説明

外傷性脳損傷の迅速かつ正確な定量的評価システム

自動セグメンテーションのためのシステムおよび方法であって、体積画像中で画像化された関心のある解剖学的構造の、頂点および辺を含む複数のポリゴンから形成される変形可能モデルを選択し、前記変形可能モデルをディスプレイ上に表示し、前記複数のポリゴンのそれぞれに対応する前記関心のある解剖学的構造の特徴点を検出し、前記変形可能モデルが前記関心のある解剖学的構造の境界に変形するまで、各頂点を対応する特徴点のほうに動かすことによって前記変形可能モデルを適応させて前記関心のある解剖学的構造のセグメンテーションを形成することによって実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は外傷性脳損傷の迅速かつ正確な定量的評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外傷性脳損傷(TBI: Traumatic Brain Injury)は長期障害(long-term disability)の最も一般的な原因である。たとえば脳梁、海馬、小脳、視床および尾状核のようないくつかの皮質下の構造の異状がTBIに関連付けられてきた。よって、TBIをもつ個人における神経病理を3Dで同定することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、方法論上の困難のため、これまでの研究ではTBI後の構造的な萎縮症(atrophy)の明確なパターンを提供することはできずにいた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
自動セグメンテーションのための方法であって、体積画像(volumetric image)中で画像化された関心のある解剖学的構造の、頂点および辺を含む複数のポリゴンから形成される変形可能モデルを選択し、前記変形可能メンバーをディスプレイ上に表示し、前記複数のポリゴンのそれぞれに対応する前記関心のある解剖学的構造の特徴点を検出し、前記変形可能モデルが前記関心のある解剖学的構造の境界に変形〔モーフィング〕して前記関心のある解剖学的構造のセグメンテーションを形成するまで、各頂点を対応する特徴点のほうに動かすことによって前記変形可能モデルを適応させることによって実行される、方法。
【0005】
体積画像中で画像化された関心のある解剖学的構造の、頂点および辺を含む複数のポリゴンから形成される変形可能モデルを選択するプロセッサと、前記変形可能モデルを表示するディスプレイとを有するシステムであって、前記プロセッサがさらに、前記複数のポリゴンのそれぞれに対応する前記関心のある解剖学的構造の特徴点を検出し、前記変形可能モデルが前記関心のある解剖学的構造の境界に変形して前記関心のある解剖学的構造のセグメンテーションを形成するまで、各頂点を対応する特徴点のほうに動かすことによって前記変形可能モデルを変形する、システム。
【0006】
プロセッサによって実行可能な一組の命令を含むコンピュータ可読記憶媒体。前記一組の命令は、体積画像中で画像化された関心のある解剖学的構造の、頂点および辺を含む複数のポリゴンから形成される変形可能モデルを選択し、前記変形可能メンバーをディスプレイ上に表示し、前記複数のポリゴンのそれぞれに対応する前記関心のある解剖学的構造の特徴点を検出し、前記変形可能モデルが前記関心のある解剖学的構造の境界に変形して前記関心のある解剖学的構造のセグメンテーションを形成するまで、各頂点を対応する特徴点のほうに動かすことによって前記変形可能モデルを適応させるよう動作可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ある例示的な実施形態に基づくシステムの概略図である。
【図2】ある例示的な実施形態に基づく方法の流れ図である。
【図3】GUI上に表示される体積画像中の初期化された変形可能な脳モデルのスクリーンショットを示す図である。
【図4】体積画像に適合させられたのちの、図3の変形可能な脳モデルのスクリーンショットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例示的な実施形態は、以下の説明および付属の図面を参照することでさらに理解されうる。同様の要素は同じ参照符号で示される。例示的な実施形態は、脳の構造をセグメンテーションするためのシステムおよび方法に関する。特に、例示的な実施形態は脳の構造の変形可能モデルを生成する。該モデルは、MRIのような体積画像に適合させられてもよい。しかしながら、当業者は、例示的な実施形態が特に脳の構造をセグメンテーションすることを記載しているものの、本発明のシステムおよび方法が、たとえばMRIおよび/または超音波画像のような体積画像中のいかなる解剖学的な三次元構造をセグメンテーションするために使われてもよいことを理解するであろう。
