説明

多孔性金属発泡体

【解決手段】溶融金属の1以上の層を孔の開いた非金属基板に適用し、溶融金属を該非金属基板の開いた孔内に浸透させて金属発泡体を形成することによって得られる、多孔性金属発泡体であって、その金属成分は、該孔の開いた非金属基板中に少なくとも部分的には浸透している、多孔性金属発泡体。該孔の開いた金属発泡体は、孔の開いた非金属基板を用意して溶融金属で被覆し、溶融金属が孔の開いた非金属基板の開いた孔内に浸透する方法で製造される。
金属発泡体は、多くの技術分野で使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性金属発泡体、該金属発泡体の製造方法、およびそれらの使用に関する。
【従来技術】
【0002】
金属発泡体およびそれらの製造方法は知られている。従って、金属発泡体は、粉末から、または核形成剤およびガス中で攪拌することによる融解冶金法によって製造される。
【0003】
独国特許DE10238284 A1号には多段階法が記載されており、その方法では、伝導性粒子が、その後の電着による被覆のベースである泡構造を有する非伝導性物質(例えば、PU発泡体)上に被覆され、続いて電着が実施される。孔の開いた泡構造を有するあらゆる材料が基板として使用され得る。基板は骨格となる。
【0004】
独国特許DE-A-10013378号には、金属を充填した多孔性セラミックスが記載されている。そこでは、孔の表面に金属層を備えるだけではなく、孔の窩洞全体が金属で充填される。
【0005】
独国特許DE-A-3522287号には、気体または液体の濾過および/または触媒処理のための開孔体およびその製造方法が開示されているが、独国特許DE 10238284号のように、非金属性基板の孔は、表面を金属化する前に、電気導電性層による電着のため調製しなければならず、上述の印刷物によれば金属層は電着によって適用されることが指摘されている。
【0006】
仏国特許FR-A-2679925号にも、多孔性有機基板の表面の3段階の金属化による多孔性金属構造の製造が開示されている。
【0007】
先行技術によって知られる金属発泡体は、閉じた孔を有して、金属発泡体の表面部分の全てには接近できないか、または、孔の開いた金属発泡体の場合は、高額の費用でのみ製造することができ、少なくとも2つの金属層を有する。
【0008】
本発明の目的は、金属発泡体、特に、広範な適用分野で使用することができる、孔の開いた金属発泡体を提供することであり、簡単で安価なそれらの製造方法を提供することである。
【0009】
この目的は、溶融金属を孔の開いた非金属基板に適用し、溶融金属を該非金属基板の開いた孔内に浸透させて金属発泡体を形成することによって得られる多孔性金属発泡体であって、該溶融金属を少なくとも孔の部分的集団の表面上に堆積させて孔の金属化表面を得る、多孔性金属発泡体によって達成される。特に、金属成分は、少なくとも部分的に、該孔の開いた非金属基板に浸透している。
【0010】
本発明の多孔性金属発泡体は、少なくとも部分的に金属表面を備えたその管腔内に孔の集団を有する。集団は、部分的にのみ、表面に金属を有する孔、特に該非金属基板の外部領域に位置する孔の、部分的集団の形態で構築されてもよい。従って、このような多孔性金属発泡体は、外部領域に金属化表面を有する孔を有し、一方、内部領域には金属化された孔はない。製造方法によって、金属化された孔表面から非金属化孔表面への突然の転換はないが、金属化表面を完全に備えた孔の存在量は、該多孔性金属発泡体の容積の内部に向かって徐々に減少する。該多孔性金属発泡体および適合した厚さを製造する好適な方法制御を使用する場合、溶融金属に到達可能なほぼ全ての孔は、首尾よく金属化表面を備え得る。
【0011】
溶融金属の該適用は、例えば、溶射(thermal spraying)、溶融金属の噴霧、例えば溶融金属の回転噴霧によって、溶融金属の溶滴を適用することによって実施され得るが、また、基板を好適な溶融金属中に浸すことによっても実施され得る。本発明によれば、素地金属として、鉄、亜鉛、アルミニウム、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、スズまたはそれらの合金を使用し得る。
