変換装置
【課題】所望の位置に取り付け・取り外し可能で、かつ、楽器を損傷することのない変換装置の提供が可能となる。
【解決手段】ウクレレの表面板を挟んで第一磁石部材32と第二磁石部材34とが互いに磁力で引き合うことで、第一磁石部材32に支持された圧電素子36を含む受信部30の位置を所望の位置に位置決めすることができる。このとき、受信部30は、互いに引き合う磁力によってのみ位置決めされているため、ウクレレの表面に一度位置決めした後であっても、所望の位置に移動可能である。
【解決手段】ウクレレの表面板を挟んで第一磁石部材32と第二磁石部材34とが互いに磁力で引き合うことで、第一磁石部材32に支持された圧電素子36を含む受信部30の位置を所望の位置に位置決めすることができる。このとき、受信部30は、互いに引き合う磁力によってのみ位置決めされているため、ウクレレの表面に一度位置決めした後であっても、所望の位置に移動可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アコースティックギター等の弦楽器において、弦の振動を電気信号に変換するコンタクトピックアップ等の変換装置が広く利用されている。例えば、特許文献1には、ゴムからなる接着層を介して弦楽器のボディに取り付けられる変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−93199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした変換装置では、接着層を介して弦楽器のボディに取り付けるため、一度接着してしまうと弦楽器のボディから取り外すことが困難であり、変換装置を取り外す際に、接着層を弦楽器のボディから完全に除去することが困難であるという課題がある。
【0005】
このため、変換装置を一度取り付けてしまうと、取り付ける前の状態に戻すことができず、演奏者から、変換装置を一度取り付けても、取り付け位置を変更したり、外したりすることができる変換装置が熱望されていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、容易に着脱可能な変換装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の変換装置は、
楽器から発生した振動を電気信号に変換する変換部材と、
前記変換部材を支持する支持部材と、
前記楽器の少なくとも一部を挟んで対向する位置に配置される固定部材と、
を備え、
前記支持部材と前記固定部材の一方又は両方が磁石であって、互いに磁力で引き合うことで前記変換部材を位置決めする、
を備えたものである。
【0009】
この変換装置では、楽器の少なくとも一部を挟んだ位置に配置される支持部材と固定部材の一方又は両方が磁石であるため、磁力によって支持部材と固定部材とが楽器の少なくとも一部を挟んだ位置に位置決めされる。こうすることにより、支持部材によって支持された変換部材を、楽器の形状にかかわらず所望の位置に着脱可能な状態で位置決めすることが可能となる。また、変換装置の取り付けに際して接着剤等を使用しないため、変換装置を取り外す際に、楽器表面の損傷や接着剤等によって汚れることを防止することが可能となる。言い換えると、変換装置を自由な位置に取り付けたり、取り外したりすることが可能となる。
【0010】
本発明の変換装置において、前記変換部材は、圧電素子であり、前記支持部材と前記固定部材は、互いに磁力で引き合うことで、前記変換部材を前記楽器の方向に押圧してもよい。こうすれば、変換部材が楽器の方向に押圧されることになるため、変換部材が押圧されない場合と比較して、より感度良く圧電素子が楽器から発した振動を感知することが可能となる。また、変換部材が楽器の方向に押圧される押圧力を変えることにより、変換装置から出力される音の音質・音色を変化させることが可能となる。更に、圧電素子と楽器との間に接着層等を挟む必要がないため、楽器から発せられた振動を直接圧電素子に伝えることができる。
【0011】
本発明の変換装置は、前記変換部材が前記支持部材に押圧される際、前記支持部材と前記楽器との間に挿入される緩衝部材と、を備えていてもよい。こうすれば、緩衝部材を変更するという簡単な操作で、変換部材に到達する振動の強度や波形を変更させることが可能となる。言い換えると、緩衝部材を用いない場合と比較して、より容易に変換装置から出力される音の音質・音色を変化させることが可能となる。
【0012】
本発明の変換装置において、前記固定部材は、該固定部材が配置された際、該固定部材と前記楽器とが当接する当接面の少なくとも一部に該固定部材と前記楽器とを固定する接着部を有していてもよい。こうすれば、所望の位置に変換部材を配置した後に固定部材の位置を楽器に接着することができる。こうすることにより、仮に支持部材が外れてしまった場合であっても、固定部材が楽器に接着されているため、再び支持部材を所望の位置に配置することができる。この態様を採用した本発明の変換装置において、前記固定部材は、複数備えられていてもよい。こうすれば、あらかじめ複数の固定部材を楽器に接着することにより、楽器の演奏に合わせて、複数の場所から一箇所を選択し、この選択位置に容易に変換部材を位置決めすることができる。
【0013】
本発明の変換装置は、前記変換部材と電気的に接続され、前記変換部材で変換された電気信号を出力する出力端子と、を備えていてもよい。こうすれば、変換部材で変換された電気信号を外部に出力することができる。また、変換部材を楽器の外側に配置した場合には、楽器に貫通孔を設けることなく、変換部材と出力端子とを電気的に接続することができる。この態様を採用した本発明の変換装置において、前記出力端子を支持する出力端子支持部材と、前記楽器の少なくとも一部を挟んで対向する位置に配置される出力端子固定部材と、を備え、前記出力端子支持部材と前記出力端子固定部材のいずれか一方が磁石であって、互いに磁力で引き合うことで前記出力端子を前記楽器の表面位置に位置決めしてもよい。こうすれば、楽器に損傷を与えることなく、変換部材と出力端子とを所望の位置に位置決めすることができる。言い換えると、楽器の演奏者は、変換部材を所望の演奏音を電気信号に変換可能な位置に位置決めし、出力端子を自らの演奏の邪魔にならない位置に位置決めすることができる。
【0014】
本発明の変換装置において、前記支持部材及び前記固定部材は、ネオジム磁石であっても良い。こうすれば、支持部材と固定部材のいずれか一方のみが磁石である場合と比較して、より強い力で楽器及び変換部材を挟み込むことができるため、一度位置決めした後に、不意に移動してしまう可能性を低減することができる。また、ネオジム磁石は磁鉄鉱やフェライト磁石と比較して磁束密度が高いため、磁鉄鉱やフェライト磁石を使用する場合と比較して、より強い力で楽器及び変換部材を挟み込むことができ、一度位置決めした後に、不意に変換装置が移動してしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンタクトピックアップ20の構成の概略を示す説明図。
【図2】コンタクトピックアップ20をウクレレ10に取り付けた状態を示す説明図。
【図3】コンタクトピックアップ20の取り付け方を説明する説明図。
【図4】受信部の取り付け位置を示す説明図。
【図5】受信部の取り付け位置によるピークホールドの違いを比較した比較図。
【図6】受信部の取り付け方法による音声波形の違いを比較した比較図。
【図7】受信部の取り付け方法による周波数スペクトルの違いを比較した比較図。
【図8】第二磁石部材の大きさによる音声波形の違いを比較した比較図。
【図9】第二磁石部材の大きさによる周波数スペクトルの違いを比較した比較図。
【図10】緩衝部材の種類による周波数スペクトルの違いを比較した比較図。
【図11】緩衝部材の種類による周波数スペクトルの違いを比較した比較図。
【図12】他の実施の形態におけるコンタクトピックアップ20を示す概略図。
【図13】他の実施の形態におけるコンタクトピックアップ20の使用状態を示す概略図。
