説明

変速機

【課題】スリーブへの荷重の伝達効率を向上させることができる変速機を提供すること。
【解決手段】第1の油路9a及び第2の油路9bを有するシャフト9と、シャフトに外嵌されるとともに、第1の油路に通ずる第1のシリンダ部4dを有し、第2の油路に通ずる第2のシリンダ部4eを有するハブ4と、第1のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第1のピストン2と、第2のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第2のピストン3と、ハブの外周で軸方向にスライド可能にハブと係合するとともに、第1のピストンの押圧を受けることにより軸方向の一方にスライドを案内する第1のカム部1bを有し、第2のピストンの押圧を受けることにより軸方向の他方にスライドを案内する第2のカム部1cを有するスリーブ1と、シャフトの外周で回転自在に支承されるとともに、スリーブと直接又は間接的に係合可能なギア10、11と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクロナイザーを有する変速機に関し、特に、スリーブへの荷重の伝達効率を向上させることができる変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
変速ギアを移動させて変速ギアを噛合させることにより1速から2速へギアをシフトさせるマニュアル方式の変速機においては、シンクロナイザーを有する変速機がある。シンクロナイザーを有する変速機では、原動機からの動力を変速して伝達させるシャフトと、前記シャフトに嵌着されたハブと、前記シャフトに回転自在に支承されたギアと、前記ギアと前記ハブとの回転を同期させるシンクロナイザリングと、前記シャフトの軸方向にスライドすることによって前記ギア及び前記シンクロナイザリングと前記ハブとを連結可能にするスリーブと、を備えるものがある。従来のシンクロナイザーを有する変速機では、スリーブのスライド動作をアクチュエータによって行うもの(特許文献1参照)や、油圧ピストンによってスリーブをスライドさせるとともに油圧ピストンのスライドの戻しをスプリングによって行うものがある(特許文献2、3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−277890号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第102219513号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102219515号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにアクチュエータによってスリーブのスライド動作を行っていたのでは、スリーブへの荷重の伝達効率が低下するおそれがある。また、特許文献2、3のように油圧ピストンによってスリーブをスライドさせるとともにスライドの戻しをスプリングによって行ったのでは、スリーブのスライドの際、スプリングよりも大きな荷重を出すための高い油圧が必要となり、油圧ピストンによるスリーブへの荷重の伝達効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、スリーブへの荷重の伝達効率を向上させることができる変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の視点においては、変速機において、第1の油路を有するとともに、前記第1の油路と仕切られた第2の油路を有するシャフトと、前記シャフトに外嵌されるとともに、前記第1の油路に通ずる第1のシリンダ部を有し、前記第2の油路に通ずる第2のシリンダ部を有するハブと、前記第1のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第1のピストンと、前記第2のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第2のピストンと、前記ハブの外周で軸方向にスライド可能に前記ハブと係合するとともに、前記第1のピストンの押圧を受けることにより軸方向の一方にスライドを案内する第1のカム部を有し、前記第2のピストンの押圧を受けることにより軸方向の他方にスライドを案内する第2のカム部を有するスリーブと、前記シャフトの外周で回転自在に支承されるとともに、前記スリーブと直接又は間接的に係合可能なギアと、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の前記変速機において、前記ギアと前記ハブの間に配されるとともに、前記ギアと直接又は間接的に摩擦係合し、前記スリーブと係合可能なシンクロナイザリングを備えることが好ましい。
【0008】
