説明

変異体FGF

【課題】骨癒合症に関与し得る遺伝子変異を見出し、それに基づく該疾患の発症リスクの判定方法を提供すること。硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性や組織内拡散性が改変された変異体FGFを提供すること。
【解決手段】本発明は、FGF9ポリペプチドのAsn143のThrへの置換、又はFgf9遺伝子におけるAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異の有無を検出することを含む、骨癒合症の発症リスクの判定方法を提供する。また、本発明は、FGFホモ二量体内の単量体間水素結合に寄与するAsnがThrに置換された変異体FGFポリペプチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異体FGF及びその用途に関する。より具体的には、本発明は硫酸化プロテオグリカンに対する親和性の低下した変異体FGF、該変異体FGFを含む医薬、該変異体FGFの有無を検出することを特徴とする骨癒合症の発症リスクの判定方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格形態発生は、関節の協調した発生を伴い、その位置が骨格のレイアウトを決定する。関節は構造的及び機能的に不均一である。滑膜関節は、軟骨細胞の初期凝集から生じ、引き続き関節腔により隔てられた別々の骨格構造へ分化する。対照的に、縫合線は、未熟で急速に分裂している造骨性の前駆体(このうちの一部は骨芽細胞となり、新たな骨を産生する)を含む、狭い領域により隔てられた2つの骨の板を含む。
【0003】
線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体における機能獲得型の変異は、軟骨異形成症及び頭蓋骨縫合線早期癒合症を生じ、骨および関節の両方の発生におけるFGFシグナリングの機能に脚光を当てている。特に、線維芽細胞増殖因子受容体2(Fgfr2)ローカスにおける優性変異が関与しているアントレー−ビクスラー症候群(Antley−Bixler syndrome:ABS)において橈上腕(radiohumeral)骨癒合症及び頭蓋骨縫合線早期癒合症が同時発生することは、滑膜関節及び縫合線発生の両方におけるFGFシグナリングの寄与を示唆する(非特許文献1)。同様の症候群性の関節欠陥が、クルーゾン症候群に関連するFgfr2cの機能獲得型を発現するマウス(非特許文献2)や、異所性で恒常的に活性なFGFR1キナーゼドメインを発現しているマウス(非特許文献3)においても見られる。これらの知見は、FGFシグナリングが関節及び縫合線発生を阻害する一方で、軟骨形成及び/又は骨形成を促進することを示唆する。従って、FGFシグナリングに対する時空間的な制約が、骨および関節の両方の協調した発生を達成するのかもしれない。
【0004】
局所的なFGFシグナリングは、いくつかの異なるレベルにおいて調節されている。第1に、FGFリガンドの時空間的に制限された発現がある。22のFGFリガンドのなかで、FGF2、FGF4、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF17及びFGF18は肢芽及び発生中の骨格において発現している。これらのうち、機能欠失型の変異により、FGF2、FGF9及びFGF18の軟骨形成及び/又は骨形成への機能的関与が実証されている(非特許文献4〜7)。マウスにおけるFGF9の過剰発現による軟骨形成異常の表現型の誘導も、FGF9が軟骨形成に影響を及ぼす能力を実証している(非特許文献8)。FGFシグナリングに関与する他のエレメントはヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPGs)である。マウス及びキイロショウジョウバエにおける遺伝学的研究は、HSPGsがFGFリガンドの分布及び受容体結合を制御することを示唆する(非特許文献9及び10)。マウスにおいて、HSPGグリコサミノグリカン鎖合成に必要な鍵となるグリコシルトランスフェラーゼ酵素であるExt1における低形質変異は、肘及び膝関節の癒合を引き起こす(非特許文献11)。特に、Ext1の神経特異的ノックアウトにより、脳パターン形成時のFGF8の適切な分布におけるヘパラン硫酸(HS)の必要性が明らかとなった。更に、他のHS生合成遺伝子であるNdst1はレンズ発生の間のFGFシグナリングに必要である。これらの知見を合わせると、FGF/HS相互作用が、関節発生を含む器官発生時のFGFシグナリングを制御していることが示唆される。最後に、FGF9の構造解析により、FGF9が、シグナル伝達能力に影響を与え得るホモ二量体を形成し得ることが示唆されている(非特許文献12及び13)。FGF9のホモ二量体化は、FGF9のいくつかの重要な受容体結合部位を閉鎖するため、自動阻害メカニズムがFGF9依存的シグナル伝達を調節するよう機能しているのかもしれない。しかしながら、この提唱された自動阻害メカニズムは、まだその機能の実証がなされていない。
【0005】
以上のように、種々のFGFが関節及び縫合線の発生に関与していること、そしてFGFRの機能獲得型変異により骨癒合症が誘導されることが報告されているが、そのリガンドであるFGFの変異が骨癒合症を誘導することは全く知られていない。また、FGFの変異が硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性やその組織内拡散性に影響を及ぼすことも知られていない。
【0006】
本発明者らは、自然発生マウス変異体、肘−膝関節癒合症(elbow-knee-synostosis、Eks)が、ABS様骨格異常、橈上腕(radiohumeral)及び脛大腿(tibiofemoral)の骨癒合症、頭蓋骨縫合線早期癒合症及び肺形成不全を呈することを以前報告している(非特許文献14)。
【0007】
一方、特許文献1には、種々のFGF変異体が開示されている。該文献には、FGFの変異がその受容体特異性の変化を誘導することが記載されている。しかし、FGFの組織内拡散性や硫酸化グリコサミノグリカンとの親和性への影響については記載されていない。
【特許文献1】WO02/036732
【非特許文献1】Reardon, W., Smith, A., Honour, J.W., Hindmarsh, P., Das, D., Rumsby, G., Nelson, I., Malcolm, S., Ades, L., and Sillence, D. et al., (2000). Evidence for digenic inheritance in some cases of Antley-Bixler syndrome? J. Med. Genet. 37, 26-32.
【非特許文献2】Eswarakumar, V.P., Horowitz, M.C., Locklin, R., Morriss-Kay, G.M., and Lonai, P. (2004). A gain-of-function mutation of Fgfr2c demonstrates the roles of this receptor variant in osteogenesis. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 101, 12555-12560.
【非特許文献3】Wang, Q., Green, R.P., Zhao, G., and Ornitz, D.M. (2001). Differential regulation of endochondral bone growth and joint development by FGFR1 and FGFR3 tyrosine kinase domains. Development 128, 3867-3876.
【非特許文献4】Montero, A., Okada, Y., Tomita, M., Ito, M., Tsurukami, H., Nakamura, T., Doetschman, T., Coffin, J.D., and Hurley, M.M. (2000). Disruption of the fibroblast growth factor-2 gene results in decreased bone mass and bone formation. J. Clin. Invest. 105, 1085-1093.
【非特許文献5】Hung, I.H., Yu, K., Lavine, K.J., and Ornitz, D.M. (2007). FGF9 regulates early hypertrophic chondrocyte differentiation and skeketal vascularization in the developing stylopod. Dev. Biol. 307, 300-313.
【非特許文献6】Liu, Z., Xu, J., Colvin J.S., and Ornitz, D.M. (2002). Coordination of chondrogenesis and osteogenesis by fibroblast growth factor 18. Genes Dev. 16, 859-869.
【非特許文献7】Ohbayashi, N., Shibayama, M., Kurotaki, Y., Imanishi, M., Fujimori T., Itoh, N., and Takada, S. (2002). FGF18 is required for normal cell proliferation and differentiation during osteogenesis and chondrogenesis. Genes Dev. 16, 870-879.
【非特許文献8】Garofalo, S., Kliger-Spatz, M., Cooke, J.L., Wolstin, O., Lunstrum, G.P., Moshkovitz, S.M., Horton, W.A., and Yayon, A. (1999). Skeletal dysplasia and defective chondrocyte differentiation by targeted overexpression of fibroblast growth factor 9 in transgenic mice. J. Bone Miner. Res. 14, 1909-1915.
【非特許文献9】Ornitz, D.M. (2000). FGFs, heparan sulfate and FGFRs: complex interactions essential for development. BioEssays 22, 108-112.
【非特許文献10】Nybakken, K., and Perrimon, N. (2002). Heparan sulfate proteoglycan modulation of developmental signaling in Drosophila. Biochim. Biophys. Acta 19, 280-291.
【非特許文献11】Koziel, L., Kunath, M., Kelly, O.G., and Vortkamp, A. (2004). Ext1-dependent heparin sulfate regulates the range of Ihh signaling during endochondral ossification. Dev. Cell 6, 801-813.
【非特許文献12】Plotnikov, A.N., Eliseenkova, A.V., Ibrahimi, O.A., Shriver, Z., Sasisekharan, R., Lemmon, M.A. and Mohammadi, M. (2001). Crystal structure of fibroblast growth factor 9 reveals regions implicated in dimerization and autoinhibition. J. Biol. Chem. 276, 4322-4329.
【非特許文献13】Hecht, H.J., Adar, R., Hofmann, B., Bogin, O., Weich, H., and Yayon, A. (2001). Structure of fibroblast growth factor 9 shows a symmetric dimer with unique receptor- and heparin-binding interfaces. Acta. Cryst. D57, 378-384.
【非特許文献14】Murakami, H., Okawa, A., Yoshida, H., Nishikawa, S., Moriya, H., and Koseki, H.(2002). Elbow knee synostosis (Eks): a new mutation on mouse Chromosome 14. Mamm. Genome 13, 341-344.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、関節癒合症や縫合線早期癒合症に関与し得る遺伝子変異を見出し、それに基づく該疾患の発症リスクの判定方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、硫酸化グリコサミノグリカンに対する親和性や組織内拡散性が改変された変異体FGFを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、Eks変異マウスにおいて、Asn143がThrに置き換わるFgf9遺伝子の新たなミスセンス変異を同定した。本発明者らは、この変異アレルをFgf9Eksと命名し、この変異がFGF9のホモ二量体化を妨げ、その結果、FGF9のヘパリンに対する親和性が減少し、またFGFR結合及び活性化が減少することを見出した。同時に、FGF9Eksが発生中の組織においてより拡散速度が早いことを見出した。これらの結果より、FGF9Eksが関節予定部位及び縫合線において、異所性のFGF9シグナリングを引き起こし、肘膝関節癒合及び縫合線早期癒合を発症させると強く示唆された。分子動態計算により、FGF9Eksのヘパリンに対する親和性の低下は、そのヘパリンに対する固有の親和性の変化よりも、むしろ単量体型の優性によるものであることが示唆された。そこで本発明者らは、FGFシグナリングがそのHSへの親和性の制御を通して制限されており、その少なくとも一部は、FGF9の単量体/二量体平衡によりコントロールされていることを示唆した。
以上の知見に基づき、本発明が完成された。
【0010】
即ち、本発明は以下に関する。
[1]FGFホモ二量体内の単量体間水素結合に寄与するAsnがThrに置換された変異体FGFポリペプチド。
[2]FGFがFGF9である、[1]記載のポリペプチド。
[3]AsnがAsn143である、[2]記載のポリペプチド。
[4]配列番号2、4、6、8、12又は14で表されるアミノ酸配列を含む、[3]記載のポリペプチド。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
[6]配列番号1、3、5、7、11又は13で表されるヌクレオチド配列を含む、[5]記載のポリヌクレオチド。
[7]配列番号1又は3で表されるヌクレオチド配列の塩基番号428のシトシンを含む15塩基以上の連続したヌクレオチド配列からなる配列番号1又は3で表されるヌクレオチド配列の部分配列、又はその相補配列を含むポリヌクレオチド。
[8][5]記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[9][8]記載のベクターが導入された形質転換体。
[10][1]記載のポリペプチドを含む医薬。
[11][2]記載のポリペプチドを含む骨折治療剤。
[12]FGF9ポリペプチドのAsn143のThrへの置換、又はFgf9遺伝子におけるAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異の有無を検出することを含む、骨癒合症の発症リスクの判定方法。
[13]FGF9ポリペプチドのAsn143のThrへの置換、又はFgf9遺伝子におけるAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異の有無を検出するための試薬を含む、骨癒合症の発症リスクの診断剤。
[14]被検物質がFGFのホモ二量体化を促進又は阻害するか否か検定すること、及びFGFのホモ二量体化を促進又は阻害した被検物質をFGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を調節し得る物質として得ることを含む、FGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を調節し得る物質のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、骨癒合症の発症リスクの新たな判定方法が提供される。従前には、FGFRの変異が骨癒合症を引き起こすことが知られていたが、そのリガンドであるFGFの変異の骨癒合症への関与は知られていない。従って、本発明は、従前とは全く異なる観点から骨癒合症の発症リスクを評価する方法を提供するものである。
また、本発明により、硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性が低下した変異体FGFが提供される。本発明の変異体FGFは生体内での拡散性に優れており、投与部位近辺の硫酸化グリコサミノグリカンにトラップされることなく、患部の深部にまで到達するので、浸透性の優れたFGF製剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.変異体FGFポリペプチド
本発明は、FGFホモ二量体内の単量体間水素結合に寄与するアスパラギン(Asn)がスレオニン(Thr)に置換された変異体FGFポリペプチドを提供するものである。本発明の変異体FGFポリペプチドは、野生型FGFのアミノ酸配列又はその部分配列を含み、且つ該アミノ酸配列においてFGFホモ二量体内の単量体間水素結合に寄与するAsnがThrに置換されている。
【0013】
FGFは、公知のサイトカインであり、そのアミノ酸配列やヌクレオチド配列も公知である。本発明において用いられるFGFは、哺乳動物由来のものであれば特に限定されない。該哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー等の霊長類等を挙げることが出来る。哺乳動物は、好ましくはげっ歯類(例えば、マウス)又は霊長類(例えば、ヒト)である。
【0014】
ヒト及びマウスにおいては、FGF1〜FGF23が確認されている(表1)。ヒトFGF19はマウスFGF15のオルソログであるので、ヒト及びマウスのFGFファミリーは22のメンバーで構成される(TRENDS in Genetics, Vol.20, No.11, p.563-569, 2004、Genome Biol., vol.2, 3005.1-3005.12, 2001)。本明細書において、FGFの呼称はヒトFGFのノメンクラチャに従うものとする。表1に、ヒト及びマウスの野生型FGFのアミノ酸配列のGenbankアクセッション番号を示す。
【0015】
【表1】

