説明

外径測定器

【課題】他の測定器具を使用する必要がなく簡単に電線等の線状体及び管状体の外径を測定することができる外径測定器を提供することを課題とする。
【解決手段】被測定物の外径を測定するための本体切欠き部7とスライド片8とから構成される開口方向に向かって幅広な切欠き部6が設けられる測定部3と、前記測定部3での測定結果を表示するための表示部4とを備える外径測定器1であって、前記スライド片8は、被測定物が前記切欠き部6内に周方向の三箇所で接するよう押入されると、前記切欠き部6における底部11の幅が変化する方向にスライドするよう、本体2にガイド部14を介して配設され、前記表示部4は、前記スライド片8のスライド量に基づく値を前記測定結果として表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線やケーブル、導管等の線状体及び管状体の外径を簡単に測定することができる外径測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱等で高所に配設された通電状態における電線の外径を測定する際には、所定の電圧以上の高電圧の場合は停電させ、そうでない場合は、絶縁防具を着用した作業者が梯子や高所作業車等を利用して電線に近づき、マイクロメーターやノギス等の通常の測定器(又は測定器具)を使用して測定していた。
【0003】
このような測定作業は、高所で行われるため、転落等の危険を伴う可能性が懸念される。また、感電防止のために停電を伴ったり、絶縁防具を着用しなければならず、動きにくくなるために測定作業を行い難くなるという問題があった。
【0004】
そこで、図5に示すような、横一列に多数密接して配列した絶縁性を有する細線51を上下移動可能にホルダー52に取り付け、軸方向に伸縮可能な絶縁操作棒53の先端部に前記細線51の方向が前記絶縁操作棒53の軸方向とほぼ一致するようにホルダー52を取り付けた外径測定器50(特許文献1参照)が提供された。
【0005】
この外径測定器50は、電線の外径を測定する際には、図5及び図6に示すように、絶縁操作棒53を所定の長さに伸ばし、絶縁操作棒53先端のホルダー52に取り付けられた細線群51’を測定される電線Dに下又は上から押し当てる。こうすることによって、細線群51’の電線Dに押し当てられた箇所は、電線Dの周に沿って凹み57が形成される。その後、ホルダー52を電線Dから離し、前記形成された凹み57の幅を定規やノギス等の測定器で測定することによって電線Dの外径を測定することができた。
【0006】
このように測定することで、停電を伴うことなく、作業者は高所に登る必要も、また絶縁防具を着用する必要もなく高所に配設された通電状態における電線の外径を簡単に測定することができるようになった。
【特許文献1】特開平8−68602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記外径測定器50自体には、細線群51’を電線に押し当てて形成した凹み57の幅を図る目盛り等がなく、外径測定器50のみでは被測定物である電線Dの具体的な外径の値を知ることはできないという問題があった。
【0008】
一方、前記外径測定器50は、ホルダー52に取り付けられた細線群51’の幅より外径が小さければ、高所に配設された通電状態における電線以外であっても、例えば、手元にあるケーブルや導管等の線状体及び管状体の外径を測定することも可能であった。
【0009】
しかし、この場合も前記同様、前記外径測定器50自体には目盛り等がないため、外径測定器50のみでは被測定物の具体的な外径の値を知ることはできないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、他の測定器具を使用する必要がなく簡単に電線等の線状体及び管状体の外径を測定することができる外径測定器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係る外径測定器は、被測定物の外径を測定するための本体切欠き部とスライド片とから構成される開口方向に向かって幅広な切欠き部が設けられる測定部と、前記測定部での測定結果を表示するための表示部とを備える外径測定器であって、前記スライド片は、被測定物が前記切欠き部内に周方向の三箇所で接するよう押入されると、前記切欠き部における底部の幅が変化する方向にスライドするよう、本体にガイド部を介して配設され、前記表示部は、前記スライド片のスライド量に基づく値を前記測定結果として表示することを特徴とする。
