説明

外部寄生生物を制御するための方法および組成物

外部寄生生物卵の孵化を阻害する方法であって、外部寄生生物卵を金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、この化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、またはこの化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、この複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つの金属キレート剤および/またはメタロプロテアーゼ阻害剤に曝露する段階を含む方法が提供される。外部寄生生物侵襲を治療する方法およびそのような方法において用いるための組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、外部寄生生物を制御するための方法および組成物に関する。特に、本発明は、外部寄生生物卵の孵化を阻害するための方法および組成物に関する。本発明は、外部寄生生物侵襲を予防または治療するための方法および組成物も提供する。本発明は、外部寄生生物卵孵化を阻害することができる化合物を同定するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
昆虫を含む外部寄生生物は、広い範囲の動物および植物において著しい有害生物問題を引き起こす。特に、外部寄生生物は典型的にはヒトおよび家畜を悩ませ、かみつき、感染の原因となる。特に問題となるのは、そのような寄生生物のヒト、イヌおよびネコなどの家庭内のペットまたはコンパニオンアニマル、ならびにウマなどの家畜における存在および影響である。
【0003】
ノミ、マダニ、ハエ、シラミおよびダニなどの、かみつく、または吸血有害生物(外部寄生生物)を制御または除去するための、様々な組成物および適用技術が公知である。長年の間、そのような外部寄生生物を制御するために、多数のエアロゾルおよび空間噴霧、液剤、セッケン、シャンプー、水和剤、顆粒剤、餌、ならびに粉剤が提唱されてきた。
【0004】
外部寄生生物の従来の制御手段は、化学殺虫剤、例えば塩素化炭化水素(DDT、エンドスルファンなど)、および合成ピレスロイド(シペルメトリン、デルタメトリン)の使用に頼っていた。化学殺虫剤の使用に伴う問題には、標的外部寄生生物の抵抗性発現、化学物質の環境および動植物組織への残留、ならびに宿主および非標的生物に対する有害作用が含まれる。
【0005】
他のタイプの外部寄生生物撲滅薬には、キチン合成を妨害することが知られている昆虫成長制御剤(IGR)および殺虫性細菌毒素(例えば、バチルス スリンギエンシス(Bt)毒素)などの殺虫剤が含まれる。より有用な殺虫剤群は、有機リンおよび合成ピレスロイドなどの高い殺虫活性および低い環境残留性を有するものである。しかし、これらの殺虫剤に伴う著しい問題は、標的昆虫の抵抗性発現である。
【0006】
例えば、シラミを治療するために用いられる殺虫剤はEP 0191236および米国特許第5,288,483号に記載されている。これらの薬剤を用いることの著しい不都合は、シラミが抵抗性となりうることである。さらなる治療が必要となることで、これらの強い薬剤への曝露が増え、コストが上がる。加えて、医師および親はヒトに対して毒性でありうる薬剤で子供を治療することを嫌がる。さらに、これらの化合物の多くは不快臭または他の望ましくない性質を有し、患者の服薬不履行を引き起こし、個人の再侵襲につながり、他者に侵襲を伝播する。加えて、これらの薬剤は強いため、予防薬としての使用には不適当である。
【0007】
アタマジラミ侵襲の場合、トウモロコシ油、オリーブ油、ユーカリ油、ニーム油、ココナツ油、マヨネーズ、またはワセリンをシラミが死滅するのに十分な期間(例えば終夜)適用するなどの家庭療法は実用的または完全に効果的ではない。アタマジラミを治療する方法の他の不都合は、別の治療段階で毛髪から卵を除去する必要があることである。卵の除去は、典型的には、特別な細かい歯のくしを用いて手で行ってきた。アタマジラミを治療するためにくしだけを用いると、シラミがその爪で毛幹にしがみつく、またはくしですいた領域からはい出して逃げることができるという不都合がある。この大きな労力を要する方法は、毎日くしですく必要があり、痛く、シラミが活性で、目に見え、はい出すため、不快である。
【0008】
世界中でシラミの改善された制御が強く必要とされている。特に、シラミの治療を目的とした製品の失敗が詳細に報告されている。ペルメトリン、ピレトリンおよびマラチオンを含む、現在用いられている化学物質の多くに対するシラミの抵抗性発現が、治療失敗の主な因子であると考えられる。加えて、最適以下の活性を含む不適当な製剤も、部分的には抵抗性発現の一因であると考えられる。最近になって、アタマジラミを治療するための本草製品の市場が大幅に拡がってきたが、これらの製品の有効な評価を可能にする、適切に行われた試験からの証拠はほとんど公開されていない。さらに、いくつかの製品が殺卵活性を有すると主張されているが、最初の治療後、新しく現れた幼虫を死滅させるために、二回目の治療を7日〜14日後に行うべきであると推奨することが製品にとって一般的であるため、当技術分野におけるその証拠はまったく確証的ではない。
【0009】
最近、外部寄生生物を制御する手段を提供する可能性がある昆虫プロテアーゼに関心が集まっている。プロテアーゼは、タンパク質およびペプチドの調節および分解を含む、様々な機能を行い、したがって消化を助ける。また、プロテアーゼは胚の発生、脱皮および蛹化中の組織再編成にも関与している。プロテアーゼは多様な酵素群であり、種内および種間で数および触媒特性の両方が非常に異なる消化プロテアーゼが含まれる。例えば、トリプシン様セリンプロテアーゼは脱皮の主要な成長調節領域に関与することが認められた(Samuels R.I. and Paterson C.J., Comparative Biochemistry and Physiology, 1995, 110B: 661-669)。
【0010】
プロテアーゼ阻害剤は、特に外部寄生生物が化学殺虫剤に抵抗性となっている場合に、これらの化学制御法の有用な代替法であることが示唆されている。特に、セリンおよびシステインプロテアーゼ阻害剤は、幼虫の成長および/または様々な昆虫の生存を低下させることが明らかにされている(Dymock et. al., New Zealand Journal of Zoology, 1992, 19: 123-131)。成長阻害は腸の主な消化酵素の阻害剤によって達成され、外部寄生生物の幼虫または成熟寄生生物を標的としている。しかし、プロテアーゼ阻害剤の様々なクラスの他のタイプの活性および機能についてはほとんど知られていない。既存の外部寄生生物撲滅薬の一般的な問題は、外部寄生生物卵に作用しないことであり、したがって寄生生物撲滅薬の宿主への適用は、それが有効となるために治療の繰り返しまたは寄生生物撲滅薬への長期間曝露を必要とすることが多い。これは不便であるだけでなく、環境および宿主へのリスクを高めることにもなる。
【0011】
したがって、いまだに、外部寄生生物の効率的な制御を提供するために、外部寄生生物卵孵化を阻害する際に有効な代替法および組成物を提供する必要がある。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明の一局面において、外部寄生生物卵の孵化を阻害する方法であって、外部寄生生物卵を金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、この化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、またはこの化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、この複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つの金属キレート剤に曝露する段階を含む方法が提供される。
【0013】
本発明のもう一つの局面において、外部寄生生物卵の孵化を阻害する方法であって、外部寄生生物卵をメタロプロテアーゼ阻害剤の有効量に曝露する段階を含む方法が提供される。
【0014】
本出願は、外部寄生生物卵孵化を阻害するための有効な薬剤として金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤を同定した。金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤の外部寄生生物卵孵化を阻害するための使用は、外部寄生生物の繁殖周期を防止し、それにより外部寄生生物侵襲を制御するという利点を有する。
【0015】
もう一つの局面において、宿主における外部寄生生物侵襲を治療または予防する方法であって、金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、この化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、またはこの化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、この複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つのキレート剤の有効量を適用する段階を含む方法が提供される。
【0016】
本発明のさらにもう一つの局面において、宿主における外部寄生生物侵襲を治療または予防する方法であって、少なくとも一つのメタロプロテアーゼ阻害剤の有効量を被験者に適用する段階を含む方法が提供される。
【0017】
本発明のさらにもう一つの局面において、シラミ卵の孵化を阻害する方法であって、シラミ卵を少なくとも一つの式(Ia)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩の有効量に曝露する段階を含む方法が提供される:

式中、Xは共有結合、-C(R5)2-、-Z-または-C(R5)2-Z-C(R5)2-から選択され;
R1およびR1'は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオ、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から独立に選択され;
R2、R2'、R3、R3'、R4およびR4'は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルもしくはN(C1-6アルキル)2、または-CH2CHNH(CO2H)から独立に選択されるか;あるいは
R2およびR3もしくはR3およびR4ならびに/またはR2'およびR3'もしくはR3'およびR4'はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5または6員炭素環または複素環を形成し;
各R5は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から独立に選択され;かつ
Zは共有結合、-NH-、-O-、-S-、-C(O)-および-C(S)-から選択される。
【0018】
本発明のさらなる局面において、外部寄生生物卵の孵化を阻害するための組成物であって、金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、この化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、またはこの化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、この複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つの金属キレート剤の有効量と、適当な希釈剤、賦形剤または担体とを含む組成物が提供される。
【0019】
本発明のさらなる局面において、外部寄生生物卵の孵化を阻害するための組成物であって、少なくとも一つのメタロプロテアーゼ阻害剤の有効量と、適当な希釈剤、賦形剤または担体とを含む組成物が提供される。
【0020】
本発明のもう一つの局面において、外部寄生生物卵の孵化を阻害する化合物の同定法であって、化合物の外部寄生生物卵内に存在するメタロプロテアーゼを阻害する能力を評価する段階を含む方法が提供される。
【0021】
本発明のさらにもう一つの局面において、前述の方法によって同定される金属キレート剤および/またはメタロプロテアーゼ阻害剤が提供される。
【0022】
好ましい態様の詳細な説明
本明細書において用いられる「金属キレート剤」なる用語は、金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物を意味し、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、この化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、またはこの化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、この複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい。好ましくは、金属キレート剤はアリールまたはヘテロアリール環を含む。より好ましくは、金属キレート剤は少なくとも一つの窒素ヘテロ原子を含む。好ましくは、金属キレート剤は非介在性(non-intercalating)である。
【0023】
本明細書において用いられる「メタロプロテアーゼ阻害剤」なる用語は、外部寄生生物卵孵化に関連するメタロプロテアーゼの活性を阻害する分子、化合物、タンパク質または薬剤を意味する。阻害は、メタロプロテアーゼの発現の阻害であってもよく、またはメタロプロテアーゼの酵素活性の阻害であってもよい。好ましいメタロプロテアーゼ阻害剤は金属キレート剤である。
【0024】
好ましい金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤は、ビアリール化合物、ペプチドおよびアミノ酸誘導体、四環式抗生物質ならびにチオ尿素から選択される。好ましいビアリール化合物には、ビピリジル化合物および1,10-フェナントロリン化合物が含まれる。
【0025】
一つの態様において、金属キレート剤もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤は式(I)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である:

式中、Xは共有結合、-C(R5)2-、-Z-または-C(R5)2-Z-C(R5)2-から選択され;
R1およびR1'は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオ、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルもしくはN(C1-6アルキル)2から独立に選択されるか、またはR1およびR1'は一緒になってC(R5)2-、-C(R5)2-C(R5)2-、-CR5=CR5-、C(O)、C(S)もしくはNHであり;
R2、R2'、R3、R3'、R4およびR4'は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルもしくはN(C1-6アルキル)2、または-CH2CHNH(CO2H)から独立に選択されるか;あるいは
R2およびR3もしくはR3およびR4ならびに/またはR2'およびR3'もしくはR3'およびR4'はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5または6員炭素環または複素環を形成し;
各R5は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から独立に選択され;かつ
Zは共有結合、-NH-、-O-、-S-、-C(O)-および-C(S)-から選択される。
【0026】
好ましい式(I)の化合物は、下記の特徴の少なくとも一つを有する:
R1およびR1'はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオ、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2、より好ましくは水素またはC1-C3アルキル、さらにより好ましくは水素またはメチルから独立に選択される;
R2およびR2'は独立に水素またはC1-3アルキル、より好ましくは水素である;
R3、R3'、R4およびR4'は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオールまたはCO2C1-6アルキル、好ましくは水素またはC1-3アルキル、より好ましくは水素またはメチルから独立に選択される;
各R5は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオールまたはCO2C1-6アルキル、好ましくは水素またはC1-3アルキル、より好ましくは水素またはメチルから独立に選択される;
Xは共有結合、-CH2-Z-CH2-またはZ、好ましくは共有結合である;および
Zは-NH-、-O-または-S-、好ましくは-NH-である。
【0027】
好ましい式(I)の化合物には
2,2'-ジピリジル、
6,6'-ジメチル-2,2'-ジピリジル、および
5,5'-ジメチル-2,2'-ジピリジル、
またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩が含まれる。
【0028】
もう一つの態様において、金属キレート剤もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤は式(II)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である:

