説明

多層回路基板、モータ制御装置及び車両用操舵装置

【課題】小型で放熱性に優れた多層回路基板を提供する。
【解決手段】多層回路基板としてのパワー基板49は、交互に積層された複数の導体層61〜64と複数の絶縁層71〜74とを含む。表面層としての第1の導体層61の下層に、ヒートシンク56によって支持された下部層57を設ける。下部層57の第2の導体層62に、配線パターンとしての抵抗パターン550を形成する。抵抗パターン550の複数の部分551〜555が、放熱用のビアホール81〜85を介して、下部層47の最下層の導体層である第4の導体層64の導電パターン641〜645に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層回路基板、モータ制御装置及び車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層回路基板において、配線の高密度化が図られているが、抵抗器やコンデンサなど、多層回路基板の表面に実装される電子部品の占める面積の割合は依然として高い。
そこで、通例は多層回路基板の表面に実装されているチップ型抵抗器を、多層回路基板内に埋設することが提案されている(特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−298274号公報
【特許文献2】特開2008−166456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チップ型抵抗器を多層回路基板内に埋設した場合、厚み方向に関して多層回路基板の小型化の妨げとなる。
また、この種の多層回路基板では、発熱する電子部品からの放熱性を良くすることが望まれている。
また、この種の多層回路基板は、車両用操舵装置、例えば電動パワーステアリング装置は、電動モータに駆動電力を与えるパワー基板として用いられている。
【0005】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、小型で放熱性に優れた多層回路基板、モータ制御装置および車両用操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の導体層(61〜64;61A〜64A)が絶縁層(71〜74;71A〜74A)を介して積層されている多層回路基板(49;49A)であって、電子部品(UH,UL;VH,VL;WH,WL)を実装するための表面層(71;71A)と、上記表面層の下層に積層され、ヒートシンク(56)によって支持された下部層(57;57A)と、を備え、上記下部層は、配線パターンとしての抵抗パターン(550;550A)が形成された導体層(62;64A)を含む多層回路基板を提供する。
【0007】
本発明では、抵抗パターンを下部層の導体層に形成したので、従来のように表面層にチップ型の抵抗器を実装する場合と比較して、表面層における電子部品の実装面積を小さくすることができる。また、導体層に形成された抵抗パターンを用いるので、特許文献1,2のようにチップ型の抵抗器を埋設して用いる場合と比較して、格段の小型化を図ることができる。さらに、抵抗パターンを下部層の導体層に設けるので、当該抵抗パターンをヒートシンク側に近づけて配置することが可能となり、その結果、抵抗パターンの発生する熱をヒートシンク側へ放熱し易くなる。
【0008】
また、上記抵抗パターン(550A)は、上記下部層(57A)の最下層の導体層(64A)に形成されている場合がある(請求項2)。この場合、抵抗パターンの発生する熱を外部へ効率的に逃がすことができる。抵抗パターンの発生する熱を、例えば多層回路基板の下部層を支持する金属製ヒートシンク等に効率的に逃がすことにより、放熱性を向上することができる。
【0009】
また、上記抵抗パターンの一部(551〜555)が、上記下部層の最下層の導体層(64)にビアホール(81〜85)を介して接続されている場合がある(請求項3)。この場合、抵抗パターンの発生する熱を、ビアホールの導体を介して下部層の最下層の導体層に効率的に逃がすことができる。抵抗パターンの発生する熱を、例えば多層回路基板の下部層を支持する金属製ヒートシンク等に効率的に逃がすことができ、放熱性を向上することができる。
【0010】
また、上記抵抗パターンが形成された上記導体層(62)とは絶縁層(72)を介して配置される導体層(73)に形成された配線パターン(631)は、積層方向(Y1)に関して上記抵抗パターンと対向しないように配置されている場合がある(請求項4)。仮に配線パターンと抵抗パターンが絶縁層を挟んで対向しているすると、絶縁層を構成する樹脂を誘電体とするコンデンサとして機能し、その静電容量によって例えば電流検出回路等に悪影響を及ぼすおそれがある。これに対して、本発明では、上記抵抗パターンが積層方向に関して隣接する他の配線パターンと対向しないので、静電容量を格段に小さくでき、その結果、静電容量による悪影響を防止することができる。
