキシル基を有するそれらの多官能価アルコール、並びに中央の炭素位置(C−2)において二重置換された1,3−プロパンジオールに基づく多官能価アルコールである。これらの特に好ましい多官能価アルコールとしては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール及び2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールが挙げられるが、これらに限定するものではない。塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの変性に使用するポリオールの量は一般に、塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの重量に基づき、約0.01〜約60重量%の範囲である。
【0041】
塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと多官能価アルコールとの反応は、溶媒の存在下でも不存在下でも実施できる。溶媒を用いる場合には、反応は約10〜約200℃の範囲の温度で実施する。選択される反応温度は、反応を完了させるのに必要な時間に影響を及ぼすであろう。溶媒の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:芳香族炭化水素溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、tert−ブチルベンゼン;塩素化溶媒、例えばクロロベンゼン;脂肪族炭化水素溶媒、例えばナフサ、ミネラルスピリット及びヘキサン;並びにエステル溶媒、例えば酢酸プロピル及び酢酸ブチル。所望ならば、溶媒の混合物も使用できる。
【0042】
所望ならば、多官能価アルコールは、塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの製造に使用した溶媒中で塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと反応させることができる。別法として、溶媒を塩素化カルボキシル化ポリオレフィンから除去して、多官能価アルコールとの反応に適当な任意の溶媒と交換することもできる。
【0043】
塩素化カルボキシル化ポリオレフィンが無水物基を含む場合には、この材料を多官能価アルコールと反応させて対応するモノエステル及び半酸基を生成するのに触媒は必要ない。しかし、例えばアルキル又はアリールアルキルスルホン酸のような触媒を使用して、多官能価アルコールと塩素化カルボキシル化ポリオレフィンとの反応の速度を増加させることができる。また、所望ならば、ポリオレフィン上の残りの半酸基を次に更に、過剰の多官能価アルコールの存在下でより高い温度において多官能価アルコールと反応させて、対応するジエステルを生成することもできる。半酸基の全てを完全にエステル化するためには、触媒は必要な場合と必要でない場合がある。
【0044】
マレイン酸ジメチルのようなエステルモノマーをポリオレフィン基材にグラフト化させることによって塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを製造する場合には、多官能価アルコールと塩素化カルボキシル化ポリオレフィンとの反応を促進するために、チタン触媒のような触媒を使用するのが望ましい場合がある。適当なチタン触媒としては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトライソブトキシドなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0045】
多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン樹脂は、典型的な被覆溶剤、例えばトルエン、キシレン、ナフサ、ミネラルスピリット、ヘキサン、及びエステル溶媒、例えば酢酸プロピル及び酢酸ブチル、並びにケトン、例えばメチルアミルケトン中に可溶である。所望ならば、溶媒の混合物も使用できる。
【0046】
本発明の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンはまた、アミンと親水性の塩を形成する傾向があるために、本発明の変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを水分散性にすることができるカルボン酸側基を含むことができる。変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは、ヒドロキシエステル官能基及びカルボン酸官能基の両方の組合せを含むことができる。例えば、これは、無水物官能性塩素化ポリオレフィンと2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール又は2−エチル−1,3−ヘキサンジオールとを反応させて、ヒドロキシエステル官能基及びカルボン酸官能基の両方を含む変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを生成することによって達成できる。
【0047】
カルボキシル側基を有する変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは、アミン(有機アミン若しくはアンモニア)又は他の無機塩基(即ち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)によるカルボキシル基の少なくとも一部の中和によって水分散性にすることもできることは、当業者ならば容易に理解できる。これらの変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは、アミン又は他の無機塩基及び水の存在下で変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを乳化することによって分散させることができ;分子量及び酸価によっては、少なくとも1種の界面活性剤、少なくとも1種のアミン及び水を用いることが望ましいか又は必要ですらある場合がある。カルボキシル化ポリオレフィンを分散させるためのこの方法は、米国特許第5,373,048号に記載されており、この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0048】
