外壁構造
【課題】建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている外壁に対して、仕上げ層が施工された外壁構造であって、サイディングの凸反り及び凹反りを十分に小さくすることが可能な外壁構造を提供する。
【解決手段】柱2及び間柱3に取付金具10が釘32によって固定され、該取付金具10のフック片24にサイディング4が係止されている。ワッシャ9及びビス8によって該ネット6を外壁1に固定する。ワッシャ9は中央にビス挿通孔9aが設けられた椀形となっている。ビス8をねじ込み、ワッシャ9がビス8とサイディング4に挟持されて平坦になった状態でビス8のねじ込みを停止する。ネット6に弾性接着剤41を塗着し、タイル42を接着する。
【解決手段】柱2及び間柱3に取付金具10が釘32によって固定され、該取付金具10のフック片24にサイディング4が係止されている。ワッシャ9及びビス8によって該ネット6を外壁1に固定する。ワッシャ9は中央にビス挿通孔9aが設けられた椀形となっている。ビス8をねじ込み、ワッシャ9がビス8とサイディング4に挟持されて平坦になった状態でビス8のねじ込みを停止する。ネット6に弾性接着剤41を塗着し、タイル42を接着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建築躯体に取付金具が固定され、該取付金具にサイディングが取り付けられており、該取付金具以外の箇所では該建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている外壁に対して、仕上げ層が施工された外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
柱、間柱、胴縁等の建築躯体に外壁材が施工されてなる既設壁面を改修するために、該既設壁面に対して新規タイルを施工することは周知である。
【0003】
例えば、特開2003−239500号には、横木に施工された既設サイディングにネットを張り、ねじ部材をネット、サイディングを介して横木にねじ込んでネットを止着し、該ネットに下地調整材及び接着剤を塗布し、その上からタイルを張り付ける外壁材の施工方法が開示されている。
【0004】
また、外壁材を取付金具によって固定することは周知である。例えば、特開平6−146536号には、外壁に取付金具が釘打ち固定されており、該取付金具のフック片に外装材の上端ないし下端が係止された外装材の取付構造が開示されている。
【特許文献1】特開2003−239500号
【特許文献2】特開平6−146536号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2003−239500号のように、既設壁面に対して新たにタイルを施工する場合、タイルの施工後に既設壁面の裏側が乾燥して収縮することにより、既設壁面が表側に凸反りするという問題がある。かかる凸反りを防止するために、ビスによって既設壁面の外壁材を柱等に固定することが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記特開平6−146536号のように外壁材が取付金具によって柱等に固定されてなる既存壁面は、柱等と外壁材との間に取付金具が配置されているため、これら柱等と外壁材との間に隙間があいている。このため、該既存壁面にビスをねじ込みすぎると外壁材が柱等の側に凹反りするという問題がある。
【0007】
本発明は、建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている外壁に対して、仕上げ層が施工された外壁構造であって、サイディングの凸反り及び凹反りを十分に小さくすることが可能な外壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の外壁構造は、建築躯体に取付金具が固定され、該取付金具にサイディングが取り付けられており、該取付金具以外の箇所では該建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている外壁に対して、仕上げ層が施工された外壁構造であって、該間隙が増大することを防止するためにワッシャを介してビスがサイディングを通して前記建築躯体にねじ込まれている外壁構造において、前記ワッシャは、前面側に向って凸に湾曲する湾曲部を有し、該湾曲部に前記ビスが挿通されたビス挿通孔が設けられており、該湾曲部が平坦になるまで、かつ所定大きさの前記間隙が残るように前記建築躯体にビスがねじ込まれていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の外壁構造は、請求項1において、該ワッシャは細長い形状を有しており、該ワッシャの長手方向が該サイディングの上下方向を向くように該ビスによって取り付けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の外壁構造は、請求項1又は2において、ネットが該ビス及びワッシャによって該サイディングに取り付けられており、該ネットに接着剤が塗着されており、該接着剤の上に該仕上げ層が施工されていることを特徴とするものである。
