説明

多孔質金属発泡構造体およびその製造方法

【課題】多孔質金属の製造において、細孔形成剤を加熱除去により生じる、炉汚染、金属と細孔形成剤との反応による化合物形成等を回避する製法の提供。
【解決手段】チタン合金等の多孔質金属インプラントの製造において、液体抽出可能な塩化ナトリウム等の細孔形成剤を、細孔形成剤が可溶性である逆浸透水など液体の存在の下で、金属粉末と混合し、それによって、混合物を形成する工程と、混合物を圧縮成形して未焼結体を形成する工程と、未焼結体から塩化ナトリウム等の細孔形成剤を逆浸透水などにより溶媒抽出して金属骨格を作り、焼結する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔分野〕
本発明は、多孔質金属発泡構造体(porous metal foam structures)およびその製造方法に関する。
【0002】
〔背景〕
多孔質金属発泡構造体は、医療用インプラントとしての用途を包含する多くの用途を有する。そのような構造体の多孔性は、粉末としての金属を細孔形成剤(PFA)と混合し、次いで、その混合物を所望の形状にプレスして未焼結体(green body)を形成することによって、獲得することができる。細孔形成剤を除去した後、金属骨格(metal skeleton)を焼結して多孔質金属発泡構造体のための所望の特性を獲得することができる。
【0003】
未焼結体から細孔形成剤を除去する1つの方法は、細孔形成剤を「焼成する(burn out)」ことである。この方法は、様々な潜在的問題、例えば、炉が汚染されること、金属と細孔形成剤との間の反応によって生じる多孔質構造体の中に望ましくない金属化合物が形成されること、および、比較的大量のエネルギーが使用されること、を引き起こす恐れがある。また、このようにして作られた未焼結体に関連する幾つかの保管問題も存在する。これらの保管問題には、有毒ガスの臭いが形成されること(noxious odor formation)が包含される。
【0004】
したがって、多孔質金属発泡構造体を作り出す代替的方法が必要とされている。
【0005】
〔概要〕
本発明の1つの態様によると、液体抽出可能な(liquid-extractable)細孔形成剤(pore-forming agent)を、この細孔形成剤が溶解できる液体の存在の下で、金属粉末と混合し、それによって、圧縮成形されて未焼結体を形成する混合物を形成する工程を含む製造方法が提供される。次いで、未焼結体から細孔形成剤を溶解して金属骨格を作り出す。この金属骨格は、焼結されて、多孔質金属インプラント等の焼結金属発泡構造体(sintered metal foam structure)を形成することができる。本発明はまた、そのような方法によって作り出された多孔質金属インプラントおよび他の焼結発泡構造体も提供する。
【0006】
当業者は、添付の非縮尺図面を参照することによって、本発明の多くの目的および利点をさらに理解することができる。これらの非縮尺図面は、一例として提供され、本発明を限定するようには意図されていない。
【0007】
〔詳細な説明〕
本発明は、液体抽出可能な(liquid-extractable)細孔形成剤(pore-forming agent)(PFA)を、この細孔形成剤が溶解できる液体の存在の下で、金属粉末と混合する工程を含む方法を提供する。実行可能な細孔形成剤/液体の組合せには、有機液体と組み合わされて一対になった、有機液体に溶解できる細孔形成剤、または、非有機液体と組み合わされて一対になった、非有機液体に溶解できる細孔形成剤が包含されるものと解釈する。
【0008】
幾つかの実施形態において、液体は水性である。液体は、水を少なくとも約75重量%、より好ましくは水を少なくとも約90重量%、さらに好ましくは水を少なくとも約95重量%含有することが好ましい。典型的な液体には、水(例えば、逆浸透水、脱イオン水、蒸留水および/または脱酸素水)あるいは炭水化物水溶液(aqueous carbohydrate solution)が包含される。
【0009】
使用される液体の量は、金属粉末および細孔形成剤の性質と、使用される処理条件とによるが、圧縮前の混合物(pre-compaction mixture)100cm当り約450μL〜約1050μL、より好ましくは圧縮前の混合物100cm当り約600μL〜約750μLの使用量を使用することが望ましいことが分かった。
【0010】
本発明による細孔形成剤(PFAs)は、関心ある流体(fluid of interest)に可溶性である粒子材料である。典型的な細孔形成剤には、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カリウム、塩化ニッケル、塩化亜鉛、重炭酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素カリウム、亜リン酸水素カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、アルカリ土塁金属のハロゲン化物(alkaline earth metal halides)、(単糖類、二糖類または三糖類として分類されるスクロース、ラクトースが包含される)結晶性炭水化物、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリプロピレンワックス[例えば、PROPYLTEX(商標)という名称で、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown)所在の、マイクロ・パウダーズ社(Micro Powders, Inc.)から市販されているもの]、カルボキシルメチルセルロースナトリウム(SCMC)、ポリエチレングリコール−ポリプロピレン−ポリエチレングリコール共重合体(PEG−PPG−PEG)[例えば、PLURONIC(商標)という名称で、ドイツ国ルートウィヒスハーフェン(Ludwigshafen)所在の、BASF社から市販されているもの]、および、それらの組合せが包含される。
