説明

多剤式毛髪処理剤及び毛髪処理方法

【課題】少なくとも二剤で構成され、毛髪に対する十分なコンディショニング効果と水洗時の良好な感触とを付与することができる多剤式毛髪処理剤及び毛髪処理方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも第1剤及び第2剤の二剤を備え、この順に毛髪処理を行う多剤式毛髪処理剤であって、第1剤にはアミノ変性シリコーンが配合され、第2剤にはアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーが配合される。第1剤のアミノ変性シリコーンの配合量は2質量%以上、第2剤のカチオン性ポリマーの配合量は0.1質量%以上3質量%以下、第2剤のカチオン性ポリマーの配合量は0.1質量%以上3質量%以下、アニオン界面活性剤のカチオン性ポリマーに対する質量比は1以上30以下が好ましい。本発明の毛髪処理方法は、毛髪に第1剤を塗布する工程、毛髪に第2剤を塗布する工程、毛髪の水洗処理を行う行程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二剤を備え、毛髪に対する十分なコンディショニング効果と水洗時の良好な感触とを付与することができる多剤式毛髪処理剤及び毛髪処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の毛髪は、その髪型や色彩等により、見る者の美意識や印象に大きな影響を与えるものである。そのため、近年では、毛髪に対し、パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマネント処理、染毛処理等の化学的毛髪処理や、ブラッシング、ブロー処理等の物理的毛髪処理が盛んに行われているが、このような処理を繰り返すことによって毛髪にダメージが蓄積される。このようにダメージが蓄積された毛髪に柔軟感、しっとり感、滑らかさ(滑り)等を付与するために、一般的には洗髪の際にリンス、トリートメント等のコンディショニング剤が使用されている。
【0003】
このような毛髪に柔軟感、しっとり感、滑らかさ等を付与するための従来のコンディショニング剤としては、少なくとも二剤で構成される多剤式毛髪処理剤が開発されており、例えば、(a)還元性物質及びカチオン性ポリマーを配合する第1剤と、アニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤及び油剤を配合する第2剤とから構成される二剤式毛髪処理剤(特許文献1参照)や、(b)カチオン界面活性剤、アミノ変性シリコーン及びジアルキルエーテルを配合する第1剤と、酸類及び多価アルコールを配合する第2剤とから構成される多剤式毛髪処理剤(特許文献2参照)等が提案されている。
【0004】
上記従来の多剤式毛髪処理剤は、第1剤に配合するアミノ変性シリコーンが毛髪に対する高い吸着性を有し、良好なコンディショニング効果を発現することができるが、このアミノ変性シリコーンが毛髪に必要以上に吸着し、処理後の毛髪がべたつくことがある。かかる処理後の毛髪のべたつきは、アミノ変性シリコーンの配合量が多いほど生じやすい。
【0005】
また、上記従来の多剤式毛髪処理剤では、アミノ変性シリコーンが配合された第1剤による毛髪処理及び第2剤による毛髪処理を行い、次いで毛髪に対して処理剤を洗い流す水洗処理を行うが、この水洗処理の際にきしみ(毛髪同士の接触により発生する摩擦抵抗感)が生じるという不都合がある。かかる水洗処理の際のきしみは、水洗の手間や不快感を与えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−308522号公報
【特許文献2】特開2008−137995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、毛髪に対してアミノ変性シリコーンによる十分なコンディショニング効果を付与しつつ、処理後の毛髪のべたつき及び水洗処理の際のきしみの発生を抑制することができる多剤式毛髪処理剤及びこの毛髪処理剤を用いた毛髪処理方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
少なくとも第1剤及び第2剤の二剤を備え、この順に毛髪処理を行う多剤式毛髪処理剤であって、
第1剤がアミノ変性シリコーンを配合したものであり、
第2剤がアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーを配合したものであることを特徴とするものである。
【0009】
当該多剤式毛髪処理剤は、第1剤に配合されたアミノ変性シリコーンによって毛髪に十分なコンディショニング効果を付与することができると共に、第2剤に配合されたアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーによって処理後の毛髪のべたつき及び第2剤塗布後の水洗処理の際のきしみを抑制することができる。
【0010】
第1剤におけるアミノ変性シリコーンの配合量は、特に限定されず、2質量%以上であっても良い。また、上記第2剤におけるカチオン性ポリマーの配合量としては0.1質量%以上3質量%以下が好ましい。このようにカチオン性ポリマーの配合量を上記範囲とすることで、コンディショニング処理後における毛髪のべたつき及び第2剤塗布後の水洗時のきしみをより効果的に抑制することができる。さらに、カチオン性ポリマーの量が多い程毛髪を滑らかにできるので、アニオン界面活性剤のカチオン性ポリマーに対する配合質量比としては1以上30以下が通常である。このようにアニオン界面活性剤のカチオン性ポリマーに対する質量比を上記範囲とすることで、コンディショニング処理後における毛髪の滑らかさを良好にすることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
毛髪に対してアミノ変性シリコーンを配合した第1剤を塗布する工程と、
第1剤を塗布後の毛髪に対してアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーを配合した第2剤を塗布する工程と、
毛髪に対して水洗処理を行う行程と
を含む毛髪処理方法である。
【0012】
当該毛髪処理方法は、上記多剤式毛髪処理剤と同様に、毛髪のコンディショニング効果が向上し、コンディショニング処理後の毛髪のべたつき及び第2剤塗布後の水洗処理の際のきしみを効果的に抑制することができる。
【0013】
