説明

変性石油樹脂エマルジョン及びそれを用いたアクリル系粘着剤組成物

本発明は、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位10〜100質量%および炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位0〜90質量%からなり、軟化点30℃以上、かつ酸価が0.1〜100KOHmg/gである変性石油樹脂を含有してなる変性石油樹脂エマルジョンであり、ポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力に優れ、かつ、初期接着力及び保持力のバランスにも優れたアクリル系粘着組成物、及び該粘着剤組成物用の粘着付与剤として好適な変性石油樹脂エマルジョンを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性石油樹脂エマルジョン及びそれを用いたアクリル系粘着剤組成物に関し、さらに詳しくは、特にポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力に優れ、かつ、初期接着力及び保持力のバランスにも優れたアクリル系粘着剤組成物、及び該粘着剤組成物用の粘着付与剤として好適な変性石油樹脂エマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系重合体エマルジョンを主成分とする水性の粘着剤組成物は、無色透明で耐老化性に優れ、かつ有機溶剤の揮散による環境問題が発生し難いことから広く使用されている。このようなアクリル系粘着剤組成物には、剥離接着力、初期接着力、保持力などの粘着特性を向上させる目的で、通常、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂および石油樹脂系粘着付与樹脂などの粘着付与樹脂が配合されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アクリル系重合体エマルジョンに、スチレンやα−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体単位を10〜60質量%含有し、軟化点が10〜120℃である石油樹脂からなるエマルジョンを配合した水性のアクリル系粘着剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、アクリル系重合体エマルジョンに、ビニルトルエン、インデンなどのC9留分を重合して得られた芳香族系炭化水素樹脂の芳香環を部分的に水素化した粘着付与樹脂からなるエマルジョンを配合した水性のアクリル系粘着剤組成物が開示されている。しかしながら、上記のような粘着剤組成物は、ポリエチレンのような非極性の被着体への剥離接着力に劣るものであった。
【0004】
さらに、特許文献3には、ガラス転移温度が−60〜−30℃のアクリル系重合体エマルジョンの固形分100質量部に対して、液状の粘着付与樹脂を3〜45質量部および架橋剤を配合してなる水性のアクリル系粘着剤組成物が開示されている。しかしながら、このような粘着剤組成物は、保持力に劣るものであった。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−275363号公報
【特許文献2】特開平9−188864号公報
【特許文献3】特開2000−319618号公報
【発明の開示】
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、ポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力に優れ、かつ、初期接着力及び保持力のバランスにも優れたアクリル系粘着組成物、及び該粘着剤組成物用の粘着付与剤として好適な変性石油樹脂エマルジョンを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位10〜100質量%および炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位0〜90質量%からなり、特定の軟化点および酸価を有する変性石油樹脂を含有してなる変性石油樹脂エマルジョンを用いると、ポリオレフィン系樹脂
被着体に対する剥離接着力に優れ、かつ、初期接着力及び保持力のバランスにも優れたアクリル系粘着組成物が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位10〜100質量%および炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位0〜90質量%からなり、軟化点30℃以上、かつ酸価が0.1〜100KOHmg/gである変性石油樹脂を含有してなる変性石油樹脂エマルジョンが提供される。
また、本発明によれば、アクリル系重合体エマルジョンおよび前記の変性石油樹脂エマルジョンを含有するアクリル系粘着剤組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、基体上に、前記のアクリル系粘着剤組成物を塗布してなる粘着テープが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
(変性石油樹脂エマルジョン)
本発明の変性石油樹脂エマルジョンは、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位10〜100質量%および炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位0〜90質量%からなり、軟化点30℃以上、かつ酸価が0.1〜100KOHmg/gである変性石油樹脂を含有してなる。
