説明

多孔質板の切断集塵装置

【課題】ALC板の切断時に発生する切断粉の飛散、基台や集塵機の損傷を防止した切断集塵装置を提供する。
【解決手段】切断集塵装置は、切断粉回収箱18、鉄粉返し板19、第1の集塵フード20、第2の集塵フード22を有している。切断粉回収箱18は、移動台11の移動方向の先端に取り付けられている。鉄粉返し板19は、19の先端に取り付けられる。鉄粉返し板19は噴出した鉄粉を18の中に跳ね返すように構成される。第1の集塵フード20は、回転刃13に対して、移動台11の移動方向に離れて配置される。第2の集塵フード22は、第1の集塵フード20よりも移動台11の移動方向に離れて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質板を回転刃で切断する際に発生する切断粉を集塵する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場において生産及び加工された後で建築物の外壁部分に取り付けられる外壁材が開発されている。その中でも、軽量であるために施工し易い外壁材として、多孔質材(表面に凹凸と気泡とを有する素材で、例えば、軽量気泡コンクリート)が多く用いられている。以下の説明では、軽量気泡コンクリート板をALC板と呼ぶことにする。ALCはAutoclaved Light-Weight Concreteの略称である。
【0003】
図4は、ALC板1の斜視図である。ALC板1を製造する場合、一般にセメントや生石灰などの石灰質原料の粉末に、アルミ粉や添加物を加えて混錬したスラリーを、予め補強鉄筋2をセットした箱状の型枠に注入する。
【0004】
そして、所望の時間経過後に、硬化して生成された半可塑性体を型枠から取り出す。その後、半可塑性体を、ピアノ線などを用いて所望の厚さに切断してから、オートクレーブに装入して高温高圧で蒸気養生して板素材を製造する。その後、ALC板1は、建築物の使用に応じて、その長さや幅を切断してから建築現場に納入している。
【0005】
図5は、ALC板の切断集塵装置の正面図である。この切断集塵装置は、基台10、移動台11、丸鋸形状の回転刃12、集塵フード13、フレキシブルホース14,15、固定配管16、エア吸引能力を有する集塵機17を含んで構成される。移動台11は、下面に車輪が取り付けられ、ALC板1をその上面に載せて基台10上を移動可能なように構成される。
【0006】
回転刃12は、基台10に対して固定され、その回転軸は、ALC板1を載せた移動台11が図5の矢印で示す水平方向に移動して来た時に、ALC板1に接触し、その厚みを切断できるような高さに固定されている。集塵フード13は回転刃12の真上に固定され、切断粉を集塵する。集塵フード13と集塵機17に連結している固定配管16の間は、フレキシブルホース14,15で接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−268024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、従来の切断集塵装置では、ALC板1は移動しながら回転刃12と接触して切断される。この場合、通常、回転刃12の回転は右回転に設定される。すると、切断時に、ALC粉と補強鉄筋2が粉砕された鉄粉を含んだ切断粉が水平方向に飛散するので、作業者にとって非常に危険である。また、移動台11の進路上にある基台10部分には、鉄粉とALC粉が塵となって積もるため、移動台11の移動の妨げとなる。
【0009】
更に、切断時に飛散された鉄粉は高熱を帯びているために、基台10に損傷を与えるおそれがある。また、鉄粉を通常の集塵フードで集塵する場合においても、集塵機に損傷を与えるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、補強鉄筋を有する多孔質板の切断集塵装置において、基台上を移動可能であり、前記多孔質板が載置される移動台と、前記基台に対して固定され、前記移動台に載置されて移動中の前記多孔質板を切断する回転刃と、前記移動台の先端に取り付けられた切断粉回収箱と、前記切断粉回収箱の先端に取り付けられ、前記多孔質板の切断時に前記移動方向に噴出される鉄粉を前記切断粉回収箱の中に跳ね返す鉄粉返し板と、前記回転刃に対して、前記移動台の移動方向に離れて配置され、前記多孔質板の切断時に前記移動方向に噴出される多孔質粉を集塵する第1の集塵フードと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多孔質板の切断集塵装置によれば、多孔質板の切断時に発生する切断粉の飛散、基台や集塵機の損傷を防止することができる。また、本発明の多孔質板の切断機によれば、切断粉回収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態によるALC板の切断集塵装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態によるALC板の切断集塵装置の正面図である。