本発明において有用な界面活性剤の1つの群は、広範囲には非イオン性界面活性剤として記載することができる。これらの界面活性剤は、500又はそれ以上の分子量を有することができ、ポリマー材料を含むことができる。界面活性剤は、種々の極性の基を含む材料を含み、それによって分子の一部分が親水性であり且つ分子の他の部分が疎水性である。このような材料の例としては、エトキシル化アルキルフェノール及びエトキシル化脂肪族アルコール(第一アルコール及び第二アルコール)が挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましくは、界面活性剤は、前駆体アルコール中の炭素数が12〜15であるエトキシル化第一アルコール又は前駆体アルコール中の炭素数が11〜15であるエトキシル化第二アルコールである。エトキシル化アルキルフェノール界面活性剤の例としては、Stepan Companyによって販売されているIGEPAL(登録商標)CO−710、Dow Chemical Companyによって販売されているTERGITOL(登録商標)NP−9及びTERGITOL(登録商標)NP−40が挙げられるが、これらに限定するものではない。エトキシル化第一アルコールの例としては、Shell Chemical Companyによって販売されているNEODOL(登録商標)25−9及びNEODOL(登録商標)25−12が挙げられる。エトキシル化第二アルコールの例としては、Dow Chemical Comapnyによって販売されているTERGITOL(登録商標)15−S−9及びTERGITOL(登録商標)15−S−15が挙げられる。界面活性剤の量は広範囲には、変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの重量に基づき、0〜約50重量%、好ましくは0〜25重量%の範囲である。界面活性剤の他の例としては、米国特許第5,663,266号に記載されたものが挙げられ、この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0049】
アミンは第一、第二又は第三アミンであることができる。アミンは芳香族又は脂肪族であることができるが、脂肪族アミンが好ましい。典型的なアミンとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:アンモニア、水酸化アンモニウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モルホリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなど。アミンの他の例としては、米国特許第5,373,048号に記載されたものが挙げられ、この特許を引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0050】
使用できる無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0051】
多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの水性分散液の製造に使用するアミン又は無機塩基の量は、利用できるカルボキシル基の約10〜約200%、好ましくは50〜120%を効果的に中和するような量とする。
【0052】
水の量は広範に変化可能であり、使用する水の量に上限はない。成分混合物の形成に充分な水を組成物中に存在させなければならないので、水の上には下限がある場合がある。本発明の一実施態様において、総組成物の重量に基づき、少なくとも50重量%の水が組成物中に存在する。
【0053】
前述のように、本発明の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは、ペイント接着が不良な基材に被覆するためのプライマーとして特に有用である。従って、このような樹脂を基材(例えばプラスチック又は金属)に適用し、乾燥させてから、これに従来のトップコート被覆組成物を適用することができる。変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは、溶媒中で製造されたまま使用することもできるし、或いは前記溶媒のいずれかで更に稀釈することもできる。変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの水性分散液はまた、製造されたまま基材に適用することもできるし、或いは水で更に稀釈することもできる。所望ならば、補助溶媒を使用して、変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの水性分散液を稀釈することもできる。これに関連して、本発明の水性組成物に適当な補助溶媒としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール及び他の水混和性溶媒。
【0054】
或いは、本発明の変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンは、種々の溶剤性又は水性被覆組成物とブレンドして、このような基材の被覆に有用なセルフプライム組成物を提供することができる。これに関連して、このような溶剤性又は水性被覆組成物は、典型的には任意の数の従来の被覆樹脂、例えばポリエステル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂などからなる任意の被覆組成物であることができる。加えて、このような組成物は1種又はそれ以上の典型的な被覆添加剤を更に含むこともできる。従って、本発明の更なる態様として、本明細書中に記載した本発明の変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを含み、更に1種又はそれ以上の被覆添加剤、例えば、レベリング、レオロジー及び流量調整剤、例えば珪素樹脂、フルオロカーボン樹脂若しくはセルロース樹脂;高架橋粒子を含む中和カルボン酸含有ラテックス粒子:会合性増粘剤;艶消し剤;顔料湿潤及び分散剤並びに界面活性剤;紫外線(UV)吸収剤;UV線安定剤;色味付け顔料;脱泡剤及び消泡剤;沈澱防止、垂れ防止及び粘度付与剤;皮張り防止剤;浮き色防止及び色別れ防止剤;殺真菌剤及びカビ駆除剤;腐蝕防止剤;増粘剤;又は融合助剤を含む塗料組成物が提供される。
【0055】
このような添加剤の具体例は、the National Paint & Coatings Association(1500 Rhode Island Avenue,N.W.,Washington,D.C.20005)によって発行されたRaw Materials Indexに記載されている。
【0056】
艶消し剤の例としては、Davision Chemical Division of W.R.Grace & CompanyからSYLOID(登録商標)として入手可能な合成シリカ;Hercules Inc.からHERCOFLAT(登録商標)として入手可能なポリプロピレン;及びJ.M.Huber CorporationからZEOLEX(登録商標)として入手可能な合成シリケートが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0057】