【0009】
図1に示されるように、例示的な実施形態に基づくシステム100は、MRIまたは超音波画像のような体積画像の、たとえば脳梁、海馬、小脳、視床および尾状核のような3D脳構造をセグメンテーションする。システム100は、画像中の構造の特徴に基づいて脳構造の変形可能モデルを適応させることができるプロセッサ102を有する。変形可能モデルは、メモリ108に記憶されているモデルのデータベースから選択される。グラフィカル・ユーザー・インターフェース104は、脳構造の体積を決定する、脳構造の変形を表示する、脳構造の特定の部分を閲覧するなどのためのユーザー嗜好を入力するために用いられる。このグラフィカル・ユーザー・インターフェースに関連する入力は、たとえばマウス、タッチ・ディスプレイおよび/またはキーボードを介して入力される。脳構造のセグメンテーション、体積画像およびグラフィカル・ユーザー・インターフェース104のユーザー・オプションがディスプレイ106に表示される。メモリ108は、いかなる既知の型のコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。当業者は、システム100がたとえばパーソナル・コンピュータ、サーバーまたは他の任意の処理装置であることを理解するであろう。
【0010】
図2は、ある例示的な実施形態に基づく方法200を示している。ここでは、システム100は、脳構造における変形を識別するために、脳構造をセグメンテーションする。方法200は、ステップ210において、関心のある脳構造の変形可能モデルを、メモリ108に記憶された構造モデルのデータベースから選択することを含む。ある例示的な実施形態では、体積画像中の関心のある脳構造の特徴をデータベース中の構造モデルと比較することによって、変形可能モデルがプロセッサ102によって自動的に選択される。別の例示的な実施形態では、変形可能モデルは、関心のある脳構造に最もよく似る変形可能モデルを識別するためにユーザーがデータベースを通じてブラウズしていくことによって、手動で選択される。構造モデルのデータベースは、脳構造研究からの構造モデルおよび/または以前の患者からのセグメンテーション結果を含んでいてもよい。
【0011】
ステップ220において、図3に示されるように、変形可能モデルはディスプレイ106に表示される。変形可能モデルは、新しい画像として表示されるおよび/または体積画像に重ねて表示される。変形可能モデルは、複数の三角形状のポリゴンを含む表面メッシュから形成される。各三角形状のポリゴンはさらに三つの頂点および辺を含む。しかしながら、当業者は、表面メッシュは他の形のポリゴンを含んでいてもよいことを理解するであろう。変形可能モデルは、該変形可能モデルの頂点が関心のある構造の境界にできるだけ近く位置されるように、位置される。ステップ230において、各三角形ポリゴンは最適境界検出関数を割り当てられる。最適境界検出関数は、ステップ240において、関心のある構造の境界に沿った特徴点を検出し、それにより各三角形ポリゴンが特徴点に関連付けられる。各三角形ポリゴンに関連付けられた特徴点は、三角形ポリゴンに最も近いおよび/または三角形ポリゴンに位置において対応する特徴点であってもよい。
【0012】
ステップ250において、ある特徴点に関連付けられた三角形ポリゴンは関連付けられた特徴点のほうに動かされ、各三角形ポリゴンの頂点が関心のある構造の境界のほうに動かされて、変形可能モデルを体積画像中の関心のある構造に適合するよう変形させる。図4に示されるように、変形可能モデルは、各三角形ポリゴンの位置が関連付けられた特徴点の位置に対応するまで、および/または該三角形ポリゴンの頂点が実質的に関心のある構造の境界上に載るまで、変形される。ひとたび変形可能モデルが、三角形ポリゴンが関心のある構造の境界の関連付けられた特徴点に対応するように変形されると、変形可能モデルは、変形された変形可能モデルが関心のある構造のセグメンテーションされた構造を表すよう、関心のある構造に適合させられたことになる。
【0013】
セグメンテーション・プロセスが完了すると、ステップ260において、ユーザーは、セグメンテーションされた脳構造に関するユーザー入力を入力してもよい。ユーザー入力は、グラフィカル・ユーザー・インターフェース104上に表示されうるユーザー・オプションを選択するグラフィカル・ユーザー・インターフェース104を介して入力されてもよい。たとえば、ユーザーは、表示された画像を拡大するおよび/または表示された画像の特定の部分にズームすること、特定の画像のビューを変更すること、関心のあるパラメータ(たとえばセグメンテーションされた構造の体積、ある点での曲率)を決定すること、セグメンテーションされた構造における変形を識別することなどを選択してもよい。他のオプションは、セグメンテーションされた構造および/または変形可能モデルのデータベース中の対応する体積画像を記憶すること、あるいは比較目的のためにデータベースから以前に記憶されたセグメンテーションされた構造を呼び出すことを含んでいてもよい。当業者は、セグメンテーションされた構造および/または対応する体積画像は、TBI患者における構造的な萎縮症の解析を容易にするために、患者ファイル内にも記憶されてもよいことを理解するであろう。