ここで、「アミノ変性シリコーン」とは、アミノ基を含有するシリコーンを意味する。「カチオン性ポリマー」とは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーを意味する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の多剤式毛髪処理剤及びこれを用いた毛髪処理方法は、第1剤にアミノ変性シリコーンを配合することにより、アミノ変性シリコーンのアミノ基が毛髪に対する高い吸着性を発揮し、毛髪に対して十分なコンディショニング効果を付与することができ、加えて第2剤にアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーを配合することにより、アミノ変性シリコーンが付与する上述の十分なコンディショニング効果を維持しつつ、コンディショニング処理後における毛髪のべたつき及び第2剤塗布後の水洗処理の際のきしみを共に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を詳説する。
【0016】
本発明の多剤式毛髪処理剤は、少なくとも第1剤及び第2剤の二剤を備え、第1剤の前に毛髪処理を行う前処理剤、第2剤の後に毛髪処理を行う後処理剤等を備えてもよい。当該多剤式毛髪処理剤は、第1剤及び第2剤の順に毛髪処理を行うものであり、前処理剤及び後処理剤を備える場合には前処理剤、第1剤、第2剤及び後処理剤の順に毛髪処理を行うものである。
【0017】
[第1剤]
第1剤は、製造時に水を配合した水系剤および製造時に水を配合しない非水系剤のいずれであっても良いが、必須成分としてアミノ変性シリコーンを配合したものである。第1剤には、その他に任意成分を配合しても良い。
【0018】
アミノ変性シリコーンとは、シリコーン骨格に直接あるいは置換基を介してアミノ基を有するシリコーンである。このアミノ変性シリコーンとしては、例えば一般式(1)及び一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0019】
【化1】

【0020】
上記一般式(1)中、x及びyは1〜5の整数を示し、m及びnは分子量に依存する整数を示す。
【0021】
【化2】

【0022】
上記一般式(2)中、v及びwは1〜5の整数を示し、p及びqは分子量に依存する整数を示す。
【0023】
一般式(1)に示す化合物としては、例えば、x=3及びy=2であるアミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体((アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー)が挙げられる。また、一般式(2)に示す化合物としては、例えば、v=3及びw=2であるアミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)が挙げられる。
【0024】
アミノ変性シリコーンの具体例(化粧品の表示名称を含む)としては、上記化合物以外に、例えばアミノプロピルジメチコン(アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体)、高重合アミノプロピルジメチコン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アミノグリコール変性シリコーン、アクリル・アミノ変性シリコーン、アミノフェニル変性シリコーン等が挙げられる。これらのアミノ変性シリコーンの一種又は二種以上の混合物を使用することができる。
【0025】
アミノ変性シリコーンの配合量(第1剤の質量を基準とした配合量)の下限としては、特に限定されないが、2質量%が好ましく、3質量%が特に好ましい。一方、アミノ変性シリコーンの配合量の上限としては、特に限定されないが、8質量%が好ましく、7質量%がより好ましく、6質量%が特に好ましい。このように、アミノ変性シリコーンの配合量を上記範囲とすることで、処理後の毛髪に十分なコンディショニング効果を付与することができると共に、毛髪の硬さやべたつきの発生を低減することができる。
【0026】
アミノ変性シリコーンのアミノ含量(アミノ変性シリコーン中の窒素の含有量)は、例えば、0.5質量%以上3.0質量%以下であり、通常、0.7質量%以上2.2質量%以下のものを使用する。
【0027】
第1剤は、水を配合せずに製造される非水剤であっても良いが、毛髪への塗布を容易にすることから水を配合して製造される水系剤であることが好ましい。この水の配合量としては、40質量%以上90質量%以下が好ましい。
【0028】
任意成分としては、特に限定されるものではなく、例えば油脂類、ワックス類、炭化水素類、高級脂肪酸類、アルコール類、エーテル類、エステル類、鎖状ポリシロキサン、環状ポリシロキサン、変性ポリシロキサン類、カチオン界面活性剤類、両性界面活性剤類、非イオン界面活性剤類、保湿成分類、無機フィラー類、有機フィラー類、無機顔料類、有機色素類、アミノ酸及びその誘導体、タンパク質加水分解物及びその誘導体、ステロール及びその誘導体、紫外線吸収剤類、ビタミンB類、その他のビタミン類、防腐・抗菌剤、香料、カラメルが挙げられる。
【0029】
上記油脂類としては、例えばマカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。上記ワックス類としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、水素添加還元ラノリン、ホホバロウ等が挙げられる。
【0030】
上記炭化水素類としては、例えば流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。上記高級脂肪酸類としては、例えばオレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ウンデシレン酸等が挙げられる。上記アルコール類としては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数6以下の低級一価アルコール;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール等の高級一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール;が挙げられる。エーテル類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0031】
上記エステル類としては、例えばカプリル酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、エトキシ化ホホバエステル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、モノミリスチン酸ポリグリセリン、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等が挙げられる。