分散剤及び界面活性剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:スルホスクシン酸ビス(トリデシル)ナトリウム[sodium bis(tridecyl) sulfosuccinnate]、スルホスクシン酸ナトリウムジ(2−エチルヘキシル)[di(2−ethylhexyl) sodium sulfosuccinnate]、ジヘキシルスルホスクシン酸ナトリウム[sodium dihexylsulfosuccinnate]、スルホスクシン酸ジシクロヘキシルナトリウム[sodium dicyclohexyl sulfosuccinnate]、スルホスクシン酸ナトリウムジアミル[diamyl sodium sulfosuccinnate]、スルホスクシン酸ジイソブチルナトリウム[sodium diisobutyl sulfosuccinnate]、スルホスクシン酸イソデシル二ナトリウム[disodium iso−decyl sulfosuccinnate]、スルホスクシン酸のエトキシル化半エステル二ナトリウム塩[disodium ethoxylated alcohol half ester of sulfosuccinnic acid]、アルキルアミドポリエトキシスルホスクシン酸二ナトリウム[disodium alkyl amido polyethoxy sulfosuccinnate]、スルホスクシンアミド酸N−(1,2−ジカルボキシ−エチル)−N−オクタデシル四ナトリウム[tetrasodium N−(1,2−dicarboxy−ethyl)−N−octadecyl sulfosuccinnamate]、N−オクタスルホスクシンアミド酸二ナトリウム[disodium N−octasulfosuccinnamate]、硫酸化エトキシル化ノニルフェノールなど。
【0058】
粘度、懸濁及び流量調整剤の例としては、ポリアミノアミドホスフェート、ポリアミンアミドの高分子量カルボン酸塩及び不飽和脂肪酸のアルキレンアミン塩(全て、BYK Chemie U.S.A.からANTI TERRA(登録商標)として入手可能)が挙げられるが、これらに限定するものではない。更なる例としては、ポリシロキサンコポリマー、ポリアクリレート溶液、セルロースエステル、ヒドロキシエチルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアミドワックス、ポリオレフィンワックス、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム及びポリエチレンオキシドが挙げられるが、これらに限定するものではない。増粘剤の他の例としては、メタン/エチレンオキシド会合性増粘剤及び水溶性カルボキシル化増粘剤、例えばDow Chemical ComapnyによってUCAR POLYPHOBE(登録商標)として販売されているものが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0059】
いくつかの有標消泡剤、例えばBuckman Laboratories Inc.の登録商標BRUBREAK、BYK Chemie、U.S.A.のBYK(登録商標)、CognisのFOAMASTER(登録商標)及びNOPCO(登録商標)、Drew Industrial Division of Ashland Chemical CompanyのDREWPLUS(登録商標)、Troy Chemical CorporationのTROYSOL(登録商標)及びTROYKYD(登録商標)、Dow Chemical CompanyのSAG(登録商標)として市販されている。
【0060】
殺真菌剤、カビ駆除剤及び殺生物剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:4,4−ジメチルオキサゾリジン、3,4,4−トリメチルオキサゾリジン、変性メタ硼酸バリウム、N−ヒドロキシ−メチル−N−メチルジチオカルバミン酸カリウム、2−(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、ジチオカルバミン酸ジメチルカリウム、アダマンタン、N−(トリクロロメチルチオ)フタルイミド、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、オルトフェニルフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、デヒドロ酢酸、ナフテン酸銅、オクタン酸銅、有機砒素化合物、トリブチル錫オキシド、ナフテン酸亜鉛及び8−キノリン酸銅。
【0061】
紫外線吸収剤及び紫外線安定剤の例としては、置換ベンゾフェノン、置換ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン、及びヒンダードベンゾエート(Cytec Industriesから登録商標CYASORB UVとして入手可能)、及びジエチル−3−アセチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−ホスホネート、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、及びレソルシノールモノベンゾエートが挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0062】
前述のこのようなペイント又は被覆添加剤は、被覆組成物の比較的わずかな比率を、好ましくは約0.05〜約5.0重量%を構成する。
【0063】
本発明の更なる態様として、1種又はそれ以上の顔料及び/又は充填剤を、被覆組成物の成分の総重量に基づき、約0.5〜約50重量%、好ましくは約5〜約30重量%の濃度で更に含む前記被覆組成物が提供される。
【0064】
本発明によって想定される被覆組成物への使用に適当な顔料は、表面被覆の業界における通常の技術を有する者によく知られた、典型的な有機及び無機顔料、特にthe Society of Dyers and Colouristsとthe American Association of Textile Chemists and Coloristsによって共同出版されたthe Color Index,3d Ed.,2d Rev.,1982に記載されたものである。例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:CI Pigment Black 7(カーボンブラック);CI Pigment White 6(二酸化チタン);CI Pigment Red 101(赤色酸化鉄);CI Pigment Yellow 42;CI Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4(銅フタロシアニン);CI Pigment Red 49:1;及びCI Pigment Red 57:1。
【0065】