【0011】
既設外壁を本発明構造とする場合には、建築躯体に取付金具が固定され、該取付金具にサイディングが取り付けられており、該取付金具以外の箇所では該建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている既存外壁に対して、改装用の仕上げ層を施工する既設外壁の改修方法であって、該間隙が増大することを防止するためにワッシャを介してビスをサイディングを通して前記建築躯体にねじ込み、次いで改装用の仕上げ層を施工する既設外壁の改修方法において、前記ワッシャは、前面側に向って凸に湾曲する湾曲部を有し、該湾曲部に前記ビスが挿通されるビス挿通孔が設けられており、該湾曲部が平坦になるまで、かつ所定大きさの前記間隙が残るように前記建築躯体にビスをねじ込むことを特徴とする既存外壁の改修方法を採用するのが好ましい。
【0012】
この既設外壁の改修方法では、該ワッシャは細長い形状を有しており、該ワッシャの長手方向が該サイディングの上下方向を向くように該ワッシャを該ビスによって取り付けることが好ましい。
【0013】
この既設外壁の改修方法では、ネットを該ビス及びワッシャによって該サイディングに取り付け、該ネットに接着剤を塗布し、該接着剤の上に該仕上げ層を施工することが好ましい。
【0014】
この既設外壁の改修方法では、ビス打ち込み量制限機構付きの電動ビス打ち工具によってビスをねじ込むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の外壁構造(請求項1)にあっては、サイディングがビス及びワッシャによって建築躯体に固定されるため、仕上げ層の施工後にサイディングに凸反りが生じることが防止される。また、ワッシャの湾曲部が平坦になるまで、かつ所定大きさの間隙が残るように建築躯体にビスをねじ込んだところでビスのねじ込みを停止することにより、ビスのねじ込み過ぎが回避される。これにより、サイディングに凹反りが生じることが防止される。
【0016】
本発明において、ワッシャの長手方向が該サイディングの上下方向を向くようにして、ワッシャがビスによって取り付けられていることが好ましい。この場合、サイディングがビス及びワッシャによって上下方向にわたり広く押さえ付けられるため、仕上げ層の施工後にサイディングが凸反りすることがより確実に防止される。
【0017】
本発明において、ネットがビスによってサイディングに取り付けられ、該ネットに接着剤が塗着され、該接着剤の上に該仕上げ層が施工されていることが好ましい。この場合、仕上げ層がサイディングに強固に張り付けられる。
【0018】
本発明において、ビス打ち込み量制限機構付きの電動ビス打ち工具によってビスをねじ込むことにより、ビスの打ち込み過ぎがより確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
第1図は既存外壁の斜視図、第2図は第1図のII−II線に沿う縦断面図、第3図は第2図の取付金具の斜視図、第4図〜第6図はタイルの施工方法を示す斜視図、第7図(a)はビスの打ち込み途中の状態を示す縦断面図、第7図(b)はビスの打ち込み後の状態を示す縦断面図、第8図は第7図のワッシャの斜視図である。
【0021】
まず、第1図〜第3図を用いて、既存外壁の構成を説明する。
【0022】
第1図、第2図に示す通り、柱2及び間柱3に取付金具10が釘32によって固定され、該取付金具10のフック片24にサイディング4が係止されることにより、既存外壁1が形成されている。
【0023】
第3図に示す通り、この取付金具10は、柱2又は間柱3の前面に対面する第1ベース部14及び第2ベース部16を備え、この第2ベース部16から前方に水平片18、上向斜片20及び下向斜片22よりなるフック片24が突設されたものである。
【0024】
第1ベース部14と第2ベース部16との間に、斜め下向きの第1斜面部26が設けられると共に、第2ベース部16の下端に第2斜面部28が設けられており、第2ベース部16が柱2又は間柱3の前面から所定距離だけ浮いた状態にて施工されるよう構成されている。
【0025】
第1ベース部14及び第1斜面部26にはそれぞれ釘孔30が設けられている。この釘孔30を通して釘32(釘以外のビス等であっても良い。)を柱2又は間柱3に打ち込むことにより、該取付金具10が柱2又は間柱3に固定されている。
【0026】
