説明

変異体LIGHTによるT細胞腫瘍浸潤の増大

腫瘍環境内で発現した変異体LIGHTは、大量のナイーブTリンパ球の浸潤を伴う、高レベルのケモカイン及び接着分子を誘出した。変異体LIGHTを使用する腫瘍体積の減少及び転移の減少を含む、腫瘍に対する免疫反応を誘出するための方法及び組成物を開示する。腫瘍(特に、固形腫瘍)を処置する新しい方法は、変異体LIGHT分子を使用することによって、ナイーブT細胞を初回抗原刺激して活性化T細胞を増殖させるのに必要なケモカイン並びに接着分子、共刺激分子を発現するリンパ様微小環境を作り出すことである。幅広いT細胞が、腫瘍に対して産生される。変異体LIGHTをコードする配列を含むアデノウイルスベクターは、腫瘍及び転移に対して有効である。ベクターが変異体LIGHTを腫瘍に送達した場合、コントロールベクターで注入した腫瘍と比較して、インビボにおける腫瘍の体積が減少した。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(開示の背景)
免疫応答性宿主において確立された腫瘍を浸潤する活性化T細胞が少量であることは、宿主が腫瘍を処理できないことを説明する。動物モデル及び臨床研究における実験は、免疫系は個々の腫瘍細胞を認識して殺傷させ得る死滅させ得るが、一般に宿主は確立された固形腫瘍を根絶し得ないことを示している。宿主が確立された腫瘍に対して効果的に応答できないことに対するいくつかの説明があり得る:1)組織に移動する腫瘍細胞(特に、非造血系起源の腫瘍細胞)の不適当な数のためにリンパ組織において直接または間接の提示が弱いことが原因で、初期T細胞初回抗原刺激が欠如していること;2)腫瘍組織周囲の生物学的障壁が原因で、腫瘍部位へ移動する免疫細胞の数が不適当であること;3)レパートリーが限定されていることが原因で、腫瘍増殖と戦うことができない活性化された抗原特異的T細胞が消耗しているか、または短命であること;4)T細胞が腫瘍に対して非応答性であるか、または腫瘍を認識しないこと;5)免疫系を活性化するための阻害的微小環境であるか、または腫瘍内部の刺激が欠如していること。
【0002】
臨床学的に、腫瘍部位へのT細胞の浸潤の増大はよりよい予後と密接に関係している。従来の研究によって、接種腫瘍細胞の拒絶反応を誘発する際に予防的ワクチン接種が有効であることが示されている。しかし、腫瘍の増殖が確立された後では、通常、治療的ワクチン接種によって腫瘍を拒絶することができない。腫瘍の外科的な切除は、腫瘍に対する免疫反応を増進しない。さらに、たとえ腫瘍細胞上に強力な抗原が発現していても、リンパ組織に抗原特異的T細胞が過量に存在するのにもかかわらず、確立された腫瘍の拒絶反応を促進するには不十分であったことが報告された。T細胞の初回抗原刺激および/または確立された腫瘍への浸潤の欠如は、抗原性癌に対する自然または治療のアプローチのどちらかについての主要な障害のうちの一つである。加えて、腫瘍組織内部の共刺激分子の発現が不十分であることは、浸潤T細胞の活性化が行われず、このため腫瘍反応性T細胞のアネルギーを生じ得る。
【0003】
初期T細胞の初回抗原刺激の欠如はおそらく、直接提示のために固形組織からリンパ組織へ移動する腫瘍細胞が極めて少ないことに起因する。骨髄キメラを用いた遺伝子分析によって、MHC−Iを制限するCD8T細胞の初回抗原刺激に対する抗原提示の2つの様式が明らかにされている。直接初回抗原刺激は、T細胞と抗原性エピトープを有するタンパク質を合成する細胞との関係によって仲介され、クロスプライミング(cross−priming)は、他の細胞によって合成された抗原を取り込む、宿主の抗原提示細胞によって仲介される。腫瘍特異的T細胞を初回抗原刺激するための機構は活発に議論されており、これまでの所結論には至っていないままである。どこでどうのように腫瘍抗原がT細胞に提示されるかを理解することは、腫瘍に対する治療行為を見出す助けになる。
【0004】
LTβRを介するシグナル伝達は組織化されたリンパ組織を形成するのに必要とされる。リンホトキシンβレセプター(LTβR)は、リンパ構造の形成に重要な役割を果たしている。LTβRは、TNFファミリーの二つのメンバー(膜リンホトキシンαβ並びにLIGHT)によって活性化される(図1)。LTβRは、LNの形成、および二次リンパ器官におけるT、B領域の明確な組織化において中枢的役割を果たしている。LTβRを介するシグナル伝達は、二次リンパ器官内でケモカイン及び接着分子の発現を制御する。ケモカイン並びに接着分子は、脾臓におけるDC並びにリンパ球の移動及び位置決めを制御する。非リンパ組織における可溶性LTまたはTNFの過剰発現は、機能性リンパ新生を促進するために十分であった。
【0005】
LIGHTは、T細胞活性化及びリンパ組織の形成において独自の役割を果たしている。LIGHTは、LTβR及びヘルペスウイルス進入メディエーター(herpes virus entry mediator)(HVEM)に対するリガンドである。LIGHTは、リンパ組織上で優勢的に発現する。LIGTHとLTβRとの間の相互作用が、LTα−/−マウスの脾臓においてリンパ構造を回復する。さらに、LIGTHのアップレギュレートは、T細胞の活性化および非リンパ組織への移動を引き起こし、リンパ様構造が形成される。逆に、LIGHT−/−マウスは、T細胞活性化に障害が見られ、心臓の拒絶反応を遅延した。従って、LIGHTは、強力な共刺激分子であって、リンパ組織の形成をも促進して局所免疫反応を推進する。
【0006】
リンパ組織の枯渇における効果的なナイーブT細胞の初回抗原刺激の欠如、並びに腫瘍内部において腫瘍特異的T細胞の増殖ができないことが、癌の根絶が妨げられている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
変異体LIGHTは、T細胞の初回抗原刺激のためのケモカイン、接着分子、および共刺激分子を発現するリンパ様微小環境を作り出し、腫瘍細胞を殺傷する。
【0008】
変異体LIGHT(LIGHT)は、プロテアーゼタンパク消化を阻害するために作製され、このためLIGHTは、腫瘍細胞上で発現され得る。非変異体LIGHTは、腫瘍表面で発現されず、効果的な抗腫瘍活性を誘発しない。
【0009】
リンホトキシンレセプターを発現した支質並びにHVEMを発現したT細胞に対するリガンドである変異体LIGHTを腫瘍環境内部へ導入することは、大量のナイーブTリンパ球の浸潤を伴う、高レベルのケモカイン及び接着分子が誘発した。変異体light(LIGHTと称する)は、正常LIGHTのアミノ酸配列から欠失した79〜82位由来のタンパク質分解部位EKLIを有する(図3A)(Tamada et al.,2000)。LIGHTは局所並びに遠位の部位において、確立された高度進行性親腫瘍の拒絶反応を促進する。LIGHT発現腫瘍細胞は、十分に確立された親腫瘍を根絶し転移による新たな腫瘍の形成を防ぐための、医学が関係する治療的及び予防的ワクチンに基づいている。
【0010】
治療的ワクチンとしてのLIGHT発現腫瘍は、より多くのナイーブT細胞を誘引し、次いでこれを活性化してより多くの抗腫瘍特異的T細胞を作り出し、局所並びに遠位の腫瘍と戦う。
【0011】
LIGHT並びに腫瘍(または腫瘍抗原)は、T細胞を初回抗原刺激し、予防ワクチンとして長期間の防御を導く。
【0012】
腫瘍(特に、固形腫瘍)を処置する新しい方法は、変異体LIGHT分子を使用することによって、ナイーブT細胞を初回抗原刺激して活性化T細胞を増殖させるのに必要なケモカイン並びに接着分子、共刺激分子を発現するリンパ様微小環境を作り出すことである。幅広いT細胞が、腫瘍に対して産生される。変異体LIGHTをコードする配列を含むアデノウイルスベクターは、腫瘍及び転移に対して有効である。ベクターが変異体LIGHTを腫瘍に送達した場合、コントロールベクターで注入した腫瘍と比較して、インビボにおける腫瘍の体積が減少した。
【0013】
(発明の詳細な説明)
腫瘍細胞上のLIGHTの発現は、腫瘍拒絶反応を促進する。腫瘍Ag104Aおよびその誘導体を腫瘍モデルの一つとして使用した。Ag104Aは元来、C3H(H−2)マウスの自然骨肉腫に由来し、C3HマウスまたはB6C3F1マウスにおいて、極低用量のAg104A投与(10)でも、浸潤をほとんど生じずに累進的に増殖し得る。強力な抗原Lを腫瘍に導入する場合、その腫瘍は免疫認識に対して耐性であり続け、このことが強力な腫瘍障壁である可能性が示唆される。変異したLIHGTをレトロウイルスによってトランスフェクトしたAg104Lは、その表面上にLIGHTを安定に発現する。
【0014】
最初にLIGHT−Ag104L腫瘍をB6C3F1マウスに2週間接種し、次に1X10の2C T細胞を、確立した腫瘍を有するマウスに移植した。印象的なことに、全ての確立したLIGHT−Ag104L腫瘍(10/10)が2C T細胞移植後1週間で拒絶された一方、Ag104L腫瘍は拒絶されなかった(0/10)。B7−1はT細胞の活性化と増殖に関わる強力な共刺激分子であるが、LIGHTと対照的に、Ag104LのB7−1発現が、腫瘍の拒絶反応には十分でない。これらのデータは、LIGHTが、B7−1よりも腫瘍寛容を打破するためにより強力であり得ることを示唆する。LIGHTの二重効果を考えると、腫瘍部位におけるLIGHTの局所的な発現により、リンパ組織のケモカイン及び接着分子の発現が制御することによって、腫瘍の「障壁」を通過して樹状細胞及びT細胞が誘引され得る。さらに、LIGHTの局所的な発現は抗原特異的T細胞に対する腫瘍抗原の直接提示を強化し得、腫瘍微小環境内の浸潤するT細胞のアネルギーを妨ぎ得る、強力な共刺激分子となる。LIGHTを発現するもしくは発現しない、H−2バックグラウンドの腫瘍、MC57腫瘍(繊維肉腫)、MC57−L、およびMC57−SIYが作製され、腫瘍免疫におけるLIGHT及びそのレセプターの役割の特性をさらに明確にするため、LTβR、LIGHT、およびHVEM KOマウスを含むB6マウスモデルにおいて使用される。LIGHTは腫瘍免疫の媒介において複数の機能を有するようである。またLIGHTはインビボで腫瘍のアポトーシスを促進し得る。興味深いことに、LIGHTをコードするcDNAを腫瘍内部に注入すると、抗原特異的細胞溶解性T細胞反応が誘発され、確立したマウス腫瘍P815に対する治療免疫が誘導された。
