説明

多孔質吸水性ポリマー粒子の製造法

【課題】多数の連続空孔および適度な嵩密度を有し、吸水速度に優れた多孔質吸水性ポリマー粒子を効率よく製造しうる方法を提供すること。
【解決手段】水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を用いて吸水性ポリマー粒子を製造する方法であって、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に、第1界面活性剤の存在下、第1疎水性有機溶媒を内包させ、O/Wエマルジョンを得る工程、及び得られたO/Wエマルジョンを、第2界面活性剤を含有する第2疎水性有機溶媒に分散させてO/W/Oエマルジョンを得る工程を有し、第1界面活性剤としてポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体を用いることを特徴とする、嵩密度が0.30〜0.50g/mLである多孔質吸水性ポリマー粒子の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質吸水性ポリマー粒子の製造法に関する。さらに詳しくは、O/W/Oエマルジョン[油中水中油型エマルジョン]を用いて、樹脂内部に多数の空孔を有する多孔質吸水性ポリマー粒子を製造する方法に関する。多孔質吸水性ポリマー粒子は、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、ペットシートなどに有用である。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸水性ポリマーを製造する方法として、逆相懸濁重合法や水溶液重合法により、アクリル酸やそのアルカリ金属中和塩などの水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させて吸水性ポリマーを製造する方法がよく知れられている。これらの製造法によって得られた吸水性ポリマーは、主に紙オムツや生理用ナプキンなどの衛材用途に広く利用されている。これらの衛材用途のなかでも特に、ナプキン、失禁パッド、ペットシートなどには、その使用目的を考慮して、より速い体液吸収速度が望まれており、その実現のために、より速い吸水速度をもつ吸水性ポリマーの開発が望まれている。
【0003】
吸水速度が改善された吸水性ポリマーの製造法として、重合の際に炭酸塩発泡剤を用いて吸水性ポリマー内に気泡を生じさせる方法(例えば、特許文献1参照)、O/W/Oエマルジョンを用いてモノマーを重合させて粒子内部に空孔を形成させることにより、その吸水速度を向上させる方法(例えば、特許文献2および特許文献3参照)などが知られている。
【0004】
しかし、これらの方法で得られる吸水性ポリマーの内部の空孔は、そのほとんどが粒子内部の独立空孔であることから、実質的なポリマー粒子の表面積があまり増大していないためか、吸水速度の向上が充分であるとはいえない。また、これらの方法において、多孔性を向上させるために、モノマーに内包される有機溶媒量を増加させると、O/W/Oエマルジョンが不安定となり、結果的に内部に空孔を有する粒子が得られない傾向となる。
【0005】
一方、連続空孔をもつ樹脂の製造法の1つとして、高内部相エマルジョン(High Internal Phase Emulsion)と呼ばれる、O/W比(W/O比)が高いエマルジョンを製造する技術を利用して吸水性ポリマー粒子を製造する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
しかし、この方法には、複数種の有機溶媒を使用する必要があり、また、低温で重合を行うことから、重合時間が長く、その結果、生産性が低いという欠点がある。また、この方法によって得られた粒子は嵩密度が0.05〜0.25(g/mL)と小さい。このような嵩密度の小さい多孔質吸水性ポリマーは、内部の空孔が大きすぎるためか、機械的強度が不十分であるため、ナプキンなどの吸収体を製造する際に粒子が破砕してしまうことから、衛材用途には適していない。
【特許文献1】特開平5−237378号公報
【特許文献2】特開昭62−106902号公報
【特許文献3】特開昭63−61005号公報
【特許文献4】特表2002−507975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、多数の連続空孔および適度な嵩密度を有し、吸水速度に優れた多孔質吸水性ポリマー粒子を効率よく製造しうる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を用いて吸水性ポリマー粒子を製造する方法であって、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に、第1界面活性剤の存在下、第1疎水性有機溶媒を内包させ、O/Wエマルジョンを得る工程、及び得られたO/Wエマルジョンを、第2界面活性剤を含有する第2疎水性有機溶媒に分散させてO/W/Oエマルジョンを得る工程を有し、第1界面活性剤としてポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体を用いることを特徴とする、嵩密度が0.30〜0.50g/mLである多孔質吸水性ポリマー粒子の製造法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造法によれば、多数の連続空孔および適度な嵩密度を有し、吸水速度に優れた多孔質吸水性ポリマー粒子を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の多孔質吸水性ポリマー粒子の製造法は、少なくとも次の2つの工程を有する。
【0011】
第1工程として、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に、第1界面活性剤の存在下、第1疎水性有機溶媒を内包させて、O/Wエマルジョンを調製する。
【0012】
次に、第2工程として、得られたO/Wエマルジョンを第2界面活性剤を含有する第2疎水性有機溶媒に分散させて、O/W/Oエマルジョンを調製する。
【0013】
本発明では、第1工程で第1界面活性剤として、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体が用いられている点に、大きな特徴がある。本発明では、このようにポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体が用いられているので、O/W/Oエマルジョンの重合時の安定性を向上させ、多数の連続空孔を形成させることができるという利点がある。
