説明

多孔質シリコン

金属イオンを含む化学エッチング液を使用して多孔質シリコンを製造する方法が、記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質シリコン、多孔質シリコンを製造するための方法、前記方法から得ることができる多孔質シリコンおよび多孔質シリコンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質シリコンは、その無害な性質、電子的および光学的特性ならびにその他の物質の封入が望ましい多様な用途において見られる。
【0003】
多孔質シリコンを製造するために使用可能な多数の方法がある。例えば、PCT/GB96/01863に記載の通り、バルク結晶シリコンは、フッ化水素酸ベースの溶液中での部分的な電気化学的溶解によって多孔質になることができる。このエッチングプロセスは、元のバルク物質の結晶化度および結晶方位を保持するシリコン構造を生成する。したがって、形成された多孔質シリコンは、結晶シリコンの形状である。広い意味では、この方法は、例えば、エタノール、メタノールまたはイソプロピルアルコール(IPA)などの、フッ化水素酸のアルコール中20%溶液を含む電解質を含有する電気化学セル中の高濃度ホウ素ドープCZシリコンウエハーを陽極酸化するものである。密度が約50mA cm−2の陽極酸化電流の通過後、多孔質シリコン層が作製され、電流密度を短時間増加させることによってウエハーから分離することができる。この効果は、多孔質およびバルク結晶の領域の間の界面においてシリコンを溶解させることである。
【0004】
多孔質シリコンは、多孔質シリコンを製造するための別の従来の方法である、いわゆるステイン−エッチング技術を使用して製造することもできる。この方法は、強力な酸化剤を含有するフッ化水素酸溶液中にシリコン試料を浸漬するものである。シリコンとは電気接触がなく、電位は印加されない。フッ化水素酸は、シリコンの表面をエッチングして、細孔を作る。今まで、ステインエッチングは、再現性に乏しく、収率が低く、発熱性が強く、陽極酸化ウエハーから得られるものよりも著しく低い内部表面積を作製する傾向があった。
【0005】
特に非常に空隙率の高いシリコンを製造するための、これらの既存のステインエッチング法は、それほど効率的でなく、これらの方法は時間がかかる傾向がある。さらに、陽極酸化は、現在、比較的高価なシリコンウエハーを使用する。既存のステインエッチング法は、多孔化したシリコンが完全に生分解性ではなく、全てがその場でケイ酸に変換されるわけではないことも意味する、完全に多孔質のシリコンを作製するのに特に適しているとは証明されていない。完全に多孔化するシリコンへの既存の試みは、特にシリコン粒子の中心で非多孔質シリコンの領域を保持している多孔質シリコンをもたらす傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際出願PCT/GB96/01863号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の課題の少なくとも一部に対処する、多孔質シリコンを製造するための代替の、好ましくは改善された方法への継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、多孔質シリコンを製造するために、水溶液中で、好ましくは低温で、フッ化水素と組み合わせた金属塩の使用を記載している。より具体的には、本発明の第一の態様によれば、
粒子状の元素シリコンを、フッ化水素酸および溶解金属塩を含む、またはこれらからなる、または本質的にこれらからなる化学エッチング溶液と接触させるステップ
を含む、多孔質シリコンを製造する方法が提供される。
【0009】
本発明に従って得られるステインエッチングした多孔質シリコンは、以下の特徴:大表面積;高細孔容積;最大幅10nmのシリコン領域の欠如、または実質的な欠如;85wt%を超える、好ましくは95wt%を超える完全にメソ多孔質の領域;約0.0001wt%から1wt%の範囲の濃度で、細孔壁表面上での、例えば鉄、銀、金、アルミニウム、白金、バナジウム、銅から選択される少なくとも1種の金属の存在;および体液などの水性液体中での高溶解性の1つまたは複数の存在によって、従来通り製造されるステインエッチングした多孔質シリコンを上回る特徴を持ち得る、または差別化され得る。このように、第二の態様によれば、本発明の第一の態様による方法によって得ることができる多孔質シリコンが、提供される。
【0010】
本発明の第一の態様による方法は、球状のまたは実質的に球状の粒子および針状または不規則な形状のシリコン微小粒子を含む、これらからなる、または本質的にこれらからなる粒子状シリコン原材料と一緒に使用するのに適している。有利には、本発明に従って作製される多孔質シリコン微小粒子の球形度は、高くすることができる。本発明のさらなる態様によれば、約150m/gを超える、または約200m/gを超える、または約300m/gを超える、または約400m/gを超える、または約450m/を超える表面積を有する球状のまたは実質的に球状の粒子を含む、これらからなる、または本質的にこれらからなる多孔質粒子状シリコンが提供される。例えば、表面積は、最大約500m/g、例えば最大約480m/gとすることができる。表面積は、少なくとも150m/gまたは少なくとも200m/gとすることができる。本発明に従って製造される球状のまたは実質的に球状の粒子は、医用画像用のインビボ造影剤として特に有用である。このように、さらなる態様において、画像のコントラストが、本発明の態様のいずれか1つによる多孔質シリコンを含むイメージング剤を、ヒトまたは動物の対象に投与することによって強調される、ヒトまたは動物の対象を撮像する方法が提供される。
【0011】