【0015】
(腫瘍内で発現したLIGHTは、宿主抵抗力を500倍以上増大させた)
繊維肉腫Ag104Lは高い腫瘍形成能を持ち、10の細胞をレシピエントマウスC3B6F1に皮下注射した場合、100%増殖した(表1)。腫瘍上に発現した抗原Lに対するT細胞が充満する、2C T細胞レセプター(TCR)トランスジェニックマウスは、同一の抗原を含む皮膚移植が拒絶された後でさえこれを根絶することができなかったと報告されている(Hans,1997)。腫瘍特異的T細胞を腫瘍内へ向かわせ、腫瘍部位にてこれを活性化する方法は、臨床的な癌免疫治療と同様に、拒絶反応についての決定的な超えるべき障害物であると思われる。腫瘍環境内で発現したLIGHTは、それぞれLTβR並びにHVEMを介して、腫瘍内部へT細胞を誘引して活性化し、腫瘍拒絶反応へ導くことによって、寛容性を打破し得る(図2)。これを実証するため、レトロウイルスベクターMFGを利用するレトロウイルス形質導入によって、LIGHTをこの腫瘍細胞株で発現させた。当初、形質導入後、腫瘍細胞表面にてLIGHT発現は検出されなかった。LIGHTは、その配列上に、腫瘍細胞株の表面上で安定して存在することを妨げ得るタンパク質分解部位を有しているので、膜上のLIGHTタンパク質分解を減少させるLIGHTの変異版(LIGHT)が使用された(図3A)。変異体LIGHT/MFGのAg104Lへのレトロウイルスによる形質導入の後、LTβR−Igによって、形質導入された腫瘍細胞の表面上でLIGHT発現を検出した(図3B)。このような細胞をAg104L−LIGHTバルクと定義した。さらに、LIGHT発現Ag104L腫瘍細胞を限界希釈法によってクローニングした。他に指定されていない限り、ほとんどの実験において、このクローンの一つであるH10を使用した。変異体LIGHTはそのレセプターであるLTβR及びHVEMの双方に結合することができた。試験したAg104L−LIGHTバルク並びに全クローンは、LIGHT、LTβR及びHVEMのレセプターに結合し、可溶性LTβR及びHVEMによって染色可能であることによって示した。LTβR−Ig及びHVEM−Igによる、Ag104L−LIGHTバルク及びクローンH10の典型的な染色プロフィールを示した(図3B)。親腫瘍細胞並びにLIGHTトランスフェクト体の増殖は、組織培養物並びにRAG−1−/−マウスの双方において同じであった(図3D)。様々な数のLIGHT発現腫瘍細胞、バルクもしくはクローンH10を、C3B6F1マウスに皮下接種した。レシピエントは、5X10の最高用量の注入投与したLIGHT発現腫瘍細胞を拒絶した。これは親腫瘍が100%累進的に増殖する用量の500倍であった(表1)。LIGHT発現腫瘍細胞バルク並びにクローH10の代表的な増殖反応速度、ならびに親腫瘍を5X10接種した時の、典型的な増殖反応速度を図3Cに示した。Ag104L−LIGHTは、接種後初めの2週間は増殖し、続いて親腫瘍が増殖を続ける場合に退行し、3〜4週間で宿主を殺傷した(図3C)。
可溶性LTβRでLIGHTの機能を遮断する場合、LIGHT発現腫瘍が増殖したことから、腫瘍拒絶反応はLIGHT依存的であるもようである(表1)。腫瘍拒絶反応はリンパ球に依存する。リンパ球が欠如したRAG−1−/−マウスでは、LIGHT発現Ag104Lは親腫瘍と同程度累進的に増殖した(図3D)。抗CD8抗体によってCD8T細胞が失活しているC3B6F1マウスはこれらの腫瘍を拒絶しなかったため、CD4T細胞ではなくCD8T細胞がLIGHT発現Ag104Lの拒絶反応を媒介するのに必須であった(表1)。一方、CD4T細胞はこの腫瘍拒絶に必要ではない。
【0016】
(LIGHT媒介腫瘍環境では、より多くの浸潤するCD8T細胞を有する)
LIGHT媒介腫瘍拒絶反応の基礎となる可能性のある機構を調べるため、5X10のLIGHT発現Ag104Lもしくは同じメンバーの親腫瘍細胞をC3B6F1マウスに皮下注射した。腫瘍接種後10〜14日目、LIGHT発現腫瘍細胞が拒絶される前に腫瘍組織を回収した。この腫瘍組織をHE染色すると、大量のリンパ球が浸潤していることが示された(図5)一方、親腫瘍ではごく僅かな浸潤しか見られなかった(図5)。免疫蛍光染色によって、浸潤しているリンパ球の内、大量のThy1.2T細胞(図5)、特にCD8T細胞がLIGHT発現腫瘍内部に存在していることを確認した(図5)。
【0017】
(LIGHTの改変した細胞外ドメインはT細胞の共刺激に十分である)
LIGHTは、T細胞増殖を導く強力な共刺激活性を有することが報告されている。LIGHTの変異体形態では、分子の膜貫通部位に極近い、細胞外ドメインにおけるタンパク質分解部位に相当する4つのアミノ酸を欠失させた(図3A)。LIGHT分子内の変異は、LIGHTの共刺激効果に影響する。細胞外ドメインを短くした形態であるアミノ酸85〜239のみを含有し、精製を容易にするためのフラッグペプチドを有する組み換えLIGHTタンパク質を作製した(組み換えLIGHT)(図4A)。改変したLIGHTの細胞外ドメインは、T細胞を共刺激するに十分であった。この試験のため、プレート結合組み換えLIGHTを用いたインビトロ共刺激アッセイを用いて、準最適用量のCD3に対する固定化抗CD3モノクローナル抗体存在下で精製マウスT細胞を刺激した。固定化組み換えLIGHTは、準最適量のCD3に対する抗体存在下で、用量依存の様式で強力に精製マウスT細胞の増殖を刺激した(図4B)。LIGHT分子から欠失しているタンパク質分解部位を除いたアミノ酸85〜239である、改変されたLIGHTの細胞外ドメインは、T細胞レセプターの関係が生じる場合、T細胞増殖の共刺激に十分であった。
【0018】
(B7.1分子を発現する腫瘍は、親腫瘍と同程度の浸潤するT細胞を含有する)
CD8T細胞の浸潤はLIGHT媒介腫瘍環境よる腫瘍拒絶に相関した。LIGHTはT細胞に対する強力な共刺激効果を有するので、別の強力な共刺激分子であるB7.1が大量のT細胞の浸潤に関連した腫瘍拒絶反応を媒介するために十分か否かが問題となった。Ag104L−LIGHTと同じ方法で形質導入した5X10のAg104L−B7.1腫瘍細胞を、C3B6F1マウスに皮下接種した。これらの腫瘍はレシピエントにおいて累進的に増殖した。この腫瘍組織に対するHE染色は、リンパ球の浸潤をほとんど示さなかった(図5)。抗Thy−1.2並びに抗CD8を用いた免疫蛍光染色は、Ag104L−B7.1腫瘍組織が、親の腫瘍Ag104Lと比較して同等のレベルのT細胞(CD8T細胞浸潤を含む)を含むことを明らかにし(図5)、これはLIGHT発現Ag104L(図5)と比較して実質的に少ない。このデータは、二つの共刺激分子(B7.1並びにCD48)を発現するAg104Lが2C TCRトランスジェニックマウスによって拒絶されなかった(Hans,1997 JEM)という従来の所見と一致した。これら一連の証拠は、これらの腫瘍モデルにおいて、強力な共刺激だけでは腫瘍拒絶反応を媒介するのに十分ではないことが示唆された。
【0019】
(LIGHT媒介腫瘍環境は、高レベルのケモカインSLC及びアップレギュレートされた接着分子MAdCAM−1を含有する)
問題は、LIGHT媒介腫瘍環境について何が特異であるかということであった。LIGHTはT細胞上に発現されるレセプターHVEMに結合し、これを介してLIGHTはT細胞の共刺激を媒介する模様であるが、LTβRはLIGHTと相互作用する別のレセプターである。LTβRシグナル伝達は、ケモカインSLC及び接着分子MAdCAM−1に対する重要な制御因子であり、ナイーブT細胞が二次リンパ組織へ帰着するのを制御する。腫瘍環境におけるLIGHTはこれらの腫瘍間質細胞上のLTβRと相互作用して、腫瘍環境内のSLC及びMAdCAM−1をアップレギュレートすると思われる。接種後10〜14日目に、親Ag104LあるいはLIGHT発現Ag104Lのいずれかから腫瘍組織を回収した。リアルタイムRT−PCRによって、LIGHT陽性腫瘍塊は親腫瘍よりもSLCを高レベルに発現することが示された(図6A)。Ag104L−LIGHT中のSLC量を検出するELISAによって、この結果を独立して確認した(図6B)。親腫瘍ではSLCはごく僅かにしか検出されなかった(図6B)。LIGHT発現腫瘍において、より高いSLCが検出されたことが、単に、腫瘍環境(RAG−1−/−腫瘍担体からの組織)中により多く存在するT細胞に対する反応がより活発に進行していることに起因する可能性を除くため。リンパ球欠損マウス中で増殖するAg104L−LIGHT腫瘍は、親腫瘍よりも高レベルのSLCを含有していた(図6B)。さらに、RAG−1−/−マウスにおいてLIGHT陽性及びLIGHT陰性腫瘍の双方が等しく増殖したことは、ケモカインSLC単独では腫瘍拒絶の媒介に不十分であることを示唆している。これらのデータは、C3B6F1腫瘍保持動物(TBA)から回収された他の5対のLIGHT陽性及びLIGHT陰性腫瘍試料由来の組織切片の免疫化学的染色に一致した。SLC及びヘマトキシリンで二重染色した腫瘍組織で明確に示されたように、高密度の浸潤するリンパ球に囲まれたLIGHT発現腫瘍内の間質に富む部位領域で、SLCの非常に強い染色が検出された(図6C)。しかし、LIGHT陰性の腫瘍組織上の間質に富む部位領域においてはSLCは検出されなかった(図6C)。また、コントロール腫瘍の場合と同じく、B7.1発現腫瘍由来の組織もまた、SLC染色は見られず、浸潤するリンパ球はほとんど存在しなかった(図6C)。