【0014】
ユーザーは、脳領域における変化を評価するために、セグメンテーションされた構造の体積および/または曲率を決定することを望むことがある。そのようなパラメータは、患者の過去のTBIへの暴露を現在の持続する訴え、欠乏および障害と結び付けるのに特に有用でありうる。さらに、健康な脳構造は、正中矢状面に関して対称的であり、脳の左半球および右半球が互いの鏡像になっていることが知られている。よって、健康な脳では、脳の一方の半球――たとえば左半球――における頂点(vertex)は、他方の半球――たとえば右半球――においてミラーされているべきである。しかしながら、TBIはたいてい非対称的な疾病である。よって、平均頂点値(mean vertex values)からの逸脱が、関心のある脳構造の変形の深刻さを示す変化を表す。したがって、ユーザーは、セグメンテーションされた構造の、平均頂点値(mean vertex values)からの偏差(deviations)を閲覧することを選択してもよい。さらなる実施形態では、結果の可視化および解釈を容易にするため、異なる偏差がカラー・コード付けされてもよい。
【0015】
ステップ270では、プロセッサ102は、ステップ260で入力されたユーザー入力への応答を生成する。たとえば、ユーザーがセグメンテーションされた構造の体積を要求した場合、プロセッサ102は体積を計算し、該体積をディスプレイ106上に表示する。ユーザーが体積画像および/またはセグメンテーションされた器官の特定の部分を拡大したい意向を示した場合、プロセッサ102は所望される特定の部分の拡大ビューを生成し、表示する。別の例では、ユーザーがセグメンテーションされた構造における変形を識別したいとの意向を示した場合、プロセッサ102は正中矢状面を識別し、左半球と右半球の間の平均頂点値(mean vertex values)における偏差を識別し、その変形をディスプレイ106上に表示する。上記のように、異なる偏差がカラー・コード付けされてもよい。ステップ260〜270は、ユーザーが脳のセグメンテーションされた構造に関して、すべての所望されるオプションを選択し終わるまで、所望されるだけ繰り返されてもよい。
【0016】
本稿で記載された構造および方法論にさまざまな修正および変更をなしうることは当業者には明白であろう。よって、本開示は、付属の請求項およびその等価物の範囲内にはいる限り、いかなる修正および変形をもカバーすることが意図されている。
【0017】
また、請求項はPCT規則6.2(b)に従って参照符号/数字を含むことがあるが、本願の特許請求の範囲は参照符号/数字に対応する例示的な実施形態に限定されると考えられるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動セグメンテーションのための方法であって:
体積画像中で画像化された関心のある解剖学的構造の、頂点および辺を含む複数のポリゴンから形成される変形可能モデルを選択する段階と;
前記変形可能モデルをディスプレイ上に表示する段階と;
前記複数のポリゴンのそれぞれに対応する前記関心のある解剖学的構造の特徴点を検出する段階と;
前記変形可能モデルが前記関心のある解剖学的構造の境界に変形するまで、各頂点を対応する特徴点のほうに動かすことによって前記変形可能モデルを適応させて、前記関心のある解剖学的構造のセグメンテーションを形成する段階とを含む、
方法。
【請求項2】
前記変形可能モデルが、メモリに記憶された構造のデータベースから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記特徴点が、実質的に前記関心のある解剖学的構造の境界に沿った点である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
