説明

多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物

【課題】2P法による基板成形の量産性に優れ、スタンパからの剥離性が特に良好で、高温多湿化でも反射膜層又は誘電体層に対する密着力の強い光ディスク用基盤を提供すること。
【解決手段】
樹脂組成物中に、(A)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートを反応させて得られる6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート、(B)3官能以下の(メタ)アクリレートモノマー、及び(C)光重合開始剤を含有する多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物およびその硬化物に関し、反射膜層又は誘電体層との密着力が高く、スタンパからの剥離性に優れた次世代高密度光ディスクを効率的に生産するための樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクに対する大容量化の要求が著しい。光ディスクの記録容量を高める技術としては、記録・再生ビ−ムの短波長化、記録・再生ビ−ム照射光学系における対物レンズの高NA(開口数)化、記録層の多層化などが挙げられる。これらのうち記録層の多層化による大容量化は、短波長化や高NA化に比べ、低コストでの大容量化が可能である。
例えば、2個の記録層を有するDVDディスクは、2つの記録層を、透明樹脂中間層を介して積層した構造をとっている。具体的には、0.6mmの第1の透明樹脂基板、第1の記録層、第1の半透明反射膜層、透明樹脂中間層、第2の記録層、第2の反射膜層、接着層、0.6mmの第2の透明樹脂基板の順に積層した構造である。この場合は、透明樹脂中間層は第1の半透明反射膜層上に透明樹脂中間層を形成する紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、記録・再生ビ−ムのガイド用案内溝などの凹凸パタ−ンのある透明樹脂スタンパに押しつけ、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させた後スタンパを剥離し、紫外線硬化型樹脂組成物の表面に凹凸を転写させて形成される。
【0003】
ブルーレイディスクにおいては、読み取り専用ディスクでは、基板である例えば直径120mm、厚み1.1mmのポリカーボネート基板の片面にピット状の記録パターンが転写され、この基板の表面に第1の記録層となる第1の反射膜層、例えば銀合金反射膜層が成膜される。さらに、第1の反射膜層上にピット状の記録パターンが転写された透明樹脂中間層が形成され、この中間膜上に第2の記録層となる第2の反射膜層、例えば銀合金反射膜層が成膜される。そして、透明樹脂層を積層する構成となっている。尚、銀合金反射膜層は、例えばスパッタリング法により、真空中で成膜される手法が提案されている。
記録型ディスクでは、基盤である例えば直径120mm、厚み1.1mmのポリカーボネート基板の片面にピット状の記録パターンが転写され、この基盤の表面に第1の反射膜層、第1の誘電体層、第1の記録層、第2の誘電体層が積層され、さらに透明樹脂中間層、第2の反射膜層、第3の誘電体層、第2の記録層、第4の誘電体層、透明樹脂層の順に積層した構造となっている。
これらの場合において、透明樹脂中間層は反射膜層又は誘電体層上に透明樹脂中間層を形成する紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、記録・再生ビ−ムのガイド用案内溝などの凹凸パタ−ンのある透明樹脂スタンパに押しつけ、紫外線硬化樹脂組成物を硬化させた後スタンパを剥離し、紫外線硬化型樹脂組成物の表面に凹凸を転写させて形成される。ここで、通常、透明樹脂中間層は読み取り専用ディスクでは、第2の反射膜層に接着している剥離層と第1の反射膜層に接着している接着層からなり、記録型ディスクでは第2の反射膜層に接着している剥離層と第2の誘電体層に接着している接着層からなっている。
【0004】
一般に、該転写法を2P(Photo Polymerization)法といい、使用する紫外線硬化型樹脂組成物を2P樹脂という。
透明樹脂スタンパは、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、2P樹脂を硬化させた後の剥離性、低吸湿性、形状安定性等の点から非晶質ポリオレフィンが好ましく、材料コストの点からはポリカーボネート樹脂が好ましい。
一般に、DVDの0.6mmの樹脂基板、ブルーレイディスクの1.1mmの樹脂基板はポリカーボネート樹脂が使用される。ポリカーボネート樹脂を透明樹脂スタンパとして使用する場合、2P樹脂とは別の紫外線硬化型樹脂を樹脂基板側に使用することで、硬化後の2P樹脂層からポリカーボネート製樹脂スタンパの剥離性を容易にする。
【0005】
透明樹脂スタンパからの剥離性が悪いと透明樹脂中間層の一部が透明樹脂スタンパと共に剥離してしまい欠陥が生じる。転写性が悪いと記録・再生時にエラ−を生じる。紫外線硬化後に反りが大きいと、形成した凹凸パターンに記録層や反射膜層を均一に形成できなかったり、DVDの場合は第2の基板を貼り合わせることができなかったり、ブルーレイディスクの場合は0.1mmの光透過層を均一に形成できない。また、高温高湿下で凹凸パタ−ンが変形すると、第1、2の記録層の記録特性(例えば、ジッタ特性)が同等にならない。
特許文献1〜4の2P樹脂は金属製のスタンパを用いてガラス基板上に凹凸パタ−ンを形成しており、透明樹脂スタンパによる凹凸パタ−ン形成についての記載はない。また、特許文献5〜8に2P樹脂の記載はあるが、本発明の樹脂についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−59139号公報
【特許文献2】特開平5−132534号公報
【特許文献3】特開平5−140254号公報
【特許文献4】特開平5−132506号公報
【特許文献5】特開2003−331463号公報
【特許文献6】特開2004−288242号公報
【特許文献7】特開2004−288264号公報
【特許文献8】特開2005−332564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、2P剤として用いられる紫外線硬化型樹脂は凹凸パターンが形成されたスタンパから、当該パターンを保持したままで、スタンパから剥がしやすくする必要がある。その際、スタンパから剥離しにくいと、樹脂がスタンパに付着して、反射膜層又は誘電体層に接着しない等の問題が生じ、生産効率の低下を招くこととなる。また、スタンパからの剥離性が高い樹脂であっても、高温多湿下におかれた時に剥離すれば、読み取りエラーが生じてしまうという問題が生じてしまう。
【0008】
そこで、本発明はこのような実情に鑑みて、多官能アクリレート変性ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートモノマーを用いることで、スタンパからの剥離に特に優れ、かつ、高温多湿下においても反射膜層又は誘電体層に密着している樹脂組成を提供することにある。
【0009】
さらに、本発明はスタンパを剥離させる際に選択的に反射膜層又は誘電体層に接着させることができるため、2P剤のおける紫外線硬化型樹脂の接着剤層を省略することを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、有機イソシアネートと水酸基を有する多官能アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート紫外線硬化型樹脂組成物を使用することで、スタンパからの剥離性を高め、高温多湿下で置かれても反射膜層又は誘電体層にしっかり密着する樹脂組成を見出した。これにより、スタンパからの剥離性が高く、反射膜層又は記録膜に対する密着性に優れた紫外線効果型樹脂組成物を開発するに至ったのである。
【0011】
本発明は、次の(1)〜(7)に関する。
(1)(A)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートを反応させて得られる6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート、(B)3官能以下の(メタ)アクリレートモノマー、及び(C)光重合開始剤を含有することを特徴とする多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
(2)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)において、有機イソシアネートが、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルイソシアネート、及び式(1)
【化1】