【0008】
前記の変性石油樹脂は、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位10〜100質量%、好ましくは40〜95質量%、より好ましくは50〜85質量%および炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位0〜90質量%、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは15〜50質量%からなるものである。炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位の含有量が少ないと、ポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力に劣り、初期接着力も低下する。ポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力および保持力をより高められる点で、炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位を含有する変性石油樹脂であることが好ましい。
【0009】
原料として用いる炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体としては、炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素およびジオレフィン性不飽和炭化水素が挙げられる。
炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素としては、例えば、イソブテン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、メチルブテン、メチルペンテン、ヘキセンなどの鎖状モノオレフィン;シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセンなどの環状モノオレフィン;などが挙げられる。
【0010】
炭素数4〜6のジオレフィン性不飽和炭化水素単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの鎖状共役ジエン;シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなどの環状共役ジエン;1,2−ブタジエン、1,4−ペンタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。
【0011】
変性石油樹脂を製造する際の炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体の使用量は、単量体全量に対して、好ましくは10重量%以上、より好ましくは45〜95質量%、特に好ましくは55〜85質量%である。この量が少なすぎると、ポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力に劣り、初期接着力も低下する。
【0012】
炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素単量体と炭素数4〜6のジオレフィン性不飽和炭化水素単量体との比率は、質量比で、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは30/70〜70/30、特に好ましくは35/65〜65/35の範囲である。
【0013】
本発明においては、イソプレンおよび/または1,3−ペンタジエンを70質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む炭素数4〜6のジオレフィン性不飽和炭化水素を用いることが好ましい。
【0014】
原料として所望により用いる炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、t−ブチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−2−ペンテン、ヘプテン、オクテンなどの炭素数7〜11の鎖状モノオレフィン;メチルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、インデン、クマロンなどの炭素数7〜11の環状オレフィンなどが挙げられる。なかでも、芳香族ビニル単量体が好ましく、スチレンがより好ましく使用される。
変性石油樹脂を製造する際の炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体の使用量は、単量体全量に対して、好ましくは90質量%以下、より好ましくは5〜55質量%、特に好ましくは15〜45質量%である。上記範囲で使用すると、ポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力および保持力により優れるアクリル系粘着剤組成物が得られる。
【0015】
変性石油樹脂の軟化点は30℃以上、好ましくは50〜130℃、より好ましくは80〜120℃である。軟化点が30℃未満であると保持力に劣る粘着剤組成物となる。
【0016】
変性石油樹脂の酸価は0.1〜100KOHmg/g、好ましくは0.3〜50KOHmg/g、より好ましくは1〜20KOHmg/gである。酸価が低くても高くても、ポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力に劣る。