【0014】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体としては、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとが共重合したものであれば特に限定されないが、そのなかでも、一般式(I):
HO−(CHO)a−(CO)−(CHO)c−H (I)
(式中、a、bおよびcは、それぞれ重合度を示す)
で表されるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体が好ましい。なお、式(I)中、a及びcは、それぞれ、0以上の整数であり、かつ(a+c)が25〜2000の整数であり、bは5〜1000の整数であることが好ましい。
【0015】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体の質量平均分子量は、O/W/Oエマルジョンの重合時の安定性を向上させ、多数の連続空孔を形成させる観点から、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上であり、水溶性を高め、作業性を向上させる観点から、好ましくは100000以下、より好ましくは30000以下である。これらの観点から、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体の質量平均分子量は、好ましくは3000〜100000、より好ましくは5000〜30000である。
【0016】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体におけるポリオキシエチレンの含有量は、O/W/Oエマルジョンの状態で水溶性エチレン性不飽和単量体が重合する際に好適な乳化状態を維持し、粒子内部に連続空孔を形成しやすくする観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上であり、O/Wエマルジョンを安定化させる観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。これらの観点から、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体におけるポリオキシエチレンの含有量は、好ましくは40〜90質量%、より好ましくは45〜85質量%である。
【0017】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体は、工業的に容易に入手しうるものである。その代表例としては、旭電化工業(株)製、商品名「アデカプルロニック」シリーズ、バスフ(BASF)社製、商品名「PLURONIC」シリーズ、三洋化成工業(株)製、商品名「ニューポール」シリーズなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、これらのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
第1界面活性剤(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体)の量は、エチレン性不飽和単量体水溶液に疎水性有機溶媒を内包させやすくする観点から、エチレン性不飽和単量体水溶液100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、過剰量を添加しても、見あうだけの効果が得られず、かえって経済的でなくなる傾向があることから、エチレン性不飽和単量体水溶液100重量部に対して、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下である。これらの観点から、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック共重合体の量は、エチレン性不飽和単量体水溶液100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。
【0019】
水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸およびその金属塩、無水マレイン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその金属塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのノニオン性単量体;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有の不飽和単量体およびそれらの四級化物などが挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
アルカリ金属塩におけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられ、これらのなかでは、得られる吸水性ポリマーが吸水量に優れ、かつ経済的であることから、ナトリウムおよびカリウムが好ましい。
【0021】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」および/または「メタクリ」を意味する。
【0022】
好適な水溶性エチレン性不飽和単量体としては、工業的に入手が容易な点で、アクリル酸およびそのアルカリ金属塩、メタクリル酸およびそのアルカリ金属塩、アクリルアミドなどが挙げられる。
【0023】
水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いられる。水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液における単量体の濃度は、通常、好ましくは30質量%〜飽和濃度、より好ましくは35〜45質量%である。水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に用いられる水は、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水などが挙げられる。
【0024】