【0012】
また、同一または異なる金属の幾つかの層を適用して、本発明の金属発泡体における金属層の多層構造を得てもよい。特に、亜鉛素地材は、基板および重層する金属層の双方への良好な接着を確実にすることから、該非金属基板上の第一層として好適である。
【0013】
例えば、本発明の金属発泡体は、孔隙率が5ppi〜150ppi(1インチあたりの孔)であるが、他の範囲を選択してもよい。
【0014】
孔の開いた非金属基板の孔が形成され、「網(web)」によって囲まれる。基板の表面または網は、例えば、溶射または噴霧、例えば空気噴霧によって、層で覆われる。層の厚さは、金属溶滴の適用法のパラメータによって調節し得る。その結果、噴霧材料より成る発泡体となる。孔の開いた発泡体および閉じた被覆層を有する孔の開いた発泡体の双方を製造し得る。発泡体は、例えば、溶射(鉄、亜鉛、アルミニウム、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、スズまたはそれらの合金)によって加工し得るあらゆる材料より構成されてもよい。しかし、例えば、セラミック粒子(タングステンカーバイド、酸化アルミニウム、炭化ケイ素)を、特に溶射によって適用することも可能である。
【0015】
基板は、材料を完全に備え得るが、部分領域のみ備えることも可能である。
【0016】
金属発泡体製造のための本発明の方法は、孔の開いた非金属基板より開始し、この基板は次に溶融金属の溶滴で被覆されるが、ここで溶融金属の溶滴は、少なくとも部分的に、非金属基板の開いた孔内に浸透する。
【0017】
本発明によれば、溶融金属の適用は、溶射によって、溶融金属の噴霧によって、または溶融金属の回転噴霧によって実施され得る。溶融金属の浸透は、当業者に知られた方策によって促進され得る。これらの方策としては、特に、基板中の孔の大きさ、形状および構造の変化、溶滴の大きさ、速度および温度の変化、噴霧距離、噴霧時間、基板と被覆単位との間の作業角度、多層噴霧、基板背面上の陰圧の生成、またはこのような方策の組み合わせが挙げられる。
【0018】
本発明の方法において用い得る、孔の開いた非金属基板は、多孔性無機または有機材料から選択してもよい。
【0019】
使用し得る無機材料は、特に、ゼオライト、シリカゲル、フリット、セラミック材
料、鉱物繊維ウールまたはそれらの組み合わせより成る群から選択されるものである

【0020】
有機材料は、特に、発泡ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、発泡ポリスチレン等のプラスチックより成る孔の開いた発泡材料、孔の開いた天然または合成スポンジ、木毛またはそれらの組み合わせより成る群から選択される。
【0021】
溶滴は、例えば、溶融した鉄、亜鉛、アルミニウム、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、スズまたはそれらの合金より構成されてもよい。
【0022】
本発明の方法の一つの具体例では、基板は、熱的または化学的に除去することができ、例えば、有機基板の場合、溶融金属の溶滴を供給した後、焼き尽くすことによって除去することができる。本発明の金属発泡体は、2つの主要な表面を備えてもよく、主要な表面の一方または双方は、材料の、孔の閉じた層または孔の閉じていない層を有する。
【0023】
後者の場合は、サンドイッチ構造である。例えば、基板となるポリウレタン発泡体は、その片側に亜鉛合金の孔の開いた層を備えることが可能であり、ここで亜鉛合金は、基板に完全には浸透しない。他の側は、やはり基板中に完全には広がらない浸透の深さの、亜鉛の層および被覆する銅の層より成る多層構造を備える。ポリウレタン発泡体中の中間領域が未処理のままである場合、亜鉛合金金属発泡体、基板ポリウレタンおよび亜鉛/銅金属発泡体より成る、3成分複合材が得られる。構造により、個々の成分(例えば、基板/亜鉛層/銅層)の、完成したサンドイッチにおける特性を調節し得る。例えば、金属の堅い「殻(シェル)」を有する軟らかいPU発泡体を製造してもよい。従って、例えば、表面に光学設計を同時に施しながら、特定の減衰特性または曲げ強度を調節することが可能になる。