【図14】他の実施の形態におけるコンタクトピックアップ20を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、上記簡単に説明した図面に基づいて、本発明を実施するための形態を説明するにあたり、本実施の形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施の形態のウクレレ10が本発明の楽器に相当し、コンタクトピックアップ20が変換装置に相当し、圧電素子36が変換部材に相当し、第一磁石部材32が支持部材に相当し、第二磁石部材34が固定部材に相当し、セーム革38が緩衝部材に相当し、両面テープ52が接着部に相当し、出力端子42が出力端子に相当し、第三磁石部材46が出力端子支持部材に相当し、第四磁石部材48が出力端子固定部材に相当する。なお、コンタクトピックアップ20をウクレレ10に取り付ける方法を説明することにより、本発明の実施の形態の一例であるコンタクトピックアップ20の使用方法の一例も明らかにしている。
【0017】
次に、図1を用いて、本発明の実施の形態の一例であるコンタクトピックアップ20の構成を詳しく説明する。ここで、図1は、コンタクトピックアップ20の構成の概略を示す説明図である。このコンタクトピックアップ20は、音源からの振動を感知する圧電素子36を含む受信部30と、出力端子42を含む出力部40と、を備えており、受信部30と出力部40とは、接続コード50で電気的に接続されている。また、受信部30及び接続コード50の表面は、図示しないゴム製の絶縁層で覆われている。
【0018】
受信部30は、圧電素子36を支持する第一磁石部材32と、第一磁石部材32と対向する位置に配置される第二磁石部材34と、を備えており、第一磁石部材32と第二磁石部材34とは磁力によって互いに引き合っている。第一磁石部材32及び第二磁石部材34は、いずれも、直径20ミリメートル、厚さ5ミリメートルのネオジム磁石を含んでいる。この受信部30を取り付ける際には、第一磁石部材32とウクレレ10との間に厚さ0.5ミリメートルのセーム革38を挟み、第一磁石部材32と第二磁石部材34との間にウクレレ10の一部を挟み込む事によって、受信部30を位置決めする(図3参照)。
【0019】
圧電素子36は、図1に示すように、接続コード50と電気的に接続されており、圧電体の表面に与えられた力(振動)を圧電効果により電圧に変換するTAMURA電気製の公知の圧電素子である。こうすることにより、ウクレレ10から発せられた音を電気信号に変換し、接続コード50を介して出力端子42から電気信号を出力する。
【0020】
出力部40は、出力端子42と、出力端子42を固定するための出力端子固定部材44と、を備えている。出力端子42は、図示しない入力プラグを介して図示しないスピーカに接続される。こうすることにより、ウクレレ10から発せられた音を図示しないスピーカより大音量で出力することができる。
【0021】
出力端子固定部材44は、出力端子42に取り付けられた第三磁石部材46と第三磁石部材46と磁力によって移動可能に位置決めされる第四磁石部材48と、を備えており、第三磁石部材46と第四磁石部材48とは、磁力によって互いに引き合っている。第三磁石部材46及び第四磁石部材48は、いずれも、直径20ミリメートル、厚さ5ミリメートルのネオジム磁石を含んでいる。この出力端子固定部材44は、第三磁石部材46と第四磁石部材48との間にウクレレ10の一部を挟み込む事により、出力端子42の位置を位置決めする(図2参照)。
【0022】
次に、受信部30をウクレレ10に取り付ける方法について、図3を用いて、更に詳しく説明する。ここで、図3は、ウクレレ10にコンタクトピックアップ20を取り付けるための説明図であり、図2中のサウンドホール12近傍から受信部30近傍を切断した部分断面図である。
【0023】
コンタクトピックアップ20をウクレレ10に取り付ける際には、まず、図3(a)に示すように、ウクレレ10に備えられたサウンドホール12の近傍にセーム革38を配置する。なお、ここでセーム革38を配置する位置は、第二磁石部材34をウクレレ10の内面側から配置する際に配置しやすい位置であればよく、第二磁石部材34を配置した後に受信部30は移動可能である。
【0024】
続いて、図3(b)に示すように、ウクレレ10、セーム革38、第一磁石部材32の順で並べた、セーム革38側に圧電素子36が位置するように第一磁石部材32を配置し、図3(c)に示すように、内面側から第二磁石部材34を第一磁石部材32とウクレレ10の表面板を挟んで対向する位置に近づける。このとき、第一磁石部材32と第二磁石部材34とは、互いに磁力で引き合う面が向かい合うように近づける。こうすれば、第二磁石部材34は、第一磁石部材32の磁力によって、ウクレレ10の表面板を挟んで対向する位置に引き寄せられる。こうすることにより、受信部30は、ウクレレ10の表面位置に位置決めされることになる。このとき、受信部30は第一磁石部材32及び第二磁石部材34が磁力によって引き合うことで位置決めされているため、第一磁石部材32をウクレレ10の表面に沿って移動させることにより、受信部30を移動させることができる。言い換えると、受信部30を所望の位置に位置決めすることができる。
【0025】
また、出力部40についても、第三磁石部材46と第四磁石部材48とを用いることにより、図2に示すように、所望の位置に位置決めすることができる。なお、出力部40の取り付け方法については、受信部30と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0026】
ここで、受信部30の位置により、ウクレレ10から発せられた音がコンタクトピックアップ20を介して出力される際に、どのように変化するかについて確認試験を実施した。具体的には、図4中のA〜Eの位置にそれぞれ受信部30を位置決めして、コンタクトピックアップ20から出力される音声信号のピークホールド値を計測した。
【0027】
このときの結果を、図5に示す。図5は、A〜E地点に受信部30を位置決めし、それぞれの位置で得られたピークホールドを測定したグラフを示した比較図であり、図5中のグラフの縦軸は音量(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。ここで、図5(A)は、図4中のAの位置に受信部30を位置決めし、ウクレレ10の1弦Aを440.00Hz、2弦Eを311.13Hz、3弦Cを261.63Hz、4弦Gを392.00Hzにチューニングし、すべて開放弦で上から4弦→3弦→2弦→1弦の順に単音でかきおろし各々の位置でコンタクトピックアップ20から得られる音声信号のピークホールド値を計測した。また、図5(B)〜図5(E)は、それぞれ、図4中のB〜Eの位置にそれぞれ受信部30を位置決めしたこと以外は、同様の条件で計測して得られた結果である。この結果から明らかなように、受信部30の設置位置によって、測定結果に大きな差が確認された。この結果より、受信部30をウクレレ10に取り付ける位置によって、コンタクトピックアップ20から得られる音声信号のスペクトルには大きな差異が見られ、このことは、受信部30をウクレレ10に取り付ける位置によって、音質が異なることを意味する。
【0028】
自分のイメージした音を演奏したいと考えることは、演奏者にとって自然な願望である。例えば、ソロ演奏を行うに際し、一音一音をはっきりと表現したいと考えた場合には、基音と倍音とがバランス良く出力される位置に受信部30を位置決めすることが望ましい。このような場合には、図5に示すように、それぞれの位置で位置決めした受信部30から得られたピークホールドの結果を比較し、基音と倍音とのバランスが取れている図5(C)を選択する、つまり、図4中Cの位置に受信部30を位置決めする。同様に、例えばストローク奏法で低音を落としたい場合には図4中Eの位置に、逆に、低音を強調して演奏したい場合には、図4中B又はDの位置に、それぞれ位置決めすることにより、演奏者が望む音を出力することができる。このように、受信部30の位置決めする位置を自由に移動させられることは、演奏者が所望の音を出力することができるだけでなく、演奏者が所望の音を出力するための位置を調査することもできる。
【0029】
次に、ウクレレ10の表面側に押圧する力によって、圧電素子36の感度がどのように変化するかについての確認試験を行った。具体的には、通常コンタクトピックアップを取り付ける際に用いられる両面テープでウクレレ10の表面に圧電素子を取り付けた場合と第一磁石部材32と第二磁石部材34とを用いた場合とについて、ウクレレ10の表面に圧電素子36を押圧した場合について測定し、結果を比較した。
【0030】