本発明の第2の視点においては、変速機において、第1の油路を有するとともに、前記第1の油路と仕切られた第2の油路を有するシャフトと、前記シャフトに外嵌されるとともに、前記第1の油路に通ずる第1のシリンダ部を有し、前記第2の油路に通ずる第2のシリンダ部を有するハブと、前記第1のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第1のピストンと、前記第2のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第2のピストンと、前記ハブの外周で軸方向にスライド可能に前記ハブと係合するとともに、前記第1のピストンの押圧を受けることにより軸方向の一方にスライドを案内する第1のカム部を有し、前記第2のピストンの押圧を受けることにより軸方向の他方にスライドを案内する第2のカム部を有するスリーブと、前記シャフトの外周で回転自在に支承されるとともに、前記ハブの軸方向の一方の側に配され、かつ、前記スリーブと直接又は間接的に係合可能な第1のギアと、前記シャフトの外周で回転自在に支承されるとともに、前記ハブの軸方向の他方の側に配され、かつ、前記スリーブと直接又は間接的に係合可能な第2のギアと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明(請求項1−3)によれば、シャフト軸内からの油圧で直接スリーブを動作させる構造を採用することにより、マニュアルトランスミッションのコントロール部品(スプリング、クラッチ等)及びシフトアクチュエータを用いる従来の構造よりも、スリーブへの荷重の伝達効率を向上させることができる。
【0010】
本発明(請求項1−3)によれば、コントロール部品(スプリング、クラッチ等)及びシフトアクチュエータが不要となり、部品点数やコストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態1について図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る変速機の構成を模式的に示した断面図である。図2は、本発明の実施形態1に係る変速機の構成を模式的に示した(図1の)A−A´間の部分断面図である。
【0012】
変速機は、スリーブ1と、第1のピストン2と、第2のピストン3と、ハブ4と、第1のシンクロナイザリング5と、第2のシンクロナイザリング6と、第1のピース7と、第2のピース8と、シャフト9と、第1のギヤ10と、第2のギヤ11と、シールプレート12と、ニードルベアリング13と、キー14と、キースプリング15と、シャフト16と、を有する。
【0013】
スリーブ1は、ハブ4の外周でスプライン係合するとともに、ハブ4に対して軸方向にスライド可能な環状部材である。スリーブ1は、内周面にハブ4の外スプライン4aと軸方向にスライド可能にスプライン係合する内スプライン1aを有する。内スプライン1aは、スリーブ1のスライドにより、第1のシンクロナイザリング5の外スプライン5a及び第1のピース7の外スプライン7a、又は、第2のシンクロナイザリング6の外スプライン6a及び第2のピース8の外スプライン8aとスプライン係合することが可能である。また、一部の内スプライン1aには、キースプリング15によってキー14が押付けられている。スリーブ1は、第1のピストン2と対応する内周面に溝状に形成された第1のカム部1bを有する。第1のカム部1bは、第1のピストン2の押圧力を受けることによりスリーブ1を第1のピース7(第1のシンクロナイザリング5)側にスライドするように案内するカム面を有する。第1のカム部1bは、スリーブ1の内周面の180°反対側にも配設されている。また、スリーブ1は、内周面であって第1のカム部1bと90°をなす部位であって第2のピストン3と対応する内周面に溝状に形成された第2のカム部1cを有する。第2のカム部1cは、第2のピストン3の押圧力を受けることによりスリーブ1を第2のピース8(第2のシンクロナイザリング6)側にスライドするように案内するカム面を有する。第2のカム部1cは、スリーブ1の内周面の180°反対側にも配設されている。
【0014】
第1のピストン2は、ハブ4の第1のシリンダ部4dで半径方向にスライド可能に挿入されるとともに、先端部がスリーブ1の第1のカム部1bを押圧してスリーブ1を第1のシンクロナイザリング5(第1のピース7)側にスライドさせる部材である。第1のピストン2の外周面には溝部が形成されており、ハブ4の第1のシリンダ部4dを密封するためのシールリング2aが当該溝部に装着されている。
【0015】
第2のピストン3は、ハブ4の第2のシリンダ部4eで半径方向にスライド可能に挿入されるとともに、先端部がスリーブ1の第2のカム部1cを押圧してスリーブ1を第2のシンクロナイザリング6(第2のピース8)側にスライドさせる部材である。第2のピストン3の外周には溝部が形成されており、ハブ4の第2のシリンダ部4eを密封するためのシールリング3aが当該溝部に装着されている。
【0016】
ハブ4は、シャフト9の外周に連結(外嵌)された環状部材である。ハブ4は、スリーブ1の内スプライン1aと軸方向にスライド可能にスプライン係合する外スプライン4aを有する。ハブ4は、シャフト9の第1の油穴9cに通ずる第1の油穴4bを有する。ハブ4は、シャフト9の第2の油穴9dに通ずる第2の油穴4cを有する。ハブ4は、第1の油穴4bに通ずるとともに、第1のピストン2が半径方向にスライド可能に挿入される第1のシリンダ部4dを有する。ハブ4は、第2の油穴4cに通ずるとともに、第2のピストン3が半径方向にスライド可能に挿入される第2のシリンダ部4eを有する。ハブ4は、キー14を軸方向にスライド可能に収容するための溝部4fを有する。