(式中、Rは、
【化2】


【化3】


【化4】


【化5】

又は
【化6】

を示す。)で表わされる3官能イソシアネートからなる群から選択される1種もしくは2種以上である、1項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
(3)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)において、水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートがペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのε−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン付加物のトリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種もしくは2種以上である、1項又は2項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
(4)3官能以下の(メタ)アクリレートモノマー(B)がイソボルニルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、及びヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレートからなる群から選択される1種もしくは2種以上である、1項乃至3項のいずれか一項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
(5)樹脂組成物全体に対し、(A)成分5〜80重量%、(B)成分10〜80重量%、(C)成分1〜15重量%を含有する1項乃至4項のいずれか一項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
(6)前記1項乃至5項のいずれか一項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物。
(7)前記6項記載の硬化物を有する多層光ディスク。
【発明の効果】
【0012】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物は、スタンパからの剥離性に優れ、かつ高温多湿下に置かれても反射膜層又は誘電体層に密着している2P剤として有用である。また、接着層を省略して1液で中間層を形成させることを可能とする紫外線硬化型樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、樹脂組成物中に、(A)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートを反応させて得られる6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートと、(B)3官能以下の(メタ)アクリレートモノマー、及び(C)光重合開始剤を含有する光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物である。
【0014】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物では、(A)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとヒドロキシ変性多官能アクリレートを反応させて得られる6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを使用する。
本発明に用いられる有機イソシアネートは分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、公知のものであれば特に限定なく使用することができる。例としてイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、又はジシクロペンタニルイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。
【0015】
さらに、本発明においては、変性イソシアネートとして、ジイソシアネートモノマーをイソシアヌレート変性させた下記式(1)
【化7】