【0024】
例えば、本発明の金属発泡体は、構造中、特に軽量構造、エンジン構造、自動車工学、化学工業、医用工学、電気工学のための構造中に使用され得、即ち、基本的には、省重量であるが、なお固形であるか補強された材料が重要である、あらゆる分野において使用され得る。従って、本発明の金属発泡体は、例えば、絶縁板、被覆、防音、電磁遮へい用建築成分、振動減衰、崩壊吸収材、フィルター、触媒、電池素子、半導体に、使用してもよい。
【0025】
また、異なる材料を噴霧することによって多層構造を達成することも可能である。異なる材料を並置した適用も可能である。
【0026】
発泡体の形状は、代表的には、基板によって定められ、従って、噴霧の前に容易かつ形状に忠実に調製し得る(例えば、板、球、棒、基板材料の立体的に複雑な構造;基板は、コーティングの前に予め成形し、コーティング工程中、この状態を維持してもよい)。
【0027】
発泡体は、複合材料のコアとして使用してもよく、例えば、金属発泡体は、はんだ物質をはんだ付け温度に過熱し、任意に補強用肋材に挿入することによってはんだ物質に結合した軽量金属のカバープレートより、複合材料として設計され得る。
【0028】
また本発明は、電着法、気相または液相からの沈着、または粉末塗装による金属材料でのさらなる被覆のための予備材料としての、本発明の金属発泡体の使用に関する。好ましい具体例において、本発明の金属発泡体は、高分子または金属鋳造を用いた充填物のためのマトリクスとして使用される。
【実施例】
【0029】
実施例1
厚さ20mmおよびインチ当りの孔10ppiのポリウレタン発泡体の形状の基板を、ワイヤーアーク溶射によって亜鉛の層で被覆する。密度0.06〜0.45g/cm3および破砕強度16〜220kPaの孔の開いた金属発泡体を得る。
【0030】
実施例2
実施例1で製造した金属発泡体は、高分子または金属構造においてマトリックスとして組み込むことができる。
孔の開いた金属発泡体は、液体高分子で充填し、材料と組み合わせて金属/高分子複合材料を得ることができる。これは、例えば、崩壊吸収材として使用し得る。
【0031】
実施例3
厚さ20mmおよびインチ当りの孔10ppiのポリウレタン発泡体のプレート形状の基板を、ワイヤーアーク溶射によって亜鉛の層で被覆する。密度0.06〜0.45g/cm3および破砕強度16〜220kPaの孔の開いた金属発泡体を得る。真ちゅうまたは銅の第二層を、ワイヤーアーク溶射によって適用し、曲げ強度が高く、良好な吸音特性を有し、真ちゅうまたは銅の構造において、審美的外観を有するプレートを形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を孔の開いた非金属基板に適用し、溶融金属を該非金属基板の開いた孔内に浸透させて金属発泡体を形成することによって得られる多孔性金属発泡体であって、該溶融金属を少なくとも孔の部分的集団の表面上に堆積させて孔の金属化表面を得る、多孔性金属発泡体。
【請求項2】
請求項1に記載の金属発泡体であって、表面上に金属を有する該孔の部分的集団が該非金属基板の内部領域よりも外部領域に位置する、金属発泡体。
【請求項3】
前項のいずれかに記載の金属発泡体であって、該非金属基板の実質的に全ての孔が表面が金属化された孔である、金属発泡体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の金属発泡体であって、溶融金属の該適用が、溶射、溶融金属の噴霧、溶融金属の回転噴霧によって溶融金属の溶滴を適用することによって、または、孔の開いた非金属基板を溶融金属中に浸すことによって、1以上の層に実施されていることを特徴とする、金属発泡体。
【請求項5】
前項のいずれかに記載の金属発泡体であって、該金属部分が、鉄、亜鉛、アルミニウム、銅、ニッケル、スズ、金、銀、プラチナまたはそれらの合金より成ることを特徴とする、金属発泡体。
【請求項6】