【0017】
第1のシンクロナイザリング5は、第1のピース7と摩擦係合することによりシャフト9と第1のギヤ10の回転差をなくする(同期させる)リング状の部材である。第1のシンクロナイザリング5は、第1のピース7の摩擦係合部7cの外周であってハブ4と第1のピース7の間に配される。第1のシンクロナイザリング5は、スリーブ1のスライドにより、スリーブ1とともにスライドするキー14によって第1のピース7に押付けられる。第1のシンクロナイザリング5は、スリーブ1の内スプライン1aと連結(係合)可能な外スプライン5aを有する。第1のシンクロナイザリング5の内周面は、ハブ4側から第1のピース7側にかけて直径が徐々に大きくなるように構成された円錐状の摩擦面であり、第1のピース7の摩擦係合部7cの摩擦面と摩擦係合(円錐クラッチによる摩擦係合)する。
【0018】
第2のシンクロナイザリング6は、第2のピース8と摩擦係合することによりシャフト9と第2のギヤ11の回転差をなくする(同期させる)リング状の部材である。第2のシンクロナイザリング6は、第2のピース8の摩擦係合部8cの外周であってハブ4と第2のピース8の間に配される。第2のシンクロナイザリング6は、スリーブ1のスライドにより、スリーブ1とともにスライドするキー14によって第2のピース8に押付けられる。第1のシンクロナイザリング5は、スリーブ1の内スプライン1aと連結可能な外スプライン6aを有する。第1のシンクロナイザリング5の内周面は、ハブ4側から第2のピース8側にかけて直径が徐々に大きくなるように構成された円錐状の摩擦面であり、第2のピース8の摩擦係合部8cの摩擦面と摩擦係合(円錐クラッチによる摩擦係合)する。
【0019】
第1のピース7は、スリーブ1と連結することによりシャフト9と第1のギア10を一体に回転させるための環状部材である。第1のピース7は、第1のギア10の外スプライン10aの外周であってハブ4と第1のギア10の間に配される。第1のピース7は、外周面にスリーブ1の内スプライン1aと連結可能な外スプライン7aを有する。第1のピース7は、内周面に第1のギア10の外スプライン10aと係合する内スプライン7bを有する。第1のピース7は、第1のシンクロナイザリング5の内周面と摩擦係合する摩擦係合部7cを有する。摩擦係合部7cは、ハブ4側から第1のギア10側にかけて直径が徐々に大きくなるように構成された円錐状の摩擦面を有し、第1のシンクロナイザリング5の摩擦面と摩擦係合(円錐クラッチによる摩擦係合)する。なお、第1のピース7は、第1のギア10と一体に構成されていてもよい。
【0020】
第2のピース8は、スリーブ1と連結することによりシャフト9と第2のギア11を一体に回転させるための環状部材である。第2のピース8は、第2のギア11の外スプライン11aの外周であってハブ4と第2のギア11の間に配される。第2のピース8は、外周面にスリーブ1の内スプライン1aと連結可能な外スプライン8aを有する。第2のピース8は、内周面に第2のギア11の外スプライン11aと係合する内スプライン8bを有する。第2のピース8は、第2のシンクロナイザリング6の内周面と摩擦係合する摩擦係合部8cを有する。摩擦係合部8cは、ハブ4側から第2のギア11側にかけて直径が徐々に大きくなるように構成された円錐状の摩擦面を有し、第2のシンクロナイザリング6の摩擦面と摩擦係合(円錐クラッチによる摩擦係合)する。なお、第2のピース8は、第2のギア11と一体に構成されていてもよい。
【0021】
シャフト9は、クラッチ装置(図示せず)を介してエンジン(図示せず)の動力が伝達される駆動軸であり、軸受け(図示せず)を介してケーシング(図示せず)に回転自在に取り付けられている。シャフト9は、軸方向の片側に形成された第1の油路9aを有する。シャフト9は、第1の油路9aの反対側から形成されるとともに、第1の油路9aよりも直径の小さい第2の油路9bを有する。第1の油路9a及び第2の油路9bは、油圧がそれぞれ別々にコントロールされた圧油を供給する油圧源(図示せず)に接続されている。第1の油路9aと第2の油路9bの境界部分には、第1の油路9a側から、第1の油路9aと第2の油路9bを仕切るシールプレート12が圧入されている。シャフト9の外周には、ハブ4が外嵌されている。シャフト9は、第1の油路9aから分岐するとともに、ハブ4の第1の油穴4bに通ずる第1の油穴9cを有する。シャフト9は、第2の油路9bから分岐するとともに、ハブ4の第2の油穴4cに通ずる第2の油穴9dを有する。シャフト9の外周であってハブ4の両隣には、ニードルベアリング13を介して第1のギア10及び第2のギア11は回転自在に配されている。シャフト9は、第1のギヤ10を位置決めする第1の鍔部9eを有する。シャフト9には、第2のギア11の位置決めをする係止部材17が装着されている。
【0022】
第1のギヤ10は、ハブ4の軸方向片側であって、シャフト9の外周にてニードルベアリング13を介して回動自在に配された円筒状の歯車部材である。第1のギヤ10は、外周面のハブ4寄りの部位に第1のピース7の内スプライン7bと係合する外スプライン10aを有する。第1のギヤ10は、外周面にシャフト16の第1のギア部16aと噛み合うギア部10bを有する。
