説明

変速操作装置

【課題】ハンドルグリップの回動操作の回動軸から放射方向への大型化を抑制する変速操作装置を提供する。
【解決手段】二輪車のハンドルバー2に備えられる変速操作装置1において、ハンドルバー2が挿通する第1円筒部3aを有する回動基準部材3と、第1円筒部3aが挿通する第2円筒部5aを有し、回動基準部材3に対して回動可能に設けられた回動部材5と、回動部材5に固定された被検出体6と、被検出体6の回動を検出する検出部7と、回動部材5に当接し第1円筒部3aが挿通する円筒部材8と、第1円筒部3aが挿通し円筒部材8を回動部材5に回動部材5の回動軸方向に押す弾性部材9と、回動部材5と円筒部材8とのそれぞれに設けられ、回動部材5の回動動作を操作者に認識させる操作感発生部と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車のハンドルで、二輪車の変速装置の変速操作を行う変速操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の変速操作装置は、特許文献1に開示されるものが知られている。この変速操作装置は、変速装置と、コントロールユニットと、動力ユニットを備える変速操作装置において、目標変速段をハンドルグリップの回動操作によって指示するとともに、指示された目標変速段を検知するシフトスイッチを前記ハンドルグリップの近傍に配設したものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−26174号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の変速操作装置は、前記シフトスイッチを内蔵するケースの内周に、樹脂で略円弧状に成形されたノッチレバーが嵌装されており、前記ノッチレバーの一部は、前記ケースとの間に隙間を形成する細い変形部を構成しており、その内側には、前記ハンドルグリップの端部に設けたギヤの歯に係合するノッチが突設されている。而して、ライダーが、前記ハンドルグリップを回動させると、これとともに回動する前記ギヤの歯が、前記ノッチレバーのノッチを乗り越える毎に前記ハンドルグリップの回動にクリック感が与えられるものであった。尚、前記ギヤの歯が、前記ノッチレバーのノッチを乗り越えるとき、前記ノッチレバーの変形部が撓み変形するものであった。
【0005】
従来の変速操作装置は、前記ハンドルグリップの回動操作の回動軸から放射方向に、前記ギヤと前記ノッチレバーとを配置する構成であるため、前記ハンドルグリップの回動操作の回動軸から放射方向に大型化する問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は前述した問題点に着目し、ハンドルグリップの回動操作の回動軸から放射方向への大型化を抑制する変速操作装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における変速操作装置は、二輪車のハンドルバーに備えられる変速操作装置において、ハンドルバーが挿通する第1円筒部を有する回動基準部材と、前記第1円筒部が挿通する第2円筒部を有し、前記回動基準部材に対して回動可能に設けられた回動部材と、前記回動部材に固定された被検出体と、前記被検出体の回動を検出する検出部と、前記回動部材に当接し前記第1円筒部が挿通する円筒部材と、前記第1円筒部が挿通し前記円筒部材を前記回動部材に前記回動部材の回動軸方向に押す弾性部材と、前記回動部材と前記円筒部材とのそれぞれに設けられ、前記回動部材の回動動作を操作者に認識させる操作感発生部と、を備えたものである。
【0008】
また、前記操作感発生部は、前記回動部材と前記円筒部材とのそれぞれに、凹凸部を備えたものである。
【0009】
また、前記検出部は、前記回動部材と前記円筒部材とに設けた前記凹凸部の位置に応じた信号を車両制御装置に出力するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、ハンドルグリップの回動操作の回動軸から放射方向への大型化を抑制する変速操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の変速操作装置の上面図。
【図2】図1中A−A線の断面図。
【図3】操作手段の要部斜視図。
【図4】円筒部材の一部を切り欠いた斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態を説明するが、以下、自動二輪車のハンドルバーに回動可能に設けられ、ハンドルグリップの操作量(回動角)を検出する変速操作装置に適用した場合について説明する。
【0013】
変速操作装置1は、アルミニウムや鉄等からなる筒状のハンドルバー2に固定されるものであり、ハンドルバー2が挿通する第1円筒部3aを有する回動基準部材3と、第1円筒部3aが挿通する第2円筒部5aを有し、ハンドルグリップである操作部4とともに回動する回動部材5と、回動部材5に固定された被検出体である磁石6と、磁石6の回動を検出する検出部7と、第1円筒部3aが挿通する円筒部材8と、第1円筒部3aが挿通するとともに、円筒部材8を回動部材5に押す弾性部材であるコイルバネ9と、回動基準部材3、磁石6、検出部7、円筒部材8及びコイルバネ9を収納するハウジング10とを備えている。なお、11は、回路基板であり、12は、電気コードである。