セルフプライム組成物を形成するための発明の溶剤系及び水系の両方の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン並びに従来の被覆配合物とそれらとの前記ブレンドは、噴霧適用、浸漬、又は多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの基材への均一被覆を可能にする利用可能な任意の他の手段によって基材に適用することができる。次いで、ペイント、接着剤及びインキのような、その後の追加被覆層を、本発明のプライマーの上に適用することができる。
【実施例】
【0066】
本発明をその好ましい実施態様に関する以下の実施例によって更に説明することができるが、これらの実施例は説明のためにのみ記載するのであって、本発明の範囲を限定することを目的としないことがわかるであろう。
【0067】
本発明の種々の変性ポリオレフィンの性能を評価するために、以下の試験を用いた。
【0068】
耐ガソリン性(Ford修正−Juntunen法の簡略記載)
塗装試験サンプルを鋭いナイフでけがいて、100個の正方形を作る。けがいた試験サンプルを45/45/10のイソオクタン/トルエン/エタノール混合物中に浸漬し、アルミ箔で覆う。15分間の浸漬後、試験サンプルを、はがれた又はふくれを生じた正方形の数について評価する。試験サンプルが60分間浸漬されるか又は全ての正方形がはがれるまで、これを15分ごとに繰り返す。保持されたペイントのパーセントと、基材からはがされなかったペイントの浮き上がり度を各評価期間において記録する。
【0069】
クロスカットテープ試験(ASTM 3359方法Bの簡略記載)
塗装試験サンプルを鋭いナイフでけがいて、25個の正方形を作る。けがいた領域の上にテープ片の中央をのせ、消しゴム又は他の物体でテープを所定の位置にしっかりと擦り込む。テープを、その自由端をつかみ且つ可能な限り90°に近くなるようにして素早く剥がし戻すことによって、取り除く。保持されたペイントのパーセントを記録する。
【0070】
耐湿性(ASTM D4585の簡略記載)
塗装面がクリーブランド湿度キャビネット(Cleveland Humidity cabinet)の内側に向くように、試験片を取り付ける。蒸気の損失及び温度の変動を防ぐために、試験片間の全ての亀裂を閉じる。サーモスタットを調節して、120°Fの蒸気温度に設定する。試験片を定期的に取り除き、接着性及びふくれ形成に関してクロスカットテープ試験によって試験する。
【0071】
比較例1
機械的オーバーヘッドスターラー、熱電対、添加用漏斗及び窒素アダプターを有する凝縮器を装着した2Lの3つ口丸底フラスコに、ポリプロピレン(Epolene G−3015)180.0g及びクロロベンゼン850gを装入した。混合物を110℃に加熱し、同温度に1.5時間保持した。ベンゾイルペルオキシド(2.5g)のクロロベンゼン(31.6g)中溶液を、無水マレイン酸(9.3g)のアセトン(13.7g)中溶液に添加した。合した溶液を、反応フラスコに取り付けた添加用漏斗に装入した。この溶液を110℃において2.5時間かけて1滴ずつ装入した。次いで、反応混合物を更に4時間、110℃に保持した。系の圧力を徐々に364トルまで低下させ、留出物が125mL採取されるまで同レベルに保持した。未使用のクロロベンゼン(125mL)を反応フラスコに戻した。反応混合物を117℃に加熱した。50ml/分の速度で30分間、100ml/分に増加させて更に30分間、ガス分散管を経て窒素を反応混合物を通してパージした(表面下)。反応温度を116〜119℃に保持しながら、塩素(163.2g)をガス分散管を経て13時間かけて反応フラスコに装入した。反応混合物を100ml/分の速度で30分間窒素でパージした(表面下)。反応混合物を80℃に冷却し、クロロベンゼン溶媒の蒸留を開始するために圧力を低下させた。圧力が約93℃において0トルに達するまで、蒸留を続けた。キシレン(932g)を反応フラスコに戻し、塩素化ポリマーが完全に溶解するまで、得られた混合物を80〜60℃に保持した。反応混合物を濾過して不溶の粒子状物質を除去し、ガラス容器中に注いだ。最終溶液は固形分が20.0%であった。塩素化マレイン化ポリオレフィンの酸価は、22.1mg KOH/g(100%固形分ベース)であることが測定された。塩素化マレイン化ポリオレフィンの塩素含量は24.2%であることが測定された。噴霧適用のために、反応混合物をトルエン中で固形分5%まで稀釈した。
【0072】
この組成物を、熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEMメラミン硬化1K白色ベースコート及びOEMメラミン硬化1Kクリアコートを上塗りした。塗布したTPOプラックを250°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0073】
この組成物を熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEM 2Kウレタン白色ベースコート及びOEM 2Kウレタンクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを177°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0074】
これは、多官能価アルコールで変性されていない、塩素24.2重量%を含む塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの例である。
【0075】
比較例2
機械的オーバーヘッドスターラー、熱電対、添加用漏斗及び窒素アダプターを有する凝縮器を装着した2Lの3つ口丸底フラスコに、ポリプロピレン(Epolene G−3015)180.0g及びクロロベンゼン846gを装入した。混合物を110℃に加熱し、同温度に1.5時間保持した。ベンゾイルペルオキシド(2.5g)のクロロベンゼン(31.6g)中溶液を、無水マレイン酸(9.3g)のアセトン(13.7g)中溶液に添加した。合した溶液を、反応フラスコに取り付けた添加用漏斗に装入した。この溶液を110℃において2.5時間かけて1滴ずつ装入した。次いで、反応混合物を更に4時間、110℃に保持した。系の圧力を徐々に360トルまで低下させ、留出物が125mL採取されるまで同レベルに保持した。未使用のクロロベンゼン(125mL)を反応フラスコに戻した。反応混合物を117℃に加熱した。100ml/分の速度で30分間、ガス分散管を経て窒素を反応混合物を通してパージした(表面下)。反応温度を116〜119℃に保持しながら、塩素(174.6g)をガス分散管を経て14時間かけて反応フラスコに装入した。反応混合物を100ml/分の速度で30分間窒素でパージした(表面下)。反応混合物を80℃に冷却し、クロロベンゼン溶媒の蒸留を開始するために圧力を低下させた。圧力が約90℃において0トルに達するまで、蒸留を続けた。キシレン(946g)を反応フラスコに戻し、塩素化マレイン化ポリプロピレンが完全に溶解するまで、得られた混合物を80〜55℃に保持した。反応混合物を濾過して不溶の粒子状物質を除去し、ガラス容器中に注いだ。最終溶液は固形分が19.9%であった。塩素化マレイン化ポリオレフィンの酸価は、23.3mg KOH/g(100%固形分ベース)であることが測定された。塩素化マレイン化ポリオレフィンの塩素含量は25.8%であることが測定された。噴霧適用のために、反応混合物をトルエン中で固形分5%まで稀釈した。