【0012】
上記構成とすることで、前記外径測定器に設けられた、開口方向に向かって幅広となる切欠き部に、電線や導管等の線状体や管状体である被測定物を押入することによってスライド片がスライドし、このスライド量に基づく値を被測定物の外径の測定結果として表示部が表示する。
【0013】
即ち、前記本体切欠き部と前記スライド片とから構成される前記切欠き部の内面を構成する三面の切欠き面に、被測定物の周方向に沿った(横断面の周縁に沿った)周面がそれぞれ接するように押入される。そうすると、前記スライド片は、被測定物の周面に押されて、前記切欠き部の底部の幅が変化する方向にスライド(移動)する。そして、該スライド量が前記表示部へ伝達されることによって、スライド量に基づいた値である被測定物の外径値を表示部が表示できるようになる。
【0014】
尚、前記切欠き部における開口方向と反対方向の部位を底部、開口方向と略直交する方向の部位を側部とする。
【0015】
また、前記切欠き部は、V字状に形成される前記本体切欠き部に対し、前記スライド片が前記切欠き部の底部を構成し、且つ前記被測定物の押入される方向に沿ってスライドするように配設されることによって構成されることが好ましい。
【0016】
上記構成とすることで、前記切欠き部の底部方向、即ち開口方向と逆方向へ被測定物を押入し、押入された前記被測定物の周面と接触した前記スライド片が被測定物に押されて同方向にスライドする。そして、このスライド量が表示部に伝達され、伝達されたスライド量に対応した(基づいた)値が表示部に表示される。
【0017】
このようにして得られた表示部に表示された値を読み取ることで、被測定物の外径を知ることができる。
【0018】
即ち、被測定物を測定部の前記切欠き部の底部方向へ押入するだけで、その外径の具体的数値を知ることができるようになる。また、逆に、外径測定器の測定部における前記切欠き部を被測定物に押しつけることによっても、被測定物が測定部の前記切欠き部の底部方向へ押入され、前記同様、その外径の具体的数値を知ることができるようになる。
【0019】
また、前記V字状切欠き部は、そのV字状の一方の切欠き面が他方の切欠き面より長くなるように形成される構成とすることが好ましい。
【0020】
上記構成とすることで、前記切欠き部も側部の一方が他方よりも長くなる。そうすると、被測定物を前記切欠き部へ押入する際、まず、長い方の側部内面(切欠き面)に被測定物を接触させ、次に、この内面に沿って切欠き部の底部方向へ被測定物を滑らせることで前記切欠き部内へ被測定物を案内しやすくなる。その結果、前記切欠き部の開口幅が狭い場合や、被測定物の直径が大きい場合であっても、前記切欠き内に容易に被測定物を案内することができ、測定作業が行いやすくなる。
【0021】
また、前記切欠き部が設けられる本体部は、棒状の遠隔操作棒の先端部に着脱自在で、前記切欠き部の開口方向と前記遠隔操作棒の軸芯とのなす角を変更可能な接続部をさらに備える構成とすることが好ましい。
【0022】
上記構成とすることで、棒状の遠隔操作棒に取り付けることができるようになり、手の届かない高所等の遠隔地に配設された電線等の被測定物の外径も測ることができるようになる。
【0023】
さらに、前記本体部は、切欠き部の開口方向を遠隔操作棒の軸芯に対して任意の角度に向けて遠隔操作棒へ取り付けることができるようになるため、被測定物へ任意の方向から前記切欠き部を押しつけることができるようになり、測定作業が行いやすくなる。
【0024】
また、前記遠隔操作棒の先端部に設けられる放射状且つ等間隔の短い複数の凸条に対し、前記接続部は、前記遠隔操作棒先端に設けられた凸条と噛み合うよう、同じく放射状且つ等間隔の短い複数の凸条が設けられる構成とすることが好ましい。
【0025】
上記構成とすることで、前記放射状の凸条部と噛み合うことができるよう、対応する位置に同様の放射状の凸条を複数設けた遠隔操作棒に外径測定器を取り付けると、互いの凸条部同士が噛み合うため、前記切欠き部の開口方向が変わらないよう、任意の方向に向けてしっかりと固定できるようになる。