【0016】
FGFは、系統発生学的解析に基づき7つのサブファミリー(FGF1サブファミリー、FGF4サブファミリー、FGF7サブファミリー、FGF8サブファミリー、FGF9サブファミリー、FGF11サブファミリー及びFGF19サブファミリー)に分類される。FGF1サブファミリーは、FGF1(aFGF)及びFGF2(bFGF)からなる。FGF4サブファミリーは、FGF4、FGF5及びFGF6からなる。FGF7サブファミリーは、FGF3、FGF7(KGF)、FGF10及びFGF22からなる。FGF8サブファミリーは、FGF8、FGF17及びFGF18からなる。FGF9サブファミリーは、FGF9、FGF16及びFGF20からなる。FGF11サブファミリーは、FGF11、FGF12、FGF13及びFGF14からなる。FGF19サブファミリーは、FGF19、FGF21及びFGF23からなる。
【0017】
本発明に用いられるFGFは、好ましくはFGF9サブファミリーのメンバーであり、より好ましくはFGF9である。
【0018】
野生型のFGF9ポリペプチドは、溶液中で単量体とホモ二量体との間の平衡状態にある。FGF9ポリペプチドのホモ二量体においては、FGF9単量体同士が水素結合を介して会合している。後述の実施例の結果から、FGF9ポリペプチドにおいては、この水素結合にアミノ酸番号143のアスパラギン(Asn143)が寄与することが明らかになった。FGFのアミノ酸配列を配列同一性に基づき整列すると、FGF9のAsn143に対応するAsnが高度に保存されていることから(図8)、FGF9以外のFGFについても、このAsnが単量体間水素結合に寄与している可能性が考えられる。各FGFにおいて単量体間水素結合に寄与するAsnのアミノ酸番号を表1に示す。
【0019】
尚、本明細書において、各FGFのアミノ酸番号は、野生型FGFの全長アミノ酸配列(即ち、シグナルペプチドが切断されていない未成熟フォームのアミノ酸配列)を基準として表す。基準となる野生型FGFの全長アミノ酸配列は、上記表1中のGenbankアクセッション番号で特定されるアミノ酸配列のうち2008年3月19日における最新バージョンのアミノ酸配列である。例えば、ヒトFGF9の基準アミノ酸配列のGenbankアクセッション番号のバージョンはBAA03572.1(GI:391719)であり、マウスFGF9の基準アミノ酸配列のGenbankアクセッション番号のバージョンはBAA07410.1(GI:1107459)である。
【0020】
本発明のポリペプチドがFGFの部分アミノ酸配列を含み、且つ該アミノ酸配列においてFGFホモ二量体内の単量体間水素結合に寄与するAsnがThrに置換されている場合、該部分アミノ酸配列は、FGFホモ二量体内の単量体間水素結合に寄与するAsnを含み、且つ最終的に得られる変異体FGFポリペプチドが、野生型FGFの全長アミノ酸配列からなるポリペプチドと実質的に同質の活性を有している限り、その長さは限定されない。通常、該部分配列の長さは、通常100アミノ酸以上、好ましくは120アミノ酸以上である。「実質的に同質の活性」としては、FGFの全長アミノ酸配列からなるポリペプチドのFGF受容体活性化機能等が挙げられる。「実質的に同質」とは、それらの活性が定性的に(例:生理学的に、又は薬理学的に)同質であることを意味する。したがって、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば約0.1〜約10倍、好ましくは約0.5〜約2倍)。FGF受容体活性化機能は、対応するFGF受容体を発現したBaF3細胞を変異体FGFポリペプチドの存在下で培養し、その増殖の程度を[H]チミジンの取り込みにより測定することにより評価することができる。例えば、変異体FGF9ポリペプチドの活性はFGFR2受容体を発現したBaF3細胞を用いて評価することができる。
【0021】
通常、FGFポリペプチドは、N末端に細胞外分泌のためのシグナルペプチドが結合した未成熟フォームとしてまず産生される。その後、シグナルペプチドが切断され、未成熟FGFは成熟FGFとなる。従って、FGFの部分アミノ酸配列の好ましい態様としては、FGFの全長アミノ酸配列からそのシグナル配列を除去して得られるアミノ酸配列(成熟FGFのアミノ酸配列)を挙げることができる。それぞれのFGFのシグナルペプチドは、SignalP等の公知の配列解析ツールを用いて、各アミノ酸配列から推測することが可能である。例えば、FGF9のシグナルペプチドは、N末端の1〜33アミノ酸である。
【0022】
本発明の変異体FGFポリペプチドにおいては、FGFホモ二量体内の単量体間水素結合に寄与するAsnがThrに置換されている。例えば、本発明の変異体FGF9ポリペプチドにおいては、Asn143がThrに置換されている。この置換により、FGFのホモ二量体化に欠陥が生じ、硫酸化グリコサミノグリカン(ヘパリン、ヘパラン硫酸等)への親和性が低下し、生体内での拡散性が高まるものの、本発明の変異体FGFポリペプチドは、野生型FGFと実質的に同等の活性を有している。「実質的に同質の活性」としては、FGFの全長アミノ酸配列からなるポリペプチドのFGF受容体活性化機能等が挙げられる。「実質的に同質」とは、それらの活性が定性的に(例:生理学的に、又は薬理学的に)同質であることを意味する。したがって、上記の活性の程度といった量的要素については同等であることが好ましいが、異なっていてもよい(例えば約0.1〜約10倍、好ましくは約0.5〜約2倍)。FGF受容体活性化機能は、対応するFGF受容体を発現したBaF3細胞を変異体FGFポリペプチドの存在下で培養し、その増殖の程度を[H]チミジンの取り込みにより測定することにより評価することができる。例えば、変異体FGF9ポリペプチドの活性はFGFR2受容体を発現したBaF3細胞を用いて評価することができる。
【0023】
尚、本明細書中、FGF9におけるAsn143のThrへの置換を「N143T」と表す場合がある。また、Asn143がThrに置換されたFGF9ポリペプチドを、「FGF9Eks」と表す場合がある。
【0024】
本発明の変異体FGFポリペプチドは、FGFに由来するアミノ酸配列に加え、1または2個以上(例えば1〜500個、好ましくは1〜100個程度、より好ましくは1〜15個程度)の付加的なアミノ酸を含んでいてもよい。このようなアミノ酸付加は、本発明の変異体FGFポリペプチドが、対応するFGF受容体活性化機能を有する限り許容される。付加されるアミノ酸配列は、特に限定されないが、例えば、ファーストメチオニン、ポリペプチドの検出や精製等を容易にならしめるためのタグを挙げることが出来る。タグとしては、Flagタグ、ヒスチジンタグ、c-Mycタグ、HAタグ、AU1タグ、GSTタグ、MBPタグ、蛍光タンパク質タグ(例えばGFP、YFP、RFP、CFP、BFP等)、イムノグロブリンFcタグ等を例示することが出来る。アミノ酸配列が付加される位置は、好ましくは、ポリペプチドのN末端又はC末端である。
【0025】
本発明のポリペプチドに含まれる具体的なアミノ酸配列としては、配列番号2、4、6、8、12又は14で表されるアミノ酸配列を挙げることができる。配列番号2で表されるアミノ酸配列は、野生型ヒトFGF9の全長アミノ酸配列のAsn143がThrに置換されたものである。配列番号4で表されるアミノ酸配列は、野生型マウスFGF9の全長アミノ酸配列のAsn143がThrに置換されたものである。配列番号6で表されるアミノ酸配列は、配列番号2で表されるアミノ酸配列から、シグナル配列(N末端の33アミノ酸残基)を除去したものである。配列番号8で表されるアミノ酸配列は、配列番号4で表されるアミノ酸配列から、シグナル配列(N末端の33アミノ酸残基)を除去したものである。配列番号12で表されるアミノ酸配列は、配列番号6で表されるアミノ酸配列の第1番目のアミノ酸(Ser)をMetに置換したものである。配列番号14で表されるアミノ酸配列は、配列番号8で表されるアミノ酸配列の第1番目のアミノ酸(Asn)をMetに置換したものである。
【0026】
本発明のポリペプチドは修飾されていてもよい。該修飾としては、脂質鎖の付加(脂肪族アシル化(パルミトイル化、ミリストイル化等)、プレニル化(ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化等)等)、リン酸化(セリン残基、スレオニン残基、チロシン残基等におけるリン酸化)、アセチル化、糖鎖の付加(Nグリコシル化、Oグリコシル化)等を挙げることが出来る。
【0027】
また、本明細書において用語「本発明のポリペプチド」は、その塩をも含む意味として用いられる。ポリペプチドの塩としては生理学的に許容される酸(例:無機酸、有機酸)や塩基(例:アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが挙げられる。
【0028】
本発明のポリペプチドの製造方法については特に制限はなく、該ポリペプチドは公知のペプチド合成法に従って製造してもよく、また公知の遺伝子組み換え技術を用いて製造してもよい。ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明のポリペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とするポリペプチドを製造することができる。
【0029】
遺伝子組み換え技術を用いて本発明のポリペプチドを製造する場合には、先ず後述するような本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得し、該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターで宿主を形質転換し、得られる形質転換体を培養することによって、該ポリペプチドを製造することができる。該ポリヌクレオチド、遺伝子組み換え技術を用いた本発明のポリペプチドの製造方法については本明細書中後述する。
【0030】
本発明の変異体FGFポリペプチドは、野生型FGFポリペプチドと同様の生理活性を有しており、且つ野生型FGFポリペプチドと比較して、硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性が低く、生体内での拡散性に優れている。本発明のポリペプチドを生体に投与すると、投与部位近辺の硫酸化グリコサミノグリカンにトラップされることなく患部の深部にまで到達し得る。従って、本発明のポリペプチドは、創傷、褥創、火傷、血栓症、閉塞性動脈硬化症、骨疾患、脱毛症、肝臓病、膵臓病、糖尿病、腎臓病、心臓病、筋萎縮性側索硬化症等の治療薬として有用である。また、本発明の変異体FGF9ポリペプチドは、骨癒合症の発症メカニズムの研究のための試薬や、後述の骨癒合症の発症リスクの判定方法におけるポジティブコントロールとしても有用である。
【0031】
2.ポリヌクレオチド
本発明は上記本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供するものである。該ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAが挙げられる。また、該ポリヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドとしては、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号11又は配列番号13で表されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを挙げることが出来る。配列番号1で表されるヌクレオチド配列は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる本発明のポリペプチドを、配列番号3で表されるヌクレオチド配列は配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる本発明のポリペプチドを、配列番号5で表されるヌクレオチド配列は配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる本発明のポリペプチドを、配列番号7で表されるヌクレオチド配列は配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる本発明のポリペプチドを、配列番号11で表されるヌクレオチド配列は配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる本発明のポリペプチドを、配列番号13で表されるヌクレオチド配列は配列番号14で表されるアミノ酸配列からなる本発明のポリペプチドを、それぞれコードする。
【0033】
尚、本明細書において、Asn143をコードするコドンがThrをコードするコドンに置換されたFgf9遺伝子変異アレルを「Fgf9Eks」又は「Eksアレル」と表す場合がある。
【0034】
本発明のポリヌクレオチドは、公知の配列情報や本明細書の配列表に記載された配列情報を利用することにより適当なプライマーを設計し、FGFをコードするDNAクローンやcDNA等を鋳型として用い、PCRによって直接増幅することができる。或いは、配列情報に基づいて、ポリヌクレオチド合成装置により変異体FGFポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを合成してもよい。
【0035】
取得された本発明のポリヌクレオチドは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該ポリヌクレオチドはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドの製造(後述)や、本発明の判定方法(後述)に有用である。
【0037】
また、本発明は、配列番号1又は3で表されるヌクレオチド配列の塩基番号428のシトシンを含む15塩基以上(例えば18塩基以上、好ましくは20塩基以上、より好ましくは25塩基以上)の連続したヌクレオチド配列からなる部分配列、又はその相補配列を含むポリヌクレオチド(本発明の部分ポリヌクレオチド)を提供する。
【0038】
本発明の部分ポリヌクレオチドは、後述の判定方法において、変異FGF9アレルを検出するためのプローブとして有用である。
【0039】
3.ベクター及び形質転換体
本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供するものである。ベクターとしては発現ベクター、クローニングベクター等を挙げることができ、目的に応じて選択することが可能であるが、好ましくは、ベクターは発現ベクターである。該発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に機能的に連結することにより製造することができる。ベクターの種類としては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等を挙げることができ、用いる宿主に応じて適宜選択することが出来る。
【0040】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等)、バチルス属菌(バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)等)、酵母(サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等)、昆虫細胞(夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)等)、昆虫(カイコの幼虫等)、哺乳動物細胞(ラット神経細胞、サル細胞(COS-7等)、チャイニーズハムスター細胞(CHO細胞等)等)等が用いられる。
【0041】
哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オラウータン、チンパンジーなどの霊長類を挙げることが出来る。
【0042】
プラスミドベクターとしては、大腸菌由来のプラスミドベクター(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミドベクター(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミドベクター(例、pSH19,pSH15)等を挙げることができ、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することが出来る。
【0043】
ウイルスベクターの種類は、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することが出来る。例えば、宿主として昆虫細胞を用いる場合には、バキュロウイルスベクター等を用いることが出来る。また、宿主として哺乳動物細胞を用いる場合には、モロニーマウス白血病ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター等のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター等を用いることが出来る。
【0044】
また、プロモーターは、用いる宿主の種類に対応して、該宿主内で転写を開始可能なものを選択することが出来る。例えば、宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。宿主が哺乳動物細胞である場合、サブゲノミック(26S)プロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
【0045】
本発明のベクターは、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを、それぞれ機能可能な態様で含有していてもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(Neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。
【0046】
上記本発明のベクターを、自体公知の遺伝子導入法(例えば、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、プロプラスト融合法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、Gene Gunによる遺伝子導入法等)に従って上記宿主へ導入することにより、該ベクターが導入された形質転換体(本発明の形質転換体)を製造することができる。導入されるベクターとして発現ベクターを使用することにより、該形質転換体は本発明のポリペプチドを発現し得る。本発明の形質転換体は、本発明のポリペプチドの製造などに有用である。
【0047】
本発明の形質転換体を、宿主の種類に応じて、自体公知の方法で培養し、培養物から本発明のポリペプチドを単離することにより、本発明のポリペプチドを製造することが出来る。宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、LB培地やM9培地等の適切な培地中、通常約15〜43℃で、約3〜24時間行なわれる。宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、適切な培地中、通常約30〜40℃で、約6〜24時間行なわれる。宿主が酵母である形質転換体の培養は、バークホールダー培地等の適切な培地中、通常約20℃〜35℃で、約24〜72時間行なわれる。宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたGrace’s Insect medium等の適切な培地中、通常約27℃で、約3〜5日間行なわれる。宿主が動物細胞である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたMEM培地等の適切な培地中、通常約30℃〜40℃で、約15〜60時間行なわれる。いずれの培養においても、必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。培養物からの本発明のポリペプチドの単離・精製は、例えば、菌体溶解液や培養上清を、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどの複数のクロマトグラフィーに供することにより達成することができる。