本発明に関連するいくつかの利点があり、本発明は、以下のもの:完全に生分解性の多孔質シリコン;例えば空隙率が約50から約70vol%の高多孔質シリコン;例えば最大約0.5ml/gの高細孔容積;最大で少なくとも100gのバッチサイズ;少なくとも100g/時間の処理量;例えば原材料の最大約60重量%が多孔質シリコンに変換される良好な収率;例えば約20wt%を超える、例えば約40wt%を超える量の1種または複数の活性物質を高装填量で装填することができる多孔質シリコンの1つまたは複数を提供することを目的とする。
シリコン
本明細書で使用し、別段の記載のない限り、用語「シリコン」は、固体の元素シリコンを指す。誤解を避けるため、別段の記載のない限り、シリコンは、シリカ、シリケートまたはシリコンなどのシリコン含有化合物を包含しないが、シリコンは、これらの物質と組み合わせて使用することができる。
【0012】
シリコンの純度は、多孔質シリコンの最終用途によってある程度変えることができる。例えば、シリコンは、約95から99.99999%純粋、例えば約96から99.9%純粋とすることができる。有利には、食料品を含めた、幅広い用途に適し得るいわゆる冶金シリコンは、約98から99.5%の純度を有し、本発明の方法での使用に適している。
【0013】
本発明による方法での使用に適したシリコンの物理的形状は、非晶質シリコン、単結晶シリコン、冶金グレードシリコンおよび多結晶シリコン(その粒径が典型的に1から100nmであるととらえられるナノ結晶シリコンを含めて)ならびにこれらの組合せを含めた、1種または複数から選ぶことができる、またはこれらを含むことができる。本発明での使用に適した上記のタイプのシリコンのいずれかは、多孔化され、「pSi」と称されることがある多孔質シリコンを形成することができる。シリコンは、表面多孔化され得る、またはより実質的に多孔化され得る。多孔質シリコンの適した形状として、メソ多孔質、微細孔質またはマクロ多孔質のシリコンが挙げられる。微細孔質シリコンは、2nm未満の直径を有する細孔を含有し;メソ多孔質シリコンは、2から50nmの範囲の直径を有する細孔を含有し;マクロ多孔質シリコンは、50nmを超える直径を有する細孔を含有する。
【0014】
シリコン中の細孔の表面積およびサイズは、多孔質シリコンがどのような用途に使用されることになるかによって、ある程度変えることができる。多孔質シリコンは、ヒトまたは動物の対象に送達されるべき、追加の物質と一緒に装填され得る。例えば、多孔質シリコンのBET表面積は、生分解性のためには200m/gを超えることが好ましい。BET表面積は、Brunauerら.、J.Am.Chem.Soc.、60、p309、1938に記載の通りのBET窒素吸着法によって求められる。BET測定は、Tristar 3000 Micrometrics装置を使用して実施される。試料は、測定前に120℃で16時間、流動乾燥窒素下で脱気される。細孔容積は、0.1ml/gを上回ることが好ましく、S.J.GreggおよびK.S.W.SingによるAdsorption,Surface Area and Porosity、第2版、Academic Press、Londonに記載の通り、Tristar 3000 Micromeritics装置および等温式の標準BJH(Barrett Joyner Harlender)分析を用いるBET分析によって測定される。
【0015】
メソ多孔質シリコン粒子の球形度は、高いことが好ましい。メソ多孔質シリコン粒子の球形度は、メソ多孔質シリコン粒子とメソ多孔質シリコン粒子のメソ細孔容積を足したものと同じ容積を有する非細孔球の表面積と、メソ多孔質シリコン粒子の外表面積との比である。メソ多孔質シリコン粒子の外表面積は、総表面積からメソ細孔の表面積を引いたものである。BET技術は、表面積を測定するために使用され、球形度を算出するために、粒度分布の測定と組み合わされる。個々の粒子の球形度は、以下の数式で示される。
π1/3(6V2/3/A
は、粒子の容積であり、Aは、粒子の表面積である。
【0016】
この方法で使用するためのシリコンの形状は粉末であり、様々なサイズの粒子を含み得る。本発明において、平均粒度(d50/μm)、d90およびd10のシリコン粒子を含めた粒度分布測定は、Malvern InstrumentsからのMalvern Particle Size Analyzer、Model Mastersizerを使用して測定される。ヘリウムネオンガスレーザービームは、水溶液に懸濁させたシリコン粒子を含有する透明セルを通して投射される。粒子に当たる光線は、粒度に反比例する角度で散乱する。光検出器アレイは、いくつかの所定の角度で光の量を測定する。次いで、測定した光束値に比例する電気信号は、シリコンの粒度分布を求めるために、試料および分散溶液の屈折率によって定義される通りの理論上の粒子から予測される散乱パターンに対して、マイクロコンピューターシステムによって処理される。
【0017】
代表的な原材料試料に対するおおよその粒度分布の一部の適した例が、以下の表1で提供される。
【0018】
【表1】

原材料のd90が、約11μm未満、例えば約10μm以下とすることができれば、有利である。原材料のd90は、少なくとも約5μmとすることができる。
【0019】