【0017】
変性石油樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜4,000、より好ましくは1,500〜3,500の範囲である。重量平均分子量が上記範囲にあると、ポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力および保持力により優れるアクリル系粘着剤組成物が得られる。
【0018】
前記の変性石油樹脂は、通常、重合溶媒中、前記の単量体を、酸性ハロゲン化金属触媒を用いてカチオン重合して、石油樹脂を得た後、得られた石油樹脂にエチレン性不飽和カルボン酸を付加反応することにより得られる。
【0019】
重合溶媒としては、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、イソペンタン、メチルペンタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;などが例示される。これらの重合溶媒は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
重合溶媒の使用量は、通常、単量体全量100質量部に対して、40〜200質量部、好ましくは60〜100質量部である。
【0020】
重合触媒として用いる酸性ハロゲン化金属触媒としては、フリ−デルクラフツ型触媒であれば特に限定されない。その代表例としては、アルミニウム、ホウ素、鉄などの金属のフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物が挙げられる。なかでも塩化アルミニウム、臭化アルミニウムなどのハロゲン化アルミニウムが好ましく、塩化アルミニウムがより好ましく使用できる。
酸性ハロゲン化金属触媒の使用量は、単量体全量に対し、通常、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0021】
重合に際し、予め、酸性ハロゲン化金属触媒と環状モノオレフィンとを接触させることが好ましい。この環状モノオレフィンとしては、炭素数5〜6の環状モノオレフィンが好ましく、シクロペンテンがより好ましく使用できる。ここで用いる環状モノオレフィンの量は、酸性ハロゲン化金属触媒量の少なくとも5倍量であることが好ましい。
【0022】
重合操作としては、従来公知の方法を採用できる。
重合温度は、通常、−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜80℃の範囲である。
【0023】
重合反応を開始した後、所定の重合転化率に達した時点で、重合停止剤を添加して、重合反応を停止する。重合反応を停止する際の重合転化率は、通常、50〜95質量%、好ましくは60〜90質量%である。
【0024】
重合反応を停止した後、未反応単量体および重合溶媒を留去し、さらに所望により、高温での水蒸気蒸留により、低分子量のオリゴマ−成分を除去することにより、石油樹脂が得られる。
【0025】
次いで、得られた石油樹脂にエチレン性不飽和カルボン酸を付加反応させて、石油樹脂を変性する。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物;マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル;などが挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和多価カルボン酸およびエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物が好ましく、エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましく使用できる。
【0026】
エチレン性不飽和カルボン酸の使用量は、前記で得られた石油樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、よりこのましくは0.05〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部の範囲である。
【0027】
エチレン性不飽和カルボン酸を付加反応させる条件は、通常、50〜300℃、好ましくは200〜270℃で、好ましくは5分間〜20時間、より好ましくは10分間〜3時間である。なお、付加反応の際に、必要に応じて、希釈剤、ゲル化防止剤、反応促進剤などを添加することもできる。
【0028】
本発明の変性石油樹脂エマルジョンは、上記のようにして得られた変性石油樹脂を水性媒体中に乳化したものである。
水性媒体としては、通常、水が用いられるが、エタノール、エチレングリコール、グリセリンなどの水溶性有機溶剤の水溶液を用いることもできる。
水性媒体の使用量は、変性石油樹脂100質量部に対して、通常、50〜200質量部、好ましくは60〜150質量部である。
【0029】
乳化の方法としては、特に限定されず、例えば、(1)水性媒体中、変性石油樹脂の軟化点未満の温度で、変性石油樹脂を湿式分散する方法、(2)水性媒体中、変性石油樹脂が流動化する程度の温度まで加温した状態で、変性石油樹脂を乳化する方法、(3)水性媒体中、変性石油樹脂の有機溶剤溶液を乳化する方法、(4)流動化する程度の温度まで加温した変性石油樹脂に、攪拌しながら、水性媒体を添加して、転相乳化する方法、(5)変性石油樹脂の有機溶剤溶液に、攪拌しながら、水性媒体を添加して、転相乳化する方法などが挙げられる。なかでも、変性石油樹脂エマルジョン中の変性石油樹脂粒子の体積平均粒子径を好ましい範囲に調節し易い点で、(3)または(5)の方法が好ましく採用できる。なお、有機溶剤を用いた場合は、乳化後のエマルジョンから、有機溶剤を留去することが好ましい。
