説明

多層マット及び排気ガス処理装置

排気ガス処理装置のハウジング内に触媒支持構造を取り付けるためのハイブリッド取付けマット。排気ガス処理装置は、外側ハウジング、脆弱な触媒支持構造、及びハウジングと脆弱な触媒支持構造の間の間隙に配置された取付けマットを含む。さらにハイブリッド取付けマットの製造方法及び取付けマットを組み入れた排気ガス処理装置の製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車排気システムで用いられる触媒コンバーター及びディーゼル微粒子トラップ等の排気ガス処理装置用のマットを開示する。このマットは、排気ガス処理装置の外側ハウジング内に脆弱性モノリスを取り付けるための取付けマットとして又は排気ガス処理装置の末端錐体内の断熱体として使用し得る。
【背景技術】
【0002】
排気ガス処理装置は、エンジン排気による大気汚染を減少させるために自動車で利用される。広く利用されている排気ガス処理装置の例には、触媒コンバーター及びディーゼル微粒子トラップがある。
自動車エンジンの排気ガスを処理するための触媒コンバーターは、ハウジングと、一酸化炭素及び炭化水素の酸化並びに窒素酸化物の還元を達成するために用いられる触媒を保持するための脆弱性触媒支持構造と、ハウジング内に脆弱性触媒支持構造を弾性的に保持するため脆弱性触媒支持構造の外面とハウジングの内面の間に配置された取付けマットとを含む。
ディーゼルエンジンによって生じる汚染を制御するためのディーゼル微粒子トラップは、一般的にハウジングと、ディーゼルエンジン排気から微粒子を収集するための脆弱性微粒子フィルター又はトラップと、ハウジング内に脆弱性フィルター又はトラップ構造を弾性的に保持するためフィルター又はトラップの外面とハウジングの内面の間に配置された取付けマットとを含む。
脆弱性触媒支持構造は、一般的に金属の脆弱性材料又は脆性セラミック材料、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ジルコニア、コーディエライト、炭化ケイ素等から製造されたモノリシック構造を含む。これらの材料は複数のガス流路を有する骨格型構造を与える。これらのモノリシック構造は非常に脆弱なので、小さい衝撃荷重又は応力でさえそれらに割れ目をつくり又はそれらをつぶすのに十分なことが多い。脆弱構造を熱的及び機械的衝撃並びに上述した他の応力から保護するためのみならず、断熱体及びガスシールを与えるため、取付けマットを脆弱構造とハウジングの間の間隙に位置づけられる。
【0003】
利用する取付けマット材料は、脆弱構造の製造業者又は排気ガス処理装置の製造業者が明記したいくつかの設計要件又は物理的要件のいずれをも満たせなければならない。例えば、取付けマット材料は、排気ガス処理装置が広い温度変動を受けた(脆弱構造との関係で金属ハウジングの有意な膨張と収縮を引き起こし、ひいては一定期間にわたって取付けマットに有意な圧縮と解放のサイクルをもたらす)ときでさえ、脆弱構造に有効な残存保持圧を発揮できなければならない。
排気ガス処理装置で用いられるセラミック及び金属基体はほとんど無機繊維をベースとした取付けマットで金属ハウジング内に取り付けらることが多い。この取付けマット材料は無機繊維のみを含んでよい。しかしながら、取付けマット材料が他のタイプの繊維、有機結合剤、無機結合剤及び膨張材料を含んでもよい。
取付けマットは、広範な作動温度にわたって機能して効率的に基体を適所に保持しなければならない。基体は、振動によって基体にかかる軸方向の力を受けやすい。取付けマットは、金属ハウジングが基体自体より多かれ少なかれ膨張するという事実をも相殺する。種々の排気ガス処理装置は、約20℃〜約1200℃の周囲条件の温度範囲にわたって作動する。従って、取付けマットは、この広い温度範囲にわたって頑強な保持圧性能を提供しなければならない。
【0004】
特定の市販の非膨張性取付けマットは、典型的に、規制に従うため高直径の非呼吸性(non-respirable)繊維を利用する。しかしながら、高直径の非呼吸性繊維のみを含む取付けマットは、望ましくないことに高い熱伝導特性を有する。
市販の生体溶解性(biosoluble)無機繊維は比較的小さい直径を有し、比較的低い熱伝導性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当業界で必要なのは、高い作動温度で使用でき、かつ低い熱伝導性を示す、排気ガス処理装置用の取付けマットである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、生体溶解性無機繊維を含む第1の層;及び前記生体溶解性無機繊維と異なる無機繊維を含む、前記第1の層に隣接した第2の層を含んでなる排気ガス処理装置用取付けマットを開示する。
特定の実施形態によれば、本取付けマットは、第1の平均径を有する生体溶解性無機繊維を含む第1の層;及び前記第1の平均径より大きい第2の平均径を有する無機繊維を含む第2の層を含む。
特定の実施形態によれば、本取付けマットは、生体溶解性無機繊維を含む第1の層と、非呼吸性繊維を含む第2の層とを含む。
