説明

多孔管路用自在曲がり継手

【課題】浅く埋設しても、つるはし等の衝撃力を受けて破損する可能性が皆無に等しく、三次元のどの方向にも自在に曲げることができる、施工性に優れた多孔管路用自在曲がり継手を提供する。
【解決手段】一対の継手部材2,2を外枠1両端の開口1d,1dから遊挿して先端の係合用フランジ部2a,2aを外枠1内面の一対の被係合溝1e,1eに抜出し不能に遊嵌すると共に、継手部材2,2の先端間に配置した各短管3の両端を継手部材2,2の各貫通孔2b,2b(先端の受口2d,2d)に遊挿した構成の多孔管路用自在曲がり継手とする。開口1dと継手部材2との遊び、被係合溝1eと係合用フランジ部2aとの遊び、貫通孔2b(受口2d)と短管3の両端との遊びの範囲内で双方の継手部材2,2が三次元のどの方向にも曲がる。短管3は外枠1で保護され、つるはし等で破損する可能性が皆無に等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線や光ファイバーなどのケーブルを地中に埋設する多孔管路の曲がり部分に設置されて多孔管の接続を行う多孔管路用自在曲がり継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の多孔管路材として、ケーブル挿通用の複数の貫通孔を平行に形成した直方体形状のコンクリート製又は陶製の多孔管や、合成樹脂製の複数のコルゲート管を結束した多条管などが使用されている。
【0003】
後者の多条管は、曲がりやすくて施工がしやすいという利点を有する反面、歩道等の表面近くに浅く埋設すると、つるはし試験に対する強度に不安があり、しかも、埋設施工の際の転圧時に砂がコルゲート管相互の隙間に入り込みにくいため、舗装後に砂が該隙間に入り込んで舗装面に凹凸が生じやすいという欠点があった。
【0004】
これに対し、前者の多孔管は、つるはし試験に対する強度があり、舗装面に凹凸が生じる心配もないといった利点を有するが、その反面、重量が大きいため取扱いが容易でなく、しかも、多孔管路の曲がり部分では、一定の曲がり角度を有する台形状の曲がり多孔管を幾つか接続する必要があるため、施工が面倒で、曲率半径を小さくすることが難しく、曲がり角度の調整もし辛いといった欠点があり、曲がり部分の多い施工現場には不向きであった。
【0005】
このような多孔管路の曲がり部分の欠点に対処するため、複数の孔を形成した接続ブロックの該孔に波付き管の一端の直管部を挿入し、この直管部の鍔状ストッパーを該孔の凹溝に嵌め込んで取付けた多孔管路用接続ユニットが提案されている(特許文献1参照)。この多孔管路用接続ユニットは、多孔管路の曲がり部分おいて一組使用され、双方のユニットの接続ブロックが曲がり部分の双方の多孔管にそれぞれ突合わせ接続されると共に、双方のユニットの波付き管同士が曲がり部分の曲率半径に応じた円弧長調整用の波付き管を介して管継手により接続されるものである。
【0006】
しかしながら、上記の接続ユニットを用いると、多孔管路の曲がり部分の大部分が、該ユニットの接続ブロックに取付けられた波付き管と円弧長調整用の波付き管で占められ、これらの波付き管がむき出しのまま無防備に埋設されることになるため、浅く埋設した場合には、つるはしやその他の衝撃力を受けて破損する可能性が高いという問題があった。また、接続ブロックに取付けられる波付き管の本数が多くなると、円弧長調整用の波付き管を介して管継手により接続する作業が大変になり、施工性が低下するという問題もあった。
【特許文献1】特開平9−284963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、浅く埋設しても、つるはしやその他の衝撃力を受けて破損する可能性が皆無に等しく、しかも、三次元のどの方向にも自在に曲げることができる、施工性に優れた多孔管路用自在曲がり継手を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の多孔管路用自在曲がり継手は、両端が開口し内面に一対の被係合溝が周設された外枠と、多孔管路の孔数と同数の平行な貫通孔を有し先端に係合用フランジ部が形成された一対の継手部材と、継手部材の貫通孔と同数の短管とからなる自在曲がり継手であって、一対の継手部材が外枠両端の開口からそれぞれ遊挿されて先端の係合用フランジ部が外枠内面の一対の被係合溝にそれぞれ抜出し不能に遊嵌されると共に、双方の継手部材の先端間に短管が配置されて各短管の両端が双方の継手部材の各貫通孔に遊挿されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の多孔管路用自在曲がり継手においては、外枠が上枠部と下枠部からなる二分割タイプのものであることが望ましく、また、外枠両端の開口の内面が内側から外側に向かって拡がるテーパー面とされていることが望ましい。