(式中、Rは、
【化8】


【化9】


【化10】


【化11】

又は
【化12】

を示す。)で表される3官能イソシアネートが用いられる。
【0016】
これらの化合物は適宜公知の方法で合成して得られるが、市場品としては、例えば、武田薬品工業社製 タケネートD−170N;住化バイエルウレタン社製 スミジュールN−3300、デスモジュールL、デスモジュールHL;デグッサ社製 T−1890が挙げられる。
有機イソシアネートとして本願では式(1)で表される3官能イソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌレート3量体(R=−(CH−)の化合物が好ましい。
【0017】
また更に、変性イソシアネートとしてジイソシアネートモノマーをビウレット反応させた、下記式(2)
【化13】

(式中、Rは、上記式(1)のRと同様である)で表されるイソシアネートでも可能である。
【0018】
水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、具体的には水酸基を有する3〜8官能の(メタ)アクリレートを指し、公知ものであれば特に限定なく使用できる。例として、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのε−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン付加物のトリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明では特に、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0019】
反応は以下のようにして行う。即ち、水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートの水酸基1当量あたり有機ポリイソシアネートをそのイソシアネート基が好ましくは1.1〜2.0当量になるように混合し、反応温度を好ましくは70〜90℃で反応させることで、目的とするウレタン(メタ)アクリレート(A)を得ることができる。
上記(A)ウレタン(メタ)アクリレートは1種又は2種以上を任意割合で混合使用することができる。(A)ウレタン(メタ)アクリレートの組成物中の使用量としては内割で、5〜80重量%、好ましくは15〜75重量%、特に好ましくは20〜70重量%程度である。
【0020】
本発明で用いられる(B)3官能以下の(メタ)アクリレートモノマーとしては、公知のものであれば、特に限定することなく使用できる。例としては、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
ここで、剥離性を向上させるため、(メタ)アクリレートモノマーがイソボルニルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレートを使用することが好ましい。組成物中の使用量としては、内割で10〜80重量%で、好ましくは15〜75%であり、より好ましくは20〜70%である。
【0021】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物に含有される(C)光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュアー2959;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュアー127;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(イルガキュア651;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン](エサキュアONE;ランバルティ製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュアー907;チバスペシャリティーケミカルズ製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ルシリンTPO:BASF製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(イルガキュアー819;チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0022】
これらの光重合開始剤は1種類でも複数でも任意の割合で混合して使用することができ、アミン類等の光重合開始助剤と併用することも可能である。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物中の(C)光重合開始剤の含有量としては1〜15重量%が用いられ、好ましくは1〜10重量%程度である。
本発明で使用しうるアミン類等の光重合開始助剤としては、例えば、ジエタノールアミン、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。光重合開始助剤を併用する場合、本発明の紫外線硬化型脂組組成物中の含有量としては0.05〜5重量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜3重量%程度である。
【0023】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物においては、必要によりリン酸(メタ)アクリレートを加えることができる。リン酸(メタ)アクリレートは、アルミニウム、銀または銀合金と接着剤硬化物との接着性を向上させるが、金属膜を腐食させる恐れがありその使用量は制限される。
更に、本発明には、上記の成分に加え、必要によりシランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、重合禁止剤、光安定剤(ヒンダ−ドアミン系等)、酸化防止剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、充填剤などの添加剤を併用してもよい。このような添加剤の例としては、例えば、信越化学(株)社製 KBM−502、KBM−503、KBM−5103、KBM−802、KBM−803;ビックケミー社製 BYK−333、BYK−307、BYK−3500、BYK−3530、BYK−3570;東レ・ダウコーニング(株)社製 Z−6062、SH−6062、SH−29PA;(株)アデカ社製 LA−82等が挙げられる。