式中、X'は共有結合、-C(R13)2-、Z'またはC(R13)2-Z'-C(R13)2-から選択され;
UはNまたはC(R13)から選択され;
Wは-NH-、-S-または-O-から選択され;
Z'は共有結合、-NH-、-O-、-S-、-C(O)-、または-C(S)-から選択され;
R10は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、または-(CH2)nR14から選択され;
R11は各アリールまたはヘテロアリールが一つまたは複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、またはハロで置換されていてもよい(CH2)mアリールまたは(CH2)mヘテロアリールから選択され;
各R12は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、もしくは-(CH2)nR14から独立に選択されるか;または
R10およびR12はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5もしくは6員炭素環もしくは複素環を形成し;
各R13は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、または-(CH2)nR14から独立に選択され:
R14はNH2、OH、SHまたはCO2Hから選択され;
mは0または1から4の整数であり;かつ
nは1から4の整数である。
【0029】
好ましい式(II)の化合物は、下記の特徴の少なくとも一つを有する:
Xは共有結合または-CH2-Z-CH2-である;
UはNである;
WはNHまたはSである;
Z'はNHである;
R10は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、または-(CH2)nR14、好ましくは水素、C1-3アルキルまたは(CH2)nR14である;
R11はフェニル、C1-3アルキルもしくはハロで置換されたフェニル、チオフェン、ピリジン、ピリジニルメチル、イミダゾールまたは1もしくは2個のC1-3アルキルで置換されたイミダゾールである;
R12は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、もしくは(CH2)nR14、好ましくは水素、C1-3アルキルもしくは(CH2)nR14であるか;または
R10およびR12はそれらが結合している炭素原子と一緒になって縮合フェニル環を形成する;
R13は水素またはC1-3アルキル、好ましくは水素またはメチルである;
R14はNH2またはCO2Hである;
mは0または1である;および
nは1または2である。
【0030】
もう一つの態様において、金属キレート剤もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤は式(III)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩から選択される:

式中、Arは一つまたは複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2で置換されていてもよいフェニル、ナフチルまたはインドリルであり;
R21はNH2、NHR25または-CH2SR25から選択され;
R22は水素、ヒドロキシまたはC1-6アルコキシから選択され;
R23は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルから選択され;
R24はOH、OR26、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から選択され;
R25は水素、アルキルが-SHまたは-OHで置換されていてもよいC(O)C1-6アルキルから選択され;
R26はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはベンジルから選択され;かつ
pは0または1である。
【0031】
好ましい式(III)の化合物は、下記の特徴の少なくとも一つを有する:
Arはフェニルまたはナフチルである;
R21はNH2、SHで置換されていてもよい-NHC(O)C1-6アルキル、-CH2SC(O)C1-6アルキルまたはCH2SHである;
R22は水素またはヒドロキシである;
R23は水素またはC1-3アルキル、好ましくは水素またはメチルである;
R24はOH、NH2またはOベンジルである;および
pは0またはlである。
【0032】
好ましい式IIIの化合物には、ベスタチンおよびチオロファンまたはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩が含まれる。
【0033】
さらにもう一つの態様において、金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は式(IV)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である:

式中、Arは一つまたは複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2で置換されていてもよいフェニル、ナフチルまたはインドリルであり;
R31はCO2H、CO2C1-6アルキル、CO2C2-6アルケニル、CO2C2-6アルキニル、CONH2、CONH(C1-6アルキル)またはCON(C1-6アルキル)2から選択され;
R32は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、CH2CH2CO2H、CH2CH2CONH2、CH2CH2OH、CH2CH2SHから選択され;かつ
R33はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、CH2CO2H、CH2CO2C1-6アルキル、CH2CONH2、CH2OH、またはCH2SHから選択される。
【0034】
好ましい式(IV)の化合物は、下記の特徴の少なくとも一つを有する:
Arはフェニルまたはインドリルである、
R31はCO2HまたはCONH2である、
R32はC1-6アルキル、CH2CH2CO2H、CH2CH2CONH2、CH2CH2OH、またはCH2CH2SHである、
R33はCH2CO2H、CH2CONH2、CH2OH、またはCH2SHである。
【0035】
さらにもう一つの態様において、金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は式(V)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である:

式中、R41およびR42は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルから独立に選択されるか、またはR41およびR42はそれらが結合している窒素と一緒になって一つまたは複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニルもしくはC2-6アルキニル基で置換されていてもよい5もしくは6員複素環を形成し;かつ
R43は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から選択される。
【0036】
好ましい式(V)の化合物は、下記の特徴の少なくとも一つを有する:
R41およびR42はC1-6アルキルから独立に選択されるか、またはそれらが結合している窒素と一緒になってピペリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジンまたはモルホリン基を形成する;
R43は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、またはC2-6アルキニルである。
【0037】
さらなる態様において、金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は、テトラサイクリン、ドキシサイクリンもしくはミノサイクリンからなる群より選択される四環式抗生物質、またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である。
【0038】
さらなる態様において、金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は1-[(2S)-3-メルカプト-2-メチル-1-オキソプロピル]-L-プロリン(カプトプリル)もしくはN-(α-ラムノピラノシルオキシ-ヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-L-トリプトファン(ホスホラミドン)、またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩から選択される。
【0039】
本明細書において用いられる「アルキル」なる用語は、直鎖または分枝飽和炭化水素基を意味し、規定の数の炭素原子を有していてもよい。例えば、「C1-C6アルキル」中のC1-C6には、1、2、3、4、5または6炭素を直鎖または分枝配列で有する基が含まれる。適当なアルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、4-メチルブチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、5-メチルペンチル、2-エチルブチルおよび3-エチルブチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0040】
本明細書において用いられる「アルケニル」なる用語は、炭素原子の間に一つまたは複数の二重結合を有する直鎖または分枝炭化水素基を意味し、規定の数の炭素原子を有していてもよい。例えば、「C2-C6アルケニル」中のC2-C6には、2、3、4、5または6炭素原子を直鎖または分枝配列で有する基が含まれる。適当なアルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0041】
本明細書において用いられる「アルキニル」なる用語は、炭素原子の間に一つまたは複数の三重結合を有する直鎖または分枝炭化水素基を意味し、規定の数の炭素原子を有していてもよい。例えば、「C2-C6アルキニル」中のC2-C6には、2、3、4、5または6炭素原子を直鎖または分枝配列で有する基が含まれる。適当なアルキニル基の例には、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0042】
本明細書において用いられる「ハロ」または「ハロゲン」なる用語は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)およびヨウ素(ヨード)を意味する。
【0043】
本明細書において用いられる「アルキルオキシ」なる用語は、酸素の橋を通じて結合された前述の定義のアルキル基を意味する。適当なアルキルオキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、i-プロピルオキシ、n-ブチルオキシ、i-ブチルオキシ、t-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシおよびn-ヘキシルオキシが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0044】
本明細書において用いられる「アルキルチオ」なる用語は、硫黄の橋を通じて結合された前述の定義のアルキル基を意味する。適当なアルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、i-プロピルチオ、ブチルチオ、i-ブチルチオ、t-ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0045】
本明細書において用いられる「炭素環」なる用語は、環を形成する原子がすべて炭素原子である、3から10員環または縮合環系を意味する。C3-10炭素環は飽和でも、不飽和でも、または芳香族であってもよい。適当な炭素環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0046】
本明細書において用いられる「複素環」なる用語は、環を形成する原子の少なくとも一つがヘテロ原子である、3から10員環または縮合環系を意味する。好ましくは、ヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄およびリンから選択される。C3-10複素環は飽和でも、不飽和でも、または芳香族であってもよい。適当な複素環の例には、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾイル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフタピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、アジリジニル、1,4-ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロチエニル、ならびにそのN-オキシドが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子を介してでも、またはヘテロ原子を介してでも起こりうる。
【0047】
本明細書において用いられる「アリール」なる用語は、少なくとも一つの環が芳香族である、各環6原子までのいかなる安定な単環式または二環式炭素環も意味することが意図される。そのようなアリール基の例には、フェニル、ナフチルおよびテトラヒドロナフチルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0048】
本明細書において用いられる「ヘテロアリール」なる用語は、少なくとも一つの環が芳香族であり、少なくとも一つの環がO、NおよびSからなる群より選択される1個から4個のヘテロ原子を含む、各環6原子までの安定な単環または二環を意味する。本定義の範囲内のヘテロアリール基には、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0049】
本発明の化合物は薬学的、獣医学的または農業的に許容される塩の形であってもよい。適当な薬学的に許容される塩には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の塩、または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリル酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸および吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0050】
塩基性塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容されるカチオンと形成されたものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0051】
塩基性窒素含有基は、塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどのハロゲン化低級アルキル;硫酸ジメチルおよびジエチルなどの硫酸ジアルキルなどの物質で4級化されていてもよい。
【0052】
本発明の多くの化合物は不斉中心を有し、したがって複数の立体異性体で存在しうることも理解されると思われる。したがって、本発明は、一つまたは複数の不斉中心において実質的に純粋な異性体、例えば光学純度が約95%もしくは97%ee、または99%eeよりも高いなどの、約90%eeよりも高い化合物、ならびにそのラセミ混合物を含む混合物にも関する。そのような異性体は、不斉合成、例えばキラル中間体を用いて、またはキラル分割によって調製することができる。
【0053】
本発明において有用ないくつかの金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤が専門の化学会社から市販されている。市販されていないものは市販の出発原料から当業者には公知の反応を用いて合成することができる。
【0054】
例えば、置換2,2-ビピリジルおよび1,10-フェナントロリンは適当なハロゲン化2,2-ビピリジルまたは1,10-フェナントロリンから得ることができる。例えば、2,2'-ビピリジン-6,6'-ジカルボン酸は6,6'-ジブロモ-2,2'-ジピリジルからブチルリチウムを用いてのハロゲン-金属交換、ドライアイス処理および酸性化により得ることができる[Buhleier et. al., Chem. Ber., 1978, 111: 200-204]。ビピリジルの6位の例えばCH2CHNH2(CO2H)による一置換は、6-メチル-2,2'-ビピリジルのN-ブロモスクシンイミドでの処理と、続くN-保護グリシンエステルでのアルキル化により得ることができる。次いで、保護基を酸加水分解によって除去することができる(Imperiali B. and Fisher S. L., J. Org. Chem., 1992, 57: 757-759)。
【0055】
2,2'-ジピリジルはC6およびC4位で求核置換を行い置換基を導入することができる。この反応はハロゲン化ジピリジルを出発原料として用いる場合により好ましい。例えば、6-モノまたはジ-ハロゲン化2,2'-ジピリジルを用い、この出発原料をアンモニアと反応させることにより、C6および/またはC6'にアミンを導入することができる。
【0056】
ビピリジル-スルホン酸は、2,2'-ビピリジルから、発煙硫酸(濃硫酸中の三酸化硫黄の溶液)または硫酸水銀(III)/濃硫酸のいずれかと300℃で加熱することにより調製することができる。
【0057】
非対称に置換されたピリジルは対称ビピリジルから得ることができ、例えば、6'-メチル-2,2'-ビピリジル-6-カルボン酸は6,6'-ジメチル-2,2'-ビピリジルから二酸化セレンでの酸化と、続く硝酸銀処理により調製することができる(Al-Saya et. al., European J. Org. Chem., 2004, 173-182)。
【0058】
式(III)および(IV)の化合物は、市販のアミノ酸、例えばフェニルアラニンおよびトリプトファンから、アミノ酸のカルボン酸またはアミノ基との公知のカップリング反応を用いて調製することができる(Jones J., Amino Acid and Peptide Synthesis, Oxford Chemistry Press, 1992)。当技術分野において公知であるとおり、適当な保護および脱保護段階が必要とされる場合もあり、Jones, 1992, 前記またはGreen T. W. and Wutz P., Protecting Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Son, 3rd Ed., 1999に示されている。
【0059】
式(V)のチオ尿素は、適当なベンズアミドのブチルリチウムと、続いてチオホスゲンとの反応によって調製することができる。次いで、スキーム1に示すとおり、得られた生成物を適当なアミンまたはアミノ酸と反応させることができる。