ハウジング;このハウジング内に弾性的に取り付けられた脆弱構造;及び前記ハウジングと前記脆弱構造の間に配置された取付けマットを含んでなる排気ガス処理装置であって、前記マットが、生体溶解性無機繊維を含む第1の層;及び前記生体溶解性無機繊維と異なる無機繊維を含む、前記第1の層に隣接した第2の層を含む、排気ガス処理装置をも開示する。特定の実施形態によれば、本マットは、第1の平均径を有する生体溶解性無機繊維を含む第1の層と、前記第1の平均径より大きい第2の平均径を有する無機繊維を含む第2の層とを含み、かつ前記第1の層が前記ハウジングに隣接して位置づけられ、前記第2の層が前記脆弱構造に隣接して位置づけられている。特定の実施形態によれば、本マットは、生体溶解性無機繊維を含む第1の層と、非呼吸性繊維を含む第2の層とを含む。
【0007】
さらに、ハウジング;このハウジング内に弾性的に取り付けられた脆弱構造;及び前記ハウジングと前記脆弱構造の間の間隙に配置された取付けマット;二重壁の末端錐体ハウジング;及びこの末端錐体ハウジングの壁間に配置された絶縁マットを含んでなる排気ガス処理装置であって、前記マットが、生体溶解性無機繊維を含む第1の層;及び前記生体溶解性無機繊維と異なる無機繊維を含む、前記第1の層に隣接した第2の層を含み、ここで、前記第1の層が前記外側錐体ハウジングに隣接して位置づけられ、前記第2の層が前記内側錐体ハウジングに隣接して位置づけられている、排気ガス処理装置を開示する。特定の実施形態によれば、本取付けマットは、第1の平均径を有する生体溶解性無機繊維を含む第1の層と、前記第1の平均径より大きい第2の平均径を有する無機繊維を含む第2の層とを含み、ここで、前記第1の層が前記外側錐体ハウジングに隣接して位置づけられ、前記第2の層が前記内側錐体ハウジングに隣接して位置づけられている。特定の実施形態によれば、本マットは、生体溶解性無機繊維を含む第1の層と、非呼吸性繊維を含む第2の層とを含む。
さらに、外側金属錐体;内側金属錐体;及び末端錐体ハウジングの壁間に配置された絶縁マットを含んでなる排気ガス処理装置用末端錐体であって、前記マットが、生体溶解性無機繊維を含む第1の層;及び前記生体溶解性無機繊維と異なる無機繊維を含む、前記第1の層に隣接した第2の層を含み、ここで、前記第1の層が前記外側錐体ハウジングに隣接して位置づけられ、前記第2の層が前記内側錐体ハウジングに隣接して位置づけられている、排気ガス処理装置用末端錐体を開示する。特定の実施形態によれば、本取付けマットは、第1の平均径を有する生体溶解性無機繊維を含む第1の層と、前記第1の平均径より大きい第2の平均径を有する無機繊維を含む第2の層とを含み、ここで、前記第1の層が前記外側錐体ハウジングに隣接して位置づけられ、前記第2の層が前記内側錐体ハウジングに隣接して位置づけられている。特定の実施形態によれば、本マットは、生体溶解性無機繊維を含む第1の層と、非呼吸性繊維を含む第2の層とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本ハイブリッドマットは、排気ガス処理装置で使うための多層取付けマットを含んでよい。多層取付けマットは、生体溶解性無機繊維の第1の層と、第1の層の生体溶解性無機繊維と化学組成が異なる無機繊維の別個かつ明確な層とを含み得る。
多層取付けマットは、生体溶解性無機繊維の第1の別個かつ明確な層と、この第1の層の生体溶解性無機繊維と化学組成が異なる無機繊維の第2の別個かつ明確な層とを含み、これらの層を接触させて多層マットを形成する。多層取付けマットは、生体溶解性無機繊維の第1の別個かつ明確な層と、この第1の層の生体溶解性無機繊維と化学組成が異なる無機繊維の第2の別個かつ明確な層とを含み、これらの層をいずれかの適切な手段で結合させて多層マットを形成する。特定の実施形態によれば、多層取付けマットは、生体溶解性無機繊維の第1の層を形成した後、第1の層の生体溶解性無機繊維と化学組成が異なる無機繊維の第2の明確な層を生体溶解性無機繊維の第1の層の上に直接形成することによって達成し得る。
多層取付けマットは、第1の平均径を有する生体溶解性無機繊維の第1の層と、第1の平均径と異なる第2の平均径を有する無機繊維の第2の層とを含み得る。特定の実施形態によれば、多層取付けマットは、生体溶解性無機繊維の第1の層と、取付けマットの第1の層の生体溶解性無機繊維の平均径より大きい平均径を有する無機繊維を含む第2の層を含み得る。この多層取付けマットは、脆弱性モノリシック触媒支持基体又はディーゼル微粒子フィルターのような脆弱構造の外面と、ハウジングの内面との間に配置される。他の実施形態によれば、多層マットを、排気ガス処理装置の末端錐体の2つのハウジング間に配置される断熱体として使用してもよい。
【0009】
特定の実施形態によれば、多層取付けマットは、約6μm未満の平均径を有する繊維の第1の層と、約6μmより大きい平均径を有する繊維の第2の層とを含み得る。
特定の例示実施形態によれば、多層取付けマットは、約6μm未満の平均径を有する生体溶解性無機繊維の第1の層と、第1の層の生体溶解性無機繊維と化学組成が異なるゾルゲル由来無機繊維の第2の層とを含み、かつ第2の層の繊維は、約6μmより大きい平均径を有する。この取付けマットは、排気ガス処理装置内に、繊維の第2の層が脆弱構造に隣接して位置づけられ、生体溶解性無機繊維の層が外側金属ハウジングの内面に隣接して位置づけられるようなやり方で配置し得る。
特定の例示実施形態によれば、多層取付けマットは、約6μm未満の平均径を有する生体溶解性無機繊維の第1の層と、約6μmより大きい平均径及び第1の層の熱伝導性より高い熱伝導性を有する非呼吸性無機繊維の第2の層とを含み得る。この取付けマットは、排気ガス処理装置内に、繊維の第2の層が脆弱構造に隣接して位置づけられ、生体溶解性無機繊維の層が外側金属ハウジングの内面に隣接して位置づけられるようなやり方で配置し得る。