【0011】
また、本発明は、上記多層回路基板と、上記多層回路基板に実装されたモータ駆動用素子(UH,UL;VH,VL;WH,WL)を含むモータ駆動回路(52;52A)と、を備え、上記抵抗パターンは、上記モータ駆動回路に含まれているモータ制御装置(12)を提供する(請求項5)。この場合、小型で放熱性が良く安定したモータ駆動を行うことができるモータ制御装置を実現することができる。
【0012】
また、本発明は、上記モータ制御装置と、上記モータ制御装置によって駆動され、操舵機構に操舵力を付与する電動モータ(18)と、を備える車両用操舵装置(1)を提供する(請求項5)。この場合、小型で安定したモータ駆動を行うことができる電動パワーステアリング装置を実現することができる。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】操舵補助機構の概略斜視図である。
【図3】電動パワーステアリング装置の主要部の断面図である。
【図4】モータ制御装置の要部の回路図である。
【図5】多層回路基板としてのパワー基板の概略断面図である。
【図6】パワー基板の概略分解斜視図である。
【図7】図5とは別角度からのパワー基板の要部の断面図である。
【図8】本発明の別の実施の形態のモータ制御装置の要部の回路図である。
【図9】本発明のさらに別の実施の形態のモータ制御装置の要部の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、電動パワーステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール2と、ステアリングホイール2の回転に連動して転舵輪3を操舵する操舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ステアリングホイール2と操舵機構4とは、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して機械的に連結されている。
【0015】
本実施の形態では、操舵補助機構5がステアリングシャフト6にアシスト力(操舵補助力)を与える例に則して説明する。しかしながら、本発明を、操舵補助機構5が後述するピニオン軸にアシスト力を与える構造や、操舵補助機構5が後述するラック軸にアシスト力を与える構造に適用することも可能である。
ステアリングシャフト6は、ステアリングホイール2に連結された入力軸8と、中間軸7に連結された出力軸9とを含む。入力軸8と出力軸9とは、トーションバー10を介して同一軸線上で相対回転可能に連結されている。
【0016】
ステアリングシャフト6の周囲に配置されたトルクセンサ11は、入力軸8および出力軸9の相対回転変位量に基づいて、ステアリングホイール2に入力された操舵トルクを検出する。トルクセンサ11のトルク検出結果は、操舵補助のためのモータ制御装置としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)12に入力される。また、車速センサ90からの車速検出結果がECU12に入力される。中間軸7は、ステアリングシャフト6と操舵機構4とを連結している。
【0017】
操舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示せず)を介して転舵輪3が連結されている。
ピニオン軸13は、中間軸7に連結されている。ピニオン軸13は、ステアリングホイール2の操舵に連動して回転するようになっている。ピニオン軸13の先端(図1では下端)には、ピニオン16が設けられている。
【0018】
ラック軸14は、自動車の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の途中部には、上記ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることで、転舵輪3を転舵することができる。
【0019】
ステアリングホイール2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助用の電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを操舵機構4に伝達するための伝達機構としての減速機構19とを含む。減速機構19は、駆動ギヤとしてのウォーム軸20と、このウォーム軸20と噛み合う従動ギヤとしてのウォームホイール21とを含む。減速機構19は、ギヤハウジング22内に収容されている。
【0020】
