説明

多孔性炭素及びその製造方法

【課題】多孔性炭素及びその製造方法を提供する。
【解決手段】配位高分子を熱処理して炭素−金属酸化物複合体を形成する工程と、炭素−金属酸化物複合体から金属酸化物を除去する工程と、により得られ、平均気孔サイズは10nmないし100nmであり、d002値は3.35ないし3.50の範囲を持つ多孔性炭素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性炭素及びその製造方法に係り、より具体的には、結晶度の高い多孔性炭素及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に炭素材は、非黒鉛質炭素で構成された物質であり、六方晶系の結晶構造を持っており、c軸方向にはファン・デル・ワールス結合、それに垂直した面上には共有結合していて、大きい異方性を表す性質を持っていると知られている。また高い比表面積とよく発達した気孔構造を持っていて多様な分野に広く使われている。
【0003】
例えば、前記多孔性炭素物質は、電池、例えば、リチウム二次電池のアノード活物質として適用可能である。リチウム二次電池のアノードで炭素材料は、リチウムイオンを保存する役割を行うが、多孔性炭素材料は、粒子内に気孔が発達してイオン伝達が容易であり、高容量の低伝導性アノード活物質のマトリックスとして活用ができる。
【0004】
また前記多孔性炭素物質は、表面に多量の電荷保存が可能であって、電気二重層キャパシタの電極物質または軟水器のイオン吸着電極材料として適用できる。
【0005】
このような多孔性炭素材を製造する方法としては、ゾルゲル法、テンプレート法などが多く利用されている。例えば、特許文献1には、レゾルシノールとホルムアルデヒドを臨界条件で架橋した後、高温で熱処理する多孔性炭素の製造方法が開示されている。一方、特許文献2には、規則性メゾポーラスシリカ粒子をテンプレートとして使用して多孔性炭素を製造している。
【特許文献1】米国特許第4,873,318号明細書
【特許文献2】米国特許第6,812,187号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、配位高分子を利用した多孔性炭素の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、前記方法により製造された多孔性炭素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を達成するために本発明は、配位高分子を熱処理して炭素−金属酸化物複合体を形成する工程と、前記炭素−金属酸化物複合体から金属酸化物を除去する工程と、を含む多孔性炭素の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の一具現例によれば、前記熱処理は、非活性雰囲気で熱処理して炭素−金属複合体を製造する第1熱処理工程と、酸素を含む雰囲気で熱処理して炭素−金属酸化物複合体を製造する第2熱処理工程と、を含んでなる。
【0010】
本発明の一具現例によれば、前記配位高分子は、下記化学式1の単位体構造を持つ化合物である。
【0011】
<化1>

【0012】
式中、Mは、遷移金属、13族、14族、15族、ランタン系金属及びアクチニド系金属からなる群から選択された一つ以上の金属を表し、Lは、2つ以上の金属(M)イオンと同時にイオン結合または共有結合を形成する多座リガンドを表し、Sは、一つの金属(M)イオンとイオン結合または共有結合を形成する単座リガンドを表し、前記Lに含まれた前記金属(M)イオンと結合可能な官能基の数をdとした時、前記x、y、及びzはyd+z≦6xの関係式を満足する整数を表す。
【0013】
前記他の技術的課題を達成するために本発明は、平均気孔サイズは10nmないし100nmであり、d002値は3.35ないし3.50であることを特徴とする多孔性炭素を提供する。
【0014】
本発明の一具現例によれば、前記多孔性炭素は、多面体形状を持つ。
【0015】
本発明の一具現例によれば、前記多孔性炭素は粒子状であり、針状または板状である。
【発明の効果】
【0016】
本発明による多孔性炭素は、配位高分子を熱処理して得られるものであり、気孔サイズを10nmまで、あるいはそれ以上に制御でき、1000℃以下の低温熱処理によっても結晶性に優れ、これにより伝導度が向上して二次電池の活物質、電気二重層キャパシタ、軟水器などの電極材料、燃料電池用触媒担体などに有効に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0018】
本発明による多孔性炭素は、配位高分子化合物を熱処理して炭素−金属酸化物複合体を製造した後、これより金属酸化物を除去する工程を経て得られる。
【0019】
本発明で使われる配位高分子は、複合体の合成において新たな概念の接近方法を提供している物質であり、一般的な形態を持つ下記化学式2の配位化合物と比較して1次元、2次元及び3次元形態の反復構造を持っている。