【0026】
即ち、外径測定器の凸条が遠隔操作棒の凸条間に位置すると共に遠隔操作棒の凸条が外径測定器の凸条間に位置するよう、互いに設けられた放射状の凸条部同士を一方の凸条が他方の凸条間に位置するように対向させることで、凸条の設けられた面に沿った方向へのズレが規制できるようになる。従って、この放射状の凸条部同士の噛み合いを解放しない限り、前記切欠き部の凸条の設けられた面に沿った方向へのズレによって開口方向が変わることはない。その結果、前記切欠き部の開口方向が変わらないよう、しっかりと前記遠隔操作棒の先端部に固定できるようになる。
【0027】
また、前記切欠き部は、L字状に形成される前記本体切欠き部に対し、前記スライド片が前記切欠き部の側部を構成し、且つ前記L字状切欠き部の一辺と離間する方向に沿ってスライドするように配設されることによって構成されるようにしても良い。
【0028】
上記構成とすることでも、前記切欠き部の底部方向、即ち開口方向と逆方向へ被測定物を押入すれば、押入された前記被測定物の周面と接触した前記スライド片が被測定物に押されて被測定物が押入される方向と略直交する方向にスライドし、このスライド量に基づいて、被測定物の外径の値が測定結果として表示部に表示される。
【0029】
このようにして得られた表示部に表示された値を読み取れば、前記同様、被測定物の外径を知ることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上より、本発明によれば、他の測定器を使用する必要がなく、被測定物を測定部の切欠き部に押入するだけで簡単に電線等の線状体や管状体の外径を測定することができる外径測定器を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る外径測定器の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る外径測定器1は、板状の縦長形状をしており、本体2の先端部に電線等の被測定物の外径を測定するための測定部3が、中央部には測定した前記被測定物の外径の値が表示される表示部4が、また、基端部(後端部)には後述する遠隔操作棒20(図2参照)との接続部5が、それぞれ設けられ、前記測定部3と前記表示部4と前記接続部5とが一体的に構成されている。
【0033】
より詳細に説明すると、本体2は、アクリル樹脂で形成された薄板状の表面部材2f及び裏面部材2bを重ね合わせた板状体として構成されている。尚、本実施形態においては、通電状態の電線の外径を測定することから絶縁性を有するアクリル樹脂で形成されているが、絶縁性を有していれば他の樹脂等で形成されていても良く、通電状態の被測定物の外径を測定するのでなければ絶縁性を有しない部材で形成されていても良い。また、本実施形態においては、本体2は、薄板状の部材2f,2bを重ねた縦長板状体として構成されているが、後述する被測定物を押入するための切欠き部が設けられていれば前記縦長板状体に限定される必要はなく、円盤状等の幅広な形状でも良く、柱状体等の厚みを有する形状であっても良い。
【0034】
この本体2の先端部に形成されている測定部3は、開口方向(上方側)に向かって幅広となる切欠き部(コ字状切欠き部)6が開口を上方(先端方向)に向けて形成されている。この切欠き部6は、本体2の先端部に設けられたV字状の切欠き部(V字状切欠き部)7とスライド片8とで構成されている。
【0035】
V字状切欠き部7は、その内側を下方に行くに従って互いの距離が近くなるような切欠き面(斜面)9,10によって構成され、下方(基端側)の交差部は径の小さい円弧面状に構成されている。この斜面9,10は、正面視直線状で、そのなす角度は、本実施形態の場合、約22度である。また、一方の斜面9は、他方の斜面10よりも長くなるように形成されている。即ち、本体2先端部の斜面9側を上方に延設することで斜面の長さが異なるように形成されている。そして、長い方の斜面9は、短い方の斜面10よりもやや上方(先端側方向)で上下方向に沿うように屈曲している。尚、斜面9,10は、連続的で平滑な平面のみから構成されている場合だけではなく、溝が形成されていたり断続的な面である場合もある。