【0011】
細孔形成剤は、ある種の細孔径および細孔径分布を作り出すのに適した様々な粒度および粒度分布で存在することができる。幾つかの好ましい粒度範囲は、約200μm〜約600μm、約200μm〜約350μm、および、約350μm〜約550μmである。
【0012】
本発明の方法では、粉末冶金分野において知られている実質的にあらゆるタイプの金属粉末を使用することができる。好ましい金属粉末は、チタン、コバルト、クロム、ニッケル、マグネシウム、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、アルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、ステンレス鋼、または、それらの合金(例えば、Co−Cr合金)から形成される金属粉末である。1つの実施形態において、金属粉末は、チタンまたはチタン合金(例えば、Ti−6Al−4V)である。
【0013】
金属粉末はまた、様々な粒度および粒度分布で存在することができる。幾つかの好ましい粒度範囲は、約20μm〜約100μm、約25μm〜約50μm、および、約50μm〜約80μmである。
【0014】
金属粉末と細孔形成剤との割合が、製造されようとしている構造体の種類によって変わることを、当業者は認識するであろう。本発明の幾つかの実施形態において、[金属粉末]対[細孔形成剤]の比は、約40:60〜約10:90、好ましくは約25:75である。
【0015】
金属粉末、細孔形成剤および液体を混合した後、結果として得られた混合物は、圧縮成形されて、未焼結体を形成する。その圧縮成形工程は、当技術分野で知られている多くの技術のいずれによっても実施することができる。それらの技術には、一軸ダイアンドパンチ(uniaxial die and punch)、二軸ダイアンドパンチ(biaxial die and punch)、冷間静水圧プレスまたはゴム型擬似静水圧プレス(cold or rubber isostatic press)が包含される。本発明の幾つかの実施形態において、成形圧力は、約20ksi〜約60ksi、好ましくは約30ksi〜約45ksiである。未焼結体は、いったん形成されたら、切削加工(cutting)、フライス加工(milling)、旋削(turning)、穿孔(drilling)および/または面削り(facing)のような、当技術分野で知られている技術のいずれによっても、機械加工することができる。
【0016】
細孔形成剤を溶解することのできる液体のいずれを使用しても、細孔形成剤を未焼結体から除去し、このようにして、金属骨格を露呈させることができる。圧縮成形を行う前に金属粉末および細孔形成剤と混合される液体と同様に、この溶解性液体は、水性であることが好ましく、水(例えば、逆浸透水、脱イオン水、蒸留水および/または脱酸素水)または炭水化物水溶液であることがより好ましい。細孔形成剤を溶解するために使用される液体は、圧縮成形を行う前に金属粉末および細孔形成剤と混合される液体と同一であってもよく、または、その混合される液体と相違してもよい。例えば、各々の液体中の諸成分の化学的同一性(chemical identity)、および/または、それらの相対的比率は、同一であるか、または相違する。
【0017】
この溶解工程は、例えば、未焼結体が可溶性である液体が入っている浴の中に未焼結体を浸漬することによるか、または、未焼結体をその液体の流れと接触させることによって行うことができる。溶解工程で使用する液体の温度範囲は、液体の凝固点よりも高いが、液体の沸点よりも低く、好ましくは約50F(約10℃)〜約176F(約80℃)である。溶解に影響を及ぼすことが知られている幾つかの工程を実施することができる。例えば、浴溶液を循環させることができるか、または、浴溶液の一部を周期的に新たな溶液と交換することができる。
【0018】
細孔形成剤を除去して得られる金属骨格はまた、例えば、金属骨格の切削加工、フライス加工、旋削、穿孔および/または面削りを行うことによって機械加工することもできる。
【0019】
金属骨格は典型的には、焼結されて所望の特性を与えるであろう。適切なあらゆる焼結条件を考慮することができるが、チタンまたはTi−6Al−4V合金に対する焼結工程は典型的には、約2100F(約1148.4℃)〜約2700F(約1482.2℃)(好ましくは約2500F(約1371.1℃))の温度でおよび/または、約2時間〜約10時間の間(好ましくは約3時間〜約6時間の間)行われるであろう。
【0020】