【0020】
【化1】

【0021】
2次元配位高分子の例を下記の化学式3に表す。
【0022】
【化2】

(式中、M、L及びSは、以下で定義されている)
【0023】
前記化学式3で表した2次元の配位高分子は、金属原子Mに隣接して4個の多座リガンドLと2個の単座リガンドSとが配位しており、このうち、多座リガンドはさらに隣接した金属原子に配位していることを表す。この場合、金属原子は、前記化学式2の一般的な配位化合物と同じ形態にリガンドに配位サイトを提供するが、これに配位するリガンドは、互いに異なる金属原子と多座で配位する。前記化学式3の配位高分子では、一つのリガンドが2個の金属に同時に配位結合する多座リガンドであって全体的に非常に規則的な格子構造の配位高分子を形成する。このような構造は3次元に拡張することもでき、平面形配位高分子とは異なって上下に位置する金属原子、あるいはリガンドとさらに結合して3次元構造の配位高分子を形成する。
【0024】
本発明で第1熱処理工程により炭素−金属複合体を形成するために使われる配位高分子は、下記の化学式1で表される化合物を使用できる。
【0025】
<化1>

【0026】
式中、Mは、遷移金属、13族、14族、15族、ランタン系金属及びアクチニド系金属からなる群から選択された一つ以上の金属を表し、Lは、2つ以上の金属(M)イオンと同時にイオン結合または共有結合を形成する多座リガンドを表し、Sは、一つの金属(M)イオンとイオン結合または共有結合を形成する単座リガンドを表し、前記Lに含まれた前記金属(M)イオンと結合可能な官能基の数をdとした時、前記x、y、zはyd+z≦6xの関係式を満たす整数を表す。
【0027】
前記化学式1の化合物は配位高分子であり、2つ以上の金属原子またはイオンに同時に結合できる複数の官能基を持つリガンドL(以下、多座リガンドと称する)が、金属原子またはイオンを連結してネットワークを形成することによって得られる物質であり、結晶であるために多面体形状をなしており、特に、単斜晶または三斜晶単位セル(monoclinic or triclinic unit cell)を持つ場合が多くて、主に針状または板状の結晶形態を持つようになるが、これに限定されるものではない。このような配位高分子は、多座リガンドとは別途に一つの金属原子またはイオンに結合可能な単座リガンドSを、任意にさらに含むことができる。
【0028】
本発明による配位高分子とは区別されねばならない構造を持つ物質として、キレート化合物を挙げることができる。キレート化合物は、多座リガンドが金属イオンに結合されている化合物を意味するが、この場合は、一般的な単一化合物を構成することに過ぎず、本発明の配位高分子とはその構造が異なる。すなわち、エチレンジアミンのような多座リガンドが金属イオンに配位結合する場合がこれに該当し、この場合は、本発明の配位高分子のようにネットワーク構造物ではなく、前記多座リガンドがキレート環を形成する一つの単一配位化合物に過ぎないために、本発明の配位高分子とは区別されねばならない。すなわち、本発明の配位高分子は必須的に隣接する金属間に多座リガンドを通じてネットワークを形成したことを意味するものであり、一つの金属イオンにのみ多座で配位して形成されるキレート錯体の場合には、ネットワークを形成できなくなるので本発明による配位高分子を形成できなくなる。
【0029】
前記多座リガンドLを通じてネットワークを形成する場合、中心金属イオンまたは原子は、これら多座リガンドとのみ配位結合を形成せねばならないものではなく、必要時に単座リガンドとも結合してもよい。すなわち、前述したような多座リガンドを含む状況で、必要時に単座リガンドSをさらに含む。このような単座リガンドSとしては、一般的な配位化合物で使われるあらゆるリガンドを何の制限なしに選択して使用でき、主に孤立電子対が存在する窒素、酸素、硫黄、リン、砒素などを含むリガンドを使用できる。例えば、HO、SCN、CN、Cl、Br、NHなどを使用できる。しかし、単座リガンドといって官能基が一つだけ存在するものではなく、前述したようなキレート環を形成する場合ならば、多座リガンドを使用することもできる。すなわち、2座、3座、4座などの多座リガンドといっても、金属原子またはイオンが他のリガンドを通じてネットワークの形成が可能な場合ならば、これらの使用が制限されるものではない。
【0030】
本発明の金属イオンまたは原子をネットワークに連結可能な多座リガンドとしては、前記中心金属と共有結合あるいはイオン結合を形成してネットワークを形成できる官能基を少なくとも2つ以上持つものならば、何の制限なしに使用できる。特に、このような多座リガンドは、前述したように一つの金属イオンにのみ配位結合して、キレート環を形成するキレートリガンドとしての多座リガンドとは区別されねばならないということは既述した通りである。これらは、配位ネットワーク高分子を形成し難いためである。
【0031】
