説明

多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板

【課題】配線パターンのデザイン変更を要することなく、また信頼性よくRFID通信を行う。
【解決手段】多層プリント配線板1の中間層11に形成された接地パターンまたは電源パターン12に近接した空き領域に貫通孔3を形成して、この貫通孔3の中にRFIDタグモジュール2のタグチップ6側凸部13を収納するとともに、RFIDタグモジュール2上のモジュールアンテナパターン8を中間層11上の接地パターンまたは電源パターン12と容量結合させるか、電気的に導通させ、その後に、中間層11の上層15および下層16を配置して、これら3層を熱圧着する。これにより、多層プリント配線板1の内部にRFIDタグモジュール2全体を埋め込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグを実装した多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板(PCB:Print Circuit Board)を効率よくかつ正確に管理するために、プリント配線板にRFIDタグを実装することが提案されている(特許文献1参照)。例えば、プリント配線板上に、配線パターンや実装部品が存在しない空き領域を確保し、この空き領域にフィルム上のRFIDタグを貼り付ける手法が提案されている。また、別の提案として、プリント配線板上の空き領域に、RFIDタグ用のアンテナパターンを予め作製しておき、このアンテナパターンに近接してRFIDタグモジュールを配置してタグチップとアンテナパターンを接続する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−15475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者の手法では、RFIDタグモジュールに予めアンテナパターンを作製しておくため、RFIDタグモジュールの外径寸法が大きくなり、プリント配線板に十分なサイズの空き領域が確保できない場合は、実現が難しくなる。したがって、プリント配線板の設計段階で、空き領域を避けて配線パターンを配置する設計が必要となり、設計者の負担が増大する。
【0005】
また、後者の手法では、プリント配線板の設計段階で、空き領域にアンテナパターンを配置し、かつRFIDタグモジュールを実装する場所を確保するような設計上の配慮が必要となり、プリント配線板上で本来の配線パターンを配置する領域が限定されることになり、やはり設計者の負担が増大する。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、配線パターンのデザイン変更を要することなく、また信頼性よくRFID通信を行うことが可能な多層プリント配線板の製造方法および多層プリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様によれば、RFIDタグモジュールの基板フィルム上にモジュールアンテナパターンを形成する工程と、
前記モジュールアンテナパターンおよび前記基板フィルムの上面を粗化する工程と、
前記基板フィルム上に接着層を介してタグチップを接合するとともに、バンプを用いたダイレクトボンディングにより前記タグチップと前記モジュールアンテナパターンとを接合する工程と、
前記タグチップの周囲をポッティング材で覆う工程と、
3層以上の積層基板の特定の中間層上の接地パターンまたは電源パターンに近接配置された空き領域に形成された貫通孔、あるいは前記接地パターンまたは電源パターンの一部を除去して形成された貫通孔の中に、前記RFIDタグモジュールの前記タグチップ側を収納するとともに、前記モジュールアンテナパターンと前記接地パターンまたは電源パターンとが容量結合あるいは電気的に導通するように、前記RFIDタグモジュールの縁部と前記中間層とを接合する工程と、
前記中間層における前記貫通孔の隙間に補強剤を充填する工程と、
前記中間層の上下にそれぞれ接着層を介在させて、前記中間層に隣接配置される前記積層基板内の上層および下層をそれぞれ積層配置する工程と、
