説明

多孔長尺金属箔及びその製造方法

【課題】多数の微細孔が形成されているとともに、折れ皺、変形、歪みがないロール状に巻回された厚みの薄い多孔長尺金属箔及びその製造方法を提供する。
【解決手段】まず、極薄の長尺の銅箔Aの両面に一方がレジスト層3aとなり、他方が補強層3bとなるドライフィルムレジストを積層して、長尺の積層銅箔を得た後、この積層銅箔を利用して露光工程、現像工程、エッチング工程、残存レジスト層及び補強層除去工程を実施して、残存レジスト膜及び補強層除去工程経て得られた多孔長尺金属箔Aを直接ロール状に巻き取ることによって旋回型コンデンサの電極として好適な500m以上の長尺の多孔長尺金属箔Aを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンデンサの電極材料として用いられる多孔長尺金属箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフラや自動車の回生電源として大電流、超急充放電特性、半永久的な寿命等の優位性からコンデンサ(キャパシタ)が注目されている。
超瞬時電力供給用途のコンデンサの場合、電極に瞬時充放電電力を高める工夫が必要で、電極自体の内部抵抗低減と大容量化を可能にする要件を満たす事が求められている。
【0003】
また、上記コンデンサとして、陰極となる長尺の金属箔と、陽極となる長尺の金属箔との間に誘電体膜を交互に重ねて巻き込んだ旋回型コンデンサがある(特許文献1,2参照)。
かかるコンデンサを大型化することなく軽量で容量の大きいものとする方法としては、以下のような方法が挙げられる。
(1)電極材料として電気伝導性のよいものを用いる。
(2)陰極及び陽極として幅広でシームレスのものを用いる。
(3)金属箔としてできるだけ薄いものを用いる。
(4)電極表面積を増やすため、金属箔に多数の孔を設ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−121317号公報
【特許文献2】特開平2−137211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記(1)の条件を満足するには、従来と同様のアルミニウム箔や銅箔を用いればよい。また、(2)の条件を満足しようとする場合、ロールツーロールで市販の金属箔に多数の孔を穿孔するようにすればよい。
しかし、(3)のように金属箔を極薄のものにした場合、(4)の条件を満足しようとすると、ロールツーロールで機械的に穿孔する方法では、バリの問題や表面傷などの問題がある。
【0006】
そこで、穿孔には、一般的に化学的エッチング法が用いられるが、箔の厚さを極薄のものにした場合、化学的エッチング法においても、誘電体層の信頼性を損なう折れ皺、変形、歪みが発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、多数の微細孔が形成されているとともに、折れ皺、変形、歪みがないロール状に巻回された厚みの薄い多孔長尺金属箔及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる多孔長尺金属箔の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記す)は、一方の面から他方の面まで貫通する多数の微細孔がほぼ全長にわたって穿設された多孔長尺金属箔の製造方法であって、長尺の金属箔の一方の面にドライフィルムレジストが接着または圧着されたレジスト層を有し、前記金属箔の他方の面に化学的溶解剥離型補強フィルムが接着または圧着された補強層を備える長尺の積層金属箔を、前記積層金属箔の長手方向の一側から他側に向かって露光装置に送り込み、前記レジスト層を所定幅ごとに露光して前記微細孔の繰り返しパターンをつぎつぎに焼き付ける露光工程と、この露光工程で露光された露光処理済み部分を長手方向の一側から他側に向かって現像装置に送り込み、レジスト層の微細孔形成用の易溶解部を現像液で溶解除去する現像工程と、前記積層金属箔の現像済み部分を積層金属箔の長手方向の一側から他側に向かってエッチング装置に送り込み、金属箔の露出部分をエッチングして微細孔を形成するエッチング工程と、前記積層金属箔のエッチング済み部分を積層金属箔の長手方向の一側から他側に向かって剥離装置に送り込み、残存レジスト層及び補強層を剥離液に曝して剥離除去する残存レジスト層及び補強層除去工程とを備え、残存レジスト層及び補強層除去工程経て得られた多孔長尺金属箔を直接ロール状に巻き取ることを特徴としている。