本発明の方法は、例えば、多孔質表面を有する金属インプラントを製造するために使用することができる。次に、図1を参照すると、そのようなインプラントを製造するための幾つかの方法が図示されている。金属粉末と、細孔形成剤と、細孔形成剤が可溶性である液体と、を混合して、混合物を形成する。混合物は、(例えば、一軸圧縮、多軸圧縮または静水圧圧縮によって)成形金型(shaped mold)中で圧縮されて、未焼結体を形成する。金型は、インプラントの形状を決定し、したがって、通常、実質的な機械加工の必要性を回避するために、または、その必要性を少なくとも最小限に抑えるために、所望の形状であることが望ましい。細孔形成剤は、細孔形成剤が可溶性である液体と接触させることによって、未焼結体から溶解して、金属骨格を形成する。金属骨格は任意的に、機械加工することができ、および/または、乾燥して残留液体を除去することができる。金属骨格は焼結し、後で任意的に機械加工して、多孔質金属インプラントを形成する。当業者は、そのようなインプラントに適した形状と、インプラントが有すべき特性(例えば、適切な圧縮降伏強度(suitable compressive yield strength))とを認識している。第1の液体と第2の液体とは、同一の源から得られるように図1において図示されているが、それらの液体は同一である必要はない、ということ、および、それらの液体はそれぞれ、単に、細孔形成剤が可溶性である液体である、ということが分かっている。
【0021】
多孔質金属インプラントの表面は、粗面化することができる。粗面化方法には、グリットブラスト仕上げ(grit blasting)、エッチングまたはプラズマスパッタリング(plasma sputtering)の少なくともひとつが包含され、それらの方法は当技術分野で知られている。エッチングの好ましい方法は、米国特許出願第2004/0167633号明細書に記載のエッチング法である。この米国特許出願明細書の開示内容は全て、参照されることによって本明細書に組み入れられる。グリットブラスト仕上げの好ましい方法は、塩化ナトリウム(NaCl)のような水溶性グリットを使用して、インプラントに対してブラスト処理を行い、このようにして、衝突したグリットは、水溶液に溶解させることによって、細孔から除去することができる。
【0022】
幾つかの実施形態において、本発明は、金属インプラントまたは他のタイプの金属骨格であって、液体水銀を強制的に浸入させ、断面画像解析を行うことによって、体積で測定された、約60%〜約85%(好ましくは、約65%〜約75%)の多孔率(porosity)を有する金属インプラントまたは他のタイプの金属骨格を提供する。多孔率は、[金属製品]対[細孔形成剤]の比、細孔形成剤の大きさ、または、それらの組合せである場合があるということが分かっている。
【0023】
1つの実施形態において、好ましい純チタン骨格は、約65%の多孔率で、(標準引張り試験−ASTM−E8−99によって測定されて)少なくとも約35MPaの引張り強度、または、(3点曲げ試験−ASTM−E290−97aによって測定されて)少なくとも約90MPaの曲げ降伏強さ(flexural yield strength)、および/または、(単調圧縮試験(monotonic compression testing)−ASTM−E9−89aによって測定されて)少なくとも約65MPaの圧縮降伏強度(compressive yield strength)を有する骨格である。とりわけ好ましい純チタン骨格は、約65%の多孔率で、(ASTM−E8−99によって測定されて)少なくとも約40MPaの引張り強度、または、(ASTM−E290−97aによって測定されて)少なくとも約110MPaの曲げ降伏強さ、および/または、(ASTM−E9−89aによって測定されて)少なくとも約75MPaの圧縮降伏強度を有する骨格である。
【0024】
チタン合金は、より大きい強度を得るために使用することができることが分かっている。好ましいチタン合金骨格は、約65%の多孔率で、(ASTM−E8−99によって測定されて)少なくとも約60MPaの引張り強度、または、(ASTM−E290−97aによって測定されて)少なくとも約120MPaの曲げ降伏強さ、および/または、(ASTM−E9−89aによって測定されて)少なくとも約90MPaの圧縮降伏強度を有する骨格である。とりわけ好ましいチタン合金骨格は、約65%の多孔率で、(ASTM−E8−99によって測定されて)少なくとも約90MPaの引張り強度、または、(ASTM−E290−97aによって測定されて)少なくとも約180MPaの曲げ降伏強さ、および/または、(ASTM−E9−89aによって測定されて)少なくとも約110MPaの圧縮降伏強度を有する骨格である。
【0025】
理論に拘束されるつもりはないが、多孔率、金属粉末の粒度、および、焼結温度は、結果として得られる構造体の強度に寄与する重要因子であると思われる。
【0026】
〔実施例〕
本発明は、次の諸実施例にさらに記述されるであろう。それらの実施例は、限定的であるようには意図されていない。
【0027】
<実施例1>
市販の純チタン粉末[米国ニュージャージー州バーゲンフィールド(Bergenfield)に所在の、フェリー・マテリアルズ社(Phelly Materials, Inc.)、粒度:45〜75μm]と、細孔形成剤としての塩化ナトリウム[米国ニューハンプシャー州ハンプトン(Hampton)に所在の、フィッシャー・サイエンティフィック・インターナショナル社(Fischer Scientific International Inc.)、粒度:250〜425μm]とを、約25:75の[チタン]:[細孔形成剤]体積比で混合した。逆浸透水を、[チタン]:[細孔形成剤]混合物(Ti:PFA mixture)100cm当り約700μLに相当する量で添加した。その混合物を金型に入れ、次いで、22ksiの圧縮圧力(compaction pressure)で圧縮して未焼結体にした。この未焼結体は、塩化ナトリウムが溶解するまで水浴に置いた。結果として得られた金属骨格は、65℃で4時間の間乾燥させ、次いで、1204℃で2時間の間焼結した。焼結された金属発泡構造体を、図2〜図5に示す。これらの図は、複雑な形状の、高度に多孔質の金属発泡構造体を示している。