積層配置された各層を熱圧着する工程と、を備えることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、基板フィルム上に実装されたタグチップと、前記基板フィルム上に形成され前記タグチップと接合されるモジュールアンテナパターンと、を有するRFIDタグモジュールと、
3層以上の積層基板の特定の中間層に存在する接地パターンまたは電源パターンに近接配置された空き領域に形成された貫通孔、あるいは前記接地パターンまたは電源パターンの一部を除去して形成された貫通孔の内部に、前記RFIDタグモジュールの前記タグチップ側を収納するとともに、前記モジュールアンテナパターンと前記接地パターンまたは電源パターンとが容量結合あるいは電気的に導通するように、前記RFIDタグモジュールの縁部と前記中間層とを接合した中間層構造体と、
前記中間層構造体の前記貫通孔の隙間に充填される補強剤と、
前記中間層の上下にそれぞれ接着層を介在させて積層された状態で熱圧着される、前記積層基板の一部を構成する上層および下層と、を備えることを特徴とする多層プリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線パターンのデザイン変更を要することなく、また信頼性よくRFID通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る多層プリント配線板1の平面図、(b)はRFIDタグモジュールの外観図。
【図2】(a)はRFIDタグモジュール2の断面構造の一例を示す断面図、(b)は(a)に対応する平面図。
【図3】図2の主要部の拡大図。
【図4】RFIDタグモジュール2を埋め込んだ多層プリント配線板1の製造工程を説明する製造工程図。
【図5】図4に続く製造工程図。
【図6】一般的なモノポール型パッシブRFID素子の構造を示す平面図。
【図7】本実施形態のアンテナ形状を示す平面図。
【図8】(a)は、RFID素子の長手方向に沿ってリーダ21を配置した状態を0度として、RFID素子を長手方向の中心軸回りに一回転させた場合の指向性を示す図、(b)は、RFID素子の短手方向に沿ってリーダ21を配置した状態を0度として、RFID素子を短手方向の中心軸回りに一回転させた場合の指向性を示す図。
【図9】タグチップ6の内部構成の一例を示すブロック図。
【図10】図9のメモリ部35に格納されるデータ構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1(a)は本発明の一実施形態に係る多層プリント配線板1の平面図である。図1(a)の多層プリント配線板1は、3層以上の多層基板である。図1の多層プリント配線板1の一部(例えば、外側縁部)には、RFIDタグモジュール2が埋め込まれている。このRFIDタグモジュール2の外観は図1(b)のようなものであるが、多層プリント配線板1の外見には現れない。図1では、RFIDタグモジュール2が透けて視認されているが、多層プリント配線板1の積層数が多い場合や、プリント配線板の表面が塗装されている場合などは、透けて視認されないこともありうる。
【0013】
RFIDタグモジュール2の一部(中央部分)は、多層プリント配線板1の中間層に形成された貫通孔3に埋め込まれている。RFIDタグモジュール2の一部を中間層の孔に埋め込んだ状態で、中間層の上面および下面にそれぞれ上層および下層を積層して熱圧着することにより、RFIDタグモジュール2の全体を多層プリント配線板1の内部に完全に埋め込むことができる。
【0014】
中間層に形成される貫通孔3は、中間層に形成される配線パターンと重ならない位置で、かつ中間層上の接地パターンまたは電源パターンに近接した場所に設けられる。4層以上の多層基板の場合は、複数の中間層が存在するが、接地パターンまたは電源パターンが主に形成される中間層に貫通孔3を形成するのが望ましい。その理由は、接地パターンまたは電源パターンをアンテナパターンとして利用するためである。
【0015】
ベタの接地パターンまたは電源パターンが形成された中間層に貫通孔3を形成する場合は、接地パターンまたは電源パターンの一部を除去して貫通孔3が形成される。
【0016】
以下では、中間層上の接地パターンをRFIDタグモジュール2のアンテナパターンとして利用する例を説明するが、接地パターンの代わりに中間層上の電源パターンを利用してもよい。
【0017】