シリコン微小粒子およびシリコンナノ粒子などのシリコン粉末を製造するための方法は、当分野でよく知られている。シリコン微小粒子は、一般に、直径が約1から1000μmの粒子を意味するととらえられ、シリコンナノ粒子は、一般に、約100nm以下の直径を有する粒子を意味するととらえられる。したがって、シリコンナノ粒子は、典型的に、約1nmから約100nm、例えば約5nmから約100nmの範囲の直径を有する。シリコン粉末を製造するための方法は、例えば化学合成または気相合成を含めた、「ボトムアップ」法と称されることが多い。別法として、いわゆる「トップダウン」法は、電気化学的エッチングまたは粉砕(例えば、Kerkarら、J.Am.Ceram.Soc、vol.73、2879−2885頁、1990に記載の通りの製粉)など、知られているこのような方法を指す。PCT/GB02/03493およびPCT/GB01/03633は、本発明で使用するためのシリコン原材料を製造するのに適した、シリコンの粒子を製造するための方法を記載しており、これらの内容全体を、参照により本明細書に組み込む。このような方法として、シリコンを遠心分離法、または摩砕法に付することが挙げられる。例えば約20nmの平均粒子径を有するナノ粒子シリコンの適した供給源は、SDC materialsから市販品として得ることができる。
【0020】
シリコンナノ粒子を製造するのに適した方法のその他の例として、低大気圧の不活性ガス環境における揮発および凝縮が挙げられる。様々なエアロゾル処理技術が、ナノ粒子の作製収率を改善するために報告されている。これらの技術として、以下の技術:燃焼炎;プラズマ;レーザーアブレーション;化学的蒸気凝縮;噴霧熱分解;電気噴霧およびプラズマスプレーによる合成が挙げられる。これらの技術に対する処理量は、現在低い傾向があるので、好ましいナノ粒子合成技術として:高エネルギーボールミリング;気相合成;プラズマ合成;化学合成;音響化学合成が挙げられる。シリコンナノ粒子の作製の好ましい方法は、より詳細に記載される。
【0021】
高エネルギーボールミリング
ナノ粒子合成のための一般的なトップダウン手法である高エネルギーボールミリングは、磁気的、触媒的および構造的なナノ粒子の生成に使用されてきており、Huang、「Deformation−induced amorphization in ball−milled silicon」、Phil.Mag.Lett.、1999、79、pp305−314を参照されたい。商業的な技術であるこの技術は、ボールミリングプロセスからの汚染の問題により、伝統的に問題があると考えられてきた。しかし、炭化タングステン成分の有用性ならびに不活性雰囲気および/または高真空プロセスの使用が、不純物を許容できるレベルまで低減させた。約0.1から1μmの範囲の粒度が、ボールミリング技術によって最も一般的に作製されるが、この技術は、約0.01μmの粒度を作製することが知られている。
【0022】
ボールミリングは、「乾燥」条件で、または液体の存在、すなわち「湿潤」条件のいずれかで実行することができる。湿潤条件のための、典型的な溶媒として、水またはアルコールベースの溶媒が挙げられる。
【0023】
気相合成
シラン分解は、多結晶シリコン顆粒を作製するための非常に高処理量の商業的プロセスをもたらす。電子グレード原材料は、比較的高価(現在は約30ドル/kg)であるが、いわゆる「微粒子」(微小粒子およびナノ粒子)は、本発明で使用するには適した廃棄物である。微粒子シリコン粉末は、市販されている。例えば、NanoSi(商標)Polysiliconは、Advanced Silicon Materials LLCから市販されており、水素雰囲気中でのシランの分解によって調製される微粒子シリコン粉末である。粒度は、5から500nmであり、BET表面積は、約25m/gである。このタイプのシリコンは、報告によると、水素結合およびファンデルワールス力により凝集する傾向がある。
【0024】
プラズマ合成
プラズマ合成は、Tanakaによる「Production of ultrafine silicon powder by the arc plasma method」、J.Mat.Sci.、1987、22、pp2192−2198に記載されている。良好な処理量を有するある範囲の金属ナノ粒子の高温合成は、この方法を使用して達成することができる。シリコンナノ粒子(典型的には直径10−100nm)は、この方法を使用して、アルゴン−水素またはアルゴン−窒素ガス環境で生成されている。
【0025】
化学合成
超微小(<10nm)シリコンナノ粒子の溶液成長は、US20050000409に記載されており、この内容全体を、参照により本明細書に組み込む。この技術は、有機溶媒中のナトリウムナフタレニドなどの還元剤によって、四塩化ケイ素などのシリコンテトラハライドを還元するものである。この反応は、室温での高収率につながる。
【0026】
音響化学合成
音響化学において、音響キャビテーションプロセスは、極めて高い温度勾配および圧力を有する過渡的で局所的なホットゾーンを生成することができる。このような温度および圧力の急激な変化は、音響化学的前駆体(例えば、有機金属溶液)の破壊およびナノ粒子の形成を助ける。この技術は、工業用途用の大量の物質を作製するのに適している。シリコンナノ粒子を調製するための音響化学的方法は、Dhasによる「Preparation of luminescent silicon nanoparticles:a novel sonochemical approach」、Chem.Mater.、10、1998、pp3278−3281に記載されている。
【0027】
機械的合成
Lamらは、グラファイト粉末およびシリカ粉末をボールミリングすることによって、シリコンナノ粒子を製造しており、このプロセスは、その全体を参照により本明細書に組み込む、J.Crystal Growth 220(4)、p466−470(2000)に記載されている。Arujo−Andradeらは、シリカ粉末およびアルミニウム粉末の機械的ミリングによってシリコンナノ粒子を製造しており、このプロセスは、Scripta Materialia 49(8)、p773−778(2003)に記載されている。
【0028】
上記の方法によって作製される粒子状多孔質シリコンは、高度に球状とすることができる。
【0029】