【0010】
排気ガス処理装置は一般的にハウジングと、ハウジング内に位置する脆弱構造と、ハウジング内の適切な位置に脆弱モノリスを弾性的に保持するためハウジングと脆弱構造の間に配置された多層取付けマットとを含む。多層取付けマットは、生体溶解性無機繊維の第1の層と、取付けマットの第1の層の生体溶解性無機繊維の平均径より大きい平均径を有する無機繊維を含む第2の層とを含み得る。多層の第1の層は、ハウジングの内面に隣接して位置づけられ、第2の層は、脆弱構造の外面に隣接して位置づけられ得る。
さらに、排気ガス処理装置用末端錐体を開示する。末端錐体は、外側金属錐体ハウジングと、内側金属錐体ハウジングと、これらの末端錐体ハウジング間に配置された多層絶縁マットとを含む。多層取付けマットは、生体溶解性無機繊維の第1の層と、取付けマットの第1の層中の生体溶解性無機繊維の平均径より大きい平均径を有する無機繊維を含む第2の層とを含み得る。多層マットの第1の層は、内側錐体ハウジングの外面に隣接して位置づけられ、第2の層は、外側錐体ハウジングの内面に隣接して位置づけられ得る。
特定の例示実施形態によれば、排気ガス処理装置は、ハウジングと、ハウジング内に位置する脆弱構造と、ハウジング内の適切な位置に脆弱モノリスを弾性的に保持するためハウジングと脆弱構造の間の間隙に配置された取付けマットと、二重壁の末端錐体ハウジングとを含む。多層取付けマットは、二重壁の末端錐体の内側及び外側の錐体ハウジング間にも配置される。多層取付けマットは、生体溶解性無機繊維の第1の層と、取付けマットの第1の層の生体溶解性無機繊維の平均径より大きい平均径を有する無機繊維を含む第2の層とを含み得る。多層マットの第1の層は、外側錐体ハウジングの内面に隣接して位置づけられ、第2の層は、内錐体ハウジングの外面に隣接して位置づけられ。
【0011】
特定の実施形態によれば、より高径の非呼吸性無機繊維を含む、取付けマットの層は、より低径の生体溶解性無機繊維の層に比べて高い熱伝導性を有する。しかしながら、より高径の非呼吸性無機繊維の層は、より低径の生体溶解性無機繊維の層に比べて高い温度に耐えることができる。多層取付けマットは、高径の非呼吸性無機繊維の層が脆弱構造の外面と隣接して(すなわち、触媒コンバーターの脆弱性触媒支持構造の外面に隣接して又はディーゼル微粒子トラップのディーゼル微粒子フィルターの外面に隣接して)位置づけられるようなやり方で位置づけられる。生体溶解性無機繊維の層は、排気ガス処理装置の外側ハウジングの内面に隣接して位置づけられる。従って、より高径の非呼吸性無機繊維の層は「熱い側」とインタフェースし、より低径の生体溶解性無機繊維の層は、装置の外側ハウジングに隣接する「冷たい側」とインタフェースする。脆弱構造に隣接する層の高径無機繊維は、脆弱構造の界面で(すなわち、脆弱性触媒支持構造又はディーゼル微粒子フィルターと高径の非呼吸性繊維の層の間の界面で)遭遇する、より高い温度に耐え得る。従って、多層取付けマットは、「グリーン」繊維(すなわち、非呼吸性繊維及び/又は生体溶解性繊維)に関する規制に従う無機繊維の層を含む。多層取付けマットは、例えば触媒コンバーター及びディーゼル微粒子フィルター内で適切に低い熱伝導性を維持しながら経験するような排気ガス処理装置の通常の作動中に遭遇する高い作動温度で有用である。
【0012】
基体は、排出物質を改変する排気ガス処理装置内のコンポーネントである。基体を含み得る多くのタイプの排気ガス処理装置がある。排気ガス処理装置の1つのタイプが触媒コンバーターである。触媒コンバーターの活性部分は、一酸化炭素及び炭化水素の酸化並びに窒素酸化物の還元を促進するための触媒をコーティングしたか又は含浸させた基体を含み、排気流中の燃焼の望ましくない生成物を排除する。
基体モノリスは典型的に断面構造が卵形又は円形であるが、他の形状も可能である。基体は、使用する装置、例えば、触媒コンバーター、ディーゼル触媒構造、又はディーゼル微粒子トラップのタイプ及びデザインに応じて異なるであろう間隙幅距離だけそのハウジングから離して配置される。いくつかの実施形態では、間隙が少なくとも約1.27mm(0.05インチ)であってよく、他の実施形態では、間隙が約25.4mm(1インチ)まで又はそれ以上であってよい。この間隙幅は、典型的に約3mm〜約25mmの範囲であってよく、商業的に通常の幅は約3mm〜約8mmである。基体取り付けシステムをこの空間に配置して、外部環境への断熱と、セラミックモノリす構造への機械的支持の両方を与え、基体が機械的衝撃によって損傷するのを防止する。
ディーゼル微粒子フィルターは別のタイプの排気ガス処理装置である。ディーゼル微粒子フィルターの活性部分はフィルターとして作用する基体を含む。ディーゼル微粒子トラップは、1以上の多孔性管状又はハニカム様構造(しかし、一端が閉じた流路を有する)を含んでよく、これをハウジング内に耐熱性材料で取り付ける。典型的に高温バーンアウトプロセスによって再生されるまで、多孔性構造内の排気ガスから微粒子を収集する。
別のタイプの排気ガス処理装置は、選択的触媒還元ユニットである。選択的触媒還元ユニットの活性部分は、排気流中の望ましくない生成物の化学的還元及び排除を促進するための触媒をコーティングした基体を含む。
別のタイプの排気ガス処理装置はNOXトラップである。NOXトラップの活性部分は、アルカリ又はアルカリ土類材料を含む触媒基体を含む。トラップは、サイクル様式;「吸着(sorption)」プロセスと「再生」プロセスのサイクルで作動する。吸着中に基体はNOX種を取り込み、それらを触媒基体の表面上にニトラート種として捕捉する。再生中は、NOXトラップに還元性物質を導入し、ニトラート種を基体から除去し、窒素に還元する。