【0009】
本発明の製造方法は、特に限定されないが、露光工程において、易溶解部の中央に直径より小径の、現像液による非除去部を設けるとともに、エッチング工程において、積層金属箔のレジスト層側を下側にしてエッチング装置内に通し、エッチング装置内で積層金属箔の下側からエッチング液をスプレーしてエッチングするようにしてもよい。
すなわち、上記のようにすれば、微細孔が下側の面から上側の面に向かって徐々に縮径している、断面すり鉢状に形成される。したがって、径大側を対極に向けるようにすれば、電極面積をより大きなものとすることとができる。
【0010】
本発明の製造方法において、積層金属箔は、予め形成された物を用いるようにしても構わないが、ロール状に巻回された長尺の金属箔の一端を引き出しながら金属箔の一方の面にドライフィルムレジストを接着または圧着してレジスト層を形成するとともに、他方の面に化学溶解性補強フィルムを接着または圧着して補強層を形成する長尺の積層金属箔形成工程をまず実施するようにしても構わない。
金属箔としては、特に限定されず、例えば、銅箔、銀箔、アルミニウム箔等が挙げられるが、高電気伝導率、耐腐食性、コスト面で優れていることから銅箔が好ましい。
【0011】
本発明の製造方法で用いられるドライフィルムレジスト(感光性フィルム)は、ネガ型及びポジ型のいずれでも構わず、一般にプリント配線基板の製造に用いられる市販のものが用いられるが、ドライフィルムレジストの特性として、剥離の際に粉々にならず、まとまって剥がれるアルカリ溶解タイプのドライフィルムレジスト(例えば、ニチゴー・モートン(株)製の商品名102J30、日立化成商事(株)製の商品名H9030、PH1033、RY3310、旭化成(株)製の商品名AQ4038、MVA506などの市販品を用いることができる)が好ましい。
本発明の製造方法の補強層となる化学的溶解剥離型補強フィルムとしては、剥離液によって少なくとも金属箔との界面が化学溶解して剥離除去することができれば、特に限定されず、感光樹脂でなくても構わないし、上記ドライフィルムレジストを補強層の化学的溶解剥離型補強フィルムとしても用いることができる。
【0012】
上記露光工程において用いられるフォトマスクとしては、樹脂フィルムやガラス板が用いられるが、露光精度を考慮すると、ガラス板が好ましい。
また、露光工程の光源としては、ドライフィルムレジストを良好に感光させることができれば、特に限定されないが、仕上がり精度を向上させるために、平行光線となるように照射できることが好ましい。
【0013】
現像工程で用いられる現像液としては、除去部を精度よく溶解除去できれば、特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム等のアルカリの希薄溶液(アルカリ濃度0.1〜5質量%程度)が挙げられる。
現像工程において、上記現像液は、下方からスプレー噴霧することが好ましい。
また、現像工程では、通常、現像処理完了後、現像液を洗浄除去したのち、乾燥を行う。乾燥はエアーナイフ等で行うようにすればよい。
【0014】
エッチング工程で用いられるエッチング液としては、金属箔を精度よくエッチングできれば、特に限定されないが、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、銅アンモニア錯体溶液等が挙げられる。
エッチング工程において、上記エッチング液は、下方からスプレー噴霧することが好ましい。
【0015】
残存レジスト層及び補強層除去工程で用いられる剥離液としては、特に限定されないが、例えば、上記現像工程で用いられるアルカリ溶液の高濃度なものが挙げられる。市販のドライフィルム専用の剥離用薬液を用いても構わない。
残存レジスト層及び補強層除去工程において、剥離方式は、浸漬式、スプレー式のいずれでも構わないが、スプレー式が好ましい。
また、残存レジスト層及び補強層除去工程では、通常、剥離完了後、剥離液を洗浄除去したのち、乾燥を行う。乾燥はエアーナイフ等で行うようにすればよい。
【0016】
上記本発明の製造方法で得られる多孔長尺金属箔は、特に限定されないが、例えば、旋回型(巻回型)のコンデンサ、電解コンデンサ、リチウムイオンキャパシタ、燃料電池などの電極材料として好適に用いられる。
