説明

多孔性小麦粉食品およびその製造方法

【課題】小麦粉食品の製造方法を容易にし、食材自身の旨みを引き出し、さらには揚げ物食品への油脂の含有量を低減させる製造方法を提供すること。
【解決手段】小麦粉食品を製造する際に、小麦粉等の主原料粉に添加する水にマイクロナノバブルを発生させた水を使用し、多孔性小麦粉食品を製造する。好ましいマイクロナノバブルの空隙率は水の全容積に対し、0.01〜2%であり、マイクロナノバブルを発生した水を小麦粉食品の製造時に添加することによって、生地の練り混ぜが容易となり、さらに澱粉等への浸透効果が向上する。また、揚げ物の衣では食材内部への油の浸透を防ぎ、揚げ物の油脂含有量を削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うどん、そば、ソーメン、ラーメンなど生麺及び乾麺、揚げ麺、または揚げ物の衣の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生麺、即席油揚げ麺類は、小麦粉を主成分に旨みを出すために、卵、水、塩を加えて、できるだけ加水量を減らし、よく練り混ぜて製造する。
【0003】
また、揚げ物の衣は、小麦粉と水が基本材料であり、この時、練り混ぜ水として使用されるのは井戸水、または水道水である。
【0004】
しかし、井戸水または水道水は、加水量が少ないために練り混ぜ作業に十分な時間と労力をさかないと生地の中に沁み込まないという欠点があり、加水量を増やせば、味と後工程への作業性を低下させ、機械練りでは練混ぜ機の羽に付着するという欠点がある。
【0005】
また、小麦粉、水、塩を基本材料とする揚げ物食品は、油が経時変化と伴に食材内部に浸透し、ベットリとした食感を与えることと油が劣化するため保存期間も短いと言う欠点がある。また、近年カラッと揚げるために発泡性の重曹やベーキングパウダーなどが使われ、健康志向の高まりから油脂の含有量の少ない揚げ物食品が要求されている。
【0006】
また、即席油揚げ麺類は、熱湯により数分間加熱調理するだけで簡単に喫食できる即席性、良好な保存性等から、消費者に幅広い支持を得てきた。しかし、通常即席油揚げ麺は油で揚げるために、製造された麺の中に油脂を含んでおり、油脂酸化が起こり、品質劣化、油臭を有するなどの問題を抱えている。したがって、これらの問題を解消すべく、油脂含有量の少なく、かつ食感が良い即席油揚げ麺類が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、うどん、そば、ソーメン、ラーメンなどの製麺方法を容易にし、食材自身の旨みを引出す製造方法の提供を目的とする。
【0008】
また、揚げ物食品、即席油揚げ麺類への油脂の含有量を低減させ、食材自身の旨みを生かす製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、一般的に使用される水に対し、事前にマイクロナノバブル発生装置に通しマイクロナノバブル発生させておき、製麺時の練混ぜ水に使用する。なお、この時のマイクロナノバブルの発生量は、水の全体積に対し0.01〜2%の体積率とする。
【0010】
このように水の全容積に対し0.01〜2%の空隙率の多孔を形成するマイクロナノバブルを含む水を別途水槽に作っておき、小麦粉、強力粉など原料の練混ぜ水として当該水を使えば、マイクロナノバブルが有するマイナス電荷の帯電効果で表面活性作用を起こさせ、少量の加水で練混ぜを容易にし、更に、練混ぜ機器への付着を減らし、その効果として澱粉への浸透を早め旨み成分を引き出させる。
【0011】
また、揚げ物の衣にあっては食材内部への油の浸透を減らすことによってカラッとした旨み感覚を引き出させる。
【0012】
本願発明者は、マイクロナノバブルが水中に長期間滞留することを検証しており、この特性を利用して、予め作った当該水を容器に貯留しておけば必要な時・場所に搬送するだけで使用できるようにしている。
【発明の効果】
【0013】
美味しい生麺を作るためには、小麦粉に水を多少多めに加えて十分練りまぜ、その後、長時間寝かせることが必要である。しかし、実用上は生産効率を上げるために、加水量を少なくして短時間寝かせるだけで製品化している。本発明は、マイクロナノバブルを含んだ水を使用することで、マイクロナノバブルが有するマイナス電荷の帯電効果で表面活性作用を起こさせ、少量の加水で練混ぜを容易にし、更に、練混ぜ機器への付着を減らし、また、生麺の中に含まれるマイクロナノバブルの収縮によって澱粉への浸透を早め旨み成分を引き出させる。
【0014】
また、揚げ物の衣に含まれるマイクロナノバブルは、食材表面に多孔を形成し、これら含んだ空気膜を作るために温度が上がれば、これらの多孔により、カラッとした食感を高め、油が食材の内部へ浸透するのを防ぎ、食材自身の旨みを引き出す効果を発揮する。また、二次的な効果として油の痛みが少なく油の使用量を減少させる経済性とダイエット効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、マイクロナノバブル水における微細気泡の粒度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