【0013】
主題の取付けシステムの自動車用でない用途には、限定するものではないが、化学工業排出(排気)スタック用の触媒コンバーターがある。
排気ガス処理装置では、基体は周囲温度(約20℃)よりかなり高い温度で作動し得る。限定するものではないが、排気ガス処理装置の特定の実施形態の作動温度は約1000℃である。基体が作動するのがかなり高温のため、基体は典型的に優れた耐熱性、すなわち非常に高い融点、及び非常に低い熱膨張係数を有する材料を含む。これらの特性を有する多くの材料があり、種々多様のセラミックス、タングステン、レニウム、及びさらに新奇な材料が挙げられる。優れた耐熱性を示す非常に一般的な材料の1つの群がセラミックスである。排気ガス処理装置の基体は、典型的に脆弱性材料、例えば脆性の不燃性セラミック材料(例えば、限定するものではないが、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ジルコニア、コーディエライト、炭化ケイ素など)から形成されたモノリシック構造を含む。
多くの通常のセラミックスの特性は、それらの低い靱性である。すなわち、多くのセラミックスは硬いか、強いか、又は硬くて強いが、セラミックスは低い靭性を示す傾向があり、かつ低い歪みレベルで破砕する傾向がある。このことが、排気ガス処理装置が熱サイクル中に典型的に経験する機械的荷重条件下でセラミックコンポーネントを破損又は破砕しやすくする。従って、基体を保護するための手段を組み入れるのが一般的である。
ハウジングは、基体を少なくとも部分的に取り囲むか又は覆う中空体である。ハウジングは、衝撃、ねじれ、張力、圧縮又は基体を損傷し得る他の機械的荷重から基体を保護する。特定の実施形態では、ハウジングは薄肉殻を含む。ハウジングは、熱に対して良い抵抗性、すなわち高い融点及び高い耐熱性を有する材料を含む。排気ガス処理装置のハウジングを構成する材料は、一般的にモノリスより低い耐熱性、モノリスより高い熱膨張係数、及びモノリスより高い耐衝撃性を含む延性材料である。限定するものではないが、特定の実施形態では、排気ガス処理装置のハウジングは金属又は合金、例えば高温耐性スチール等を含む。
【0014】
用語「生体溶解性(biosoluble)」無機繊維は、生理的媒質又は疑似生理的媒質、例えば疑似肺液内で溶解するか又は別の方法で分解可能な無機繊維を表す。疑似生理的媒質内で繊維の溶解度を経時的に測定することによって、繊維の溶解度を評価し得る。生理的媒質内での繊維の生体溶解度(すなわち非耐久性)の測定方法は、Unifraxに譲渡された米国特許第5,874,375号(その内容を参照によってここに援用する)に開示されている。無機繊維の生体溶解度の評価に適した他の方法がある。特定の実施形態によれば、生体溶解性繊維は、0.1gのサンプルとして37℃で0.3ml/分の流量の疑似肺液にさらしたときに少なくとも30ng/cm2-hrの溶解度を示す。他の実施形態によれば、生体溶解性無機繊維は、0.1gのサンプルとして37℃で0.3ml/分の流量の疑似肺液にさらしたときに少なくとも50ng/cm2-hr、又は少なくとも100ng/cm2-hr、又は少なくとも1000ng/cm2-hrの溶解度を示し得る。
限定するものではないが、排気ガス処理装置用取付けマットを作製するために使用できる生体溶解性無機繊維の適切な例としては、米国特許第6,953,757号、第6,030,910号、第6,025,288号、第5,874,375号、第5,585,312号、第5,332,699号、第5,714,421号、第7,259,118号、第7,153,796号、第6,861,381号、第5,955,389号、第5,928,075号、第5,821,183号、及び第5,811,360号(それぞれその内容を参照によってここに援用する)に開示されている当該生体溶解性無機繊維が挙げられる。
【0015】
特定の実施形態によれば、生体溶解性アルカリ土類シリカート繊維は、マグネシウム及びシリカの酸化物の混合物の繊維化生成物を含み得る。これらの繊維は、一般的にマグネシウム-シリカート繊維(magnesium-silicate fiber)と呼ばれる。マグネシウム-シリカート繊維は一般的に約60〜約90質量%のシリカ、0超え〜約35質量%のマグネシア及び約5質量%以下の不純物の繊維化生成物を含む。特定の実施形態によれば、アルカリ土類シリカート繊維は、約65〜約86質量%のシリカ、約14〜約35質量%のマグネシア、0〜約7質量%のジルコニア及び約5質量%以下の不純物の繊維化生成物を含む。他の実施形態によれば、アルカリ土類シリカート繊維は、約70〜約86質量%のシリカ、約14〜約30質量%のマグネシア、及び約5質量%以下の不純物の繊維化生成物を含む。マグネシア-シリカート繊維のさらなる情報は米国特許第5,874,375号(その内容を参照によってここに援用する)で見つけられる。
適切なマグネシウム-シリカート繊維は、Unifrax I LLC(Niagara Falls, New York)から登録商標名ISOFRAX(登録商標)で市販されている。市販のISOFRAX(登録商標)繊維は一般的に約70〜約80質量%のシリカ、約18〜約27質量%のマグネシア及び約4質量%以下の不純物の繊維化生成物を含む。
【0016】