上記電極材料とは、陰極、正極だけでなく、例えば、集電体として用いられるものを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる多孔長尺金属箔の製造方法は、上記のように、長尺の金属箔の一方の面にドライフィルムレジストが接着または圧着されたレジスト層を有し、前記金属箔の他方の面に化学的溶解剥離型補強フィルムが接着または圧着された補強層を備える長尺の積層金属箔を、前記積層金属箔の長手方向の一側から他側に向かって露光装置に送り込み、前記レジスト層を所定幅ごとに露光して前記微細孔の繰り返しパターンをつぎつぎに焼き付ける露光工程と、この露光工程で露光された露光処理済み部分を長手方向の一側から他側に向かって現像装置に送り込み、レジスト層の微細孔形成用の易溶解部を現像液で溶解除去する現像工程と、前記積層金属箔の現像済み部分を積層金属箔の長手方向の一側から他側に向かってエッチング装置に送り込み、金属箔の露出部分をエッチングして微細孔を形成するエッチング工程と、前記積層金属箔のエッチング済み部分を積層金属箔の長手方向の一側から他側に向かって剥離装置に送り込み、残存レジスト層及び補強層を剥離液に曝して剥離除去する残存レジスト層及び補強層除去工程とを備え、残存レジスト層及び補強層除去工程経て得られた多孔長尺金属箔を直接ロール状に巻き取るようにしたので、多数の微細孔が穿設された多孔長尺金属箔を、厚みが薄い金属箔を用いても、折れ皺、変形、歪みが発生することなく生産性よく製造することができる。
そして、厚みが薄い金属箔を用いて得られた多孔長尺金属箔は、例えば、旋回型のコンデンサの電極として好適に用いられる。
すなわち、金属箔の厚みを薄くすることで、コンデンサを大型化することなく軽量で容量の大きいものとすることができるとともに、折れ皺、変形、歪みがないので、誘電体層の信頼性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる多孔長尺銅箔の1つの実施の形態をあらわす斜視図である。
【図2】図1の銅箔の拡大断面図である。
【図3】図1の多孔長尺銅箔の製造方法における積層金属箔形成工程を模式的に説明する図である。
【図4】図1の多孔長尺銅箔の製造方法における露光工程を模式的に説明する図である。
【図5】露光工程で用いるフォトマスクの平面図である。
【図6】図1の多孔長尺銅箔の製造方法における現像工程を模式的に説明する図である。
【図7】現像工程における現像方法を説明する図である。
【図8】図1の多孔長尺銅箔の製造方法におけるエッチング工程以降の工程を模式的に説明する図である。
【図9】エッチング工程におけるエッチング方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1及び図2は、本発明にかかる多孔長尺金属箔の一つの実施の形態である多孔長尺銅箔をあらわしている。
【0020】
図1に示すように、この多孔長尺銅箔Aは、ロール状に巻回されていて、電解銅箔1の厚み方向の一方の面から他方の面に貫通する多数の微細孔2がほぼ全体に穿設されている。
【0021】
つぎに、上記多孔長尺銅箔Aの製造方法の1例を、図3〜図9を用いて工程順に説明する。
【0022】
(1)積層金属箔形成工程
図3に示すように、長尺の電解銅箔1が巻回された電解銅箔原料ロールから電解銅箔1の一端を引き出し、積層金属箔形成装置に通し、電解銅箔1の両面にドライフィルムレジスト(例えば、ニチゴー・モートン(株)製商品名102J30)3を熱圧着して、電解銅箔1の一方の面にドライフィルムレジスト3から形成されたレジスト層3aが積層され、他方の面に同じドライフィルムレジスト3からなる補強層3bが積層された積層金属箔としての積層銅箔Bにして巻取り機でロール状に巻取る。
すなわち、積層金属箔形成装置内では、電解銅箔1とドライフィルムレジスト3,3との間に空気がかみ込まないようにしてドライフィルムレジスト3,3を電解銅箔1に添わせ、上下にローラーR1,R2によって熱圧着するようになっている。
上記ローラーR1,R2は、特に限定されないが、フッ素ゴム製ローラー、シリコーンゴム製ローラーが好適に用いられ、中でも、熱ローラーの平行をだすためにフッ素ゴム(例えば、デュポン社製の商品名バイトン)製ローラーを用いることがより好ましい。
なお、特に限定されないが、電解銅箔1を上記積層金属箔形成装置に通す前工程として、電解銅箔1の表裏面を洗浄液によって洗浄し、清浄化しておくことが好ましい。洗浄液としては、特に限定されないが、例えば、純水が用いられる。
また、積層金属箔形成工程においては、巻き始め時の破れや電解銅箔1のロスがないように、積層金属箔形成装置内にPET(ポリエチレンテレフタレート)などで形成されたダミーフィルムを通しておく。