【0060】
本明細書において、「外部寄生生物」なる用語は、宿主を外部から侵襲し、産卵により繁殖する、いかなる寄生動物種も含むと考えられる。好ましい本発明の外部寄生生物には、鱗翅目(Lepidoptera)、半翅目(Hemiptera)、直翅目(Orthoptera)、チャタテムシ目(Psocoptera)、膜翅目(Hymenoptera)、等翅目(Isoptera)、鞘翅目(Coleoptera)、網翅目(Dictyoptera)、総翅目(Thysanoptera)、同翅目(Homoptera)、双翅目(Diptera)、シラミ目(Anaplura)、ハジラミ目(Malophaga)、ノミ目(Siphonaptera)および蛛形綱(Arachnida)からなる群より選択される目からの種が含まれる。
【0061】
本発明の方法を用いて制御しうる適当な外部寄生生物には下記が含まれる:
(a)鱗翅類の目(Lepidoptera)から、例えば、リンゴコカクモンハマキ(Adoxophyes organa)、タマナヤガ(Agrotis ypsilon)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、アラバマ アルギラセア(Alabama argillacea)、アンティカルシア ゲンマタリス(Anticarsia gemmatalis)、リンゴヒメシンクイ(Argyresthia conjugella)、ガンマキンウワバ(Autographa gamma)、カコエシア ムリナナ(Cacoecia murinana)、カプア レティクラナ(Capua reticulana)、トウヒシントメハマキ (Choristoneura fumiferana)、チロ パルテルス(Chilo partellus)、コリストネウラ オクシデンタリス(Choristoneura occidentalis)、アワヨトウ(Cirphis unipuncta)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、ケブカノメイガ(Crocidolomia binotalis)、コドリンガ(Cydia pomonella)、デンドロリムス ピニ(Dendrolimus pini)、ディアファニア ニティダリス(Diaphania nitidalis)、ディアトレア グランディオセラ(Diatraea grandiosella)、ミスジアオリンガ(Earias insulana)、モロコシマダラメイガ(Elasmopalpus lignosellus)、 ブドウホソハマキ(Eupoecilia ambiguella)、フェルティア サブテラネア(Feltia subterranea)、グラフォリタ フネブラナ(Grapholitha funebrana)、ナシヒメシンクイ(Grapholitha molesta)、オオタバコガ(Heliothis armigera)、オオタバコガ(Heliothis virescens)、オオタバコガ(Heliothis zea)、ハイマダラノメイガ(Hellula undalis)、ヒベルニア デフォリアリア(Hibernia defoliaria)、アメリカシロヒトリ(Hyphantria cunea)、リンゴスガ(Hyponomeuta malinellus)、ケイフェリア リコペルシセラ(Keiferia lycopersicella)、ランブディナ フィスセラリア(Lambdina fiscellaria)、シロイチモンジヨトウ(Laphygma exigua)、レウコプテラ シテラ(Leucoptera scitella)、リンゴカバホソガ(Lithocolletis blancardella)、ホソバヒメハマキ(Lobesia botrana)、ロキソステゲ スティクティカリス(Loxostege sticticalis)、マイマイガ(Lymantria dispar)、ノンネマイマイ(Lymantria monacha)、モモハモグリガ(Lyonetia clerkella)、タバコスズメガ(Manduca sexta)、オビカレハ(Malacosoma neustria)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、モシス レパンダ(Mocis repanda)、ナミスジフユナミシャク(Operophthera brumata)、オルギイア シュードツガタ(Orgyia pseudotsugata)、ヨーロッパアワノメイガ (Ostrinia nubilalis)、トビハマキ(Pandemis heparana)、マツキリガ(Panolis flammea)、ワタアカミムシ(Pectinophora gossypiella)、ジャガイモガ(Phthorimaea operculella)、ミカンコハモグリ(Phyllocnistis citrella)、オオモンシロチョウ(Pieris brassicae)、プラティペナ スカブラ(Plathypena scabra)、プラティノタ スツルタナ(Platynota stultana)、コナガ(Plutella xylostella)、プライス シトリ(Prays citri)、プライス オレア(Prays oleae)、プロデニア スニア(Prodenia sunia)、プロデニア オルニトガリ(Prodenia ornithogalli)、シュードプルシア インクルデンス(Pseudoplusia includens)、リアシオニア フルストラナ(Rhyacionia frustrana)、スクロビパルプラ アブソルタ(Scrobipalpula absoluta)、イネヨトウ(Sesamia inferens)、 テングハマキ(Sparganothis pilleriana)、スポドプテラ フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、スポドプテラ リトラリス(Spodoptera littoralis)、ハスモンヨトウ (Spodoptera litura)、シレプタ デロガタ(Syllepta derogata)、シナンテドン ミオパエフォルミス(Synanthedon myopaeformis)、タウマトポエア ピティオカンパ(Thaumatopoea pityocampa)、トルトリクス ビリダナ(Tortrix viridana)、 イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、トリポリザ インセルツラス(Tryporyza incertulas)、ゼイラフェラ カナデンシス(Zeiraphera canadensis);
(b)半翅類の目(Hemiptera)から、例えば、アフィス(Aphis)、ベミシア(Bemisia)、フォロドン(Phorodon)、アエネオラミア(Aeneolamia)、エンポアスカ(Empoasca)、パルキンシエラ(Parkinsiella)、ピリラ(Pyrilla)、アオニディエラ(Aonidiella)、コッカス(Coccus)、シュードコッカス(Pseudococcus)、ヘロペルティス(Helopeltis)、リグス(Lygus)、ディスデルクス(Dysdercus)、オキシカレヌス(Oxycarenus)、ネザラ(Nezara)、アレイロデス(Aleyrodes)、トリアトマ(Triatoma)、プシラ(Psylla)、ミズス(Myzus)、メゴウラ(Megoura)、フィロクセラ(Phylloxera)、アデルゲス(Adelges)、ニラパルバタ(Nilaparvata)、ネフォテティクス(Nephotettix)またはシムクス(Cimwx)属;
(c)直翅類の目(Orthoptera)から、例えば、グリロタルパ グリロタルパ(Gryllotalpa gryllotalpa)、トノサマバッタ(Locusta migratoria)、メラノプルス ビビタトゥス(Melanoplus bivittatus)、メラノプルス フェムルブルム(Melanoplus femur-rubrum)、メラノプルス メキシカヌス(Melanoplus mexicanus)、メラノプルス サンギニペス(Melanoplus sanguinipes)、メラノプルス スプレトゥス(Melanoplus spretus)、アカトビバッタ(Nomadacris septemfasciata)、アメリカトビバッタ(Schistocerca americana)、シストセルカ ペレグリナ(Schistocerca peregrina)、スタウロノトゥス マロカヌス(Stauronotus maroccanus)、サバクトビバッタ(Schistocerca gregaria);
(d)チャタテムシ類の目(Psocoptera)から、例えば、ペリプソクス属;
(e)膜翅類の目(Hymenoptera)から、例えば、カブラハバチ(Athalia rosae)、ハキリアリ(Atta cephalotes)、チャイロハキリアリ(Atta sexdens)、ハキリアリ(Atta texana)、ホプロカンパ ミヌタ(Hoplocampa minuta)、ホプロカンパ テスツディネア(Hoplocampa testudinea)、イリドミルメス プルプレウス(Iridomyrmex purpureus)、イエヒメアリ(Monomorium pharaonis)、アカカミアリ(Solenopsis geminata)、ヒアリ(Solenopsis invicta)、カミアリ(Solenopsis richteri)、アシジロヒラフシアリ(Technomyrmex albipes);
(f)シロアリの目(Isoptera)から、例えば、カロテルメス フラビコリス(Calotermes flavicollis)、コプトテルメス(Coptotermes)属、ロイコテルメス フラビペス(Leucotermes flavipes)、マクロテルメス サブヒアリヌス(Macrotermes subhyalinus)、ナスティテルメス ワルケリ(Nasutitermes walkeri)などのナスティテルメス(Nasutitermes)属、タイワンシロアリ(Odontotermes formosanus)、レティクリテルメス ルシファガス(Reticulitermes lucifugus)、テルメス ナタレンシス(Termes natalensis);
(g)甲虫類の目(Coleoptera)から、例えば、ワタミハナゾウムシ(Anthonomus grandis)、ナシハナゾウムシ(Anthonomus pomorum)、アピオン ボラクス(Apion vorax)、アトマリア リネアリス(Atomaria linearis)、ブラストファガス ピニペルダ(Blastophagus piniperda)、カメノコハムシ(Cassida nebulosa)、セロトマ トリフルカタ(Cerotoma trifurcata)、セウトリンクス アシミリス(Ceuthorhynchus assimilis)、セウトリンクス ナピ(Ceuthorhynchus napi)、カエトクネマ ティビアリス(Chaetocnema tibialis)、コノデルス ベスペルティヌス(Conoderus vespertinus)、クリオセリス アスパラギ(Crioceris asparagi)、デンドロクトヌス レフィペニス(Dendroctonus refipennis)、ディアブロティカ ロンギコルニス(Diabrotica longicornis)、ディアブロティカ 12-パンクタタ(Diabrotica 12-punctata)、ディアブロティカ ビルギフェラ(Diabrotica virgifera)、インゲンテントウ(Epilachna varivestis)、エピトリクス ヒルティペニス(Epitrix hirtipennis)、エウティノボトルス ブラジリエンシス(Eutinobothrus brasiliensis)、マツアナアキゾウムシ(Hylobius abietis)、ヒペラ ブルネイペニス(Hypera brunneipennis)、アルファルファタコゾウムシ(Hypera postica)、ヤツバキクイムシ(Ips typographus)、レマ ビリネアタ(Lema bilineata)、レマ メラノプス(Lema melanopus)、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata)、リモニウス カリフォルニクス(Limonius californicus)、 イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、メラノトゥス コミュニス(Melanotus communis)、メリゲテス アエネウス(Meligethes aeneus)、メロロンタ ヒポカスタニ(Melolontha hippocastani)、ヨーロッパコフキコガネ(Melolontha melolontha)、イネクビボソハムシ (Oulema oryzae)、オルティオリンクス スルカトゥス(Ortiorrhynchus sulcatus)、オティオリンクス オバトゥス(Otiorrhynchus ovatus)、ファエドン コクレアリアエ(Phaedon cochleariae)、フィロペルタ ホルティコラ(Phyllopertha horticola)、フィロファガ(Phyllophaga)属、フィロトレタ クリソセファラ(Phyllotreta chrysocephala)、フィロトレタ ネモルム(Phyllotreta nemorum)、キスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)、マメコガネ(Popillia japonica)、プシリオデス ナピ(Psylliodes napi)、スコリトゥス イントリカトゥス(Scolytus intricatus)、アカアシチビコフキゾウムシ(Sitona lineatus);
(h)網翅目(Dictyoptera)から、例えば、ムカシゴキブリ (Polyphagidae)、ブラドベリダエ(Bladberidae)、ゴキブリ(Blattidae)、マダラゴキブリ(Epilampridae)、カエテクシダエ(Chaetecsidae)、メタリシダエ(Metallycidae)、マントイディダエ(Mantoididae)、アモルフォスセリダエ(Amorphoscelidae)、エレミアフィリダエ(Eremiaphilidae)、ヒメカマキリ(Hymenopodidae)、カマキリ(Mantidae)およびエンプシダエ(Empusidae)科から;
(i)アザミウマ類の目(Thysanoptera)から、例えば、フランクリニエラ フスカ(Frankliniella fusca)、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、フランクリニエラ トリティシ(Frankliniella tritici)、ハプロトリプス トリティシ(Haplothrips tritici)、クロトンアザミウマ,(Heliothrips haemorrhoidalis)、シルトトリプス シトリ(Scirtothrips citri)、トリプス オリザエ(Thrips oryzae)、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci);
(j)同翅類の目(Homoptera)から、例えば、アシルトシフォン オノブリキス(Acyrthosiphon onobrychis)、エンドウヒゲナガアブラムシ (Acyrthosiphon pisum)、カラマツカサアブラムシ(Adelges laricis)、アカマルカイガラムシ(Aonidiella aurantii)、アフィデュラ ナスツルティイ(Aphidula nasturtii)、マメクロアブラムシ(Aphis fabae)、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、アフィス ポミ(Aphis pomi)、ジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、ブラキカウドゥス カルドゥイ(Brachycaudus cardui)、 ダイコンアブラムシ(Brevicoryne brassicae)、ダルブルス マイディス(Dalbulus maidis)、ドレイフシア ノルドマニアナエ(Dreyfusia nordmannianae)、ドレイフシア ピセアエ(Dreyfusia piceae)、ギシギシネアブラムシ(Dysaphis radicola)、ジャガイモヒメヨコバイ(Empoasca fabae)、リンゴワタムシ(Eriosoma lanigerum)、ヒメトビウンカ(Laodelphax striatella)、ムギヒゲナガアブラムシ(Macrosiphum avenae)、チューリップヒゲナガアブラムシ(Macrosiphum euphorbiae)、マクロシフォン ロザエ(Macrosiphon rosae)、メゴウラ ビシアエ(Megoura viciae)、ムギウスイロアブラムシ(Metopolophium dirhodum)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ミズス セラシ(Myzus cerasi)、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、クロフツノウンカ(Perkinsiella saccharicida)、ホップイボアブラムシ(Phorodon humuli)、プシラ マリ(Psylla mali)、プシラ ピリ(Psylla piri)、プシラ ピリコラ(Psylla pyricola)、トウモロコシアブラムシ(Rhopalosiphum maidis)、ムギミドリアブラムシ(Schizaphis graminum)、シトビオン アベナエ(Sitobion avenae)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)、トキソプテラ シトリシダ(Toxoptera citricida)、トリアレウロデス アブチロネア(Trialeurodes abutilonea)、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、ブドウネアブラムシ(Viteus vitifolii);
(k)双翅類の目(Diptera)から、例えば、メキシコミバエ(Anastrepha ludens)、チチュウカイミバエ(Ceratitis capitata)、ソルガムタマバエ(Contarinia sorghicola)、ウリミバエ(Dacus cucurbitae)、オリーブミバエ(Dacus oleae)、ダシネウラ ブラシカエ(Dasineura brassicae)、デリア コアルクタタ(Delia coarctata)、デリア ラディクム(Delia radicum)、イネミギワバエ(Hydrellia griseola)、ヒレミア プラツラ(Hylemyia platura)、トマトハモグリバエ(Liriomyza sativae)、マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)、ルシリア(Lucilia)属、へシアンバエ(Mayetiola destructor)、ムスカ(Musca)属、 イネノシントメタマバエ(Orseolia oryzae)、オシネラ フリト(Oscinella frit)、アカザモグリハナバエ(Pegomya hyoscyami)、フォルビア アンティクア(Phorbia antiqua)、フォルビア ブラシカエ(Phorbia brassicae)、フォルビア コアルクタタ(Phorbia coarctata)、ラゴレティス セラシ(Rhagoletis cerasi)、ラゴレティス ポモネラ(Rhagoletis pomonella);
(l)シラミ目(Anaplura)から、例えば、ケジラミ(Pthirus pubis)、アタマジラミ(Pediculus humanus capitus)、コロモジラミ(Pediculus humanus humanus);
(m)ハジラミ目(Mallophaga)から、例えば、ボビコラ(Bovicola)、ダマラニア(Damalania)、トリコデクトゥス(Trichodectus)およびメノポン(Menopon)属;
(n)ノミ類の目(Siphonaptera)から、例えば、クテボセファリデス(Ctenocephalides)またはプレックス(Pulex)属
(o)蛛形綱(Arachnida)から、例えば、オーストラリア種マダニ(Ixodes holocyclus)、ブーフィルス ミクロプルス(Boophilus microplus)、クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)、 ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)およびヒョウヒダニ(Dermatophagoides)属。
【0062】
本発明によって孵化を妨げられる外部寄生生物卵は、シラミ、ノミ、マダニ、ハエおよび他のかみつく、または吸血外部寄生生物の卵からなる群より選択されることが好ましい。好ましい態様において、外部寄生生物卵はシラミ卵、より好ましくはアタマジラミ卵である。シラミは、動物の皮膚および血液を餌にする寄生生物で、その消化液および糞便を皮膚内に沈積させる。これらの材料、ならびに刺傷自体が皮膚の刺激や、その結果として引っ掻き傷の原因となり、神経節炎症を伴う重篤な感染を引き起こすこともある。シラミは、発疹または流行性発疹チフスおよび回帰熱などの特定の疾患の媒介生物でもある。雌のシラミ成虫は約1ヶ月の寿命を有し、1日に10個も産卵する。ヒトを感染させるシラミには、ケジラミ属(Pthirus pubis)および別のヒトジラミ属(Pediculus humanus)が含まれ、後者は二つの亜種、ヒトアタマジラミ(Pediculus humanus capitis)またはアタマジラミ(head lice)およびコロモジラミ(Pediculus humanus humanus)またはコロモジラミ(clothing lice)で構成される(Busvine, Antenna, 1993, 17: 196-201)。上記のシラミの亜種は密接に関連しており、交配が成功することが知られている(Busvine, Cutaneous Infestations and Insect Bites, 1985, 163-174)。
【0063】
アタマジラミ(Pediculus humanus var. capitis)は、もっぱらヒトの頭に住み着き、頭皮から血を吸うことで栄養摂取する、宿主特異的外部寄生生物である。血液摂取後、成熟した雌のシラミ成虫は24時間で頭皮の近くに10個もの卵を産むことになる。卵は毛幹に接着物質によってしっかり付着する。温度および湿度に応じて産卵の7日から10日後、卵は孵化し、新しく出現した幼虫が栄養摂取し始めることになる。幼虫は、それぞれ完了するのに3日〜5日かかる三回の脱皮(第一齢、第二齢、第三齢)を通して前進する。最後の脱皮後、雄または雌の成虫が現れ、早くも2日後には交尾を行う。栄養摂取数時間以内に、産卵が行われ、サイクルが続く。卵から卵までの全生活周期が完了するのに、温度および湿度の条件に応じて、約20日〜30日かかる。卵孵化後、卵殻は毛幹に付着して残り、毛髪が伸びるにつれて徐々に頭皮から移動することになる。孵化した卵(nit)は人工照明下で白く見える屈折特性を有するため、比較的容易に検出されるが、これに対して未孵化の卵は薄い褐色で、ほとんどの毛髪色にとけ込むことができ、したがって検出がより困難になる。
【0064】
本発明の一つの態様において、本発明の方法および組成物は、シラミ卵の孵化を阻害することにより、シラミの対象者を治療するためのものである。本出願人らは、外部寄生生物のシラミ卵孵化を阻害するための有効な薬剤として、金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤を同定した。外部寄生生物のシラミ卵孵化を阻害するための、金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤の使用は、外部寄生生物の繁殖周期を妨げ、それにより外部寄生生物侵襲を制御するという利点を有する。
【0065】
本明細書において用いられる「メタロプロテアーゼ」なる用語は、外部寄生生物卵孵化に関与するプロテアーゼであって、触媒としてはたらく活性金属イオンを有するプロテアーゼを意味すると理解される。好ましくは、メタロプロテアーゼは基質のペプチド結合を攻撃するために水分子を分極することにより触媒作用に関わる亜鉛イオンを含む。より好ましくは、メタロプロテアーゼはそれらの活性を遮断することができる金属キレート剤に感受性である。メタロプロテアーゼは、好ましくは、卵の小蓋に作用することにより卵孵化の誘導に関与して、卵孵化を促進する。外部寄生生物卵孵化に関与する適当なメタロプロテアーゼには、エンドプロテアーゼ(ペプチド鎖内で切断する酵素)およびエキソプロテアーゼ(ペプチド末端からアミノ酸を切断する酵素)が含まれうる。エキソプロテアーゼはさらにカルボキシプロテアーゼ(アミノ酸をC末端から切断する)またはアミノペプチダーゼ(アミノ酸をN末端から切断する)に分類することができる。メタロ-カルボキシプロテアーゼは活性のために二価のカチオン(通常はZn2+)を必要とするが、アミノペプチダーゼは一般に金属イオン(Zn2+またはMg2+)への依存性にしたがって分類される。これらは遊離および膜結合型の両方で存在し、高いpH(8〜10)で活性に有利である。卵孵化に関連するメタロプロテアーゼを検出する一つの方法は、発生中の胚周囲の液体を卵孵化時に採取するか、または卵孵化直後に空の卵殻を洗浄し、試料をゼラチン基質SDS-PAGE分析を用いてプロテアーゼの有無について分析する段階を含みうる。試料からタンパク質分解活性が示されれば、試料をメタロプロテアーゼ阻害剤、例えば1,10-フェナントロリン存在下でインキュベートし、処理試料を再度分析して、卵から抽出されたプロテアーゼ活性が阻害されたかどうかを調べることができる。孵化卵から得たメタロプロテアーゼ活性の阻害が示されれば、未孵化卵を同じ阻害剤に曝露し、卵孵化の阻害が起こるかどうかを評価することができる。卵孵化に関与するメタロプロテアーゼは、メタロプロテアーゼをコードする遺伝子を同定し、その遺伝子をサイレンシングし、当業者には公知の方法により卵が孵化できないことを示すことによって同定することもできる。
【0066】
本明細書において用いられる「外部寄生生物卵の孵化を阻害する」なる句は、外部寄生生物卵の孵化が妨害されることを意味すると理解される。本発明において、外部寄生生物卵を、未処理の外部寄生生物卵に比べて卵孵化を妨害することができる金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤に曝露する。卵孵化は卵のハッチフラップ(hatchflap)または小蓋の開放およびその直後の幼虫の出現によって特徴付けられる。シラミの場合、頭がまず現れ、続いて脚がついた胸部が現れる。最後に、腹部が現れ、幼虫は卵から自由に移動する。卵孵化は卵殻の損傷または偶発的破損を除外すると理解される。
【0067】
好ましくは、金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は、産卵から孵化の間のいかなる時点でも、卵に適用すると卵孵化を阻害することができる化合物である。
【0068】
外部寄生生物卵は、好ましくは、動物の皮膚、毛、外皮もしくは毛被またはヒトの頭髪などの宿主生物上に存在するが、それらに限定されるわけではない。本発明のもう一つの態様において、外部寄生生物卵は、ヒトを含む宿主動物、禾穀類、果樹、綿、脂肪種子作物、装飾植物、花、つる作物、根作物、牧草および野菜を含む宿主植物、または家屋および建築物、家畜および農業用動物の囲い、カーペット、毛布、カーテンならびに家具などであるが、それらに限定されるわけではない、他の繁殖部位に存在することもある。
【0069】
本発明によれば、外部寄生生物卵をいかなる適当な手段によって金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤に曝露してもよい。当業者であれば、これらの手段は、阻害剤が植物もしくは動物または様々な他の繁殖部位などの宿主に適用されるかどうかに応じて、ならびに標的とされる外部寄生生物の性質およびタイプに応じて大きく変動しうることを理解すると思われる。動物上の外部寄生生物卵を金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤に曝露する適当な手段には、浸漬または噴霧などの直接局所適用、埋込、遅延放出製剤または装置が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明をヒトに適用する場合、局所適用に適した製剤には、噴霧剤、エアロゾル、シャンプー、ムース、クリームおよびローションが含まれるが、それらに限定されるわけではなく、内部適用に適した製剤には、錠剤、カプセル剤または液体製剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの状況においては、注射による非経口投与がヒトおよび動物を治療するための最も適当な手段である場合もある。金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤を植物に適用する場合、適当な手段には、噴霧剤、粉剤、ペレット、またはエアロゾルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の方法は、複数の金属キレート剤もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤の同時もしくは逐次使用、または一つもしくは複数の金属キレート剤および/もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤を、外部寄生生物を制御する他の公知の薬剤と同時もしくは逐次組み合わせての使用も含む。
【0070】
本発明のさらにもう一つの局面において、方法および組成物は、孵化、幼虫または外部寄生生物成虫を制御する他の外部寄生生物撲滅薬を含んでいてもよい。例えば、本発明の金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤と同時または別々に組み合わせて用いることができる、適当な外部寄生生物撲滅薬には、マラチオンなどの有機リン、合成ピレスロイド(シペルメトリン、デルタメトリン)幼虫ホルモン類縁体、キチン合成阻害剤およびトリアジン誘導体を含む昆虫成長制御剤、殺虫性細菌毒素、塩素化炭化水素(DDT、エンドスルファン)またはEP 0191236、US 5,288,483およびUS 6,727,228に記載の殺虫剤が含まれる。他の有用な殺虫剤には、US 6,663,876およびUS 6,607,716に記載のものなどの毒性が低いジメチコンポリオールが含まれる。そのような組み合わせの利点は、外部寄生生物の生活周期全体を制御するのに、一回の適用しか必要とされないことである。
【0071】
金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は、宿主の毛髪または皮膚、好ましくは外部寄生生物に侵襲されている領域に適用することができる。外部寄生生物侵襲は、好ましくは、シラミ、ノミ、マダニ、ハエおよび他のかみつく、または吸血外部寄生生物、ならびにその組み合わせからなる群より選択される外部寄生生物によるものでありうる。最も好ましくは、外部寄生生物侵襲はシラミによるものである。金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は、軟膏、液剤および懸濁剤を含む水性組成物、クリーム、ローション、エアロゾル噴霧剤または散布剤の形で局所適用することができる。
【0072】
「有効量」なる用語は、宿主における外部寄生生物侵襲の治療または予防を提供するのに十分な、少なくとも一つの金属キレート剤または少なくとも一つのメタロプロテアーゼ阻害剤の濃度を意味する。本発明の方法において用いる金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤の有効量は、宿主ならびに外部寄生生物のタイプおよびレベルに応じて変動しうる。金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は、好ましくは、アタマジラミ侵襲を患っているヒトの頭皮に適用し、シラミ卵の孵化を防止するための期間、治療したヒトの頭皮上に残留させる。好ましくは、期間は5分から15分の間である。金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は、好ましくは、約0.0001mMから1Mの間、好ましくは0.01mMから100mMの間、より好ましくは0.1mMから30mMの範囲の濃度で用いる。有効量は用いる金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤に依存する。しかし、いくつかのジピリジル化合物は5mMから15mMの範囲、特に約10mMのレベルで適当に適用することができる。多数の哺乳動物プロテアーゼはその活性のために亜鉛を必要とし、金属キレート剤および/またはメタロプロテアーゼ阻害剤によって影響を受けるため、金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤を安全かつ有効な量で確実に用いることが必要であると考えられ、好ましくは外部寄生生物卵を特異的に標的とする。
【0073】
本発明の方法によって治療する宿主は、ヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、家禽、イヌおよびネコからなる群であるが、それらに限定されるわけではない群より選択されてもよい。本発明の治療または予防法は、植物および/または他の外部寄生生物繁殖部位に適用可能である。本発明の方法によって治療する植物は、好ましくは綿、脂肪種子作物、装飾植物、花、果樹、禾穀類、つる作物、根作物、牧草および野菜からなる群より選択される。
【0074】
本発明の組成物は、液剤および乳剤として製剤することができる。乳化剤、界面活性剤、安定化剤、色素、浸透促進剤および抗酸化剤などの適当な賦形剤も、組成物中に含むことができる。組成物に加えることができる適当な担体には、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、ステアリン酸マグネシウムおよびケイ酸が含まれうる。組成物は、滅菌および非滅菌水溶液を含んでいてもよい。組成物は、好ましくは可溶性の形であり、金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤は、好ましくは可溶性滅菌緩衝化食塩水または水溶液中で希釈する。組成物は水性、非水性または混合媒質中の懸濁液として製剤することもできる。水性懸濁液は、懸濁液の粘度を高める物質をさらに含んでいてもよく、安定化剤を含んでいてもよい。溶液は緩衝液、希釈剤および他の適当な添加剤を含んでいてもよい。組成物は、金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤の活性と適合性の他の補助成分を含むこともできる。本発明の組成物は、フォーム、乳剤、マイクロエマルジョン、シャンプー、ムース、クリームおよびゼリーとして製剤し、用いることができる。前述の組成物の製剤は、外部寄生生物の分野の当業者には公知であると思われる。
【0075】
好ましい態様において、組成物は金属キレート剤を約0.0001mMから1M、好ましくは0.1mMから100mMの間、より好ましくは0.1mMから30mMの範囲の濃度で含む。いくつかの金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤、例えば、ジピリジル化合物を含む組成物は、好ましくは5mMから15mMの間、特に約10mMのレベルの化合物を含んでいてもよい。
【0076】
本発明は、外部寄生生物卵の孵化を阻害する化合物の同定法であって、化合物が外部寄生生物卵中に存在するメタロプロテアーゼを阻害する能力を評価する段階を含む方法も提供する。
【0077】
化合物のメタロプロテアーゼの活性に対する効果は、いくつかの様式で評価することができるが、一般には、評価は、好ましくは試験化合物の存在下および非存在下でのメタロプロテアーゼ酵素活性の比較を含む。卵孵化に関連するメタロプロテアーゼを検出する一つの方法は、発生中の胚周囲の液体を卵孵化時に採取するか、または卵孵化直後に空の卵殻を洗浄し、試料をゼラチン基質SDS-PAGE分析を用いてプロテアーゼの有無について分析する段階を含みうる。試料からタンパク質分解活性が示されれば、試料をメタロプロテアーゼ阻害剤、例えば1,10-フェナントロリン存在下でインキュベートし、処理試料を再度分析して、卵から抽出されたプロテアーゼ活性が阻害されたかどうかを調べることができる。孵化卵から得たメタロプロテアーゼ活性の阻害が示されれば、未孵化卵を同じ阻害剤に曝露し、卵孵化の阻害が起こるかどうかを評価することができる。卵孵化に関与するメタロプロテアーゼは、メタロプロテアーゼをコードする遺伝子を同定し、その遺伝子をサイレンシングし、当業者には公知の方法により卵が孵化できないことを示すことによって同定することもできる。
【0078】
好ましい態様において、方法は化合物を生物学的外部寄生生物卵孵化アッセイ法において試験する段階をさらに含む。
【0079】
適当な生物学的外部寄生生物卵孵化アッセイ法は、好ましくは外部寄生生物卵の対照試料を対照緩衝液に曝露し、同時に外部寄生生物卵の試験試料を試験化合物を含む溶液に曝露する段階を含む。
【0080】
外部寄生生物卵孵化を阻害する際に有効な化合物は、対照試料で卵孵化が観察され、試験試料ではそれよりも低いレベルの孵化が観察される場合に同定される。本発明の好ましい生物学的卵孵化アッセイ法において、外部寄生生物卵はシラミ、ノミ、マダニ、ハエおよび他のかみつく、または吸血外部寄生生物の卵からなる群より選択される。好ましい態様において、外部寄生生物卵の試料はシラミ卵である。好ましくは、用いる卵試料(対照および試験試料)は産卵後6日〜7日以下である。最も好ましくは、用いる卵試料は産卵後1日以下である。
【0081】
対照緩衝液には、滅菌リン酸緩衝化食塩水または水が含まれるが、それらに限定されるわけではない。試験する化合物は、好ましくは金属キレート剤および/またはメタロプロテアーゼ阻害剤である。生物学的卵孵化アッセイ法において、卵孵化は卵のハッチフラップまたは小蓋が開き、その直後に幼虫が現れ始める時に観察される。シラミの場合、頭がまず現れ、続いて脚がついた胸部が現れる。最後に、腹部が現れ、幼虫は卵から自由に移動する。アタマジラミの場合、卵殻が毛幹に接合されたまま残る。
【0082】
本発明のもう一つの局面において、外部寄生生物卵の孵化を阻害するため、または外部寄生生物侵襲を治療もしくは予防するための組成物製造における、金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、この化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、またはこの化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、この複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つの金属キレート剤の使用が提供される。
【0083】
本発明のさらにもう一つの局面において、外部寄生生物卵の孵化を阻害するため、または外部寄生生物侵襲を治療もしくは予防するための組成物製造における、少なくとも一つのメタロプロテアーゼ阻害剤の使用が提供される。
【0084】
本発明によって同様に含まれるものは、外部寄生生物卵の孵化を阻害するため、または外部寄生生物侵襲を治療もしくは予防するための、本明細書に記載の少なくとも一つの金属キレート剤および/または少なくとも一つのメタロプロテアーゼ阻害剤を含む薬剤である。
【0085】
本明細書の全体を通して、「含む(comprise)」なる用語、または「comprises」もしくは「comprising」などの変形は、述べられた要素、整数もしくは段階、または要素群、整数群もしくは段階群の包含を意味するが、いかなる他の要素、整数もしくは段階、または要素群、整数群もしくは段階群の除外も意味しないことが理解されると思われる。
【0086】
本発明を下記の非限定的な図および実施例によって以下に説明する。
【0087】
実施例
実施例1−シラミ卵孵化のメカニズムの評価:
シラミ卵孵化のメカニズムを解剖顕微鏡下で評価した。雌コロモジラミをウサギ上で半時間栄養補給した後、ヒト毛髪を含むペトリ皿に移した。次いで、ペトリ皿を32℃;相対湿度42%のインキュベーターに入れた。栄養補給5時間以内に、雌シラミは産卵し始める。各シラミは一度に10個までの卵を産む。卵はその後7日〜9日かけて発生する。孵化前の最後の12時間以内に、下記の変化が観察された。発生中の胚の眼を卵内ではっきり検出することができ、発生中の胚はその頭がハッチフラップまたは小蓋に近くなるように向いていた。胚が卵内で動いているのを観察することができる。孵化は、小蓋が開き、その直後に胚が現れ始める時に起こる。頭がまず現れ、続いて脚がついた胸部が現れる。最後に、腹部が現れ、幼虫は卵から自由に移動するが、卵は毛髪に接合されたままである。光学顕微鏡下では、孵化を促進すると思われる、新しく現れた幼虫の頭に関連する明白な構造は見られない(すなわち、卵歯はない)。この所見は、卵内の幼虫の物理的な動きはおそらく卵孵化に寄与しているが、他の特定の生化学的事象が関与していることを示唆するものである。
【0088】
実施例2−シラミ卵抽出物中のプロテアーゼ活性の検出:
孵化の12時間以内に、50個のヒトジラミ(Pediculus humanus humanus)卵を毛髪から取り出し、1mlエッペンドルフチューブに入れた。蒸留水20μLを未孵化卵に加え、32℃で30分間インキュベートした。20μLを回収し、-70℃で保存した。いくつかの他の試料も前述のとおりに回収した。未孵化卵を取り出した毛髪試料も回収し、前述のとおりにインキュベートした。加えて、未孵化卵の試料およびシラミ卵を取り出した毛髪試料を、産卵の7日後(卵孵化の24時間以内)に回収した。両方の試料を1%次亜塩素酸ナトリウム溶液10ml中で1分間洗浄した後、蒸留水25ml中で5×1分間洗浄して、次亜塩素酸塩を除去した。次いで、これらの試料を前述のとおり蒸留水20μL中でインキュベートした。加えて、孵化の24時間以内のシラミ卵25個の群を、1%次亜塩素酸ナトリウムで前処理し、前述のとおり洗浄して孵化させた。孵化後1時間〜2時間以内に、空の卵殻を前述のとおり蒸留水20μL中でインキュベートし、孵化した卵殻からの洗液を回収し、-70℃で保存した。次いで、抽出試料をすべて終夜凍結乾燥した。凍結乾燥試料を非還元SDS試料緩衝液15μLに再度懸濁し、10,000gで2分間遠心分離し、15μLをすべて10%ゼラチン基質SDS-PAGEゲルに吸着させた。ゲルを4℃で、一枚あたり10mAで10分間と、続いて15mAでさらに25分間泳動した。次いで、これらを2.5%Triton-X 100溶液中2×20分間と、続いて1mM CaCl2を含む0.1M Tris/HCl(pH8.0)中3時間インキュベートした。活性を、ゲル上の澄明領域(ゲル内のゼラチンを分解するプロテアーゼ活性の結果)として検出した。
【0089】
これらの試験の結果より、基質SDS-PAGEを用いて分析したいくつかの異なる標本でタンパク質分解活性があることが示された。プロテアーゼ活性が孵化12時間以内の未孵化シラミ卵から得た洗液中で検出された(図1、レーン1)。この活性はゲルの高分子量領域にあった。シラミ卵を取り除いた毛髪試料をゼラチン基質SDS-PAGEで分析した場合、著しい量のプロテアーゼ活性が検出された(図1、レーン2)。この活性について最も可能性の高い説明は、産卵時に生じた母体起源のものであるということであった。毛髪試料の次亜塩素酸ナトリウム処理により、混入プロテアーゼは完全に除去された(図1、レーン3)。加えて、未孵化卵の処理によっても、このプロテアーゼ活性を除去することができた(図1、レーン4)。したがって、これらの母体プロテアーゼを除去するために、すべての卵を孵化前に1%次亜塩素酸Naで前述のとおりに処理することに決定した。新しく孵化した卵殻(卵殻洗液)の分析により、二つの高分子量種の存在が示された(図1、レーン5)。この抽出ではシラミ卵を25個しか用いておらず、おそらくこれが低いレベルのプロテアーゼ活性の一因であることに留意されたい。これらの結果は、新しく孵化したシラミ卵に直接関連するプロテアーゼ活性の存在を示している。
【0090】
結論として、シラミの孵化プロセスを光学顕微鏡により調べた。卵孵化は卵内の幼虫の物理的活動性に関連しているようである。しかし、ハッチフラップまたは小蓋に穴を開ける、または弛緩させるためのいかなる特殊構造もないことは、孵化プロセスが生化学的成分も含む可能性があることを示している。シラミにおいて卵孵化の前後に活性の高いプロテアーゼが検出されたが、これらのプロテアーゼは主に母体起源であると考えられる。卵孵化前のこの活性は次亜塩素酸ナトリウムを用いて除去することができる一方で、シラミはうまく孵化することができた。続いて、新しく孵化したシラミからのESWの分析により、限られた数のプロテアーゼ種の存在が示され、これらをシラミの卵孵化を阻害するための標的としてさらに調査した。
【0091】
実施例3:卵殻洗液中のプロテアーゼの特徴分析:
卵孵化を阻害するための標的としての卵殻洗液中のシラミ孵化プロテアーゼの可能性を評価するために、まず孵化プロテアーゼの性質を特徴付けることが必要であった。プロテアーゼの4つの主なクラスの阻害剤を用いて、ESW中のプロテアーゼを分類した。
【0092】
10%SDS-PAGEゼラチン基質ゲルに、シラミ卵100個からの凍結乾燥した卵殻洗液を非還元試料緩衝液50μlに再懸濁したものを、1レーンにつき試料10μlで吸着させて泳動した。ゲルを4℃で、一枚あたり10mAで10分間と、続いて一枚あたり15mAでさらに25分間泳動した。次いで、ゲルを細片に切断し、各細片を特定の阻害剤を含む2.5%Triton-X 100溶液中で2×20分間インキュベートした。用いた阻害剤は、セリンプロテアーゼ阻害剤PMSF(5mM)、メタロプロテアーゼ阻害剤1,10-フェナントロリン(10mM)、アスパラギン酸プロテアーゼペプスタチン(5μM)およびシステイン阻害剤E-64(10μM)であった。次いで、ゲル細片を、異なるプロテアーゼ阻害剤を含む、1mM CaCl2を含む0.1M Tris/HCl(pH8)中、37℃で3時間インキュベートした後、クーマシーブルーで染色し、前述のとおりに脱染した。25kDa〜30kDa付近にタンパク質分解活性の大部分を示す図1、レーン5とは対照的に(図2の括弧参照)。続くESWの多くの標本の分析から、25kDa〜30kDa付近のこの三つのタンパク質分解活性は再現性が高いことが示された。
【0093】
阻害剤試験の結果より、1,10-フェナントロリン処理後にプロテアーゼ活性の著しい低下が示される(レーン2、括弧領域)。セリンプロテアーゼ阻害剤PMSFまたはシステインプロテアーゼ阻害剤E64を用いた場合には、ESWのプロテアーゼ活性の低下は観察されなかった。加えて、アスパラギン酸阻害剤ペプスタチンは、プロテアーゼ活性のいかなる低下も示さなかった(データは示していない)。
【0094】
実施例4:シラミ卵孵化を測定するためのインビトロバイオアッセイ法の開発:
シラミ卵孵化に対するプロテアーゼ阻害剤の効果を評価するために、信頼性の高いインビトロバイオアッセイ法を開発する必要があった。雌雄のコロモジラミをウサギ上で前述のとおりに栄養補給した。雌雄比3:1のシラミ成虫を、約3×3cm2のナイロン布を含む清浄なペトリ皿に移し、32℃で12時間放置した。この間に、雌シラミは産卵し、卵を布に付着させた。次いで、すべてのシラミを除去し、卵をその後5日間インキュベートした。第6日に卵を含む布を1%次亜塩素酸ナトリウム溶液中に1分間置き、次いで徹底的に洗浄した。次いで、卵は発生の最終段階を通って孵化する。未処理の対照卵で、インビトロ卵孵化アッセイ法を用いて、85〜95パーセントの信頼できる平均孵化パーセンテージが得られた。その後、卵孵化アッセイ法にとって、シラミ卵を次亜塩素酸ナトリウムで前処理する必要がないことが判明した。
【0095】
実施例5:シラミ孵化プロテアーゼの活性を阻害しうる化合物の同定:
(a)シラミ卵孵化バイオアッセイ法を用いたプロテアーゼ阻害剤の試験
シラミの卵孵化を測定するためのバイオアッセイ法を改良し、次の調査段階はこのバイオアッセイ法を異なる阻害剤の卵孵化に対する効果を調べる手段として用いることであった。
【0096】
シラミ卵を前述のとおり布上に産卵させた。産卵の5日後、シラミ卵を含む布を取り出し、1%次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸漬した後、蒸留水で徹底的に洗浄し、ティッシュペーパー上で水分を吸い取り乾燥した。シラミ卵を解剖顕微鏡下で計数し、布を卵10個〜30個のバッチに切断し、処理ごとに3〜5の重複試料を用いた。次いで、シラミ卵を含む布をプロテアーゼ阻害剤溶液に2分〜10分間浸漬し、ティッシュペーパー上に1分間置いて乾燥した後、清浄なペトリ皿に移し、孵化までインキュベートした。対照卵が孵化してしまうまでの次の1日〜2日間、卵を孵化の徴候について定期的に観察した。プロテアーゼ阻害剤溶液は典型的には保存溶液として調製し、適当な濃度で新しく加えた。具体的には、保存溶液を下記のとおりに調製した:1,10-フェナントロリン(メタノール中200mM)およびベスタチン(メタノール中5mg/ml)。加えて、阻害剤を含まない対照卵に等しいレベルの溶媒を加え、緩衝液だけの影響について試験した。孵化阻害パーセンテージを、未処理対照と比べての卵孵化の低下パーセンテージとして計算した。未処理対照は孵化パーセンテージ100%とした。
【0097】
金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤である1,10-フェナントロリンの添加は10mMでシラミの卵孵化を有意に阻害したが、1mMでは阻害レベルは対照に比べて約30%であった(図3参照)。金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤、より具体的にはアミノペプチダーゼMおよびNであるベスタチンも、5mMでシラミ卵孵化を有意に阻害することができた(図4)。
【0098】
これらの結果は、特定の金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤のシラミ卵孵化に対する効果についてのデータを提供するものである。しかし、1,10-フェナントロリンまたはベスタチンのいずれかを孵化24時間以内に加えると、卵孵化の様々な阻害が観察されることに気づいた(データは示していない)。この卵孵化のばらつきは、シラミの特定の発生段階に関係するいくつかの因子によると考えられた。さらに、これらの試験から、卵孵化の正確な時期を予測することは非常に難しいことが示され、したがって特定の阻害剤の卵孵化に対する効果を評価する際に、卵を処理する単一の時点を選択することは問題であると考えられる。したがって、シラミ発生におけるこのばらつきを説明するために、インビトロアッセイ系を改変した。
【0099】
(b)インビトロ孵化アッセイ法において用いる経時的実験
シラミ卵孵化の阻害剤を評価する手段として、一連の経時的実験を行った。卵を前述のとおりに布上に産卵させ、次いで、産卵後120時間まで24時間間隔で阻害剤を新しい卵の群に加えた。次いで、卵を28℃でさらに8日間インキュベートし、卵孵化させた。この阻害剤アッセイ法は、シラミ卵が発生の様々な段階にある現場の状況を、より厳密に反映している。
【0100】
これらの試験の結果を表1に示す。様々な濃度の1,10-フェナントロリンによる有意な阻害がシラミ孵化の全過程で示された。1,10-フェナントロリンの阻害効果には一定の濃度依存性も認められた。結果は、経時的実験が特定の阻害剤のシラミ卵孵化に対する効果を評価する信頼性の高い手段を提供することを示している。ベスタチンの添加は有意な阻害を示したが、卵孵化の約24時間前に適用した場合だけであった。
【0101】
(表1)異なる濃度の1,10-フェナントロリンおよび5mMベスタチンにより産卵後24時間間隔で処理した後の卵孵化阻害パーセント