【0028】
<実施例2>
市販の純チタン粉末(粒度:45〜75μm)と、細孔形成剤としての塩化ナトリウム(粒度:250〜425μm)とを、約20:80の[チタン]:[細孔形成剤]体積比で混合した。逆浸透水を、[チタン]:[細孔形成剤]混合物100cm当り約700μLに相当する量で添加した。その混合物を金型に入れ、次いで、23.6ksiの圧縮圧力で圧縮して未焼結体にした。この未焼結体は、塩化ナトリウムが溶解するまで水浴に置いた。結果として得られた金属骨格は、先ず、実施例1におけるようにオーブンで乾燥させ、次いで、1371℃で3時間の間焼結した。焼結された金属発泡構造体を、図6〜図7に示す。
【0029】
<実施例3>
チタン粉末[32〜45μm(500〜350メッシュ)]と、塩化ナトリウム(425〜500μm)とを、約25:75の[チタン]:[細孔形成剤]体積比で混合した。逆浸透水を、[チタン]:[細孔形成剤]混合物100cm当り約700μLに相当する量で添加した。その混合物を金型に入れ、次いで、30ksiの圧縮圧力で圧縮して未焼結体にした。この未焼結体は、水浴に約12時間の間置いて、細孔形成剤を溶解させた。結果として得られた金属骨格は、1731℃で6時間の間焼結した。焼結された金属発泡構造体は、約65%の多孔率を有した。圧縮降伏強度および曲げ降伏強さは、それぞれ82MPaおよび180MPaであり、ASTM E9−89aおよびASTM E290−97aに従う標準圧縮試験および3点曲げ試験を行うことによって決定された。
【0030】
<実施例4>
チタン粉末[32〜45μm(500〜350メッシュ)]と、塩化ナトリウム(250〜300μm)とを、約25:75の[チタン]:[細孔形成剤]体積比で混合した。逆浸透水を、[チタン]:[細孔形成剤]混合物100cm当り約700μLに相当する量で添加した。その混合物を金型に入れ、次いで、45ksiの圧縮圧力で圧縮して未焼結体にした。この未焼結体は、水浴に約12時間の間置いて、細孔形成剤を溶解させた。結果として得られた金属骨格は、1371℃で6時間の間焼結した。焼結された金属発泡構造体は、約65%の多孔率を有した。圧縮降伏強度および曲げ降伏強さは、それぞれ77MPaおよび196MPaであり、実施例3に準拠し、上述のように決定された。
【0031】
前述の明細書における概念は、具体的な実施形態に関連して記述されてきた。多くの態様および実施形態は、上述されており、単に例示であり、限定的なものではない。当業者は、この明細書を読んだ後、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様および実施形態が可能であることを認識する。さらに、当業者は、特許請求の範囲に開示される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および変形を行うことができることを認識する。したがって、本明細書および図面は、制限的な意味というよりはむしろ例示的なものと見なされるべきであり、しかも、そのような変更は全て、本発明の範囲に含まれるように意図されている。
【0032】
利点、他の効果、および、課題に対する解決方法は、具体的な実施形態に関連して上述されてきた。しかし、それらの利益、利点、課題に対する解決方法、および、それらを生じさせることができるか、または、より顕著なものにすることのできるあらゆる特徴(feature(s))が、特許請求の範囲のいずれかの、もしくは特許請求の範囲の全ての、決定的に重要な特徴、必須の特徴、または、本質的な特徴であると解釈されるべきではない。
【0033】
幾つかの特徴(features)は、明確にされるように、別個の実施形態との関連で本明細書に記述されているが、単一の実施形態において組み合わせて提供されることも可能である。逆に、簡潔を旨として、単一の実施形態に関連して記述されている様々な特徴は、別個に、または、任意のサブコンビネーション(subcombination)で提供されることも可能である。さらに、範囲に関して記述される諸値に対する言及は、その範囲内のありとあらゆる値を包含する。
【0034】
〔実施の態様〕
(1)製造方法において、
液体抽出可能な細孔形成剤を、金属粉末、および、前記細孔形成剤が可溶性である第1の液体、と一緒に混合し、それによって、混合物を形成する工程と、
前記混合物を圧縮成形して未焼結体を形成する工程と、
前記細孔形成剤を、前記細孔形成剤が可溶性である第2の液体に溶解させ、それによって、金属骨格を作り出す工程と、
を含む、製造方法。
(2)実施態様1に記載の製造方法において、
前記第1の液体は水性である、製造方法。
(3)実施態様1に記載の製造方法において、
前記混合物の各100cm当たり、前記第1の液体約450μL〜約1050μLを、前記細孔形成剤および前記金属粉末と混合する、製造方法。
(4)実施態様1に記載の製造方法において、
前記混合物の各100cm当たり、前記第1の液体約600μL〜約750μLを、前記細孔形成剤および前記金属粉末と混合する、製造方法。
(5)実施態様に記載の製造方法において、
前記第1の液体は、逆浸透水、脱イオン水、蒸留水、脱酸素水、脱塩水または炭水化物水溶液である、製造方法。
(6)実施態様1に記載の製造方法において、
前記第1の液体は、水を少なくとも約75重量%含有する、製造方法。
【0035】
(7)実施態様1に記載の製造方法において、