このような本発明による配位高分子を形成する多座リガンドとして、具体的な例を挙げれば、下記化学式4のトリメシン酸塩系リガンド、化学式5のテレフタレート系リガンド、化学式6の4,4’−ビピリジン系リガンド、化学式7の2,6−ナフタレンジカルボキシレート系リガンド、及び化学式8のピラジン系リガンドを例とすることができるが、これに制限されるものではない。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
前記式中、RないしR25は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換または非置換の炭素数1ないし20のアルキル基、置換または非置換の炭素数1ないし20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数2ないし20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6ないし30のアリール基、置換または非置換の炭素数6ないし30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数2ないし30のヘテロアリール基、あるいは置換または非置換の炭素数2ないし30のヘテロアリールオキシ基を表す。
【0038】
このような多座リガンドのいろいろな例は、非特許文献(Christoph Janiak,Dalton Trans.,2003,p2781−2804;及びStuart L.James,Chem.Soc.Rev.,2003,32,276−288)にさらに具体的に記述されており、引用によって本明細書に統合されている。
【0039】
前記多座リガンドと結合して配位高分子を形成する金属としては、前記リガンドに配位サイトを提供できるものならば何の制限なしに使用でき、例えば、遷移金属、13族、14族、15族、ランタン系金属及びアクチニド系金属からなる群から選択された一つ以上の金属を使用できる。これらのうち、望ましくは、Fe、Pt、Co、Cd、Cu、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Ag、Pd、Ru、Mo、Zr、Nb、La、In、Sn、Pb、Biなどを使用できる。
【0040】
既述したように前記配位高分子はMの化学式を持ち、ここで配位数と関連して前記x、y及びzはyd+z≦6x(ここで、dは、多座リガンドLで金属と結合可能な官能基の数を表す)の関係式を満たす整数である。例えば、Lが4座のリガンドに該当し、単座リガンドSの2分子が金属と配位結合を形成する場合には、基本的な単位体の構造はMLSの基本構造を持つようになり、1(y)×4(d)+2(z)=6×1(x)の関係式を満たす。ここで多座リガンドLは、ネットワークを構成するための必須構成要素であるので、その値は1以上にならねばならず、単座リガンドのSは必要に応じて選択できる選択的な構成要素であるので、その値は0以上でなければならない。これらx、y及びzは、前記化合物が高分子であるという特性上、具体的な原子の数を表すものではなく、前記金属及びリガンドが存在する比率を意味すると解釈せねばならないことは、当業者には当然に理解される部分である。これらのうち、中心金属MがCdであり、多座リガンドLが4,4’−ビピリジンである場合の本発明による配位高分子の例は、下記の化学式9の通りである(ここで、xは1であり、y及びzは2の値を持つ)。
【0041】
【化8】

【0042】
前記化学式9の配位高分子は、中心金属のCdに4,4’−ビピリジンが配位結合した状態を表し、4,4’−ビピリジンに含まれている末端窒素原子が一つのCdイオンに結合した後、他の末端の窒素原子が他のCdイオンに結合する形態で反復して結合することによってネットワークの形成が可能になり、その結果、2次元形態の格子構造を持つ非常に規則的な形態の配位高分子が得られる。このような配位高分子の形態は、これを熱処理して得られる本発明による多孔性金属酸化物の最終的な形態、すなわち、粒子形態及び気孔分布などに影響を及ぼす。したがって、配位高分子の形成過程を適切に制御すれば、最終生成物の形態を制御することと同じ効果を得ることができる。配位高分子の結晶形態を制御する方法としては、金属前駆体とリガンドとを結合させる反応の反応温度、pH、及び反応時間と共に金属の種類、リガンドの種類及びこれらの濃度などを適切に変化させるか、これらを結晶状態で得るための乾燥温度及び時間などを適切に制御することによって可能になる。
【0043】
本発明による多孔性炭素は、配位高分子を熱処理して炭素−金属酸化物複合体を得た後、これから金属酸化物を除去する過程を経て製造される。
【0044】
この時、前記熱処理は望ましくは、非活性雰囲気で第1熱処理して炭素−金属複合体を製造する第1工程と、酸素を含む雰囲気で第2熱処理して炭素−金属酸化物複合体を製造する第2工程と、を含んでなりうる。これとは異なって、前記熱処理工程を1工程として非活性雰囲気、あるいは酸素雰囲気で進めて炭素−金属酸化物複合体を製造することもできる。
【0045】