【0030】
本発明の変性石油樹脂を乳化させる方式は、(a)高圧衝撃式(ゴーリンホモジナイザー:ゴーリン社製)、(b)回転子−固定子方式(エバラマイルダー:荏原製作所製)、(c)内部剪断(液−液剪断)方式(例えばクレアミックス、エムテクニック社製)、(d)静止管方式(スタティックミキサー)、(e)錨型攪拌方式、(f)ラインミル方式、(g)振動式、(h)膜乳化式、(i)遠心薄膜接触式などが挙げられる。なかでも、変性石油樹脂エマルジョン中の変性石油樹脂粒子の体積平均粒子径を好ましい範囲に調節し易い点で、(a)、(b)または(c)の方式が好ましく、(a)の方式が特に好ましく採用できる。
【0031】
変性石油樹脂を溶解させる有機溶剤としては、該樹脂を溶解し得るものであれば特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;などが挙げられる。乳化工程での安全性や有機溶剤の留去のし易さを考慮すると、沸点が30〜120℃の有機溶剤が好ましく使用できる。
溶液濃度は、通常、10〜90質量%、好ましくは50〜80質量%である。
【0032】
乳化するにあたり、変性石油樹脂エマルジョン中の変性石油樹脂粒子の体積平均粒子径を好ましい範囲に調節し易く、得られた変性石油樹脂エマルジョンの貯蔵安定性に優れる点で、乳化剤を用いることが好ましい。
乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、α−オレフィンスルホン化物、アルキルサルフェート、アルキルフェニルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのスルホコハク酸のハーフエステル塩、ロジン石鹸等のアニオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性乳化剤;が挙げられる。
乳化剤の使用量は、変性石油樹脂100質量部に対して、通常、1〜10質量部程度、好ましくは1〜5重量部である。
【0033】
変性石油樹脂エマルジョン中の変性石油樹脂粒子の体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.2〜0.6μmである。体積平均粒子径を上記範囲にすると、粘着物性のバランスにより優れるアクリル系粘着剤組成物が得られる。
【0034】
また、本願発明の変性石油樹脂エマルジョン中には、粒子径30μm以上の変性石油樹脂粒子が少ないことが好ましい。粒子径30μm以上の粒子数が多過ぎると、得られる粘着剤組成物を基質に塗布した際に粘着剤組成物の表面が荒れて外観が悪くなるとともに、フィッシュアイが発生して均一なフィルムが得られず、製品の欠陥となり、剥離接着力が低下する場合がある。粒子径30μm以上の変性石油樹脂粒子の粒子数は、精密粒度分布測定装置を用いて、特定の粒子径範囲に限定して測定することがでる。粒子径30μm以上の変性石油樹脂粒子の粒子数は、粒子径4〜64μmの範囲にある変性石油樹脂粒子の数を全て測定し、その中の粒子径30〜64μmの範囲にある変性石油樹脂粒子の個数の割合として、相対的に評価する。
粒子径4〜64μmの範囲にある変性石油樹脂粒子中の粒子径30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合は1%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましく、0.05%以下であることが更に好ましく、粒子径30μm以上の粒子が存在しないことが特に好ましい。
【0035】
粒子径4〜64μmにおける変性石油樹脂粒子の粒子数分布を前記範囲にする方法は特に限定されず、変性石油樹脂を乳化する際の条件を適宜調節する方法、変性石油樹脂を乳化した後に粒子径30μm以上の変性石油樹脂粒子を除去する方法等が挙げられる。変性石油樹脂を乳化する際に調節される条件としては、温度、圧力及び攪拌強度等が挙げられ、これらの条件を必要に応じて調節する。変性石油樹脂を乳化した後に粒子径30μm以上の変性石油樹脂粒子を除去する方法としては、メッシュフィルターを使用して自重または加圧して濾過する方法、メンブランフィルターを装着した濾過装置を使用して加圧濾過する方法等が挙げられ、除去装置及び操作が簡便である点で、メッシュフィルターを使用して加圧して濾過することが好ましい。粒子径4〜64μmにおける変性石油樹脂粒子の粒子数分布を前記範囲になるように、前記濾過操作を繰り返すこともできる。
【0036】
変性石油樹脂エマルジョンの固形分濃度は、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量%である。
【0037】
変性石油樹脂エマルジョンには、さらに必要に応じて、消泡剤、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤などの配合剤を添加することができる。
【0038】
(アクリル系粘着剤組成物)
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、アクリル系重合体エマルジョンおよび前記の変性石油樹脂エマルジョンを含有するものである。
【0039】