【0020】
接着分子はリンパ球が周辺組織へ移動するために重要であり、LTβRシグナル伝達は接着分子の一つであるMAdCAM−1の発現に重要である(Kang,2002)。LIGHT発現腫瘍塊あるいは親腫瘍におけるMAdCAM−1発現レベルを、リアルタイムRT−PCRによって測定した。親腫瘍と比較すると、LIGHT発現腫瘍塊において接着分子MAdCAM−1の発現量が増加した(図6D)。これらの実験は、腫瘍環境中のLIGHTが腫瘍間質由来のLTβRと相互作用し、ケモカインSLC及び接着分子MAdCAM−1をアップレギュレートしてリンパ球を腫瘍環境内に誘引することを強く示唆するものであった。
【0021】
リンパ組織ケモカインに加えて、LTβRシグナル伝達はまた、INF−γ誘導ケモカインである、IP−10及びMigのセットも制御する。ジーンアレイで他のケモカインの発現レベルを比較すると、活性化T細胞を誘引できる可能性のあるIP−10及びMigはまた、LIGHT媒介腫瘍環境では親腫瘍の場合と比較して特異的にアップレギュレートされ、一方試験した他のケモカインはLIGHT陽性とLIGHT陰性の間に差がなかったことが示された。従って、LIGHTは、ナイーブT細胞及びおそらくは活性化されたT細胞の動員のためのリンパ微小環境の形成において重要な役割を果たす。
【0022】
(ナイーブT細胞はLIGHT媒介腫瘍環境内に動員され得、ここで増殖して、腫瘍を拒絶する)
LIGHT媒介腫瘍環境は、ナイーブT細胞の導入を可能にする可能性のある高レベルのケモカインSLC及び接着分子MAdCAM−1を含有する。直接に関連する三つの疑問は、1)このような環境がナイーブT細胞を動員することができるか否か、2)インビボにおいて、LIGHT存在下でナイーブT細胞が腫瘍内で活性化され得るか否か、3)抗原を保時する腫瘍がこれらT細胞によって拒絶され得るか否か、であった。Ag104が発現する抗原Lは、腫瘍細胞の表面で、ハウスキーピング遺伝子α−ケトグルタル酸脱水素酵素由来のペプチドを提示する同種異系MHCクラスI分子である。C3B6F1(H−2kXb)あるいはB6(H−2)宿主において、2C T細胞反応は、抗原が修飾されて抗原提示細胞(APC)によって交差提示されると宿主から消滅するLを、そのナイーブ形態において必要とするため、養子移入した2C TCRトランスジェニックT細胞のみが直接Lを提示するAg104腫瘍細胞を認識する。皮下で増殖する腫瘍はリンパ組織内の直接経路を介してT細胞を初回抗原刺激するには極めて無効果である。3〜5×10のCFSE標識2C T細胞をこのC3B6F1宿主に養子移入して24時間後にAg104Lを皮下接種した。腫瘍流入リンパ節あるいは他の非流入リンパ節または脾臓において、2C T細胞の増殖は、Ag104L腫瘍誘発後7日目まで、蛍光色素CFSE希釈液によって検出されないか、あるいは測定されなかった。この7日間の観察の間、二次リンパ器官における2C T細胞は、その表面のCD25あるいはCD69、CD44が低量であることによって示されるように、ナイーブ表現型を維持した。これらは、多くの理由によって抗原を有効に交差提示することができない場合、腫瘍細胞上に発現した抗原に特異的なT細胞が活性化されない可能性のあることを示唆している。最終的に、5×10もの腫瘍抗原特異的2C T細胞を宿主に移入した時でさえ、10のAg104L腫瘍細胞はC3B6F1マウスによって拒絶されなかった。
【0023】
LIGHTが腫瘍環境内部に存在する場合に、2C T細胞を養子移入すると何が起こるのかを調べる。C3B6F1宿主において、LIGHT発現Ag104L腫瘍は2C T細胞移入が無い状態で内因性CD8T細胞によって拒絶された。抗原特異的T細胞を追跡してそのトラフィッキング並びにプライミング、腫瘍拒絶能力をモニタリングするため、B6(H−2)/RAG−1−/−バックグラウンドのH−YあるいはOT−1 TCRトランスジェニックマウスを、腫瘍誘発のためのレシピエントとして使用した。これらのマウスはAg104L腫瘍に反応しないモノクローナルCD8T細胞を内包する。従って、Ag104LまたはLIGHT発現Ag104Lの双方とも、RAG−1−/−マウスにおける場合と同様に、このマウスにて精力的に増殖した(図7D)。しかしこれらのマウスにおけるCD8 H−YまたはOT−1トランスジェニックT細胞の存在に起因して、14日目まで継続的に観察をしても、養子移入した2C T細胞は活発で恒常的な増殖を見せない(図7B)。従って、養子移入後14日以内でのこれらの宿主における2C T細胞の活発な増殖は、抗原Lが駆動源であった。表面上に抗原Lを同レベルに発現した(図7A)、10のAg104LまたはAg104L−LIGHTをこれらのマウスに皮下接種した。次に腫瘍誘発後10〜14日目に、3×10のCFSE標識した2C T細胞をこのマウスに養子移入した。T細胞移入後48時間後、132時間後、168時間後及び336時間後にマウスを安楽死させて、腫瘍流入リンパ節(DLN)、他の非流入リンパ節(NDLN)、脾臓(SPL)及び腫瘍塊を回収した。コラーゲナーゼ消化によって、腫瘍塊の単細胞懸濁液を得た。必要に応じて、陽性選択磁性システムを用いて腫瘍細胞からT細胞腫瘍浸潤(TIL)を精製した。2C T細胞のトラフィッキング及び増殖を評価した。T細胞移入後48時間後に、高CD62Lかつ低CD44の、CFSEで濃く染色されるナイーブT細胞は、Ag104LまたはAg104L−LIGHTを保持するマウスの両方で二次リンパ器官において同程度に存在した(図7B及び7C)。しかし顕著な数の、CD62high且つCD44lowであるナイーブ2C T細胞がLIGHT発現腫瘍内部で検出され、親腫瘍では検出されなかった(図7B及び7C)。T細胞移入後132時間後に、この2C T細胞の集団はLIGHT発現腫瘍内部で増殖し、これはCFSE希釈液によって示された(図7B)。この時点で親腫瘍では、ナイーブあるいは増殖した2C T細胞を検出することはできなかった(図7B)。2C T細胞移入後168時間後には、大量の増殖した2C T細胞がLIGHT発現腫瘍内のみに存在した。2C T細胞移入後7日(168時間)までは、LIGHT陽性あるいはLIGHT陰性腫瘍を保持するマウスの二次リンパ組織内でCFSE標識2C T細胞もしくは増殖した2C T細胞を有意に検出することはできなかった(図5B)。抗原Lによる2C T細胞の活性化は、腫瘍流入リンパ節あるいは他のリンパ節、脾臓では発生せず、LIGHT陽性腫瘍内のみで発生した。2C T細胞移入後14日後に、低CFSEの、十分増殖した2C T細胞を、LIGHT発現腫瘍を保持するマウスの二次リンパ器官で検出した。このリンパ節内に存在する2C T細胞は、高レベルのCD44及びCD62Lを発現した。しかし、この脾臓へトラフィッキングする2C T細胞はCD44highCD62Llow集団とCD44highCD62Lhigh集団との混合体であった(図5C)。この結果は、中心性記憶T細胞はリンパ節へ移動し、中心性及び末端性記憶T細胞の両方が脾臓へ行くことができるという従来の知見に一致した(Ahmed参照)。親腫瘍を保持するマウスにおいては、14日後に、二次リンパ器官内に存在する2C T細胞は顕著な増殖をせずにナイーブ表現型(CD62Lhigh並びにCD44low)を維持した(図7B及び7C)。さらに、この親腫瘍内部では、ナイーブあるいは活性化された2C T細胞を検出することができなかった(図7B及び7C)。
【0024】
さらに重要なことに、2C T細胞の増殖は腫瘍拒絶と相関していた。これらのH−Yトランスジェニックマウスにおいて10日間定着したAg104L−LIGHT腫瘍は完全に抑制されたが、親腫瘍は2C T細胞を移入しないマウスと同程度増殖した(図7D)。
【0025】
C3B6F1マウスを腫瘍レシピエントとして使用した。5×10のAg104LまたはAg104L−LIGHTをC3B6F1マウスに皮下接種した。10〜14日後、3×10のCFSE標識2C T細胞をこの宿主に養子移入し、48時間後と168時間後に、腫瘍流入リンパ節あるいは他の非流入リンパ節、脾臓、腫瘍塊におけるT細胞のトラフィッキング及び増殖を調べた。H−YあるいはOT−1 TCRトランスジェニックマウスの場合と同様の結果が生じた。
【0026】
LIGHT媒介環境において、抗原が十分交差提示されなくても、ナイーブ腫瘍抗原特異的T細胞を腫瘍部位へ動員することができ、そこでこのT細胞は効果的に増殖し、腫瘍細胞を死滅させた。さらに意味あることには、これらのT細胞はLIGHTがなくてもインサイチュで腫瘍の増殖を抑制することができた。興味深いことに、LIGHT媒介腫瘍環境は、腫瘍部位から離れ、再循環してLIGHTを持たず同じ抗原を保持する遠位部位にある他の腫瘍を拒絶する可能性が考えられる腫瘍抗原特異的T細胞を大量に産生した(表3)。
【0027】
(LIGHT発現Ag104Lでの治療的ワクチン接種は、定着した親腫瘍を根絶する)
LIGHT媒介腫瘍環境はナイーブT細胞を動員することができ、この腫瘍内部でナイーブT細胞を活性化して腫瘍拒絶を引き起こす。この発見の潜在的治療効果は、LIGHT発現腫瘍細胞を定着した親腫瘍に注入することによって示された。これらの定着した腫瘍の拒絶を導く抗原の存在下で、当該処置によってリンパ様環境を作り出し、ナイーブT細胞を誘引することができ、続いて共刺激を介して腫瘍特異的T細胞を活性化することができた。10のAg104LをC3B6F1レシピエントに皮下接種し、この腫瘍を14日間定着させた。次に10のLIGHT発現Ag104L腫瘍細胞をこの定着した親腫瘍内部に注入した。コントロールとして同量のPBSを同じ方法で親腫瘍に注入した。LIGHT発現腫瘍細胞で処理した定着した親腫瘍は、退縮して消失し始めるまでの10〜15日間増殖を続けた(図8)。PBSで処理したAg104L腫瘍は攻撃的に増殖した。