図2(a)はRFIDタグモジュール2の断面構造の一例を示す断面図、図2(b)は図2(a)に対応する平面図、図3は図2の主要部の拡大図である。RFIDタグモジュール2は、フィルム基板5上にタグチップ6を実装し、タグチップ6の周囲をポッティング材7により覆ったものである。
【0018】
本実施形態のタグチップ6は、例えばUHF帯(約800〜960MHz)の電波を送受信するものである。
【0019】
以下、図2〜図3を用いてRFIDタグモジュール2の製造工程を説明する。まず、20〜30μmの膜厚のポリイミドからなるフィルム基板5上に、1〜15μmの膜厚の銅からなる導電層を形成し、その表面を金めっきする。そして、金めっきされた導電層をパターニングして、モジュールアンテナパターン8を形成する。フィルム基板5のサイズは、例えば3mm×15mm程度である。なお、サイズや膜厚は一例にすぎず、用途に応じて種々の変更が考えられる。
【0020】
予めタグチップ6のフィルム基板側の面の略中央部に接着剤(アンダーフィル剤)9を付着させるとともに、このチップ6の周縁部にバンプ10を形成し、この面をフィルム基板5のモジュールアンテナパターン8と対向させて、チップ上のバンプ10がモジュールアンテナパターン8に接触するように位置合わせする。そして、フィルム基板5とタグチップ6とを熱圧着する。これにより、フィルム基板5上にタグチップ6が接合され、バンプ10を介してタグチップ6とモジュールアンテナパターン8がダイレクトボンディングされる。
【0021】
次に、タグチップ6の外表面をポッティング材7で覆う。これにより、タグチップ6とフィルム基板5とがより強固に接合されるとともに、タグチップ6を外部衝撃や圧力から保護でき、また曲げ強度も向上する。
【0022】
以上により、RFIDタグモジュール2が完成する。後述するように、RFIDタグモジュール2の凸部になった側は、多層プリント配線板1の中間層に設けた貫通孔3に収納される。
【0023】
図4および図5はRFIDタグモジュール2を埋め込んだ多層プリント配線板1の製造工程を説明する製造工程図である。図4の製造工程を開始する前に、図2に示すRFIDタグモジュール2が完成しているものとする。まず、図4(a)のように、多層プリント配線板1の中間層11となるガラスエポキシからなるコア材を用意する。次に、中間層11の外側縁部に約3mm径の貫通孔3を形成する(図4(b))。貫通孔3は、中間層11上に形成される接地パターン12に近接した位置で、かつ他の配線パターンが配置されない空き領域に設けられる。あるいは、ベタの接地パターン12の一部周辺部を除去して形成される。次に、パターニングにより、中間層11上の配線パターンを形成する(図4(c))。図4(b)と図4(c)の製造工程の順序は逆でもよい。
【0024】
次に、中間層11の表面をプラズマ洗浄等で粗化する(図4(d))。ここで、粗化を行うのは、中間層11とRFIDタグモジュール2との接着強度を高めるためである。
【0025】
次に、中間層11の貫通孔3の周囲に不図示の耐熱性粘着テープを付着させて、RFIDタグモジュール2のフィルム基板5を上にして、RFIDタグモジュール2のタグチップ側凸部13を多層プリント配線板1の貫通孔3に収納する(図4(e))。これにより、RFIDタグモジュール2の外側縁部は、耐熱性粘着テープにより、多層プリント配線板1の表面に接着される。このとき、RFIDタグモジュール2上のモジュールアンテナパターン8と中間層11上の接地パターン12とが、耐熱性粘着テープを挟んで対向配置されるようにする。これにより、モジュールアンテナパターン8と接地パターン12とが容量結合され、中間層11上の接地パターン12をタグチップ6のアンテナとして利用できることになり、モノポール型パッシブRFID素子を構成できる。
【0026】
次に、中間層11の貫通孔3の隙間に補強剤14を充填する(図5(a))。ここで、補強剤14を充填する理由は、貫通孔3に隙間が残ったままで、中間層11の上層および下層を熱圧着すると、貫通孔3の内部の圧力が高まってタグチップ6が破壊する等の不具合が生じるおそれがあるためである。
【0027】