【0014】
回動基準部材3は、合成樹脂材料、例えば、ポリフェニレンオキシド(PPO)やポリフェニレンエーテル(以下、PPEという)から成り、ハンドルバー2が挿通する第1円筒部3aを備えている。第1円筒部3aの外周面で、回動部材5と摺動する。なお、回動とは、正逆両方向に円運動することである。
【0015】
第1円筒部3aの外側に、第1円筒部3aに沿うように設けた壁部3bを備えるとともに、第1円筒部3aと壁部3bとを連結する連結部3cとを備えている。第1円筒部3a、壁部3b及び連結部3cによって、回動部材5、円筒部材8及びコイルバネ9を収納する第1収納部3dを形成している。この第1収納部3dは、第1円筒部3aを囲むように環状に形成されている。
【0016】
また、回動基準部材3は、壁部3bの一部を構成する第2収納部3eを備えている。この第2収納部3eは、壁部3bの外側に設けられており、図2中右側(ハンドルグリップ4とは反対の側)に開口を備えている。この第2収納部3eには、検出部7と回路基板11が、収納されており、この第2収納部3e内は、エポキシ樹脂等からなる封止部材13が充填されている。この封止部材13は、熱などによって硬化する性質を備えており、第2収納部3eに収納した検出部7と回路基板11を強固に固定するものである。
【0017】
操作部4は、ハンドルグリップであり、本実施形態では、ハンドルグリップ4は、ポリアセタール(以下、POMという)等の合成樹脂材料からなる円筒形状のスリーブ4aと、このスリーブ4aの外側を覆うようにゴム材からなるラバーグリップ4bとで構成されている。このラバーグリップ4bが、二輪車を運転する操作者(ライダー)が把持する把持部である。スリーブ4aは、ハンドルバー2の外周部を覆うように取り付けられている。すなわち、スリーブ4a内をハンドルバー2が挿通している。スリーブ4aは、ハンドルバー2を軸に回動可能である。なお、本実施形態では、スリーブ4aが、回動部材5と一体に形成されている。
【0018】
回動部材5は、POM等の合成樹脂材料からなり、第1円筒部3aが挿通する第2円筒部5aを備え、回動基準部材3に対して回動可能に設けられている。
【0019】
回動部材5の第2円筒部5aの左側には、環状の鍔部5bを備えており、この鍔部5bの外周に磁石6が固定されている。磁石6は、回動部材5とともに回動する。
【0020】
図2中、鍔部5bの左側には、鍔部5bより直径が小さい当接部5cが、ハンドルグリップ4側に突出している。この当接部5cは、ハウジング10の内面に当接するものである。
【0021】
回動部材5は、円筒部材8と当接する箇所、本実施形態では、第2円筒部5aの端部に、複数の凹凸を備えた凹凸部からなる操作感発生部5dを備えている。
【0022】
磁石6は、焼結材料や合成樹脂にネオジム系やフェライト系などの磁粉を混練りした材料からなり、圧縮成形や射出成形によって形成されている。磁石6は、円筒形状であり、回動部材5にインサート成形や圧入などにより所定位置に固定されている。磁石6は、回動部材5の回動に同期して回動することによって、検出部7に対して、磁束変化を発生させることが可能になる。
【0023】
検出部7は、ホール素子やMR素子等の半導体素子からなる磁気検出素子であり、回動基準部材3の第2収納部3eに配設固定され、磁石6の回動に応じて変化する磁束変化を信号に変換し、回路基板11を介し、かかる信号を電気コード12を通じて外部に設けたエンジンコントロールユニットである車両制御装置に出力するものである。
【0024】
円筒部材8は、POMやPPEなどの摩擦係数が小さい合成樹脂からなり、第1円筒部3aが挿通する円筒形状をしている。円筒部材8は、第1円筒部3aに沿って移動可能に設けられている。また、円筒部材8の円筒部分の内面には、第1円筒部3aが挿通する部分より内径が大きな段差からなる収納部8aを備えている。
【0025】
また、円筒部材8は、回動部材5と当接する箇所、本実施形態では、図2中、円筒部材8の左側の端部に、複数の凹凸を備えた凹凸部からなる操作感発生部8bを備えている。
【0026】
コイルバネ9は、バネ性金属材料から形成される線材からなり、螺旋形状に形成されている。コイルバネ9は、その内側を第1円筒部3aが挿通しており、回動基準部材3の第1収納部3dに配設され、円筒部材8をハンドルバー方向(回動部材5の回動軸方向)に押すものである。
【0027】
コイルバネ9が、円筒部材8をハンドルグリップ4方向に押し付けることによって、円筒部材8が、回動部材5に押し付けられている。回動部材5と円筒部材8の当接箇所には、それぞれ凹凸部からなる操作感発生部5d、8bが設けられていることによって、回動部材5の操作感発生部5dと円筒部材8の操作感発生部8bとは、ある所定角度において嵌合している。