セグメンテーションに関するオプションを選択するユーザー入力を、グラフィカル・ユーザー・インターフェースを介して受け取る段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ユーザー入力への応答を生成する段階をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザー入力が、前記セグメンテーションの体積を計算する、および、選択された点における曲率を決定する、のうちの一方を選択する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記関心のある解剖学的構造が脳領域である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
異状を判別するために通常は対称的な関心のある構造の平均頂点値からの逸脱を決定し、前記脳領域における変形を示すために該逸脱を表示する段階をさらに含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記平均頂点値からの逸脱を決定することが、前記脳領域の正中矢状面を識別することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
異なる逸脱が異なる色で表示される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
体積画像中で画像化された関心のある解剖学的構造の、頂点および辺を含む複数のポリゴンから形成される変形可能モデルを選択するプロセッサと;
前記変形可能モデルを表示するディスプレイとを有するシステムであって、
前記プロセッサがさらに、前記複数のポリゴンのそれぞれに対応する前記関心のある解剖学的構造の特徴点を検出し、前記変形可能モデルが前記関心のある解剖学的構造の境界に変形するまで、各頂点を対応する特徴点のほうに動かすことによって前記変形可能モデルを変形し、前記関心のある解剖学的構造のセグメンテーションを形成する、
システム。
【請求項12】
構造のデータベースを記憶するメモリをさらに有する、請求項11記載のシステムであって、前記データベースから前記変形可能モデルが選択される、システム。
【請求項13】
前記特徴点が、実質的に前記関心のある解剖学的構造の境界に沿った点である、請求項11記載のシステム。
【請求項14】
セグメンテーションに関するオプションを選択するユーザー入力を受け取るグラフィカル・ユーザー・インターフェースをさらに有する、
請求項11記載のシステム。
【請求項15】
前記プロセッサが前記ユーザー入力への応答を生成する、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記ユーザー入力が、前記セグメンテーションの体積を計算する、および、選択された点における曲率を決定する、のうちの一方を選択する、請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記関心のある解剖学的構造が脳領域である、請求項11記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサが、前記脳領域の正中矢状面を識別することによって、異状を判別するために通常は対称的な関心のある構造の平均頂点値からの逸脱を決定し、前記脳領域における変形を示すために該逸脱を表示する、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記ディスプレイが、異なる逸脱を異なる色で表示する、請求項17記載のシステム。
【請求項20】
プロセッサによって実行可能な一組の命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、前記一組の命令は:
体積画像中で画像化された関心のある解剖学的構造の、頂点および辺を含む複数のポリゴンから形成される変形可能モデルを選択し;
前記変形可能メンバーをディスプレイ上に表示し;
前記複数のポリゴンのそれぞれに対応する前記関心のある解剖学的構造の特徴点を検出し;
前記変形可能モデルが前記関心のある解剖学的構造の境界に変形するまで、各頂点を対応する特徴点のほうに動かすことによって前記変形可能モデルを適応させて、前記関心のある解剖学的構造のセグメンテーションを形成するよう動作可能である、
コンピュータ可読記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−513409(P2013−513409A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542644(P2012−542644)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055246
【国際公開番号】WO2011/070464
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【出願人】(512150510)トラスティーズ オブ ダートマウス カレッジ (1)
【Fターム(参考)】