このときの結果を、図6及び図7に示す。図6は、圧電素子の固定方法の違いによる周波数スペクトルの違いを測定した測定結果を示す比較図であり、図6中のグラフの縦軸は音量(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。ここで、図6(A)は、上記実施の形態と同様にして受信部30を位置決めし、ウクレレ10の1弦Aを440.00Hz、2弦Eを329.63Hz、3弦Cを523.25Hz、4弦Gを392.00Hzにチューニングし、すべて開放弦で上から4弦→3弦→2弦→1弦の順に単音でかきおろし、コンタクトピックアップ20から得られる音声信号のピークホールド値を計測して得られた結果である。また、図6(B)は、受信部30を両面テープでウクレレ10に貼着した以外は、同様の条件で計測して得られた結果である。この結果から明らかなように、第一磁石部材32及び第二磁石部材34を用いて圧電素子36を位置決めした方が、より最大振幅が大きいことが確認された。このことから、圧電素子36をウクレレ10に押圧すると、両面テープでウクレレ10の表面に貼着する場合と比較して、より感度良くウクレレ10から発生する振動を受信することができると言える。
【0031】
図7は、圧電素子の固定方法の違いによる音声波形の違いを測定した測定結果を示す比較図であり、図7中のグラフの縦軸は実効値であり、横軸は時間(ミリ秒)である。なお、実験条件は、圧電素子の固定方法の違いによる周波数スペクトルの違いを測定した際(図6)と同様であるため、ここでは説明を省略する。この結果から明らかなように、第一磁石部材32及び第二磁石部材34を用いて圧電素子36を位置決めした方が、より最大振幅が大きく、信号持続時間が長いことが確認された。このことから、圧電素子36をウクレレ10に押圧すると、両面テープでウクレレ10の表面に貼着する場合と比較して、より感度良くウクレレ10から発生する振動を受信することができると言える。
【0032】
コンタクトピックアップ20を外す際には、受信部30及び出力部40をサウンドホール12まで移動させて取り外しても良いし、第一磁石部材32及び第三磁石部材46を取り外し、第二磁石部材34及び第四磁石部材48をサウンドホール12からウクレレ10の外に取り出しても良い。いずれの方法であっても、コンタクトピックアップ20を位置決めするに際して接着剤等を使用していないため、取り外しに際してウクレレ10の表面に接着剤等が残ってしまったり、接着剤等を剥がす際に表面を傷つけてしまったりする可能性を低減することができる。
【0033】
以上詳述した本実施の形態のコンタクトピックアップ20によれば、ウクレレ10の表面板を挟んで第一磁石部材32と第二磁石部材34とが互いに磁力で引き合うことで、第一磁石部材32に支持された圧電素子36を含む受信部30の位置を所望の位置に位置決めすることができる。このとき、受信部30は、互いに引き合う磁力によってのみ位置決めされているため、ウクレレ10の表面に一度位置決めした後であっても、所望の位置に移動可能である。また、コンタクトピックアップ20は磁力によってのみウクレレ10の表面に位置するため、使用後は、何らウクレレ10の表面に跡を残すことなく、取り外すことができる。言い換えると、ウクレレ10の表面を傷つけたり、取り外す際に何らかの跡をウクレレ10に残したりすることなく、所望の位置に受信部30を着脱可能な状態で位置決めすることができる。
【0034】
また、受信部30を位置決めする際、第一磁石部材32と第二磁石部材34が磁力で引き合うことにより、圧電素子36は、ウクレレ10の表面側に押圧された状態で位置決めされる。したがって、圧電素子36をウクレレ10の表面側に両面テープ等で貼着する場合と比較して、より感度良く楽器から発した振動を感知することができる。
【0035】
更に、圧電素子36は、ウクレレ10の表面側に位置決めされているため、出力端子42と電気的に接続される接続コード50は、常にウクレレ10の外面側に位置することができる。このため、従来型のコンタクトピックアップのように、電気信号を外部に出力するための貫通孔をウクレレ10に備える必要がない。言い換えると、ウクレレ10に損傷を与えることなく、コンタクトピックアップ20を取り付けることができる。
【0036】
更にまた、出力部40は、ウクレレ10の表面側に第三磁石部材46と第四磁石部材48とによって位置決めされているため、出力端子42に接続されたピックアップケーブル等に第三磁石部材46及び第四磁石部材48の磁力を上回る力が加えられた場合には、出力部40がウクレレ10の表面から離脱する。このため、出力部40がウクレレ10に接着している場合と比較して、ウクレレ10に過度な力が加わり、破損する可能性を未然に低減することができる。なお、受信部30も第一磁石部材32と第二磁石部材34とによって位置決めされているため、同様の効果が得られる。
【0037】
そして更に、第一磁石部材32と第二磁石部材34はいずれもネオジム磁石であるため、磁鉄鉱やフェライト磁石等と比較して、より強い力でウクレレ10を挟むことができ、ウクレレ10を演奏中に、不意に受信部30の位置がずれてしまったり、コンタクトピックアップ20が外れてしまったりする可能性を未然に低減することができる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施の形態では、第一磁石部材32及び第二磁石部材34は、いずれもネオジム磁石であるものとしたが、圧電素子36を支持可能な磁力を有する磁石であれば特に限定されるものではなく、磁鉄鉱やフェライト磁石等他の磁石を用いても良い。また、第一磁石部材32及び第二磁石部材34のいずれか一方のみを磁石とし、他方を磁力で吸引可能な磁性体としてもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態の効果を得ることができる。なお、第三磁石部材46及び第四磁石部材48についても同様である。
【0040】
上述した実施の形態では、第二磁石部材34として、直径20ミリメートル、厚さ5ミリメートルのネオジム磁石を用いるものとしたが、第二磁石部材34の大きさはこれに限定されるものではなく、例えば、直径12ミリメートル、厚さ1.7ミリメートルのネオジム磁石を用いても良い。こうすることにより、第一磁石部材32と第二磁石部材34とが磁力によって引き合う力を減少させ、圧電素子36がウクレレ10の表面に押圧する押圧力を減少させることができる。このように圧電素子36がウクレレ10の表面に押圧される押圧力を調節することで、コンタクトピックアップ20から出力される音質を変化させることができるため、演奏者の所望する音を得ることができる。
【0041】
ここで、第二磁石部材34の大きさの違いにより、音質にどのような変化が表れるかについて、図8及び図9を用いて、詳しく説明する。図8は、磁石の大きさの違いによる周波数スペクトルの違いを測定した測定結果を示す比較図であり、図8中のグラフの縦軸は音量(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。ここで、図8(A)は、第二磁石部材34を用いて受信部30を位置決めし、ウクレレ10の1弦Aを440.00、2弦Eを329.63、3弦Cを523.25、4弦Gを392.00にチューニングし、すべて開放弦で上から4弦→3弦→2弦→1弦の順に単音でかきおろし、コンタクトピックアップ20から得られる音声信号のピークホールド値を計測して得られた結果である。また、図8(B)は、第二磁石部材34を直径12ミリメートル、厚さ1.7ミリメートルのものに変更した以外は、同様の条件で計測して得られた結果である。この結果から明らかなように、第二磁石部材34よりも小さな磁石を用いると、よりそれぞれの音のピークホールドがブロードに出力されていることが確認された。このことから、圧電素子36をウクレレ10に押圧する押圧力が小さいと、出力されるボリュームを低下させることができる。言い換えると、感度の良い圧電素子を用いた場合であっても、圧電素子のピークを越えてしまう可能性を未然に低減し、ピークを越えることで出力音が歪んでしまったり、出力音の出力レベルが変化しなくなったりする可能性を未然に低減することができる。このように、圧電素子の押圧力を変化させることで、圧電素子の感度に限定されることなく、種々の圧電素子を用いることができる。
【0042】
次に、第二磁石部材34の大きさの違いによる音声波形の違いを測定した。図9は、第二磁石部材34の大きさの違いによる音声波形の違いを測定した結果を示す比較図であり、図9中のグラフの縦軸は実効値であり、横軸は時間(ミリ秒)である。ここで、図9(A)は、第二磁石部材34を用いて受信部30を位置決めし、ウクレレ10の1弦Aを440.00、2弦Eを329.63、3弦Cを523.25、4弦Gを392.00にチューニングし、3件のみ弾いて計測して得られた結果である。また、図9(B)は、第二磁石部材34を直径12ミリメートル、厚さ1.7ミリメートルのものに変更した以外は、同様の条件で計測して得られた結果である。この結果から明らかなように、第二磁石部材34より小さな磁石を用いると、最大振幅が小さく、信号持続時間が短くなることが確認された。このことから、圧電素子36をウクレレ10に押圧する押圧力が小さい場合には、より余韻が短く早く収束するような音を出力することができる。