サイディング4は、その下端の前面側に下端実部4lを有すると共に、上端の背面側に上端実部4uを有している。
【0027】
この下端実部4lを前記フック片24に被せるように上段側のサイディング4Aを取付金具10に支承させる。
【0028】
下段側のサイディング4Bの上端は、上端実部4uを下向斜片22の背面側に差し込むことにより面出入り方向に拘束される。
【0029】
次に、第4図〜第8図を用いて、この既存外壁1にタイルを施工する工程を説明する。
【0030】
第4図に示すように、隣り合うサイディング4,4同士の継ぎ目に跨ってジョイントテープ5を貼り付ける。この実施の形態では、該ジョイントテープ5は、帯状の不織布の一方の面に粘着材料としてブチルゴムを付着ないし含浸させた片面粘着テープであり、厚み方向及び面方向の双方に弾力性(クッション性)を有している。なお、この実施の形態では、第4図の通り、サイディング4は左右方向に多列に且つ上下方向に多段に配設されており、ジョイントテープ5は、左右方向に隣接するサイディング4,4同士の継ぎ目に沿ってのみ設けられているが、上下に隣接するサイディング4,4同士の継ぎ目に沿っても設けられてもよい。
【0031】
次に、第5図のように、外壁1の前面に両面粘着テープ40を付着させる。この両面粘着テープ40は、帯状の不織布の両面に粘着材料としてブチルゴムを付着ないし含浸させてなるものである。その後、合成繊維製のネット6を外壁1に重ね合わせ、該両面粘着テープ40に付着させる。
【0032】
次いで、ワッシャ9及びビス8によって該ネット6を外壁1に固定する。
【0033】
本実施の形態では、第8図の通り、ワッシャ9は中央にビス挿通孔9aが設けられた略椀形となっており、ワッシャ9の全体が前面側(第8図の上側)に向って凸に湾曲する湾曲部となっている。ワッシャ9は、球殻の一部を切り取ってなる形状であることが好ましいが、それに近似した形状であればよい。
【0034】
第7図(a)の通り、ビス8をねじ込んでいくと、ワッシャ9がビス8の頭部とサイディング4の前面とによって挟持される。さらにビス8をねじ込んでいき、第7図(b)の通り、該ワッシャ9が平坦になった状態でビス8のねじ込みを停止する。これにより、ビス8をねじ込み過ぎてサイディング4を柱2側に撓ませることなく、サイディング4をビス8及びワッシャ9によって柱2(又は間柱3)に確実に固定することができる。
【0035】
ビス8のねじ込みは、ドライバーを用いて手で行ってもよく、電動ドライバーを用いて行ってもよい。電動ドライバーを用いる場合、特開2006−21298号のビスうち込み量調整具等のようなビスうち込み量制御機構付きの電動ドライバーを用いることが好ましい。この場合、ビスの打ち込み過ぎがより確実に防止される。
【0036】
このネット6の目開きは5〜20mm程度が好適である。
【0037】
ワッシャ7は、このネット6の目開きよりも大きい径を有している。
【0038】
次に、第6図のように、該ネット6を塗り込めるようにしてタイル接着用の弾性接着剤41を塗着する。この弾性接着剤41としては、変性エポキシ系あるいは変性シリコン系接着剤等を用いることができる。
【0039】
その後、この弾性接着剤層41の上に、仕上げ層としてタイル42を押し当てて接着する。その後、必要に応じ目地詰めする。
【0040】
このようにしてタイル張りされた外壁は、ワッシャの形状を確認しながらビスをねじ込むことにより、ビスをねじ込み過ぎてサイディングを柱側に撓ませることなく、サイディングをビス及びワッシャによって柱等に確実に固定することができる。これにより、サイディングに凸反り及び凹反りを有しない、美麗なタイル壁となる。
【0041】
この実施の形態では、隣り合うサイディング4,4の継ぎ目に跨ってクッション性を有するジョイントテープ5が設けられているので、温度変化等により各サイディング4が膨張・収縮し、隣り合うサイディング4,4同士がずれた場合でも、このずれによってタイル42に加えられる応力が該ジョイントテープ5によって吸収されるため、タイル42の割れや剥離等を防止することができる。
【0042】
また、このジョイントテープ5を介してネット6を仮留めしておくことができるので、ビス留め作業性が大幅に向上する。
【0043】
上記実施の形態ではワッシャを椀形にしたが、これに限定されるものではない。例えば、第10図のように、前面側に向って凸に湾曲した略長方形であり、長辺方向の一端側に偏った位置にビス挿通孔9aが設けられたワッシャ9Aを用いてもよい。このワッシャ9Aをビス9によって取り付ける場合、第9図のように、該ワッシャ9Aの長辺方向における他端側がサイディング4の中央側を向くようにして取り付けるのが好ましい。この場合、サイディング4が中央側までワッシャ9Aによって押さえられるため、サイディング4の凸反りがより確実に防止される。また、第11図の通り、中央にビス挿通孔9aが設けられたワッシャ9Bを用いてもよい。なお、ワッシャは長方形に限定されるものではなく、例えば楕円形等であってもよい。