【0032】
上記鎖状ポリシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等が挙げられる。上記環状ポリシロキサンとしては、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等が挙げられる。上記変性ポリシロキサン類としては、例えばポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、アルキルグリセリルエーテル変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0033】
上記カチオン界面活性剤類としては、例えば臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジメチルジステアリルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等が挙げられる。上記両性界面活性剤類としては、例えばイミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(イミダゾリニウムベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等が挙げられる。
【0034】
上記非イオン界面活性剤類としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、グリセリン脂肪酸エステル類(グリセリンモノステアレート、グリセリンモノイソステアレート、グリセリントリイソステアレート等)プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、デシルグルコシド、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、テトラオレイン酸POEソルビット等が挙げられる。なお、上記化合物中「POE」とは「ポリオキシエチレン」を意味し、「POP」とは「ポリオキシプロピレン」を意味する。
【0035】
上記保湿成分類としては、例えばdl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、セラミド2、水添レシチン、ヒアルロン酸ナトリウム、トレハロース、乳酸、乳酸ナトリウム等が挙げられる。上記無機フィラー類としては、例えばマイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。上記有機フィラー類としては、例えばポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等が挙げられる。
【0036】
上記無機顔料類としては、例えばベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、酸化チタン、群青、紺青、酸化亜鉛等が挙げられる。上記有機色素類としては、例えば雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等が挙げられる。
【0037】
アミノ酸及びその誘導体としては、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、ピロリドンカルボン酸、アシル化アミノ酸、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ2−オクチルドデシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ2−ヘキシルデシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・2−オクチルドデシル)等が挙げられる。
【0038】
タンパク質加水分解物及びその誘導体としては、例えば加水分解コラーゲン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コラーゲン、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、ココイル加水分解コラーゲン塩、ウンデシレノイル加水分解コラーゲン塩、イソステアロイル加水分解コラーゲン塩、ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲン塩、加水分解ケラチン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ケラチン、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ケラチン、加水分解カゼイン、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解カゼイン、加水分解シルク、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解シルク、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解シルク、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解シルク、イソステアロイル加水分解シルク塩、加水分解コンキオリン、加水分解ダイズタンパク、ココイル加水分解ダイズタンパク塩、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク、加水分解コムギ、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解コムギ、(ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)ヒドロキシプロピル加水分解ゴマタンパク、加水分解ライスタンパク等が挙げられる。
【0039】
ステロール及びその誘導体としては、例えばコレステロール、フィトステロール、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル、イソステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル等が挙げられる。
【0040】
上記紫外線吸収剤類としては、例えばパラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等が挙げられる。上記ビタミンB類としては、例えばビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体などが挙げられる。上記その他ビタミン類としては、例えばビタミンA又はその誘導体、トコフェロール(α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール等)、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノンなどが挙げられる。上記防腐・抗菌剤としては、例えばフェノキシエタノール、メチルイソチアリゾン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。