本発明に従って形成される多孔質シリコンは、誘導体化することができる。誘導体化した多孔質シリコンは、その表面の少なくとも一部に共有結合した単層を有する多孔質シリコンである。単層は、多孔質シリコンの表面の少なくとも一部にヒドロシリル化によって結合される1つまたは複数の有機基を典型的に含む。誘導体化した多孔質シリコンは、PCT/GB00/01450に記載されており、この内容全体を、参照により本明細書に組み込む。PCT/GB00/01450は、ルイス酸の存在下でヒドロシリル化などの方法を使用するシリコンの表面の誘導体化を記載している。この場合、誘導体化は、表面でシリコン原子の酸化を阻止し、そうしてシリコンを安定化するために行われる。誘導体化した多孔質シリコンを調製する方法は、当業者に知られており、例えばJ.H.SongおよびM.J.Sailorによる、Inorg.Chem.1999、vol21、No.1−3、pp69−84(Chemical Modification of Crystalline Porous Silicon Surfaces)に記載されている。シリコンの誘導体化は、シリコンの疎水性を増加させ、それによってその湿潤性を減少させることが要求される場合に望ましいことがある。好ましい誘導体化表面は、1種または複数のアルキン基で修飾される。アルキン誘導体化シリコンは、例えば、Phys Stat.Solidi(a)、182、pp123−126、(2000)においてJ.Salonenらによる「Studies of thermally carbonized porous silicon surfaces」およびCurr.Appl.Phys.3、pp185−189(2003)においてS.T.Lakshmikumarらによる「Stabilisation of porous silicon surface by low temperature photoassisted reaction with acetylene」に記載の通りの、アセチレンガスでの処理から誘導されてもよい。
【0030】
元素シリコンの表面は、1種または複数のシリコン化合物を含むことができる。例えば、多孔質シリコン表面の少なくとも一部は、酸素層を形成するために酸素に結合したシリコンを含むことができる。シリコン粒子は、約1つの酸素の単層と、全シリコン骨格を被覆する約4.5nm以下の総酸化物の厚さの間に対応する酸化物含有量を有することができる。多孔質シリコンは、約0.04および2.0の間、好ましくは0.60および1.5の間の酸素とシリコン原子の比を有することができる。酸化は、シリコンの細孔内および/または外表面上で起こることがある。約0.0001wt%から1wt%の範囲の濃度で、細孔壁の表面上に存在する例えば、鉄、銀、金、アルミニウム、バナジウム、白金、銅の表面から選択される少なくとも1種の金属があってよい。
【0031】
化学エッチング液
エッチング溶液は、フッ化水素酸およびフッ化水素酸(フッ化水素の水溶液)に溶解されている金属塩を含む。したがって、エッチング液は、金属イオン、例えば鉄イオンを含む。金属塩の適した例として、鉄含有塩、特に塩化第二鉄(FeCl)が挙げられる。その他の適した金属塩として、銀、銅、金、アルミニウム、バナジウムまたは白金を含有する塩が挙げられる。適した陽イオンとして、上で述べた金属のいずれかと組み合わせることができる、塩素イオン、硝酸イオン、酸化物イオンまたは硫酸イオンが挙げられる。金属塩は、酸化バナジウム、例えばVとすることができる。金属塩は、まず水に溶解させて水溶液を形成した後、フッ化水素酸と組み合わされてもよい。金属塩が溶解されている水溶液のモル濃度または容積モル濃度は、約0.012Mから約5.6M、例えば約0.1Mから3Mとすることができる。エッチング溶液中の金属イオンの濃度は、約0.01Mから4.7M、例えば0.09Mから2.5Mとすることができる。1モルのシリコンをエッチングするためのHFのモル数の比は、約6とすることができる。溶解金属塩の水溶液と組み合わせられる水性フッ化水素酸は、約1%から約48%、例えば40%とすることができる。
【0032】
有利には、フッ化水素酸および金属塩を組み合わせてエッチング溶液が形成された後、およびエッチング液を粒子状シリコンと組み合わされる前に、エッチング液は、室温より低く冷却される。金属イオンを含むフッ化水素酸および/または溶液は、これらが組み合わされる前に冷却することができる。粒子状シリコンはまた、添加前に冷却することができる。粒子状シリコンは、シリコンおよび水ならびに金属塩またはフッ化水素酸を含む冷却スラリーの形状で添加することができる。
【0033】
例えば、エッチング溶液は、約0℃未満、例えば約−5℃未満、好ましくは約−10℃未満の初期温度とすることができる。エッチング溶液は、約−25℃から約5℃未満、または約0℃未満、例えば約−15℃の温度とすることができる。エッチング溶液は、約−15℃から約−25℃の初期温度とすることができる。
【0034】
エッチング液および粒子状シリコンは、混合中に撹拌することができ、温度は、監視することができる。エッチングプロセス中、溶液の温度は、典型的には50℃より低く維持される。有利には、温度は、10℃より低く、より好ましくは0℃より低く維持される。一定の時間、例えば約30分後、水、好ましくは脱イオン水は、エッチング液およびシリコンを合わせた混合物と組み合わせることができる。水の添加に続いて、好ましくはすぐに、混合物は、湿った粉末を残すために濾過され、粉末は、例えばホットプレート上で風乾することができる。有利には、多孔化中に約−5℃および5℃の間で発生する最大発熱が発生し得る。本発明者らは、特に大表面積、細孔容積および収率が、これらの条件下で得ることができることを発見した。理論に束縛されるものではないが、冷却および約0℃より低い電解質温度の維持は、元素シリコンの化学エッチングを最小限に抑え、プロセス中の電気化学的な細孔形成を支配することができると考えられる。反応発熱は、知られている技術を使用して監視することができる。例えば、反応発熱は、Lacomitコーティングした温度プルーブを使用して監視することができる。