【0043】
上述した実施の形態では、ウクレレ10と圧電素子36との間にセーム革38を挿入するものとしたが、これに限定されるものではなく、演奏者が希望する音に合わせて、適宜緩衝部材を挿入しても良い。この緩衝部材としては、例えば、1.5ミリメートルのフェルト、木綿布、1ミリメートルのアメゴム、1ミリメートルの硬質ゴム、0.5ミリメートルのくるみ木材、1ミリメートルのバルサ等があげられる。緩衝部材の材質や厚さを変更することにより、コンタクトピックアップ10から出力される音の音質・音色を演奏者の所望する音質・音色に変化させることができる。
【0044】
ここで、緩衝部材の材質による音質の変化について、図10及び図11を用いて更に詳しく説明する。図10及び図11は、緩衝部材の材質による音質・音色の変化を計測した音声波形の違いを計測した比較図であり、図10及び図11中のグラフの縦軸は実効値であり、横軸は時間(ミリ秒)である。ここで、図10(a)は、緩衝部材として厚さ1.5ミリメートルのフェルトを用い、ウクレレ10の1弦Aを440.00、2弦Eを329.63、3弦Cを523.25、4弦Gを392.00にチューニングし、3弦のみを弾いて計測して得られた計測結果であり、図10(b)は、緩衝部材を木綿布に代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果であり、図10(c)は、緩衝部材を厚さ1ミリメートルのアメゴムに代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果であり、図11(a)は、緩衝部材を厚さ1ミリメートルの硬質ゴムに代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果であり、図11(b)は、緩衝部材を厚さ0.5ミリメートルのくるみ木材に代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果であり、図11(c)は、緩衝部材を厚さ1ミリメートルのバルサに代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果である。これらの結果から明らかなように、厚さ1.5ミリメートルのフェルトを緩衝部材として用いた場合には、出力が低く滑らかに減衰する音が得られ、木綿布を用いた場合には、揺らぎ感のあるサウンドであり早く減衰する音が得られ、厚さ1ミリメートルのアメゴムを用い場合には、サウンドうねり感があって減衰が滑らかな音が得られ、厚さ1ミリメートルの硬質ゴムを用いた場合には、歪感のあるサウンドであって滑らかに減衰する音が得られ、厚さ0.5ミリメートルのくるみ木材を用いた場合には、ナチュラルなサウンドであって滑らかに減衰する音が得られ、厚さ1ミリメートルのバルサを用いた場合には、アタック音がやや強くナチュラルなサウンドであって滑らかに減衰する音が得られる。このように、緩衝部材を適宜変更することで、コンタクトピックアップ20は、演奏者が希望する音を出力することができる。
【0045】
上述した実施の形態では、第一磁石部材32及び第二磁石部材34の磁力によって受信部30を位置決めするものとしたが、図12に示すように、第二磁石部材34の表面に両面テープ52を備えていても良い。こうすれば、受信部30の位置を位置決めした後に、第二磁石部材34をウクレレ10に接着することができるため、第一磁石部材32を取り外したとしても、第二磁石部材34は楽器に接着されたままの状態を維持する。このため、第一磁石部材32を取り外しても、再び同一の位置に第一磁石部材32を容易に位置決めすることができる。なお、図12は、コンタクトピックアップ20の一例を示す概略図であり、ウクレレ10への取り付け方法は、上述したコンタクトピックアップ20の取り付け方法と同一であるため、説明を省略する。
【0046】
この態様を採用したコンタクトピックアップ20において、図13に示すように、第二磁石部材34を複数備えていても良い。こうすれば、それぞれの第二磁石部材34に対向する位置に容易に受信部30の位置を位置決めすることができる。言い換えると、予め複数の場所に第二磁石部材34を固定することにより、受信部30の位置を容易に位置決めすることができる。
【0047】
上述した実施の形態では、両面テープ52を用いて第二磁石部材34をウクレレ10を接着するものとしたが、両面テープに限定されるものではなく、例えば、接着剤や粘着剤、粘着テープ等であってもよい。いずれを用いた場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0048】
上述した実施の形態では、圧電素子36を用いてウクレレ10の音を感知するものとしたが、例えば、ムービング・コイル型マイクやリボン型マイク、コンデンサ型マイク等を用いても良い。例えば、コンデンサ型マイクを用いた場合には、図14に示すように、コンデンサ型マイク54が第一磁石部材32の表面に固定されたコンタクトピックアップ20を用いることができる。こうすれば、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0049】
上述した実施の形態では、楽器としてウクレレ10を例に説明したが、これに限定されるものではなく、アコースティックギターやバイオリン、ビオラ、ピアノ等の弦楽器を用いても良いし、木管楽器や金管楽器、打楽器等の楽器であっても良い。振動により音を発する楽器であれば、いずれの楽器であっても上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上述した実施の形態で示すように、アコースティック楽器の音を電気的に増幅して放音する分野、特に、弦楽器等の音を電気信号に変換するコンタクトピックアップとして利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…ウクレレ、12…サウンドホール、20…コンタクトピックアップ、30…受信部、32…第一磁石部材、34…第二磁石部材、36…圧電素子、38…セーム革、40…出力部、42…出力端子、44…出力端子固定部材、46…第三磁石部材、48…第四磁石部材、50…接続コード、52…両面テープ、54…コンデンサ型マイク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アコースティックギター等の弦楽器において、弦の振動を電気信号に変換するコンタクトピックアップ等の変換装置が広く利用されている。例えば、特許文献1には、ゴムからなる接着層を介して弦楽器のボディに取り付けられる変換装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−93199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした変換装置では、接着層を介して弦楽器のボディに取り付けるため、一度接着してしまうと弦楽器のボディから取り外すことが困難であり、変換装置を取り外す際に、接着層を弦楽器のボディから完全に除去することが困難であるという課題がある。
【0005】
このため、変換装置を一度取り付けてしまうと、取り付ける前の状態に戻すことができず、演奏者から、変換装置を一度取り付けても、取り付け位置を変更したり、外したりすることができる変換装置が熱望されていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、容易に着脱可能な変換装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の変換装置は、
楽器から発生した振動を電気信号に変換する変換部材と、
前記変換部材を支持する支持部材と、
前記楽器の少なくとも一部を挟んで対向する位置に配置される固定部材と、
を備え、
前記支持部材と前記固定部材の一方又は両方が磁石であって、互いに磁力で引き合うことで前記変換部材を位置決めする、
を備えたものである。
【0009】