【0102】
上記試験の結果は、金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤である1,10-フェナントロリンの酵素活性阻害能力により判断して、シラミ孵化酵素はメタロクラスのプロテアーゼであることを示している。さらに、この化合物は試験したすべての時点でシラミの卵孵化を有意に阻害することができ、特に卵を孵化の前後に低い濃度で処理した場合に、いくらかの用量依存性の徴候を示した。1,10-フェナントロリンは、金属イオン、好ましくは亜鉛とキレート化し、それにより亜鉛依存性プロテアーゼを阻害するその能力を通して効果を発揮する。
【0103】
ベスタチンについてのデータからも、卵に発生段階の後期に投与した場合、化合物が部分的にシラミ卵孵化を阻害しうることが示された。ベスタチンはアミン、ヒドロキシ基、アミドおよびカルボン酸基を含む置換基で置換されたアリール環を含む環状化合物である。ベスタチンは、非リンパ球性白血病を含む様々な形の癌、ならびに肺、胃、膀胱、頭部、頸部および食道を含む固形腫瘍の異なる形を治療するために用いられ、ユベニメックスの名称で用いられる、微生物起源の抗生物質である。これは培養細胞、無傷の動物およびヒトに対し、低い毒性で投与することができる。ベスタチンは通常、精製プロテアーゼの阻害剤としてマイクロモル濃度(10μMおよび130μM)で用いられるが、これまでに得られたデータは5mMで有効であることを示している。この結果は、ベスタチンの卵に浸透する能力およびそのシラミ孵化プロテアーゼに対する特異性を含むいくつかの因子によると考えられる。
【0104】
実施例6:シラミ卵孵化を阻害するためのプロテアーゼ阻害剤のスクリーニング:
シラミ卵を実施例4に記載のとおり布上に産卵させた。一連の経時的実験を実施例5((b)部分)に記載のとおりに準備した。かなりの数の市販のプロテアーゼ阻害剤/金属キレート剤をシラミ孵化アッセイ法で試験し、個々のプロテアーゼ阻害剤のシラミ卵孵化に対する効果を評価した(表2)。孵化阻害パーセンテージを、未処理対照と比べての卵孵化の低下パーセンテージとして計算した。未処理対照は孵化パーセンテージ100%とした。
【0105】
(表2)様々なプロテアーゼ阻害剤で処理した後のシラミ卵孵化阻害パーセンテージ。阻害パーセンテージは、実験の時間経過を通して得られた最大卵孵化を基準とする。