【0076】
この組成物を、熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEMメラミン硬化1K白色ベースコート及びOEMメラミン硬化1Kクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを250°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0077】
この組成物を熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEM 2Kウレタン白色ベースコート及びOEM 2Kウレタンクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを177°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0078】
これは、多官能価アルコールで変性されていない、塩素25.8重量%を含む塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの例である。
【0079】
比較例3
機械的オーバーヘッドスターラー、熱電対、添加用漏斗及び窒素アダプターを有する凝縮器を装着した2Lの3つ口丸底フラスコに、ポリプロピレン(Epolene G−3015)180.0g及びクロロベンゼン847gを装入した。混合物を110℃に加熱し、同温度に1.5時間保持した。ベンゾイルペルオキシド(1.6g)のクロロベンゼン(20.0g)中溶液を、無水マレイン酸(5.8g)のアセトン(8.8g)中溶液に添加した。合した溶液を、反応フラスコに取り付けた添加用漏斗に装入した。溶液を110℃において2.5時間かけて1滴ずつ装入した。次いで、反応混合物を更に4時間、110℃に保持した。系の圧力を徐々に333トルまで低下させ、留出物が128mL採取されるまで同レベルに保持した。未使用のクロロベンゼン(128mL)を反応フラスコに戻した。反応混合物を117℃に加熱した。100ml/分の速度で30分間、ガス分散管を経て窒素を反応混合物を通してパージした(表面下)。反応温度を116〜119℃に保持しながら、塩素(150.0g)をガス分散管を経て11.5時間かけて反応フラスコに装入した。反応混合物を100ml/分の速度で30分間窒素でパージした(表面下)。反応混合物を80℃に冷却し、クロロベンゼン溶媒の蒸留を開始するために圧力を低下させた。圧力が約78℃において0トルに達するまで、蒸留を続けた。Aromatic 100とトルエンの溶媒混合物(904g,Aromatic 100が82重量%,トルエンが18重量%)を反応フラスコに戻し、塩素化ポリマーが完全に溶解するまで、得られた混合物を80〜55℃に保持した。反応混合物を濾過して不溶の粒子状物質を除去し、ガラス容器中に注いだ。最終溶液は固形分が19.9%であった。塩素化マレイン化ポリオレフィンの酸価は、21.0mg KOH/g(100%固形分ベース)であることが測定された。塩素化マレイン化ポリオレフィンの塩素含量は23.5%であることが測定された。噴霧適用のために、反応混合物をトルエン中で固形分5%まで稀釈した。
【0080】
この組成物を、熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEMメラミン硬化1K白色ベースコート及びOEMメラミン硬化1Kクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを250°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0081】
この組成物を熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEM 2Kウレタン白色ベースコート及びOEM 2Kウレタンクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを177°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0082】
これは、多官能価アルコールで変性されていない、塩素23.5重量%を含む塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの例である。
【0083】
実施例1
機械的オーバーヘッドスターラー、熱電対、及び窒素アダプターを有する凝縮器を装着した2Lの3つ口丸底フラスコに、塩素化マレイン化ポリオレフィン(キシレン中固形分20.0%,比較例1に記載したようにして製造)680.8g及び2−エチル−1,3−ヘキサンジオール24.2gを装入した。混合物を50℃に加熱し、同温度に7.5時間保持した。反応混合物をガラス容器中に注いだ。噴霧適用のために、反応混合物をトルエン中で固形分5%まで稀釈した。
【0084】
この組成物を、熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEMメラミン硬化1K白色ベースコート及びOEMメラミン硬化1Kクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを250°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0085】
この組成物を熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEM 2Kウレタン白色ベースコート及びOEM 2Kウレタンクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを177°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0086】
これは、多官能価アルコールで変性された、塩素24.2重量%を含む塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの例であり、ポリオレフィン表面へのウレタン及びメラミン硬化被覆の優れた接着性を提供し且つ優れた耐湿性及び耐ガソリン性を提供する接着促進剤を生成する。
【0087】
実施例2
機械的オーバーヘッドスターラー、熱電対及び窒素アダプターを有する凝縮器を装着した2Lの3つ口丸底フラスコに、塩素化マレイン化ポリオレフィン(キシレン中固形分19.9%,比較例2に記載したようにして製造)639.4g及び2−エチル−1,3−ヘキサンジオール22.4gを装入した。混合物を50℃に加熱し、同温度に8.0時間保持した。反応混合物をガラス容器中に注いだ。噴霧適用のために、反応混合物をトルエン中で固形分5%まで稀釈した。
【0088】