ウォーム軸20は、図示しない継手を介して電動モータ18の回転軸(図示せず)に連結されている。ウォーム軸20は、電動モータ18によって回転駆動される。また、ウォームホイール21は、ステアリングシャフト6とは一体回転可能に連結されている。
電動モータ18がウォーム軸20を回転駆動すると、ウォーム軸20によってウォームホイール21が回転駆動され、ウォームホイール21およびステアリングシャフト6が一体回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォーム軸20を回転駆動することで、転舵輪3が転舵されるようになっている。
【0021】
電動モータ18は、三相ブラシレスモータからなり、モータ制御装置としてのECU12によって制御される。ECU12は、トルクセンサ11からのトルク検出結果、車速センサ90からの車速検出結果等に基づいて電動モータ18を制御する。具体的には、ECU12では、トルクと目標アシスト量との関係を車速毎に記憶したマップを用いて目標アシスト量を決定し、電動モータ18の発生するアシスト力を目標アシスト量に近づけるように制御する。
【0022】
図2は、操舵補助機構5の概略斜視図である。図2を参照して、制御装置としてのECU12を収容するためのハウジングHは、互いに接触する第1ハウジング23および第2ハウジング24によって構成されている。
第1ハウジング23および第2ハウジング24は、それぞれ、一端が開放した概ね四角箱形に形成されている。第1および第2ハウジング23,24の互いの端部は、突き合わされ、且つ固定ねじ25により互いに締結されている。
【0023】
一方、電動モータのモータハウジング26は、筒状のモータハウジング本体27と、上記の第1ハウジング23とにより構成されている。
また、ギヤハウジング22は、ウォーム軸20が収容された筒状の駆動ギヤ収容ハウジング28と、ウォームホイール21が収容された筒状の従動ギヤ収容ハウジング29と、上記の第2ハウジング24とにより構成されている。
【0024】
図3は、電動パワーステアリング装置1の主要部の断面図である。図3を参照して、第1ハウジング23および第2ハウジング24によって、ECU12を収容する収容室32が形成されている。
第1ハウジング23は、収容室32の一部を区画する第1内壁面33を含み、第2ハウジング24は収容室32の一部を区画する第2内壁面34を含み、これら第1内壁面33および第2内壁面34は、電動モータ18の回転軸35の軸方向X1に対向している。
【0025】
電動モータ18の回転軸35およびウォーム軸20が同軸上に並べて配置されており、両者は、継手36を介して同軸的に動力伝達可能に連結されている。ウォーム軸20は、第1軸受37および第2軸受38を介して、駆動ギヤ収容ハウジング28に両端支持されている。回転軸35は、第1ハウジング23に保持された第3軸受46およびモータハウジング本体27に保持された第4軸受47によって、回転可能に支持されている。
【0026】
本実施形態では、電動モータ18として三相ブラシレスモータが用いられている。電動モータ18は、上記モータハウジング26と、このモータハウジング26内に収容されたロータ39およびステータ40とを含む。ロータ39は、回転軸35と一体回転可能に連結されている。
ステータ40は、モータハウジング26のモータハウジング本体27の内周に固定されている。ステータ40は、モータハウジング本体27の内周に固定されたステータコア41と、複数のコイル42とを含む。ステータコア41は、ステータコア41の環状のヨークと、このヨークの内周から径方向内方へ突出する複数のティースとを含む。各コイル42は対応するティースに巻回されている。
【0027】
また、モータハウジング26のモータハウジング本体27と第1ハウジング23とにより区画されるモータ室43内には、環状またはC形形状をなすバスバー45が収容されている。各ティースに巻回されたコイル42は、バスバー45と接続されている。バスバー45は、各コイル42と後述するパワー基板49との接続部に用いられる導電接続材である。バスバー45は、各コイル42に、パワー基板49からの電力を配電するための配電部材として機能する。
【0028】
第1ハウジング23は、収容室32とモータ室43とを仕切る仕切り壁59を底壁として含んでいる。この仕切り壁59に、上記第1内壁面33が設けられている。
また、仕切り壁59から第2ハウジング24側に向けて延びる筒状部48が形成されている。筒状部48の内周には、第3軸受46の外輪が保持されている。
収容室32には、ECU12の一部を構成する多層回路基板としてのパワー基板49および制御基板50が収容され保持されている。回路基板としてのパワー基板49には、電動モータ18を駆動するためのパワー回路の少なくとも一部(例えば電解効果トランジスタ)が実装されている。上記の各コイル42と接続されたバスバー45は、第1ハウジング23の上記仕切り壁59を挿通して収容室32内に進入するバスバー端子51を介して、パワー基板49に接続されている。