【0048】
4.医薬
上述の通り、本発明の変異体FGFポリペプチドは、野生型FGFポリペプチドと実質的に同質の活性を維持しており、且つ野生型FGFポリペプチドと比較して、硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性が低く、生体内での拡散性に優れている。本発明のポリペプチドを生体に投与すると、投与部位近辺の硫酸化グリコサミノグリカンにトラップされることなく患部の深部にまで到達し得る。
【0049】
一方、各FGFは、創傷、褥創、火傷、血栓症、閉塞性動脈硬化症、骨疾患、脱毛症、肝臓病、膵臓病、糖尿病、腎臓病、心臓病、筋萎縮性側索硬化症等の疾患の治療に有用であることが知られているか、もしくは示唆されている。
【0050】
特にFGF2は、創傷、褥創、閉塞性動脈硬化症(血管新生効果)、FGF5は閉塞性動脈硬化症(血管新生効果)、FGF9は骨折、筋萎縮性側索硬化症、FGF18は骨折、脱毛症(発毛、育毛効果)の治療に有用であることが知られている。また、FGF5は脱毛効果が知られている。
【0051】
従って、本発明の変異体FGFポリペプチドは、患部への浸透性に優れた、上記各疾患の治療薬として有用である。
【0052】
本発明のポリペプチドを含有する医薬製剤は、活性成分として該ポリペプチド単独で、あるいは任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0053】
投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、通常は、経皮、静脈内又は骨髄内等の非経口で投与される。
【0054】
非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。これら非経口剤には、更に、必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤等を添加することもできる。また、非経口に適当な製剤は、本発明のポリペプチドを注射用蒸留水または植物油に懸濁して調製したものであってもよく、この場合、必要に応じて基剤、懸濁化剤、粘調剤等を添加することができる。また、非経口に適当な製剤は、本発明のポリペプチドの粉末又は凍結乾燥品を用時溶解する形であってもよく、必要に応じて賦形剤等を添加することができる。
【0055】
本発明のポリペプチドの投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度により異なるが、通常、静脈内投与等の非経口投与の場合、成人一人当り約0.001mg〜1gを一日一回ないし数回投与する。しかしながら、これら投与量および投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
【0056】
4.骨癒合症の発症リスクの判定方法
後述の実施例に示されるように、Fgf9遺伝子においてAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異を有するEksマウスは、橈上腕(radiohumeral)、脛大腿(tibiofemoral)及び頭蓋骨縫合線において骨癒合症を発症する。従って、本発明は、FGF9ポリペプチドのAsn143のThrへの置換、又はFgf9遺伝子におけるAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異の有無を検出することを含む、骨癒合症の発症リスクの判定方法を提供するものである。
【0057】
ポリペプチドにおける変異を直接検出する場合は、例えば、本発明の変異体FGF9ポリペプチドを特異的に認識する抗体を用いた免疫学的手法により、変異体FGF9ポリペプチドの存在が免疫特異的に検出される。あるいは、マススペクトルにより、ポリペプチドの質量の変化として検出することも可能である。
【0058】
免疫学的手法を用いる場合、例えば、まず被検脊椎動物から採取した生体試料より、変異体FGF9ポリペプチドを測定可能なサンプルを調製する。生体試料としては、FGF9を発現し得る部位(骨組織、軟骨組織、結合組織、腎臓組織、血清等)を用いることが好ましい。
【0059】
変異体FGF9をELISA、ウェスタンブロット法、スポット法、凝集法、抗体アレイ、表面プラズモン共鳴等の免疫学的方法により検出する場合、通常、生体試料より液体サンプルが調製される。例えば、生体試料が組織や細胞の場合、これらを機械的に破砕したり、可溶化剤で処理すること等により可溶化物を調製する。本発明の変異FGF9ポリペプチドをフローサイトメトリー法や免疫学的組織染色等の免疫学的方法により検出する場合は、組織や細胞等の生体試料は適宜固定等の処理に付され、抗体により染色される。
【0060】
上記検出の結果、本発明の変異FGF9ポリペプチドが検出された場合、測定対象の脊椎動物個体は骨癒合症を発症するリスクが高いと判定することが出来る。反対に、本発明の変異FGF9ポリペプチドが検出されなかった場合は、測定対象の脊椎動物個体は骨癒合症を発症するリスクが低いと判定することが出来る。
【0061】
また、後述の実施例に示すように、Eksマウスにおいては、Fgf9遺伝子座の一方のアレルのみがN143T変異を有している場合には、両方のアレルがN143T変異を有している場合と比較して骨癒合症の症状は軽微である。従って、上記検出の結果、本発明の変異FGF9ポリペプチドが検出された場合であっても、同時に野生型FGF9が検出された場合には、野生型FGF9が検出されなかった場合と比較して、発症し得る骨癒合症の症状は軽微であると判定することが出来る。逆に野生型FGF9が検出されなかった場合は、同時に野生型FGF9が検出された場合と比較して、より重篤な骨癒合症を発症するリスクが高いと判定することができる。
【0062】
Fgf9遺伝子におけるAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異の有無を検出する場合は、まず、被検脊椎動物から採取した生体試料から染色体DNA、全RNA又はmRNAを調製する。生体試料としては、上述の細胞、組織又は器官等が用いられるが、入手の容易性を考慮すれば、血液、毛髪、つめ、皮膚、粘膜等が用いられることが好ましい。また、変異の解析という観点からは、FGF9ポリペプチドを発現し得る部位(骨組織、軟骨組織、結合組織、腎臓組織、血清等)を用いることが好ましい。生体試料からの染色体DNA、全RNA又はmRNAの調製は、当該分野で周知の方法によって行なうことができ、また、市販のキットを用いてもよい。
【0063】
上述のようにして得られた染色体DNA、全RNA又はmRNAに含まれる、FGF9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異を有するか否かを決定する。Asn143をコードするコドンは、通常AAT又はAACであり、好ましくはAACである。Thrをコードするコドンは、通常ACT、ACA、ACC又はACGであり、好ましくはACCである。
【0064】
当該変異は周知の方法によって解析することができる。当該方法としては、例えば、RFLP(制限酵素切断断片長多型)法、PCR−SSCP(一本鎖DNA高次構造多型解析)法(例えば、Biotechniques, 16, 296-297 (1994)参照)、ASO(Allele Specific Oligonucleotide)ハイブリダイゼーション法(例えば、Clin. Chim. Acta, 189, 153-157 (1990)参照、ダイレクトシークエンス法(例えば、Biotechniques, 11, 246-249 (1991)参照)、ARMS(Amplification Refracting Mutation System)法(例えば、Nuc. Acids. Res., 19, 3561-3567 (1991)参照)、変性濃度勾配ゲル電気泳動(Denaturing Gradient Gel Electrophoresis)法(例えば、Biotechniqus, 27, 1016-1018 (1999)参照)、RNaseA切断法(例えば、DNA Cell. Biol., 14, 87-94 (1995)参照)、化学切断法(例えば、Biotechniques, 21, 216-218 (1996)参照)、DOL(Dye-labeled Oligonucleotide Ligation)法(例えば、Genome Res., 8, 549-556 (1998)参照)、TaqMan PCR法(例えば、Genet. Anal., 14, 143-149 (1999)参照)、インベーダー法(例えば、Science, 5109, 778-783 (1993); Nat. Biotechnol., 17, 292-296 (1999) 参照)、MALDI−TOF/MS(Matrix Assisted Laser Desorption-time of Flight/Mass Spectrometry)法(Genome Res., 7, 378-388 (1997)参照)、TDI(Template-directed Dye-terminator Incorporation)法(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 10756-10761 (1997)参照)、サザンブロッティング法等が挙げられる。
【0065】
例えば上述の本発明のポリヌクレオチドや部分ポリヌクレオチドをプローブとして用いることにより、ASOハイブリダイゼーション法や、RNaseA切断法によって変異の有無を検出することが可能である。或いは、配列番号2、4、6、8、12又は14で表されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドにおいて、配列番号2又は4についてはアミノ酸番号143のアミノ酸(Asn又はThrである)を、配列番号6、8、12又は14についてはアミノ酸番号110のアミノ酸(Asn又はThrである)をコードするコドンを含む領域を増幅し得るプライマーを用いたPCRの産物のヌクレオチド配列を解析することによって変異の有無を検出することが可能である。更に、変異により消失する制限酵素部位(例えばBsrI)を利用して、PCR産物の制限酵素消化産物の大きさを測定することによっても変異の有無を検出することが可能である。
【0066】
上記検出の結果、上記変異が検出された場合、測定対象の脊椎動物個体は骨癒合症を発症するリスクが高いと判定することが出来る。反対に、上記変異が検出されなかった場合は、測定対象の脊椎動物個体は骨癒合症を発症するリスクが低いと判定することが出来る。
【0067】
また、後述の実施例に示すように、Eksマウスにおいては、Fgf9遺伝子座の一方のアレルのみがN143T変異を有している場合には、両方のアレルがN143T変異を有している場合と比較して骨癒合症の症状は軽微である。従って、上記検出の結果、上記変異が検出された場合であっても、同時に野生型アレル(Asn143をコードするコドン)が検出された場合には、野生型アレルが検出されなかった場合と比較して、発症し得る骨癒合症の症状は軽微であると判定することが出来る。逆に野生型アレルが検出されなかった場合は、同時に野生型アレルが検出された場合と比較して、より重篤な骨癒合症を発症するリスクが高いと判定することができる。
【0068】
また、本発明は、FGF9ポリペプチドのAsn143のThrへの置換、又はFgf9遺伝子におけるAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異の有無を検出するための試薬を含む、骨癒合症の発症リスクの診断剤を提供する。該診断剤を用いることにより、上述の骨癒合症の発症リスクの判定を容易に実施することが可能である。
【0069】
該試薬としては、特に限定されないが、例えば、
(1)本発明の変異体FGF9ポリペプチドを特異的に認識する抗体;
(2)本発明のポリヌクレオチド;
(3)本発明の部分ポリヌクレオチド;
(4)配列番号2、4、6、8、12又は14で表されるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドにおいて、配列番号2又は4についてはアミノ酸番号143のアミノ酸(該アミノ酸はAsn又はThrである)を、配列番号6、8、12又は14についてはアミノ酸番号110のアミノ酸(該アミノ酸はAsn又はThrである)をコードするコドンを含む領域を増幅し得るプライマー;
等を挙げることが出来る。
【0070】
上述の試薬に加えて、更に上記検査方法において用いられる種々の試薬(例えば、タンパク質抽出用試薬、標識抗体、染色体DNA調製試薬、全RNA調製試薬、mRNA調製試薬、制限酵素(例えばBsrI)、試薬や生体試料を希釈するための緩衝液、陽性対照、陰性対照、反応容器、検査プロトコールを記載した指示書など)を含めることにより、骨癒合症の発症リスクの判定用キットとしてもよい。これらの要素は必要に応じて予め混合しておくことも出来る。また、必要に応じて保存剤や防腐剤を各要素に加えることも出来る。該判定用キットは、上記骨癒合症の発症リスクの判定を簡便に実施することを可能とするため極めて有用である。
【0071】
5.スクリーニング方法
後述の実施例に示されるように、FGFのホモ二量体化が阻害され、単量体の存在量が多くなると、FGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性が低下する。従って、FGFのホモ二量体化をコントロールすることにより、FGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を調節することができる。そこで、本発明は、被検物質がFGFのホモ二量体化を促進又は阻害するか否か検定すること、及びFGFのホモ二量体化を促進又は阻害した被検物質をFGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を調節し得る物質として得ることを含む、FGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を調節し得る物質のスクリーニング方法を提供する。
【0072】
本発明のスクリーニング方法に供される被検物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、蛋白質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等が挙げられる。
【0073】
被検物質がFGFのホモ二量体化を促進又は阻害するか否かの検定においては、適当な緩衝液中でFGFを被検物質と接触させ、被検物質の存在下におけるFGFのホモ二量体化の程度を測定する。ホモ二量体化の程度の測定は、分析的超遠心分離やゲル濾過クロマトグラフィー等の公知の方法により行うことが出来る。例えば、分析的超遠心分離によれば、溶液中のFGFの平均分子量を測定することが可能である。溶液中のFGFが全て単量体の場合は、この平均分子量は、FGF単量体の計算上の分子量と同一となる。一方、溶液中のFGFが全て二量体である場合には、平均分子量はFGF単量体の計算上の分子量の2倍になる。そして、単量体と二量体とが共存する場合には、平均分子量はFGF単量体の計算上の分子量の1〜2倍の間の値を示し、二量体化が促進すると平均分子量は高くなるので、この平均分子量を指標に単量体/二量体比を算出することができる。
【0074】
次いで、被検物質の存在下におけるFGFのホモ二量体化の程度が、被検物質の非存在下におけるFGFのホモ二量体化の程度と比較される。ホモ二量体化の程度の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行なわれる。被検物質の非存在下におけるホモ二量体化の程度は、被検物質の存在中でのホモ二量体化の程度の測定に対し、事前に測定した値であっても、同時に測定した値であってもよいが、実験の精度、再現性の観点から同時に測定した値であることが好ましい。
【0075】
比較の結果、FGFのホモ二量体化を促進又は阻害した被検物質が選択され、該物質がFGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を調節し得る物質として獲得される。即ち、FGFのホモ二量体化を促進した被検物質はFGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を増強する物質として獲得され、FGFのホモ二量体化を阻害した被検物質はFGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を低下させる物質として獲得される。
【0076】
上記スクリーニング方法により得られる物質を、FGFを含有する医薬と併用すると、FGFの生体内での拡散性を調節することができる。例えば、FGFを投与局所に局在化させたい場合には、FGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を増強する物質をFGFと併用すればよい。一方、FGFを患部の深部にまで到達させたい場合には、FGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を低下させる物質をFGFと併用すればよい。
【0077】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0078】
(方法)
Fgf9遺伝子の変異の検出
Eks変異体表現型に寄与する変異を同定するために、mRNAの逆転写―PCR(RT−PCR)及びRT−PCR産物の直接シークエンシング(ABI PRIZM 310 Genetic Analyzer; Applied Biosystems, Foster City, CA)を通じて、正常マウス(+/+)、ヘテロ接合体マウス(Eks/+)及びホモ接合体マウス(Eks/Eks)からのcDNAの配列を調べた。Eksアレルのジェノタイピングのため、Eks変異をまたぐゲノムDNAを、特異的プライマー(5'-CACAGGAATGTGTGTTCAGA -3'(配列番号:9)及び5'- GGTCCACTGGTCTAGGTAAA -3'(配列番号:10))を用いたPCRにより増幅し、続いてPCR産物をBsrI制限酵素により消化した。野生型マウスは、147bp及び42bpの2つのバンドを示し、一方Eksアレルは189bpの1つのバンドを示す。
【0079】
骨格及び組織学的標本調製
既述(Kessel and Gruss. 1990)の様に、E17.5胎仔の骨および軟骨をアリザリンレッド及びアルシアンブルーにより染色した。組織学的標本作製のため、組織を4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン中に包埋し、5μmに薄切し、ヘマトキシリン及びエオジンで染色した。
【0080】
In situ ハイブリダイゼーション
既述(Kessell and Gruss. 1991)の様に、放射線標識されたFgf9(MGI: 104723)、Gdf5(MGI: 95688)、Col2a1(MGI: 88452)、Spp1(MGI: 98389)、Runx2(MGI: 99829)、Fgfr1(MGI: 95522)、Fgfr2(MGI: 95523)及びFgfr3(MGI: 95524)のRNAを用いて、パラフィン切片のIn situハイブリダイゼーションを行った。ホールマウントIn situハイブリダイゼーションを既述(Iseki et al., 1997)の様に行った。