【0035】
本発明者らは、粒子状シリコンと組み合わされる前にエッチング液を冷却することは、著しく高い空隙率、収率および表面積が得られ得るので特に有利であることを発見した。
【0036】
有利には、本発明による方法は、より安価な原材料、例えば冶金グレードシリコンを多孔化するために使用することができる。シリコンを多孔化する既存の方法、特に陽極酸化は、著しくさらに高価な高純度電子グレードシリコンウエハーを利用する。また、本プロセスは、既存の方法と比較して著しく高い処理量を提供する。例えば、約100g/時間の多孔質シリコンが、作製され得る。
【0037】
本発明によるプロセスは、新規なステインエッチングした多孔質シリコンを提供する。今まで、ステインエッチングした多孔質シリコンに対して達成される最大の表面積は、約140m/g程度および細孔容積は約0.3ml/g程度であると考えられている。本発明は、約450m/gを超える表面積および約0.3ml/gを超える、好ましくは約0.5ml/gを超える細孔容積を有するステインエッチングした多孔質シリコンを提供する。このことは、場合によって、シリコンの高度に球状な粒子を含む原材料と共に達成され得る。陽極酸化法は、このような原材料と共に使用するのに適していない。
【0038】
ステインエッチングおよび陽極酸化した多孔質シリコンは、これらの方法に関わるプロセスによって当業者には識別できる。陽極酸化は、エッチング液が、高純度のシリコンウエハーの1つの側面と接触させられることを必要とし、これによって多孔質シリコンの独特の形態をもたらす。しかし、本発明は、粒子状シリコンを利用するので、エッチング液は、全ての側面からシリコン粒子をエッチングすることができる。このことは、陽極酸化した多孔質シリコンおよびステインエッチングした多孔質シリコンが、異なる形態を有することを意味し、このことは、当業者に容易に明らかになる。陽極酸化した膜およびこうして得られる多孔質シリコン粒子は、粒子の1つの側面から他方の側面に横断する、非常に高い割合の「貫通」細孔を有する。ステインエッチングした粒子において、より多くの細孔が、粒子の1つの側面から他方の側面に横断しないことはそれほど明らかではなく、また、このような細孔は、「デッドエンド」細孔と称されることもある。陽極酸化によって作製される物質における細孔の割合がより高いことは、配列した方向性も有する。ステインエッチングした粒子において、細孔は、互いに対してより広い角度(球に対して最大180°)にわたって方向づけられる。細孔の方向性も、ステインエッチングに付された多結晶粒子においてはるかに顕著であり、陽極酸化に付された単結晶ウエハーに存在しない粒界によって影響される。
【0039】
本発明による方法において、細孔形態は、エッチング形成中のさらなる酸、例えば硫酸を含有することによって変更することができる。例えば、硫酸などのさらなる酸の添加は、前記さらなる酸がないことと比較した場合、1つまたは複数のより大きな表面積、より小さい平均細孔径およびより大きな細孔容積を提供するために使用することができる。適切には、このことは、エッチング溶液に対して、0.2から20vol%の硫酸の18M溶液を添加することによって達成することができる。
【0040】
多孔質シリコンの使用
本発明に従って製造される多孔質シリコンは、多数の用途で使用することができる。用途分野として、これらだけには限らないが、化粧品、パーソナルケア、口腔衛生、薬剤(例えば、経口薬物送達を含めた薬物送達)および食品が挙げられる。その他の用途分野として、インビボ撮像、診断、燃料電池、リチウム電池などのバッテリー、触媒、水素貯蔵器および爆発物が挙げられる。このような物質を活用できる特定の製品の例として、これらだけには限らないが、チョコレート、チューインガムおよび練り歯磨きが挙げられる。
【0041】
多孔質シリコンは、それ自体で食料品として使用することができ、場合によって、1種または複数の材料と一緒に装填することができる。シリコンは、1種または複数の材料が多孔質シリコンによって封入されるように、装填することができる。これらの材料は、酸素感受性食用油;ミネラル;乳脂肪を含めた酸素感受性脂肪;油溶性材料;ビタミン;香料または香気;香味;酵素;プロバイオティクス細菌;プレバイオティクス;栄養補助食品;アミノ酸;ハーブ抽出物;ハーブ;植物抽出物;食用酸;塩;抗酸化物質;治療薬の1種または複数から選択することができる。
【0042】
多孔質シリコンは、持続放出のための医薬または毒性の化学種と一緒に装填することができる。細菌、ウイルス、抗原またはその他の摂取材料などの1種または複数の生物学的物質は、徐放のために多孔質シリコンに添加され、生物的防除および治療に影響を及ぼすことができる。
【0043】
多孔質シリコンは、練り歯磨き、歯磨き粉、ガムまたはオーラルジェルなどの歯磨剤組成物で使用することができる。多孔質シリコンは、研磨剤としておよび/または1種または複数の封入された材料を送達するために存在してもよい。歯磨剤組成物は、当業者によく知られる構成成分を含み;これらは、広い意味では、活性剤および不活性剤として特徴づけることができる。活性剤として、フッ化物、抗菌剤、脱感作剤、歯石防止剤(または抗歯石剤)および白色剤などの虫歯予防薬が挙げられる。不活性材料は、一般に、水(水相の形成を可能にする)、洗浄剤、界面活性剤、または発泡剤、増粘剤またはゲル化剤、結合剤、有効性増強剤、水分を保持するための湿潤剤、香味剤、甘味剤および着色剤、保存剤、場合によって洗浄および研磨のためのさらなる研磨剤が含まれるととらえられる。
【0044】