【0036】
このV字状切欠き部7の開口部より下方側に、前記切欠き部6の底部11を構成するようにスライド片8が配設されている。スライド片8は、前記底部11を構成する直線状の先端と、その先端と直角をなすように形成された直線状の両側片とから構成される矩形状の薄板体12である。この薄板体12には、後述する表示部4において測定値(被測定物の外径の値)を指示するための指示部13が設けられている。
【0037】
スライド片8は、表面部材2fと裏面部材2bとの界面の対応する部位に、スライド片8と同一若しくはわずかに幅広で上下方向に長い真っ直ぐな溝を掘ることにより形成された横断面視矩形状の空間で構成されるガイド部14内に配設されている。前記スライド片8は、このガイド部14にガイドされることで、前記切欠き部6の開口方向(上下方向)に沿って往復動(上下動)自在にスライド(摺動)可能となる。
【0038】
尚、本実施形態において、スライド片8は、本体2の内部に形成されるガイド部14を介して本体2の内部に配設されているが、例えば、ガイドレールを本体2の外部に設けることで、かかるガイドレールによって構成されるガイド部を介して、本体2の外部にスライド可能に配設されても良い。
【0039】
本体2の中央部には、被測定物の外径を計測した際に被測定物の外径の値が表示される表示部4が設けられている。該表示部4は、表面部材2fに形成された表示穴15と、この表示穴15の側部に沿って本体2に設けられた目盛り部Sと、スライド片8の後端部に設けられ、スライド片8のスライドに伴って移動し、被測定物の外径に対応する目盛り部Sの目盛りを指示する指示部13とから構成される。
【0040】
前記表示穴15は、縦長且つ一定幅の帯形状に形成される。該表示穴15に沿って、その側部に所定間隔の目盛り及び数値が設けられることによって目盛り部Sが形成されている。この目盛り及び数値は、被測定物の外径を示すためのものである。この目盛り及び数値を指示するための指示部13は、表示穴15から表面側に突出するように配設されている。そして、該指示部13は、前記スライド片8の上下方向のスライド量に基づいて表示穴15に沿って上下方向に移動する。このようにして移動した後の指示部13の指示する目盛り部Sの目盛り等の値が被測定物の外径の値となる。本実施形態においては、指示部13の下端部横の目盛りが被測定物の外径の値である。
【0041】
尚、本実施形態においては、被測定物の外径の単位をミリメートルとして目盛り部Sの目盛り間隔及び数値が設定されているが、例えば、スケアミリ等の被測定物の断面積を基準とした単位であっても良く、インチやフィート等の他の長さの単位を用いても良い。また、目盛り間隔は、一定間隔である必要はなく、スライド片8のスライド量に基づいて外径の値を表示できるように設定された間隔であれば良い。
【0042】
また、前記本体2の下端部(基端部)に形成されている接続部5は、本体2の下端側を半円弧状とし、その下端側中央に開口を下端側方向に向けたU字状の切欠き部(U字状切欠き部)16が形成されている。前記本体2下端の半円弧形状と、U字状切欠き部16上部(開口と逆方向の部分)の円弧部17とは、その円弧の中心が同一の中心Cとなるように形成されている。
【0043】
前記接続部5の一方面(本実施形態においては裏面)には、前記中心Cから放射状に、複数の短い凸条(突起)18,18,…が設けられている。前記凸条は、前記中心Cを中心とした円に沿って等間隔に並ぶように配設されている。
【0044】
次に、図2に示すように、前記外径測定器1を先端に取り付け、高所等の遠隔位置に配設された電線等の被測定物の外径を測定する際に使用される遠隔操作棒20について説明する。
【0045】
遠隔操作棒20は、伸縮自在の棒状体である。この棒状体は、手で把持して操作するための基端軸21と、先端に外径測定器1を接続することができる伸縮軸22とから構成されている。これら基端軸21及び伸縮軸22は、共にエポキシ樹脂系強化プラスチック、ポリエステル樹脂系強化プラスチック等の変形し難く且つ絶縁性が低下しない部材を用いてパイプ状に形成されている。
【0046】