【0023】
第2のギヤ11は、ハブ4に対し第1のギア10と反対側のであって、シャフト9の外周にてニードルベアリング13を介して回動自在に配された円筒状の歯車部材である。第2のギヤ11は、外周面のハブ4寄りの部位に第2のピース8の内スプライン8bと係合する外スプライン11aを有する。第2のギヤ11は、外周面にシャフト16の第2のギア部16bと噛み合うギア部11bを有する。
【0024】
キー14は、シャフト9と第1のギア10又は第2のギア11の回転を同期させる際に、スリーブ1とともにスライドして1のシンクロナイザリング5又は第2のシンクロナイザリング6を軸方向に押付ける柱状部材である。キー14は、ハブ4の4つの溝部4fにスライド可能に収容される。キー14は、スリーブ1の内スプライン1aと噛み合う溝を有する。各キー14は、内周側からキースプリング15によってスリーブ1に押付けられている。
【0025】
シャフト16は、シャフト9の動力を出力軸(図示せず)に伝達するための従動軸である。シャフト16は、第1のギア10と噛み合う第1のギア部16aを有し、第2のギア11と噛み合う第2のギア部16bを有する。
【0026】
次に、実施形態1に係る変速機の動作について図面を用いて説明する。図3〜7は、本発明の実施形態1に係る変速機の動作を説明するための部分断面図である。図3はニュートラル状態、図4は第1速のシフトを入れる際、図5は第1速のシフトを抜く際、図6は第2速のシフトを入れる際、図7は第2速のシフトを抜く際に関するものである。
【0027】
図3を参照すると、ニュートラル状態では、第1のピストン2に加わる油圧Aと、第2のピストン3に加わる油圧Bを等しく与えることにより、第1のピストン2によってスリーブ1が図3の右側に押されることにより発生する荷重F1と、第2のピストン3によってスリーブ1が図3の左側に押されることにより発生する荷重F2と、が等しくなり、スリーブ1は第1のシンクロナイザリング5、第2のシンクロナイザリング6、第1のピース7、及び第2のピース8と連結せず、中立が確保される。
【0028】
図4を参照すると、第1速のシフトを入れる際は、第1のピストン2に加わる油圧Aを、第2のピストン3に加わる油圧Bよりも大きく与えることにより、第1のピストン2によってスリーブ1が図4の右側に押されることにより発生する荷重F1が、第2のピストン3によってスリーブ1が図4の左側に押されることにより発生する荷重F2よりも大きくなり、スリーブ1が図4の右側にスライドし、スリーブ1と第1のシンクロナイザリング5及び第1のピース7が連結される。これにより、シャフト9がハブ4、スリーブ1、及び第1のピース7を介して第1のギヤ10に連結され、シャフト9と第1のギヤ10が一体に回転する。これによって、シャフト9の回転は第1のギヤ10を介してシャフト16に伝達される。
【0029】
図5を参照すると、第1速のシフトを抜く際は、第2のピストン3に加わる油圧Bを、第1のピストン2に加わる油圧Aよりも大きく与えることにより、第2のピストン3によってスリーブ1が図5の左側に押されることにより発生する荷重F2が、第1のピストン2によってスリーブ1が図5の右側に押されることにより発生する荷重F1よりも大きくなり、スリーブ1が図5の左側にスライドする。これによって、スリーブ1と第1のシンクロナイザリング5及び第1のピース7の連結が解除され、シャフト9の回転はシャフト16に伝達されなくなる。
【0030】
図6を参照すると、第2速のシフトを入れる際は、第2のピストン3に加わる油圧Bを、第1のピストン2に加わる油圧Aよりも大きく与えることにより、第2のピストン3によってスリーブ1が図6の左側に押されることにより発生する荷重F2が、第1のピストン2によってスリーブ1が図6の右側に押されることにより発生する荷重F1よりも大きくなり、スリーブ1が図6の左側にスライドし、スリーブ1と第2のシンクロナイザリング6及び第2のピース8が連結される。これにより、シャフト9がハブ4、スリーブ1、及び第2のピース8を介して第2のギヤ11に連結され、シャフト9と第2のギヤ11が一体に回転する。これによって、シャフト9の回転は第2のギヤ11を介してシャフト16に伝達される。
【0031】
図7を参照すると、第2速のシフトを抜く際は、第1のピストン2に加わる油圧Aを、第2のピストン3に加わる油圧Bよりも大きく与えることにより、第1のピストン2によってスリーブ1が図7の右側に押されることにより発生する荷重F1が、第2のピストン3によってスリーブ1が図7の左側に押されることにより発生する荷重F2よりも大きくなり、スリーブ1が図7の右側にスライドする。これによって、スリーブ1と第2のシンクロナイザリング6及び第2のピース8の連結が解除され、シャフト9の回転はシャフト16に伝達されなくなる。
【0032】