アクリル系重合体エマルジョンを構成するアクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を主成分として含有するものである。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの単量体は、単独または組合せて使用することができる。
アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体およびそれと共重合可能な他の単量体の共重合体であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。
【0040】
アクリル系重合体のガラス転移温度は、特に制限はされないが、通常、−80〜0℃、好ましくは−60〜−10℃である。ガラス転移温度が高すぎると、初期接着力が低下する傾向にあり、逆に低すぎると保持力が低下する傾向がある。
【0041】
アクリル系重合体エマルジョンは、通常、前記の単量体を乳化重合して製造される。乳化重合の方法としては、特に限定されず、従来公知の方法が採用できる。
【0042】
アクリル系重合体エマルジョン中のアクリル系重合体粒子の体積平均粒子径は、特に限定されないが、通常、0.05〜1μm、好ましくは0.1〜0.6μmである。
【0043】
アクリル系重合体エマルジョンの固形分濃度は、通常、40〜70質量%である。
【0044】
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、アクリル系重合体エマルジョンの固形分100質量部に対して、変性石油樹脂エマルジョンを固形分で、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、特に好ましくは5〜30質量部含有するものである。
変性石油樹脂エマルジョンの使用量を上記範囲にすると、ポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力に優れ、初期接着力および保持力により優れた粘着剤組成物を得ることができる。
【0045】
アクリル系粘着剤組成物には、さらに必要に応じて、可塑剤、ワックス、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、耐水化剤、造膜助剤などの配合剤を添加することができる。また、本発明の効果を本質的に阻害しない範囲で、従来公知の粘着付与樹脂からなるエマルジョンを添加することもできる。
【0046】
(粘着テープ)
本発明の粘着テープは、基体上に、前記のアクリル系粘着剤組成物を塗布してなるものである。
基体としては、特に限定されないが、例えば、クラフト紙、和紙、上質紙、合成紙などの紙類;綿布、スフ布、ポリエステル布などの布類;セロハン、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムなどの樹脂フィルム;アルミニウム箔、銅箔などの金属箔;ポリエステル製不織布、レ−ヨン製不織布などの不織布などが挙げられる。これらの基体は、予め、その表面をコロナ放電処理したり、プライマ−を塗布したりしたものであってもよい。
基体の厚みは、通常、10μm〜2mm程度である。
【0047】
塗布装置としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ダイコーター、コンマコーター、ロールコーターなどを用いることができる。
【0048】
アクリル系粘着剤組成物の塗布量は、乾燥後の厚みで、通常、1〜200μm、好ましくは5〜100μmである。
【0049】
基体上に、アクリル系粘着剤組成物を塗布した後、該組成物中の水性媒体を揮散させて、粘着テープが得られる。
【0050】
本発明の粘着テープは、特に、非極性のポリオレフィン系樹脂被着体に対する剥離接着力に優れるので、非極性のポリオレフィン系樹脂製品用の粘着テープとして好適である。勿論、基体として、非極性のポリオレフィン系樹脂製のものを用いた粘着テープとしても好適に使用できる。
ここで、ポリオレフィン系樹脂とは、主に、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテンなどのオレフィン単量体の単独重合体または共重合体をいう。なお、ポリオレフィン系
樹脂には、極少量の極性基を持つものも含まれる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において、「%」及び「部」はとくに断らない限りすべて質量基準である。
【0052】
評価は以下のように行なった。
(1)樹脂中のスチレン単位量(%):1H−NMR分析により求めた。
(2)重量平均分子量:ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算値として求めた。
(3)軟化点(℃):JIS K 2531に従い、環球法により測定した。
(4)酸価(mgKOH/g):JIS K 0070に従い、測定した。
【0053】
(5)エマルジョンの体積平均粒子径:光散乱粒子径測定器(LS−230:ベックマンコールター社製)を用いて測定した。
(6)30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合:変性石油樹脂エマルジョン0.1g(固形分濃度:50%)に電解液(イソトン−II)200mlを加えて攪拌して測定用試料とした。精密粒度分布測定装置(マルチサイザー3:ベックマンコールター社製)を用いて、粒子径4〜64μmの範囲にある、粒子径30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数を2μm刻みで測定した。測定には、孔径140μmのアパチャーチューブを用いた。