マイクロナノバブル発生装置としては、例えば、株式会社協和機設製の製品名「バヴィタス BUVITAS」が適している。
【0017】
マイクロナノバブル水としては、図1に示すように、平均粒径2μm以下、さらには10nm以上1μm以下の微細気泡を50万個/ミリリットル以上500万個/ミリリットル以下で含有するものを好ましく用いることができる。また、本発明で好ましく用いられるマイクロナノバブル水における微細気泡の粒度分布は、各粒径の微細気泡が微細気泡全部の総体積に占める割合(体積比率、特定の粒径の微細気泡の体積/微細気泡全部の体積)で、図1に示すように2μm以下の微細気泡の合計体積が気泡全部の総体積中80%以上であるのが好ましい。ここで、図1は、本発明において好ましく用いられるマイクロナノバブル水の粒度分布の測定グラフであり、粒度分布の測定は後述する粒度分布測定装置を用いて行なった。
【0018】
このようなマイクロナノバブル水が、本発明の所望の効果を得るうえで好ましく用いられる。
【0019】
ここでマイクロナノバブル水についてマイクロバブルと対比して説明すると、ナノバブルは、いわゆるマイクロバブルの1/1000程度の粒径を有し、マイナスの電荷を持っており、マイクロバブルに比較し強い界面活性を有する。また、マイクロバブルは水中に発生後数分で上昇し飛散するのに対して、ナノバブルはその多くが3ヶ月以上浮上しないことが確認されている。このため、マイクロナノバブル発生装置で作ったマイクロナノバブル水を、容器に入れ、ナノバブル水としての機能を維持しながら長期間貯留することができる。
【0020】
また、マイクロナノバブル水を製造する際のマイクロナノバブル製造装置の運転時間は、長いほど、発生する気泡の個数が増加するので、十分な時間、循環運転しナノバブルを多量の発生させることが本発明の所望の効果を得るうえで好ましく用いられる。
【実施例1】
【0021】
簡易試験として、手練りでうどんの練混ぜを行い、作業性を調べた。具体的には、水/小麦粉=0.3を条件として、水道水とマイクロナノバブルを含む水の2種類で練混ぜ実験を行った。その結果、水道水で混ぜた生地はダマが多くできて練混ぜ不良になるのに対して、マイクロナノバブルを含む水で混ぜた生地は、麺の伸びがよく均一性のある生地となった。
【0022】
ここで、マイクロナノバブル水は、水を、マイクロナノバブル発生装置(協和機設(株)製の製品名「バヴィタス(BUVITAS)」)を用いて処理して得られる、粒径2μm以下の微細気泡が50万個/ミリリットル以上の割合で含む水を用いた。
【0023】
マイクロナノバブル発生装置の仕様は、電源:三相200V、1.95Kw、流量:67L/min、揚程:60m、液温:5〜60℃とした。
【0024】
また、マイクロナノバブルの粒子径や粒子個数は、粒度分布測定装置(ベックマンコールター製、商品名「コールター Multisizer 3」、「LS 13 320」)を用いて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明の技術は、生麺の製造あるいは揚げ物の衣に使うだけではなく、小麦粉を材料に液体を結合材(剤)として作る餃子、シュウマイ、たこ焼き、菓子、パンなどの生地にも広く利用することが出来る。なお、液体には水、かん水、牛乳、などが適用可能である。また、マイクロナノバブルの中に入れる気体には、空気のほか酸素なども使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロナノバブルを発生させた水を使用することを特徴とする多孔性小麦粉食品の製造方法。
【請求項2】
前記小麦粉食品の小麦粉原料に添加する水にマイクロナノバブルを発生させた水を使用し、主原料粉体積量に対して0.01〜2%の多孔を含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔性小麦粉食品の製造方法。
【請求項3】
うどん、そば、ソーメン、ラーメンなどの製麺過程にあって、小麦粉、強力粉などを原料として生地の練混ぜに使う水(塩水)の中に、マイクロナノバブル発生させた水を使用して製造する生麺および生麺を揚げた油揚げ麺、または乾燥させて乾麺とすることを特徴とする多孔性小麦粉食品の製造方法。
【請求項4】
揚げ物の衣の中にマイクロナノバブル発生させた水を使用し、揚げ物にすることを特徴とする請求項1に記載の多孔性小麦粉食品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4いずれかに記載の方法で製造することを特徴とする多孔性小麦粉食品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−166874(P2010−166874A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13795(P2009−13795)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(506316889)株式会社大広エンジニアリング (5)
【Fターム(参考)】