特定の実施形態によれば、生体溶解性アルカリ土類シリカート繊維は、カルシウム、マグネシウム及びシリカの酸化物の混合物の繊維化生成物を含み得る。これらの繊維は一般的にカルシア-マグネシア-シリカート繊維と呼ばれる。特定の実施形態によれば、カルシア-マグネシア-シリカート繊維は、約45〜約90質量%のシリカ、0超え〜約45質量%のカルシア、0超え〜約35質量%のマグネシア、及び約10質量%以下の不純物の繊維化生成物を含む。典型的に、生体溶解性カルシア-マグネシア-シリカート繊維は、約15〜約35質量%のカルシア、約2.5〜約20質量%のマグネシア、及び約60〜約70質量%のシリカを含む。
有用なカルシア-マグネシア-シリカート繊維はUnifrax I LLC (Niagara Falls, New York)から登録商標名INSULFRAX(登録商標)で市販されている。INSULFRAX(登録商標)繊維は一般的に約61〜約67質量%のシリカ、約27〜約33質量%のカルシア、及び約2〜約7質量%のマグネシアを含む。他の適切なカルシア-マグネシア-シリカート繊維はThermal Ceramics(Augusta, Georgia)から商標名SUPERWOOL(登録商標)607及びSUPERWOOL(登録商標)607 MAXで市販されている。SUPERWOOL(登録商標)607繊維は約60〜約70質量%のシリカ、約25〜約35質量%のカルシア、約4〜約7質量%のマグネシア、及び痕跡量のアルミナを含む。SUPERWOOL(登録商標)607 MAX繊維は、約60〜約70質量%のシリカ、約16〜約22質量%のカルシア、約12〜約19質量%のマグネシア、及び痕跡量のアルミナを含む。
【0017】
非呼吸性繊維の層は、ゾルゲル由来繊維を含んでよい。液体に酸化物前駆体を溶解させ、紡糸して繊維を形成することによってゾルゲル由来繊維を作る。紡糸繊維を乾燥させ、か焼して最終酸化物繊維を形成する。紡糸工程は、遠心紡糸、練条、吹込み成形、タック紡糸、紡糸口金による液体の押出し成形又はこれらの適切な組合せによって達成し得る。米国特許第4,159,205号及び第4,277,269号は、ゾルゲル由来繊維の種々の製造方法について論じている。適切なゾルゲル由来繊維としては、限定するものではないが、アルミナ繊維、高アルミナ繊維及びムライト繊維が挙げられる。特定の実施形態では、アルミナ繊維が少なくとも約60質量%のアルミナを含み得る。特定の実施形態では、高アルミナ繊維が少なくとも約95質量%のアルミナ、残余の典型的にはシリカであるが、おそらくさらなる酸化物をも含む。特定の実施形態では、ムライト繊維が約72質量%のアルミナ及び約28質量%のシリカを含み、場合によっては少量のさらなる酸化物が存在し得る。
非呼吸性繊維の層は、溶出ガラス繊維(leached glass fiber)を含んでよい。特定の実施形態では、溶出ガラス繊維は少なくとも67質量%のシリカ含量を有し得る。特定の実施形態では、溶出ガラス繊維は少なくとも約90質量%のシリカを含有し、これらの実施形態の特定の場合には、約90質量%から約99質量%未満のシリカを含有する。これらの溶出ガラス繊維の平均繊維径は約6μmであり得る。平均して、ガラス繊維は典型的に約9μm、約14μmまでの平均径を有する。従って、これらの溶出ガラス繊維は非呼吸性である。
【0018】
シリカ含量が高く、かつ触媒コンバーター又は他の既知のガス処理装置用の取付けマットの製造で使うのに適した溶出ガラス繊維の例としては、BelChem Fiber Materials GmbH, Germanyから商標名BELCOTEX(登録商標)で市販され、Hitco Carbon Composites, Inc. of Gardena Californiaから登録商標名REFRASIL(登録商標)で市販され、Polotsk-Steklovolokno, Republic of Belarusから商品名PS-23(登録商標)で市販されている当該溶出ガラス繊維が挙げられる。
BELCOTEX(登録商標)繊維は標準タイプの短繊維(staple fiber)プレヤーン(pre-yarn)である。これらの繊維は、約550テックス(tex)の平均繊度を有し、通常はアルミナで改変されたケイ酸から作られる。BELCOTEX(登録商標)繊維は非晶質であり、通常は約94.5%のシリカ、約4.5%のアルミナ、約0.5%未満の酸化ナトリウム、及び約0.5%未満の他成分を含有する。これらの繊維は、約9μmの平均繊維径及び約1500℃〜約1550℃の範囲内の融点を有する。これらの繊維は1100℃までの温度に対して耐熱性であり、かつ典型的にショットフリーかつバインダーフリーである。
REFRASIL(登録商標)繊維、例えばBELCOTEX(登録商標)繊維は、1000℃〜1100℃の温度範囲の用途に適した断熱をもたらすためシリカ含量が高い非晶質の溶出ガラス繊維である。これらの繊維は直径が約6〜約13μmであり、かつ約1700℃の融点を有する。溶出後、繊維は典型的に約95質量%のシリカ含量を有する。アルミナが約4質量%の量で存在してよく、他成分が約1質量%以下の量で存在し得る。
Polotsk-SteklovoloknoからのPS-23(登録商標)繊維は、シリカ含量が高い非晶質ガラス繊維であり、少なくとも約1000℃に耐える必要のある用途のための断熱に適している。これらの繊維は約5〜約20mmの範囲内の繊維長及び約9μmの繊維径を有する。REFRASIL(登録商標)のようなこれらの繊維は、約1700℃の融点を有する。