この変換装置では、楽器の少なくとも一部を挟んだ位置に配置される支持部材と固定部材の一方又は両方が磁石であるため、磁力によって支持部材と固定部材とが楽器の少なくとも一部を挟んだ位置に位置決めされる。こうすることにより、支持部材によって支持された変換部材を、楽器の形状にかかわらず所望の位置に着脱可能な状態で位置決めすることが可能となる。また、変換装置の取り付けに際して接着剤等を使用しないため、変換装置を取り外す際に、楽器表面の損傷や接着剤等によって汚れることを防止することが可能となる。言い換えると、変換装置を自由な位置に取り付けたり、取り外したりすることが可能となる。
【0010】
本発明の変換装置において、前記変換部材は、圧電素子であり、前記支持部材と前記固定部材は、互いに磁力で引き合うことで、前記変換部材を前記楽器の方向に押圧してもよい。こうすれば、変換部材が楽器の方向に押圧されることになるため、変換部材が押圧されない場合と比較して、より感度良く圧電素子が楽器から発した振動を感知することが可能となる。また、変換部材が楽器の方向に押圧される押圧力を変えることにより、変換装置から出力される音の音質・音色を変化させることが可能となる。更に、圧電素子と楽器との間に接着層等を挟む必要がないため、楽器から発せられた振動を直接圧電素子に伝えることができる。
【0011】
本発明の変換装置は、前記変換部材が前記支持部材に押圧される際、前記支持部材と前記楽器との間に挿入される緩衝部材と、を備えていてもよい。こうすれば、緩衝部材を変更するという簡単な操作で、変換部材に到達する振動の強度や波形を変更させることが可能となる。言い換えると、緩衝部材を用いない場合と比較して、より容易に変換装置から出力される音の音質・音色を変化させることが可能となる。
【0012】
本発明の変換装置において、前記固定部材は、該固定部材が配置された際、該固定部材と前記楽器とが当接する当接面の少なくとも一部に該固定部材と前記楽器とを固定する接着部を有していてもよい。こうすれば、所望の位置に変換部材を配置した後に固定部材の位置を楽器に接着することができる。こうすることにより、仮に支持部材が外れてしまった場合であっても、固定部材が楽器に接着されているため、再び支持部材を所望の位置に配置することができる。この態様を採用した本発明の変換装置において、前記固定部材は、複数備えられていてもよい。こうすれば、あらかじめ複数の固定部材を楽器に接着することにより、楽器の演奏に合わせて、複数の場所から一箇所を選択し、この選択位置に容易に変換部材を位置決めすることができる。
【0013】
本発明の変換装置は、前記変換部材と電気的に接続され、前記変換部材で変換された電気信号を出力する出力端子と、を備えていてもよい。こうすれば、変換部材で変換された電気信号を外部に出力することができる。また、変換部材を楽器の外側に配置した場合には、楽器に貫通孔を設けることなく、変換部材と出力端子とを電気的に接続することができる。この態様を採用した本発明の変換装置において、前記出力端子を支持する出力端子支持部材と、前記楽器の少なくとも一部を挟んで対向する位置に配置される出力端子固定部材と、を備え、前記出力端子支持部材と前記出力端子固定部材のいずれか一方が磁石であって、互いに磁力で引き合うことで前記出力端子を前記楽器の表面位置に位置決めしてもよい。こうすれば、楽器に損傷を与えることなく、変換部材と出力端子とを所望の位置に位置決めすることができる。言い換えると、楽器の演奏者は、変換部材を所望の演奏音を電気信号に変換可能な位置に位置決めし、出力端子を自らの演奏の邪魔にならない位置に位置決めすることができる。
【0014】
本発明の変換装置において、前記支持部材及び前記固定部材は、ネオジム磁石であっても良い。こうすれば、支持部材と固定部材のいずれか一方のみが磁石である場合と比較して、より強い力で楽器及び変換部材を挟み込むことができるため、一度位置決めした後に、不意に移動してしまう可能性を低減することができる。また、ネオジム磁石は磁鉄鉱やフェライト磁石と比較して磁束密度が高いため、磁鉄鉱やフェライト磁石を使用する場合と比較して、より強い力で楽器及び変換部材を挟み込むことができ、一度位置決めした後に、不意に変換装置が移動してしまう可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンタクトピックアップ20の構成の概略を示す説明図。
【図2】コンタクトピックアップ20をウクレレ10に取り付けた状態を示す説明図。
【図3】コンタクトピックアップ20の取り付け方を説明する説明図。
【図4】受信部の取り付け位置を示す説明図。
【図5】受信部の取り付け位置によるピークホールドの違いを比較した比較図。
【図6】受信部の取り付け方法による音声波形の違いを比較した比較図。
【図7】受信部の取り付け方法による周波数スペクトルの違いを比較した比較図。
【図8】第二磁石部材の大きさによる音声波形の違いを比較した比較図。
【図9】第二磁石部材の大きさによる周波数スペクトルの違いを比較した比較図。
【図10】緩衝部材の種類による周波数スペクトルの違いを比較した比較図。
【図11】緩衝部材の種類による周波数スペクトルの違いを比較した比較図。
【図12】他の実施の形態におけるコンタクトピックアップ20を示す概略図。
【図13】他の実施の形態におけるコンタクトピックアップ20の使用状態を示す概略図。
【図14】他の実施の形態におけるコンタクトピックアップ20を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、上記簡単に説明した図面に基づいて、本発明を実施するための形態を説明するにあたり、本実施の形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施の形態のウクレレ10が本発明の楽器に相当し、コンタクトピックアップ20が変換装置に相当し、圧電素子36が変換部材に相当し、第一磁石部材32が支持部材に相当し、第二磁石部材34が固定部材に相当し、セーム革38が緩衝部材に相当し、両面テープ52が接着部に相当し、出力端子42が出力端子に相当し、第三磁石部材46が出力端子支持部材に相当し、第四磁石部材48が出力端子固定部材に相当する。なお、コンタクトピックアップ20をウクレレ10に取り付ける方法を説明することにより、本発明の実施の形態の一例であるコンタクトピックアップ20の使用方法の一例も明らかにしている。
【0017】
次に、図1を用いて、本発明の実施の形態の一例であるコンタクトピックアップ20の構成を詳しく説明する。ここで、図1は、コンタクトピックアップ20の構成の概略を示す説明図である。このコンタクトピックアップ20は、音源からの振動を感知する圧電素子36を含む受信部30と、出力端子42を含む出力部40と、を備えており、受信部30と出力部40とは、接続コード50で電気的に接続されている。また、受信部30及び接続コード50の表面は、図示しないゴム製の絶縁層で覆われている。
【0018】
受信部30は、圧電素子36を支持する第一磁石部材32と、第一磁石部材32と対向する位置に配置される第二磁石部材34と、を備えており、第一磁石部材32と第二磁石部材34とは磁力によって互いに引き合っている。第一磁石部材32及び第二磁石部材34は、いずれも、直径20ミリメートル、厚さ5ミリメートルのネオジム磁石を含んでいる。この受信部30を取り付ける際には、第一磁石部材32とウクレレ10との間に厚さ0.5ミリメートルのセーム革38を挟み、第一磁石部材32と第二磁石部材34との間にウクレレ10の一部を挟み込む事によって、受信部30を位置決めする(図3参照)。
【0019】
圧電素子36は、図1に示すように、接続コード50と電気的に接続されており、圧電体の表面に与えられた力(振動)を圧電効果により電圧に変換するTAMURA電気製の公知の圧電素子である。こうすることにより、ウクレレ10から発せられた音を電気信号に変換し、接続コード50を介して出力端子42から電気信号を出力する。
【0020】
出力部40は、出力端子42と、出力端子42を固定するための出力端子固定部材44と、を備えている。出力端子42は、図示しない入力プラグを介して図示しないスピーカに接続される。こうすることにより、ウクレレ10から発せられた音を図示しないスピーカより大音量で出力することができる。
【0021】
出力端子固定部材44は、出力端子42に取り付けられた第三磁石部材46と第三磁石部材46と磁力によって移動可能に位置決めされる第四磁石部材48と、を備えており、第三磁石部材46と第四磁石部材48とは、磁力によって互いに引き合っている。第三磁石部材46及び第四磁石部材48は、いずれも、直径20ミリメートル、厚さ5ミリメートルのネオジム磁石を含んでいる。この出力端子固定部材44は、第三磁石部材46と第四磁石部材48との間にウクレレ10の一部を挟み込む事により、出力端子42の位置を位置決めする(図2参照)。