【0024】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、前記各成分を常温〜80℃で混合溶解後、必要により濾過して得ることができる。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の粘度は、B型粘度計で25℃での測定で10〜800mPa・s、好ましくは40〜500mPa・sである。
【0025】
DVDの場合、透明樹脂中間層は、(1) 第1の透明樹脂基板、第1の記録層、第1の半透明反射膜層が積層された基板と透明樹脂スタンパの少なくとも一方に、本発明の樹脂組成物をスピンコ−ト法、スクリ−ン印刷法、ロ−ルコ−ト法等方法により塗工後、貼り合わせて透明樹脂スタンパ側から紫外線を照射して形成される。または、(2) 透明樹脂スタンパに前記方法により本発明の樹脂組成物を塗工後、紫外線硬化させ、第1の透明樹脂基板、第1の記録層、第1の半透明反射膜層が積層された基板と任意の紫外線硬化型樹脂で貼り合わせて形成させることもできる。(1) の形成方法は生産効率を省略できる点で、生産コストの低減が望めるため、好ましい。また、ブルーレイディスクもDVDと同様の方法で透明樹脂中間層を形成する。一般に、DVDやHD−DVDの0.6mmの第1の透明樹脂基板、ブルーレイディスクの1.1mmの樹脂基板はポリカーボネート樹脂が使用される。ポリカーボネート製透明樹脂スタンパを使用する場合も、剥離性の点から(1) の方法が好ましい。
【0026】
透明樹脂スタンパとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン系樹脂(特に非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、2P樹脂を硬化させた後の剥離性、低吸湿性、形状安定性等の点から非晶質ポリオレフィンが好ましく、材料コストの点からはポリカーボネート樹脂が好ましい。本発明の2P硬化型樹脂組成物はどちらの透明樹脂スタンパも使用できる。
本発明の紫外線硬化型硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化物を与える。該活性エネルギー線をしては、例えば、紫外〜近紫外の光線が挙げられる。例えば、低圧、高圧、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、無電極ランプ、紫外線発光ダイオ−ド等があげられる。前記硬化物も本発明に含まれる。
【0027】
前記硬化物による透明樹脂中間層上に形成される記録層は有機色素や相変化材料のいずれも使用できる。例えば、有機色素は含金属アゾ系、ポリメチン系、フタロシアニン系が挙げられ、相変化材料はSbおよびTeにIn、Ag、Au、Bi、Se、Al、P、Ge、H、Si、C、V、W、Ta、Zn、Ti、Ce、Tb、Sn、Pbのいずれか一種以上を添加したものがあげられる。
また、本発明の樹脂組成物はポリカーボネート製基板を貼り合わせた構造の光ディスクやブルーレイディスクのいずれにも使用できる。
【0028】
塗工方法として、例えば、スピンコート法、2P法、ロールコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0029】
また、次世代の高密度光ディスクには読み取り及び/又は書き込みに400nm前後の青色レーザーが使用されることから、膜厚90−100μmの硬化物において405nmの透過率が80%以上であることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。
合成例1:ウレタンアクリレート(A−1)の合成
攪拌装置、冷却管及び温度計のついた丸底フラスコにイソホロンジイソシアネート0.63重量部とペンタエリスリトールトリアクリレート93.9重量部、重合禁止剤であるメトキノンを0.03重量部及びジブチル錫ジラウレート0.05重量部を仕込み、室温で30分間混合させ、80℃で5時間反応させた。イソシアネート濃度が0.1%以下になった所で反応を終了し、目的とするウレタンアクリレートを得た。
合成例2:ウレタンアクリレート(A−2)の合成
攪拌装置、冷却管及び温度計のついた丸底フラスコにヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(武田薬品工業社製タケネートD−170N;式(1)R=−(CH−)11.6重量部とジペンタエリスリトールペンタアクリレート88.4重量部、重合禁止剤であるメトキノンを0.05重量部及びジブチル錫ジラウレート0.05重量部を仕込み、室温で30分間混合させ、80℃で5時間反応させた。イソシアネート濃度が0.1%以下になった所で反応を終了し、目的とするウレタンアクリレートを得た。
合成例3:ウレタンアクリレート(A−3)の合成
攪拌装置、冷却管及び温度計のついた丸底フラスコにヘキサメチレンジイソシアネート 14.8重量部とジペンタエリスリトールペンタアクリレート85.1重量部、重合禁止剤であるメトキノンを0.03重量部及びジブチル錫ジラウレート0.05重量部を仕込み、室温で30分間混合させ、80℃で5時間反応させた。イソシアネート濃度が0.1%以下になった所で反応を終了し、目的とするウレタンアクリレートを得た。
実施例及び試験例
実施例1〜3及び比較例1〜3の樹脂組成物につき、構成材料及び使用量と記項目を評価したその結果を表1に示した。なお、記載中の「部」は重量部を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
なお、表1中に略称で示した各成分は下記の通りである。
A−1:合成例1で得られたウレタンアクリレート
A−2:合成例2で得られたウレタンアクリレート