【0019】
特定の実施形態では、非呼吸性繊維は約3μm以上の平均径を有する繊維である。他の例示実施形態では、非呼吸性繊維は約6μm以上の平均径を有する繊維である。さらに、約100μmより大きい繊維長を特徴とする繊維は、特定の研究において繊維径とは無関係に非呼吸性であることが示されている。他の研究は、約200μm超え〜約250μmの繊維長を特徴とする繊維が、繊維径とは無関係に非呼吸性であることを示した。
特定の実施形態では、取付けマットの1つ以上の層が膨張材料を含むか、又は別個の膨張層を含んでよい。膨張材料は、膨張されていないバーミキュライト、ハイドロバイオタイト(hydrobiotite)、水膨潤フッ素四ケイ素雲母、アルカリ金属シリカート、又は膨張性グラファイトの少なくとも1種を含んでよく、有機及び/又は無機結合剤を用いてシート状に形成して望ましい度合の湿潤強度を与えることができる。例えば、米国特許第3,458,329号(その開示内容を参照によってここに援用する)に記載されているように標準紙製造技術で膨張材料のシートを製造することができる。
可撓性で弾性の膨張繊維の取付けマットはいくつかの異なる手法で製造可能であり、該手法には、手積み(hand laid)又は機械積みされる従来の製紙プロセスがある。ハンドシート型、長網抄紙機(Fourdrinier paper machine)、又はロトフォーマー(rotoformer)抄紙機を利用して可撓性膨張繊維の取付けマットを作ることができる。いずれの場合も、いくつかの成分を含有する凝集水性スラリーを加圧して水の大部分を除去してからマットを乾燥させる。このプロセスは当業者に周知である。
【0020】
他の実施形態では、可撓性繊維の取付けマットは、高温耐性繊維と結合剤の実質的に非膨張性の複合シートを含んでよい。特定の実施形態では、取付けマットは「一体型(integral)」であり、製造後に取付けマットが自立構造を有し、織物、プラスチック又は紙の補強層又は閉じ込め(containment)層(マットに縫い合わせて結合されるものを含め)を必要とせず、かつ分解することなく取り扱うか又は操作することができることを意味する。「実質的に非膨張性」とは、シートが、熱を加えたときに膨張層で予測されるようには容易に膨張しないことを意味する。当然に、シートの熱膨張係数に基づいてシートのある程度の膨張が起こる。しかしながら、膨張量は、膨張特性に基づいて起こる膨張に比べてごくわずかである。当然のことながら、これらの実質的に非膨張性取付けマットは膨張材料を実質的に欠いている。
非膨張性取付けマットで用いられる結合剤は典型的に、犠牲的な性質であってよい有機結合剤である。「犠牲的」とは、取付けマットの温度が初めて作動温度に上昇したときに結合剤が取付けマットから最終的に焼き出されて、最終取付けマットとして繊維及び他の任意成分のみを残すことを意味する。適切な結合剤には水性及び非水性結合剤があるが、利用される結合剤は、反応性の熱硬化性ラテックスであることが多く、これは硬化後に、上述したように設置された取付けマットから焼き出され得る可撓性材料である。適切な結合剤又は樹脂の例として、限定するものではないが、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン、ビニルピリジン、アクリロニトリル、塩化ビニル、ポリウレタン等の水性ラテックスが挙げられる。他の樹脂には、低温可撓性熱硬化性樹脂、例えば不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂及びポリビニルエステルがある。具体的な有用な結合剤としては、限定するものではないが、アクリロニトリルベースのラテックスではHI-STRETCH V-60TM, B.F. Goodrich Co.(Akron, Ohio)が挙げられる。結合剤用の溶媒としては、水、又はアセトン等の適切な有機溶媒が挙げられる。所望の結合剤負荷及び結合剤系の作業性(粘度、固形分等)に基づいて通常の方法で溶媒中(使用する場合)の結合剤の溶液強度を決定することができる。
同様に、通常の製紙技術によって、非膨張性取付けマットを作製できる。このプロセスを用いて、無機繊維を結合剤と混合して混合物又はスラリーを形成する。次に水で希釈してスラリーの形成を促し、最後に凝集剤及び排水保持補助化学薬品で凝集させ得る。次に、凝集混合物又はスラリーを製紙機上に置いてセラミック紙マットに形成することができる。スラリー又は混合物を通常の製紙装置で真空鋳造することによってマット又はシートを形成し、オーブン内で乾燥させてよい。
或いは、乾式空中積み(dry air laying)等の通常の手段で繊維をマットに加工し得る。この段階では、マットにはほんの少ししか構造完全性がなく、通常の触媒コンバーター及びディーゼルトラップの取付けマットに比べて非常に薄い。この代替技術を利用する場合、含浸によって結合剤を添加してマットをさらに加工して不連続な繊維複合物を形成してよい。通常の製紙技術について本明細書で述べたようにマットを形成するのではなく、マットの形成後に結合剤を添加する。
必要に応じて、非膨張取付けマットは結合剤を含む。適切な結合剤には水性及び非水性結合剤があるが、利用される結合剤が反応性の熱硬化性ラテックスであってよく、これは硬化後に少なくとも約350℃まで安定な可撓性材料である。約5〜約10%のラテックスを利用してよい。
【0021】