【0022】
次に、受信部30をウクレレ10に取り付ける方法について、図3を用いて、更に詳しく説明する。ここで、図3は、ウクレレ10にコンタクトピックアップ20を取り付けるための説明図であり、図2中のサウンドホール12近傍から受信部30近傍を切断した部分断面図である。
【0023】
コンタクトピックアップ20をウクレレ10に取り付ける際には、まず、図3(a)に示すように、ウクレレ10に備えられたサウンドホール12の近傍にセーム革38を配置する。なお、ここでセーム革38を配置する位置は、第二磁石部材34をウクレレ10の内面側から配置する際に配置しやすい位置であればよく、第二磁石部材34を配置した後に受信部30は移動可能である。
【0024】
続いて、図3(b)に示すように、ウクレレ10、セーム革38、第一磁石部材32の順で並べた、セーム革38側に圧電素子36が位置するように第一磁石部材32を配置し、図3(c)に示すように、内面側から第二磁石部材34を第一磁石部材32とウクレレ10の表面板を挟んで対向する位置に近づける。このとき、第一磁石部材32と第二磁石部材34とは、互いに磁力で引き合う面が向かい合うように近づける。こうすれば、第二磁石部材34は、第一磁石部材32の磁力によって、ウクレレ10の表面板を挟んで対向する位置に引き寄せられる。こうすることにより、受信部30は、ウクレレ10の表面位置に位置決めされることになる。このとき、受信部30は第一磁石部材32及び第二磁石部材34が磁力によって引き合うことで位置決めされているため、第一磁石部材32をウクレレ10の表面に沿って移動させることにより、受信部30を移動させることができる。言い換えると、受信部30を所望の位置に位置決めすることができる。
【0025】
また、出力部40についても、第三磁石部材46と第四磁石部材48とを用いることにより、図2に示すように、所望の位置に位置決めすることができる。なお、出力部40の取り付け方法については、受信部30と同様のため、ここでは説明を省略する。
【0026】
ここで、受信部30の位置により、ウクレレ10から発せられた音がコンタクトピックアップ20を介して出力される際に、どのように変化するかについて確認試験を実施した。具体的には、図4中のA〜Eの位置にそれぞれ受信部30を位置決めして、コンタクトピックアップ20から出力される音声信号のピークホールド値を計測した。
【0027】
このときの結果を、図5に示す。図5は、A〜E地点に受信部30を位置決めし、それぞれの位置で得られたピークホールドを測定したグラフを示した比較図であり、図5中のグラフの縦軸は音量(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。ここで、図5(A)は、図4中のAの位置に受信部30を位置決めし、ウクレレ10の1弦Aを440.00Hz、2弦Eを311.13Hz、3弦Cを261.63Hz、4弦Gを392.00Hzにチューニングし、すべて開放弦で上から4弦→3弦→2弦→1弦の順に単音でかきおろし各々の位置でコンタクトピックアップ20から得られる音声信号のピークホールド値を計測した。また、図5(B)〜図5(E)は、それぞれ、図4中のB〜Eの位置にそれぞれ受信部30を位置決めしたこと以外は、同様の条件で計測して得られた結果である。この結果から明らかなように、受信部30の設置位置によって、測定結果に大きな差が確認された。この結果より、受信部30をウクレレ10に取り付ける位置によって、コンタクトピックアップ20から得られる音声信号のスペクトルには大きな差異が見られ、このことは、受信部30をウクレレ10に取り付ける位置によって、音質が異なることを意味する。
【0028】
自分のイメージした音を演奏したいと考えることは、演奏者にとって自然な願望である。例えば、ソロ演奏を行うに際し、一音一音をはっきりと表現したいと考えた場合には、基音と倍音とがバランス良く出力される位置に受信部30を位置決めすることが望ましい。このような場合には、図5に示すように、それぞれの位置で位置決めした受信部30から得られたピークホールドの結果を比較し、基音と倍音とのバランスが取れている図5(C)を選択する、つまり、図4中Cの位置に受信部30を位置決めする。同様に、例えばストローク奏法で低音を落としたい場合には図4中Eの位置に、逆に、低音を強調して演奏したい場合には、図4中B又はDの位置に、それぞれ位置決めすることにより、演奏者が望む音を出力することができる。このように、受信部30の位置決めする位置を自由に移動させられることは、演奏者が所望の音を出力することができるだけでなく、演奏者が所望の音を出力するための位置を調査することもできる。
【0029】
次に、ウクレレ10の表面側に押圧する力によって、圧電素子36の感度がどのように変化するかについての確認試験を行った。具体的には、通常コンタクトピックアップを取り付ける際に用いられる両面テープでウクレレ10の表面に圧電素子を取り付けた場合と第一磁石部材32と第二磁石部材34とを用いた場合とについて、ウクレレ10の表面に圧電素子36を押圧した場合について測定し、結果を比較した。
【0030】
このときの結果を、図6及び図7に示す。図6は、圧電素子の固定方法の違いによる周波数スペクトルの違いを測定した測定結果を示す比較図であり、図6中のグラフの縦軸は音量(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。ここで、図6(A)は、上記実施の形態と同様にして受信部30を位置決めし、ウクレレ10の1弦Aを440.00Hz、2弦Eを329.63Hz、3弦Cを523.25Hz、4弦Gを392.00Hzにチューニングし、すべて開放弦で上から4弦→3弦→2弦→1弦の順に単音でかきおろし、コンタクトピックアップ20から得られる音声信号のピークホールド値を計測して得られた結果である。また、図6(B)は、受信部30を両面テープでウクレレ10に貼着した以外は、同様の条件で計測して得られた結果である。この結果から明らかなように、第一磁石部材32及び第二磁石部材34を用いて圧電素子36を位置決めした方が、より最大振幅が大きいことが確認された。このことから、圧電素子36をウクレレ10に押圧すると、両面テープでウクレレ10の表面に貼着する場合と比較して、より感度良くウクレレ10から発生する振動を受信することができると言える。
【0031】
図7は、圧電素子の固定方法の違いによる音声波形の違いを測定した測定結果を示す比較図であり、図7中のグラフの縦軸は実効値であり、横軸は時間(ミリ秒)である。なお、実験条件は、圧電素子の固定方法の違いによる周波数スペクトルの違いを測定した際(図6)と同様であるため、ここでは説明を省略する。この結果から明らかなように、第一磁石部材32及び第二磁石部材34を用いて圧電素子36を位置決めした方が、より最大振幅が大きく、信号持続時間が長いことが確認された。このことから、圧電素子36をウクレレ10に押圧すると、両面テープでウクレレ10の表面に貼着する場合と比較して、より感度良くウクレレ10から発生する振動を受信することができると言える。
【0032】
コンタクトピックアップ20を外す際には、受信部30及び出力部40をサウンドホール12まで移動させて取り外しても良いし、第一磁石部材32及び第三磁石部材46を取り外し、第二磁石部材34及び第四磁石部材48をサウンドホール12からウクレレ10の外に取り出しても良い。いずれの方法であっても、コンタクトピックアップ20を位置決めするに際して接着剤等を使用していないため、取り外しに際してウクレレ10の表面に接着剤等が残ってしまったり、接着剤等を剥がす際に表面を傷つけてしまったりする可能性を低減することができる。
【0033】
以上詳述した本実施の形態のコンタクトピックアップ20によれば、ウクレレ10の表面板を挟んで第一磁石部材32と第二磁石部材34とが互いに磁力で引き合うことで、第一磁石部材32に支持された圧電素子36を含む受信部30の位置を所望の位置に位置決めすることができる。このとき、受信部30は、互いに引き合う磁力によってのみ位置決めされているため、ウクレレ10の表面に一度位置決めした後であっても、所望の位置に移動可能である。また、コンタクトピックアップ20は磁力によってのみウクレレ10の表面に位置するため、使用後は、何らウクレレ10の表面に跡を残すことなく、取り外すことができる。言い換えると、ウクレレ10の表面を傷つけたり、取り外す際に何らかの跡をウクレレ10に残したりすることなく、所望の位置に受信部30を着脱可能な状態で位置決めすることができる。