前記細孔形成剤は、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カリウム、塩化ニッケル、塩化亜鉛、重炭酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素カリウム、亜リン酸水素カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、アルカリ土塁金属のハロゲン化物、結晶性炭水化物、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンワックス、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、ポリエチレングリコール−ポリプロピレン−ポリエチレングリコール共重合体(polyethyleglycol-polypropylene-polyethyleneglycol copolymer)(PEG−PPG−PEG)、または、それらの組合せである、製造方法。
(8)実施態様1に記載の製造方法において、
前記細孔形成剤は、約200μm〜約600μmの粒度を有する、製造方法。
(9)実施態様1に記載の製造方法において、
前記細孔形成剤は、約200μm〜約350μmの粒度を有する、製造方法。
(10)実施態様1に記載の製造方法において、
前記細孔形成剤は、約350μm〜約550μmの粒度を有する、製造方法。
【0036】
(11)実施態様1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、チタン、コバルト、クロム、ニッケル、マグネシウム、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、アルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、ステンレス鋼、または、それらの合金から形成される、製造方法。
(12)実施態様1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、チタンまたはチタン合金である、製造方法。
(13)実施態様1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、約20μm〜約100μmの粒度を有する、製造方法。
(14)実施態様1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、約25μm〜約50μmの粒度を有する、製造方法。
(15)実施態様1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、約50μm〜約80μmの粒度を有する、製造方法。
(16)実施態様1に記載の製造方法において、
前記第1の液体と前記第2の液体とは、同一である、製造方法。
(17)実施態様1に記載の製造方法において、
前記第1の液体と前記第2の液体とは、相違する、製造方法。
(18)実施態様1に記載の製造方法において、
前記第2の液体は水性である、製造方法。
(19)実施態様1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、前記細孔形成剤に対して、約40:60〜約10:90の体積比で存在する、製造方法。
(20)実施態様1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、前記細孔形成剤に対して、約25:75の体積比で存在する、製造方法。
(21)実施態様1に記載の製造方法において、
前記金属骨格を焼結して多孔質金属インプラントを形成する工程、
をさらに含み、
焼結温度は、約2100F(約1148.8℃)〜約2700F(約1482.2℃)の範囲である、製造方法。
【0037】
(22)金属インプラントにおいて、
少なくとも90MPaの曲げ降伏強さ、および、
少なくとも65MPaの圧縮降伏強度、
の少なくとも一方を有しており、
前記インプラントは、液体抽出可能な細孔形成剤と金属粉末との混合物から形成されており、かつ、少なくとも65%の多孔率を有している、金属インプラント。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の1つの実施形態による多孔質金属インプラントを製造する方法の概略図である。
【図2】焼結金属発泡構造体の画像である。
【図3】図2の焼結金属発泡構造体の画像の側面図である。
【図4】図2の焼結金属発泡構造体の画像の詳細図である。
【図5】図2の焼結金属発泡構造体の光学顕微鏡画像である。
【図6】焼結金属発泡構造体の、200倍での走査電子顕微鏡画像である。
【図7】焼結金属発泡構造体の、700倍での走査電子顕微鏡画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造方法において、
液体抽出可能な細孔形成剤を、金属粉末、および、前記細孔形成剤が可溶性である第1の液体と一緒に混合し、それによって、混合物を形成する工程と、
前記混合物を圧縮成形して未焼結体を形成する工程と、
前記細孔形成剤を、前記細孔形成剤が可溶性である第2の液体に溶解させ、それによって、金属骨格を作り出す工程と、
を含む、製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
前記第1の液体は水性である、製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法において、