このような部材で形成された基端軸21及び伸縮軸22は、基端軸21先端から出し入れ自在に伸縮軸22を内挿することで遠隔操作棒20を構成する。この伸縮軸22を基端軸21から出し入れし、遠隔操作棒20を目的の長さにして固定するために、基端軸21の先端には締め付けネジ23が設けられている。該締め付けネジ23は、短筒形状に形成され、軸芯が基端軸21と同一になるように設けられている。また、軸芯周りに回動可能に取り付けられており、この締め付けネジ23を締め付け方向に回転させることで、伸縮軸22を必要な長さだけ基端軸21から送出した状態で固定でき、反対方向に回転させることで伸長軸22の固定状態が解放される。
【0047】
伸縮軸22の先端には、外径測定器1を接続するための接続部24が設けられている。該接続部24は、正面視舌状の板状体(舌状板状体)25で構成され、その一方面(本実施形態においては表面)の中心部には雄ねじが螺刻された回転軸26が設けられている。この回転軸26は、軸芯が遠隔操作棒20の軸芯と直交し、且つ舌状板状体25の一方面と直交する方向になるように設けられている。そして、この回転軸26には、外径測定器1を取り付ける際、外径測定器1の接続部5を挟持固定するための挟持手段(締め付け手段)27が螺合されている。尚、本実施形態における、挟持手段は蝶ナットである。
【0048】
前記舌状板状体25の表面には、回転軸26の軸芯から放射状に複数の短い凸条28,28,…が設けられている。前記凸条28,28,…は、前記軸芯を中心にした円に沿って等間隔に並ぶように配設(配列)されている。そして、前記軸芯を中心にした円は、外径測定器1の接続部5に設けられた円状に配設された凸条18,18,…と同一径となるように設定されている。
【0049】
また、前記凸条28,28同士の間隔は、外径測定器1の接続部5に、中心Cの円に沿って等間隔で並ぶように設けられている複数の凸条18,18,…と対向させた際に、一方の凸条18(又は28)が他方の凸条28,28(又は18,18)間に嵌り込むような間隔に設定されている。即ち、接続部5,24を凸条18,18,…と凸条28,28,…とが設けられた面同士を対向させて接続した際に、互いの凸条18,18,…と凸条28,28,…とが噛み合うような位置関係に設定されている。
【0050】
次に、外径測定器1の使用方法について説明するが、遠隔操作棒20に外径測定器1を取り付けて高所に配設された電線の外径を測定する場合について説明する。
【0051】
まず、外径測定器1の表示部4をリセットする。即ち、表示部4の指示部13を表示穴15の上方端(先端)に移動させる。この移動に伴って指示部13を備えるスライド片8が同方向にスライドする。その結果、切欠き部6の底部11が先端側に移動し、図3(イ)に示すような開口部と底部との距離が短い、即ち、側部が短く底の浅いコ字状となる。
【0052】
次に、遠隔操作棒20の先端へ表示部4をリセットした外径測定器1を取り付ける。そのために、遠隔操作棒20の接続部24に設けられた回転軸26に螺合している蝶ナット27を緩める。即ち、蝶ナット27を回転軸26の軸芯を中心に一方向に回転(一般的なネジ山の向きであれば左回転)させて舌状板状体25から蝶ナット27が離れる方向に移動させる。
【0053】
このようにしてできた蝶ナット27と舌状板状体25との間隙に、外径測定器1の接続部5を嵌挿する。その際、接続部5に設けられたU字状切欠き部16に蝶ナット27と舌状板状体25間の回転軸26が嵌入されると共に、両接続部5,24にそれぞれ設けられた凸条18,18,…と凸条28,28,…とが対向するように接続部5を嵌挿する。
【0054】
そして、蝶ナット27を緩める際に回転させた方向と反対方向に回転させることで締め付ける。そうすることによって、蝶ナット27と舌状板状体25との間隙が狭くなり外径測定器1の接続部5は挟持固定される。
【0055】
この時、外径測定器1の接続部5に設けられた円に沿って配設された凸条18,18,…と、遠隔操作棒20の接続部24(舌状板状体25)に設けられた円に沿って配設された凸条28,28,…とは、互いに対向するように接近させると噛み合うような位置関係に設定(配設)されている。従って、凸条18,18,…と凸条28,28,…とが設けられた面同士を対向するように接続部5と接続部24とを接触させて固定すると、互いの凸条同士が噛み合い、外径測定器1の切欠き部6の開口方向と、遠隔操作棒20の軸芯方向とのなす角が変わり難くなる。