メソ多孔質シリコンは、動物または哺乳類の組織内で、医用画像の目的のための生分解性造影剤として使用することができる。詳細には、メソ多孔質シリコン粒子の金属含有量は、X線コントラストを改善するために調整することができる。メソ多孔質シリコン粒子の空隙率は、超音波コントラストを改善するために調整することができる。粒度分布は、組織内の生体内分布を最適化するために調整することができる。メソ多孔質シリコン粒子の球形度は、視角に対するコントラスト依存性を低下させるためまたは脈管構造内の運搬を改善するために、高いことが好ましい。
【0045】
従来の技術を使用して製造される多孔質シリコンと共に使用される場合の、上で述べた使用は、以下の参考文献に記載されている。H.Kimらによる「Three dimensional porous silicon particles for use in high performance lithium secondary batteries」、Angew.Chem.Int.Ed.47、10151−10154(2008)。B.A.Masonらによる「Combustion performance of porous silicon−based energetic compositions」、Proc of 45th AIAA/ASME/SAE/ASEE Joint Propulsion Conference、2−5 Aug 2009、Denver、Colorado、USA。M.du Pleissによる「Investigating nanoporous silicon explosive devices」、Phys.Status.Solidi.C6(7)1763−1768(2009)。S.Polisskiらによる「Hybrid metal/silicon nanocomposite systems and their catalytic activity」、Phys.Status.Solidi.C6(7)1575−1579(2009)。A.I.Manilovらによる「Use of powders and composites based on porous and crystalline silicon in the hydrogen power industry」、Ukr.J.Phys.55(8)928−935(2010)。R.J.Martin−Palmaらによる「Biomedical applications of nanostructured porous silicon:a review」、J.Nanophotonics 4、042502 13 September 2010。J.Salonenらによる「Mesoporous silicon in drug delivery applications」、J.Pharm.Sci.97(2)632−653(2008)。C.A.Prestidgeらによる「Mesoporous silicon:a platform for the delivery of therapeutics」、Expert Opin.Drug Deliv.4(2)101−110(2007)。L.T.Canham、「Nanoscale semiconducting silicon as a nutritional food additive」、Nanotechnology 18、185704(2007)。
【0046】
本発明の実施形態は、添付の図面および以下の実施例を参照して、例示の目的のみであり限定することなく、ここに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1のための、反応発熱を例示する図である。
【図2】実施例1−3のための、反応発熱を例示する図である。
【図3】実施例5のための、得られる収率および表面積を例示する図である。
【図4】実施例6のための、反応発熱を例示する図である。
【実施例1】
【0048】
600mlの1.85M塩化第二鉄(水)溶液を、120mlの40%(水性)フッ化水素酸に添加した。得られた溶液を、−25℃に冷却し、10gの冶金グレードのシリコン粉末(d10=0.71μm、d50=2.10μm、d90=8.9μm)を入れた2Lのポリエチレンボトルに注ぎ入れた。ボトルを、冷却浴(−25℃)に戻し、覆いをして、酸耐性スクリュープロペラ撹拌棒(約400rpm)で撹拌した。温度を、図1に従って監視した。t=約30分で、500mlの脱イオン水(室温)を、混合物に添加し、希釈した混合物を、10μmのMITEX濾過膜を入れた大面積のPTFE真空濾過容器に直ちに注ぎ入れた。混合物を、湿った粉末が膜上に残るまで濾過した(濾過時間は19分であった。)。膜/粉末を取り出し、45℃で24時間、ホットプレート上で風乾させ、得られた粉末を計量した。これによって、表面積=479.7m/g、平均細孔容積=0.52ml/g;平均孔径=3.8nmを有する、収率23.7%の多孔質シリコンを得た。
【実施例2】
【0049】
600mlの1.85M塩化第二鉄(水)溶液を、120mlの40%(水性)フッ化水素酸に添加した。得られた溶液を、−25℃に冷却し、10gの冶金グレードのシリコン粉末(d10=0.71μm、d50=2.10μm、d90=8.9μm)を入れた2Lのポリエチレンボトルに注ぎ入れた。ボトルを、冷却浴(−25℃)に戻し、覆いをして、酸耐性スクリュープロペラ撹拌棒(約400rpm)で撹拌した。温度を、図2に従って監視した。t=約30分で、500mlの脱イオン水(室温)を、混合物に添加し、希釈した混合物を、10μmのMITEX濾過膜を入れた大面積のPTFE真空濾過容器に直ちに注ぎ入れた。混合物を、湿った粉末が膜上に残るまで濾過した(濾過時間は15分であった。)。膜/粉末を取り出し、45℃で24時間、ホットプレート上で風乾させ、得られた粉末を計量した。これによって、表面積=141.2m/g、平均細孔容積=0.305ml/g;平均孔径=6.8nmを有する、収率40.3%の多孔質シリコンを得た。