【0044】
本実施の形態では、サイディングを柱及び間柱に固定したが、胴縁等の他の建築躯体に固定してもよい。
【0045】
本実施の形態では、仕上げ層としてタイルを施工したが、変性シリコン、エポキシウレタン、アクリルエマルジョン、ポリウレタン等の塗り材を施工してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】既存外壁の斜視図である。
【図2】第1図のII−II線に沿う縦断面図である。
【図3】第2図の取付金具の斜視図である。
【図4】タイルの施工方法を示す斜視図である。
【図5】タイルの施工方法を示す斜視図である。
【図6】タイルの施工方法を示す斜視図である。
【図7】(a)はビスの打ち込み途中の状態を示す縦断面図、(b)はビスの打ち込み後の状態を示す縦断面図である。
【図8】ワッシャの斜視図である。
【図9】別のタイルの施工方法を示す斜視図である。
【図10】第9図のワッシャの斜視図である。
【図11】別のワッシャの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 既存外壁
2 柱
3 間柱
4 サイディング
8 ビス
9,9A ワッシャ
10 取付金具
41 接着剤
42 タイル
【技術分野】
【0001】
建築躯体に取付金具が固定され、該取付金具にサイディングが取り付けられており、該取付金具以外の箇所では該建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている外壁に対して、仕上げ層が施工された外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
柱、間柱、胴縁等の建築躯体に外壁材が施工されてなる既設壁面を改修するために、該既設壁面に対して新規タイルを施工することは周知である。
【0003】
例えば、特開2003−239500号には、横木に施工された既設サイディングにネットを張り、ねじ部材をネット、サイディングを介して横木にねじ込んでネットを止着し、該ネットに下地調整材及び接着剤を塗布し、その上からタイルを張り付ける外壁材の施工方法が開示されている。
【0004】
また、外壁材を取付金具によって固定することは周知である。例えば、特開平6−146536号には、外壁に取付金具が釘打ち固定されており、該取付金具のフック片に外装材の上端ないし下端が係止された外装材の取付構造が開示されている。
【特許文献1】特開2003−239500号
【特許文献2】特開平6−146536号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2003−239500号のように、既設壁面に対して新たにタイルを施工する場合、タイルの施工後に既設壁面の裏側が乾燥して収縮することにより、既設壁面が表側に凸反りするという問題がある。かかる凸反りを防止するために、ビスによって既設壁面の外壁材を柱等に固定することが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記特開平6−146536号のように外壁材が取付金具によって柱等に固定されてなる既存壁面は、柱等と外壁材との間に取付金具が配置されているため、これら柱等と外壁材との間に隙間があいている。このため、該既存壁面にビスをねじ込みすぎると外壁材が柱等の側に凹反りするという問題がある。
【0007】
本発明は、建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている外壁に対して、仕上げ層が施工された外壁構造であって、サイディングの凸反り及び凹反りを十分に小さくすることが可能な外壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の外壁構造は、建築躯体に取付金具が固定され、該取付金具にサイディングが取り付けられており、該取付金具以外の箇所では該建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている外壁に対して、仕上げ層が施工された外壁構造であって、該間隙が増大することを防止するためにワッシャを介してビスがサイディングを通して前記建築躯体にねじ込まれている外壁構造において、前記ワッシャは、前面側に向って凸に湾曲する湾曲部を有し、該湾曲部に前記ビスが挿通されたビス挿通孔が設けられており、該湾曲部が平坦になるまで、かつ所定大きさの前記間隙が残るように前記建築躯体にビスがねじ込まれていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の外壁構造は、請求項1において、該ワッシャは細長い形状を有しており、該ワッシャの長手方向が該サイディングの上下方向を向くように該ビスによって取り付けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の外壁構造は、請求項1又は2において、ネットが該ビス及びワッシャによって該サイディングに取り付けられており、該ネットに接着剤が塗着されており、該接着剤の上に該仕上げ層が施工されていることを特徴とするものである。