【0081】
分析的超遠心分離
全ての分析的超遠心分離は、Beckman Coulter XL-I分析的超遠心分離機を用いて行った。サンプルを120mM NaClを含む、25mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.5)中に溶解した。比容積はSEDNTERP ソフトウェアにより0.7317mL/g(正常型FGF9タンパク質;FGF9WT)又は0.7322mL/g(Eks変異型FGF9タンパク質;FGF9Eks)と見積もられた。全ての実験は20℃、280nmの吸光波長で行われた。沈降平衡試験は、6チャンネルセンターピースにより、0.8、0.4及び0.2mg/mlで行った。FGF9WTについては12、14及び16krpmで、FGF9Eksについては14、16及び18krpmでデータを取得した。、12、14及び16時間において各スピードについてのスキャンを取るために16時間の全平衡時間を用いた。沈降平衡データをBeckman XL-A/XL-Iデータ解析ソフトウェアを用いて解析した。沈降速度試験は、ダブルセクターセンターピースにより行った。タンパク質濃度は0.4、0.3又は0.2mg/mlで行った。吸光度データは40krpmで5分間毎に100回スキャンした。測定データはSEDFITソフトウェアで解析した。
【0082】
マイトジェニックアッセイ
FGF9WT及びFGF9EksがFGFRを介してシグナルを伝達する能力を、特定のFGFRを発現しているBaF3細胞を用いたマイトジェニックアッセイにより、既述(Ornitz et al., 1996)の様に解析した。96ウェルアッセイプレートの1ウェルあたり5000個の細胞を、多様な濃度のFGF9及びヘパリン(Wako)を含む培地中へ播種した。ヘパリンとFGF9WT又はFGF9Eksを各ウェルに加え、全量を1ウェルあたり200μlとした。次に細胞を37℃で36時間インキュベートした。20μlの培地に溶解した1μCiの[H]チミジンを各ウェルに加えた。4時間後に、グラスファイバー紙を通す濾過により細胞を回収し、取り込まれた[H]チミジンをWallac MicroBeta TriLuxシンチレーションカウンター(PerkinElmer)でカウントした。
【0083】
ヘパリン親和性クロマトグラフィー
3mgのFGF9WT及びFGF9Eksを、120mM NaClを含む25mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.5)で平衡化した1mlのHiTrapヘパリンカラム(GE healthcare)にロードした。結合したFGF9WT及びFGF9Eksを、同一の緩衝液中でのNaClの線形グラジエント(120mM〜2.0M)で溶出した。
【0084】
FGF9−ヘパリン相互作用の表面プラズモン共鳴分析
FGF9WT−ヘパリン及びFGF9Eks−ヘパリンの相互作用を測定するための表面プラズモン共鳴分析をBIAcore 3000装置(Biacore AB, Uppsala, Sweden)を用いて行った。ストレプトアビジン結合センサーチップSA上へヘパリン(Wako)を固相化するために、HBS−EP緩衝液中の100μg/mlビオチン化ヘパリンを10μl/分の流速で注入し、63反応単位(RU)固相化した。全ての試験は室温で行い、容積容量効果(bulk solvent effects)による屈折率異常は、使用したFGF9WT及びFGF9Eks濃度での非コートセンサーチップ上の反応を差し引くことにより補正した。動力学的なデータを得るために、HBS−EP中の、異なる濃度の解析対象(FGF9WT及びFGF9Eks)を、20μl/分の流速で、ヘパリンセンサーチップ上へ注入した。各サンプル注入の最後(120s)に、HBS−EP緩衝液をセンサーの表面を通過させ、解離相をモニターした。120sの解離に続き、5μlの1MのNaCl(HBS−EP中)の注入によりセンサー表面を完全に再生した。各相互作用の動力学的パラメータを決定するために、5つの異なる解析対象濃度を用いた。動力学的パラメータは、BIAevaluationソフトウェアを用いてセンサグラムを包括的に1:1モデルにあてはめることにより得た。
【0085】
分子動態(MD)シミュレーション
単量体FGF9WT、二量体FGF9WT、単量体FGF9WT−ヘパリン、二量体FGF9WT−ヘパリン、及びFGF9EksについてのこれらのMDのためのスタートとなる構造は、PDB (PDB ID: 1IHK) (Plotnikov et al, 2001)から採用した。単量体FGF9WT及び二量体FGF9Eksの構造は、FGF9WTに基づき、分子モデリングソフトウェアMOE(Chemical Computing Group, Inc.)を用いて構築した。6糖(UAP-SGN-IDU-SGN-IDU-SGN)をヘパリンオリゴ糖として用いた。UAPは1,4−ダイデオキシ−5−デヒドロ−O2−スルホ−グルクロン酸、SGNはO6−ジスルホ−グルコサミン、IDUは1,4−ダイデオキシ−O2−スルホ−グルクロン酸である。単量体FGF9WT−ヘパリン及び二量体FGF9WT−ヘパリンシミュレーションのため、ヘパリンオリゴ糖を、MDシミュレーションから獲得したFGF9WT構造へ、分子ドッキングプログラムGOLD(version 3.0) (Verdonk et al, 2003)を用いて結合した。ドッキングプロトコールにおいては、標準的なGAパラメータの初期設定を用い、GoldScoreをスコアリング機能として用いた。単量体FGF9Eks−ヘパリン及び二量体FGF9Eks−ヘパリンの構造は、FGF9WT−ヘパリン複合体と同様に構築した。MDシミュレーションのためのスタートとなる構造は、TIP3P水分子で球状に囲んだ(Jorgensen et al., 1983)。エネルギー最小化の後、全てのMDシミュレーションは、MDGRAPE3システム(Narumi et al., 2006)のための改変Amber 8.0(Case et al., 2004)を用いて、300Kで10nsの間行われた。アンバーff03力場(Duan et al., 2003)を適用し、シミュレーション時間ステップを1fsにセットした。結合自由エネルギーは、分子機能ポワソン−ボルツマン/表面面積(MM-PBSA)法(Srinivasan et al., 1998)により、最終2ns MD軌道を用いて計算した。
【0086】
レトロウイルス性異所性発現
マウスFGF9WT及びFGF9EkscDNAをRCASBP(A)ベクター(Hughes et al.,1987)中にクローニングした。ウイルス溶液を、ハンブルガー−ハミルトン(HH)段階17のニワトリ胚の後肢芽中に注入した。マウスFgf9転写産物の発現及び骨格変化を、注入の2日及び5日後に、それぞれ調べた。
【0087】
マウス胎仔頭蓋骨でのFGF9Eksビーズの皮下挿入
100μg/mlのFGF9WT又はFGF9Eksに浸漬したAffiGel-Blueビーズ(Bio-Rad, Richmond, CA)をE15マウス頭蓋骨上に、子宮外外科手術により既述(Iseki et al., 1997)の様に移植した。手術した頭を24時間後に回収し、Spp1転写産物をホールマウントin situハイブリダイゼーションにより検出した。Spp1発現面積は、NIHイメージソフトウェアを用いて測定した。
【0088】
マウス前肢芽内へのFGF9Eksビーズの移植
500μg/mlのFGF9WT又はFGF9Eksに浸漬したAffiGel-Blueビーズ(Bio-Rad, Richmond, CA)を、E10.5のFgf9−/−の前肢芽の背側及び中央領域内に移植した。次に、肢芽を、無血清培地[BGJb、2mg/ml BSA、ペニシリン(50units/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)]中で、湿性、37℃及び5% CO環境にて、トランスウェルフィルター(Costar, Coaning)上で2時間培養した。外植片を4%パラホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン中に包埋した。ビーズの赤道を通る切片を、抗ヒトFGF9抗体(R&D Systems)並びに細胞及び組織染色キットHRP-AEC system (R&D Systems)を用いて、外因性のFGF9について解析した。シグナル面積及び強度をNIHイメージソフトウェアを用いて解析した。
【0089】
FGF9WT及びFGF9Eks発現及び精製
精製したFGF9WT及びFGF9Eksは、E.coliでの組換えタンパク質製造を除き、本質的には既述(Koyama et al., 2001)の方法に従って製造した。最初の33個のN末端残基は分泌にのみ関係しているので、本発明者らは、最初のMet及びそれに続きFGF9WT及びFGF9Eksの35番目から208番目のポリペプチド配列をコードするcDNA断片をRT−PCRにより製造した。各断片をpColdIVバクテリア発現ベクター(Takara)内のNdeIとHindIII部位の間に挿入した。得られたプラスミドをE.coli BL21株に導入し、組換えタンパク質の生産を、1mM イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシドを補充したSB培地中で、15℃にて24時間誘導した。バクテリアを回収し、続いてリソゾーム処理及び超音波処理により破砕した。遠心分離により細胞片を除去し、硫酸アンモニウムの25%飽和による分画、及びそれに続いて50%硫酸アンモニウムにより上清を沈降させることにより、FGF9WT及びFGF9Eksを上清から回収した(図9A)。沈降物を25mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.5)に溶解し、1%硫酸アンモニウムを含む25mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.5)に対して透析した。得られた画分を、図14に示すように、一連のクロマトグラフィーカラム(TOYOPEARL AF-Heparin HC- 650M カラム (TOSOH)、TOYOPEARL CM-650M カラム(TOSOH)、TOYOPEARL HW-50F カラム(TOSOH))を通すことにより更に分画した。本発明者らは、これらのクロマトグラフィー工程を既述(Koyama et al., 2001)の緩衝液系を用いて行った。この方法により、20LのE.coli培養液から、200mgの高度に精製されたFGF9WT及び100mgのFGF9Eksを得た(図9B)。
【0090】
分析的ゲル濾過クロマトグラフィー
精製したFGF9WT及びFGF9Eks(2mg/mlを100μl)を、120mM NaClを含む25mMの酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.5)で平衡化したSuperdex75 10/300 GLカラム (GE healthcare)にロードした。サンプルは同一の緩衝液で溶出した。
【0091】
(結果)
EksはFgf9におけるミスセンス変異により生じる
Eks変異はマウス第14染色体上の多型マーカーD14Mit62とD14Mit5の間にマップされた(Murakami et al., 2002)。この区間に位置する169個の遺伝子の中から、Fgf9に焦点をあてた。ホモのEksマウスからのFgf9cDNAの配列解析の結果、第428位においてAからCへの置換が生じ、その結果Asn143のThrへの置換が生じることが明らかとなった(図1A)。興味深いことに、Asn143残基はほとんどのFGFタンパク質において高度に保存されている(図8)。
【0092】
本発明者らは、遺伝学的なアプローチを用い、Fgf9におけるN143T置換がEks表現型に寄与するか否か決定した。Fgf9Eks変異によりC57BL/6、DBA/2J 及びJF1/Ms系統に存在するBsrI制限酵素部位が除去されるので、PCR断片をBsrI消化することにより野生型と変異アレルとを区別することができる(図1B)。Fgf9Eks変異及びEks座を遺伝学的に分離することができるか試験するため、Fgf9Eks/+マウスを交雑受精させた。試験した976匹の子又は胎仔のうち、230匹(24%)及び516匹(53%)がそれぞれホモ接合性及びヘテロ接合性のEks表現型を有しており、N143T変異についてそれぞれホモ接合性及びヘテロ接合性であった。従って、Eks表現型とFgf9における変異はすべての事例において共分離(co-segregate)されていた。
【0093】
本発明者らは、次に、Eks表現型がFgf9ヌル変異の導入により改変され得るか試験した。ホモ接合性のFgf9ヌル変異体(Fgf9−/−)は肺形成不全、雄から雌への性転換、及び近節短縮(rhizomelia)を呈するが、関節又は縫合線の骨癒合症は示さない(Colvin et al, 2001; Colvin et al., 2001; Hung et al., 2007)。本発明者らは、配合へテロ接合性変異体(Fgf9Eks/−)の表現型を、Eksホモ接合性マウス(Fgf9Eks/Eks)及びFgf9−/−マウスと比較した。Fgf9+/−及びFgf9Eks/+マウスにおいて見られた微かな肺形成不全は、Fgf9Eks/−マウスにおいて顕著に悪化した(図1C)。Fgf9Eks/−マウスにおける肺形成不全の程度は、Fgf9−/−とFgf9Eks/Eksの中間であった。Fgf9Eks/−マウスにおける肘骨癒合症は、Fgf9Eks/Eksマウスにおいて見られるように連結している軟骨の骨化を伴っていたが、Fgf9Eks/+、Fgf9−/−及びFgf9+/−マウスにおいては観察されなかった(図1D)。Fgf9Eks/−マウスは性転換を示さなかった。2000近くの減数分裂においてEksおよびFgf9の間での組換えがないこと、及びFgf9Eks/−マウスにおける肺及び関節表現型がヘテロ接合体と比較して増強されていることは、Eks変異がFgf9における対立遺伝子であることの強力な証拠を提供する。
【0094】
Fgf9Eks/Eksと機能獲得型Fgfr変異体の表現型の類似
本発明者らは第1にEks変異体と、Fgfr1(Wang et al., 2001)及びFgfr2c(Fgfr2C342Y) (Eswarakumar et al., 2004)の機能獲得型変異体の間で表現型の類似点があるかどうか調べた。Fgfr1機能獲得型トランスジェニックマウスにおいては、肘関節発生の開始にまず障害が起こるので(Wang et al., 2001)、本発明者らはFgf9Eks/Eksマウスの関節発生を調べた(図2A)。Growth and differentiation factor 5 (Gdf5)(Storm and Kingsley, 1996)及びprocollagen, type II alpha 1 (Col2a1) (Nalin et al., 1995)が肘関節予定域と軟骨凝集でそれぞれ特異的に発現していた。関節腔予定域におけるGdf5発現が、Fgf9+/+対照マウスにおいてE11.5には観察されたが(図2Aa及び2Ae)、Fgf9Eks/Eksマウスにおいては皆無であった(図2Af)。軟骨の解析により、E11.5野生型胎仔では肘関節予定域におけるCol2a1発現の欠失が観察された(図2Ag)。Gdf5発現の欠失と一致して、Fgf9Eks/EksマウスにおいてはCol2a1発現の欠失部位が無かった(図2Ah)。この分子表現型は、関節予定域において活性型Fgfr1キナーゼドメインを異所性に発現しているトランスジェニックマウスにおいて見られたものと極めて類似している(Wang et al., 2001)。
【0095】
Fgfr2C342Yマウスにおける頭蓋骨縫合線の早期癒合は、頭蓋骨縫合線間充織内における過剰な造骨性の分化の結果である(Eswarakumar et al., 2004)。Fgf9Eks/Eksマウスが同様の組織学的特徴を有しているか明らかにするため、本発明者らは、発生中の頭蓋骨縫合線における初期骨芽細胞分化マーカー、Secreted phosphoprotein 1 (Spp1、別名Osteopontin)(Iseki et al., 1997)及びRunt related transcription factor 2 (Runx2) (Yoshida et al., 2005)の発現を調べた。E15.5において、Fgf9+/+及びFgf9Eks/Eksマウスは、類似した頭蓋骨縫合線組織像を示した(図2Ba−2Bf)。しかしながら、E16.5では、Fgf9Eks/Eksマウスにおいては、Fgf9+/+と比較して、前頭骨と頭頂骨の重なりが大きくなっていた(図2Bg及び2Bh)。前骨芽細胞及び骨芽細胞の分化マーカーあるSpp1の発現ドメインは、Fgf9+/+マウスにおいては前頭骨及び頭頂骨の幅広い分離を示したが(図2Bi)、しかしながらFgf9Eks/Eksマウスにおいては顕著な重なりがあった(図2Bj)。Runx2は、前頭骨及び頭頂骨の先行端における未成熟な骨芽細胞において発現する。E15.5及びE16.5のFgf9Eks/Eksマウスの両方において、Runx2発現が縫合を満たしたことは、頭蓋縫合線間充織内に未成熟な骨芽細胞が蓄積していることを示唆する(図2Bf及び2Bl)。更に、Runx2発現ドメインの強度は、Fgf9Eks/Eksマウスにおいて低いようであり(図2Bl)、このことは骨芽細胞の分化が亢進していることを示唆する。まとめると、これらの知見は、Fgf9Eks変異が、将来の関節及び縫合線内における過剰なFGFRシグナルを媒介し、その結果、関節及び縫合線発生の開始を阻害することを示唆する。
【0096】
Eks変異はFGF9のホモ二量体化を障害する
FGF9WTとFGF9Eksタンパク質の二量体化の程度を分析的超遠心分離により比較した。FGF9WT及びFGF9EksをE.coliで発現し、カラムクロマトグラフィーで精製した(図9)。
【0097】
精製した組み換え型タンパク質FGF9WT及びFGF9Eksの分子量及び平衡定数を沈降平衡遠心分離により決定した(図3A及び3B)。FGF9WT及びFGF9Eksの測定された平均分子量は、それぞれ39,264及び32,929Daであったのに対して、単量体の計算上の分子量は、それぞれ20,090及び20,077Daであった。これらのデータは、FGF9Eksは単量体と二量体の両方として平衡状態で存在するが、FGF9WTはほとんどが二量体として存在することを示唆する。FGF9WT及びFGF9Eksの計算上の結合定数は、それぞれ10.4μM−1及び0.119μM−1であった。これらの結果は、ゲル濾過カラムにおいてFGF9EksがFGF9WTと比較して遅れて溶出することと一致している(図10)。本発明者らは更に沈降速度遠心分離によりFGF9Eksの沈降係数を測定した。c(s)沈降係数分布のオーバーレイプロットは、FGF9WTが3.0Sに一峰性ピークを有するのに対して、FGF9Eksは二峰性のピーク(2.2S及び3.1S)を有する(図3C及び3D)。このことは、FGF9Eksが主に単量体として存在するのに対して、FGF9WTは主に二量体として存在することを示唆する。従って、FGF9Eksはホモ二量体形成が障害されており、このことは構造解析から推測されているFGF9の活性を制御する自己抑制機能に影響を及ぼし得る。
【0098】
FGF9EksはFGFRsを介した過剰なシグナリングを媒介しない
本発明者らは、次に個々の受容体を発現しているBaF3細胞(Ornitz et al., 1996)に対するFGF9WT及びFGF9Eksの細胞分裂促進活性を検定することにより、FGF9WTとFGF9EksのFGFR活性化能力を比較した。FGFRを発現しているBaF3細胞株を、1μg/mlのヘパリン存在下で、様々な濃度のFGF9により処理した。FGF9WTと比較すると、FGF9EksはFGFR1c、−2b、−2c、−3b及び−4を発現する細胞に対してより小さい活性を示した(表2、図11A−G)。
【0099】
【表2】