*異なるプロテアーゼ阻害剤の卵孵化の阻害パーセンテージは適当な対照に対して計算し、観察された最大卵孵化阻害を表している。
【0106】
いくつかのプロテアーゼ阻害剤はシラミ卵孵化を顕著に阻害することが示された。試験した中で最も有効な阻害剤には、1-10フェナントロリン、2,2-ジピリジルおよび6,6'-ジメチル-2,2'-ジピリジル、5,5'-ジメチル-2,2'-ジピリジル(それぞれ10mMで100%阻害)などの金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤が含まれた。メタロプロテアーゼ阻害剤のベスタチンも、卵孵化を有意に阻害することができた(5mMで58%)。
【0107】
天然由来マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤、ならびに一つの環がアリール環である四環式化合物であって、四環式構造がいくつかのヒドロキシ基、カルボニル基、アミンおよびアミドで置換されている金属キレート剤には下記が含まれる:テトラサイクリン(5mg/mlで89%阻害)、ドキシサイクリン(5mg/mlで65%阻害)およびミノサイクリン(5mg/mlで55%)。これらの金属キレート剤は卵孵化に対する阻害活性を示したが、これらの化合物の結果は程度のばらつきが大きく、時間依存性であると考えられた。ヒドロキシメート阻害剤の全般的有用性は、一般的環境における抗生物質の使用を減らすための推進運動により、限定的となることもある。これらの結果は、MMP阻害剤もシラミ卵孵化に対する阻害効果を発揮しうることを示している。試験した他のプロテアーゼ阻害剤には、100mMのEDTA、10mMのEGTAおよび5%のトリエタノールアミンが含まれる。結果から、これらの阻害剤は用いた濃度では卵孵化に対する効果を有していないようであることが示された(結果は示していない)。
【0108】
実施例7:1-10フェナントロリンによる処理後の卵洗浄の効果:
卵の洗浄が1,10-フェナントロリンの阻害活性に影響をおよぼすかどうかを調べるために、実験を行った(表3)。対照群(5%メタノール)も準備した。孵化阻害パーセンテージを、未処理対照と比べての卵孵化の低下パーセンテージとして計算した。未処理対照は孵化パーセンテージ100%とした。この実験の結果は、1,10-フェナントロリンが卵の水中での洗浄後もシラミ卵孵化阻害に際し非常に有効であることを示している。卵孵化に近づきつつある後期(第5日)の卵において、効果は低濃度の阻害剤を用いた場合に観察されたものと同様の濃度依存性を反映していると思われる。1,10-フェナントロリンで処理した卵の一部は、正常に発生はするが、孵化はできないと見られる胚を有していたことにも注目された。
【0109】
(表3)シラミにおいて10mM 1-10フェナントロリンにより産卵後24時間間隔で処理した後の卵孵化阻害パーセント。シラミ卵を阻害剤で10分間処理した後、未洗浄のままにしたか、または処理した後に1分間洗浄し、孵化させた。