【0028】
LIGHT媒介腫瘍環境は、循環に戻る多数の腫瘍抗原特異的中心性並びにエフェクター記憶T細胞を産生した。当該リンパ球群の産生は、原発腫瘍を外科的に除去した後の転移の根絶に重要であり得る。LIGHT媒介腫瘍環境由来の、多量の腫瘍抗原特異的記憶T細胞によって、遠位の定着した親腫瘍を拒絶され得る。臨床関連モデルを作り出すため、10のAg104L腫瘍細胞をC3B6F1宿主の左脇腹に注射し、腫瘍を20日間定着させた。20日後、10のAg104L−LIGHT腫瘍細胞をこのマウスの右脇腹に注射した。あるいは、同量のPBSをコントロールグループのAg104L腫瘍保持マウスに注射した。LIGHT保持腫瘍細胞で処理したマウスの100%が、定着した親腫瘍を拒絶した。コントロールグループでは、100%のマウスでAg104L腫瘍は累進的に増殖した(表2)。
【0029】
LIGHT発現腫瘍細胞の治療効果を、臨床的転移腫瘍により近く類似する別のモデルで立証した。10(原発腫瘍)並びに5×10(遠位腫瘍)のAg104L腫瘍細胞を、それぞれレシピエントマウスの左並びに右の脇腹に接種した。腫瘍接種後14日目に原発腫瘍を外科切除し、10のLIGHT発現Ag104L腫瘍細胞をこのマウスの背面上部に注入した。定着した遠位腫瘍の増殖を観察した。処理グループのマウスは全て、遠位腫瘍を拒絶した。しかし、LIGHT発現腫瘍で処理しなかった、コントロールグループでは全ての宿主が遠位腫瘍によって死亡した(表2)。
【0030】
LIGHT媒介腫瘍環境はインサイチュで、ナイーブT細胞及び、活性化し増殖した腫瘍抗原特異的T細胞を動員して、抗原を有する腫瘍細胞を拒絶することができる。さらに、多量の腫瘍抗原特異的中心性T細胞及びエフェクター記憶型T細胞がその環境内部に生じ、遠位部位へ移動して同じ抗原を有する腫瘍を拒絶することができた(表3)。
【0031】
(アデノウイルスによってLIGHT変異体(LIGHT)を腫瘍組織へ送達すると、効果的な免疫反応と腫瘍拒絶が得られる)
図10は、腫瘍細胞におけるインビボの変異体LIGHTの発現の存在に相関して、腫瘍体積が減少することを図示する。
【0032】
図11は、接種後14日目と17日目、及び34日までの、マウスにおける自然転移の減少を図示する。T細胞を刺激する抗体である抗41BBの、腫瘍の縮小に対する相乗効果が存在する。
【0033】
図12は、クローン形成アッセイによってLIGHT変異体処理後に転移の痕跡が見られないことを示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【実施例】
【0037】
(材料と方法)
(マウス、細胞株及び試薬)
4〜8週齢のメスC3HXC57BL/6 F1(C3B6F1)マウスは、National Cancer Institute、Frederick Cancer Research Facility(Frederick, MD)から購入した。C57BL/6−RAG−1−欠損(RAG−1−/−)マウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。RAG−2欠損/B6を遺伝子バックグラウンドとするH−Y TCRトランスジェニックマウス(H−Yマウス)はTaconic Farms(Germantown,NY)から購入した。B6にて10代継代されたRAG−1欠損を遺伝子バックグラウンドとする2C TCRトランスジェニックマウス(2Cマウス)はJ.Chen(Massachusetts Institute of Technology,Boston,MA)によって提供された。OT−1 TCRトランスジェニックマウス(OT−1マウス)はA.Ma(The University of Chicago)によって提供された。RAG−1−/−マウス、H−Yマウス、2Cマウス、OT−1マウスはシカゴ大学の特別な病原菌が存在しない施設内で繁殖及び飼育した。動物の飼育と使用は施設ガイドラインに従った。
【0038】
AG104A線維肉腫は老齢のC3Hマウスにて自然増殖して現れたもので、記載されているように培養に適合した(Ward 1989 JEM)。AG104A細胞の遺伝子導入体である、AG104A発現マウスH−2L(Ag104−L)についてはこれまでに記載されている(Wick M,1997,JEM)。これらの腫瘍細胞株は、10% FCS(Sigma−Aldrich)及び100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン(Bio Whittaker)を添加したDMEM(Mediatech)内で維持した。抗L抗体(クローン30−5−7)並びに抗2C TCR(1B2)抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、それぞれD.Sachs(National Institutes of Health,Bethesda,MD)並びにT.Gajweski(The University of Chicago)から入手した。
【0039】
ハイブリドーマが産生したモノクローナル抗体は、標準的な手順によってGタンパク質カラムを使用して、培養物上清から精製した。Monoclonal Antibody Facility of The University of Chicagoによって、1B2抗体はFITCあるいはビオチンに結合された。PE結合抗CD8抗体、Cyクロム(CyC)結合ストレプトアビジン、CyC結合抗CD44抗体、PE結合抗CD62L抗体及びPE結合Th1.2抗体はBD Biosciencesから購入した。FITC結合ヤギ抗マウスIgG抗体はCaltagから購入した。PE結合ストレプトアビジンはImmunotechから購入した。PE結合ロバ抗ヒトIgGはJackson Immunological Research Lab(West grove,PA)から購入した。ビオチン化ヤギ抗SLC抗体はR&D systems Inc.(Minneapolis,MN)から購入した。AP結合ウサギ抗ヤギIg抗体はVector Laboratories Inc.(Burlingame,CA)から購入した。精製ヤギ抗SLC抗体はPepro Tech(Rock hill,NJ)から購入した。コラゲナーゼ(4型)はSigma−Aldrichから購入した。CFSEはMolecular Probesから購入した。
【0040】
本研究で使用したHVEM−IgとLTβR−Igとの融合タンパク質については、以前に記載されている(jing’s JCI及びQ.Wu JEM 1999)。
【0041】
(B7.1または変異体LIGHT発現ベクター及びクローンの作製)
pMFG−S−変異体LIGHTを産生するため、pcDNA3.1−変異体LIGHTをNcoI及びBamHIで分解し、NcoI及びBamHI分解pMFG−S−TPAプラスミドに連結させた(Dr.Mulligan RC,Massachusetts Institute of Technology,Boston,MA)。変異LIGHTを含有するウイルスを産生するφNxEcoパッケージング細胞は、カルシウム沈降法によるMFG−S−変異LIGHTを用いた一過性トランスフェクションによって作製した。感染したAg104L腫瘍細胞(Ag104L−LIGHTバルク)による変異体LIGHTの発現を、変異体LIGHTを認識するウサギ抗血清を用いた細胞染色によって分析した。続いて、この形質移入した変異体LIGHT発現Ag104L腫瘍細胞を限界希釈法によってクローニングした。Ag104L−LIGHTクローンH10は、今回の実験で使用したこれらクローンの一つである。
【0042】
(インビボにおける腫瘍増殖)
腫瘍細胞を背面下部、即ちマウスの尾付け根から0.5〜1cm上部に、皮下接種した。腫瘍の増殖を3〜4日ごとにキャリパーを使用して測定した。立方センチメートルで表す体積は式V=πabc/6によって算出した。ここでa、b及びcは3つの直交する径である。
【0043】
(組織学)
組織学的試験のための腫瘍組織を、記載した時に採取して10%中性緩衝化ホルマリンで固定し、パラフィン包埋してヘマトキシリン及びエオシンで染色した。SLCの免疫組織化学染色のために、腫瘍組織を採取し、OCT化合物(Miles−Yeda,Rehovot,Israel)内に包埋して−70℃で凍結した。凍結切片(厚さ5〜10μm)を、PBS中の冷2%ホルマリンで固定し、0.1%サポニン/PBSで透過性を持たせた。この切片を、加湿チャンバー内において常温で30分、0.1%サポニン/PBS中の5%ヤギ血清で前ブロッキングした。SLCに対する染色は、最初に、ブロッキング緩衝液中に1/25に希釈したビオチン化ヤギ抗SLC抗体(R&D systems Inc.Minneapolis,MN)でインキュベートして行った。2時間後にアルカリホスファターゼ結合ウサギ抗ヤギIg抗体(Vector Laboratories Inc.Burlingame,CA)を加えた。免疫蛍光染色のため、加湿チャンバー内において常温で30分、切片をPBS中の2%正常マウス血清、ウサギ血清及びヤギ血清でブロッキングした。ブロッキング溶液を、ブロッキング溶液で1/100に希釈した50μlの一次抗体PE結合抗Th1.2抗体(BD PharMingen)またはPE結合抗CD8(BD PharMingen)に置き換え、切片を加湿チャンバー内にて常温で1時間インキュベートした。検体は、10%の1,4−ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタンを含有するMowiol 4−88(BD Biosceiences,La Jolla,CA)上にのせた。Zeiss Axioplan顕微鏡(Zeiss,Oberkochen,ドイツ)及びPhotometrics PXL CCDカメラ(Photometrics,Tucson,AZ)を使用して、サンプルは48時間以内に分析した。Openlab v2.0.6(Improvision,Lexington,MA)を使用して、非隣接デコンボリューションを行った。