【0100】
表2は、FGF9Eksの細胞分裂促進活性とFGF9WTのそれとの比較を示す。FGF9Eksの細胞分裂促進活性は、FGF9濃度依存的アッセイについては200及び1000pM FGF9の2つの濃度で、ヘパリン濃度依存的アッセイについては1.56及び6.25μg/mlの濃度で平均化し、これらの濃度でのFGF9WTの活性に対して標準化した。
【0101】
ヘパリンがFGF9活性を増強する能力を調べるために、BaF3細胞株を0.2nMのFGF9WT又はFGF9Eksの存在下で様々な濃度のヘパリンにより処理した。FGF9Eksは、一部のFGFRでヘパリン濃度依存的分裂促進応答を示さなかった(表2、図11H−11N)。FGF9EksはFGFRを介した過剰なシグナリングを示さなかったので、変異体タンパク質の他の特性がEksマウスの表現型に寄与すると考えられた。
【0102】
FGF9におけるAsn143Thr変異はヘパリンに対する親和性を低減する
FGF9Eksの低減したヘパリン濃度依存的分裂促進活性は、FGF9のヘパリンに対する親和性が減少しているかもしれないことを示唆する。この可能性を調べるため、本発明者らはまず、ヘパリン親和性クロマトグラフィーによりFGF9/ヘパリン親和性を測定した。FGF9WTは1.50M NaClで、単一ピークとしてヘパリン結合アガロースから溶出された(図4A)。対照的に、ほとんどのFGF9Eksは1.38M NaClで溶出され、少量の画分が1.10M NaClで溶出された。更に、FGF9Eksの溶出プロファイルはFGF9WTのそれよりもブロードであった。
【0103】
本発明者らは、次に、表面プラズモン共鳴分析を用いてFGF9Eks/ヘパリン相互作用の速度定数を測定した(図4B及び4C)。得られたセンサーグラムを包括的に1:1相互作用モデルにあてはめ、動力学的パラメータを決定した(表3)。
【0104】
【表3】