そして、継手部材の後端に接続用フランジ部が形成されていることも望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多孔管路用自在曲がり継手のように、一対の継手部材が外枠両端の開口からそれぞれ遊挿されて先端の係合用フランジ部が外枠内面の一対の被係合溝にそれぞれ抜出し不能に遊嵌され、各短管の両端が双方の継手部材の各貫通孔に遊挿されていると、外枠の開口とこれに遊挿された継手部材との遊び、被係合溝とこれに遊嵌された継手部材先端の係合用フランジ部との遊び、双方の継手部材の貫通孔とこれに遊挿された短管の両端との遊びの範囲内において、双方の継手部材が上下、左右、斜めのどの方向にも傾斜して三次元曲がりが自在となり、曲がり角度も簡単に調節することができる。従って、多孔管路の曲がり部分において、本発明の自在曲がり継手の一方の継手部材を一方の多孔管に連結し、他方の継手部材を他方の多孔管に連結するだけで、三次元のどの方向の曲がり部分であっても、所望の曲がり角度で簡単に双方の多孔管を接続できるので、施工性が極めて良好である。しかも、本発明の多孔管路用自在曲がり継手は、双方の継手部材の先端間に配置された短管が外枠に囲まれて保護されるため、つるはしやその他の衝撃力を受けて短管が破損する心配は皆無に等しい。
【0011】
そして、外枠が上枠部と下枠部からなる二分割タイプのものであると、自在曲がり継手の組立作業を簡単に行うことが可能となり、また、外枠両端の開口の内面が内側から外側に向かって拡がるテーパー面とされていると、継手部材の外枠に対する傾きが大きくなるので、自在曲がり継手の曲がり角度が一層大きくなり、曲率半径を減少させることができる。更に、継手部材の後端に接続用フランジ部が形成されていると、この接続用フランジを利用して多孔管との連結を簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る多孔管路用自在曲がり継手を、その外枠の上枠部を分解して示す斜視図、図2は同自在曲がり継手の分解斜視図、図3は同自在曲がり継手の縦断面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は同自在曲がり継手の分解断面図、図6は多孔管を接続した同自在曲がり継手が下方に曲がった状態を示す縦断面図、図7は多孔管を接続した同自在曲がり継手が右方に曲がった状態を示す水平断面図である。
【0014】
この多孔管路用自在曲がり継手は、図1〜図5に示すように、上下二分割タイプの外枠1と、一対の継手部材2,2と、継手部材の貫通孔2aと同数(この実施態様では3本)の短管3とで構成されている。
【0015】
外枠1は、偏平な逆U字形の断面形状を有する上枠部1aと、偏平なU字形の断面形状を有する下枠部1bからなる二分割タイプの偏平な角筒状の外枠であって、これらの上枠部1a及び下枠部1bは、その両側壁から一対ずつ突き出した水平突片1c,1c同士をボルト・ナット(不図示)で締付けることにより一体化されている。
【0016】
この外枠1の両端の開口1d,1dは継手部材2,2を遊挿できる大きい開口とされ、その内周面は内側から外側に向かって拡がるテーパー面とされている。そして、この外枠1の内面には、継手部材2,2の先端の係合用フランジ部2a,2aを抜出し不能に遊嵌させるための一対の被係合溝1e,1eが周設されている。
【0017】
継手部材2は偏平な直方体ブロックからなるもので、多孔管路を構成する多孔管の孔数と同数(この実施形態では3つ)の貫通孔2bが間隔をあけて平行に形成されており、先端には係合用フランジ部2aが、また、後端には接続用フランジ部2cがそれぞれ形成されている。先端の係合用フランジ部2aは、外枠1の開口1dから抜け出さない大きさとされ、その厚みは外枠1の被係合溝1eの溝幅の略1/2以下とされている。そして、係合用フランジ部2aのエッジやコーナーにはアールが形成されている。また、各貫通孔2bの先端には、貫通孔2bより径の大きい受口2dが形成されており、この受口2dに短管3の端部が遊挿されるようになっている。
【0018】
上記の外枠1及び継手部材2は、軽量で成形性に優れたBMC、SMC、ポリプロピレンなどの樹脂材料を用いて作製することが好ましく、特に、再生樹脂材料を用いて作製すると、経済的にも有利である。
【0019】
図3、図4に示すように、双方の継手部材2,2は外枠1両端の開口1d,1dから遊挿され、先端の係合用フランジ部2a,2aが外枠1内面の被係合溝1e,1eにそれぞれ抜出し不能に遊嵌されている。そして、双方の継手部材2,2の先端間に貫通孔2bと同数(この実施形態では3本)の短管3が配置され、各短管3の両端が双方の継手部材2,2の各貫通孔先端の受口2d,2dに遊挿されて、自在曲がり継手が組立られている。
【0020】
この短管3は、貫通孔2bより径が大きく受口2dより径が小さいポリ塩化ビニルなどの合成樹脂製の丸パイプであって、図6、図7に示すように自在曲がり継手が曲がった状態のときでも、短管端部が受口2dから抜けたり受口2dの奥端を押したりすることのない長さを有するものが使用される。