【0029】
収容室32内において、パワー基板49は、第1内壁面33および第2内壁面34のうち第1内壁面33に相対的に近接して配置されている。第1内壁面33を有する仕切り壁59は、電動モータ18の回転軸35の軸方向X1に関しての厚みが相対的に厚い厚肉部59aと相対的に薄い薄肉部59bとを含んでいる。厚肉部59aは、収容室32内に突出するように設けられている。上記のパワー基板49は、厚肉部59aにおける第1内壁面33に接触して配置されている。厚肉部59aは、パワー基板49を受ける座部となっている。
【0030】
本実施の形態では、パワー基板49は、厚肉部59aにおける第1内壁面33に対して熱伝導可能に接触しており、上記の厚肉部59aは、パワー基板49の熱を逃がすためのヒートシンクとして機能している。
制御基板50は、電動モータ18の回転軸35の軸方向X1に関して、第2ハウジング24の第2内壁面34とパワー基板49との間に配置されている。パワー基板49および制御基板50は、電動モータ18の回転軸35の軸方向X1に関して所定の間隔を隔てて配置されている。
【0031】
次いで、図4は、モータ制御装置としてのECU12の要部の概略図である。電動モータ18は、U相界磁コイル18U、V相界磁コイル18VおよびW相界磁コイル18Wを有するステータと、これらの界磁コイル18U,18V,18Wからの反発磁界を受ける永久磁石が固定されたロータとを備えている。
モータ駆動回路52は、3相ブリッジインバータ回路であり、電動モータ18のU相に対応した一対のモータ駆動用素子としての電界効果トランジスタUH,ULの直列回路と、V相に対応した一対のモータ駆動用素子としての電界効果トランジスタVH,VLの直列回路と、W相に対応した一対のモータ駆動用素子としての電界効果トランジスタWH,WLの直列回路とを、直流電源53とアース54との間に並列に接続して構成されている。
【0032】
電動モータ18のU相界磁コイル18Uは、電界効果トランジスタUH,ULの間の接続点に接続されており、V相界磁コイル18Vは、電界効果トランジスタVH,VLの間の接続点に接続されており、W相界磁コイル18Wは、電界効果トランジスタの直列回路WH,WLの間の接続点に接続されている。
アース54と3相ブリッジインバータ回路とを連結する直流回路に、電動モータ18の消費電流検出用の抵抗55(シャント抵抗に相当)が配されている。
【0033】
図5はパワー基板49の概略断面図であり、図6はパワー基板49の分解斜視図である。これらの図を参照して、パワー基板49は、複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層された多層回路基板である。具体的には、表面層としての第1の導体層61、第2の導体層62、第3の導体層63および第4の導体層64と、第1の絶縁層71、第2の絶縁層72、第3の絶縁層73および第4の絶縁層74とが交互に積層されている。第1の導体層61および第4の導体層64は、例えば樹脂フィルム上に形成された銅箔により構成されている。
【0034】
表面層としての第1の導体層61の導電パターン611,612の一方は、対応する導体配線等を介して三相ブリッジインバータ回路と接続され、他方は、対応する導体配線等を介してアース54に接続されている。表面層としての第1の導体層61の下層に、例えばアルミニウム板からなるヒートシンク56によって支持された下部層57が積層されている。下部層57は、第1の絶縁層71から第4の絶縁層74までの積層部に相当する。ヒートシンク56は、第1ハウジング23自体、例えば上記厚肉部59aを含む仕切り壁59により構成されていてもよい。
【0035】
本実施の形態の特徴とするところは、図4で示した抵抗55が、図6に示すように、下部層57の何れかの導体層62〜64に、配線パターンとしての抵抗パターン550として形成されている点にある。本実施の形態では、抵抗パターン550が、第2の導体層62に形成された例に則して説明するが、これに代えて、抵抗パターン550が、第3の導体層63に形成されていてもよいし、また、第4の導体層64に形成されていてもよい。さらには、抵抗パターン550を、異なる導体層に形成された複数の分割体で構成し、これらの分割体をビアホールを介して接続するようにしてもよい。
【0036】
抵抗パターン550の複数の部分551,552,553,554,555(抵抗パターンの一部)が、それぞれ対応するビアホール81,82,83,84,85を介して、下部層57の最下層の導体層である第4の導体層64の対応する導電パターン641,642,643,644,645に接続されている。抵抗パターン550の発生する熱が、複数のビアホール81〜85を介して、ヒートシンク56に近接して支持されている下部層57の最下層の第4の導体層64に逃がされるようになっている。