次に、中間層11の上下に配置される上層15および下層16をピンラミネーション法により位置合わせする(図5(b))。上層15および下層16はそれぞれ、中間層11との間に熱硬化接着樹脂シート(プリプレグ)17を挟んで銅箔膜18を配置した構造である。プリプレグ17は、ガラス繊維に樹脂を染み込ませたものであり、加熱により樹脂が溶け出して銅箔膜18の凹凸面に染み込んで、銅箔膜18とプリプレグ17とが接着される。その後、さらに温度を上げて加熱することによりプリプレグ17中の樹脂を硬化させ、次に下層16、中間層11および上層15からなる積層体を多層プレス機により熱圧着する(図5(c))。
【0028】
以上により、中間層11と、その上下に配置される上層15および下層16を含む3層分の多層基板が形成され、多層基板の内部にはモノポール型パッシブRFID素子が埋め込まれる。もし、多層基板が4層以上の場合は、図5(c)の工程の後に、通常の多層基板と同様の製造工程を行う。例えば、ピンラミネーション法による位置合わせと熱圧着を行って多層化する。これにより、最終的な多層プリント配線板が完成する。
【0029】
図6は一般的なモノポール型パッシブRFID素子の構造を示す平面図である。図6に示すように、モノポール型パッシブRFID素子は、RFIDタグモジュール2の一端に接続されるアンテナパターン20を有する。このアンテナパターン20の長さLは、L=λ/n(n=2,4,8,16,…)を満たすときに、最適な読取り性能が発揮される。λは電波の波長である。
【0030】
UHF帯の電波は、波長λが約30cmであるため、L=λ/nを満たすには、長さLは15cm以下となる。
【0031】
本実施形態では、RFIDタグモジュール2の一端に、多層基板の中間層11上の接地パターン12を容量結合しており、アンテナ形状は概略的には図7のようになる。実際には、中間層11および他の層上の接地パターン12の形状により、アンテナパターン20の形状が種々変化する。
【0032】
図7に示すように、本実施形態に係るモノポール型パッシブRFID素子のアンテナは、モノポール型であることは間違いないが、接地パターン12からなるアンテナ形状が直線状ではなく複雑な形状であり、L=λ/nを満たすとは限らない。
【0033】
むしろ、本実施形態のアンテナは、L=λ・m(m=1,2,3,…)に近い形状となる。L=λ・mを満たすアンテナは、L=λ/nを満たすアンテナと比べてサイズが大きくなるため、通常の単体のICタグでは採用されないが、性能上の差はなく、図7のようにアンテナの片側がオープンであっても共振するため、ある程度の読取り性能が得られる。
【0034】
図7を見ればわかるように、中間層11上の接地パターン12は通常、複数箇所で分岐しており、先端がオープンになっている箇所も複数存在する。RFIDタグモジュール2から各オープン箇所までの距離もさまざまであるが、いずれか一つでも、L=λ・mの条件を概略満たせば、ある程度の読取り性能が得られると考えられる。
【0035】
なお、L=λ・mの条件は、L=λ/nの条件よりも、Lが大きくなるため、アンテナの小型化が望まれるRFID素子で積極的に用いられることは今までなかった。本実施形態では、多層基板の中間層11に形成された接地パターン12をRFID素子のアンテナとして利用するという発想から、L=λ・mの条件を積極的に利用して電波の読取りを行うものである。
【0036】
図8は本実施形態に係るモノポール型パッシブRFID素子の指向性を示す図であり、シミュレーション結果である。RFID素子と通信を行うリーダ21の設置場所によって指向性が大きく変わるため、図8ではリーダ21の2通りの設置場所について指向性を示している。図8は、簡略化のため、RFIDタグモジュール2の一端に線状のアンテナパターン20を接続した例を示している。
【0037】
図8(a)は、RFID素子の長手方向に沿ってリーダ21を配置した状態を0度として、RFID素子を長手方向の中心軸回りに一回転させた場合の指向性を示している。また、図8(b)は、RFID素子の短手方向に沿ってリーダ21を配置した状態を0度として、RFID素子を短手方向の中心軸回りに一回転させた場合の指向性を示している。
【0038】
図8(a)の位置にリーダ21を設置すると、回転角度が90度と270度のときに最も電波強度が高くなり、回転角度が0度と180度のときに最も電波強度が弱くなる。一方、図8(b)の位置にリーダ21を設置すると、回転角度が変化しても、均一な電波強度が得られる。
【0039】