【0044】
(CCL21に対するELISA)
腫瘍ホモジェネートを調製してCCL21についてアッセイを行った。腫瘍保持マウスから相当量の腫瘍組織を回収して秤量し、タンパク質分解酵素阻害剤を含有するPBS中でホモジェナイズして遠心分離し、その上清を回収した。ポリスチレン96ウェルマイクロタイタープレート(Immulon 4,Dynatech Laboratories,Chantilly,VA)をPBS中の2μmlヤギ抗マウスCCL21でコーティングし、次に常温で30分間、PBS中の0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングした。洗浄後、既知濃度の標準液(Recombinant CCL21,50ng/ml,R&D)の連続希釈物とサンプルとを加え、常温で2時間インキュベートした。3回の洗浄後、ビオチン化ウサギ抗SLC抗体をウェルに加えた。2時間インキュベーションおよび洗浄後、50μlの1/1000希釈アルカリホスファターゼ結合アビジン(Dako)を1時間加えて発色させた。自動プレートリーダー(Spectra−Max 340,Molecular Devices,Sunnyvale,CA)上にて405nmで発色を測定した。CCL21の量をELISAによって標準曲線から判定し、組織重量に応じて正規化した。データは平均値±標準偏差である。
【0045】
(リアルタイム定量RT−PCRアッセイ)
リアルタイムPCRを行った。Absolute RNA miniprep Kit(Stratagene,La Jolla,CA)を用いて腫瘍から全RNAを単離し、DNaseI(Life Technologies,Grand Island,NY)で消化して染色体DNAを除去した。残存するDNaseIを、75℃、20分間で不活化し、RNAの保全性は臭化エチジウム染色ゲルによる可視化によって評価した。First Strand cDNA Synthesisキット(Amersham Pharmacia,Piscataway,NJ)を用いて、5μgの全RNAをcDNAに逆転写した。このリアルタイム定量PCR分析はABI Prism 7700配列検出システム(PE Applied Biosystems)で行った。CCL21に対するプライマー配列は、5’−AGACTCAGGAGCCCAAAGCA−3’(順方向プライマー)および5’−GTTGAAGCAGGGCAAGGGT−3’(逆方向プライマー)であり、CCL21に対するプローブは、5’−CCACCTCATGCTGGCCTCCGTC−3’であった。MAdCAM−1に対するプライマーは、5’−GACACCAGCTTGGGCAGTGT−3’(順方向プライマー)および5’−CAGCATGCCCCGTACAGAG−3’(逆方向プライマー)であり、MAdCAM−1に対するプローブは、5’−CAGACCCTCCCAGGCAGCAGTATCC−3’であった。GAPDHに対するプライマーは、5’−TTCACCACCATGGAGAAGGC−3’(順方向プライマー)および5’−GGCATGGACTGTGGTCATGA−3’(逆方向プライマー)であり、GAPDHに対するプローブは、5’−TGCATCCTGCACCACCAACTGCTTAG−3’であった。CCL21ならびにMAdCAM−1プローブを6−カルボキシフルオレセイン(FAM)で標識した。GAPDHプローブをテトラクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(TET)で標識した。各cDNAサンプルをAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼを含むTaqMan Universal PCR master mixture(PE Applied Biosystems)を製造者の使用説明書に従って用いて、CCL21およびGAPDHまたはMAdCAM−1およびGAPDHについて二本鎖で増幅した。PCRの条件は、50℃で2分、95℃で10分、95℃で15秒および60℃で1分を40サイクルであった。比較C(増幅プロットと臨界値との間の交差する点にある臨界サイクル数)法を使用して標的遺伝子の濃度を決定し、内部GAPDHコントロールに対して標準化した。
【0046】
(腫瘍組織ケモカインのマイクロアレイ)
これらの実験のため、GEArray Q series Mouse Chemokines and Receptors Gene Array membrane(SuperArray,Bethesda,MD)を使用した。Absolute RNA miniprep Kit(Stratagene,La Jolla,CA)を用いて腫瘍由来の全RNAを単離し、DNaseI(Life Technologies,Grand Island,NY)で消化して染色体DNAを除去した。残存するDNaseIを、75℃、20分間で不活性化した。RNAの保全性は臭化エチジウム染色ゲルで可視化することによって評価した。このマイクロアレイは、製造者の使用説明書に従って使用された。簡単には、提供された試薬を使用して、MMLV逆転写酵素を用いた逆転写によって全RNAからcDNAを調製し、[−32P]dCTP(3,000Ci/mM)で放射性物質標識し、次いで正確に特定された条件下で整列されたDNAを含む陽性荷電のナイロン膜とハイブリダイズした。洗浄後、このアレイをホスホイメージャー(phosphorimager)によって可視化した。ハウスキーピング遺伝子PUC18、アクチンおよびGAPDHに対するハイブリダイゼーションシグナルの強度に基づいて積荷を調整し、Image Quantソフトウエアを使用してホスホイメージャーにより記録したデジタル画像をデジタルデータに変換して後に、遺伝子発現を定量した。GEArray Analyzerソフトウエアを製造者の使用説明書に従って使用して生データを解析した。
【0047】
(T細胞共刺激アッセイ)
製造者(Miltenyi Biotec,Auburn,California)による指示どおりに磁場におけるネガティブ選択法によってT細胞を精製した。単離したT細胞の精製度は、95%を超えており、これはCD3に対するモノクローナル抗体を使用するフローサイトメトリーで評価した。0.2g/mlのCD3に対するモノクローナル抗体でコーティングしたプレートをさらに37℃で4時間、LIGHT−flagでコーティングした。洗浄後、精製T細胞(1×10細胞/ml)をこのウェル内で培養した。CD28に対するモノクローナル抗体(1μg/ml)を可溶化形態で使用した。全てのアッセイにおいて、3日間の培養中最後の15時間に1Ci/ウェルのH−チミジンを添加して、T細胞の増殖を測定した。H−チミジンの取り込みは、TopCountマイクロプレートシンチレーションカウンター(Packard instrument,Meriden,CT)にて測定した。
【0048】
(FACSによる細胞分析)
変異体LIGHTがLTbRおよびHVEMに結合することを確認するために、変異体LIGHTをトランスフェクトしたAG104L腫瘍細胞(AG104L−LIGHT)を、LTbR−IgまたはHVEM−Ig(0.02mg/ml)と共にインキュベートして洗浄し、それぞれPE結合ロバ抗ヒトIgG抗体またはFITC結合ヤギ抗マウスIgG抗体で染色した。Lの発現分析のため、腫瘍細胞を抗L抗体とインキュベートして洗浄し、FITC結合抗マウスIgG抗体と共にインキュベートした。CFSE標識2C T細胞の増殖を検出するため、単離したリンパ節(LN)細胞、脾細胞、および腫瘍浸潤T細胞(TIL)を、ビオチン化1B2抗体で染色して洗浄し、CyC結合ストレプトアビジンおよびPE結合抗CD8抗体で染色した。CFSE標識2C T細胞およびCD44の発現を分析するため、単離したLN細胞、脾細胞またはTILをビオチン化1B2抗体で染色して洗浄し、PE結合ストレプトアビジンとCyC結合抗CD44抗体との混合物で染色した。CFSE標識2C T細胞とCD62L発現の分析のため、単離したLN細胞、脾細胞またはTILをビオチン化1B2抗体で染色して洗浄し、CyC結合ストレプトアビジンおよびPE結合抗CD62Lで染色した。サンプルを、FACScanで分析し、データをCELLQuestソフトウエアまたはFlowJoソフトウエアを用いて分析した。
【0049】
(2C T細胞の養子移入)
LN細胞および脾細胞を2Cマウスから単離し、CD8T細胞濃縮キット(Miltenyi Biotec,Auburn,California)を用いてCD8T細胞をネガティブ選択した。分析の際、濃縮されたCD8細胞のうちの>90%が2Cレセプターを発現していた。腫瘍増殖のアッセイのため、約3×10の2C T細胞をH−YマウスまたはOT−1マウスに移入した。同数の2C T細胞を各実験にて各マウスに移入した。CFSE標識T細胞を移入するため、2×10/mlのT細胞を、10μM CFSEを用いてPBS溶液中37℃、30分間で標識した。この細胞を同量のFCS用いて1分間でクエンチして3回洗浄した。3×10のCFSE標識T細胞を、0.2ml容量で腫瘍保有マウスの後眼窩叢内に静脈内注射した。指示した時間に、鼡径リンパ節(DLN)、他のリンパ節(非流入リンパ節[NDLN])、脾臓または腫瘍から細胞を単離した。
【0050】
(細胞除去およびLTbR−IgによるLIGHT活性のインビボ遮断)