【0105】
表3には、FGF9WT及びFGF9Eksとヘパリンとの相互作用の動力学的パラメーターを示す。3つの独立した試験において、k、k及びK値を分析対象(FGF9WT及びFGF9Eks)の5つの濃度を用いたセンサーグラムから算出した。
【0106】
FGF9Eksの結合速度定数(k)は、FGF9WTのそれよりもわずかに大きかったのに対し、FGF9Eksの解離速度定数(k)は、FGF9WTのそれよりも18倍大きかった。FGF9WT及びFGF9Eksの解離定数(K)は、それぞれ0.71±0.02nM及び5.24±0.03nMであり、このことはFGF9Eksタンパク質のヘパリン親和性が86%減少したことを意味する。
【0107】
単量体のFGF9は二量体のFGF9よりもヘパリンに対して低い親和性を有する
FGF9Eks変異は、単量体/二量体平衡と同時に、ヘパリン/HSへの親和性に影響を及ぼす。Asn143Thr変異が、直接的にFGF9のヘパリンに対する親和性に影響を及ぼしたのか、あるいは直接的にホモ二量体化に影響を及ぼし、二次的にヘパリン親和性に影響を及ぼしたのかは不明である。FGF9の単量体型及び二量体型は平衡状態にあるので、この2種のFGF9のヘパリンに対する親和性を直接生化学的に測定することは不可能である。本発明者らはそこで、分子動態(MD)シミュレーションを用いてFGF9の単量体及び二量体におけるヘパリン結合ドメインのコンフィギュレーションを解析し、MM−PBSA法を用いてFGF9とヘパリンの間の結合自由エネルギーを計算した。
【0108】
FGF9WTの二量体及びFGF9Eksの二量体についてのMDシミュレーションは、Eks変異が2つのFGF9単量体の間の2つの水素結合の欠失を生じることを示した。二量体FGF9WTにおいてAsn143はTyr67、Arg69、及びTyr145と単量体間水素結合を形成したが(図5A)、Thr143は二量体FGF9EksにおいてTyr145のみと水素結合を形成した(図5B)。他の単量体間水素結合であるArg62−Asp193及びArg64−Asp193は、Eks変異により影響を受けなかった。結果として、FGF9WT及びFGF9Eksについてのホモ二量体化の結合自由エネルギーは、それぞれ−101.21及び−69.47kcal/molであった。この違いから、FGF9WTと比較してFGF9Eksは単量体/二量体平衡が単量体側へシフトしていると予想される。この予想は、図3に示した試験データとよく一致する。
【0109】
FGF9のヘパリン結合親和性をモデル化するために、本発明者らは、2:2:2 FGF2−FGFR1−ヘパリン結晶構造(Protein Data Bank (PDB) ID: 1FQ9)(Schlessinger et al., 2000)に基づき、2:2 FGF9WT−ヘパリン及び2:2 FGF9Eks−ヘパリン複合体のMDシミュレーションを行った。それぞれの複合体における2つのヘパリンオリゴ糖の構造は強力な静電気的な反発により影響されるので、複合体から一方のヘパリンオリゴ糖がはじき出された(data not shown)。この解析は、2:2 FGF9−ヘパリン複合体は不安定であることを示唆した。対照的に、2:1 FGF9WT−ヘパリン、2:1 FGF9Eks−ヘパリン、1:1 FGF9WT−ヘパリン及び1:1 FGF9Eks−ヘパリン複合体のMDシミュレーションは、これらの複合体が安定であることを示唆した。FGF9−ヘパリン複合体のMDシミュレーションは、2:1 FGF9WT−ヘパリン(二量体FGF9WT−ヘパリン)と2:1 FGF9Eks−ヘパリン(二量体FGF9Eks−ヘパリン)複合体とのヘパリン結合自由エネルギーの差を示さなかった(図5C及び5D)。これは、負にチャージしたヘパリンオリゴ糖鎖と、両方の二量体複合体における二量体接合面の溝のヘパリン結合部位に位置する塩基性アミノ酸残基の配列との間の強力な相互作用によるものである。更に、ヘパリンオリゴ糖鎖の可動性が静電的相互作用の維持を促進している。同様に、1:1 FGF9WT−ヘパリン(単量体FGF9WT−ヘパリン)と1:1 FGF9Eks−ヘパリン(単量体FGF9Eks−ヘパリン)複合体のヘパリン結合自由エネルギーに有意な差は無かった(図5E及び5F)。これもヘパリンオリゴ糖鎖の可動性、ヘパリンオリゴ糖鎖の強力な負のチャージ、及びヘパリン結合部位における多くの塩基性アミノ酸残基の存在によるものである。従って、Eks変異は単量体又は二量体FGF9−ヘパリン複合体のヘパリン結合親和性に対して顕著には影響を与えない。二量体FGF9のヘパリン結合自由エネルギー(図5C及び5D)は、FGF9WT及びFGF9Eksの両方の単量体FGF9−ヘパリンよりも小さいので(図5E及び5F)、FGF9Eksタンパク質のヘパリンに対する親和性低下は、主には、単量体/二量体平衡が単量体側へシフトしたことによると強く示唆される。
【0110】
将来の肘関節及び頭蓋縫合線におけるFgf9及びFgfrの発現
本発明者らは、FGF9Eksはヘパリンに対する親和性が低いので、組織内におけるFGF9Eksの拡散性が上昇し、正常なシグナリングドメインの外における異所性の局在を引き起こし、その結果としてFGFRsの異所性の活性化を生じると仮説を立てた。
【0111】
本発明者らは、E10.5及びE11.5マウスの前肢芽におけるFgf9並びにFgfr1、−2及び−3の発現を調べた。Fgf9は、Fgf9+/+及びFgf9Eks/Eksの両方において、主に筋芽細胞において発現していた(図12A、12B、12I、及び12J)。E10.5では、Fgf9+/+及びFgf9Eks/Eks組織の両方において、Fgfr1、−2及び−3は肢芽間充織において分散して発現しており、Col2a1の発現ドメインと重なっていた(図12C−12H)。E11.5ではFgfr2及びFgfr3が主に軟骨性凝集部位に発現し、Fgfr1は軟骨性凝集部位を囲むように発現していた(図12K−12P)。従って、肘関節予定域の間充織細胞でFgfrsが発現している。
【0112】
以前の報告は、Fgf9が発生中の前頭骨及び頭頂骨において発現し、特にその骨の周辺部において強く発現していることを示している(Hajihosseini and Heath, 2002)。Fgfr1、−2及び−3は発生中の前頭骨及び頭頂骨ドメインの中および周囲に発現している(Johnson et al., 2000)。従って、Fgf9及びFgfrsの発現パターンは、本発明者らの癒合発症機序モデルと矛盾がない。
【0113】
FGF9WT及びFGF9Eksの異所性の発現はどちらも関節及び縫合線の発生を阻害し得る
本発明者らは次に、レトロウイルス(RCAS)形質導入によってニワトリ肢芽内にFGF9WT及びFGF9Eksを異所性に発現させることにより、関節発生に対するFGF9WT及びFGF9Eksの阻害効果を調べた。RCAS−FGF9WT、RCAS−FGF9Eks、又は空RCASウイルスを、側板中胚葉の将来の後肢芽領域に感染させた。外因性のFGF9WT及びFGF9Eksが感染の2日後には後肢芽全体に発現していた(図6Aa及び6Ab)。空ウイルスを用いたときには、異常は観察されなかったが(図6Ac−6Ae)、FGF9WTの異所性発現は顕著な後肢関節癒合及び骨格の萎縮を引き起こした(図6Ac)。骨格の萎縮は、Fgf9をCol2a1プロモーター及びエンハンサーの下で過剰発現させたトランスジェニックマウスにおいて観察されたそれと類似していた(Garofalo et al., 1999)。興味深いことに、RCAS−Fgf9Eksウイルスを感染に用いた場合には、膝関節形成は再現性よく障害されたが、後肢の萎縮は観察されなかった(図6Ad)。このFGF9WTとFGF9Eksとの違いは、あるFGFRを介したFGF9Eksシグナリングが弱いことによるものかもしれない。関節形成の欠損は、後肢の遠位関節においてもみられ(図13)、これはFgfr1の機能獲得型トランスジェニックマウスにおいても見られた表現型である(Wang et al., 2001)。
【0114】
縫合線発生に対するFGF9WT及びFGF9Eksの阻害効果を調べるため、FGF9浸漬Affigel−Blueビーズを、E15の正常マウス胎仔頭蓋骨の縫合線へ子宮外外科手術により移植した。移植手術の前に、本発明者らは1つのAffigel−Blueビーズに含まれるFGF9WT及びFGF9Eksの量を調べ、およそ等量が含まれていることを確認した(図14)。FGF9により発現が誘導される初期骨芽細胞分化マーカーであるSpp1の発現を子宮内インキュベーションの24時間後に調べた。正常なマウス胎仔では前頭骨原基と頭頂骨原基の間の縫合部ではSpp1発現が観察されないが、FGF9WT及びFGF9Eksビーズの移植時は、双方とも、縫合部でSpp1発現が観察された(図6Ba及び6Bc)。
【0115】
FGF9Eksは発生中の組織内においてFGF9WTよりも拡散性が増大している
FGF9Eksの組織内拡散性増大がEksマウスにおける関節癒合表現型を説明し得るという仮説を更に検証するため、FGF9WT及びFGF9Eksの拡散性をビーズ移植後の頭蓋において測定した(図6B)。FGF9はSpp1発現を誘導するので、本発明者らはSpp1の高発現領域を、FGF9がその効果を及ぼす距離の指標として測定した。FGF9Eksビーズの移植は、FGF9WTビーズの移植と比較して、Spp1が発現誘導された領域をより大きく拡大させ、このことはFGF9Eksタンパク質はより広範な領域にわたり拡散し得ることを示唆する。
【0116】
次に、本発明者らはFGF9Eksの拡散性を前肢芽において調べた。FGF9WT又はFGF9Eks浸漬Affigel−Blueビーズを、E10.5のFgf9−/−胎仔の背側及び中央の前肢芽領域内へ移植した。移植から2時間後に組織を固定、包埋し、ビーズの赤道部で切片を作成し、ビーズから間充織組織内へ放出されたFGF9WT又はFGF9Eksタンパク質を、FGF9抗体を用いて免疫組織化学的に検出した(図6Ca及び6Cb)。FGF9EksはFGF9WTよりもより広い範囲で肢芽間充織中に浸透しており(図6Cc)、FGF9EksがFGF9WTよりも高拡散性であるという仮説を支持した。まとめると、本発明者らの結果は、Eks変異体マウスにおける関節形成阻害及び縫合線早期癒合は、細胞間隙を経由したFGF9Eksの組織内高拡散による異所性のFGF9シグナリングによって生じたものであることを強く示唆する(図6D及び6E)。
【0117】
ホモ二量体化はFGF9/16/20サブファミリー(Mohammadi et al., 2005)及びFGF2(Ornitz et al., 1992; Venkataraman et al., 1999)でも報告されている。他のFGFではホモ二量体化がその活性にどの程度影響を及ぼすのかはまだ知られていない。Fgf9における変異が、ホモ二量体化、ヘパリン/HSへの親和性及び生物学的活性に影響を与えたことは、FGFホモ二量体化に影響を与える医薬が、FGF活性を調節するツールとして有用であることを示唆する。
【0118】
引用文献
Pacifici, M., Koyama, E., and Iwamoto, M. (2005). Mechanisms of synovial joint and articular cartilage formation: recent advances, but many lingering mysteries. Birth Defects Research 75, 237-248.