【0011】
既設外壁を本発明構造とする場合には、建築躯体に取付金具が固定され、該取付金具にサイディングが取り付けられており、該取付金具以外の箇所では該建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている既存外壁に対して、改装用の仕上げ層を施工する既設外壁の改修方法であって、該間隙が増大することを防止するためにワッシャを介してビスをサイディングを通して前記建築躯体にねじ込み、次いで改装用の仕上げ層を施工する既設外壁の改修方法において、前記ワッシャは、前面側に向って凸に湾曲する湾曲部を有し、該湾曲部に前記ビスが挿通されるビス挿通孔が設けられており、該湾曲部が平坦になるまで、かつ所定大きさの前記間隙が残るように前記建築躯体にビスをねじ込むことを特徴とする既存外壁の改修方法を採用するのが好ましい。
【0012】
この既設外壁の改修方法では、該ワッシャは細長い形状を有しており、該ワッシャの長手方向が該サイディングの上下方向を向くように該ワッシャを該ビスによって取り付けることが好ましい。
【0013】
この既設外壁の改修方法では、ネットを該ビス及びワッシャによって該サイディングに取り付け、該ネットに接着剤を塗布し、該接着剤の上に該仕上げ層を施工することが好ましい。
【0014】
この既設外壁の改修方法では、ビス打ち込み量制限機構付きの電動ビス打ち工具によってビスをねじ込むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の外壁構造(請求項1)にあっては、サイディングがビス及びワッシャによって建築躯体に固定されるため、仕上げ層の施工後にサイディングに凸反りが生じることが防止される。また、ワッシャの湾曲部が平坦になるまで、かつ所定大きさの間隙が残るように建築躯体にビスをねじ込んだところでビスのねじ込みを停止することにより、ビスのねじ込み過ぎが回避される。これにより、サイディングに凹反りが生じることが防止される。
【0016】
本発明において、ワッシャの長手方向が該サイディングの上下方向を向くようにして、ワッシャがビスによって取り付けられていることが好ましい。この場合、サイディングがビス及びワッシャによって上下方向にわたり広く押さえ付けられるため、仕上げ層の施工後にサイディングが凸反りすることがより確実に防止される。
【0017】
本発明において、ネットがビスによってサイディングに取り付けられ、該ネットに接着剤が塗着され、該接着剤の上に該仕上げ層が施工されていることが好ましい。この場合、仕上げ層がサイディングに強固に張り付けられる。
【0018】
本発明において、ビス打ち込み量制限機構付きの電動ビス打ち工具によってビスをねじ込むことにより、ビスの打ち込み過ぎがより確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
第1図は既存外壁の斜視図、第2図は第1図のII−II線に沿う縦断面図、第3図は第2図の取付金具の斜視図、第4図〜第6図はタイルの施工方法を示す斜視図、第7図(a)はビスの打ち込み途中の状態を示す縦断面図、第7図(b)はビスの打ち込み後の状態を示す縦断面図、第8図は第7図のワッシャの斜視図である。
【0021】
まず、第1図〜第3図を用いて、既存外壁の構成を説明する。
【0022】
第1図、第2図に示す通り、柱2及び間柱3に取付金具10が釘32によって固定され、該取付金具10のフック片24にサイディング4が係止されることにより、既存外壁1が形成されている。
【0023】
第3図に示す通り、この取付金具10は、柱2又は間柱3の前面に対面する第1ベース部14及び第2ベース部16を備え、この第2ベース部16から前方に水平片18、上向斜片20及び下向斜片22よりなるフック片24が突設されたものである。
【0024】
第1ベース部14と第2ベース部16との間に、斜め下向きの第1斜面部26が設けられると共に、第2ベース部16の下端に第2斜面部28が設けられており、第2ベース部16が柱2又は間柱3の前面から所定距離だけ浮いた状態にて施工されるよう構成されている。
【0025】
第1ベース部14及び第1斜面部26にはそれぞれ釘孔30が設けられている。この釘孔30を通して釘32(釘以外のビス等であっても良い。)を柱2又は間柱3に打ち込むことにより、該取付金具10が柱2又は間柱3に固定されている。