この組成物を、熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEMメラミン硬化1K白色ベースコート及びOEMメラミン硬化1Kクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを250°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0089】
この組成物を熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEM 2Kウレタン白色ベースコート及びOEM 2Kウレタンクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを177°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0090】
これは、多官能価アルコールで変性された、塩素25.8重量%を含む塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの例であり、ポリオレフィン表面へのウレタン及びメラミン硬化被覆の優れた接着性を提供し且つ優れた耐湿性及び耐ガソリン性を提供する接着促進剤を生成する。
【0091】
実施例3
機械的オーバーヘッドスターラー、熱電対及び窒素アダプターを有する凝縮器を装着した2Lの3つ口丸底フラスコに、塩素化マレイン化ポリオレフィン(キシレン中固形分19.9%,比較例3に記載したようにして製造)678.6g及び2−エチル−1,3−ヘキサンジオール18.4gを装入した。混合物を50℃に加熱し、同温度に7.0時間保持した。反応混合物をガラス容器中に注いだ。噴霧適用のために、反応混合物をトルエン中で固形分5%まで稀釈した。
【0092】
この組成物を、熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEMメラミン硬化1K白色ベースコート及びOEMメラミン硬化1Kクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを250°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0093】
この組成物を熱可塑性オレフィン(TPO)試験プラック上にプライマーとして噴霧適用し、10分間空気乾燥させた。プライマーの適用後、パネルにOEM 2Kウレタン白色ベースコート及びOEM 2Kウレタンクリアコートを上塗りした。被覆したTPOプラックを177°Fで40分間加熱乾燥させ、周囲温度で1週間エージングさせた。初期接着性及び湿気暴露後の接着性を表Iに示す。耐ガソリン性を表IIに示す。
【0094】
これは、多官能価アルコールで変性された、塩素23.5重量%を含む塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの例であり、ポリオレフィン表面へのウレタン及びメラミン硬化被覆の優れた接着性を提供し且つ優れた耐湿性及び耐ガソリン性を提供する接着促進剤を生成する。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
実施例4
機械的オーバーヘッドスターラー、熱電対及び窒素アダプターを有する凝縮器を装着した1Lの4つ口丸底フラスコに、ジオール変性塩素化マレイン化ポリオレフィン(キシレン中固形分19.7%,実施例1に記載したようにして製造)273.2g及びTriton N−101(非イオン性界面活性剤,Dow Chemical Comapnyの製品)13.5gを装入した。混合物を85℃に加熱し、キシレンの蒸留を開始するために圧力を低下させた。圧力が80℃において約20トルに達するまで、蒸留を続けた。圧力を大気圧に調整し、フラスコ内部の温度を70〜90℃に保持しながら、脱イオン水(356g)中N,N−ジメチルエタノールアミン(2.65g,DMEA)の温(約50℃)溶液を添加用漏斗から溶融ポリマーに15分かけて装入した。フラスコ内容物を加熱して、残留キシレンをキシレン−水共沸混合物の形態で留去した。合計48mLの留出物を回収した後、フラスコ内容物を30℃に冷却した。得られた分散液を100ミクロンのポリエステルフィルターを通して濾過して、分散されなかった固体残渣を除去し、ガラス容器中に注いだ。最終分散液は固形分が16.5%で、pHが8.8であった。
【0098】
これは、水中に分散された、ジオール変性塩素化マレイン化ポリオレフィンの例である。
【0099】
本発明を、特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内において変動及び変更が可能なことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと少なくとも1種の多官能価アルコールとの反応生成物を含んでなる多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項2】
前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンがエチレン及び炭素数3〜約10のα−オレフィンから製造されたエチレンコポリマー;ポリプロピレン;エチレン又は炭素数4〜約10のα−オレフィンを含むプロピレンコポリマー;ポリ(1−ブテン);エチレン及び/又は炭素数4〜約10のα−オレフィンから製造されたプロピレンターポリマー;並びに1−ブテン及びエチレン又は炭素数3〜約10のα−オレフィンから製造された1−ブテンコポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィンポリマーと、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルモノマー並びにアクリルモノマーからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーと、塩素との反応生成物である請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項3】
前記の少なくとも1種のモノマーが無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、グルタコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−プロピル、マレイン酸ジイソプロピル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジ−n−プロピル、フマル酸ジイソプロピル、イタコン酸ジメチル及びそれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1員を含む請求項2に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項4】