【0028】
操作者が、ハンドルグリップ4を回動操作すると、ハンドルグリップ4とともに回動部材5が回動し、回動部材5と円筒部材8の操作感発生部5d、8bの嵌合がはずれる。さらに、ハンドルグリップ4を回動操作すると、再び、回動部材5と円筒部材8の操作感発生部5d、8bが嵌合する。この操作感発生部5d、8bの噛み合いによって、回動部材5(ハンドルグリップ4)の回動にクリック感を付与し、回動部材5(ハンドルグリップ4)の回動動作を操作者に認識させている。
【0029】
また、操作者が、ハンドルグリップ4を把持して回動操作すると、この回動操作力は、ハンドルグリップ4を介して回動部材5に伝わり磁石6が回動し、磁束変化を検出部7が検出する。
【0030】
ハウジング10は、アルミニウム等の非磁性金属材料をはじめとする各種金属材料もしくは合成樹脂材料からなる第1ハウジング10aと第2ハウジング10bとで構成されている。ハウジング10は、回動基準部材3、回動部材5、磁石6、検出部7、円筒部材8、コイルバネ9を収納するものである。
【0031】
なお、ハウジング10は、その内面で、回動部材5の当接部5cと当接することで、コイルバネ9によって、ハンドルグリップ4方向に押される回動部材5の移動を規制するものである。
【0032】
回路基板11は、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸した絶縁材料からなり、所定の配線パターンが形成されており、検出部7及びコンデンサ等からなる図示しない電子部品等が半田等により電気的に固定されている。また、回路基板11には、前記エンジンコントロールユニットと接続される電気コード12が、半田により電気的に接続されている。回路基板11は、検出部7からの前記信号を前記エンジンコントロールユニットに伝達するものである。
【0033】
電気コード12は、銅などの導電性金属をポリ塩化ビニル(PVC)やフッ素樹脂等の絶縁材で被覆したものであり、検出部7に回路基板11を介し電源を供給し、また、前記信号を前記エンジンコントロールユニットに接続するものである。
【0034】
以上の構成によって、ハンドルグリップ4の回動操作の回動軸から放射方向への大型化を抑制する変速操作装置1を提供することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、スリーブ4aが回動部材5と一体に形成されているが、別体であってもよい。
【0036】
また、操作感発生部5d、8bの形状は、本実施形態の形状に限定されるものではなく、本発明の要旨に合致するものであれば、適宜設定して良い。
【0037】
また、検出部7は、回動部材5と円筒部材8とに設けた操作感発生部5d、8bの凹凸部の位置に応じた信号を前記エンジンコントロールユニットに出力するものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 変速操作装置
2 ハンドルバー
3 回動基準部材
3a 第1円筒部
4 操作部(ハンドルグリップ)
5 回動部材
5a 第2円筒部
5d 操作感発生部(凹凸部)
6 被検出体(磁石)
7 検出部
8 円筒部材
8b 操作感発生部(凹凸部)
9 弾性部材(コイルバネ)
10 ハウジング



【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車のハンドルバーに備えられる変速操作装置において、ハンドルバーが挿通する第1円筒部を有する回動基準部材と、前記第1円筒部が挿通する第2円筒部を有し、前記回動基準部材に対して回動可能に設けられた回動部材と、前記回動部材に固定された被検出体と、前記被検出体の回動を検出する検出部と、前記回動部材に当接し前記第1円筒部が挿通する円筒部材と、前記第1円筒部が挿通し前記円筒部材を前記回動部材に前記回動部材の回動軸方向に押す弾性部材と、前記回動部材と前記円筒部材とのそれぞれに設けられ、前記回動部材の回動動作を操作者に認識させる操作感発生部と、を備えたことを特徴とする変速操作装置。
【請求項2】
前記操作感発生部は、前記回動部材と前記円筒部材とのそれぞれに凹凸部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の変速操作装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記回動部材と前記円筒部材とに設けた前記凹凸部の位置に応じた信号を車両制御装置に出力することを特徴とする請求項2に記載の変速操作装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−10481(P2013−10481A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146010(P2011−146010)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】