CD4細胞についてモノクローナル抗体(mAb)GK1.5(Dialynas DM JI 1983)、CD8細胞についてmAb 2,34(Sarmiento M 1980 JI)を使用する標準的手順(免疫学に関する現在のプロトコール)によって、マウスのリンパ球サブセットを除去した。FACSによる脾細胞およびリンパ節の実験によって、除去したサブセットが、全リンパ球のうちの<0.5%であり、他のサブセットは正常レベルであることが示された。マウス内でLIGHTを遮断するため、腫瘍誘発の同日および誘発の1週間後にLTβR−Ig(100μg/注射)を腹膜内で投与した。
【0051】
(腫瘍組織からの細胞単離)
最初に腫瘍組織内の血液混入を減少させるためにマウスを飼育した。腫瘍組織を採取してPBSで洗浄し、切断して小片とした。これを37℃の振盪インキュベーターにて、2% FCSおよび1.25mg/mlのコラゲナーゼD(コラゲナーゼD溶液)を添加したDMEMに40分間再懸濁した。40分後に単細胞懸濁液を回収し、全腫瘍組織が解離して単細胞懸濁液となるまで、細胞凝集塊をさらに40分間コラゲナーゼD溶液中で消化した。
【0052】
(LIGHTおよびLIGHT発現細胞の送達)
LIGHTをコードする核酸の患者への送達は、患者が直接、核酸あるいは核酸保有ベクターに暴露される直接送達、または最初に生検から得た腫瘍細胞をインビトロでこの核酸で形質転換して放射線処理し、次いで患者へ移植する間接送達のいずれかであり得る。これらの手法は、腫瘍の抑制あるいは他の疾患の治療のための遺伝子治療にて施行されている。
【0053】
(核酸の送達)
核酸配列をインビボに直接投与し、そこでそれらを発現させてコードされるタンパク質を産生した。これは、以下による当該分野で公知の多数の方法のいずれかによって達成され得る:例えば、この核酸塩基配列を適当な核酸発現ベクターの一部分として構築し、それらが細胞内に入るように投与すること、欠損させたもしくは弱毒化したレトロウイルスベクターあるいは他のウイルスベクター(米国特許第4,980,286号)を使用して感染させること、または裸のDNAを直接注射、または微粒子照射、もしくは脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクト試薬を用いたコーティング、リポソーム、微粒子もしくはマイクロカプセルによるカプセル化、の使用、または核に入ることが知られているペプチドと結合させてそれらを投与すること、またはレセプター媒介性エンドサイトーシスに関わるリガンドに結合させてそれを投与すること(これは、このレセプターを発現する細胞型を特異的に標的とするために使用され得る)など。あるいは、核酸を細胞内に導入し、発現のために相同組み換えによって宿主細胞DNA内に取り込ませ得る。
【0054】
また、核酸をカプセル化する生分解性ミクロスフェアも遺伝子送達に使用されている。マトリックス、フィルム、ゲルおよびジヒドラジドで誘導体化され、かつ徐放性ミクロスフェアを形成する核酸に架橋されたヒアルロン酸(HA)を含むハイドロゲルのようなミクロスフェアが、核酸を送達するために使用されている。米国特許第6048551号は、ポリ(ラクチド‐グリコリド)(PLGA)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸セルロースアセテート、および遺伝子ベクターをカプセル化するコポリマーミクロスフェアを利用する、徐放性遺伝子送達系を開示している。
【0055】
前記の方法を実行する際に使用される治療的組成物は、所望の送達法に適したキャリアを含有する薬学的組成物中に処方され得る。適切なキャリアとしては、治療的組成物と組み合わされたときに、この治療的組成物の抗腫瘍機能を保持する物質が挙げられる。例としては、滅菌リン酸緩衝液、静菌水のようなあらゆる多数の標準的薬学的キャリアが挙げられるが、これらに限定されない。治療的処方物は可溶化され得、治療的組成物を腫瘍部位へ送達し得る任意の経路を介して投与され得る。可能性のある有効的な投与経路としては、静脈内、非経口、腹膜内、筋肉内、腫瘍内、皮内、器官内、正所性などが挙げられるが、これらに限定されない。静脈内注射のための好ましい処方物は、保存静菌水、滅菌生鮮水の溶液中、および/または注射用滅菌塩化ナトリウムを含むポリ塩化ビニルバッグもしくはポリエチレンバッグ内で希釈された治療的組成物を含む。治療的タンパク質調製物は、好ましくは減圧下で、凍結乾燥され、滅菌粉体として保存され得、次いで注射前に静菌水(例えばベンジルアルコール保存剤が挙げられる)または滅菌水中で再構成され得る。前記方法を使用する癌治療のための投薬量および投与プロトコールは、方法および標的の癌で変化し、一般的に当該分野にて認識される多数の他の要因に依存する。
【0056】
(ウイルスベクターを使用する送達)
本発明の抗体をコードする核酸塩基配列を含むウイルスベクターは、特定の核酸の送達するために使用される。例えば、レトロウイルスベクターが、使用され得る。このレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正確なパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組み込みに必要な構成要素を含む。遺伝子治療で使用する、所望のタンパク質をコードする核酸配列は、一つ以上のベクター内にクローン化され、これによって、遺伝子の患者への送達が容易になる。アデノウイルスは、遺伝子治療に使用され得る別のウイルスベクターである。アデノウイルスは、特に呼吸器上皮へ遺伝子を送達するのに魅力的なビヒクルであり、アデノウイルスベースの送達系の他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞および筋肉である。アデノウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという利点を有する。アデノ随伴ウイルス(AAV)もまた、遺伝子治療での使用が提案されている(米国特許第5,436,146号)。レンタウイルス(Lentavirus)は、遺伝子治療での使用に有望である。
【0057】
(組織培養物中のトランスフェクト細胞、およびその後の患者への送達)
遺伝子治療の別の手法は、電気穿孔、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクトまたはウイルス感染のような方法によって組織培養物中の細胞に遺伝子の移入する工程を包含する。通常、移入の方法としては、選別可能なマーカーの細胞への移入が挙げられる。次いで、細胞は選別を受け、移入遺伝子を取り込み発現している細胞が単離される。次いで、この細胞は患者へ送達される。この方法で核酸は、得られる組み換え細胞をインビボ投与するのに先立って細胞内に導入される。そのような導入は、当該分野で公知の任意の方法(トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、この核酸配列を含むウイルスベクターまたはバクテリオファージベクターを用いる感染、細胞融合、染色体媒介性トランスフェクト、微小核体媒介性トランスフェクト、スフェロプラストなどが挙げられるが、これらに限定されない)によって実行され得る。この技術は、細胞への安定した核酸移入を提供するはずであり、この結果、核酸は、その細胞によって発現可能であり、好ましくは遺伝性であり、そしてその細胞の子孫によって発現可能である。
【0058】
生じる組み換え細胞は、放射線照射され得、当該分野で公知の種々の方法によって患者へ送達され得る。組み換え細胞(例えば、造血幹細胞または前駆細胞)は、好ましくは静脈内に投与される。想定される細胞の使用量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者によって決定され得る。遺伝子治療を目的とする核酸が導入され得る細胞としては、任意の所望の入手可能な細胞型が挙げられ、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、繊維芽細胞、筋細胞、肝細胞、血液細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨大核細胞、顆粒球)、種々の幹細胞または前駆細胞、特に造血幹細胞または前駆細胞(例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
(ワクチン)
本明細書中で使用される場合、用語「ワクチン」は、腫瘍特異的免疫反応を誘発する組成物(例えば、LIGHT抗原およびアジュバント)をいう。これらのワクチンとしては、予防的なもの(新たな腫瘍を予防する)および治療的なもの(親腫瘍を根絶する)が挙げられる。変異体LIGHTをコードするDNAワクチンのようなワクチンベクターは、腫瘍に対する免疫応答を誘発するために使用され得る。ワクチン組成物を一部位(例えば、腫瘍から離れた部位)へ投与することによって、この応答は、患者自身の免疫系により誘発される。この免疫反応は、身体中の腫瘍細胞(例えば、原発腫瘍細胞および転移腫瘍細胞の両方)の根絶をもたらし得る。腫瘍ワクチンを作製する方法は、当該分野で周知である(例えば、米国特許第5,994,523号および同第6,207,147号(これらの各々が、本明細書中で参考として援用される)を参照する)。
【0060】
ワクチンは、薬学的組成物中に一つ以上の腫瘍抗原を含み得る。いくつかの例では、腫瘍抗原は、投与の前に不活化される。他の実施形態では、このワクチンは、一つ以上のさらなる治療薬剤(例えば、サイトカインまたはサイトカイン発現細胞)をさらに含み得る。
【0061】
特定の場合、例えば通常の皮膚生検から得られる、患者から選別された細胞(例えば、繊維芽細胞)は、一般に所望の一タンパク質のうちの一つを発現するよう遺伝的に改変される。あるいは、免疫系における抗原提示細胞として通常役立ち得る患者細胞(マクロファージ、単球、およびリンパ球)はまた、遺伝的に改変されて、所望の抗原のうちの一つ以上が発現され得る。次いで、この抗原発現細胞は、例えば、放射線照射した腫瘍細胞の形態、あるいは、精製天然腫瘍抗原もしくは組換え腫瘍抗原の形態の、患者の腫瘍細胞(例えば、腫瘍抗原)と混合され、例えば、皮下にて免疫化において使用されて、全身性抗腫瘍免疫が誘導される。これらのワクチンは、任意の適切な方法を使用して投与され得、これらの方法としては、上記の方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