【0041】
第1剤のpHとしては、3.5以上6.5以下であることが好ましく、4.0以上4.4以下であることが特に好ましい。第1剤のpHが上記範囲を超えると、処理後の毛髪の滑らかさや柔軟性が十分に得られないおそれがあり、逆に、第1剤のpHが上記範囲より小さいと、毛髪の柔軟性が損なわれるおそれがある。なお、第1剤のpHは、公知のpH調整剤を配合することで調整することができる。このpH調整剤としては、公知の有機酸又は無機酸を用いることができ、処理後の毛髪の感触がより良好となる点で有機酸が好ましい。この有機酸としては、クエン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸等のα−ヒドロキシ酸が特に好ましい。また、無機酸としてはリン酸等が好ましい。
【0042】
第1剤の剤形としては、特に限定されず、液状、乳液状、オイル状、クリーム状、ゲル状、泡状、エアゾール状等が挙げられる。これらの剤形の中でも、アミノ変性シリコーンの毛髪への塗布性がより良好となる点で、クリーム状とすることが特に好ましい。具体的には、B型粘度計(25℃、ローターNo.4、ローター回転速度12rpm)による測定開始後60秒後の粘度の値が、15000mPa・s以上45000mPa・s以下であることが好ましい。
【0043】
[第2剤]
第2剤は、製造時に水を配合した水系剤および製造時に水を配合しない非水系剤のいずれであっても良いが、必須成分としてアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーを配合したものである。第2剤には、その他に任意成分を配合しても良い。
【0044】
アニオン界面活性剤とは、水溶液中でイオンとなることができ、親水性を示す部分がアニオンとなる界面活性剤をいう。このアニオン界面活性剤の具体例としては、
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヤシ油脂肪酸等の脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩等の脂肪酸石鹸;
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜13)エーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜13)エーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜13)エーテル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;
ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸塩;
ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸酢酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム;
ジアルキルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜13)スルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム、スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;
ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレン脂肪酸アミドエーテル硫酸塩;
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸タウリンナトリウム、ラウリン酸タウリンナトリウム、アシルメチルタウリン等のタウリン塩;
ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンカリウム、ラウロイルサルコシンカリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン等のサルコシン塩;
ラウリルリン酸、オレイルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜15)エーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、トリポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドリン酸塩等のナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の塩であるリン酸塩;
N−アシル−L−アスパラギン酸塩;
ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸塩、アルキルエタンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸ナトリウム、ラウロイルシルクアミノ酸ナトリウム、アルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等);
N−アシルグルタミン酸塩(N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸塩、N−ミリストイルグルタミン酸塩、N−パルミトイルグルタミン酸塩、N−ステアロイルグルタミン酸塩、N−オレオイルグルタミン酸塩等)、N−アシルメチルアラニン塩(N−ヤシ油脂肪酸メチルアラニン塩、N−ラウロイルメチルアラニン塩、N−ミリストイルメチルアラニン塩)、N−アシルサルコシン酸塩(N−ヤシ油脂肪酸サルコシン塩、N−ラウロイルサルコシン塩、N−ミリストイルサルコシン塩、N−オレオイルサルコシン塩等)、N−アシルシルクアミノ酸塩(N−ラウロイルシルクアミノ酸塩等);
等が挙げられる。
【0045】
上記アニオン界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウムが好適に使用され、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムが特に好ましい。このアニオン界面活性剤としては、上記化合物を1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0046】