取付けマット内に単一タイプの結合剤又は複数タイプの結合剤の混合物を含めてよい。適切な結合剤としては、有機結合剤、無機結合剤及びこれら2タイプの結合剤の混合物が挙げられる。特定の実施形態によれば、膨張性又は非膨張性取付けマットが1種以上の有機結合剤を含む。固体、液体、溶液、分散系、ラテックス又は同様の形態として有機結合剤を供給してよい。有機結合剤が熱可塑性又は熱硬化性結合剤(硬化後に、設置された取付けマットから焼き出され得る可撓性材料である)を含んでよい。適切な有機結合剤の例としては、限定するものではないが、アクリルラテックス、(メタ)アクリルラテックス、スチレンとブタジエンのコポリマー、ビニルピリジン、アクリロニトリル、アクリロニトリルとスチレンのコポリマー、塩化ビニル、ポリウレタン、酢酸ビニルとエチレンのコポリマー、ポリアミド、シリコーン等が挙げられる。他の樹脂には、低温可撓性熱硬化性樹脂、例えば不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂及びポリビニルエステルがある。
取付けマットには取付けマットの総質量に基づいて、有機結合剤を0超え〜約20質量%、約0.5〜約15質量%、約1〜約10質量%、又は約2〜約8質量%の量で含めてよい。
取付けマットが、樹脂状又は液状結合剤の代わりに、又はそれらと共に、ポリマー結合剤繊維を含んでよい。組成物全体の100質量%に対して0超え〜約20質量%、約1〜約15質量%、約2〜約10質量%の範囲の量でこれらのポリマー結合剤繊維を用いて、熱処理繊維を一緒に結合するのを補助し得る。結合剤繊維の適切な例として、ポリビニルアルコール繊維、ポリオレフィン繊維、例えばポリエチレン及びポリプロピレン等、アクリル繊維、ポリエステル繊維、酢酸ビニルエチル繊維、ナイロン繊維及びこれらの組合せが挙げられる。
有機結合剤を使用する場合、成分を混合して混合物又はスラリーを形成する。繊維と結合剤のスラリーを次にマット構造に形成し、結合剤を除去し、これによって熱処理繊維(及び必要に応じて追加繊維)を含有する取付けマットをもたらす。典型的に、犠牲的結合剤を利用して最初に繊維を一緒に結合する。「犠牲的」とは、有機結合剤が最終的に取付けマットから焼き出されて、脆弱構造を支持するための取付けマットとして熱処理繊維(及び使用する場合は他のセラミック又はガラス繊維)のみを残すことを意味する。
有機結合剤に加えて、取付けマットは無機結合剤材料を含んでもよい。限定するものではないが、適切な無機結合剤材料には、無機粒状物質、アルミナ、シリカ、ジルコニアのコロイド分散系、及びこれらの混合物がある。
【0022】
取付けマットの作製で一般的に用いられるいずれの公知技術によっても取付けマットを作製し得る。例えば、製紙プロセスを利用して、繊維を結合剤又は他の結合剤繊維と混合して混合物又はスラリーを形成する。繊維成分を約0.25%〜約5%の濃度又は固形分(約99.75〜約95部の水に対して約0.25〜約5部の固体)で混合してよい。次に形成を促すためスラリーを水で希釈し、それを最後に凝集剤及び排水保持補助化学薬品を用いて凝集させてよい。凝集混合物又はスラリーを製紙機上に置いて繊維含有紙のプライ(ply)又はシート状にし得る。或いは、スラリーを真空鋳造することによってプライ又はシートを形成してよい。いずれの場合も、プライ又はシートをオーブン内で乾燥させてよい。利用する標準的な製紙技術のさらに詳細な記述については、米国特許第3,458,329号(その開示内容を参照によってここに援用する)を参照されたい。
【0023】
他の実施形態では、熱処理繊維を乾式空中積み等の通常の手段でマットに加工し得る。この段階のマットはほんのわずかしか構造的に完全でなく、通常の触媒コンバーター及びディーゼルトラップの取付けマットに比べて非常に薄い。従って、結果として生じるマットを、当技術分野で一般的に知られているように、乾式で針で縫ってマットの密度を高くしてその強度を高めることができる。
乾式空中層化(dry air layering)技術を利用する場合、代わりに含浸によってマットに結合剤を添加してマットを加工して繊維複合物を形成し得る。この技術では、通常の製紙技術に関して本明細書で述べたようにマットを形成するのではなく、マットの形成後に結合剤を添加する。
結合剤によるマットの含浸方法は、液体結合剤系にマットを完全に浸漬するか、或いはマットのブラッシング、コーティング、ディッピング、ローリング、スプラッシュ、又は噴霧がある。連続手順では、ロール形態で輸送できる繊維マットを、コンベヤー又はスクリム上などで巻き戻して、結合剤をマットに適用するスプレーノズルを通過させる。或いは、噴霧ノズルを通してマットを自重送りすることができる。次にプレスロール間をマットを通し、過剰の液体を除去し、マットの所望厚さまでマットの密度を高くする。高密度化マットを次にオーブンを通過させていずれの残存溶媒をも除去し、必要ならば結合剤を部分的に硬化させて複合物を形成する。乾燥及び硬化温度は、使用する結合剤及び(もしあれば)溶媒によって主に決まる。次に複合物を貯蔵又は輸送のために切断するか又は巻くことができる。
【0024】
マット片を液体結合剤に浸漬させ、マットを取り出し、加圧して過剰の液体を除去し、その後、乾燥させて複合物を形成し、貯蔵又は適当なサイズにカットすることによって、取付けマットをバッチ様式で製造することもできる。