【実施例3】
【0050】
600mlの1.85M塩化第二鉄(水)溶液を、120mlの40%(水性)フッ化水素酸に添加した。得られた溶液を、−15℃に冷却し、10gの冶金グレードのシリコン粉末(d10=0.71μm、d50=2.10μm、d90=8.9μm)を入れた2Lのポリエチレンボトルに注ぎ入れた。ボトルを、冷却浴(−15℃)に戻し、覆いをして、酸耐性スクリュープロペラ撹拌棒(約400rpm)で撹拌した。温度を、図2に従って監視した。t=約30分で、500mlの脱イオン水(室温)を、混合物に添加し、希釈した混合物を、10μmのMITEX濾過膜を入れた大面積のPTFE真空濾過容器に直ちに注ぎ入れた。混合物を、湿った粉末が膜上に残るまで濾過した(濾過時間は14分であった。)。膜/粉末を取り出し、45℃で24時間、ホットプレート上で風乾させ、得られた粉末を計量した。これによって、表面積=359.6m/g、平均細孔容積=0.463ml/g;平均孔径=4.4nmを有する、収率18.7%の多孔質シリコンを得た。
【実施例4】
【0051】
いくつかの経路を介して調製される多孔質シリコンの溶解を、シンク条件下で実行した。5.5mgの多孔質シリコン粉末を、pH7.4のトリズマ緩衝剤200mlと一緒にプラスチックボトルに配置した。ボトルを、37℃に設定した水浴中に配置し、混合物を、46rpmで撹拌した。溶解したシリコン(溶液中のオルトケイ酸として)を、モリブデンブルーアッセイを分光光度法で使用して、定量的に求めた。モリブデンブルーアッセイを、特定の期間(24時間)で、2.5mlの溶液を取り除くことによって開始し、2.5mlの媒体(トリズマ緩衝剤)と置き換えた。溶液を、0.45μmのシリンジフィルターを用いて濾過した。2.5mlの濾過した溶液に、以下の溶液を添加した:
1.試料を酸性化するための、0.6mlの0.25M HCl。
2.妨害金属イオンを錯化させるための1.25mlの1%w/vのEDTA。
3.モリブデン酸を形成するためにHClと反応させ、次にシリコンモリブデン酸を形成する、1.25mlの5%w/vのモリブデン酸アンモニウム。
4.Mo−ブルーHSi(Moを形成するために、シリコンモリブデン酸を低減させる、2.5mlの17%w/vの亜硫酸ナトリウム。
【0052】
得られた溶液の吸光度を、分光光度計を使用してy=700nmで測定した。
【0053】
ウエハー陽極酸化プロセスを介して調製した空隙率70%のメソ多孔質シリコン粉末は、上のインビトロシンク溶解条件内で24時間にわたる74%の溶解および著しく長い時間にわたる完全な(100%)生分解性を示した。
【0054】
電解質の冷却を行わずに粉末をエッチングするためのHF/HNOの使用を含む公知の経路によって調製されるステインエッチングした物質は、典型的に、上のインビトロ溶解条件内で24時間にわたる<10%の溶解およびはるかに長い時間にわたる不完全な(<90%)生分解性を示した。
【0055】
本発明の金属支援エッチング物質は、典型的に、上のインビトロ溶解条件内で24時間にわたる20−40%の溶解、したがって従来技術の物質よりも高い生分解性を示した。
【実施例5】
【0056】
BET表面積および細孔容積に対する粒度の効果を、冶金シリコンの2種類の原材料試料(試料Aおよび試料B)に対して求めた。試料A(99.1wt%のSi、0.185wt%のAl、0.48wt%のFe)に関して、d10=2.4μm、d50=8.6μm、d90=46μm。試料B(99.4wt%のSi、0.1wt%のAl、0.3wt%のFe)に関して、d10=1.0μm、d50=3.7μm、d90=10.9μm。
【0057】
ステイン−エッチングを、シリコン粉末の10gのバッチで実行した。HF容積を、[HF]/[Si]のモル比=7.6を得るために固定した。600mlの1.85M FeCl溶液および120mlの40%HFを合わせた。HFは、OM Groupから得られる電子グレード(40%)であり、FeClは、Merckから得られる無水塩化鉄であった。1.85Mのオキシダント原液を、脱イオン水中の塩化第二鉄を溶解することによって調製し、40%のHFを添加した。一度混合し、(1:1のエチレングリコール:水の冷却材を用いる冷却機を使用して)−15から−25℃に冷却して、溶液を、シリコン粉末を入れた容器に注ぎ入れて撹拌し、その容器を、反応中、冷却機内に収容した。各反応温度発熱を監視し、エッチングの後、溶液を濾過し、粉末を50℃で数時間乾燥させた。エッチングは、このプロセス中、脱イオン水でのクエンチ後でも持続することができるので、濾過にかかった時間も記録した。表面積および細孔容積測定を、窒素ガス吸着を使用して実行した。平均および最も高い製品パラメータは、表2に列挙され、2種類の原材料の間の傾向を分析することを可能にする。試料Aに対する21種の試料の平均および試料Bに対する25種の試料に対する結果が示される。最も高い値は、括弧内に示される。図3は、得られた収率および表面積の散布図である。
【0058】
【表2】

表2からわかる通り、より小さいd90を有する原材料(試料B)は、著しく高い表面積および細孔容積をもたらす。
【実施例6】
【0059】
冶金グレードシリコン粉末を多孔化するためにバナジウムを使用する適切性が、調査された。冶金グレードシリコン粉末(99.4wt%のSi)は、d10=1.0μm、d50=3.7μmおよびd90=10.9μmを有した。40%HF(260ml)および脱イオン水(260ml)の520mlの混合物を調製した;[HF]/[Si]のモル比は8.22であった。V(RECTAPUREグレード)を、水の添加前に40%HF(電子グレード、OM Groupから入手)に溶解した。混合および−19℃および−23℃の間のプレエッチング温度への冷却に続いて、溶液を、シリコン粉末を入れた容器(2Lポリプロピレン)に注ぎ入れて、撹拌した。温度を監視して、10分のエッチング後、溶液を濾過し、粉末を50℃で数時間乾燥させた。表面積および細孔容積測定を、窒素ガス吸着を使用して実行した。実施例1から3において、粒度測定は、製造者によって規定されている通りである。実施例5および6において、粒度測定は、測定した通りである。