前記非活性雰囲気での第1熱処理条件としては、700℃ないし該当金属の融点で約0.1ないし10時間熱処理することが望ましい。前記熱処理温度が700℃未満である場合には、炭素−金属複合体内に含まれた炭素成分の結晶化度を高め難くて、その後得られた多孔性炭素の結晶化度が低くなる問題点があり、該当金属の融点を超過する場合には、ナノ複合材料の構造自体が崩壊される恐れがあって望ましくない。前記熱処理時間が0.1時間未満である場合には十分な熱処理効果を得られず、10時間を超過する場合には、超過する時間ほどの増大する熱処理効果を得られないので非経済的であるという問題がある。
【0046】
前記配位高分子を前述したように第1熱処理する場合、揮発成分及び燃焼の可能な部分はいずれも蒸発して除去されるので、その形態は同一であるが、体積が減少した炭素−金属複合体を得ることができる。したがって、第1熱処理前後の形態の同一性を保持できて、最終目的物の粒子形態は配位高分子と同一に保持される。
【0047】
また生成された炭素−金属複合体は一定の周期性を表し、このような周期性は、前記配位高分子が1次元、2次元、及び3次元形態に反復構造を持つことに起因したものであり、配位高分子が持っている反復的な高規則性が熱処理後にも保持されることを意味する。このような周期性は、1次熱処理により得られる炭素−金属複合体をX線回折分析法を通じて測定でき、6nm以上のd−間隔で少なくとも一つのピークが存在する。このような周期性は、前記炭素−金属複合体から最終的に製造される多孔性炭素の物性にも影響を及ぼして、平均気孔サイズ10nmないし100nmの気孔が分布された多孔性炭素を提供できる。
【0048】
一方、酸素を含む雰囲気での第2熱処理条件は、200ないし600℃で0.1ないし24時間進める。前記第2熱処理温度が200℃未満である場合に金属の酸化が進まず、温度が600℃を超過する場合に炭素成分が除去されて金属酸化物のみ残留するために望ましくない。前記熱処理時間が0.1時間未満である場合には十分な熱処理効果を得られず、24時間を超過する場合には超過する時間ほどの増大する熱処理効果が得られないので、非経済的であるという問題がある。
【0049】
前記のように原料物質の配位高分子を熱処理して炭素−金属酸化物複合体を得た後、これから金属酸化物成分を除去する工程を経て最終的に多孔性炭素を得る。前記金属酸化物成分の除去は、塩基処理または酸処理を通じて行われる。例えば、前記配位高分子の中心金属が遷移金属類、ランタン系金属類、アクチニド系金属類などである場合、これから生成された炭素−金属酸化物では、酸処理を通じて前記金属酸化物を除去することが望ましい。この時、酸処理は、例えば塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸などの酸溶液に0.1ないし72時間浸漬させる工程を行う。
【0050】
一方、前記配位高分子の中心金属が、例えば、5族以下の遷移金属類、13族、14族、15族金属類などである場合、塩基処理を通じて金属酸化物を除去できる。このような塩基処理は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどの塩基溶液に1ないし72時間浸漬させる工程を意味する。
【0051】
前記本発明による多孔性炭素は、平均気孔サイズが10nmないし100nmであり、従来技術であるゾルゲル法またはテンプレート法により製造された多孔性炭素物質に比べて大きい範囲を表す。またd002値が3.35ないし3.50Å範囲を表して結晶性側面で優秀な特性を表すようになる。特に、熱処理温度が1000℃以下である場合にも約3.4Å程度の優秀な結晶性を表す多孔性炭素材料を得ることができる。
【0052】
本発明で得られた多孔性炭素は、配位高分子結晶と同じ形態を持つので多面体形状を表し、さらに具体的には粒子状であり、針状または板状形態を表す。
【0053】
本発明による多孔性炭素材料は、リチウム二次電池のアノード活物質、EDLC(Electrochemical Double Layer Capacitor)の電極、触媒担体、軟水器用電極材料などに適用可能である。
【0054】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
37.33gのニッケル(II)アセテート四水和物と19.96gのトリメシン酸とを100mlの蒸溜水に加えて55℃で2時間攪拌した。溶液中に生成された粉末をナイロンフィルタを利用して分離し、蒸溜水で数回洗浄した後、80℃のオーブンで12時間乾燥して配位高分子結晶を得た。図1は、このようにして得られた配位高分子結晶の走査電子顕微鏡写真を示す。
【0056】
前記で得られた配位高分子結晶をアルゴン雰囲気下に900℃で1時間第1熱処理して、炭素−ニッケル複合体を製造した。図2は、得られた炭素−ニッケル複合体の走査電子顕微鏡写真を示し、前記図1及び図2を通じて、前記炭素−ニッケル複合体が熱処理前配位高分子結晶とその形態は同一であり、体積は減少したことが分かる。