前記粒子径30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合は、粒子径4〜64μmの範囲にある変性石油樹脂粒子中の、30〜64μmの範囲にある変性石油樹脂粒子の個数の割合で示す。
(7)剥離接着力(N/m):23℃で、被着体としてポリエチレンを使用してPSTC−1(粘着テープ委員会(米)による180°剥離接着試験)に準じて測定した。値が高いほど良好である。
(8)保持力(分):被着体としてステンレス鋼を使用してPSTC−6(粘着テープ委員会(米)による保持力試験法)に準じ、幅25mmの粘着テープを使用し接着部が25×25mm、負荷が3.92×104Pa、温度50℃にて、剥がれるまでの時間(分)を測定した。時間が長いほど良好である。
(9)初期接着力(mm):ローリングボールタックはPSTC−6(粘着テープ委員会(米)による初期接着力試験法)に準じて23℃で測定した。値が小さいほど良好である。
【0054】
(合成例1)
反応器に、シクロペンタン86部、シクロペンテン14部および塩化アルミニウム1部を添加した後、50℃に昇温した。引き続き、シクロペンテン14部、1,3−ペンタジエン44部、スチレン18部および炭素数4〜6の鎖状モノオレフィン(1−ペンテン、2−ブテン、メチルブテンなどを含む。)10部からなる残部の単量体混合物を、60分間に亘り、反応器に連続的に添加しながら重合を行なった。さらに、50℃で10分間反応を継続した後、メタノールとアンモニア水の混合物を反応器に添加して、重合反応を停止した。この時点の重合転化率は、85%であった。
重合停止により生成した沈殿物を、ろ過により除去した後、得られた重合体溶液を蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体を除去した。次いで、240℃以上で、飽和水蒸気を吹き込みながら、低分子量のオリゴマ−成分を除去した。
【0055】
次いで、溶融状態の樹脂100部に対して、無水マレイン酸2.97部添加して、230℃で1時間付加反応させた後、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3部を添加し、混合した。
その後、溶融状態の樹脂を取り出し、室温まで放冷して、変性石油樹脂Aを得た。変性石油樹脂Aのスチレン単位量、重量平均分子量、軟化点および酸価を測定し、その結果を表1に示す。
【0056】
(合成例2)
表1に示す単量体組成および無水マレイン酸量に変更する以外は、合成例1と同様にして、変性石油樹脂Bを得た。変性石油樹脂Bのスチレン単位量、重量平均分子量、軟化点および酸価を測定し、その結果を表1に示す。
【0057】
(合成例3)
反応器に、シクロペンタン86部、シクロペンテン14部および塩化アルミニウム1部を添加した後、50℃に昇温した。引き続き、シクロペンテン14部、1,3−ペンタジエン44部、スチレン18部および炭素数4〜6の鎖状モノオレフィン(1−ペンテン、2−ブテン、メチルブテンなどを含む。)10部からなる残部の単量体混合物を、60分間に亘り、反応器に連続的に添加しながら重合を行なった。さらに、50℃で10分間反応を継続した後、メタノールとアンモニア水の混合物を反応器に添加して、重合反応を停止した。この時点の重合転化率は、85%であった。
重合停止により生成した沈殿物を、ろ過により除去した後、得られた重合体溶液を蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体を除去した。次いで、240℃以上で、飽和水蒸気を吹き込みながら、低分子量のオリゴマー成分を除去した。
【0058】
次いで、溶融状態の樹脂100部に対して、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3部を添加し、混合した。その後、溶融状態の樹脂を取り出し、室温まで放冷して、石油樹脂Cを得た。石油樹脂Cのスチレン単位量、重量平均分子量、軟化点および酸価を測定し、その結果を表1に示す。
【0059】
(合成例4)
反応器に、シクロペンタン86部、シクロペンテン14部および塩化アルミニウム1部を添加した後、50℃に昇温した。引き続き、シクロペンテン7部、1,3−ペンタジエン22部、スチレン18部および炭素数4〜6の鎖状モノオレフィン(1−ペンテン、2−ブテン、メチルブテンなどを含む。)39部からなる残部の単量体混合物を、60分間に亘
り、反応器に連続的に添加しながら重合を行なった。さらに、50℃で10分間反応を継続した後、メタノールとアンモニア水の混合物を反応器に添加して、重合反応を停止した。この時点の重合転化率は、76%であった。
重合停止により生成した沈殿物を、ろ過により除去した後、得られた重合体溶液を蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体を除去した。
【0060】
次いで、溶融状態の樹脂100部に対して、無水マレイン酸3.49部添加して、230℃で1時間付加反応させた後、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3部を添加し、混合した。
その後、溶融状態の樹脂を取り出し、室温まで放冷して、変性石油樹脂Dを得た。変性石油樹脂Dのスチレン単位量、重量平均分子量、軟化点および酸価を測定し、その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
(実施例1)