前項のいずれかに記載の金属発泡体であって、孔隙率が5ppi〜150ppiである、金属発泡体。
【請求項7】
前項の少なくとも1項に記載の金属発泡体の製造方法であって、孔の開いた非金属基板を用意し、それを溶融金属の1以上の層で被覆し、溶融金属が孔の開いた非金属基板の開いた孔内に浸透する、方法。
【請求項8】
前項に記載の方法であって、溶融金属での該被覆が、溶射、溶融金属の噴霧、溶融金属の回転噴霧によって溶融金属の溶滴を適用することによって、または、基板を溶融金属中に浸すことによって、実施される、方法。
【請求項9】
前項に記載の方法であって、溶融金属の溶滴による該浸透が、基板の孔
の大きさ、形状および構造を変えること、溶滴の大きさ、速度および温度を変えるこ
と、噴霧距離、噴霧時間、基板と被覆単位との間の作動角度、多層噴霧および/また
は基板の背面上の陰圧の生成によって促進される、方法。
【請求項10】
請求項7〜10のいずれかに記載の方法であって、該孔の開いた非金属基板が、多孔性無機または有機材料から選択される、方法。
【請求項11】
前記の請求項7〜10のいずれかに記載の方法であって、該無機材料
が、ゼオライト、シリカゲル、フリット、セラミック材料、鉱物繊維ウールまたはそ
れらの組み合わせより成る群から選択される、方法。
【請求項12】
前記の請求項7〜11のいずれかに記載の方法であって、該有機材料が、発泡ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、発泡ポリスチレン等のプラスチックより成る孔の開いた発泡材料、孔の開いた天然または合成スポンジ、木毛、織物、繊維製品およびそれらの組み合わせより成る群から選択される、方法。
【請求項13】
前記の請求項7〜12のいずれかに記載の方法であって、該溶融金属が、溶融した鉄、亜鉛、アルミニウム、銅、スズ、ニッケル、金、銀、プラチナまたはそれらの合金、およびセラミック粒子(タングステンカーバイド、酸化アルミニウム、炭化ケイ素)の添加材より成る、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、該有機基板が溶融金属で被覆された後に除去される、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法によって得られる金属発泡体。
【請求項16】
2つの主要な表面を有する請求項1〜6および/または15に記載の金属発泡体であって、主要な表面の一方または両方が、材料の孔の閉じた層で形成される、金属発泡体。
【請求項17】
サンドイッチ構造としての、請求項16の金属発泡体。
【請求項18】
請求項1〜6および/または請求項15の少なくとも1項に記載の金属発泡体の使用であって、構造、特に軽量構造、エンジン構造、自動車工学、化学工業、医用工学、電気工学のための構造における使用。
【請求項19】
請求項18に記載の使用であって、絶縁板、被覆、防音、電磁遮へい、振動減衰、崩壊吸収材、フィルター、触媒、電池素子および/または半導体用の成分のための使用。
【請求項20】
請求項1〜6および/または15に記載の金属発泡体の使用であって、電着法、気相または液相からの沈着、または粉末塗装による、金属材料でのさらなる被覆のための基板材料としての使用。
【請求項21】
請求項1〜6および/または15に記載の金属発泡体の使用であって、高分子または金属鋳造を用いた充填物のためのマトリクスとしての使用。

【公表番号】特表2008−542540(P2008−542540A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514086(P2008−514086)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062705
【国際公開番号】WO2006/128858
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(501459619)グリーロ ヴェルケ アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】