これらの繊維から製造された取付けマットは特定の触媒コンバーター用途で簡単に使うためには密度が低すぎることがある。そこで、技術上周知のいずれの方法によってもそれらがさらに高密度化を受けてより高い密度をもたらし得る。このような高密度化の1つの方法は、繊維をより合わせて絡ませるように繊維をニードルパンチすることである。さらに又は代わりに、水流交絡(hydro-entangling)法を利用し得る。別の代替法は、繊維をプレスローラーで伸ばすことによって、繊維をマット形態にプレス加工することである。マットの高密度化のこれらのいずれの方法又はこれらの方法のいずれの組合せを用いても容易に所望形態の取付けマットを得ることができる。
上記技術のどれを利用するかにかかわらず、例えばダイスタンピング(die stamping)によって取付けマットをカットして、再現性のある許容差で正確な形状とサイズの取付けマットを形成し得る。取付けマットは、ニードリング等によってのように高密度化の状態で適切な取扱い特性を示し、取付けマットが容易に取り扱え、かつ他の繊維ブランケット又はマットのように手の中で崩れるほど脆くないことを意味している。取付けマットを触媒支持構造などの脆弱構造の周りに、割れることなく容易かつフレキシブルに適合させ又は巻き付けてから触媒コンバーターのハウジング内に配置することができる。一般的に、取付けマットを巻き付けた脆弱構造をジハウジング中に挿入するか或いは取付けマットを巻き付けた脆弱構造の周りにハウジングを組み立てるか又はその他の方法で製作することができる。
排気ガス処理装置は周囲温度から作動温度まで循環するので、該装置を構成するコンポーネントはそれらの個々の作動温度に達する。排気ガス処理装置内のいずれの所定コンポーネントの作動温度も装置自体の作動温度未満であろう。いくつかのコンポーネントはより高温のコンポーネントから絶縁されているからである。コンポーネントが熱くなると、それらの熱膨張係数に比例してコンポーネントが膨張するであろう。
【0025】
マット及び排気ガス処理装置について種々の実施形態に関連して記述したが、種々の特徴において示されるように、同機能を果たすために他の同様の実施形態を利用し得るか又は記述した実施形態に変更及び付加を行い得るものと解釈すべきである。さらに、種々の例示実施形態を組み合わせて所望の結果をもたらすことができる。従って、マット及び排気ガス処理装置はいずれの単一の実施形態にも限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲の記載に従う広さ及び範囲で解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要素:
生体溶解性無機繊維を含む第1の層;及び
前記生体溶解性無機繊維と異なる無機繊維を含む、前記第1の層に隣接した第2の層
を含んでなるマット。
【請求項2】
前記第1の層が、第1の平均径を有する生体溶解性無機繊維を含み;かつ
前記第2の層が、前記第1の平均径より大きい第2の平均径を有する非呼吸性繊維を含む、
請求項1に記載のマット。
【請求項3】
前記生体溶解性繊維が、カルシウム-アルミナート繊維、カルシア-マグネシア-シリカ繊維、マグネシア-シリカ繊維又はその組合せを含む、請求項2に記載のマット。
【請求項4】
前記マグネシア-シリカ繊維が、約65〜約86質量%のシリカ、約14〜約35質量%のマグネシア及び約5質量%以下の不純物の繊維化生成物を含む、請求項3に記載のマット。
【請求項5】
前記カルシア-マグネシア-シリカ繊維が、約45〜約90質量%のシリカ、0超え〜約45質量%のカルシア、及び0超え〜約35質量%のマグネシアの繊維化生成物を含む、請求項3に記載のマット。
【請求項6】
前記第2の層の前記無機繊維がゾルゲル由来繊維を含む、請求項2に記載のマット。
【請求項7】
前記ゾルゲル繊維が高アルミナ繊維を含む、請求項6に記載のマット。
【請求項8】
前記ゾルゲル繊維がムライト繊維を含む、請求項6に記載のマット。
【請求項9】
前記第1の平均径が約6μm未満であり、かつ前記第2の平均径が約6μmより大きい、請求項2に記載のマット。
【請求項10】
下記要素:
ハウジング、
前記ハウジング内に弾性的に取り付けられた脆弱構造;及び
前記ハウジングと前記脆弱構造の間に配置された請求項1〜9のいずれかに記載の取付けマット
を含んでなる排気ガス処理装置。
【請求項11】
下記要素:
ハウジング、
前記ハウジング内に弾性的に取り付けられた脆弱構造;及び
前記ハウジングと前記脆弱構造の間の間隙に配置された取付けマット;
二重壁の末端錐体ハウジング;及び
前記末端錐体ハウジングの壁間に配置された絶縁マット
(前記マットは請求項1〜9のいずれかに記載のマットを含む)
を含んでなる排気ガス処理装置。
【請求項12】
排気ガス処理装置用末端錐体であって、下記要素:
外側金属錐体;
内側金属錐体;及び
該末端錐体ハウジングの壁間に配置された絶縁マット
(前記マットは請求項1〜9のいずれかに記載のマットを含む)
を含んでなる排気ガス処理装置用末端錐体。

【公表番号】特表2013−506076(P2013−506076A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530869(P2012−530869)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/002613
【国際公開番号】WO2011/037634
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(500421462)ユニフラックス ワン リミテッド ライアビリティ カンパニー (19)
【Fターム(参考)】