【0057】
次いで、前記炭素−ニッケル複合体を大気中で400℃で2時間第2熱処理して炭素−ニッケル酸化物複合体を製造した。得られた炭素−ニッケル酸化物複合体の走査電子顕微鏡写真を図3に示した。
【0058】
前記炭素−ニッケル酸化物複合体を37%塩酸水溶液で48時間浸漬させた後、ろ過乾燥させて前記炭素−ニッケル酸化物内に含まれたニッケル酸化物を除去することによって、目的とする多孔性炭素材料を製造した。得られた多孔性炭素の走査電子顕微鏡写真を図4A及び図4Bに示した。
【0059】
前記で得られた多孔性炭素材料のXRDグラフを測定して、これを図5に示した。図5に示したように、純粋な炭素のX線回折ピークのみ観察されてニッケル酸化物が完全に除去されたことが分かり、結晶面間の間隔であるd002値が3.41Åであり、結晶性が優秀であった。
【0060】
前記で得られた多孔性炭素材料の気孔サイズを窒素吸着法で分析した結果を、図6に示した。分析結果大部分の気孔が10nmまで、あるいはそれ以上の範囲に分布し、総気孔体積の4倍を表面積で割った値の平均気孔サイズは15.9nmであり、BET表面積が70.43m/gを表した。
【0061】
[実施例2]
前記実施例1で第2熱処理条件を300℃で5時間進めることを除いては、同一に実施して多孔性炭素物質を製造し、そのXRDグラフを測定して図7に示した。また図8には、得られた多孔性炭素材料の気孔サイズを窒素吸着法で分析した結果を示した。分析結果、結晶面間の間隔d002は、実施例1と類似した3.40Åであった。一方、平均気孔サイズは23.5nm、BET表面積は53m/gを表した。
【0062】
[実施例3]
前記実施例1で製造した多孔性炭素物質75重量%、人造黒鉛(SFG6、Timcal社製)15重量%、PVDF 10重量%をN−メチルピロリドンに分散してスラリーを製造し、これを銅ホイールに約30μm厚さに塗布した後、乾燥してアノード板を製造した。
【0063】
製造されたアノード板で直径14mmの円形に電極を切り取り、リチウム金属を対極として使用してCR2016規格のコインセルをそれぞれ製造した。この時、電解質としては、1.3Mリチウムヘキサフルオロホスフェートをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(体積比3:7)溶液に溶解させて使用した。
【0064】
[実施例4]
前記実施例1で得られた多孔性炭素物質をTin(II)2−エチルヘキサノエートと共にアルゴン雰囲気で400℃で30分間熱処理して、多孔性炭素−酸化スズ複合材料をアノード活物質として使用することを除いては、前記実施例3と同一に実施した。
【0065】
[実験例]
前記実施例3及び4で製造されたセルを50mA/の電流で0.001ないし1.5V区間で充電及び放電を50回反復しつつ容量を測定して、これを図9に示した。図9に図示した結果から、前記実施例3及び実施例4で得られたセルがいずれも優秀な寿命特性を表すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明による多孔性炭素材料は、リチウム二次電池のアノード活物質、EDLCの電極、触媒担体、軟水器用電極材料などに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例1で製造した配位高分子結晶の走査電子顕微鏡写真を示す図面である。
【図2】本発明の実施例1で製造した炭素−ニッケル複合体の走査電子顕微鏡写真を示す図面である。
【図3】本発明の実施例1で製造した炭素−ニッケル酸化物複合体の走査電子顕微鏡写真を示す図面である。
【図4A】本発明の実施例1で製造した多孔性炭素の走査電子顕微鏡写真を示す図面である。
【図4B】本発明の実施例1で製造した多孔性炭素の走査電子顕微鏡写真を示す図面である。
【図5】本発明の実施例1で製造した多孔性炭素のXRDグラフである。
【図6】本発明の実施例1で製造した多孔性炭素の窒素吸着分析結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2で製造した多孔性炭素のXRDグラフである。
【図8】本発明の実施例2で製造した多孔性炭素の窒素吸着分析結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例3及び実施例4で得られたセルの容量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配位高分子を熱処理して炭素−金属酸化物複合体を形成する工程と、
前記炭素−金属酸化物複合体から金属酸化物を除去する工程と、を含む多孔性炭素の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理は、非活性雰囲気で熱処理して炭素−金属複合体を製造する第1熱処理工程と、
酸素を含む雰囲気で熱処理して炭素−金属酸化物複合体を製造する第2熱処理工程と、を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の多孔性炭素の製造方法。