【0026】
サイディング4は、その下端の前面側に下端実部4lを有すると共に、上端の背面側に上端実部4uを有している。
【0027】
この下端実部4lを前記フック片24に被せるように上段側のサイディング4Aを取付金具10に支承させる。
【0028】
下段側のサイディング4Bの上端は、上端実部4uを下向斜片22の背面側に差し込むことにより面出入り方向に拘束される。
【0029】
次に、第4図〜第8図を用いて、この既存外壁1にタイルを施工する工程を説明する。
【0030】
第4図に示すように、隣り合うサイディング4,4同士の継ぎ目に跨ってジョイントテープ5を貼り付ける。この実施の形態では、該ジョイントテープ5は、帯状の不織布の一方の面に粘着材料としてブチルゴムを付着ないし含浸させた片面粘着テープであり、厚み方向及び面方向の双方に弾力性(クッション性)を有している。なお、この実施の形態では、第4図の通り、サイディング4は左右方向に多列に且つ上下方向に多段に配設されており、ジョイントテープ5は、左右方向に隣接するサイディング4,4同士の継ぎ目に沿ってのみ設けられているが、上下に隣接するサイディング4,4同士の継ぎ目に沿っても設けられてもよい。
【0031】
次に、第5図のように、外壁1の前面に両面粘着テープ40を付着させる。この両面粘着テープ40は、帯状の不織布の両面に粘着材料としてブチルゴムを付着ないし含浸させてなるものである。その後、合成繊維製のネット6を外壁1に重ね合わせ、該両面粘着テープ40に付着させる。
【0032】
次いで、ワッシャ9及びビス8によって該ネット6を外壁1に固定する。
【0033】
本実施の形態では、第8図の通り、ワッシャ9は中央にビス挿通孔9aが設けられた略椀形となっており、ワッシャ9の全体が前面側(第8図の上側)に向って凸に湾曲する湾曲部となっている。ワッシャ9は、球殻の一部を切り取ってなる形状であることが好ましいが、それに近似した形状であればよい。
【0034】
第7図(a)の通り、ビス8をねじ込んでいくと、ワッシャ9がビス8の頭部とサイディング4の前面とによって挟持される。さらにビス8をねじ込んでいき、第7図(b)の通り、該ワッシャ9が平坦になった状態でビス8のねじ込みを停止する。これにより、ビス8をねじ込み過ぎてサイディング4を柱2側に撓ませることなく、サイディング4をビス8及びワッシャ9によって柱2(又は間柱3)に確実に固定することができる。
【0035】
ビス8のねじ込みは、ドライバーを用いて手で行ってもよく、電動ドライバーを用いて行ってもよい。電動ドライバーを用いる場合、特開2006−21298号のビスうち込み量調整具等のようなビスうち込み量制御機構付きの電動ドライバーを用いることが好ましい。この場合、ビスの打ち込み過ぎがより確実に防止される。
【0036】
このネット6の目開きは5〜20mm程度が好適である。
【0037】
ワッシャ7は、このネット6の目開きよりも大きい径を有している。
【0038】
次に、第6図のように、該ネット6を塗り込めるようにしてタイル接着用の弾性接着剤41を塗着する。この弾性接着剤41としては、変性エポキシ系あるいは変性シリコン系接着剤等を用いることができる。
【0039】
その後、この弾性接着剤層41の上に、仕上げ層としてタイル42を押し当てて接着する。その後、必要に応じ目地詰めする。
【0040】
このようにしてタイル張りされた外壁は、ワッシャの形状を確認しながらビスをねじ込むことにより、ビスをねじ込み過ぎてサイディングを柱側に撓ませることなく、サイディングをビス及びワッシャによって柱等に確実に固定することができる。これにより、サイディングに凸反り及び凹反りを有しない、美麗なタイル壁となる。
【0041】
この実施の形態では、隣り合うサイディング4,4の継ぎ目に跨ってクッション性を有するジョイントテープ5が設けられているので、温度変化等により各サイディング4が膨張・収縮し、隣り合うサイディング4,4同士がずれた場合でも、このずれによってタイル42に加えられる応力が該ジョイントテープ5によって吸収されるため、タイル42の割れや剥離等を防止することができる。
【0042】
また、このジョイントテープ5を介してネット6を仮留めしておくことができるので、ビス留め作業性が大幅に向上する。
【0043】
上記実施の形態ではワッシャを椀形にしたが、これに限定されるものではない。例えば、第10図のように、前面側に向って凸に湾曲した略長方形であり、長辺方向の一端側に偏った位置にビス挿通孔9aが設けられたワッシャ9Aを用いてもよい。このワッシャ9Aをビス9によって取り付ける場合、第9図のように、該ワッシャ9Aの長辺方向における他端側がサイディング4の中央側を向くようにして取り付けるのが好ましい。この場合、サイディング4が中央側までワッシャ9Aによって押さえられるため、サイディング4の凸反りがより確実に防止される。また、第11図の通り、中央にビス挿通孔9aが設けられたワッシャ9Bを用いてもよい。なお、ワッシャは長方形に限定されるものではなく、例えば楕円形等であってもよい。