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に用いられる単量体が酸基を含む場合、その酸基を、アルカリ金属を含有する化合物などを用いて中和してもよい。この場合、酸基の中和度は、得られる吸水性ポリマーの浸透圧を高くし、吸水速度を高める一方で、安全性を考慮して余剰のアルカリ金属量を低減させる観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体の酸基の好ましくは10〜100モル%、より好ましくは50〜90モル%、さらに好ましくは60〜80モル%である。前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。これらの中では、ナトリウムおよびカリウムが好ましい。
【0025】
酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属を含有する化合物の水溶液を水溶性エチレン性不飽和単量体またはその水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。前記水溶液におけるアルカリ金属を含有する化合物の濃度は、特に限定されるものではないが、通常、20〜50質量%程度である。
【0026】
重合開始剤は、均一に分散させるために、あらかじめ水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に添加しておくことが好ましい。
【0027】
重合開始剤として、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2イミダゾリン−2−イル)プロパン)2塩酸塩などのアゾ系重合開始剤;過酸化水素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中では、工業的に入手が容易であるとともに保存安定性に優れていることから、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムが好ましい。
【0028】
重合開始剤の使用量は、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルあたり0.05〜10ミリモルであることが好ましい。
【0029】
また、得られる多孔質吸水性ポリマー粒子のゲル強度を高める観点から、2個以上の重合性不飽和基や2個以上の反応基を有する架橋剤を、内部架橋剤として用いることが好ましい。内部架橋剤は、均一に分散させるために、あらかじめ水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に添加しておくことが好ましい。
【0030】
内部架橋剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類;N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテルなどの2個以上のグリシジル基をもつエーテル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリンなどのハロエポキシ化合物などの反応性官能基を2個以上有する化合物が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
内部架橋剤の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合して得られるポリマーが、適度な架橋により充分なゲル強度と保水能を示すようにする観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルあたり、好ましくは30ミリモル以下、より好ましくは0.001〜10ミリモル、さらに好ましくは0.01〜1ミリモルである。
【0032】
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に内包させる第1疎水性有機溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系有機溶媒などが好ましい。これらのなかでは、工業的に入手が容易で品質が安定しており、比較的安価であることから、n−ヘキサン、n−ヘプタンおよびシクロヘキサンがより好ましい。
【0033】
第1疎水性有機溶媒の使用量は、得られる多孔質吸水性ポリマー粒子の空孔の数や大きさなどに大きく関係している。第1疎水性有機溶媒と水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の体積比〔第1疎水性有機溶媒の体積(mL)/水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液体積(mL)〕は、得られる多孔質吸水性ポリマー粒子が、粒子の表面から内部に至るまで連続空孔を形成することにより、吸水速度を高める観点から、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、また、乳化を安定化させることにより、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液が第1疎水性有機溶媒を十分に内包できるようにする観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下である。これらの観点から、第1疎水性有機溶媒と水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の体積比〔第1疎水性有機溶媒の体積(mL)/水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液体積(mL)〕は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.0〜3.0、さらに好ましくは1.5〜2.5である。
【0034】
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の25℃における粘度は、O/Wエマルジョンを安定化させることにより、得られる粒子の多孔質性を高める観点から、好ましくは500mPa・s以上、より好ましくは1000mPa・s以上であり、単量体水溶液の攪拌や混合などの操作性を高める観点から、好ましくは3000mPa・s以下、より好ましくは2000mPa・s以下である。これらの観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の25℃における粘度は、好ましくは500〜3000mPa・s、より好ましくは1000〜2000mPa・sである。
【0035】