Lenton, K.A., Nacamuli, R.P., Wan, D.C., Helms, J.A., and Longaker, M.T. (2005). Cranial suture biology. Curr. Top. Dev. Biol. 66, 287-328.

Reardon, W., Smith, A., Honour, J.W., Hindmarsh, P., Das, D., Rumsby, G., Nelson, I., Malcolm, S., Ades, L., and Sillence, D. et al., (2000). Evidence for digenic inheritance in some cases of Antley-Bixler syndrome? J. Med. Genet. 37, 26-32.

Eswarakumar, V.P., Horowitz, M.C., Locklin, R., Morriss-Kay, G.M., and Lonai, P. (2004). A gain-of-function mutation of Fgfr2c demonstrates the roles of this receptor variant in osteogenesis. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 101, 12555-12560.

Wang, Q., Green, R.P., Zhao, G., and Ornitz, D.M. (2001). Differential regulation of endochondral bone growth and joint development by FGFR1 and FGFR3 tyrosine kinase domains. Development 128, 3867-3876.

Martin, G.R. (1998). The roles of FGFs in the early development of vertebrate limbs. Genes Dev. 12, 1571-1586.

Ornitz, D.M., and Marie, P.J. (2002). FGF signaling pathways in endochondral and intramembranous bone development and human genetic disease. Genes Dev. 16, 1446-1465.

Ornitz, D.M. (2005). FGF signaling in the developing endochondral skeleton. Cytokine Growth Factor Rev. 16, 205-213.

Montero, A., Okada, Y., Tomita, M., Ito, M., Tsurukami, H., Nakamura, T., Doetschman, T., Coffin, J.D., and Hurley, M.M. (2000). Disruption of the fibroblast growth factor-2 gene results in decreased bone mass and bone formation. J. Clin. Invest. 105, 1085-1093.

Hung, I.H., Yu, K., Lavine, K.J., and Ornitz, D.M. (2007). FGF9 regulates early
hypertrophic chondrocyte differentiation and skeketal vascularization in the developing stylopod. Dev. Biol. 307, 300-313.

Liu, Z., Xu, J., Colvin J.S., and Ornitz, D.M. (2002). Coordination of chondrogenesis and osteogenesis by fibroblast growth factor 18. Genes Dev. 16, 859-869.

Ohbayashi, N., Shibayama, M., Kurotaki, Y., Imanishi, M., Fujimori T., Itoh, N., and Takada, S. (2002). FGF18 is required for normal cell proliferation and differentiation during osteogenesis and chondrogenesis. Genes Dev. 16, 870-879.

Garofalo, S., Kliger-Spatz, M., Cooke, J.L., Wolstin, O., Lunstrum, G.P., Moshkovitz, S.M., Horton, W.A., and Yayon, A. (1999). Skeletal dysplasia and defective chondrocyte differentiation by targeted overexpression of fibroblast growth factor 9 in transgenic mice. J. Bone Miner. Res. 14, 1909-1915.

Ornitz, D.M. (2000). FGFs, heparan sulfate and FGFRs: complex interactions essential for development. BioEssays 22, 108-112.

Nybakken, K., and Perrimon, N. (2002). Heparan sulfate proteoglycan modulation of developmental signaling in Drosophila. Biochim. Biophys. Acta 19, 280-291.

Koziel, L., Kunath, M., Kelly, O.G., and Vortkamp, A. (2004). Ext1-dependent heparin sulfate regulates the range of Ihh signaling during endochondral ossification. Dev. Cell 6, 801-813.

Inatani, M., Irie, F., Plump, A.S., Tessier-Lavigne, M., and Yamaguchi, Y. (2003). Mammalian brain morphogenesis and midline axon guidance require heparan sulfate. Science 302, 1044-1046.

Pan, Y., Woodbury, A., Esko, J.D., Grobe, K., and Zhang, X. (2006). Heparan sulfate biosynthetic gene Ndst1 is required for FGF signaling in early lens development. Development 133, 4933-4944.

Plotnikov, A.N., Eliseenkova, A.V., Ibrahimi, O.A., Shriver, Z., Sasisekharan, R., Lemmon, M.A. and Mohammadi, M. (2001). Crystal structure of fibroblast growth factor 9 reveals regions implicated in dimerization and autoinhibition. J. Biol. Chem. 276, 4322-4329.

Hecht, H.J., Adar, R., Hofmann, B., Bogin, O., Weich, H., and Yayon, A. (2001).
Structure of fibroblast growth factor 9 shows a symmetric dimer with unique receptor- and heparin-binding interfaces. Acta. Cryst. D57, 378-384.

Murakami, H., Okawa, A., Yoshida, H., Nishikawa, S., Moriya, H., and Koseki, H.(2002). Elbow knee synostosis (Eks): a new mutation on mouse Chromosome 14.
Mamm. Genome 13, 341-344.

Ornitz, D.M., Xu, J., Colvin, J.S., McEwen, D.G., MacArthur, C.A., Coulier, F., Gao, G., and Goldfarb, M. (1996). Receptor specificity of the fibroblast growth factor family. J. Biol. Chem. 271, 15292-15297.

Hajihosseini, M.K., and Heath, J.K. (2002). Expression patterns of fibroblast growth factors-18 and -20 in mouse embryos is suggestive of novel roles in calvarial and limb development. Mech. Dev. 113, 79-83.

Colvin, J.S., Feldman, B., Nadeau, J.H., Goldfarb, M., and Ornitz, D.M., (1999). Genomic organization and embryonic expression of the mouse fibroblast growth factor 9 gene. Dev. Dyn. 216, 72-88.

Colvin, J.S., White, A.C., Pratt, S.J., and Ornitz, D.M. (2001). Lung hypoplasia and neonatal death in Fgf9-null mice identify this gene as an essential regulator of lung mesenchyme. Development 128, 2095-2106.

Colvin, J.S., Green, R.P., Schmahl, J., Capel, B., and Ornitz, D.M. (2001).
Male-to-female sex reversal in mice lacking fibroblast growth factor 9. Cell 104, 875-889.

Storm, E.E., and Kingsley, D.M. (1996). Joint patterning defects caused by single and double mutations in members of the bone morphogenetic protein (BMP) family. Development 122, 3969-3979.

Nalin, A.M., Greenlee, T.K., and Sandell, L.J. (1995). Collagen gene expression during development of avian synovial joints: Transient expression of types II and XI collagen genes in the joint capsule. Dev. Dyn. 203, 352-362.

Iseki, S., Wilkie, A.O.M., Heath, J.K., Ishimaru, T., Eto, K., and Morriss-Kay, G.M.(1997). Fgfr2 and osteopontin domains in the developing skull vault are mutually exclusive and can be altered by locally applied FGF2. Development 124, 3375-3384.

Yoshida, T., Phylactou, L.A., Uney, J.B., Ishikawa, I., Eto K., and Iseki, S. (2005). Twist is required for establishment of the mouse coronal suture. J. Anat. 206, 437-444.

Flaumenhaft, R., Moscatelli, D., and Rifkin, D.B. (1990). Heparin and heparan sulfate increase the radius of diffusion and action of basic fibroblast growth factor. J. Cell Biol. 111, 1651-1659.

Ornitz, D.M., and Itoh, N. (2001). Fibroblast growth factors. Genome Biol. 2, 3005.1-3005.12.

Woo, H.J., and Roux, B. (2005). Calculation of absolute protein-ligand binding free energy from computer simulations. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 102, 6825-6830.

Schlessinger, J., Plotnikov, A.N., Ibrahimi, O.A., Eliseenkova, A.V., Yen, B.K., Yayon, A., Linhardt, R.J., and Mohammadi, M. (2000). Crystal structure of a ternary FGF-FGFR-heparin complex reveals a dual role for heparin in FGFR binding and dimerization. Mol. Cell 6, 743-50.

Dowd, C.J., Cooney, C.L., and Nugent, M.A. (1999). Heparan sulfate mediates bFGF transport through basement membrane by diffusion with rapid reversible binding. J. Biol. Chem. 274, 5236-5244.

Johnson, D., Iseki, S., Wilkie, A.O.M., and Morriss-Kay, G.M. (2000). Expression patterns of Twist and Fgfr1, -2 and -3 in the developing mouse coronal suture suggest a key role for Twist in suture initiation and biogenesis. Mech. Dev. 91, 341-345.

Mohammadi, M., Olsen, S.K., and Ibrahimi, O.A. (2005). Structural basis for fibroblast growth factor receptor activation. Cytokine Growth Factor Rev. 16, 107-137.

Ornitz, D.M., Yayon, A., Flanagan, J.G., Svahn C.M., Levi, E., and Leder P. (1992). Heparin is required for cell-free Binding of Basic Fibroblast Growth Factor to a Soluble Receptor and for mitogenesis in whole cells. Mol. Cell Biol. 12, 240-247.

Venkataraman, G., Shriver, Z., Davis, J.C., and Sasisekharan, R. (1999). Fibroblast growth factors 1 and 2 are distinct in oligomerization in the presence of heparin-like glycosaminoglycans. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96, 1892-1897.

Kessel, M., and Gruss, P. (1990). Murine developmental control genes. Science 249, 374-379.

Kessel, M., and Gruss, P. (1991). Homeotic transformations of murine vertebrae and concomitant alteration of Hox codes induced by retinoic acid. Cell 67, 89-104.

Verdonk, M.L., Cole, J.C., Hartshorn, M.J., Murray, C.W., and Taylor, R.D. (2003). Improved protein-ligand docking using GOLD. Proteins. 52, 609-623.

Jorgensen, W.L., Chandrasekhar, J., Madura, J.D., Impey, R.W., and Klein, M.L. (1983). Comparison of simple potential functions for simulating liquid water. J. Chem. Phys. 79, 926-935.

Case D.A., Darden, T.A., Cheatham, T.E., Simmerling, C.L., Wang, J., Duke, R.E., Luo, R., Merz, K.M., Wang, B., Pearlman, D.A. et al., (2004). AMBER 8. University of California,. San Francisco.

Narumi, T., Ohno, Y., Okimoto, N., Koishi, T., Suenaga, A., Futatsugi, N., Yanai R., Himeno, R., Fujikawa, S., and Taiji, M. (2006). A 185 Tflops simulation of amyloid-forming peptides from Yeast Prion Sup35 with the special-purpose computer System MD-GRAPE3. Supercomputing 2006.

Duan, Y., Wu, C., Chowdhury, S., Lee, M.C., Xiong, G., Zhang, W., Yang, R., Cieplak, P., Luo, R., Lee, T. et al., (2003). A point-charge force field for molecular mechanics simulations of proteins based on condensed-phase quantum mechanical calculations. J. Comp. Chem. 24, 1999-2012.

Srinivasan, J., Miller, J., Kollma, P.A., and Case, D.A. (1998). Continuum solvent studies of the stability of RNA hairpin loops and helices. J. Biomol. Struct. Dyn. 16, 671-682.

Hughes, S.H., Greenhouse, J.J., Petropoulos, C.J., and Sutrave, P. (1987). Adaptor plasmids simplify the insertion of foreign DNA into helper-independent retroviral vectors. J. Virol. 61, 3004-3012.