変性石油樹脂A100部をトルエン60部に溶解した溶液に、アニオン性乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)4部を水100部に溶解した水溶液を加え、80℃にてホモジナイザ−を用いて1500rpmで1時間、乳化した。さらに、得られた乳化物を、ゴーリンホモジナイザーを用いて、90℃で10分間乳化して、均一な粒子径の乳化物を得た。
その後、減圧蒸留により、乳化物中のトルエンを除去した後、150メッシュのステンレス金網で濾過し、次いで500メッシュのステンレス金網を用いて濾過して、固形分濃度が50%の変性石油樹脂Aからなる樹脂エマルジョンA1を得た。樹脂エマルジョンA1の体積平均粒子径及び30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合を測定し、その結果を表2に示す。
【0063】
アクリル酸ブチル単位を主成分とする固形分濃度50%のアクリル系重合体エマルジョン(Water Base Adhesive:ACHEM TECHNOLOGY CORPORATION製)の固形分100部に対して、樹脂エマルジョンAを固形分で15部混合して、アクリル系粘着剤組成物を調製した。
得られたアクリル系粘着剤組成物を、25μm厚のポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが25μmとなるように、アプリケーターを用いて塗布し、乾燥して粘着テープを得た。
この粘着テープのポリエチレンに対する剥離接着力、保持力及び初期接着力を測定した。結果を表2に示す。
【0064】
(実施例2)
変性石油樹脂Aに代えて変性石油樹脂Bを用いる以外は、実施例1と同様にして、樹脂エマルジョンB1を得た。樹脂エマルジョンB1の体積平均粒子径及び30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合を測定し、その結果を表2に示す。
樹脂エマルジョンA1に代えて、樹脂エマルジョンB1を用いる以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを得た。この粘着テープのポリエチレンに対する剥離接着力、保持力及び初期接着力を測定した。結果を表2に示す。
【0065】
(実施例3)
樹脂エマルジョンB1の使用量を表2に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして、粘着テープを得た。この粘着テープのポリエチレンに対する剥離接着力、保持力及び初期接着力を測定した。結果を表2に示す。
【0066】
(実施例4)
樹脂エマルジョンA1を、再度500メッシュのステンレス金網で濾過して、30μm以上の変性石油樹脂粒子を含まない樹脂エマルジョンA2を得た。樹脂エマルジョンA2の体積平均粒子径及び30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合を測定し、その結果を表2に示す。
樹脂エマルジョンA1に代えて、樹脂エマルジョンA2を用いる以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを得た。この粘着テープのポリエチレンに対する剥離接着力、保持力及び初期接着力を測定した。結果を表2に示す。
【0067】
(比較例1)
変性石油樹脂Aに代えて石油樹脂Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂エマルジョンC1を得た。樹脂エマルジョンC1の体積平均粒子径及び30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合を測定し、その結果を表2に示す。
樹脂エマルジョンA1に代えて、樹脂エマルジョンC1を用いる以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを得た。これらの粘着テープのポリエチレンに対する剥離接着力、保持力及び初期接着力を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0068】
(比較例2)
変性石油樹脂Aに代えて変性石油樹脂Dを用いる以外は、実施例1と同様にして、樹脂エマルジョンD1を得た。樹脂エマルジョンD1の体積平均粒子径及び30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合を測定し、その結果を表2に示す。
樹脂エマルジョンA1に代えて、樹脂エマルジョンD1を用いる以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを得た。これらの粘着テープのポリエチレンに対する剥離接着力、保持力及び初期接着力を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0069】
(比較例3)
変性石油樹脂Aに代えて芳香族系炭化水素樹脂(「ハイレジン#90」、東邦化学(株)社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、樹脂エマルジョンE1を得た。樹脂エマルジョンE1の体積平均粒子径及び30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合を測定し、その結果を表2に示す。
樹脂エマルジョンA1に代えて、樹脂エマルジョンE1を用いる以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを得た。この粘着テープのポリエチレンに対する剥離接着力、保持力及び初期接着力を測定した。結果を表2に示す。
【0070】
(比較例4)