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の粘度は、例えば、高分子増粘剤を用いて調整することができる。
【0036】
高分子増粘剤としては、特に限定がないが、その使用量が少なくても比較的高い粘性が得られることから、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、グルコマンナン、デキストリン、部分中和ポリアクリル酸などが好ましく用いられる。
【0037】
O/Wエマルジョンは、例えば、高分子増粘剤、重合開始剤、架橋剤などを含む水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に、第1界面活性剤を混合し、得られた混合物を攪拌しながら、その中に第1疎水性有機溶媒を徐々に添加することにより、調製することができる。
【0038】
O/Wエマルジョンを調製する際の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の液温は、O/Wエマルジョンの安定性の観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは10〜20℃である。
【0039】
なお、O/Wエマルジョンを調製する際には、攪拌装置などを使用してもよい。攪拌装置には、特に限定がなく、例えば、ホモミキサーなどの微細に乳化しうる装置であってもよく、あるいはパドル型、プロペラ型、スクリュー型などの一般的な攪拌翼であってもよい。いずれの攪拌装置においても、攪拌速度等を調節することにより、得られる粒子の空孔の数や大きさを適宜調整することができる。
【0040】
次に、得られたO/Wエマルジョンを、第2界面活性剤を含有する第2疎水性有機溶媒に分散させることにより、O/W/Oエマルジョンが得られる。
【0041】
第2疎水性有機溶媒は、O/Wエマルジョンの分散媒である。第2疎水性有機溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系有機溶媒が好ましい。これらの中では、工業的に入手が容易で品質が安定しており、比較的安価であることから、n−ヘキサン、n−ヘプタンおよびシクロヘキサンがより好ましい。
【0042】
なお、第1疎水性有機溶媒および第2疎水性有機溶媒は、それぞれ同一種類であってもよく、あるいは異なる種類であってもよいが、両者が同一種類であることが、粒子の乾燥工程で回収した溶媒を再利用することが容易であるという観点から好ましい。
【0043】
第2界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系界面活性剤;脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩などのアニオン系界面活性剤などが挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中では、安全性に優れていることから、ショ糖脂肪酸エステルが好ましい。
【0044】
なお、本明細書において、「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。
【0045】
第2界面活性剤の使用量は、O/W/Oエマルジョンの重合中の安定性を確保する観点から、エチレン性不飽和単量体水溶液100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上であり、過剰量を添加しても、見あうだけの効果が得られず、かえって経済的でなくなる傾向があることから、エチレン性不飽和単量体水溶液100重量部に対して、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。これらの観点から、第2界面活性剤の量は、エチレン性不飽和単量体水溶液100重量部に対して、好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは0.3〜1重量部である。
【0046】
O/W/Oエマルジョンを調製する方法としては、特に限定がないが、例えば、第2界面活性剤と、必要により高分子分散安定剤を含有させた第2疎水性有機溶媒中に、O/Wエマルジョンをチューブポンプなどの送液装置で送液し、攪拌しながら添加する方法などが挙げられる。攪拌の際に用いられる装置としては、特に限定がないが、例えば、フラスコ内で攪拌する際に用いるパドル型攪拌翼などを用いることができる。
【0047】
O/W/Oエマルジョンの重合反応を行う際の反応温度は、用いられる重合開始剤の種類などによって異なるので、一概には決定することができないが、通常、重合反応を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高める一方で、第1もしくは第2の有機溶媒が沸騰しないように重合反応を行う観点から、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。
【0048】
なお、O/W/Oエマルジョンを60℃以上で重合させる際には、重合時にO/W/Oエマルジョンの安定性を保つ観点から、高分子分散安定剤を用いることが好ましい。好適な高分子分散安定剤としては、マレイン酸変性ポリエチレンやアクリル酸変性ポリエチレンなどの酸変性ポリエチレンや、酸化ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは併用してもよい。
【0049】
高分子分散安定剤の量は、重合時のO/W/Oエマルジョンを十分に安定化させるとともに、過剰量を添加しても見あうだけの効果が得られず、かえって経済的でなくなる傾向があることから、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液100重量部に対して、好ましくは0.1〜3重量部、より好ましくは0.3〜1重量部である。
【0050】
なお、O/W/Oエマルジョンの重合反応時間は、特に限定されないが、通常、0.5〜3時間程度である。
【0051】
かくして多孔質吸水性ポリマー粒子が、通常、含水ゲル粒子の状態で得られるが、得られる吸水性ポリマー粒子の吸水速度およびゲル強度を高める観点から、後架橋反応を行うことが好ましい。
【0052】
後架橋反応の際に使用しうる後架橋剤としては、多孔質吸水性ポリマー粒子を構成している吸水性ポリマーの反応基と反応しうるものを用いることができる。
【0053】