【0110】
実施例8:1-10フェナントロリンによるアタマジラミ卵の孵化の阻害:
金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤である1,10-フェナントロリンが、ヒトジラミに対してアタマジラミ(Pediculus humanus capitus)卵孵化を阻害することができるかどうかを調べるために、試験を行った。アタマジラミ卵は下記のとおりに得た:1匹〜2匹の雄成虫および6匹〜8匹の雌成虫アタマジラミ両方の群を、綿布を含む24穴ペトリ皿の別々のウェルに入れた。ペトリ皿を加湿インキュベーターに移し、32℃、70%RHで12時間インキュベートして雌シラミを産卵させた。12時間後、すべてのシラミ成虫をペトリ皿のウェルから取り出し、一連の経時的実験を行った。卵の群(24時齢)を10mM 1,10-フェナントロリン溶液200μlで10分間処理した。対照(すなわち、阻害剤処理なし)群も含めた。卵を阻害剤から取り出し、ティッシュペーパー上で水分を吸い取り乾燥し、32℃、70%RHに置き、孵化させた。第二の卵群(48時齢)を前述のとおりに処理し、同様に孵化させた。この工程をアタマジラミ卵に対して産卵後120時間まで24時間間隔で繰り返した。この阻害剤アッセイ法は、シラミ卵が頭上で発生の様々な段階にある現場の状況を、より厳密に反映しており、寄生生物のこれらの異なる段階に対する阻害効果の観察を可能にする。
【0111】
前述の試験の結果は、1,10-フェナントロリンがアタマジラミの卵孵化を有意に阻害しうることを示している(表4)。
【0112】
(表4)シラミにおいて10mM 1-10フェナントロリンにより産卵後24時間間隔で処理した後の、対照に対する卵孵化阻害パーセント。