図8(a)と図8(b)からわかるように、リーダ21をどのように配置しても、本実施形態によるモノポール型パッシブRFID素子は、正常にリーダ21と無線通信を行うことができる。仮に、リーダ21の読取り性能が低下する場合には、リーダ21の位置を少しずらすことで、読取り性能が向上することも図8(a)と図8(b)からわかる。
【0040】
図9はタグチップ6の内部構成の一例を示すブロック図である。図9のタグチップ6は、アンテナ端子31,32と、アナログ回路部33と、デジタル回路部34と、メモリ部35と、誘導電流による電力を電荷の形態で蓄積するコンデンサ36と、このコンデンサ36の充放電を制御するトランジスタ37,38とを有する。アナログ回路部33は、アンテナに誘起された交流の誘導電流を整流する機能と、サージ電流から保護する機能と、変復調を行う機能と、内部クロックを発生する機能とを有する。デジタル回路部34は、入力制御を行う機能と、出力制御を行う機能と、メモリ制御を行う機能とを有する。
【0041】
図10は図9のメモリ部35に格納されるデータ構造の一例を示す図である。このデータ構造は、EPCグローバルClass 1 Generation 2の規格で定めるデータ構造であり、一例にすぎない。図10の例では、96ビットのデータを格納することができる。
【0042】
本実施形態のタグチップ6は、多層プリント配線板1の管理を行うことを目的としており、多層プリント配線板に関する各種情報(種別や品番、製造年月日など)がメモリ部35に格納される。タグチップ6は、リーダ21との間で通信を行う。実際には、数多くの多層プリント配線板1を重ねた場所の近くにリーダ21を配置して、各多層プリント配線板1からの情報を読み取って、多層プリント配線板1の種類や数などを管理する。
【0043】
このように、本実施形態では、多層プリント配線板1の中間層11に形成された接地パターン12に近接した空き領域に貫通孔3を形成して、この貫通孔3の中にRFIDタグモジュール2のタグチップ6側凸部13を収納するとともに、RFIDタグモジュール2上のモジュールアンテナパターン8を中間層11上の接地パターン12と容量結合させるか、電気的に導通させ、その後に、中間層11の上層15および下層16を配置して、これら3層を熱圧着する。これにより、多層プリント配線板1の内部にRFIDタグモジュール2全体を埋め込むことができる。
【0044】
本実施形態では、RFIDタグモジュール2の一端側に中間層11上の接地パターン12が配置されており、モノポール型パッシブRFID素子として機能する。中間層11上の接地パターン12の形状によって、電波の読取り性能が変動することが予想されるが、UHF帯での近距離通信は特に支障なく行うことができる。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、多層プリント配線板1の表面にRFIDタグを実装することなく、また、RFIDタグ用の専用のモジュールアンテナパターン8を形成せずに、既存の接地パターン12を利用して、RFID通信を行うことができ、プリント配線板の管理を迅速かつ高速に行うことができる。さらに、多層プリント配線板1の中間層11以外の層には何の影響も与えずにRFIDタグモジュール2を埋め込むことができるため、多層プリント配線板1のパターン配置の設計に与える影響を最小限に留めることができる。したがって、パターン設計者の手を煩わさなくて済む。また、RFIDタグモジュール2が多層プリント配線板1の表面上に現れないため、RFIDタグモジュール2が物理的な衝撃等で破壊するおそれもなくなる。
【0046】
上述した実施形態では、多層プリント配線板の外側縁部にRFIDタグモジュール2を埋め込む例を説明したが、RFIDタグモジュール2を埋め込む場所は外側縁部には限定されない。また、多層プリント配線板の複数箇所にRFIDタグモジュール2をそれぞれ埋め込んでもよい。その際、誤って二重計測しないように、異なる通信帯域のRFIDタグモジュール2を埋め込んでもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 多層プリント配線板
2 RFIDタグモジュール
3 貫通孔
5 フィルム基板
6 タグチップ
7 ポッティング材
8 モジュールアンテナパターン
9 接着剤(アンダーフィル剤)
10 バンプ
11 中間層
12 接地パターン
14 補強剤
15 上層
16 下層
17 熱硬化接着樹脂シート(プリプレグ)