【0056】
即ち、一方の凸条18(又は28)が他方の凸条28,28(又は18,18)間に嵌合するように両接続部5,24は固定されるため、外径測定器1の接続部5と遠隔操作棒20の接続部24とが回転軸26を中心にした相対回転をしないように固定される。
【0057】
従って、蝶ナット27を締め付ける際に、測定する電線の配設状況によって、外径測定器1の切欠き部6の開口方向が遠隔操作棒20の軸芯方向に対して目的の角度となるように回転軸26を中心にして回転させてから締め付けることで、目的の角度に固定することができる。しかも、その角度が測定作業等によって力が加わっても変わり難いことから、電線の外径の測定作業が非常に行いやすくなる。
【0058】
尚、本実施形態においては、外径測定器1の接続部5と遠隔操作棒20の接続部24との接続時に対向するそれぞれの面に、放射状に複数の短い凸条を円に沿って等間隔に配設している。しかし、接続部をこのような構成に限定する必要はなく、例えば、少なくとも一方の先端部又は下端部に任意の角度(姿勢)で固定できる関節機構を設け、外径測定器1の接続部と遠隔操作棒20の接続部とをネジ止め等の固定手段によって固定接続しても良い。このようにしても、電線等の被測定物の配設状況によって切欠き部6の開口方向を任意の方向とすることができ、測定作業は、前記同様に行いやすくできる。
【0059】
また、外径測定器1と遠隔操作棒20とが一体的に形成されても良い。この場合、種々の状況において測定作業を行いやすくするために、外径測定器1の切欠き部6の開口方向を任意の方向に向けるための前記関節機構を設けることが好ましい。
【0060】
また、本実施形態においては、通電状態の電線の外径を測定することから、遠隔操作棒20は、絶縁性を有する素材で構成されているが、通電されていない被測定物の外径のみを測定する場合は、遠隔操作棒20は、絶縁性を有してなくても良い。
【0061】
次に、遠隔操作棒20を構成する基端軸21先端の締め付けネジ23を緩める方向に回転させ、遠隔操作棒20が目的の長さになるように伸縮軸22を基端軸21先端から送出する。その後、締め付けネジ23を締め付け方向に回転させて伸縮軸22を固定する。このように、遠隔操作棒20の長さは、電線の配設されている位置(高さ)によって変えることができるため、測定作業が行いやすくなる。
【0062】
尚、本実施形態においては、遠隔操作棒20は伸縮部が1箇所の二段式であるが、この伸縮部を2箇所以上の多段式にしても良い。そうすることで、遠隔操作棒20は、最も縮めた際に、長さが短くコンパクトで持ち運びが便利になったり、最も伸ばした際に、本実施形態よりも長く、より作業者から離れた位置の電線の外径の測定を行うことがでるようになる。
【0063】
このように、遠隔操作棒20は、外径測定器1を切欠き部6の開口方向が目的の方向になるよう先端に取り付け、被測定物である電線の配設された高さに対応する長さに調節された後、外径測定器1が電線に接近するように操作される。
【0064】
そして、図3(イ)及び(ロ)に示すように、外径測定器1に電線が押入され電線の外径が計測される。その際、まず、外径測定器1の切欠き部6の長い方の切欠き面9に電線が接する。より詳細には、切欠き面10よりも上方に延設された、切欠き面9の屈曲部よりも上方に電線が接する。その状態でさらに外径測定器1を電線に接近させると、電線が切欠き面9に沿って切欠き部6の内側に案内される。この時、電線の周面は、切欠き部6の底部11に最初に接する。
【0065】
さらに電線が切欠き部6の底部方向(開口方向と逆方向)に押入されるように遠隔操作棒を操作し続ける。そうすることで、底部11が電線の周面によって底部方向に押され、それに伴ってスライド片8も同方向にスライドする。そして、電線は、その周面が切欠き部6の底部11及び両側部の3箇所と接するまで切欠き部6の内部に押入される。その後、外径測定器1は、電線から引き離され、作業者の手元に引き寄せられる。
【0066】