アニオン界面活性剤の配合量(第2剤の質量を基準とした配合量)の下限としては、特に限定されないが、3質量%が好ましく、4質量%がより好ましく、5質量%が特に好ましい。一方、アニオン界面活性剤の配合量の上限としては、特に限定されず、10質量%が好ましく、9質量%がより好ましく、8質量%が特に好ましい。このアニオン界面活性剤の配合量を上記範囲とすることにより、水洗時の毛髪がより一層滑らかになると共に、その滑らかさの持続性を付与することができる。
【0047】
カチオン性ポリマーは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーをいう。かかるカチオン性ポリマーの具体例としては、
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のカチオン化セルロース;
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアガム等のカチオン化グアガム;
デキストラン塩化ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムエーテル等のカチオン化デキストランのようにセルロース誘導体、天然ガム、澱粉、デキストラン等の多糖類をカチオン化して得られるカチオン化多糖;
塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解シルク、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コムギたん白、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コンキオリン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解シルク、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コムギたん白、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ステアリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コンキオリン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解シルク、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コムギたん白、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コンキオリン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解大豆たん白、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解カゼイン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コラーゲン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解シルク、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解ケラチン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(やし油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コンキオリン等のように加水分解たん白質をカチオン化して得られるカチオン化加水分解たん白;
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、β−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム・アクリルアミド共重合物、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合物ジエチル硫酸塩、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、β−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム・アクリルアミド共重合物、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム等のカチオン化ビニル系又はアクリル系ポリマー;
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N−ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール等のポリグリコールポリアミン縮合物;
アジピオン酸ジメチル−アミノヒドロキシプロピルジエチルトリアミン共重合体;
アミノエチルアミノプロピル・メチルポリシロキサン共重合体
等が挙げられる。
【0048】
上記カチオン性ポリマーの中でも、特に毛髪処理時の柔らかさ、滑らかさ及び指の通り易さ、乾燥時のまとまり易さ及び保湿性という効果及び人体・環境への安定性の点から、カチオン化セルロースが好適に使用され、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースが特に好ましい。このカチオン性ポリマーとしては、上記化合物を1種又は2種以上混合して使用することができる。
【0049】
カチオン性ポリマーの配合量(第2剤の質量を基準とした配合量)の下限としては、特に限定されないが、0.1質量%が良く、0.2質量%が好ましく、0.3質量%が特に好ましい。一方、カチオン性ポリマーの配合量の上限としては、特に限定されないが、3質量%が好ましく、2質量%が特に好ましい。
【0050】
アニオン界面活性剤のカチオン性ポリマーに対する質量比は、その値が大きいほど毛髪を滑らかにすることができる。この質量比は、1以上30以下が通常であり、5以上25以下が好ましい。
【0051】
第2剤に、水及び任意成分を配合する場合に関しては、上記第1剤と同様である。
【0052】
第2剤の剤形としては、第1剤と同様に、液状、乳液状、オイル状、クリーム状、ゲル状、泡状、エアゾール状等が挙げられる。これらの剤形の中でも、第1剤を塗布した毛髪全体に第2剤を塗布しやすいという点及び先に塗布した第1剤を毛髪全体に均一化するという点で、液状又は泡状とすることが特に好ましい。
【0053】
[前処理剤及び後処理剤]
前処理剤は、特に限定されるものではなく、水を配合したものを使用すると良い。そして、この前処理剤には、上記成分以外に、香料等を配合してもよい。