そして、このダミーフィルムの巻取り機側の端部を巻取り機の芯に巻きつけておき、他端を電解銅箔原料ロールから引き出された電解銅箔1の引き出し端部に少し重ね合わせた状態で接合する。なお、接合は、重なり部分を両面粘着テープで接着するとともに、重なり部分の周縁にさらに粘着テープを貼り付けるなどして、ダミーフィルムと電解銅箔1との間にエッチンング工程においてエッチング液が入り込まないようにシールした状態にしておくことが好ましい。
電解銅箔1は、特に限定されないが、旋回型コンデンサの電極として用いる場合、例えば、長さ500m、厚さ15μm、幅350mmが用いられる。
また、一本の電解銅箔原料ロールの終端(ロールの芯側)まで、電解銅箔1の両面にドライフィルムレジスト3が積層されると、電解銅箔1の終端に上記と同様にしてダミーフィルムの始端を接続し、さらに、接続されたダミーフィルムの終端に新しい電解銅箔原料ロールから電解銅箔1の一端を引き出して接続し、連続して積層銅箔Bを先の積層銅箔B上に巻き込むようにしても構わない。
【0023】
(2)露光工程
図4に示すように、上記積層金属箔形成工程で得られたロール状の積層銅箔Bの始端に接続されたダミーフィルム(図示せず)を露光装置4内を通し、露光装置4の出口側に設けた巻取り機(図示せず)の芯に巻き付ける。
そして、上記巻取り機による積層銅箔Bの巻取り動作及び停止動作を間欠的に繰り返しながら、積層銅箔Bを巻取り側に巻き取っていく。
なお、上記一回の巻取り動作時間は、積層銅箔Bが露光装置4内に設けられた図5に示すフォトマスク41のほぼ露光区域の幅(積層銅箔Bの長手方向の寸法)分巻き取られる時間に設定されている。一方、一回の停止動作時間は、一回の露光処理時間以上に設定されている、
露光装置4は、一回の停止動作時間内に露光装置4内でフォトマスク41に対応するレジスト層3aをフォトマスク41の露光パターンに露光させるように設定されている。
露光処理は、フォトマスク41が、レジスト層3aの表面に密着するように内部を所定時間(3秒〜8秒、好ましくは6秒)、真空状態(真空圧は85kPa以下、82kPa以下が好ましい)にして行うとともに、レジスト層3aにフォトマスク41越しに平行光線(波長及び光量は、レジスト層3aに用いられるドライフィルムの種類に応じて適宜決定される)が照射される。
また、フォトマスクフォトマスク41は、ガラス板からなり、図5に示すように、円形をした多数のマスク部41aと、このマスク部41aを囲むように設けられた大光透過部41bと、各マスク部41aの中央に設けられた小光透過部41cとを備えている。小光透過部41cの直径は、特に限定されないが、50μm程度が好ましい。
すなわち、露光工程では、巻取り動作及び停止動作を繰り返し、かつ停止動作時に露光処理を行い、積層銅箔Bをレジスト層3aが、中央に島状の小硬化部33を有し、大硬化部32に囲まれた円形の易溶解部となる未硬化部31を多数備えた露光済み積層銅箔Cとして巻取り機でロール状に巻き取る。
【0024】
(3)現像工程
図6に示すように、上記露光工程で得られたロール状の露光済み積層銅箔Cの始端に接続されたダミーフィルム(図示せず)を、露光済み積層銅箔Cのレジスト層3a側が現像装置5内で下側を向くように現像装置5内を通し、現像装置5の出口側に設けた巻取り機(図示せず)のロール芯に巻き付ける。
そして、一定速度(現像装置5の長さ、レジスト層3aに用いるドライフィルムレジストの種類、現像液の種類等処理条件によってことなるが、例えば、3〜3.5m/min)
で巻き取りながら、現像装置5内で、図7に示すように、レジスト層3aに下方からスプレー(スプレー圧、例えば、0.07〜0.09MPa)51によって現像処理液(例えば、0.1〜5質量%の炭酸ナトリウム)52を噴霧し、レジスト層3aを溶解除去する。
すなわち、現像工程では、未硬化部31を溶解除去することによって、図6に示す非エッチング部である中央に島状の小硬化部33を有し、大硬化部32に囲まれた円筒状の電解銅箔1に達する多数の透孔34がレジスト層3aに形成された現像済み積層銅箔Dにして巻取り機でロール状に巻き取る。
なお、図示していないが、ドライフィルムレジストがベースフィルム層を備えている場合は、露光済み積層銅箔Cが現像装置5に入る直前でレジスト層3a表面からベースフィルム層を構成するフィルムを剥離する。
【0025】
(4)エッチング工程