手元に引き寄せられた外径測定器1は、電線を切欠き部6に押入された際にスライド片8がスライドした状態のままである。従って、この外径測定器1の表示部4における指示部13の指示する目盛り部Sの目盛りや数値等を読み取ることで、電線の外径の値を知ることができる。
【0067】
以上より、本実施形態に係る外径測定器1は、他の測定器具を使用することなく、測定部3に設けられた切欠き部6に電線等の被測定物を押入するだけで簡単に被測定物の外径を測定することができる。
【0068】
また、遠隔操作棒20を使用することによって、手の届かない高所に配設された電線等の外径を測定することができるようになる。尚、手の入らないような場所や、近寄るのが困難な場所に配設された被測定物の外径も、同様に、遠隔操作棒20を使用することによって測定することができるようになる。
【0069】
さらに、手の届く範囲に配設される被測定物の外径を測定する場合には、遠隔操作棒20を使用すると測定し難い場合がある。そのため、必ずしも遠隔操作棒20を使用する必要はない。そのような場合には遠隔操作棒20を取り付けずに、外径測定器1を直接手に把持して測定すれば良い。その場合、前記使用方法のうち、遠隔操作棒20に関する部分を除いて測定すれば良い。また、外径を測定する被測定物は、電線に限定する必要はなく、切欠き部6の開口幅よりも狭ければワイヤー等の線状体や導管等の管状体であっても良い。
【0070】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は可能である。
【0071】
例えば、本実施形態において、外径測定器1の本体2に設けられたV字状切欠き部7の切欠き面9,10のなす角は、約22°であるが、この角度より大きくても良く、また、小さくても良い。前記角度を大きくすれば、より外径の大きな被測定物を測定することができるようになる。また、前記角度を小さくすれば、被測定物の外径の単位長さに対するスライド片8のスライド量が大きくなるため、より精密に被測定物の外径値を測定することができるようになる。さらに、前記角度を小さくすることで外径測定器1の幅を狭くすることができ、コンパクト化を図ることができるようになる。
【0072】
また、本実施形態において、前記V字状切欠き部7の切欠き面9,10は、一方が他方よりも長く、長い方の切欠き面9は上方で屈曲し、且つ屈曲部より下方では、切欠き面9,10は、正面視直線上に形成されている。しかし、これに限定される必要はなく、V字状の切欠き面は同じ長さでも良く、途中で屈曲していなくても良い。また、切欠き面は、正面視円弧等の曲線状であっても良い。この場合、外径測定器1の表示部4の目盛りは、等間隔ではなく、被測定物の外径に対応したスライド片8のスライド量に基づいて設定すれば良い。
【0073】
また、本実施形態において、表示部4は、スライド片8に立設された指示部13がスライド量に基づいて直接目盛り部Sの目盛りを指示することで被測定物の外径の値が表示されるが、スライド片8から伝達機構を介してスライド量が伝達され、この伝達されたスライド量に基づいて被測定物の外径の値を表示するような構成の表示部であっても良い。この場合、被測定物の外径値の表示は、本実施形態のような指示部による目盛り等の指示によって表示されても良く、また、デジタルパネル等に数字で表されるような構成であっても良い。
【0074】
さらに、本実施形態において、スライド片8は、開口方向(被測定物の押入方向)に沿って往復動することによって、切欠き部6の底部11の幅が変化するように備えられている。しかし、図4(イ)に示すように、スライド片8’が回転方向(矢印α方向)にスライドし、切欠き部6の一方の側部(スライド片8’)が他方の側部9’から離間することで底部11’の幅が変化するように備えられていても良い。また、図4(ロ)に示すように、スライド片8”が開口方向と直交する方向(矢印β方向)にスライドすることで底部11”の幅が変化するように備えられても良い。尚、この場合、スライド片8’は、回転軸Kを中心に回動し、スライド片8”は、ガイド穴G,Gにスライド片8”に設けられたガイド用突起T,Tを挿通することで左右方向への往復動が可能としているが、このような構成に限定される必要はない。
【0075】