【0054】
好ましい前処理剤は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ビスメトキシグリコール、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシグリコール、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ビスメトキシジグリコール、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ビスメトキシトリグリコール、および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシトリグリコールから選択された一種または二種以上のシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルを配合(通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%配合。)したものであり、下記一般式(3)で示されるエステルを配合したものが好ましい。
【0055】
【化3】

【0056】
この一般式(3)で示されるエステルは、表示名称がシクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールであり、日本精化社から「Necsolue−Aqulio」の名称で市販されている。
【0057】
この一般式(3)で示されるエステル等のシクロヘキサンジカルボン酸ジエステルは、両親媒性であり、ダメージを受けた毛髪の細胞膜に容易に浸透する。その結果、シクロヘキサンジカルボン酸ジエステルが浸透した毛髪にはアミノ酸等の補修成分がより浸透しやすくなり、毛髪へのコンディショニング効果をより一層高めることができる。
【0058】
前処理剤のpHとしては、3.0以上5.0以下が好ましく、4.0以上4.8以下が特に好ましい。また、剤形については、毛髪への浸透力がより高まる点から液状であることが好ましい。
【0059】
後処理剤は、特に限定されるものではなく、例えば上記必須及び/又は任意の成分に長鎖アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤及び媒体を含むものや、公知のコンディショニング剤を適用できる。
【0060】
[毛髪処理方法]
当該多剤式毛髪処理剤を用いた毛髪処理方法としては、
(a)毛髪に対して第1剤を塗布する工程と、
(b)第1剤を塗布した毛髪に対して第2剤を塗布する工程と、
(c)第2剤を塗布した毛髪に対して最終水洗処理を行う行程と、
(d)水洗処理した毛髪に対して乾燥処理を行う工程と
を有している。
【0061】
また、当該多剤式毛髪処理剤が第1剤及び第2剤に加えて前処理剤及び後処理剤を備える場合の毛髪処理方法としては、
(e)毛髪に対して前処理剤を塗布する工程と、
(a)前処理剤を塗布した毛髪に対して第1剤を塗布する工程と、
(b)第1剤を塗布した毛髪に対して第2剤を塗布する工程と、
(f)第2剤を塗布した毛髪に対して中間水洗処理を行う工程と、
(g)水洗処理した毛髪に対して後処理剤を塗布する工程と、
(c)後処理剤を塗布した毛髪に対して最終水洗処理を行う行程と、
(d)水洗処理した毛髪に対して乾燥処理を行う工程と
を有している。
【0062】
なお、(a)の第1剤の塗布工程と(b)の第2剤の塗布工程との間に、中間水洗を行ってもよいが、第2剤の塗布後の水洗時における毛髪のきしみを抑制するためには、この中間水洗を行わないことがより好ましい。
【0063】
当該多剤式毛髪処理剤及びこれを用いた毛髪処理方法によれば、第1剤に配合するアミノ変性シリコーンによって毛髪に十分なコンディショニング効果を付与することができると共に、第2剤に配合するアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーによって処理後の毛髪のべたつき及び水洗処理の際のきしみを抑制することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0065】
(実験1)
[実施例1、比較例1〜3]
以下に示すように第1剤及び第2剤を調製し、実施例1及び比較例1〜3の多剤式毛髪処理剤を作製した。
【0066】
〈第1剤の調製〉
クリーム状第1剤を、水に、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体4質量%、高級アルコール11質量%、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4質量%、1,3−ブチレングリコール3質量%、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム3質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン2質量%、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット2質量%、モノステアリン酸グリセリン1質量%、イソプロパノール1質量%、並びに、セラミド(2)、水添レシチン、ヒアルロン酸ナトリウム、コレステロール、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、アミノ酸、ソルビトール、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、トレハロース、モノミリスチン酸ポリグリセリン、乳酸、フェノキシエタノール、グリセリン、トコフェノール、香料、およびカラメルを配合することにより調整した。
【0067】
〈第2剤の調製〉
水に下記表1に示す原料を配合することにより実施例1及び比較例1〜3の液状第2剤をそれぞれ調製した。なお、表1における各成分の数値の単位は質量%である。
【0068】
【表1】

【0069】
[特性の評価]
〈評価用毛束の作製〉
下記方法により評価用毛束を作製した。長さ約20cmのブラッシングなどの物理的処理で痛んだ直毛毛髪5gを纏めて1つの毛束とし、これを複数用意した。
【0070】
〈評価試験〉
上記第1剤1gをそれぞれの評価用毛束に塗布し、毛束全体に馴染ませた。次いで、実施例1及び比較例1〜3の第2剤1gを第1剤を馴染ませた各毛束に塗布し、毛束全体に馴染ませた後、水洗し温風乾燥させた。そして、第2剤の処理後における水洗時のきしみと、乾燥後のべたつき及び滑らかさとについて、下記の官能評価を行った。
【0071】
官能評価は、パネラー4名によって、第2剤による処理後の毛束における水洗時のきしみと、乾燥後のべたつき及び滑らかさとについて、下記基準に従って点数付けを行う方法で実施した。その評価結果を下記の表2に示す。