A−3:合成例3で得られたウレタンアクリレート
IBA:イソボルニルアクリレート、第一工業化学社製
RP−1040:ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラアクリレート、日本化薬社製
THE−330:ヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンアクリレート、日本化
薬社製
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサンアクリレート、日本化薬社製
イルガキュアー184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャ
ルティーケミカル社製
【0033】
(評価用サンプルの作製)
得られた紫外線硬化型樹脂組成物を用い、以下1〜4の方法にて評価用サンプルディスクを作製した。
1.記録層としてのアゾ系色素層、反射膜層、誘電体層としてのZnS・SiO層が形成された直径120mm/0.6mm厚のポリカ−ボネ−ト製基板(第1の基板)内周上に気泡が入らないように作製した透明樹脂にスタンパを乗せて2000rpm、4秒間スピンコートして貼り合わせた。
2.高圧水銀灯(80W/cm)を透明樹脂スタンパ側から400mJ/cm照射し、第2の紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた。
3.ディスク剥離装置(オリジン電機(株)製)を用いて、透明樹脂スタンパを剥離し、評価用サンプルディスクを作製した。
【0034】
(a)剥離性テスト
ディスク剥離装置(オリジン電機(株)製)を使用して剥離性が悪い内径60mmでの剥離強度を計測器(FGC−5B、日本電産シンボ(株)製)で測定することにより行った。
剥離良好性の判断は下記基準で行った。
○・・・剥離強度1.5kgf以下
×・・・剥離強度1.5kgf以上
【0035】
(b)耐湿性テスト
耐湿性テストとしては、前記の工程で作製した剥離跡のサンプルディスクを80℃85%の高温多湿下の条件で96時間放置した後、24時間室温で保存し、高温多湿下に置く前と室温で保存した後で記録膜から剥離していないか否かで判定した。
○・・・密着
×・・・剥離
【0036】
表1から明らかなように本発明の紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物である実施例1〜3は、比較例1と比較して高温多湿下の状況でも密着力に優れている。また、多官能のアクリレートモノマーを用いた比較例2、比較例3に比べ特に剥離性にすぐれている樹脂組成物となっていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物及びその硬化物は、剥離性に優れ、かつ高温多湿下に置かれても反射膜層又は誘電体層に密着している2P剤として有用である。また、接着層を省略して1液で中間層を形成させることを可能とする、紫外線硬化型樹脂を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートを反応させて得られる6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート、(B)3官能以下の(メタ)アクリレートモノマー、及び(C)光重合開始剤を含有することを特徴とする多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートを反応させて得られる6官能以上のウレタン(メタ)アクリレート(A)において、有機イソシアネートが、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルイソシアネート、及び式(1)
【化1】

(式中、Rは、
【化2】


【化3】


【化4】


【化5】

又は
【化6】

を示す。)で表わされる3官能イソシアネートからなる群から選択される1種もしくは2種以上である、請求項1記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)において、水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートがペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのε−カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールのε−カプロラクトン付加物のトリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種もしくは2種以上である、請求項1又は請求項2記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
3官能以下の(メタ)アクリレートモノマー(B)がイソボルニルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、及びヒドロピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレートからなる群から選択される1種もしくは2種以上である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物全体に対し、(A)成分5〜80重量%、(B)成分10〜80重量%、(C)成分1〜15重量%を含有する請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の多層光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化物を有する多層光ディスク。

【公開番号】特開2010−238299(P2010−238299A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84534(P2009−84534)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】