このような構成としても、切欠き部6’,6”が開口方向に向かって幅広になるように構成されていれば、被測定物を押入した際に、その周側面によってスライド片が押されてスライドし、被測定物の周側面が切欠き部6の底部及び両側部の3箇所と接するまで押し込む(押入する)ことができる。そして、この時のスライド片のスライド量に基づいて、被測定物の外径の値を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態に係る外径測定器の、(イ)は正面図を示し、(ロ)は背面図を示し、(ハ)は拡大A−A線断面図を示す。
【図2】同実施形態に係る遠隔操作棒の、(イ)は正面図を示し、(ロ)は先端部の拡大正面図を示し、(ハ)は先端部の拡大側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る外径測定器の、(イ)は電線を押入する前の正面図を示し、(ロ)は電線を押入した後の正面図を示す。
【図4】(イ)及び(ロ)は、本発明に係る外径測定器の他実施形態の正面図を示す。
【図5】従来の外径測定器の、(イ)は正面図を示し、(ロ)は、先端部の拡大斜視図を示す。
【図6】従来の外径測定器の、(イ)は、電線を押し当てた状態の先端部の拡大正面図を示し、(ロ)は、電線を離した状態の先端部の拡大正面図を示す。
【符号の説明】
【0077】
1…外径測定器、2…本体、3…測定部、4…表示部、5…接続部、6…切欠き部(コ字状切欠き部)、7…V字状切欠き部、8…スライド片、9,10…切欠き面、11…底部、13…指示部、14…ガイド部、15…表示穴、16…U字状切欠き部、17…円弧部、18…凸条(突起)、20…遠隔操作棒、21…基端軸、22…伸縮軸、23…締め付けネジ、24…接続部、25…舌状板状体、26…回転軸、27…蝶ナット(挟持手段又は締め付け手段)、28…凸条(突起)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の外径を測定するための本体切欠き部とスライド片とから構成される開口方向に向かって幅広な切欠き部が設けられる測定部と、前記測定部での測定結果を表示するための表示部とを備える外径測定器であって、前記スライド片は、被測定物が前記切欠き部内に周方向の三箇所で接するよう押入されると、前記切欠き部における底部の幅が変化する方向にスライドするよう、本体にガイド部を介して配設され、前記表示部は、前記スライド片のスライド量に基づく値を前記測定結果として表示することを特徴とする外径測定器。
【請求項2】
前記切欠き部は、V字状に形成される前記本体切欠き部に対し、前記スライド片が前記切欠き部の底部を構成し、且つ前記被測定物の押入される方向に沿ってスライドするように配設されることによって構成されることを特徴とする請求項1記載の外径測定器。
【請求項3】
前記V字状切欠き部は、そのV字状の一方の切欠き面が他方の切欠き面より長くなるように形成されることを特徴とする請求項2記載の外径測定器。
【請求項4】
前記切欠き部が設けられる本体部は、棒状の遠隔操作棒の先端部に着脱自在で、前記切欠き部の開口方向と前記遠隔操作棒の軸芯とのなす角を変更可能な接続部をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3記載の外径測定器。
【請求項5】
前記遠隔操作棒の先端部に設けられる放射状且つ等間隔の短い複数の凸条に対し、前記接続部は、前記遠隔操作棒先端に設けられた凸条と噛み合うよう、同じく放射状且つ等間隔の短い複数の凸条が設けられることを特徴とする請求項4記載の外径測定器。
【請求項6】
前記切欠き部は、L字状に形成される前記本体切欠き部に対し、前記スライド片が前記切欠き部の側部を構成し、且つ前記L字状切欠き部の一辺と離間する方向に沿ってスライドするように配設されることによって構成されることを特徴とする請求項1記載の外径測定器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−127477(P2007−127477A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319335(P2005−319335)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】