後架橋剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、(ポリ)オキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテルなどの2個以上のグリシジル基をもつエーテル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α―メチルエピクロルヒドリンなどのハロエポキシ化合物などの反応性官能基を2個以上有する化合物が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0054】
後架橋剤の使用量は、吸水性ポリマーの含水率や処理温度によって異なるので、一概には決定することができないが、吸水性ポリマーの表面近傍の架橋密度を充分に高める観点から、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルあたり、好ましくは0.01ミリモル以上、より好ましくは0.1ミリモル以上であり、また、過剰量を添加しても見合う効果が得られず、かえって経済的でなくなる傾向があるため、好ましくは10ミリモル以下、より好ましくは4ミリモル以下である。
【0055】
後架橋剤の添加時期は、重合反応終了後であれば、いずれの時点で添加してもよいが、後架橋反応を充分に進行させ、吸水速度を高める観点から、吸水性ポリマーの含水率が10質量%以上である時点が好ましく、20質量%以上である時点がより好ましく、また、得られるポリマー粒子の保水能が低くなり過ぎないようにする観点から、吸水性ポリマーの含水率が80質量%以下である時点が好ましく、65質量%以下である時点がより好ましい。これらの観点から、後架橋剤の添加時期は、吸水性ポリマーの含水率が10〜80質量%である時点が好ましく、20〜65質量%である時点がより好ましい。
【0056】
なお、本発明における含水率とは、吸水性ポリマーの固形分に対して、含水ゲル(水を含んだ状態の吸水性ポリマー)に含まれている水分量の比率を示した数値であり、式:
〔含水率(質量%)〕
=〔(含水ゲル中の水分量)÷(吸水性ポリマーの固形分)〕×100
に基づいて、求めることができる。
【0057】
なお、含水ゲル中の水分量およびその固形分は、重合反応における単量体などの原料化合物の仕込み量と、脱水工程以降において除去された水分量とから、算出することができる。
【0058】
後架橋反応は、例えば、重合反応終了後の含水ゲルを、乾燥するなどして脱水し、所定の含水率に調整した後、後架橋剤を0.5〜50質量%の水やアルコールの溶液として添加することによって行うことができる。後架橋剤を添加した直後に乾燥させてもよいが、内温を50〜90℃で0.5〜6時間保持し、後架橋反応を促進させることがより好ましい。
【0059】
後架橋反応の終了後には、公知の方法で水や疎水性有機溶媒を留去することにより、多孔質吸水性ポリマー粒子を得ることができる。
【0060】
本発明の製造法によって得られた多孔質吸水性ポリマー粒子の嵩密度は、例えば、十分な機械的強度を有し、生理用ナプキンなどの吸収体の製造時に、多孔質吸水性ポリマー粒子が破砕するのを防止する観点から、0.30g/mL以上、好ましくは0.35g/mL以上であり、独立空孔の生成を抑制し、表面と連通した連続空孔を形成させることにより、吸水性ポリマーの実質的な表面積を大きくし、吸水速度を高める観点から、0.50g/mL以下、好ましくは、0.45g/mL以下である。これらの観点から、多孔質吸水性ポリマー粒子の嵩密度は、0.30〜0.50g/mL、好ましくは0.35〜0.45g/mLである。
【0061】
また、得られた多孔質吸水性ポリマー粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、粉体としての取扱い性を良好にするとともに、吸水性ポリマー粒子の好適な吸水速度を確保する観点から、通常、100〜400μmであることが好ましい。
【0062】
かくして得られた多孔質吸水性ポリマー粒子は、例えば、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、ペットシートなどに好適に使用しうるものである。
【実施例】
【0063】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
実施例1
(1)O/Wエマルジョンの調製
攪拌機、冷却管、滴下ロート、窒素ガス吹き込み用フッ素樹脂製チューブおよび温度計を備えた1000mL容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、80質量%アクリル酸92.0g(1.02モル)とイオン交換水8.02gを仕込み、内温が15〜20℃となるようにフラスコを外部から冷却しつつ、滴下ロートより30質量%水酸化ナトリウム102.2g(0.77モル)を攪拌しながら滴下して中和を行い、アクリル酸を中和度が75モル%となるように中和した。
【0065】
この中和したアクリル酸水溶液を室温(23±2℃)に保ち、増粘剤のヒドロキシエチルセルロース1.8gを投入し、攪拌下で溶解した。さらに、この水溶液に第1界面活性剤としてポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体〔旭電化(株)製、商品名:アデカプルロニックF−108、質量平均分子量:15500、ポリオキシエチレンの含有量:80質量%〕1.8gをイオン交換水30.0gに溶解させた溶液、過硫酸カリウム0.1g(0.37ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02g(0.11ミリモル)およびイオン交換水10.06gを加えて混合・溶解させ、単量体水溶液を調製した。この単量体水溶液の25℃における粘度は、1400mPa・sであった。
【0066】
次に、フラスコを外部から冷却しながら内温を15±2℃に保ち、パドル型攪拌翼を用いて回転数400rpmでこの単量体水溶液を攪拌しながら、n−ヘプタン266g(約400mL)をチューブポンプにて30mL/分の流量で投入し、n−ヘプタンを上記単量体水溶液に内包させたO/Wエマルジョンを調製した。
【0067】
(2)O/W/Oエマルジョンの調製