図8に示すように、上記現像工程で得られたロール状の現像済み積層銅箔Dの始端に接続されたダミーフィルム(図示せず)を、現像済み積層銅箔Dのレジスト層3a側が最終処理装置内で下側を向くように最終処理装置内を通し、最終処理装置の出口側に設けた巻取り機(図示せず)のロール芯に巻き付ける。
なお、最終処理装置は、図8に示すように、エッチング部6と、残存レジスト層及び補強層除去部7とを一連に備えている。
エッチング部6は、エッチング装置6aと、第1洗浄乾燥装置6bとを備えている。残存レジスト層及び補強層除去部7は、残存レジスト層及び補強層除去装置7aと、第2洗浄乾燥装置7bとを備えている。
そして、エッチング工程では、図9に示すように、エッチング装置6a内でレジスト層3aに下方からスプレー(スプレー圧、例えば、0.05〜0.07MPa)61によってエッチング液(例えば、塩化第2銅溶液)62を噴霧する。
噴霧されたエッチング液は、透孔34に入り込み、電解銅箔1の透孔34部分に臨む部分をエッチングする。
透孔34の中央に小硬化部33が残っているので、このエッチングによって電解銅箔1に図2に示すようなすり鉢状の微細孔2が拡径部側を下側にして形成される。
続いて、エッチング工程では、微細孔2が形成されたのち、図示していないが、第1洗浄乾燥装置6b内で洗浄乾燥される。
【0026】
(5)残存レジスト層及び補強層除去工程
残存レジスト層及び補強層除去工程は、第1洗浄乾燥装置6bから巻取り側に巻き取られたエッチング済み部が、まず、残存レジスト層及び補強層除去装置7a内に入り、図示していないが、残存レジスト層及び補強層除去装置7a内で上下からスプレー(スプレー圧、例えば、0.08〜0.12MPa)から水酸化ナトリウムを主成分とする剥離液を噴霧し、残存レジスト層(大硬化部32及び小硬化部33)と、補強層3bとを剥離除去する。
そして、第2水洗乾燥装置7b内で残存レジスト層(大硬化部32及び小硬化部33)及び補強層3bが除去された電解銅箔1が洗浄乾燥される。
続いて、乾燥されて清浄化されて第2水洗乾燥装置7bからでて微細孔2が形成された多孔長尺銅箔Aが折れ皺無くロール状に巻き取られて製品化される。
【0027】
この製造方法は、上記のように、まず、ロール状に巻回された長尺銅箔の始端を引き出しながら、両面にドライフィルムレジスト3を積層して積層銅箔Bを得たのち、この積層銅箔Bを用いて、露光工程、現像工程及びエッチング工程を実施するようにしたので、電解銅箔1が長尺で厚さが極薄いものであっても、露光工程、現像工程及びエッチング工程で折れ皺、変形、歪みのない状態で処理でき、ハンドリング性がよい。
しかも、残存レジスト層及び補強層除去工程を経て直ちにロール状に巻き取られるので、製品である多孔長尺金属箔Aも折れ皺、変形、歪み、バリや傷のない状態で得られる。
【0028】
そして、残存レジスト層及び補強層除去工程では、剥離液によって化学的に残存レジスト層(大硬化部32及び小硬化部33)と、補強層3bとを除去するようにしたので、多数の微細孔2が形成された電解銅箔1への剥離ストレスが防止でき、より折れ皺、変形、歪みのない状態で得られる。
【0029】
また、上記のように電解銅箔1として、極薄のものを用いることができるので、多孔長尺銅箔Aも極薄化できるとともに、出来上がった多孔長尺銅箔Aが直ちにロール状に巻き取られるようにしたので、極薄であってもより折れ皺、変形、歪みのない状態で巻き取ることができる。
そして、得られた極薄の多孔長尺銅箔Aを用いれば、例えば、コンデンサなどを小型化で容量的に大きなものにすることができる。
【0030】
また、得られた極薄の多孔長尺銅箔Aが、シームレスかつ長尺であるので、旋回型コンデンサの電極として好適に用いることができる。
さらに、上記製造方法においては、レジスト層3aだけでなく、補強層3bもドライフィルムレジスト3で形成するようにしたので、補強層3bをレジスト層3a(レジスト層3aを補強層3b)として用いることができる。すなわち、露光工程において、露光装置4の構造を選ばず、ロールの始端を上側から引き出しても、下側から引き出しても使用することができる。
【0031】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、エッチング工程及び残存レジスト層及び補強層除去工程とを一連で行い、現像工程が別に行われるようになっていたが、現像工程、エッチング工程及び残存レジスト層及び補強層除去工程を一連で行うようにしてもよい。