実施形態1によれば、シャフト軸内からの油圧で直接スリーブを動作させる構造を採用することにより、マニュアルトランスミッションのコントロール部品(スプリング、クラッチ等)及びシフトアクチュエータを用いる従来の構造よりも、スリーブへの荷重の伝達効率を向上させることができる。また、コントロール部品(スプリング、クラッチ等)及びシフトアクチュエータが不要となり、部品点数やコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態1に係る変速機の構成を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る変速機の構成を模式的に示した(図1の)A−A´間の部分断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る変速機の動作(ニュートラル状態)を説明するための部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る変速機の第1速のシフトを入れる際の動作を説明するための部分断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る変速機の第1速のシフトを抜く際の動作を説明するための部分断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る変速機の第2速のシフトを入れる際の動作を説明するための部分断面図である。
【図7】本発明の実施形態1に係る変速機の第2速のシフトを抜く際の動作を説明するための部分断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 スリーブ
1a 内スプライン
1b 第1のカム部
1c 第2のカム部
2 第1のピストン
2a シールリング
3 第2のピストン
3a シールリング
4 ハブ
4a 外スプライン
4b 第1の油穴
4c 第2の油穴
4d 第1のシリンダ部
4e 第2のシリンダ部
4f 溝部
5 第1のシンクロナイザリング
5a 外スプライン
6 第2のシンクロナイザリング
6a 外スプライン
7 第1のピース
7a 外スプライン
7b 内スプライン
7c 摩擦係合部
8 第2のピース
8a 外スプライン
8b 内スプライン
8c 摩擦係合部
9 シャフト
9a 第1の油路
9b 第2の油路
9c 第1の油穴
9d 第2の油穴
9e 第1の鍔部
10 第1のギヤ
10a 外スプライン
10b ギア部
11 第2のギヤ
11a 外スプライン
11b ギア部
12 シールプレート
13 ニードルベアリング
14 キー
15 キースプリング
16 シャフト
16a 第1のギア部
16b 第2のギア部
17 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の油路を有するとともに、前記第1の油路と仕切られた第2の油路を有するシャフトと、
前記シャフトに外嵌されるとともに、前記第1の油路に通ずる第1のシリンダ部を有し、前記第2の油路に通ずる第2のシリンダ部を有するハブと、
前記第1のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第1のピストンと、
前記第2のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第2のピストンと、
前記ハブの外周で軸方向にスライド可能に前記ハブと係合するとともに、前記第1のピストンの押圧を受けることにより軸方向の一方にスライドを案内する第1のカム部を有し、前記第2のピストンの押圧を受けることにより軸方向の他方にスライドを案内する第2のカム部を有するスリーブと、
前記シャフトの外周で回転自在に支承されるとともに、前記スリーブと直接又は間接的に係合可能なギアと、
を備えることを特徴とする変速機。
【請求項2】
前記ギアと前記ハブの間に配されるとともに、前記ギアと直接又は間接的に摩擦係合し、前記スリーブと係合可能なシンクロナイザリングを備えることを特徴とする請求項1記載の変速機。
【請求項3】
第1の油路を有するとともに、前記第1の油路と仕切られた第2の油路を有するシャフトと、
前記シャフトに外嵌されるとともに、前記第1の油路に通ずる第1のシリンダ部を有し、前記第2の油路に通ずる第2のシリンダ部を有するハブと、
前記第1のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第1のピストンと、
前記第2のシリンダ部内で半径方向にスライド可能な第2のピストンと、
前記ハブの外周で軸方向にスライド可能に前記ハブと係合するとともに、前記第1のピストンの押圧を受けることにより軸方向の一方にスライドを案内する第1のカム部を有し、前記第2のピストンの押圧を受けることにより軸方向の他方にスライドを案内する第2のカム部を有するスリーブと、
前記シャフトの外周で回転自在に支承されるとともに、前記ハブの軸方向の一方の側に配され、かつ、前記スリーブと直接又は間接的に係合可能な第1のギアと、
前記シャフトの外周で回転自在に支承されるとともに、前記ハブの軸方向の他方の側に配され、かつ、前記スリーブと直接又は間接的に係合可能な第2のギアと、
を備えることを特徴とする変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−125502(P2006−125502A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314141(P2004−314141)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】