攪拌機、還流冷却管、窒素ガス吹き込み用フッ素樹脂製チューブ、O/Wエマルジョン投入用フッ素樹脂製チューブおよび温度計を備えた1000mL容の五ツ口円筒形丸底フラスコ内に、n−ヘプタン200g(約300mL)を注ぎ、第2界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ(株)製、商品名:S−370〕0.9gと、高分子分散安定剤として無水マレイン酸変性ポリエチレン〔三井化学(株)、商品名:HI−WAX1105A〕0.9gとを添加し、攪拌しながら80℃まで昇温し、溶解した後に60℃まで放冷した。攪拌機の回転数を600rpmとし、60℃になった時点でフラスコ系内の酸素を除去するために窒素ガスを50mL/分の流量で吹き込みながら、前記(1)で得られたO/Wエマルジョンをチューブポンプにて60mL/分の流量で滴下し、O/W/Oエマルジョンを調製した。
【0068】
(3)重合〜乾燥
前記(2)で得られたO/W/Oエマルジョン入りのフラスコを70℃の湯浴に浸漬し昇温させ、重合反応を1.5時間行った。その後、窒素ガスの通気を止めて120℃の油浴に切り換え、共沸蒸留により水のみを系外に除去し、脱水を行った。
【0069】
含水率が30質量%となるまで脱水した後、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.60g(0.53ミリモル)を添加し、内温を80℃に保ちつつ2時間反応させた。再び120℃の油浴にて加熱し、分散媒のn−ヘプタンおよび水を蒸留により除去して乾燥し、得られた粒子を目開きが850μmの篩に通して粗粒子を取り除き、平均粒子径が395μmの多孔質吸水性ポリマー粒子87gを得た。得られた多孔質吸水性ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を図1に示す。なお、図1において、拡大の尺度は、図1の下欄外に示されている。
【0070】
実施例2
実施例1において、第1界面活性剤として、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体〔旭電化(株)製、商品名:アデカプルロニックF−108〕の代わりに、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体〔旭電化(株)製、商品名:アデカプルロニックP−85、質量平均分子量:4600、ポリオキシエチレン含有量:50質量%〕1.8gを用い、また、O/Wエマルジョンを調製する際に、単量体水溶液をホモミキサーにて回転数800rpmで攪拌した以外は、実施例1と同様にして多孔質吸水性ポリマー粒子を調製した。得られた粒子を目開きが850μmの篩に通して平均粒子径310μmの多孔質吸水性ポリマー粒子83gを得た。
【0071】
実施例3
実施例1において、増粘剤のヒドロキシエチルセルロースの量を1.2gに変更し、O/Wエマルジョン調製時の攪拌機の回転数を1000rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質吸水性ポリマー粒子を調製した。なお、使用した単量体水溶液の25℃における粘度は600mPa・sであった。得られた粒子を目開きが850μmの篩に通して平均粒子径403μmの多孔質吸水性ポリマー粒子80gを得た。
【0072】
実施例4
実施例1において、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に内包させるヘプタン量を335g(約500mL)に変更した以外は、実施例1と同様にして多孔質吸水性ポリマー粒子を調製した。得られた粒子を目開きが850μmの篩に通して平均粒子径363μmの多孔質吸水性ポリマー粒子82gを得た。得られた多孔質吸水性ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を図2に示す。なお、図2において、拡大の尺度は、図2の下欄外に示されている。
【0073】
比較例1
実施例1において、第1界面活性剤として、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の代わりに、アルキルアリルポリエーテルアルコール〔和光純薬工業(株)製、登録商標:Triton X−405〕1.8gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、重合反応の際に、O/W/Oエマルジョンの不安定化が生じ、不定形粒子が得られた。得られた粒子を目開きが850μmの篩に通して平均粒子径337μmの不定形吸水性ポリマー粒子86gを得た。得られた不定形吸水性ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を図3に示す。なお、図3において、拡大の尺度は、図3の下欄外に示されている。
【0074】
比較例2
実施例1において、第1界面活性剤として、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の代わりに、ショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ(株)製、商品名:S−1670〕1.8gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、不定形粒子が得られた。得られた粒子を目開きが850μmの篩に通して平均粒子径420μmの不定形吸水性ポリマー粒子70gを得た。
【0075】
比較例3
実施例1において、第1界面活性剤として、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の代わりに、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル〔日本エマルジョン(株)製、商品名:EMALEX−705〕1.8gを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、中空の球状粒子が得られた。得られた球状粒子を目開きが850μmの篩に通して平均粒子径370μmの球状吸水性ポリマー粒子84gを得た。得られた球状吸水性ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を図4に示す。なお、図4において、拡大の尺度は、図4の下欄外に示されている。
【0076】
比較例4
実施例1において、第1界面活性剤としてポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の代わりに、部分ケン化ポリビニルアルコール〔日本合成化学工業(株)製、品番:GH−17〕1.8gを用い、内包させるn−ヘプタンの量を133g(約200mL)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、内部に独立空孔を持つ球状粒子が得られた。得られた球状粒子を目開きが850μmの篩に通して平均粒子径410μmの球状吸水性ポリマー粒子80gを得た。得られた球状吸水性ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を図5に示す。なお、図5において、拡大の尺度は、図5の下欄外に示されている。