(1)水洗時のきしみの評価
−2点:きしみがひどい
−1点:きしみを感じる
0点:どちらとも言えない
1点:きしみを感じない
(2)乾燥後のべたつき及び滑らかさの評価
−2点:ひどくべたつく
−1点:べたつきを感じる
0点:どちらとも言えない
1点:べたつきがなく、滑らか
【0072】
【表2】

【0073】
表2から明らかなように、実施例1の第2剤にアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーの両者を含む多剤式毛髪処理剤は、処理後の毛髪において水洗時のきしみを低減すると共に、乾燥後のべたつきを抑制しつつ滑らかさを付与するものであることがわかる。これに対し、比較例1〜3の第2剤にアニオン界面活性剤又はカチオン性ポリマーの一方又は双方を含まない多剤式毛髪処理剤は、実施例1と比較して、処理後の毛髪において水洗時のきしみが大きく、また乾燥後のべたつきを抑制しつつ滑らかさを付与する作用も低いことがわかる。
【0074】
(実験2)
[実施例2〜6]
〈第1剤の調製〉
クリーム状第1剤を、水に、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体4質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン2質量%、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム0.7質量%、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム3質量%、セチルアルコール7質量%、ベヘニルアルコール1質量%、オクチルドデカノール3質量%、1,3−ブチレングリコール3質量%、ステアリン酸グリセリル1質量%、ポリオキシエチレンオレイルエーテル4質量%、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット2質量%、アミノ酸0.04質量%、トレハロース0.9質量%、ヒアルロン酸ナトリウム8質量%、フェノキシエタノール0.5質量%、乳酸2質量%、および香料0.2質量%を配合することにより調製した。
【0075】
〈第2剤の調製〉
水に下記表3に示す原料を配合することにより実施例2〜6の液状第2剤をそれぞれ調製した。なお、表3における各成分の数値の単位は質量%である。
【0076】
【表3】

【0077】
〈前処理剤の調製〉
前処理剤を、水に、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール0.5質量%、エタノール5質量%、およびジプロピレングリコール5質量%を配合することにより調製した。
【0078】
〈後処理剤の調製〉
後処理剤を、水に、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム4質量%、セタノール及びベヘニルアルコール9質量%、アミノ変性シリコーン0.3質量%、および高重合メチルポリシロキサン1質量%を配合することにより調製した。
【0079】
[特性の評価]
〈評価用毛束の作製〉
評価用毛束は、上記実験1で使用したものと同様のものを使用した。
【0080】
〈評価試験〉
上記前処理剤1gをそれぞれの評価用毛束に塗布し、毛束全体に馴染ませた。次いで、上記第1剤1gと、実施例2〜6の第2剤1gとをこの順に各々の評価用毛束に塗布し、毛束全体に馴染ませた後に水洗した。さらに、上記後処理剤1gを各々の評価用毛束に塗布し、毛束全体に後処理剤を馴染ませた後に水洗し、温風乾燥させた。そして、第2剤塗布と後処理剤塗布との間の水洗時(後処理剤塗布の前の水洗時)におけるきしみ、乾燥後のべたつきについて、下記の官能評価を行った。
【0081】
官能評価は、専門のパネラー4名によって、第2剤塗布と後処理剤塗布との間の水洗時におけるきしみと、乾燥後のべたつきについて、下記基準に従って点数付けを行う方法で実施した。その評価結果を以下の表4に示す。
(1)水洗時のきしみの評価
−2点:きしみがひどい
−1点:きしみを感じる
0点:どちらとも言えない
1点:きしみを感じない
(2)乾燥後のべたつきの評価
−2点:ひどくべたつく
−1点:べたつきを感じる
0点:どちらとも言えない
1点:べたつきがない
【0082】
【表4】

【0083】
表4から明らかなように、実施例2〜6の多剤式毛髪処理剤は、第2剤におけるアニオン界面活性剤に対するカチオン性ポリマーの配合比率を変化させた場合であっても、第2剤塗布と後処理剤塗布との間の水洗時におけるきしみを効果的に低減し、乾燥後のべたつきを抑制しつつ滑らかさを付与するものであることがわかる。なお、滑らかさは、実施例6が一番優れ、次いで、実施例5、4、3、2の順であった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上のように、本発明の多剤式毛髪処理剤及び毛髪処理方法は、業務用又は家庭用の毛髪処理に好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1剤及び第2剤の二剤を備え、この順に毛髪処理を行う多剤式毛髪処理剤であって、
第1剤がアミノ変性シリコーンを配合したものであり、
第2剤がアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーを配合したものであることを特徴とする多剤式毛髪処理剤。
【請求項2】
上記第1剤におけるアミノ変性シリコーンの配合量が、2質量%以上である請求項1に記載の多剤式毛髪処理剤。
【請求項3】
上記第2剤におけるカチオン性ポリマーの配合量が、0.1質量%以上3質量%以下である請求項1または請求項2に記載の多剤式毛髪処理剤。
【請求項4】
上記第2剤におけるアニオン界面活性剤のカチオン性ポリマーに対する配合質量比が、1以上30以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の多剤式毛髪処理剤。
【請求項5】
毛髪に対してアミノ変性シリコーンを配合した第1剤を塗布する工程と、
第1剤を塗布後の毛髪に対してアニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーを配合した第2剤を塗布する工程と、
毛髪に対して水洗処理を行う行程と
を含む毛髪処理方法。

【公開番号】特開2010−215541(P2010−215541A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61886(P2009−61886)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】