前記の少なくとも1種のモノマーの重量が、ポリオレフィンポリマーの重量に基づき、約1〜約25重量%の範囲である請求項2に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項5】
前記の少なくとも1種のモノマーの重量が、ポリオレフィンポリマーの重量に基づき、約2〜約20重量%の範囲である請求項2に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項6】
前記の少なくとも1種のモノマーの重量が、ポリオレフィンポリマーの重量に基づき、約4〜約18重量%の範囲である請求項2に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項7】
前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンが、前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの重量に基づき、約1〜約40重量%の塩素含量を有する請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項8】
前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンが、前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの重量に基づき、約5〜約35重量%の塩素含量を有する請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項9】
前記の少なくとも1種の多官能価アルコールがエチレングリコール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、スチレンポリオール、スチレン−アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、グルコース及びスクロースからなる群から選ばれた少なくとも1員を含む請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項10】
前記多官能価アルコールが1つの一級ヒドロキシル基及び1つの二級又は三級ヒドロキシル基を含む請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項11】
前記多官能価アルコールが2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール及び1,2−プロピレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも1員である請求項10に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項12】
前記多官能価アルコールが2つのアルキル基を含む炭素によって隔てられた2つの一級ヒドロキシル基を含む請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項13】
前記多官能価アルコールが2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール及びネオペンチルグリコールからなる群から選ばれた少なくとも1員である請求項12に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項14】
前記多官能価アルコールが、ヒドロキシル基に比較して、塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと優先的に反応することができる1つの非ヒドロキシル官能基と1つのヒドロキシル基を含む請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項15】
前記多官能価アルコールがエタノールアミン、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン及び2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノールからなる群から選ばれた少なくとも1員である請求項14に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン。
【請求項16】
少なくとも1種の塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと少なくとも1種の多官能価アルコールとを接触させることを含んでなる多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項17】
前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを、最初にポリオレフィンを不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルモノマー及びアクリルモノマーからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーと接触させてカルボキシル化ポリオレフィンを生成させ、次いで前記カルボキシル化ポリオレフィンを少なくとも1種の塩素化剤と接触させて塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを生成させることによって、製造する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カルボキシル化ポリオレフィンを溶液法又は押出法によって製造する請求項16に記載の方法。
【請求項19】
カルボキシル化のための溶液法において使用する溶媒を、次の塩素化に使用する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
カルボキシル化のための溶液法とは異なる溶媒を塩素化に用いる請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記押出法において製造される前記カルボキシル化ポリオレフィンを、次の塩素化のための少なくとも1種の溶媒中に溶解させて、塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを生成させる請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを、最初にポリオレフィンを少なくとも1種の塩素化剤と接触させて塩素化ポリオレフィンを生成させ、次いで前記塩素化ポリオレフィンを不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルモノマー及びアクリルモノマーからなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマーと接触させて塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを生成させることによって製造する請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記塩素化ポリオレフィンを溶液法で前記モノマーと接触させて、前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを生成させる請求項21に記載の方法。