【図3】切断粉回収箱、鉄粉返し板の正面図である。
【図4】ALC板の斜視図である。
【図5】従来例によるALC板の切断集塵装置の正面図である。
【図6】切断粉の噴出方向を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1、図2は、ALC板1の切断集塵装置の正面図である。図1は、移動台11が図中の矢印で示す水平方向に移動してALC板1の切断が開始された直後の状態を示し、図2は、移動台11がさらに移動してALC板1の長さの途中まで切断が行われた状態を示している。
【0014】
本発明の切断集塵装置では、前述の従来例の切断集塵装置(図5)に、切断粉回収箱18、鉄粉返し板19、第1の集塵フード20、第2の集塵フード22が付け加えられている。
【0015】
切断粉回収箱18は、移動台11の移動方向の先端に取り付けられている。切断粉回収箱18の底面には、車輪18aが取り付けられているので、移動台11と一緒に、円滑に移動するようになっている。鉄粉返し板19は、切断粉回収箱18の先端に取り付けられる。
【0016】
図1に示すように、移動台11が矢印で示す水平方向に移動し、移動台11上のALC板1が回転刃12に接触して切断が進行していくと、切断粉は水平方向に50m/秒〜80m/秒の速度で噴出し、その後、重力と空気抵抗を受けて飛散する。切断粉はALC板1の主成分であるALC粉と、ALC板1の内部の補強鉄筋2が粉砕された鉄粉とを含んでおり、鉄粉の比重約8であり、ALC粉の比重は約0.5である。
【0017】
切断粉の噴出方向について更に詳しく説明すると、図6の(a)に示すように、ALC板1の切断開始直後では切断粉は垂直に近い方向に噴出するが、図6の(b)に示すように、切断の進行に伴い、切断粉の噴出方向は水平方向に近づいていき、図6(c)に示すように、回転刃12がALC板1の厚さを切断するようになると、以降は、切断粉は水平方向に噴出するようになる。
【0018】
鉄粉返し板19は、切断により噴出した鉄粉を切断粉回収箱18の中に跳ね返すように構成される。鉄粉返し板19は、具体的には図3に示すように構成されることが好ましい。即ち、鉄粉返し板19は、切断粉回収箱18の先端の側板18bの上端から斜め上方に延び出た傾斜板19aと、傾斜板19aの上端から水平に折り返された天井板19bから構成される。
【0019】
これにより、鉄粉50は、ALC板1の切断部から水平方向に飛び出し、先ずに傾斜板19aに当たって上方に跳ね返り、次に天井板19bに当たって跳ね返され、切断粉回収箱18の底に落下して回収される。鉄粉50は、回転刃12の下端から水平方向に飛び出すので、傾斜板19aは回転板12の下端から延びた水平線が傾斜板19aと交わる位置に設置される。切断粉回収箱18の中には、鉄粉だけでなく、一部のALC粉も落下してある程度は回収されることは言うまでもない。
【0020】
第1の集塵フード20は、回転刃12に対して、移動台11の移動方向に離れて配置される。第1の集塵フード20は、フレキシブルホース23を介して固定配管16に接続されている。図1に示すように、移動台11が矢印の水平方向に移動し、移動台11上のALC板1の切断開始直後の状態において、第1の集塵フード20の集塵口20aは、切断粉回収箱18の先端部上方に配置することが好ましい。
【0021】
前述のように、鉄粉は鉄粉返し板19に跳ね返されて切断粉回収箱18の中に落下するが、比較的細かく、軽いALC粉は、主として切断粉回収箱18の上方にある第1の集塵フード20により集塵される。この場合、鉄粉返し板19の天井板19bの上面と第1の集塵フード20の集塵口20aの端部との隙間を0〜5mmとすることにより、ALC粉の飛散が抑制され、集塵効率を高めることができる。このように、本発明の切断集塵装置は、ALC粉と鉄粉とをできるだけ分離して集塵するようにしたものである。