【0044】
本実施の形態では、サイディングを柱及び間柱に固定したが、胴縁等の他の建築躯体に固定してもよい。
【0045】
本実施の形態では、仕上げ層としてタイルを施工したが、変性シリコン、エポキシウレタン、アクリルエマルジョン、ポリウレタン等の塗り材を施工してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】既存外壁の斜視図である。
【図2】第1図のII−II線に沿う縦断面図である。
【図3】第2図の取付金具の斜視図である。
【図4】タイルの施工方法を示す斜視図である。
【図5】タイルの施工方法を示す斜視図である。
【図6】タイルの施工方法を示す斜視図である。
【図7】(a)はビスの打ち込み途中の状態を示す縦断面図、(b)はビスの打ち込み後の状態を示す縦断面図である。
【図8】ワッシャの斜視図である。
【図9】別のタイルの施工方法を示す斜視図である。
【図10】第9図のワッシャの斜視図である。
【図11】別のワッシャの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 既存外壁
2 柱
3 間柱
4 サイディング
8 ビス
9,9A ワッシャ
10 取付金具
41 接着剤
42 タイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築躯体に取付金具が固定され、該取付金具にサイディングが取り付けられており、該取付金具以外の箇所では該建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている外壁に対して、仕上げ層が施工された外壁構造であって、
該間隙が増大することを防止するためにワッシャを介してビスがサイディングを通して前記建築躯体にねじ込まれている外壁構造において、
前記ワッシャは、前面側に向って凸に湾曲する湾曲部を有し、該湾曲部に前記ビスが挿通されたビス挿通孔が設けられており、該湾曲部が平坦になるまで、かつ所定大きさの前記間隙が残るように前記建築躯体にビスがねじ込まれていることを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
請求項1において、該ワッシャは細長い形状を有しており、該ワッシャの長手方向が該サイディングの上下方向を向くように該ビスによって取り付けられていることを特徴とする外壁構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、ネットが該ビス及びワッシャによって該サイディングに取り付けられており、該ネットに接着剤が塗着されており、該接着剤の上に該仕上げ層が施工されていることを特徴とする外壁構造。
【請求項1】
建築躯体に取付金具が固定され、該取付金具にサイディングが取り付けられており、該取付金具以外の箇所では該建築躯体とサイディングとの間に間隙があいている外壁に対して、仕上げ層が施工された外壁構造であって、
該間隙が増大することを防止するためにワッシャを介してビスがサイディングを通して前記建築躯体にねじ込まれている外壁構造において、
前記ワッシャは、前面側に向って凸に湾曲する湾曲部を有し、該湾曲部に前記ビスが挿通されたビス挿通孔が設けられており、該湾曲部が平坦になるまで、かつ所定大きさの前記間隙が残るように前記建築躯体にビスがねじ込まれていることを特徴とする外壁構造。
【請求項2】
請求項1において、該ワッシャは細長い形状を有しており、該ワッシャの長手方向が該サイディングの上下方向を向くように該ビスによって取り付けられていることを特徴とする外壁構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、ネットが該ビス及びワッシャによって該サイディングに取り付けられており、該ネットに接着剤が塗着されており、該接着剤の上に該仕上げ層が施工されていることを特徴とする外壁構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−291638(P2007−291638A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118051(P2006−118051)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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