(クローン形成アッセイ)
(肺のクローン形成アッセイ)
(材料)
1)DMEM 5% FCS(+p/s、HEPES)
2)コラゲナーゼ4型(Sigma)
3)60μM 6−チオグアニン
4)50ml コニカルチューブ
5)6ウェル組織培養プレート
6)37℃振盪インキュベーター/組織インキュベーター
7)解剖器具:ハサミ、膝状ハサミおよび鉗子
8)70μmナイロン細胞ストレーナー
9)ACK溶解液
10)メタノール
11)0.03%(w/v)メチレンブルー溶液
注意:全ての溶液および器具は滅菌でなければならず、従って無菌操作が使用されるべきである。
【0063】
(コラゲナーゼ培地の調製)
肺一個当たり約25mlの培地にコラゲナーゼを加えて1.5mg/ml濃度の培地を作製する。
【0064】
(肺サンプルの調製)
1.マウスから肺を取り出し、6ウェルのプレートへ移す
2.約200μlの培地を肺に加える
3.膝状ハサミを用いて、肺を小片に切り刻む
4.閉じたハサミの曲線部分を利用して、切り刻んだ肺を5mlコラゲナーゼ培地の50mlコニカルチューブへ移す
5.ウェルへ5mlの培地を加えてピペットで取り出し、残りの肺小片をコニカルチューブへ移す
6.37℃で20分間、175rpmの振盪インキュベーターに置く
7.上清を細胞ストレーナーに通してきれいな50mlコニカルチューブへそそぐ−細胞ストレーナー上の任意の肺小片は、二次消化のためにコニカルチューブへ戻す
a.消化物からの上清を含む試験管を、1500rpmで5分間遠心分離して遠心沈降させる
b.遠心沈降後、上清を捨てる
c.1mlのコラゲナーゼを含まない新鮮培地に、ペレットを再懸濁する
8.5分間ACK溶解する
9.細胞数を数える
10.3×10、3×10、3×10の細胞を12ウェルプレートにプレーティングする
11.60μMの6−チオグアニンを各ウェルに加える
12.プレートを、5% CO、5〜10日間、37℃の組織インキュベーター内に置く。
【0065】
(クローン形成性転移コロニーの収集)
(必ずしも必要ではないが、コロニー数の計数が容易になる)
1.組織培養プレートから培養培地を捨てる
2.各プレートに5mlのメタノールを加えて揺り回し、細胞を固定する。室温で5分間インキュベートする
a.注意:コロニーは白色に変わるはずである
3.メタノールを捨て、各プレートを5mlの蒸留水穏やかにリンスする
a.重要な注意:細胞が固定されるまで、細胞を水と接触させない
4.各プレートに5mlの0.03%(w/v)メチレンブルー溶液を添加する。揺り回してプレート全体が覆われるようにし、室温で5分間インキュベートする
5.染色液を捨て、5mlの蒸留水で穏やかにリンスする
6.プレートを空気乾燥させ、その後、青色のコロニーを計数する
1つのコロニーが、1つのクローン形成性転移細胞を表す。
【0066】
(引用された刊行物)
引用された刊行物は、それらが本発明に関する範囲で参考として援用される。
【0067】
【化1】

【0068】
【化2】

【0069】
【化3】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、TNF/LT/LIGHTファミリーメンバーの間の相互作用に関する現在のモデルを説明する。LTβRは膜LTと膜LIGHTとの両方に結合する一方、HVEMはLIGHTに結合する。可溶性TNF3及びLTα3はTNFRI及びTNFRIIに結合する。
【図2】図2は、LIGHTと抗原特異的T細胞との両方が最適な腫瘍拒絶反応に必要であることを示す。腫瘍細胞(5x10)をCB6F1に接種した。左図がLIGHTでトランスフェクトした腫瘍、右図がコントロールの腫瘍である。14日後、2C T細胞(10x10)をこのマウスに移植し、腫瘍の増殖をモニタリングした。腫瘍増殖曲線を示す。
【図3】図3は、C3B6F1マウス並びにB6/RAG−1−/−マウスにおけるLIGHT発現Ag104L及び親腫瘍の増殖反応速度を示す。A.LIGHTの細胞外ドメインからタンパク質分解部位に対応する4アミノ酸を欠失して腫瘍細胞表面上での安定した発現を確保した。B.バルクもしくはクローン化した、Ag104L親腫瘍細胞、LIGHTでトランスフェクトしたAg104L腫瘍細胞を、LTβRヒトIg、HVEMマウスIg染色し、続いてヒトIgGに対するFITC結合ロバ抗体またはマウスIgGに対するヤギ抗体でそれぞれ染色した(実線)。二次抗体のみで染色した腫瘍細胞を点線で示した。C.C3B6F1マウスに5X10のAg104L親腫瘍細胞(黒ひし形)あるいはLIGHT発現Ag104L腫瘍細胞(白ひし形)を皮下接種した。C3B6F1マウスにおいて、Ag104Lは累進的に増殖したが、Ag104L−LIGHTは拒絶された。D.B6/RAG−1−/−マウスに10のAg104L腫瘍細胞(黒ひし形)あるいはLIGHT発現Ag104L腫瘍細胞(白ひし形)を皮下注射することによって、誘発した。B6/RAG−1−/−マウスでは、双方の腫瘍とも累進的に増殖した。
【図4】図4は、改変されたLIGHTの細胞外ドメインが、精製T細胞反応を共刺激するのに十分であることを示す。A.LIGHTの細胞外ドメイン(アミノ酸85〜239)及び、組み換えタンパク質の精製を容易にするためのフラッグ配列を含む組み換えタンパク質。B.CD3に対する抗体(抗CD3)存在下で、精製T細胞は固定されたLIGHTの細胞外ドメインで刺激された。
【図5】図5は、LIGHT発現Ag104L腫瘍組織において、CD8T細胞の浸潤が増加したことを示す写真説明である。5X10のAg104L、Ag104L−B7.1、またはAg104L−LIGHT腫瘍細胞をC3B6F1マウスに皮下注射した。腫瘍を接種して10〜14日後に腫瘍組織を回収した。腫瘍組織の凍結切片を、記載の通りHE(上図)もしくは抗Th1.2−PE(中図)、抗CD8−PE(下図)で染色した。
【図6−1】図6Aは、Ag104L−LIGHT腫瘍においてLTβR関連性のケモカイン及び接着分子が増加することを説明する。(1)5X10のAg104L、(2)Ag104L−B7.1、または(3)Ag104L−LIGHT腫瘍細胞を、C3B6F1もしくはB6/RAG−1−/−マウスに皮下接種した。腫瘍誘発後10〜14日目に腫瘍組織を回収した。B.同量の腫瘍組織を、プロテアーゼインヒビターを含有するPBS中で完全に粉砕した。遠心分離の後、上清中のSLCをELISAによって測定した。C3B6F1マウスおよびB6/RAG−1−/−マウスの双方から記載のように回収したAg104L−LIGHT腫瘍は、親腫瘍よりも高レベルのSLCを含んでいた。C.Ag104L、Ag104L−B7.1、またはAg104L−LIGHT由来の腫瘍組織を10%中性ホルマリンで固定し、切片にして抗マウスSLC、続いて二次抗体で染色した。発色(赤色)を矢印で示した。バックグラウンドはヘモトキシリンで対比染色した(青色)。D.腫瘍組織から全RNAを単離し、リアルタイム定量RT−PCRを行って接着分子MAdCAM−1及びケモカインSLCの発現を分析した。E.腫瘍組織から精製した全RNAを用いて、LIGHT発現Ag104L及び親腫瘍において示される他のケモカインの発現を分析するために、遺伝子アレイを行った。LIGHT発現腫瘍組織にて、LTβR関連性のケモカイン及び接着分子の増加が認められた。相対的発現レベルを左のパネルに示した。Ag104L−LIGHTによる発現の増加の倍数を右のパネルに示した。全RNAを腫瘍組織から単離し、記載の通りに遺伝子アレイを実施してLIGHT発現Ag104L及び親腫瘍におけるケモカインの発現を分析した。
【図6−2】図6Aは、Ag104L−LIGHT腫瘍においてLTβR関連性のケモカイン及び接着分子が増加することを説明する。(1)5X10のAg104L、(2)Ag104L−B7.1、または(3)Ag104L−LIGHT腫瘍細胞を、C3B6F1もしくはB6/RAG−1−/−マウスに皮下接種した。腫瘍誘発後10〜14日目に腫瘍組織を回収した。B.同量の腫瘍組織を、プロテアーゼインヒビターを含有するPBS中で完全に粉砕した。遠心分離の後、上清中のSLCをELISAによって測定した。C3B6F1マウスおよびB6/RAG−1−/−マウスの双方から記載のように回収したAg104L−LIGHT腫瘍は、親腫瘍よりも高レベルのSLCを含んでいた。C.Ag104L、Ag104L−B7.1、またはAg104L−LIGHT由来の腫瘍組織を10%中性ホルマリンで固定し、切片にして抗マウスSLC、続いて二次抗体で染色した。発色(赤色)を矢印で示した。バックグラウンドはヘモトキシリンで対比染色した(青色)。D.腫瘍組織から全RNAを単離し、リアルタイム定量RT−PCRを行って接着分子MAdCAM−1及びケモカインSLCの発現を分析した。E.腫瘍組織から精製した全RNAを用いて、LIGHT発現Ag104L及び親腫瘍において示される他のケモカインの発現を分析するために、遺伝子アレイを行った。LIGHT発現腫瘍組織にて、LTβR関連性のケモカイン及び接着分子の増加が認められた。相対的発現レベルを左のパネルに示した。Ag104L−LIGHTによる発現の増加の倍数を右のパネルに示した。全RNAを腫瘍組織から単離し、記載の通りに遺伝子アレイを実施してLIGHT発現Ag104L及び親腫瘍におけるケモカインの発現を分析した。