【0113】
これらの結果は、ヒトジラミがアタマジラミの卵孵化におけるプロテアーゼ阻害剤の効果をアッセイするための有効なモデルであることを強く示唆している。
【0114】
実施例9:金属キレート剤によるシラミ卵孵化の阻害:
メタロプロテアーゼ阻害剤として作用しうる二つの金属キレート剤を用い、これらのシラミ卵孵化に対する効果を調べるために、実験を行った。これらの化合物を標準シラミアッセイ法で試験して、その殺卵効果を評価した(阻害剤を試験するために用いた方法については、実施例5および6参照)。下記の金属キレート剤を評価した:2,2'-ジピリジルおよび6,6'-ジメチル-2,2'-ジピリジル。この試験の結果を表5および6に示す。
【0115】
(表5)2,2'-ジピリジルにより産卵後24時間間隔で処理した後の卵孵化の結果。結果を下記について示す:N(重複測定ごとの卵の数)、H(うまく孵化した卵の数)およびPh(部分的に孵化した卵の数)。

【0116】
(表6)6,6'-ジメチル-2,2'-ジピリジルにより産卵後24時間間隔で処理した後の卵孵化の結果。結果を下記について示す:N(重複測定ごとの卵の数)、H(うまく孵化した卵の数)およびPh(部分的に孵化した卵の数)。

【0117】
これらの試験の結果は、6,6'-ジメチル-2,2'-ジピリジルおよび2,2'-ジピリジルはいずれも非常に強い殺卵活性を示し、それによりシラミ卵孵化は試験したすべての時点で完全に阻害されたことを示している。6,6'-ジメチル-2,2'-ジピリジルおよび2,2'-ジピリジルはいずれも非介在性の金属キレート剤およびメタロプロテアーゼ阻害剤である。
【0118】
実施例10:市販のシラミ製剤の1,10-フェナントロリンとの比較評価
三つの主要な市販アタマジラミ製剤の殺卵性を、標準シラミ卵孵化アッセイ法において評価した。3つの市販アタマジラミ製剤は下記のとおりであった:
1. KP-24(登録商標) Nelson Laboratories、活性成分1%マルディソン(マラチオン);
2. RID(登録商標) Bayer、活性成分1%ピレトリン;および
3. NIX (登録商標)Pfizer、活性成分1%ペルメトリン。
【0119】
これら三つの製剤を製造者の推奨に従って試験した。卵群(24時齢)を異なる製剤で製造者の推奨に従い適当な時間(5分〜10分間)処理した後、32℃の水中で1分〜2分間洗浄した。陽性対照(10mM 1,10-フェナントロリン)および二つの陰性対照(未処理および20%メタノール)も組み込んだ。異なる製剤への曝露後、卵を32℃の温水で洗浄し、次いでティッシュペーパー上で水分を吸い取り乾燥し、32℃、70%RHに置き、孵化させた。第二の卵群(48時齢)を前述のとおりに処理し、同様に孵化させた。この工程をアタマジラミ卵に対して産卵後120時間まで24時間間隔で繰り返した。この阻害剤アッセイ法は、シラミ卵が頭上で発生の様々な段階にある現場の状況を、より厳密に反映しており、寄生生物のこれらの異なる段階に対する阻害効果の観察を可能にする。これらの試験の結果を表7に示す。
【0120】
(表7)3つの市販アタマジラミ製剤、10mM 1,10-フェナントロリンおよび対照により産卵後24時間間隔で処理した後の卵孵化の結果。結果を下記について示す:N(重複測定ごとの卵の数)、H(うまく孵化した卵の数)およびPh(部分的に孵化した卵の数)。


【0121】
3つの市販殺シラミ薬の試験結果より、これらはシラミ卵孵化の異なる段階にわたって一貫性のないレベルの殺卵活性を示すことが判明した。これに対して、化合物1,10-フェナントロリンはシラミ卵孵化の阻害において非常に有効であった。
【0122】
実施例11:他の市販シラミ製剤の評価
二つの主要な市販アタマジラミ製剤の殺卵性を、標準シラミ卵孵化アッセイ法において評価した。2つの市販アタマジラミ製剤は下記のとおりであった:
1. Pronto Plus (登録商標)Shampoo Del Laboratories、活性成分0.33%ピレトリン;および
2. Pronto Plus(登録商標) Mousse Shampoo Del Laboratories、活性成分0.33%ピレトリン。
【0123】
これら二つの製剤を製造者の推奨に従って試験した。卵群(24時齢)を異なる製剤で製造者の推奨に従い適当な時間(5分〜10分間)処理した後、32℃の水中で1分〜2分間洗浄した。二つの陰性対照(未処理および20%エタノール)も組み込んだ。異なる製剤への曝露後、卵をティッシュペーパー上で水分を吸い取り乾燥し、32℃、70%RHに置き、孵化させた。第二の卵群(48時齢)を前述のとおりに処理し、同様に孵化させた。この工程をアタマジラミ卵に対して産卵後120時間まで24時間間隔で繰り返した。この阻害剤アッセイ法は、シラミ卵が頭上で発生の様々な段階にある現場の状況を、より厳密に反映しており、寄生生物のこれらの異なる段階に対する阻害効果の観察を可能にする。これらの試験の結果を表8に示す。
【0124】
(表8)2つの市販アタマジラミ製剤および対照により産卵後24時間間隔で処理した後の卵孵化の結果。結果を下記について示す:N(重複測定ごとの卵の数)、H(うまく孵化した卵の数)およびPh(部分的に孵化した卵の数)。

【0125】
2つの市販殺シラミ薬の試験結果より、これらはシラミ卵孵化の異なる段階にわたって非常に低く、かつ一貫性のないレベルの殺卵活性を示すことが判明した。
【0126】
当業者であれば、具体的態様において示した本発明に対し、広く記載した本発明の精神または範囲から逸脱することなく、多くの変更および/または改変を加えうることを理解すると思われる。したがって、本態様はすべての観点で例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。
【0127】
前述のすべての発行物はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0128】
本明細書に含まれるいかなる文書、記録、材料、装置、論文などの議論は、本発明の文脈を提供するためにすぎない。これらのいずれか、またはすべては、それが本出願の各特許請求の範囲の優先日よりも前に任意の国に存在していたために、先行技術の基礎の一部をなす、または当技術分野における一般的知識であったとの自認であると解釈されるべきではない。
【0129】
引用文献:

【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】毛髪およびシラミ卵の様々な試料から得た洗液のプロテアーゼ活性について、ゼラチン基質SDS-PAGE分析を行い、ゲルをクーマシーブルー染色および脱染した後の結果を示す図である。レーン1は、孵化の12時間以内に未孵化のシラミ卵から得た洗液で検出されたプロテアーゼ活性を示している。プロテアーゼ活性はSDSゲルの高分子量領域にあった。レーン2は、毛髪からの洗液で検出されたプロテアーゼ活性を示し、母体起源と思われるいくつかの活性が高く、安定なプロテアーゼの存在を示している。レーン3は、これらの混入プロテアーゼを除去するために、次亜塩素酸ナトリウムの1%溶液で1分間洗浄した後、数回水洗した毛髪試料を示している。この処理により、母体プロテアーゼを除去することができ、毛髪のみの試料ではプロテアーゼ種はまったく検出されない結果となった。レーン4は、卵孵化の12時間以内に、次亜塩素酸ナトリウムで処理(前述のとおり)した卵の洗液で検出されたプロテアーゼ活性を示している。この処理により、未洗浄の試料で観察されたプロテアーゼ活性を除去することができる(レーン1と比較されたい)。レーン5は、次亜塩素酸ナトリウムであらかじめ処理し、孵化させた、シラミ卵からの卵洗液における一つまたは二つの高分子量プロテアーゼ種の存在を示している。これらのプロテアーゼは、卵孵化時のシラミ卵に特に関与している。
【図2】次亜塩素酸塩処理後のシラミ卵から得た卵殻洗液の、阻害剤処理したゼラチンSDS-PAGEゲルのクーマシー染色を示す図である。およそ25〜30kDaに三つのバンドが認められた(括弧で示している)。レーン1:ESW陽性対照、阻害剤未処理、レーン2:10mM 1,10-フェナントロリン処理後のESW、レーン3:5mM PMSF処理後のESW、およびレーン4:10μM E-64処理後のESW。インキュベーションは37℃で3時間行った。1,10-フェナントロリン処理後のプロテアーゼ活性の著しい低下に留意されたい(レーン2の括弧領域)。アスパラギン酸阻害剤ペプスタチンを用いた場合、ESWのプロテアーゼ活性に低下は見られなかった(データは示していない)。
【図3】シラミの卵孵化に対する1,10-フェナントロリンの効果を示す図である。卵を産卵後5日間処理し、孵化を経時観察した。
【図4】シラミの卵孵化に対するベスタチンの効果を示す図である。卵を産卵後5日間処理し、孵化を経時観察した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部寄生生物卵の孵化を阻害する方法であって、外部寄生生物卵を金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、または該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、該複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つの金属キレート剤に曝露する段階を含む方法。
【請求項2】
外部寄生生物卵の孵化を阻害する方法であって、外部寄生生物卵をメタロプロテアーゼ阻害剤の有効量に曝露する段階を含む方法。
【請求項3】
炭素環または複素環がアリールまたはヘテロアリール環である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
金属キレート剤が少なくとも一つの窒素ヘテロ原子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
金属キレート剤もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤が式(I)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である、請求項1から4のいずれか一項記載の方法:

式中、Xは共有結合、-C(R5)2-、-Z-または-C(R5)2-Z-C(R5)2-から選択され;
R1およびR1'は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオ、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルもしくはN(C1-6アルキル)2から独立に選択されるか、またはR1およびR1'は一緒になってC(R5)2-、-C(R5)2-C(R5)2-、-CR5=CR5-、C(O)、C(S)もしくはNHであり;
R2、R2'、R3、R3'、R4およびR4'は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルもしくはN(C1-6アルキル)2、または-CH2CHNH(CO2H)から独立に選択されるか;あるいは
R2およびR3もしくはR3およびR4ならびに/またはR2'およびR3'もしくはR3'およびR4'はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5または6員炭素環または複素環を形成し;
各R5は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から独立に選択され;かつ
Zは共有結合、-NH-、-O-、-S-、-C(O)-および-C(S)-から選択される。
【請求項6】
R1およびR1'が水素またはC1-3アルキルから独立に選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
R2およびR2'が独立に水素またはC1-3アルキルである、請求項5または請求項6記載の方法。
【請求項8】
R3、R3'、R4およびR4'が水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオールまたはCO2C1-6アルキルから独立に選択される、請求項5から7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
各R5が水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオールまたはCO2C1-6アルキルから独立に選択される、請求項5から8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
Xが共有結合、-CH2-Z-CH2-またはZである、請求項5から10のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
Zが-NH-、-O-または-S-である、請求項5から11のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
式(I)の化合物が:
2,2'-ジピリジル、
6,6'-ジメチル-2,2'-ジピリジル、
5,5'-ジメチル-2,2'-ジピリジル、および
またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項13】
金属キレート剤もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤が式(II)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である、請求項1から4のいずれか一項記載の方法:

式中、X'は共有結合、-C(R13)2-、Z'またはC(R13)2-Z'-C(R13)2-から選択され;
UはNまたはC(R13)から選択され;
Wは-NH-、-S-または-O-から選択され;
Z'は共有結合、-NH-、-O-、-S-、-C(O)-、または-C(S)-から選択され;
R10は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、または-(CH2)nR14から選択され;
R11は各アリールまたはヘテロアリールが一つまたは複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、またはハロで置換されていてもよい(CH2)mアリールまたは(CH2)mヘテロアリールから選択され;
各R12は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、もしくは-(CH2)nR14から独立に選択されるか;または
R10およびR12はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5もしくは6員炭素環もしくは複素環を形成し;
各R13は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、または-(CH2)nR14から独立に選択され:
R14はNH2、OH、SHまたはCO2Hから選択され;
mは0または1から4の整数であり;かつ
nは1から4の整数である。
【請求項14】
金属キレート剤もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤が式(III)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である、請求項1から4のいずれか一項記載の方法:

式中、Arは一つまたは複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2で置換されていてもよいフェニル、ナフチルまたはインドリルであり;
R21はNH2、NHR25または-CH2SR25から選択され;
R22は水素、ヒドロキシまたはC1-6アルコキシから選択され;
R23は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルから選択され;
R24はOH、OR26、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から選択され;
R25は水素、アルキルが-SHまたは-OHで置換されていてもよいC(O)C1-6アルキルから選択され;
R26はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルまたはベンジルから選択され;かつ
pは0または1である。
【請求項15】
Arがフェニルまたはナフチルである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
R21がNH2、SHで置換されていてもよい-NHC(O)C1-6アルキル、-CH2SC(O)C1-6アルキルまたはCH2SHである、請求項14または請求項15記載の方法。
【請求項17】
R22が水素またはヒドロキシである、請求項14から16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
R23が水素またはC1-3アルキルである、請求項14から17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
R24がOH、NH2またはOベンジルである、請求項14から18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
pが0またはlである、請求項14から19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
式(III)の化合物がベスタチンおよびチオロファンまたはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項22】
金属キレート剤もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤が式(IV)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である、請求項1から4のいずれか一項記載の方法:

式中、Arは一つまたは複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2で置換されていてもよいフェニル、ナフチルまたはインドリルであり;
R31はCO2H、CO2C1-6アルキル、CO2C2-6アルケニル、CO2C2-6アルキニル、CONH2、CONH(C1-6アルキル)またはCON(C1-6アルキル)2から選択され;
R32は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、CH2CH2CO2H、CH2CH2CONH2、CH2CH2OH、CH2CH2SHから選択され;かつ
R33はC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)2、CH2CO2H、CH2CO2C1-6アルキル、CH2CONH2、CH2OH、またはCH2SHから選択される。
【請求項23】
金属キレート剤もしくはメタロプロテアーゼ阻害剤が式(V)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩である、請求項1から4のいずれか一項記載の方法:

式中、R41およびR42は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニルから独立に選択されるか、またはR41およびR42はそれらが結合している窒素と一緒になって一つまたは複数のC1-6アルキル、C2-6アルケニルもしくはC2-6アルキニル基で置換されていてもよい5もしくは6員複素環を形成し;かつ
R43は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から選択される。
【請求項24】
金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤がテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、1-[(2S)-3-メルカプト-2-メチル-1-オキソプロピル]-L-プロリン(カプトプリル)もしくはN-(アルファ-ラムノピラノシルオキシ-ヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-L-トリプトファン(ホスホラミドン)、またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩から選択される、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項25】
外部寄生生物卵が鱗翅目(Lepidoptera)、半翅目(Hemiptera)、直翅目(Orthoptera)、チャタテムシ目(Psocoptera)、膜翅目(Hymenoptera)、等翅目(Isoptera)、鞘翅目(Coleoptera)、網翅目(Dictyoptera)、総翅目(Thysanoptera)、同翅目(Homoptera)、双翅目(Diptera)、シラミ目(Anaplura)、ハジラミ目(Malophaga)、ノミ目(Siphonaptera)および蛛形綱(Arachnida)の種の外部寄生生物によって産卵される、請求項1から24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
外部寄生生物がシラミ目(lice)由来である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
外部寄生生物がケジラミ(Pthirus pubis)、アタマジラミ(Pediculus humanus capitus)、コロモジラミ(Pediculus humanus humanus)種または亜種由来である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
外部寄生生物がアタマジラミ(head lice)種のものである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
宿主における外部寄生生物侵襲を治療または予防する方法であって、金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、または該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、該複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つのキレート剤の有効量を適用する段階を含む方法。
【請求項30】
宿主における外部寄生生物侵襲を治療または予防する方法であって、少なくとも一つのメタロプロテアーゼ阻害剤の有効量を被験者に適用する段階を含む方法。
【請求項31】
外部寄生生物侵襲が鱗翅目、半翅目、直翅目、チャタテムシ目、膜翅目、等翅目、鞘翅目、網翅目、総翅目、同翅目、双翅目、シラミ目、ハジラミ目、ノミ目および蛛形綱の外部寄生生物によって引き起こされる、請求項29または請求項30記載の方法。
【請求項32】
外部寄生生物がシラミ目(lice)由来である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
外部寄生生物がケジラミ、アタマジラミ、コロモジラミ種または亜種由来である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
外部寄生生物がアタマジラミ(head lice)種のものである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤を第二の外部寄生生物撲滅薬と一緒に適用する、請求項29から34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
金属キレート剤またはメタロプロテアーゼ阻害剤および第二の外部寄生生物撲滅薬を同時、逐次または別々に適用する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
第二の外部寄生生物撲滅薬が卵孵化、幼虫および/または外部寄生生物成虫を制御する、請求項35または請求項36記載の方法。
【請求項38】
シラミ卵の孵化を阻害する方法であって、シラミ卵を少なくとも一つの式(Ia)の化合物またはその薬学的、獣医学的もしくは農業的に許容される塩の有効量に曝露する段階を含む方法:

式中、Xは共有結合、-C(R5)2-、-Z-または-C(R5)2-Z-C(R5)2-から選択され;
R1およびR1'は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオ、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から独立に選択され;
R2、R2'、R3、R3'、R4およびR4'は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルもしくはN(C1-6アルキル)2、または-CH2CHNH(CO2H)から独立に選択されるか;あるいは
R2およびR3もしくはR3およびR4ならびに/またはR2'およびR3'もしくはR3'およびR4'はそれらが結合している炭素原子と一緒になって5または6員炭素環または複素環を形成し;
各R5は水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシ、C1-6アルコキシ、チオール、C1-6アルキルチオール、CO2H、CO2C1-6アルキル、SO3H、SO3C1-6アルキル、NH2、NHC1-6アルキルまたはN(C1-6アルキル)2から独立に選択され;かつ
Zは共有結合、-NH-、-O-、-S-、-C(O)-および-C(S)-から選択される。
【請求項39】
外部寄生生物卵の孵化を阻害するための組成物であって、金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、または該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、該複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つの金属キレート剤の有効量と、適当な希釈剤、賦形剤または担体とを含む組成物。
【請求項40】
外部寄生生物卵の孵化を阻害するための組成物であって、少なくとも一つのメタロプロテアーゼ阻害剤の有効量と、適当な希釈剤、賦形剤または担体とを含む組成物。
【請求項41】
外部寄生生物侵襲が鱗翅目、半翅目、直翅目、チャタテムシ目、膜翅目、等翅目、鞘翅目、網翅目、総翅目、同翅目、双翅目、シラミ目、ハジラミ目、ノミ目および蛛形綱の外部寄生生物によって引き起こされる、請求項39または請求項40記載の組成物。
【請求項42】
外部寄生生物がシラミ目(lice)由来である、請求項41記載の組成物。
【請求項43】
外部寄生生物がケジラミ、アタマジラミ、コロモジラミ種または亜種由来である、請求項42記載の組成物。
【請求項44】
外部寄生生物がアタマジラミ(head lice)種のものである、請求項43記載の組成物。
【請求項45】
第二の外部寄生生物撲滅薬をさらに含む、請求項39から44のいずれか一項記載の組成物。
【請求項46】
第二の外部寄生生物撲滅薬が卵孵化、幼虫および/または外部寄生生物成虫を制御する、請求項45記載の組成物。
【請求項47】
外部寄生生物卵の孵化を阻害する化合物の同定法であって、化合物が外部寄生生物卵中に存在するメタロプロテアーゼを阻害する能力を評価する段階を含む方法。
【請求項48】
外部寄生生物卵の孵化を阻害するための組成物製造における、金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、または該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、該複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つの金属キレート剤の使用。
【請求項49】
宿主における外部寄生生物侵襲を治療または予防するための組成物製造における、金属キレート剤が金属イオンに同時に配位することができる少なくとも二つのヘテロ原子を含む化合物で、二つのヘテロ原子の少なくとも一つは窒素、硫黄、酸素およびリンから選択されており、該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換された少なくとも一つの炭素環を含むか、または該化合物は少なくとも一つのヘテロ原子を含む少なくとも一つの複素環を含み、該複素環は少なくとも一つのヘテロ原子および/もしくは少なくとも一つのヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい少なくとも一つの金属キレート剤の使用。
【請求項50】
外部寄生生物卵の孵化を阻害するための組成物製造における、少なくとも一つのメタロプロテアーゼ阻害剤の使用。
【請求項51】
宿主における外部寄生生物侵襲を治療または予防するための組成物製造における、少なくとも一つのメタロプロテアーゼ阻害剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−505032(P2007−505032A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519728(P2006−519728)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000955
【国際公開番号】WO2005/007188
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(506016299)ハッチテク ピーティーワイ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】