【請求項24】
塩素化のための溶液法に使用する溶媒を、次のカルボキシル化に使用する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
カルボキシル化のための溶液法とは異なる溶媒を塩素化に用いる請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと前記多官能価アルコールとの前記接触を溶媒の存在下で実施する請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記接触を約10〜約200℃の範囲の温度で実施する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒が前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの製造に使用するのと同じである請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記溶媒が前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンの製造に使用する溶媒とは異なる請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記塩素化カルボキシル化ポリオレフィンと前記多官能価アルコールとの反応に触媒を使用する請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記触媒がアルキル又はアルールアルキルスルホン酸である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
過剰の多官能価アルコールを用いて対応するジエステルを生成させる請求項16に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン及び溶剤を含んでなる溶剤系プライマー組成物。
【請求項34】
前記溶剤がエステル溶剤、ケトン溶剤、脂肪族溶剤、芳香族溶剤及びそれらの混合物からなる群から選ばれた1員を含む請求項33に記載の溶剤系プライマー組成物。
【請求項35】
アミン又は無機塩基と請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンとの反応生成物;水;及び、場合によっては、界面活性剤を含んでなる水系プライマー組成物。
【請求項36】
前記界面活性剤が存在し且つ非イオン性界面活性剤である請求項35に記載の水系プライマー組成物。
【請求項37】
前記アミンが脂肪族アミンである請求項36に記載の水系プライマー組成物。
【請求項38】
前記アミンがアンモニア、水酸化アンモニウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロパノールアミン、モルホリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール及びN−メチルジエタノールアミンからなる群から選ばれた少なくとも1員である請求項37に記載の水系プライマー組成物。
【請求項39】
少なくとも1種の被覆用樹脂;請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィン;更に、場合によっては、レベリング剤、レオロジー剤及び流量調整剤;会合性増粘剤、艶消し剤、顔料湿潤及び分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、色味付け顔料、脱泡剤、消泡剤、沈澱防止剤、垂れ防止剤、粘度付与剤、皮張り防止剤;浮き色防止剤、色別れ防止剤、殺真菌剤、カビ駆除剤、腐蝕防止剤、増粘剤並びに融合助剤からなる群から選ばれた1種又はそれ以上の添加剤を含んでなるプライマー組成物。
【請求項40】
少なくとも1種の顔料を更に含む請求項39に記載のプライマー組成物。
【請求項41】
前記被覆用樹脂がポリエステル、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる請求項39に記載のプライマー組成物。
【請求項42】
請求項33に記載の溶剤系プリマー組成物を含むプライマー被覆が、更に場合によっては被覆組成物を含むペイントトップコートが表面に被覆された造形品又は二次成形品基材を含んでなる製品。
【請求項43】
前記被覆組成物がポリエステル、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の被覆用樹脂を含む請求項42に記載の製品。
【請求項44】
前記製品基材が金属又はプラスチックを含む請求項42に記載の製品。
【請求項45】
請求項35に記載の水系プライマー組成物を含むプライマー被覆が、更に場合によっては被覆組成物を含むペイントトップコートが表面に被覆された造形品又は二次成形品基材を含む製品。
【請求項46】
前記被覆組成物がポリエステル、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の被覆用樹脂を含む請求項45に記載の製品。
【請求項47】
前記製品基材が金属又はプラスチックである請求項46に記載の製品。
【請求項48】
請求項39に記載のプライマー組成物を含むプライマー被覆が、更に場合によっては、被覆組成物を含むペイントトップコートが表面に被覆された造形品又は二次成形品基材を含んでなる製品。
【請求項49】
前記被覆組成物がポリエステル、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の被覆用樹脂を含む請求項48に記載の製品。
【請求項50】
前記製品基材が金属又はプラスチックを含む請求項49に記載の製造品。
【請求項51】
接着剤及び請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを含んでなる接着剤組成物。
【請求項52】
インキ組成物及び請求項1に記載の多官能価アルコール変性塩素化カルボキシル化ポリオレフィンを含んでなるインキ組成物。

【公表番号】特表2008−516053(P2008−516053A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535834(P2007−535834)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2005/036114
【国際公開番号】WO2006/042094
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】