【0077】
比較例5
100mL容の三角フラスコ内に、アクリル酸11.0gと30%水酸化ナトリウム水溶液15.2gとを冷却しながら混合することにより、アクリル酸を中和し、イオン交換水3.8gを加えて単量体水溶液を調製した。この単量体水溶液に、界面活性剤〔和光純薬工業(株)製、商品名:Triton X−405〕10gと部分中和ポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、品番:L−8〕の2%水溶液25gを混合し、均一な組成となるまで攪拌した。
【0078】
得られた単量体水溶液を1L容のビーカー内に移し、約15℃の温度に保ちつつ、トルエン260g(約300mL)をゆっくりと加えながら、ホモミキサーにて回転数6000rpmで攪拌し、O/Wエマルジョンを調製した。
【0079】
一方、攪拌機、還流冷却管、窒素吹き込み用フッ素樹脂製チューブ、O/Wエマルジョン投入用フッ素樹脂製チューブおよび温度計を備えた1000mL容の五ツ口円筒形丸底フラスコ内に、分散媒としてジクロロメタン584gを入れ、エチルセルロース〔日新化成(株)、グレード:STD型(45cps)〕12gを加えて回転数150rpmで攪拌しながら40℃で溶解させ、15分間程度窒素ガスを100mL/分の流速で吹き込んで系内の酸素を除去した。この分散媒を20℃まで冷却した後、回転数150rpmで攪拌しながら、前記で得られたO/Wエマルジョンをチューブポンプにて60mL/分の流速で滴下して分散させた。
【0080】
この分散液に窒素ガスを更に100mL/分の流速で10分間吹き込んだ後、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液0.5gおよび2%塩化鉄(III)六水和物水溶液0.5gを加えて回転数180rpmで攪拌しながら約23℃で6時間重合反応を行った。さらに、40℃の水浴で2時間加温した。
【0081】
得られた含水ゲルを分散液のままメタノール1200gに投入し、粒子を再沈澱させ、目開きが75μmの篩で濾別した。この粒子をアセトンによるソクスレー抽出を3時間行い、ついでメタノールによるソクスレー抽出を3時間行い精製した後、真空乾燥器を用いて50℃で2時間乾燥させ、平均粒子径208μmのサンプル11gを得た。得られた吸水性ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を図6に示す。なお、図6において、拡大の尺度は、図6の下欄外に示されている。
【0082】
次に、各実施例および各比較例で得られた吸水性ポリマー粒子の物性を以下の測定方法にしたがって調べた。その結果を表1に示す。
【0083】
(1)保水能
吸水性ポリマー粒子2.00gを綿袋(メンブロード60番、横10cm×縦20cm)中に量りとり、500mL容のビーカー中に入れた。綿袋内に生理食塩水(0.9%水酸化ナトリウム水溶液)500mLを一度に注ぎ込み、吸水性ポリマー粒子にママコが生じないように分散させた後、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、吸水性ポリマー粒子を十分に膨潤させた。
【0084】
次に、遠心力が167Gとなるように設定した脱水機〔国産遠心(株)製、品番:H−122〕を用いて、前記綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ポリマーを含んだ綿袋の質量(Wa)を測定した。また、綿袋に吸水性ポリマー粒子を入れずに同様の操作を行い、脱水後の綿袋のみの湿潤空質量(Wb)を測定し、式:
〔保水能(g/g)〕=〔Wa−Wb(g)〕÷〔吸水性ポリマー粒子の仕込み質量(g)〕
にしたがって、保水能を求めた。
【0085】
(2)吸水速度
100mL容のビーカー内に、生理食塩水50±0.01gを量りとり、25±0.2℃の温度の恒温水槽に1時間浸漬して恒温にした後、スターラーチップ(8mmφ×30mm)を投入し、マグネチックスターラー〔イウチ(Iuchi)社製、品番:HS−30D〕の上に配置した。その後、スターラーチップが回転数600rpmで回転するように調整し、さらに、スターラーチップの回転により生ずる渦の底部がスターラーチップの上部近くに位置するように調整した。
【0086】
次に、あらかじめ500〜300μmに分級しておいた吸水性ポリマー粒子2.0±0.002gを、ビーカー内の渦の中央部分とビーカーの側面との間に素早く投入し、投入した時点から渦が収束した時点までの時間(秒)を、ストップウォッチを用いて測定し、吸水速度とした。
【0087】
(3)嵩密度
吸水性ポリマー粒子の嵩密度は、JIS K−6720−2に記載の「かさ比重測定装置」を用いて測定した。吸水性ポリマー粒子約120mLを、ダンパーで底部を塞いだ前記装置の漏斗部分に入れ、ダンパーより38mm下に90mL容(内径40mmφ、円筒形状)の受器を設置した状態で、前記装置のダンパーを速やかに引き抜いて、吸水性ポリマー粒子を受器に落とした。
【0088】
次に、受器から盛り上がった吸水性ポリマー粒子をガラス棒で、受器の開口部に対して水平にすり落とした後、受器ごと重量W1(g)を測定した。別途、空状態の受器の重量W0(g)を測定しておき、重量W1(g)から重量W0(g)を引いた吸水性ポリマー粒子の重量を、受器の体積(V=90mL)で除した値S(g/mL)を求めた。値Sを求めるときの数式を以下に示す。
S(g/mL)=[W1−W0](g)/V(mL)
【0089】
測定した吸水性ポリマー粒子を回収し、前記と同様にして合計3回の値Sを測定し、その平均値を嵩密度とした。
【0090】
(4)平均粒子径
吸水性ポリマー粒子50gを秤量し、これをJIS Z8801−1982対応の8つの標準篩(上から順に、目開きが850μm、500μm、355μm、300μm、250μm、180μm、106μmの篩および底容器を順に積み重ねたもの)の一番上の篩に吸水性ポリマー粒子を入れ、ロータップ式篩振動機を用いて10分間振動させて篩い分けした後、篩ごとに秤量し、その結果に基づいて積算質量が50%となる粒子径を平均粒子径とし、式:
〔平均粒子径〕=[(50−A)/(D−A)]×(C−B)+B