【0037】
ビアホール81は、表面層としての第1の導体層61を、抵抗パターン550の一端551を挿通して、第4の導体層64の導電パターン641に接続している。ビアホール82は、表面層としての第1の導体層62を、抵抗パターン550の他端552を挿通して、第4の導体層64の導電パターン642に接続している。ビアホール81,82は抵抗パターン550を電源ラインに接続する機能も果たしている。
【0038】
図5とは別角度からのパワー基板49の要部の断面図である図6に示すように、第2の導体層62の抵抗パターン550と、第3の導体層63の配線パターン631とが、積層方向Y1に重ならないようにされている。換言すると、抵抗パターン550が形成された第2の導体層62とは第2の絶縁層72を介して隣接する第3の導体層63の配線パターン631は、積層方向Y1に関して抵抗パターン550と対向しないように配置されている。
【0039】
本実施の形態の多層回路基板(パワー基板49)によれば、抵抗パターン550を下部層57の導体層(図5の例では、第2の導体層62)に形成したので、従来のように表面層にチップ型の抵抗器を実装する場合と比較して、表面層としての第1の導体層61における電子部品の実装面積を小さくすることができる。
また、抵抗パターン550を用いるので、従来のようにチップ型の抵抗器を埋設して用いる場合と比較して、格段の小型化を図ることができる。
【0040】
さらに、抵抗パターン550を下部層57の導体層(図5の例では、第2の導体層62)に設けるので、抵抗パターン550をヒートシンク56側に近づけて配置することが可能となり、その結果、抵抗パターン550の発生する熱をヒートシンク56側へ放熱し易くなる。
また、抵抗パターン550の複数の部分551〜555を、下部層57の最下層の導体層(本実施の形態では第4の導体層64)の導電パターン641〜645に、それぞれ、ビアホール81〜85を介して接続した。したがって、抵抗パターン550の発生する熱を、ビアホール81〜85の導体を介して下部層57の最下層の導体層(第4の導体層)に効率的に逃がすことができる。ひいては、下部層57を支持するヒートシンク56に効率的に逃がすことができ、放熱性を格段に向上することができる。
【0041】
また、抵抗パターン550が形成された第2の導体層62とは第2の絶縁層72を介して隣接する第3の導体層63の配線パターン631が、積層方向Y1に関して抵抗パターン550と対向しないように配置されているので、下記の利点がある。すなわち、仮に、配線パターンと抵抗パターンが絶縁層を挟んで対向しているすると、絶縁層を構成する樹脂を誘電体とするコンデンサとして機能し、その静電容量によって例えば電流検出回路等に悪影響を及ぼすおそれがある。これに対して、本実施の形態では、抵抗パターン550が積層方向Y1に関して隣接する配線パターン631と対向しないので、静電容量を格段に小さくでき、その結果、静電容量による悪影響(例えば電流検出性能への悪影響)を防止することができる。
【0042】
また、モータ制御装置としてのECU12が、モータ駆動回路52を含み、そのモータ駆動回路52が、多層回路基板としてのパワー基板49に実装されたモータ駆動用素子(電解効果トランジスタUH,UL;VH,VL;WH,WLと、抵抗パターン550とを含む。したがって、小型で放熱性が良く安定したモータ駆動を行うことができるECU12を実現することができる。また、このようなモータ制御装置としてのECU12によって、操舵補助用の電動モータ18を駆動するので、小型で安定したモータ駆動を行うことができる電動パワーステアリング装置1を実現することができる。
【0043】
図6の実施の形態では、抵抗パターン550を第2の導体層62に形成したが、図8の実施の形態に示すように、抵抗パターン550Aを、多層回路基板としてのパワー基板49Aの下部層57Aの最下層の導体層である第4の導体層64Aに形成するようにしてもよい。図8に示すように、表面層としての第1の導体層61A、第2の導体層62A、第3の導体層63Aおよび第4の導体層64Aと、第1の絶縁層71A、第2の絶縁層72A、第3の絶縁層73Aおよび第4の絶縁層74Aが交互に積層されている。
【0044】
本実施の形態では、抵抗パターン550Aの両端551A,552Aと第1の導体層61Aの導電パターン661A、662Aとが、ビアホール81A,82Aを介して接続されている。抵抗パターン550A自体が最下層の第4の導体層64Aにあるので、図6に実施の形態におけるビアホール83〜85を廃止することができる。