変性石油樹脂Aに代えてロジン系炭化水素樹脂(「スーパーエステル−A100」、荒川化学(株)社製)を用いる以外は、実施例1と同様にして、樹脂エマルジョンF1を得た。樹脂エマルジョンF1の体積平均粒子径及び30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合を測定し、その結果を表2に示す。
樹脂エマルジョンA1に代えて、樹脂エマルジョンF1を用いる以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを得た。この粘着テープのポリエチレンに対する剥離接着力、保持力及び初期接着力を測定した。結果を表2に示す。
【0071】
(比較例5)
樹脂エマルジョンC1を製造する際、金網で濾過する工程を行わないこと以外は、比較例1と同様にして、樹脂エマルジョンC2を得た。樹脂エマルジョンC2の体積平均粒子径及び30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合を測定し、その結果を表2に示す。
樹脂エマルジョンA1に代えて、樹脂エマルジョンC2を用いる以外は、実施例1と同様にして、粘着テープを得た。この粘着テープのポリエチレンに対する剥離接着力、保持力及び初期接着力を測定した。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
表2より次のようなことがわかる。
酸価が0.1%未満の樹脂エマルジョンC1を添加した比較例1のアクリル系粘着剤組成物は、保持力および初期接着力にやや劣り、ポリエチレンへの剥離接着力が劣っている。
軟化点が30℃以下の樹脂エマルジョンD1を添加した比較例2のアクリル系粘着剤組成物は、保持力が極めて低下し、ポリエチレンへの剥離接着力が劣っている。
市販の芳香族系炭化水素樹脂からなる樹脂エマルジョンE1を添加した比較例3のアクリル系粘着剤組成物は、保持力は比較的優れるものの、ポリエチレンへの剥離接着力が劣り、初期接着力が十分ではない。
市販のロジン系炭化水素樹脂からなる樹脂エマルジョンF1を添加した比較例4のアクリル系粘着剤組成物は、初期接着力は比較的優れるものの、ポリエチレンへの剥離接着力および保持力に劣る。
酸価が0.1%未満であり、30μm以上の変性石油樹脂粒子の個数の割合が高い樹脂エマルジョンC2を添加した比較例5のアクリル系粘着剤組成物は、基体上に塗布すると粘着剤組成物の表面が荒れ、フィッシュアイが発生して均一なフィルムが得られず、剥離接着力および初期接着力が劣っている。
【0074】
これらの比較例に対し、本発明の樹脂エマルジョンA1、B1又はA2を添加した実施例1、2又は4のアクリル系粘着剤組成物は、ポリエチレンへの剥離接着力に優れ、保持力および初期接着力のバランスに優れている。また、樹脂エマルジョンB1の添加量を低めても、ポリエチレンへの剥離接着力に優れ、保持力および初期接着力のバランスに優れたアクリル系粘着剤組成物が得られている(実施例1〜3)。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のアクリル系粘着剤組成物および粘着テープは、例えば、使い捨て紙おむつ、衛生ナプキンなどの衛生用品;冷凍食品、生鮮食品、菓子などの食品梱包;自動車部品、機械部品などの部材梱包;テレビ、オーディオ製品、冷蔵庫などの電気製品梱包;伝票、書籍、カタログなどの製本用途;クラフト製袋、ポリプロピレン製袋、ポリエチレン製袋などの製袋用途;コート類のスソ止め、皮革や生地の貼り合わせ、芯地の接着などの衣料用途;などに適用できる。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位10〜100質量%および炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位0〜90質量%からなり、軟化点30℃以上、かつ酸価が0.1〜100KOHmg/gである変性石油樹脂を含有してなる変性石油樹脂エマルジョン。
【請求項2】
変性石油樹脂が、炭素数4〜6のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位40〜95質量%および炭素数7〜11のオレフィン性不飽和炭化水素単量体単位5〜60質量%からなるものである請求項1記載の変性石油樹脂エマルジョン。
【請求項3】
変性石油樹脂粒子の体積平均粒子径が0.1〜1μmである請求項1または2に記載の変性石油樹脂エマルジョン。
【請求項4】
粒子径4〜64μmの範囲にある変性石油樹脂粒子中の、30〜64μmの範囲にある変性石油樹脂粒子の個数の割合が1%以下である請求項1〜3のいずれか一に記載の変性石油樹脂エマルジョン。
【請求項5】
アクリル系重合体エマルジョンおよび請求項1〜4のいずれか一に記載の変性石油樹脂エマルジョンを含有するアクリル系粘着剤組成物。
【請求項6】
アクリル系重合体エマルジョンの固形分100質量部に対して、変性石油樹脂エマルジョンを固形分で0.1〜50質量部含有する請求項5記載のアクリル系粘着剤組成物。
【請求項7】
基体上に、請求項5または6記載のアクリル系粘着剤組成物を塗布してなる粘着テープ。

【国際公開番号】WO2005/082953
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510499(P2006−510499)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003274
【国際出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】