〔式中、Aは粒度分布の粗い方から順次質量を積算し、積算質量が50質量%未満であり、かつ50質量%に最も近い点の積算値を求めたときの当該積算値(g)、Bは前記積算値を求めたときの目開き(μm)、Dは粒度分布の粗い方から順次質量を積算し、積算質量が50質量%以上であり、かつ50質量%に最も近い点の積算値を求めたときの積算値(g)、Cは前記積算値を求めたときの目開き(μm)を示す〕
に基づいて算出した。
【0091】
(5)粒子破砕率
あらかじめ500〜250μmに分級した吸水性ポリマー粒子0.30gを10cm×10cmの薬包紙2枚の間に均一に広げ、この薬包紙の上に重さ500gのローラーを5往復転がした後、薬包紙上の粒子を集め、目開きが250μmの篩で再度ふるい、その篩上に残った粒子の重量U(g)を計量し、式:
〔粒子破砕率(%)〕=(1−U/0.30)×100
に基づいて粒子破砕率を算出した。
【0092】
(6)単量体水溶液の粘度
下記の手順にしたがって、単量体水溶液の粘度を測定した。
単量体水溶液約200mLを200mL容トールビーカーに入れ、25℃±0.5℃の恒温槽にて1時間以上放置することにより、その温度を25℃±0.5℃の恒温にした。この単量体水溶液を、B型粘度計(BM型)にて、No.2のローターを用いて12rpmの回転速度にて5回粘度を測定し、その平均値を単量体水溶液の粘度とした。
【0093】
【表1】

【0094】
表1および図1〜6に示された結果から、各実施例で得られた多孔質吸水性ポリマー粒子は、いずれも、多数の連続空孔を有することが観察された。このことから、得られた多孔質吸水性ポリマー粒子は、吸水速度が速くなる傾向があることがわかる。
【0095】
一方、比較例5に示された結果から、多孔質吸水性ポリマーであっても、嵩密度が0.3g/mLよりも小さい場合には、粒子破砕率が高くなることから、粒子の強度が低下する傾向があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の製造法によって得られた多孔質吸水性ポリマー粒子は、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド、ペットシートなどに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】実施例1で得られた多孔質吸水性ポリマー粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2で得られた多孔質吸水性ポリマー粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】比較例1で得られた不定形吸水性ポリマー粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】比較例3で得られた球状吸水性ポリマー粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】比較例4で得られた球状吸水性ポリマー粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】比較例5で得られた吸水性ポリマー粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を用いて吸水性ポリマー粒子を製造する方法であって、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に、第1界面活性剤の存在下、第1疎水性有機溶媒を内包させ、O/Wエマルジョンを得る工程、及び得られたO/Wエマルジョンを、第2界面活性剤を含有する第2疎水性有機溶媒に分散させてO/W/Oエマルジョンを得る工程を有し、第1界面活性剤としてポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体を用いることを特徴とする嵩密度が0.30〜0.50g/mLである多孔質吸水性ポリマー粒子の製造法。
【請求項2】
第1界面活性剤が、質量平均分子量3000〜100000のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンのブロック共重合体である請求項1記載の製造法。
【請求項3】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンのブロック共重合体におけるポリオキシエチレンの含有量が40〜90質量%である請求項2記載の製造法。
【請求項4】
水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に高分子増粘剤を添加し、該水溶液の25℃における粘度を500〜3000mPa・sに調整する請求項1〜3いずれか記載の製造法。
【請求項5】
第1疎水性有機溶媒と水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液との体積比〔第1疎水性有機溶媒の体積(mL)/水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の体積(mL)〕が1.0以上である請求項1〜4いずれか記載の製造法。
【請求項6】
第1疎水性有機溶媒および第2疎水性有機溶媒が、それぞれ、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5いずれか記載の製造法。
【請求項7】
第1疎水性有機溶媒と第2疎水性有機溶媒とが同じ種類である請求項1〜6いずれか記載の製造法。
【請求項8】
第2界面活性剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1〜7いずれか記載の製造法。
【請求項9】
第2疎水性有機溶媒に、O/W/Oエマルジョンの高分子分散安定剤として、酸変性ポリエチレン、酸化ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種を添加する請求項1〜8いずれか記載の製造法。
【請求項10】
O/W/Oエマルジョンを60℃以上の温度に加熱して水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる請求項1〜9いずれか記載の多孔質吸水性ポリマー粒子の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−342306(P2006−342306A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171420(P2005−171420)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】