【0021】
以上のような構成の多孔管路用自在曲がり継手は、継手部材2,2が外枠1両端の開口1d,1dに遊挿され、その先端の係合用フランジ部2a,2aが外枠1内面の被係合溝1e,1eに抜出し不能に遊嵌され、各短管3の両端が継手部材2,2の各貫通孔先端の受口2d,2dに遊挿されているため、外枠1の開口1d,1dとこれに遊挿された継手部材2,2との遊び、被係合溝1e,1eとこれに遊嵌された係合用フランジ部2a,2aとの遊び、受口2d,2dとこれに遊挿された短管3の両端との遊びの範囲内において、双方の継手部材2,2が上下、左右、斜めのどの方向にも傾斜して三次元曲がりが自在となり、曲がり角度も簡単に調節することができる。特に、係合用フランジ部2a,2aの厚みが被係合溝1e,1eの溝幅の略1/2以下とされ(換言すれば被係合溝1e,1eの溝幅が係合用フランジ部2a,2aの厚みの略2倍以上の広幅とされ)、外枠1両端の開口1d,1dの内周面が内側から外側に向かって拡がるテーパー面になっていると、双方の継手部材2,2が大きく傾斜するため、曲がり角度が大きくなり、曲率半径を小さくすることが可能となる。
【0022】
従って、多孔管路の曲がり部分において、図6、図7に示すように、この自在曲がり継手の一方の継手部材2の接続用フランジ部2cを一方の多孔管4の接続用フランジ部4aにボルト・ナットで連結し、他方の継手部材2の接続用フランジ部2cを他方の多孔管4の接続用フランジ部4aに連結すれば、図6のように上下方向にも、或いは、図7のように左右方向にも、更には、これらが複合されて三次元のどの方向にも、所望の曲がり角度をもって簡単に双方の多孔管4,4を接続できるので、施工性が極めて良好である。しかも、この多孔管路用自在曲がり継手は、双方の継手部材2,2の先端間に配置された短管3が外枠1に囲まれて保護されるため、つるはしやその他の衝撃力を受けて短管3が破損する心配は皆無に等しい。
【0023】
また、この自在曲がり継手は、外枠1が上枠部1aと下枠部1bからなる二分割タイプのものであるため組立作業性が良好であり、図1に示すように上枠部1aを取り外した状態で、下枠部1bの被係合溝1e,1eに双方の継手部材2,2の係合用フランジ部2a,2aを嵌込むと共に、3本の短管3の両端を継手部材2,2の貫通孔先端の受口2d,2dに遊挿し、その上から上枠部1aを重ねて上枠部1aと下枠部1bの1c,1c同士をボルト・ナットで締付けるだけの作業によって、極く簡単に組立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る多孔管路用自在曲がり継手を、その外枠の上枠部を分解して示す斜視図である。
【図2】同自在曲がり継手の分解斜視図である。
【図3】同自在曲がり継手の縦断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】同自在曲がり継手の分解断面図である。
【図6】多孔管を接続した同自在曲がり継手が下方に曲がった状態を示す縦断面図である。
【図7】多孔管を接続した同自在曲がり継手が右方に曲がった状態を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 外枠
1a 上枠部
1b 下枠部
1d 開口
1e 被係合溝
2 継手部材
2a 係合用フランジ部
2b 貫通孔
2c 接続用フランジ部
2d 受口
3 短管
4 多孔管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口し内面に一対の被係合溝が周設された外枠と、多孔管路の孔数と同数の平行な貫通孔を有し先端に係合用フランジ部が形成された一対の継手部材と、継手部材の貫通孔と同数の短管とからなる自在曲がり継手であって、一対の継手部材が外枠両端の開口からそれぞれ遊挿されて先端の係合用フランジ部が外枠内面の一対の被係合溝にそれぞれ抜出し不能に遊嵌されると共に、双方の継手部材の先端間に短管が配置されて各短管の両端が双方の継手部材の各貫通孔に遊挿されていることを特徴とする多孔管路用自在曲がり継手。
【請求項2】
外枠が、上枠部と下枠部からなる二分割タイプのものである請求項1に記載の多孔管路用自在曲がり継手。
【請求項3】
外枠両端の開口の内面が、内側から外側に向かって拡がるテーパー面とされている請求項1又は請求項2に記載の多孔管路用自在曲がり継手。
【請求項4】
継手部材の後端に接続用フランジ部が形成されている請求項1に記載の多孔管路用自在曲がり継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−101610(P2006−101610A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283053(P2004−283053)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】