Koyama, N., Ohmae, H., Tsuji, S., Tanaka, Y., Kurokawa, T., and Nishimura, O. (2001). Improved preparation and crystallization of 25 kDa human fibroblast growth factor-9. Biotechnol. Appl. Biochem. 33, 117-121.
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明により、骨癒合症の発症リスクの新たな判定方法が提供される。従前には、FGFRの変異が骨癒合症を引き起こすことが知られていたが、そのリガンドであるFGFの変異の骨癒合症への関与は知られていない。従って、本発明は、従前とは全く異なる観点から骨癒合症の発症リスクを評価する方法を提供するものである。
また、本発明により、硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性が低下した変異体FGFが提供される。本発明の変異体FGFは生体内での拡散性に優れており、投与部位近辺の硫酸化グリコサミノグリカンにトラップされることなく、患部の深部にまで到達するので、浸透性の優れたFGF製剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】EksマウスのFgf9遺伝子におけるミスセンス変異。(A)+/+ 及び Eks/Eksマウス由来のFgf9 cDNAの核酸配列。Eks変異体は、428位にAからCへの置換を有しており、Asn143のThrへの置換を生じる。Eksミスセンス変異を矢頭で示し、対応するアミノ酸を紫で示す。(B)Eks変異のジェノタイピング。(A)において検出されたEks変異体におけるFgf9遺伝子の核酸置換を含む189bpのゲノムPCR断片はBsrI制限酵素により消化されないが、+/+、C57BL/6、DBA/2J及びJF1/Ms マウスからのPCR断片は消化された。(C)Fgf9ヌルアレルの導入による、Eksマウスにおける肺表現型の相乗的増強。E17.5胎仔の肺の体重量比を各遺伝子型の間で比較した。データは、少なくとも5匹の胚の平均値±標準誤差により表す。Fgf9+/−及びFgf9Eks/+胚で見られる肺形成不全はEks/−において有意に悪化する(アスタリスク)(p<0.001)。(D)Fgf9ヌルアレルの導入によるEksマウスにおける肘関節骨癒合症の状態の変化。Fgf9+/+、Fgf9Eks/+、Fgf9Eks/−及びFgf9Eks/EksマウスのE17.5における前肢をアルシアンブルーおよびアリザリンレッドにより染色した。Fgf9Eks/−マウスにおける肘関節骨癒合症の程度は、Fgf9Eks/+とFgf9Eks/Eksとの間であった。
【図2】Fgf9Eks/Eksマウスの肘関節予定域における異所性軟骨細胞分化、および頭蓋縫合線における異常な骨芽細胞局在。(A)肢芽における関節発生の解析。E10.5およびE11.5におけるFgf9+/+及びFgf9Eks/Eks胎仔の前肢におけるGdf5およびCol2al遺伝子の発現をin situハイブリダイゼーションにより検出した。gにおける矢印は、肘関節予定域におけるCol2al発現の間隙を示す。バー、100μm。(B)頭蓋縫合線発生の解析。E15.5及びE16.5におけるFgf9+/+及びFgf9Eks/Eks胎仔の頭蓋縫合線の切片を、ヘマトキシリン及びエオジン(HE)で染色し(a、b、g及びh)、示したプローブを用いたin situハイブリダイゼーション(c-f 及びi-l)により調べた。fb, 前頭骨; pb, 頭頂骨。バー、100μm。
【図3】FGF9Eksは二量体形成が阻害されている。 分析的超遠心分離によりFGF9WT及びFGF9Eksのホモ二量体化を調べた。(A及びB)沈降平衡法解析。0.4mg/mlのFGF9WT(A)及びFGF9Eks(B)を用いたときの、16000rpm、20℃での沈降平衡状態における吸光度分布を示す。実線は、単一種と仮定する非相互作用分離モデルでのグローバル解析を行ったベストフィットプロットである。沈降平衡法のデータはBeckman XL-A/XL-I解析ソフトウェアで解析した。上のパネルは残差分析の結果である。FGF9WT及びFGF9Eksの平均分子量は、それぞれ、39,264 及び 32,929 Daと見積もられた。FGF9WT及びFGF9Eksの結合定数は、それぞれ、10.4μM−1及び0.119μM−1と求められた。(C及びD)FGF9WT及びFGF9Eksの沈降速度法解析。0.2、0.3及び0.4mg/mlでの、FGF9WT(C)及びFGF9Eks(D)の沈降係数分布。FGF9WTは3.0Sにおいて一峰性ピークを示す。FGF9Eksは二峰性のピーク(2.2S及び3.1S)を示す。
【図4】FGF9Eksのヘパリン親和性低下。 FGF9WT及びFGF9Eksのヘパリン親和性を、ヘパリン親和性クロマトグラフィー(A)及び表面プラズモン共鳴解析(B及びC)を用いて調べた。(A)FGF9WT及びFGF9Eksをヘパリン結合アガロースカラムにロードし、120mMから2.0MへのNaClの線形グラジエントにより溶出した(黒線)。FGF9WT(青線)及びFGF9Eks(赤線)の溶出は280nmにおける吸光度により測定した。(B及びC)固相化したヘパリンとのFGF9WT(B)及びFGF9Eks(C)の相互作用のセンサーグラム。FGF9WT又はFGF9Eks濃度を以下のように示す:62.5nMは赤、31.3nMは茶色、15.6nMは青色、7.8nMは緑色、3.9nMは紫色。バイオセンサーチップ反応を、X軸は時間、Y軸はΔRUで示した。測定は室温で行った。
【図5】FGF9のホモ二量体化はそのヘパリン親和性を制御する。 MDシミュレーションの最終構造。重要な水素結合を形成するヘパリンとタンパク質残基を球及び棒及び空間充填モードで示す。各残基の名前を1文字表記アミノ酸コード、残基番号、及び鎖コードで示す。(A及びB)二量体FGF9WT(A)及び二量体FGF9Eks(B)についてのMDシミュレーションの最終構造。FGF9のN143T置換は、単量体間水素結合の欠失を生じる。(C−F)二量体FGF9WT−ヘパリン(C)、二量体FGF9Eks−ヘパリン(D)、単量体FGF9WT−ヘパリン(E)及び単量体FGF9Eks−ヘパリン(F)についてのMDシミュレーションの最終構造。各複合体について計算された結合自由エネルギーを構造の下に示す。データは、各々200個のMDスナップショットから得たエネルギーの平均値±標準偏差として示す。
【図6】関節癒合及び頭蓋骨縫合線早期癒合症は、FGF9Eksの組織内高拡散性に由来するFGF9Eksの異所性シグナル伝達が発症原因である可能性が高い。(A)ニワトリ後肢芽におけるFgf9WT及びFgf9Eksの異所性発現による関節癒合。HHステージ17のニワトリにRCAS−Fgf9WT、RCAS−Fgf9Eks又は空RCASウイルスを感染させ、Fgf9WT又はFgf9Eksの発現を誘導した。感染の2日後に、Fgf9プローブを用いたin situハイブリダイゼーション(a及びb)及び感染の5日後に、アルシアンブルーでの染色(c−e)により後肢を調べた。c−e中の矢印は膝関節位置を示す。Fgf9WT及びFgf9Eksの異所性発現は膝関節癒合(c−d)を生じた。Fgf9WTの異所性発現は後肢の重篤な関節癒合を生じ(c)、Fgf9Eksの異所性発現は骨格萎縮を生じなかった(d)。(B)頭蓋骨原基におけるFGF9WT及びFGF9Eksの拡散能測定。FGF9タンパク質を含有するAffiGel-BlueビーズをE15マウス頭蓋へ移植し、24時間後にE16でin situハイブリダイゼーションによりSpp1 mRNAを検出し、頭蓋骨原基における外因性FGF9WT及びFGF9Eksの拡散能を評価した。(a−d)Spp1についてのホールマウントin situハイブリダイゼーション。FGF9WT(a)及びFGF9Eks(c)ビーズを移植した側は、局在化した強いシグナルを示し、これは外因性のFGF9タンパク質の拡散部位を意味している。移植していない対照側(b及びd)は、前頭骨原基及び頭頂骨原基における内在性の発現を表す弱いシグナルのみ検出された。(e)FGF9WT及びFGF9Eksの拡散性。前頭骨原基及び頭頂骨原基における拡散面積(%)を、全シグナルに対する強いシグナルの面積比から推定した。データは6回の操作の平均値±標準誤差で示す(p<0.005)。FGF9Eks(赤色バー)はFGF9WT(青色バー)よりも高い拡散性を示す。(C)FGF9タンパク質を含有するAffiGel-Blueビーズの移植による、E10.5前肢芽におけるFGF9WT及びFGF9Eksの拡散性の試験。移植2時間後の外因性のFGF9WT(a)及びFGF9Eks(b)の拡散をFGF9抗体により検出した。(c)FGF9WTとFGF9Eksの拡散面積の比較。データは5回の操作の平均値(FGF9WT=100%)±標準誤差で表す。FGF9Eks(赤色バー)の拡散性がFGF9WT(青色バー)の拡散性よりも高いことは統計学的に有意であった(p<0.05)。(D)Fgf9Eks/Eksマウスにおける肘関節癒合症の発症メカニズム。Fgf9Eks/Eksマウスにおいて、肘関節予定域におけるFGF9Eksの過剰拡散による異所性FGF9シグナリングが関節癒合症を誘導し得る。(E)Fgf9Eks/Eksマウスにおける頭蓋骨縫合線早期癒合症の発症メカニズム。Fgf9Eks/Eksマウスにおいて、頭蓋縫合線におけるFGF9Eksの過剰拡散による異所性FGF9シグナリングが縫合線早期癒合を誘導し得る。
【図7】Eksホモ接合性マウスにおける肺形成不全。(A−B)出生時の+/+(A)及びEks/Eks(B)マウスの肺。
【図8】構造に基づくヒトFGFの配列アライメント。 FGF9EksにおけるN143T変異周辺のアミノ酸配列と、他のヒトFGFファミリータンパク質の対応するドメインの配列とを配列同一性に基づき整列した。FGF9におけるAsn143と平行する位置の各FGFタンパク質のアミノ酸を赤色ボックスで示す。
【図9】FGF9WT及びFGF9Eksタンパク質の精製。(A)FGF9WT及びFGF9Eksタンパク質の精製に用いた方法の概要。(B)精製したFGF9WT及びFGF9EksのSDS/PAGE。FGF9WT及びFGF9Eksの両方とも、約20kDaの分子量に検出された。
【図10】ゲル濾過クロマトグラフィー上で、FGF9Eksの分子量はFGF9WTの分子量よりも小さい。 サンプルを別々にSuperdex 75 10/300 GLカラムへアプライした。溶出されたFGF9WT(青線)及びFGF9Eks(赤線)は280nmでの吸光度で検出した。矢印は分子量マーカーの溶出位置を示す:67kDa、アルブミン;43kDa、オボアルブミン;25kDaキモトリプシノゲン;13.7kDa、リボヌクレアーゼA。
【図11】FGF9EksのFGFRを介したシグナル伝達能力の部分変化。(A−G)FGF9WT及びFGF9EksのFGF9濃度用量依存的細胞分裂促進活性。FGFR1b(A)、FGFR1c(B)、FGFR2b(C)、FGFR2c(D)、FGFR3b(E)、FGFR3c(F)又はFGFR4(G)を発現しているBaF3細胞を、1μg/mlヘパリンの存在下で、様々な濃度のFGF9WT(青丸)及びFGF9Eks(赤三角)で処理した。細胞増殖は、36時間培養後の[H]チミジン取り込みにより測定した。ヘパリン濃度依存的なFGF9WT及びFGF9Eksの細胞分裂促進活性。FGFR1b(H)、FGFR1c(I)、FGFR2b(J)、FGFR2c(K)、FGFR3b(L)、FGFR3c(M)又はFGFR4(N)を発現しているBaF3細胞を、0.2nMのFGF9WT又はFGF9Eksの存在下で様々な濃度のヘパリンにより処理した。細胞増殖を上述のように決定した。データは三連の測定結果の平均値±標準誤差である。これらのデータは少なくとも2つの独立した試験のうちの代表的なものである。
【図12】Fgf9は筋芽細胞に発現しており、一方Fgfrsは肘関節予定域の間充織細胞に発現している。 E10.5及びE11.5の両方でのFgf9+/+及びFgf9Eks/Eks胎仔の前肢芽におけるFgf9、Fgfr1、Fgfr2及びFgfr3の発現をin situハイブリダイゼーションにより検出した。バー、100μm。
【図13】Fgf9WT及びFgf9Eks異所性発現後のニワトリ後肢の遠位関節癒合。 RCAS−Fgf9WT(A)、RCAS−Fgf9Eks(B)、又は空RCASウイルス(C)を感染させた後のニワトリ後肢をアルシアンブルーで染色した。A−Cにおける矢印は遠位関節を示す。
【図14】AffiGel-BlueビーズのFGF9WT及びFGF9Eks容量。 AffiGel-BlueビーズのFGF9WT又はFGF9Eks保持量を測定した。ビーズをFGF9WT又はFGF9Eks溶液(500μg/ml)中に浸漬し、続けてSDS−PAGE及びウェスタンブロッティング解析によりFGF9を検出することで決定した。レーン1−6、1レーンあたり、FGF9WT又はFGF9Eks溶液(500μg/ml)に浸漬した1個のビーズのウェスタンブロッティング。レーン7、8、組換えFGF9WT及びFGF9Eks(100ng)。1個のAffiGel-Blueに含まれるFGF9WT及びFGF9Eksの量はおよそ等しい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGFホモ二量体内の単量体間水素結合に寄与するAsnがThrに置換された変異体FGFポリペプチド。
【請求項2】
FGFがFGF9である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
AsnがAsn143である、請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2、4、6、8、12又は14で表されるアミノ酸配列を含む、請求項3記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号1、3、5、7、11又は13で表されるヌクレオチド配列を含む、請求項5記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号1又は3で表されるヌクレオチド配列の塩基番号428のシトシンを含む15塩基以上の連続したヌクレオチド配列からなる配列番号1又は3で表されるヌクレオチド配列の部分配列、又はその相補配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項5記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
請求項8記載のベクターが導入された形質転換体。
【請求項10】
請求項1記載のポリペプチドを含む医薬。
【請求項11】
請求項2記載のポリペプチドを含む骨折治療剤。
【請求項12】
FGF9ポリペプチドのAsn143のThrへの置換、又はFgf9遺伝子におけるAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異の有無を検出することを含む、骨癒合症の発症リスクの判定方法。
【請求項13】
FGF9ポリペプチドのAsn143のThrへの置換、又はFgf9遺伝子におけるAsn143をコードするコドンのThrをコードするコドンへの変異の有無を検出するための試薬を含む、骨癒合症の発症リスクの診断剤。
【請求項14】
被検物質がFGFのホモ二量体化を促進又は阻害するか否か検定すること、及びFGFのホモ二量体化を促進又は阻害した被検物質をFGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を調節し得る物質として得ることを含む、FGFの硫酸化グリコサミノグリカンへの親和性を調節し得る物質のスクリーニング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−232732(P2009−232732A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81826(P2008−81826)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】