【0034】
また、受信部30を位置決めする際、第一磁石部材32と第二磁石部材34が磁力で引き合うことにより、圧電素子36は、ウクレレ10の表面側に押圧された状態で位置決めされる。したがって、圧電素子36をウクレレ10の表面側に両面テープ等で貼着する場合と比較して、より感度良く楽器から発した振動を感知することができる。
【0035】
更に、圧電素子36は、ウクレレ10の表面側に位置決めされているため、出力端子42と電気的に接続される接続コード50は、常にウクレレ10の外面側に位置することができる。このため、従来型のコンタクトピックアップのように、電気信号を外部に出力するための貫通孔をウクレレ10に備える必要がない。言い換えると、ウクレレ10に損傷を与えることなく、コンタクトピックアップ20を取り付けることができる。
【0036】
更にまた、出力部40は、ウクレレ10の表面側に第三磁石部材46と第四磁石部材48とによって位置決めされているため、出力端子42に接続されたピックアップケーブル等に第三磁石部材46及び第四磁石部材48の磁力を上回る力が加えられた場合には、出力部40がウクレレ10の表面から離脱する。このため、出力部40がウクレレ10に接着している場合と比較して、ウクレレ10に過度な力が加わり、破損する可能性を未然に低減することができる。なお、受信部30も第一磁石部材32と第二磁石部材34とによって位置決めされているため、同様の効果が得られる。
【0037】
そして更に、第一磁石部材32と第二磁石部材34はいずれもネオジム磁石であるため、磁鉄鉱やフェライト磁石等と比較して、より強い力でウクレレ10を挟むことができ、ウクレレ10を演奏中に、不意に受信部30の位置がずれてしまったり、コンタクトピックアップ20が外れてしまったりする可能性を未然に低減することができる。
【0038】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0039】
例えば、上述した実施の形態では、第一磁石部材32及び第二磁石部材34は、いずれもネオジム磁石であるものとしたが、圧電素子36を支持可能な磁力を有する磁石であれば特に限定されるものではなく、磁鉄鉱やフェライト磁石等他の磁石を用いても良い。また、第一磁石部材32及び第二磁石部材34のいずれか一方のみを磁石とし、他方を磁力で吸引可能な磁性体としてもよい。いずれの場合であっても、上述した実施の形態の効果を得ることができる。なお、第三磁石部材46及び第四磁石部材48についても同様である。
【0040】
上述した実施の形態では、第二磁石部材34として、直径20ミリメートル、厚さ5ミリメートルのネオジム磁石を用いるものとしたが、第二磁石部材34の大きさはこれに限定されるものではなく、例えば、直径12ミリメートル、厚さ1.7ミリメートルのネオジム磁石を用いても良い。こうすることにより、第一磁石部材32と第二磁石部材34とが磁力によって引き合う力を減少させ、圧電素子36がウクレレ10の表面に押圧する押圧力を減少させることができる。このように圧電素子36がウクレレ10の表面に押圧される押圧力を調節することで、コンタクトピックアップ20から出力される音質を変化させることができるため、演奏者の所望する音を得ることができる。
【0041】
ここで、第二磁石部材34の大きさの違いにより、音質にどのような変化が表れるかについて、図8及び図9を用いて、詳しく説明する。図8は、磁石の大きさの違いによる周波数スペクトルの違いを測定した測定結果を示す比較図であり、図8中のグラフの縦軸は音量(dB)であり、横軸は周波数(Hz)である。ここで、図8(A)は、第二磁石部材34を用いて受信部30を位置決めし、ウクレレ10の1弦Aを440.00、2弦Eを329.63、3弦Cを523.25、4弦Gを392.00にチューニングし、すべて開放弦で上から4弦→3弦→2弦→1弦の順に単音でかきおろし、コンタクトピックアップ20から得られる音声信号のピークホールド値を計測して得られた結果である。また、図8(B)は、第二磁石部材34を直径12ミリメートル、厚さ1.7ミリメートルのものに変更した以外は、同様の条件で計測して得られた結果である。この結果から明らかなように、第二磁石部材34よりも小さな磁石を用いると、よりそれぞれの音のピークホールドがブロードに出力されていることが確認された。このことから、圧電素子36をウクレレ10に押圧する押圧力が小さいと、出力されるボリュームを低下させることができる。言い換えると、感度の良い圧電素子を用いた場合であっても、圧電素子のピークを越えてしまう可能性を未然に低減し、ピークを越えることで出力音が歪んでしまったり、出力音の出力レベルが変化しなくなったりする可能性を未然に低減することができる。このように、圧電素子の押圧力を変化させることで、圧電素子の感度に限定されることなく、種々の圧電素子を用いることができる。
【0042】
次に、第二磁石部材34の大きさの違いによる音声波形の違いを測定した。図9は、第二磁石部材34の大きさの違いによる音声波形の違いを測定した結果を示す比較図であり、図9中のグラフの縦軸は実効値であり、横軸は時間(ミリ秒)である。ここで、図9(A)は、第二磁石部材34を用いて受信部30を位置決めし、ウクレレ10の1弦Aを440.00、2弦Eを329.63、3弦Cを523.25、4弦Gを392.00にチューニングし、3件のみ弾いて計測して得られた結果である。また、図9(B)は、第二磁石部材34を直径12ミリメートル、厚さ1.7ミリメートルのものに変更した以外は、同様の条件で計測して得られた結果である。この結果から明らかなように、第二磁石部材34より小さな磁石を用いると、最大振幅が小さく、信号持続時間が短くなることが確認された。このことから、圧電素子36をウクレレ10に押圧する押圧力が小さい場合には、より余韻が短く早く収束するような音を出力することができる。
【0043】
上述した実施の形態では、ウクレレ10と圧電素子36との間にセーム革38を挿入するものとしたが、これに限定されるものではなく、演奏者が希望する音に合わせて、適宜緩衝部材を挿入しても良い。この緩衝部材としては、例えば、1.5ミリメートルのフェルト、木綿布、1ミリメートルのアメゴム、1ミリメートルの硬質ゴム、0.5ミリメートルのくるみ木材、1ミリメートルのバルサ等があげられる。緩衝部材の材質や厚さを変更することにより、コンタクトピックアップ10から出力される音の音質・音色を演奏者の所望する音質・音色に変化させることができる。
【0044】
ここで、緩衝部材の材質による音質の変化について、図10及び図11を用いて更に詳しく説明する。図10及び図11は、緩衝部材の材質による音質・音色の変化を計測した音声波形の違いを計測した比較図であり、図10及び図11中のグラフの縦軸は実効値であり、横軸は時間(ミリ秒)である。ここで、図10(a)は、緩衝部材として厚さ1.5ミリメートルのフェルトを用い、ウクレレ10の1弦Aを440.00、2弦Eを329.63、3弦Cを523.25、4弦Gを392.00にチューニングし、3弦のみを弾いて計測して得られた計測結果であり、図10(b)は、緩衝部材を木綿布に代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果であり、図10(c)は、緩衝部材を厚さ1ミリメートルのアメゴムに代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果であり、図11(a)は、緩衝部材を厚さ1ミリメートルの硬質ゴムに代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果であり、図11(b)は、緩衝部材を厚さ0.5ミリメートルのくるみ木材に代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果であり、図11(c)は、緩衝部材を厚さ1ミリメートルのバルサに代えたこと以外は図10(a)と同様の条件で実験して得られた計測結果である。これらの結果から明らかなように、厚さ1.5ミリメートルのフェルトを緩衝部材として用いた場合には、出力が低く滑らかに減衰する音が得られ、木綿布を用いた場合には、揺らぎ感のあるサウンドであり早く減衰する音が得られ、厚さ1ミリメートルのアメゴムを用い場合には、サウンドうねり感があって減衰が滑らかな音が得られ、厚さ1ミリメートルの硬質ゴムを用いた場合には、歪感のあるサウンドであって滑らかに減衰する音が得られ、厚さ0.5ミリメートルのくるみ木材を用いた場合には、ナチュラルなサウンドであって滑らかに減衰する音が得られ、厚さ1ミリメートルのバルサを用いた場合には、アタック音がやや強くナチュラルなサウンドであって滑らかに減衰する音が得られる。このように、緩衝部材を適宜変更することで、コンタクトピックアップ20は、演奏者が希望する音を出力することができる。