【図7−1】図7は、LIGHTが媒介するAg104L腫瘍環境がナイーブ2C T細胞を強化し、それらを活性化し、そして腫瘍拒絶反応を引き起こすことを示す。A.Ag104L並びにAg104L−LIGHTは、同レベルの抗原Lを発現した。Ag104L(黒実線)もしくはAg104L−LIGHT(灰色実線)腫瘍細胞を抗Ld、続いてマウスIgGに対するFITC結合ヤギ抗体による二次染色を行った。二次抗体のみで染色した腫瘍細胞を点線で示した。B.OT−1/RAG−1−/−マウスに10のAg104LもしくはAg104L−LIGHT腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍誘発後10〜14日後に、3X10のCFSE標識2C TCRトランスジェニックT細胞をこれらのマウスに移植した。2C T細胞移植後48時間、132時間、168時間、および336時間目に、記載の通り腫瘍を枯渇したリンパ節、腫瘍を枯渇していないリンパ節、脾臓、および腫瘍組織を回収した。腫瘍を浸潤するT細胞を陽性選択磁性カラムによって単離した。抗CD−8及び2C TCRクローン型抗体1B2で染色した後に、リンパ節、脾臓、および腫瘍由来の細胞をFACS分析に供した。CD8及び1B2二重陽性の2C T細胞の増殖を示した。C.OT−1/RAG−1−/−マウスに10のAg104LもしくはAg104L−LIGHT腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍誘発後10〜14日後に、3X10のCFSE標識2C TCRトランスジェニックT細胞をこれらのマウスに移植した。2C T細胞移植後48時間および336時間目に、記載の通り腫瘍を枯渇したリンパ節、腫瘍を枯渇していないリンパ節、脾臓、および腫瘍組織を回収した。腫瘍に浸潤するT細胞を陽性選択磁性カラムによって単離した。抗体1B2および活性化マーカーCD62LまたはCD44に対する抗体で染色した後に、リンパ節、脾臓、および腫瘍由来の細胞をFACS分析に供した。1B2陽性2C T細胞によって発現されたCD62LまたはCD44を示した。D.OT−1/RAG−1−/−マウスに10のAg104LもしくはAg104L−LIGHT腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍誘発後10〜14日後に3X10の2C TCRトランスジェニックT細胞をこれらのマウスに移植した。OT−1/RAG−1−/−宿主において、養子移入された2C T細胞はLIGHT発現Ag104Lの増殖を抑制することができたが、親腫瘍においてはできなかった。
【図7−2】図7は、LIGHTが媒介するAg104L腫瘍環境がナイーブ2C T細胞を強化し、それらを活性化し、そして腫瘍拒絶反応を引き起こすことを示す。A.Ag104L並びにAg104L−LIGHTは、同レベルの抗原Lを発現した。Ag104L(黒実線)もしくはAg104L−LIGHT(灰色実線)腫瘍細胞を抗Ld、続いてマウスIgGに対するFITC結合ヤギ抗体による二次染色を行った。二次抗体のみで染色した腫瘍細胞を点線で示した。B.OT−1/RAG−1−/−マウスに10のAg104LもしくはAg104L−LIGHT腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍誘発後10〜14日後に、3X10のCFSE標識2C TCRトランスジェニックT細胞をこれらのマウスに移植した。2C T細胞移植後48時間、132時間、168時間、および336時間目に、記載の通り腫瘍を枯渇したリンパ節、腫瘍を枯渇していないリンパ節、脾臓、および腫瘍組織を回収した。腫瘍を浸潤するT細胞を陽性選択磁性カラムによって単離した。抗CD−8及び2C TCRクローン型抗体1B2で染色した後に、リンパ節、脾臓、および腫瘍由来の細胞をFACS分析に供した。CD8及び1B2二重陽性の2C T細胞の増殖を示した。C.OT−1/RAG−1−/−マウスに10のAg104LもしくはAg104L−LIGHT腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍誘発後10〜14日後に、3X10のCFSE標識2C TCRトランスジェニックT細胞をこれらのマウスに移植した。2C T細胞移植後48時間および336時間目に、記載の通り腫瘍を枯渇したリンパ節、腫瘍を枯渇していないリンパ節、脾臓、および腫瘍組織を回収した。腫瘍に浸潤するT細胞を陽性選択磁性カラムによって単離した。抗体1B2および活性化マーカーCD62LまたはCD44に対する抗体で染色した後に、リンパ節、脾臓、および腫瘍由来の細胞をFACS分析に供した。1B2陽性2C T細胞によって発現されたCD62LまたはCD44を示した。D.OT−1/RAG−1−/−マウスに10のAg104LもしくはAg104L−LIGHT腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍誘発後10〜14日後に3X10の2C TCRトランスジェニックT細胞をこれらのマウスに移植した。OT−1/RAG−1−/−宿主において、養子移入された2C T細胞はLIGHT発現Ag104Lの増殖を抑制することができたが、親腫瘍においてはできなかった。
【図8】図8は、LIGHT発現Ag104Lを腫瘍内に注入すると、確立した親腫瘍が根絶することを示す。10のAg104L腫瘍細胞をC3B6F1マウスに接種し、次いで記載の通り、親腫瘍の誘発後14日目に、10のLIGHT発現腫瘍細胞、もしくはコントロールとしてPBSを腫瘍内に注射した。Ag104L−LIGHTで処理したAg104L腫瘍は拒絶されたが、PBSで処理したものは累進的に増殖した。
【図9】図9は、LIGHTタンパク質をコードする核酸の塩基配列を示す。開始コドンATGは太字で示し、LIGHTにおいて欠失されているタンパク質分解部位をコードする領域には下線を引いている。
【図10】図10は、アデノウイルスによって変異体LIGTHが腫瘍組織に送達されることにより、効果的な免疫反応および腫瘍拒絶反応を可能にすることを示す。C3B6F1マウスに2X10のAg104L腫瘍細胞を接種し、次いで親腫瘍誘発後14日目に記載の通り、5X1010のLIGHT発現アデノウイルス(左)あるいはLacZ発現アデノウイルス(右)を腫瘍内に注射した。腫瘍の体積は式(長さX幅X高さ)/2によって算出した。
【図11】図11は、4T1腫瘍増殖の阻害、および自然転移性腫瘍の減少を示す。0日目に4T1マウスにコントロール、変異体LIGHT、またはLIGHTおよび抗4−1 BBを接種した。7日目に、Ad−LGHT(またはD10 2A)はいくらかの減少を示し、14日目及び17日目にこの体積の減少はよりはっきりした。19日目に腫瘍は除去された。34日目、肺転移に関して組織を検査した。
【図12】図12は、図11の処理群の、クローン原性アッセイの結果を示す。Ad−変異体LIGHTで処置したマウスにおける転移は、41 BBを使用したものとしていないものについて妨げられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍に対するT細胞の有効な抗腫瘍活性を誘導するための方法であって、該方法は、
(a)変異体LIGHTをコードするcDNA分子を該腫瘍に導入する工程;
および
(b)該cDNA分子を発現させる工程、を包含する方法。
【請求項2】
変異体LIGHT発現腫瘍細胞を含む、治療ワクチン。
【請求項3】
腫瘍細胞中に変異体LIGHTおよび腫瘍抗原を含む、予防ワクチン。
【請求項4】
ナイーブT細胞を初回抗原刺激するために必要とされるケモカイン、接着分子、および同時刺激分子を発現するリンパ様微小環境を作製することによって、腫瘍を破壊または拒絶するための方法であって、該方法は、
(a)変異体LIGHTをコードするcDNA分子を該腫瘍に導入する工程;
および
(b)該cDNA分子を発現させる工程、を包含する方法。
【請求項5】
前記腫瘍が固形腫瘍である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
LIGHTタンパク質の79〜82位に由来する、タンパク質分解性部位EKLIをコードしない変異体cDNA。
【請求項7】
LIGHTの85〜239位およびフラッグ配列に由来するアミノ酸配列を有する、変異体LIGHTタンパク質。
【請求項8】
組換えタンパク質である、請求項7に記載の変異体LIGHTタンパク質。
【請求項9】
プロテアーゼ消化のための部位を有さない、変異体LIGHTタンパク質。
【請求項10】
変異体LIGHTで形質転換された、宿主細胞。
【請求項11】
変異体LIGHT cDNA分子を有する、ベクター。
【請求項12】
アデノウイルスベクターである、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
候補抗腫瘍化合物をスクリーニングするための方法であって、該方法は、
(a)変異体LIGHT発現細胞およびコントロール細胞を得る工程;
(b)該候補抗腫瘍化合物を該LIGHT発現細胞およびコントロール細胞に投与する工程;ならびに
(c)コントロール細胞と比較して該変異体LIGHT発現細胞における腫瘍細胞の減少または死滅が起こるか否かを決定する工程、を包含する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−516694(P2007−516694A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533733(P2006−533733)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018631
【国際公開番号】WO2005/002628
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505403289)ザ ユニバーシティー オブ シカゴ (4)
【Fターム(参考)】