【0060】
反応プロセスは、極めて急速であることがわかった。各反応発熱は、典型的に、使用されるオキシダント濃度に応じて、1分から3分後にピークに達した(図4を参照されたい。)。
【0061】
シリコン粉末(試料当たり10g)の5種類の試料(試料1−5)および20gのシリコン粉末の1種の試料(試料6)に対するBET分析の得られた結果は、表3に示される。単一の20gのバッチを、試薬の量を増やして行った(520mlの40%HFおよび520mlの脱イオン水)。
【0062】
【表3】

得られた結果は、FeClを使用して達成された表面積、収率および細孔容積が、Vを使用して得られたものより高いことを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状の元素シリコンを、フッ化水素酸および溶解金属塩を含む化学エッチング水溶液と接触させるステップを含む、多孔質シリコンを製造する方法。
【請求項2】
金属塩が塩化第二鉄(FeCl)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粒子状の元素シリコンと接触させる前に、化学エッチング液を室温より低く冷却するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
エッチング液が、約5℃未満に冷却される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
エッチング液が、約0℃未満に冷却される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
エッチング液が、約−5℃未満に冷却される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
エッチング液が、約−25℃から約5℃に冷却される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
エッチング液が、約−25℃から約0℃未満に冷却される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
エッチング液が、約−15℃に冷却される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エッチング液が、約−25℃から約−15℃に冷却される、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
多孔化中、温度が0℃より低く維持される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
温度が0℃より低く維持される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
化学エッチング液が硫酸をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
粒子状の元素シリコンの多孔化に続いて、水が添加され、混合物が濾過され、乾燥される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
多孔質シリコンがメソ多孔質シリコンである、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
粒子状の元素シリコンのd90が、約11μm以下または約10μm以下である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
多孔質シリコンが、食料品、消費者ケア製品、電子機器において、リチウム電池において、水素貯蔵器として、爆発物質として、触媒または薬剤として使用するためにさらに加工される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる多孔質シリコン。
【請求項19】
200m/g以上の表面積を有する、請求項18に記載の多孔質シリコン。
【請求項20】
400m/g以上の表面積を有する、請求項19に記載の多孔質シリコン。
【請求項21】
0.3ml/gを超える細孔容積を有する、請求項18から20のいずれか一項に記載の多孔質シリコン。
【請求項22】
0.5ml/gを超える細孔容積を有する、請求項18から20のいずれか一項に記載の多孔質シリコン。
【請求項23】
200m/g以上の表面積を有する、ステインエッチングした多孔質シリコン。
【請求項24】
表面積が、400m/g以上である、請求項23に記載のステインエッチングした多孔質シリコン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−514252(P2013−514252A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543911(P2012−543911)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052112
【国際公開番号】WO2011/073666
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(504235883)サイメデイカ リミテツド (16)
【Fターム(参考)】