【請求項3】
前記第1熱処理工程の熱処理温度は、700℃ないし前記配位高分子に含まれた中心金属の融点であることを特徴とする請求項1に記載の多孔性炭素の製造方法。
【請求項4】
前記第2熱処理工程の熱処理温度は、200ないし600℃であることを特徴とする請求項1に記載の多孔性炭素の製造方法。
【請求項5】
前記配位高分子は、下記化学式1の単位体構造を持つ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の多孔性炭素の製造方法:
<化1>

式中、Mは、遷移金属、13族、14族、15族、ランタン系金属及びアクチニド系金属からなる群から選択された一つ以上の金属を表し、
Lは、2つ以上の金属(M)イオンと同時にイオン結合または共有結合を形成する多座リガンドを表し、
Sは、一つの金属(M)イオンとイオン結合または共有結合を形成する単座リガンドを表し、
前記Lに含まれた前記金属(M)イオンと結合可能な官能基の数をdとした時、前記x、y、及びzはyd+z≦6xの関係式を満足する整数を表す。
【請求項6】
前記配位高分子が前記多座リガンドを媒介として金属を相互連結して得られるネットワーク構造を形成することを特徴とする請求項5に記載の多孔性炭素の製造方法。
【請求項7】
前記多座リガンドが下記化学式4のトリメシン酸塩系リガンド、化学式5のテレフタレート系リガンド、化学式6の4,4’−ビピリジン系リガンド、化学式7の2,6−ナフタレンジカルボキシレート系リガンド、及び化学式8のピラジン系リガンドからなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項5に記載の多孔性炭素の製造方法:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

前記式中、RないしR25は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換または非置換の炭素数1ないし20のアルキル基、置換または非置換の炭素数1ないし20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素数2ないし20のアルケニル基、置換または非置換の炭素数6ないし30のアリール基、置換または非置換の炭素数6ないし30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素数2ないし30のヘテロアリール基、あるいは置換または非置換の炭素数2ないし30のヘテロアリールオキシ基を表す。
【請求項8】
前記金属Mは、Fe、Pt、Co、Cd、Cu、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Ag、Pd、Ru、Mo、Zr、Nb、La、In、Sn、Pb、Biからなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする請求項5に記載の多孔性炭素の製造方法。
【請求項9】
前記金属酸化物の除去工程は、硝酸、塩酸、フッ酸及び硫酸からなる群から選択された1種以上の酸溶液により処理することであることを特徴とする請求項1に記載の多孔性炭素の製造方法。
【請求項10】
前記金属酸化物の除去工程は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムからなる群から選択された1種以上の塩基溶液により処理することであることを特徴とする請求項1に記載の多孔性炭素の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のうちいずれか1項に記載の方法により製造された多孔性炭素。
【請求項12】
平均気孔サイズは10nmないし100nmであり、d002値は3.35ないし3.50であることを特徴とする多孔性炭素。
【請求項13】
前記多孔性炭素は、多面体形状を持つことを特徴とする請求項12に記載の多孔性炭素。
【請求項14】
前記多孔性炭素は粒子状であり、針状または板状であることを特徴とする請求項13に記載の多孔性炭素。
【請求項15】
請求項12ないし14のうちいずれか1項に記載の多孔性炭素を含むことを特徴とするアノード活物質。
【請求項16】
請求項12ないし14のうちいずれか1項に記載の多孔性炭素を含むことを特徴とする触媒担体。
【請求項17】
請求項12ないし14のうちいずれか1項に記載の多孔性炭素を含むことを特徴とする電極。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2008−63219(P2008−63219A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229268(P2007−229268)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】