18 銅箔膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグモジュールの基板フィルム上にモジュールアンテナパターンを形成する工程と、
前記モジュールアンテナパターンおよび前記基板フィルムの上面を粗化する工程と、
前記基板フィルム上に接着層を介してタグチップを接合するとともに、バンプを用いたダイレクトボンディングにより前記タグチップと前記モジュールアンテナパターンとを接合する工程と、
前記タグチップの周囲をポッティング材で覆う工程と、
3層以上の積層基板の特定の中間層上の接地パターンまたは電源パターンに近接配置された空き領域に形成された貫通孔、あるいは前記接地パターンまたは電源パターンの一部を除去して形成された貫通孔の中に、前記RFIDタグモジュールの前記タグチップ側を収納するとともに、前記モジュールアンテナパターンと前記接地パターンまたは電源パターンとが容量結合あるいは電気的に導通するように、前記RFIDタグモジュールの縁部と前記中間層とを接合する工程と、
前記中間層における前記貫通孔の隙間に補強剤を充填する工程と、
前記中間層の上下にそれぞれ接着層を介在させて、前記中間層に隣接配置される前記積層基板内の上層および下層をそれぞれ積層配置する工程と、
積層配置された各層を熱圧着する工程と、を備えることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記RFIDタグモジュールの一端側に形成された前記モジュールアンテナパターンを前記接地パターンまたは電源パターンと容量結合させるか、電気的に導通させることによりモノポール型パッシブRFID素子を構成することを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記タグチップは、多層プリント配線板を管理する情報を記憶することを特徴とする請求項1または2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
基板フィルム上に実装されたタグチップと、前記基板フィルム上に形成され前記タグチップと接合されるモジュールアンテナパターンと、を有するRFIDタグモジュールと、
3層以上の積層基板の特定の中間層に存在する接地パターンまたは電源パターンに近接配置された空き領域に形成された貫通孔、あるいは前記接地パターンまたは電源パターンの一部を除去して形成された貫通孔の内部に、前記RFIDタグモジュールの前記タグチップ側を収納するとともに、前記モジュールアンテナパターンと前記接地パターンまたは電源パターンとが容量結合あるいは電気的に導通するように、前記RFIDタグモジュールの縁部と前記中間層とを接合した中間層構造体と、
前記中間層構造体の前記貫通孔の隙間に充填される補強剤と、
前記中間層の上下にそれぞれ接着層を介在させて積層された状態で熱圧着される、前記積層基板の一部を構成する上層および下層と、を備えることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項5】
前記RFIDタグモジュールの一端側に形成された前記モジュールアンテナパターンを前記接地パターンまたは電源パターンと容量結合させるか、電気的に導通させることにより構成されるモノポール型パッシブRFID素子を備えることを特徴とする請求項4に記載の多層プリント配線板。
【請求項6】
前記タグチップは、多層プリント配線板を管理する情報を記憶するメモリを有することを特徴とする請求項4または5に記載の多層プリント配線板の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−283031(P2010−283031A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133335(P2009−133335)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(595162563)株式会社日本インフォメーションシステム (3)
【出願人】(591017353)株式会社キョウデン (2)
【出願人】(597024681)第一実業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】