【0022】
第2の集塵フード22は、第1の集塵フード20よりも移動台11の移動方向に離れて配置される。第2の集塵フード22はフレキシブルホース24を介して固定配管16に接続されている。つまり、第1及び第2の集塵フード20,22は同じ集塵機17に接続されている。また、第2の集塵フード22は、基台10に沿って、移動可能な集塵フード台21上に取り付けられている。
【0023】
この第2の集塵フード22は、第1の集塵フード20で集塵できなかったALC粉を集塵するものである。この場合、第2の集塵フード22のフレキシブルホース24の端部に電磁弁25を設けて、ALC板1の切断の進行に合わせて、電磁弁25を開閉させることが好ましい。即ち、図1のようにALC板1の切断の開始直後では、切断粉の噴出速度が大きいので、ALC板1の切断部に近い第1の集塵フード20の集塵能力をできるだけ高める必要がある。そこで、第2の集塵フード22側の電磁弁25を閉じて第2の集塵フード22の集塵経路を封鎖することにより、第1の集塵フード20の集塵能力(エア吸引能力)を高めることができる。これは、第1及び第2の集塵フード20、22は一台の集塵機17に接続されているためである。なお、電磁弁25の代わりに、他の種類の開閉弁、例えば、機械的に開閉する弁を設けても良い。また、電磁弁25の設置場所は、第2の集塵フード22の集塵経路の適当な場所に設けることができる。
【0024】
その後、ALC板1の切断が更に進行すると、電磁弁25を開いて第1及び第2の集塵フード20、22の両方で切断粉の集塵を行う。
【0025】
また、切断粉の飛散防止を万全にするため、集塵フード台21の正面、背面、両側面の4面は、ゴムのれん等の切断粉遮蔽体で覆うことが好ましい。
【0026】
以上説明したように、本発明のALC板1の切断集塵装置によれば、切断粉の中の鉄粉については、鉄粉返し板19、切断粉回収箱18により集塵し、ALC粉については、主として第1の集塵フード20、又は第1及び第2の集塵フード22の両方により集塵するようにしたので、切断粉の飛散を防止して効率的に集塵を行うことができるとともに、特に鉄粉による基台10や集塵機17の損傷を防止することができる。そして、本発明の切断集塵装置によれば、95%という非常に高い切断粉回収率(切断粉の重量比)が達成された。
【符号の説明】
【0027】
1 ALC板 10 基台 11 移動台
12 回転刃 13 集塵フード13 14,15 フレキシブルホース
16 固定配管 17 集塵機 18 切断粉回収箱
19 鉄粉返し板19 19a 傾斜板 19b 天井板
20 第1の集塵フード 21 集塵フード台
22 第2の集塵フード 23,24 フレキシブルホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強鉄筋を有する多孔質板の切断集塵装置において、
基台上を移動可能であり、前記多孔質板が載置される移動台と、
前記基台に対して固定され、前記移動台に載置されて移動中の前記多孔質板を切断する回転刃と、
前記移動台の先端に取り付けられた切断粉回収箱と、
前記切断粉回収箱の先端に取り付けられ、前記多孔質板の切断時に前記移動方向に噴出される鉄粉を前記切断粉回収箱の中に跳ね返す鉄粉返し板と、
前記回転刃に対して、前記移動台の移動方向に離れて配置された第1の集塵フードと、を備えることを特徴とする多孔質板の切断集塵装置。
【請求項2】
前記鉄粉返し板は、前記切断粉回収箱から斜め上方に延び出た傾斜板と、前記傾斜板の上端から水平に折り返された天井板を備えることを特徴とする請求項1に記載の多孔質板の切断集塵装置。
【請求項3】
前記第1の集塵フードに対して、前記移動台の移動方向に離れて配置された第2の集塵フードと、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質板の切断集塵装置。
【請求項4】
前記第2の集塵フードの集塵経路に弁が設けられ、前記多孔質板の切断の開始直後では、前記弁を閉じて前記第1の集塵フードで集塵を行い、その後、前記弁を開いて前記第1及び第2の集塵フードの両方で集塵を行うことを特徴とする請求項3に記載の多孔質板の切断集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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