また、図4の実施の形態では、抵抗55をアース54と3相ブリッジインバータ回路とを連結する直流回路に配置したが、これに代えて、図9の実施の形態に示すように、モータ駆動回路52Aの各相の電解効果トランジスタUH,UL;VH,VL;WH,WLと、それぞれ対応する相の界磁コイル18U,18V,18Wとを接続する直列回路に、それぞれ、各相の電流検出のための抵抗55B,55C,55Dを配置するようにしてもよい。図示していないが、各抵抗55B,55C,55Dが、それぞれ、抵抗パターンとして、何れかの導体層に形成される。
【0045】
また、図示していないが、図4の実施の形態における抵抗55を、直流電源53と3相ブリッジインバータ回路とを連結する直流回路に配置するようにしてもよい。
本発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、いわゆるコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置に本発明が適用された例について説明したが、これに限らず、いわゆるピニオンアシスト式の電動パワーステアリング装置や、いわゆるラックアシスト式の電動パワーステアリング装置に、本発明を適用してもよい。
【0046】
また、上述の実施形態では、本発明が、電動モータの出力を操舵補助力として出力する電動パワーステアリング装置に適用された例について説明したが、これに限らない。例えば、操舵部材の操舵角に対する転舵輪の転舵角の比を変更可能な伝達比可変機構を備え、伝達比可変機構を駆動するために電動モータの出力を用いる伝達比可変式の車両用操舵装置や、操舵部材と転舵輪との機械的な連結が解除され、転舵輪を電動モータの出力で操向するステア・バイ・ワイヤ式の車両用操舵装置等に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置)、2…操舵部材、4…操舵機構、12…ECU(モータ制御装置)、18…電動モータ、49…パワー基板(多層回路基板)、52;52A…モータ駆動回路、53…直流電源、54…アース、55;55A;55B,55C,55D…抵抗、550;550A…抵抗パターン、551,552,553,554,555…部分(抵抗パターンの一部)、56…ヒートシンク、61;61A…第1の導体層、62;62A…第2の導体層、63;63A…第3の導体層、631…(隣接する導体層に形成された)配線パターン、64;64A…第4の導体層、71;71A…第1の絶縁層、72;72A…第2の絶縁層、73;73A…第3の絶縁層、74;74A…第4の絶縁層、81,82,83,84,85…ビアホール、UH,UL;VH,VL;WH,WL…電解効果トランジスタ(電子部品)、Y1…積層方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体層が絶縁層を介して積層されている多層回路基板であって、
電子部品を実装するための表面層と、
上記表面層の下層に積層され、ヒートシンクによって支持された下部層と、を備え、
上記下部層は、配線パターンとしての抵抗パターンが形成された導体層を含む多層回路基板。
【請求項2】
請求項1において、上記抵抗パターンは、上記下部層の最下層の導体層に形成されている多層回路基板。
【請求項3】
請求項1において、上記抵抗パターンの一部が、上記下部層の最下層の導体層にビアホールを介して接続されている多層回路基板。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項において、上記抵抗パターンが形成された上記導体層とは絶縁層を介して配置される導体層に形成された配線パターンは、積層方向に関して上記抵抗パターンと対向しないように配置されている多層回路基板。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の多層回路基板と、
上記多層回路基板に実装されたモータ駆動用素子を含むモータ駆動回路と、を備え、
上記抵抗パターンは、上記モータ駆動回路に含まれているモータ制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のモータ制御装置と、
上記モータ制御装置によって駆動され、操舵機構に操舵力を付与する電動モータと、を備える車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−228453(P2011−228453A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96348(P2010−96348)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】