上記の実施の形態では、積層金属箔形成工程において、レジスト層となるドライフィルムレジストと、補強層となるドライフィルムレジストとを電解銅箔の上下の同じ位置で電解銅箔に沿わせ熱圧着するようにしていたが、前後に位置をずらせるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0032】
A 多孔長尺銅箔
B 積層銅箔
C 露光済み積層銅箔
D 現像済み積層銅箔
R1,R2 ローラー
1 電解銅箔
2 微細孔
3a レジスト層
3b 補強層
31 未硬化部(易溶解部)
32 大硬化部
33 小硬化部
34 透孔
4 露光装置
41 フォトマスク
41a マスク部
41b 大光透過部
41c 小光透過部
5 現像装置
51 スプレー
52 現像処理液
6 エッチング部
6a エッチング装置
6b 第1洗浄乾燥装置
61 スプレー
62 エッチング液
7 残存レジスト層及び補強層除去部
7a 残存レジスト層及び補強層除去装置
7b 第2洗浄乾燥装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面から他方の面まで貫通する多数の微細孔がほぼ全長にわたって穿設された多孔長尺金属箔の製造方法であって、
長尺の金属箔の一方の面にドライフィルムレジストが接着または圧着されたレジスト層を有し、前記金属箔の他方の面に化学的溶解剥離型補強フィルムが接着または圧着された補強層を備える長尺の積層金属箔を、前記積層金属箔の長手方向の一側から他側に向かって露光装置に送り込み、前記レジスト層を所定幅ごとに露光して前記微細孔の繰り返しパターンをつぎつぎに焼き付ける露光工程と、
この露光工程で露光された露光処理済み部分を長手方向の一側から他側に向かって現像装置に送り込み、レジスト層の微細孔形成用の易溶解部を現像液で溶解除去する現像工程と、
前記積層金属箔の現像済み部分を積層金属箔の長手方向の一側から他側に向かってエッチング装置に送り込み、金属箔の露出部分をエッチングして微細孔を形成するエッチング工程と、
前記積層金属箔のエッチング済み部分を積層金属箔の長手方向の一側から他側に向かって剥離装置に送り込み、残存レジスト膜及び補強層を剥離液に曝して剥離除去する残存レジスト膜及び補強層除去工程とを備え、残存レジスト膜及び補強層除去工程経て得られた多孔長尺金属箔を直接ロール状に巻き取ることを特徴とする多孔長尺金属箔の製造方法。
【請求項2】
多孔長尺金属箔が旋回型コンデンサの電極として用いられる請求項1に記載の多孔長尺金属箔の製造方法
【請求項3】
露光工程において、易溶解部の中央に直径より小径の、現像液による非除去部を設けるとともに、
エッチング工程において、積層金属箔のレジスト層側を下側にしてエッチング装置内に通し、エッチング装置内で積層金属箔の下側からエッチング液をスプレーしてエッチングする請求項1または請求項2に記載の多孔長尺金属箔の製造方法。
【請求項4】
ロール状に巻回された長尺の金属箔の一端を引き出しながら金属箔の一方の面にドライフィルムレジストを接着または圧着してレジスト層を形成するとともに、他方の面に化学溶解性補強フィルムを接着または圧着して補強層を形成する長尺の積層金属箔形成工程を経て露光工程を行う請求項1〜請求項3に記載の多孔長尺金属箔の製造方法。
【請求項5】
金属箔が銅箔である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の多孔長尺金属箔の製造方法。
【請求項6】
補強層がドライフィルムレジストで形成される請求項1〜請求項5のいずれかに記載の多孔長尺金属箔の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載の製造方法で得られてなり、一方の面から他方の面まで貫通する多数の微細孔がほぼ全長にわたって穿設された多孔長尺金属箔であって、前記微細孔の断面がすり鉢をしていることを特徴とする多孔長尺金属箔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180583(P2012−180583A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45972(P2011−45972)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(599075047)堺電子工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】