【0045】
上述した実施の形態では、第一磁石部材32及び第二磁石部材34の磁力によって受信部30を位置決めするものとしたが、図12に示すように、第二磁石部材34の表面に両面テープ52を備えていても良い。こうすれば、受信部30の位置を位置決めした後に、第二磁石部材34をウクレレ10に接着することができるため、第一磁石部材32を取り外したとしても、第二磁石部材34は楽器に接着されたままの状態を維持する。このため、第一磁石部材32を取り外しても、再び同一の位置に第一磁石部材32を容易に位置決めすることができる。なお、図12は、コンタクトピックアップ20の一例を示す概略図であり、ウクレレ10への取り付け方法は、上述したコンタクトピックアップ20の取り付け方法と同一であるため、説明を省略する。
【0046】
この態様を採用したコンタクトピックアップ20において、図13に示すように、第二磁石部材34を複数備えていても良い。こうすれば、それぞれの第二磁石部材34に対向する位置に容易に受信部30の位置を位置決めすることができる。言い換えると、予め複数の場所に第二磁石部材34を固定することにより、受信部30の位置を容易に位置決めすることができる。
【0047】
上述した実施の形態では、両面テープ52を用いて第二磁石部材34をウクレレ10を接着するものとしたが、両面テープに限定されるものではなく、例えば、接着剤や粘着剤、粘着テープ等であってもよい。いずれを用いた場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0048】
上述した実施の形態では、圧電素子36を用いてウクレレ10の音を感知するものとしたが、例えば、ムービング・コイル型マイクやリボン型マイク、コンデンサ型マイク等を用いても良い。例えば、コンデンサ型マイクを用いた場合には、図14に示すように、コンデンサ型マイク54が第一磁石部材32の表面に固定されたコンタクトピックアップ20を用いることができる。こうすれば、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0049】
上述した実施の形態では、楽器としてウクレレ10を例に説明したが、これに限定されるものではなく、アコースティックギターやバイオリン、ビオラ、ピアノ等の弦楽器を用いても良いし、木管楽器や金管楽器、打楽器等の楽器であっても良い。振動により音を発する楽器であれば、いずれの楽器であっても上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上述した実施の形態で示すように、アコースティック楽器の音を電気的に増幅して放音する分野、特に、弦楽器等の音を電気信号に変換するコンタクトピックアップとして利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…ウクレレ、12…サウンドホール、20…コンタクトピックアップ、30…受信部、32…第一磁石部材、34…第二磁石部材、36…圧電素子、38…セーム革、40…出力部、42…出力端子、44…出力端子固定部材、46…第三磁石部材、48…第四磁石部材、50…接続コード、52…両面テープ、54…コンデンサ型マイク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器から発生した振動を電気信号に変換する変換部材と、
前記変換部材を支持する支持部材と、
前記楽器の少なくとも一部を挟んで対向する位置に配置される固定部材と、
を備え、
前記支持部材と前記固定部材の一方又は両方が磁石であって、互いに磁力で引き合うことで前記変換部材を位置決めする、
変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変換装置であって、
前記変換部材は、圧電素子であり、
前記支持部材と前記固定部材は、互いに磁力で引き合うことで、前記変換部材を前記楽器の方向に押圧する、
変換装置。
【請求項3】
前記変換部材が前記支持部材に押圧される際、前記支持部材と前記楽器との間に挿入される緩衝部材と、
を備えた、
請求項2に記載の変換装置。
【請求項4】
前記固定部材は、該固定部材が配置された際、該固定部材と前記楽器とが当接する当接面の少なくとも一部に該固定部材と前記楽器とを固定する接着部を有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の変換装置であって、
前記固定部材は、複数備えられている、
変換装置。
【請求項6】
前記変換部材と電気的に接続され、前記変換部材で変換された電気信号を出力する出力端子と、
を備えた、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の変換装置であって、
前記出力端子を支持する出力端子支持部材と、
前記楽器の少なくとも一部を挟んで対向する位置に配置される出力端子固定部材と、
を備え、
前記出力端子支持部材と前記出力端子固定部材のいずれか一方が磁石であって、互いに磁力で引き合うことで前記出力端子を前記楽器の表面位置に位置決めする、
変換装置。
【請求項8】
前記支持部材及び前記固定部材は、ネオジム磁石である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の変換装置。
【請求項1】
楽器から発生した振動を電気信号に変換する変換部材と、
前記変換部材を支持する支持部材と、
前記楽器の少なくとも一部を挟んで対向する位置に配置される固定部材と、
を備え、
前記支持部材と前記固定部材の一方又は両方が磁石であって、互いに磁力で引き合うことで前記変換部材を位置決めする、
変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変換装置であって、
前記変換部材は、圧電素子であり、
前記支持部材と前記固定部材は、互いに磁力で引き合うことで、前記変換部材を前記楽器の方向に押圧する、
変換装置。
【請求項3】
前記変換部材が前記支持部材に押圧される際、前記支持部材と前記楽器との間に挿入される緩衝部材と、
を備えた、
請求項2に記載の変換装置。
【請求項4】
前記固定部材は、該固定部材が配置された際、該固定部材と前記楽器とが当接する当接面の少なくとも一部に該固定部材と前記楽器とを固定する接着部を有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の変換装置であって、
前記固定部材は、複数備えられている、
変換装置。
【請求項6】
前記変換部材と電気的に接続され、前記変換部材で変換された電気信号を出力する出力端子と、
を備えた、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の変換装置であって、
前記出力端子を支持する出力端子支持部材と、
前記楽器の少なくとも一部を挟んで対向する位置に配置される出力端子固定部材と、
を備え、
前記出力端子支持部材と前記出力端子固定部材のいずれか一方が磁石であって、互いに磁力で引き合うことで前記出力端子を前記楽器の表面位置に位置決めする、
変換装置。
【請求項8】
前記支持部材及び前記固定部材は、ネオジム磁石である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図12】
【図13】
【図14】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−73278(P2012−73278A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171288(P2010−171288)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(510208505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(510208505)
【Fターム(参考)】
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