前記混合物の各100cm当たり、前記第1の液体約450μL〜約1050μLを、前記細孔形成剤および前記金属粉末と混合する、製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法において、
前記混合物の各100cm当たり、前記第1の液体約600μL〜約750μLを、前記細孔形成剤および前記金属粉末と混合する、製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法において、
前記第1の液体は、逆浸透水、脱イオン水、蒸留水、脱酸素水、脱塩水または炭水化物水溶液である、製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法において、
前記第1の液体は、水を少なくとも約75重量%含有する、製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法において、
前記細孔形成剤は、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カリウム、塩化ニッケル、塩化亜鉛、重炭酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素カリウム、亜リン酸水素カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、アルカリ土塁金属のハロゲン化物、結晶性炭水化物、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンワックス、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、ポリエチレングリコール−ポリプロピレン−ポリエチレングリコール共重合体(PEG−PPG−PEG)、または、それらの組合せである、製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の製造方法において、
前記細孔形成剤は、約200μm〜約600μmの粒度を有する、製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の製造方法において、
前記細孔形成剤は、約200μm〜約350μmの粒度を有する、製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の製造方法において、
前記細孔形成剤は、約350μm〜約550μmの粒度を有する、製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、チタン、コバルト、クロム、ニッケル、マグネシウム、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、アルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、ステンレス鋼、または、それらの合金から形成される、製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、チタンまたはチタン合金である、製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、約20μm〜約100μmの粒度を有する、製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、約25μm〜約50μmの粒度を有する、製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、約50μm〜約80μmの粒度を有する、製造方法。
【請求項16】
請求項1に記載の製造方法において、
前記第1の液体と前記第2の液体とは、同一である、製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載の製造方法において、
前記第1の液体と前記第2の液体とは、相違する、製造方法。
【請求項18】
請求項1に記載の製造方法において、
前記第2の液体は水性である、製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、前記細孔形成剤に対して、約40:60〜約10:90の体積比で存在する、製造方法。
【請求項20】
請求項1に記載の製造方法において、
前記金属粉末は、前記細孔形成剤に対して、約25:75の体積比で存在する、製造方法。
【請求項21】
請求項1に記載の製造方法において、
前記金属骨格を焼結して多孔質金属インプラントを形成する工程、
をさらに含み、
焼結温度は、約2100F(約1148.8℃)〜約2700F(約1482.2℃)の範囲である、製造方法。
【請求項22】
金属インプラントにおいて、
少なくとも90MPaの曲げ降伏強さ、および、
少なくとも65MPaの圧縮降伏強度、
の少なくとも一方を有しており、
前記インプラントは、液体抽出可能な細孔形成剤と金属粉末との混合物から形成されており、かつ、少なくとも65%の多孔率を有している、金属インプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−274402(P2008−274402A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−38465(P2008−38465)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】