説明

多層積層体及びその製造方法

【課題】非極性重合体の基材層と極性重合体の基材層とが特定の重合体層を介して積層することにより非極性重合体の基材層と極性重合体の基材層との界面剥離がなく、接着強度に優れた多層積層体を提供すること。
【解決手段】基材層と官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成する重合体層と、で構成される多層積層体であって、官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成する重合体層が、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基含有水素添加ジエン系重合体である多層積層体
を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材、容器、建材、電気・電子機器用部材、情報・記録用材料等のフィルム、シートとして有用な多層積層体に係るものであり、詳しくは(非)極性重合体層間を特定の接着層で一体に接合した多層積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被包装体の種類が拡大するにつれて、用途に応じた種々の包装用フィルムが開発されている。例えば、包装用フィルムとして、高強度フィルム、高弾性フィルム、柔軟性フィルム、接着性フィルム、透明性フィルム、導電性フィルム、遮光性フィルム、ガスバリヤー性フィルム、耐熱性フィルム、耐薬品性フィルムや、これらを複合化した複合フィルム等が知られている。しかしながら、これらの包装用フィルムは、それぞれ構成ポリマーの特性が著しく異なるため、用途に応じて使い分けされており、1つのフィルムで複数の特性を同時に満足するのが困難である。そこで例えば、ポリエステル系フィルム基材に、ポリスチレン、ポリエチレン等の異種材料のフィルム状成型物を貼り合わせて(ラミネート)単独では有し得ない特性、例えば強度、ガスバリヤー性、耐水性、防湿性、ヒートシール性、外観などを補った積層フィルムまたはシートを製造することは一般に行われており、こうして得られる製品は主に包装材料などに広く使用されている。しかし、異種材料のフィルム状成型物を貼り合わせる際、特に非極性重合体のフィルムの場合は、接着改質層を設ける必要があり、従来の水系塗布剤を用いるとフィルム表面エネルギーが低いため塗液のハジキが生じ、外観を損ねてしまう。また、溶剤系の塗布剤を用いた場合、衛生性や、リサイクル性を考慮した場合好ましくない。
又、極性重合体のフィルムの場合であっても、表面が平坦な場合、基材面にアンカーコート剤を塗布、乾燥後、その上に他のフィルムがラミネートされる。
しかし、一般にアンカーコート剤を用いるこれらの方法は、高価なアンカーコート剤を使用することによる製造コストの上昇の問題、アンカーコート剤の塗布及び乾燥という煩雑な工程を必要とする問題、アンカーコート剤に含まれる有機溶剤の蒸発乾燥工程時に人体に有害な有機溶剤が飛散することによる作業環境及びその周辺環境の衛生上の問題、引火性の有機溶剤の使用に伴う火災の発生の心配、あるいは、有機溶剤などのアンカーコート成分が最終製品である積層フィルムまたはシートに残留し、それに起因する臭気のため、該製品の食品包装用途などへの適用を制限するという問題などを有する。これらアンカーコート剤を用いない方法として、公知のオゾン処理機を用い、フィルム基材面をオゾン処理し、基材上にアンカーコート剤を塗布することなく圧着ラミネートして積層体が製造される方法や、不飽和カルボン酸などをポリオレフィン系樹脂にグラフト変成した接着性樹脂を用い、フィルム基材にノーアンカーで圧着ラミネートして積層体を製造する方法などが知られている。しかし、これらの方法で得られた積層フィルムまたはシートのフィルム基材とラミネート樹脂との接着強度は十分とはいえず、用途によっては適用範囲の制約を受ける。
【0003】
【特許文献1】特開2004−2858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来の技術的課題を背景になされたもので、非極性重合体の基材層と極性重合体の基材層とが特定の重合体層を介して積層することにより非極性重合体の基材層と極性重合体の基材層との界面剥離がなく、接着強度に優れた多層積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、非極性重合体に対しても極性重合体に対しても優れた接着性を有する重合体を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記の多層積層体及びその製造方法が提供される。
[1]基材層と官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成する重合体層と、で構成される多層積層体であって、官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成する重合体層が、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基含有水素添加ジエン系重合体であることを特徴とする多層積層体。
[2]非極性重合体で構成される基材層(イ−1)と極性重合体で構成される基材層(イ−2)とが、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成される重合体層(ロ)を介して積層されることを特徴とする多層積層体。
[3]上記重合体層(ロ)を構成する官能基含有水素添加ジエン系重合体が、下記重合体ブロックB、並びに、下記重合体ブロックA及び/又は下記重合体ブロックCを有し、且つ、共役ジエン部分の二重結合の少なくとも80%が水素添加された水素添加ジエン系重合体であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の多層積層体。
A:芳香族ビニル化合物単位を50質量%を超えて含有する重合体ブロック
B:共役ジエン化合物単位を50質量%を超えて含有し、その1,2−及び3,4−結合含量が30%以上90%以下である重合体ブロック
C:共役ジエン化合物単位を50質量%を超えて含有し、その1,2−及び3,4−結合含量が30%未満である重合体ブロック
[4]上記重合体層(ロ)を構成する官能基含有水素添加ジエン系重合体の官能基含量が、0.01〜100個/ポリマーであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の多層積層体。
[5]上記重合体層(ロ)を構成する官能基含有水素添加ジエン系重合体の官能基が、アミノ基を含有することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の多層積層体。
[6]上記基材層(イ−1)を構成する非極性重合体が、オレフィン系重合体又はスチレン系重合体であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の多層積層体。
[7]上記基材層(イ−2)を構成する極性重合体が、ポリエステル重合体であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の多層積層体。
[8]非極性重合体及び極性重合体と、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基含有水素添加ジエン系重合体と、を共押出して積層することを特徴とする多層積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の多層積層体は、ポリスチレン、ポリオレフィン等の非極性重合体の基材層とポリエステル等の極性重合体の基材層とを官能基含有水素添加ジエン系重合体を接着層として積層して構成されているので、層間接着力に優れ、加えて、高温下の共押出し多層フィルム成形法により高い生産性と安全性でもって製造することができる。
本発明の多層積層体は、包装材、容器、医療用材、建材、電気・電子機用部材、情報記録用などのフィルム、シート材料、ラベル、粘着テープの基材として、各種の用途が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の多層積層体の形態を具体的に説明する。
本発明の多層積層体は、基材層に、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成される重合体層(ロ)が積層されるか、あるいは非極性重合体で構成する基材層(イ−1)と極性重合体で構成される基材層(イ−2)とが、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成される重合体層(ロ)を介して積層されることを特徴とする。
以下、各構成要素ごとにさらに具体的に説明する。
【0008】
1.非極性重合体
本発明の非極性重合体で構成される基材層に使用する非極性重合体としては、オレフィン系重合体、スチレン系重合体などが挙げられ、オレフン系重合体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン共重合(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合(EPDM)、エチレン・1−ブテン共重合(EBM)、エチレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合(EBDM)等のエチレン・α−オレフィン・(非共役ジエン)共重合等が挙げられる。
スチレン系重合体の例としては、スチレン単独重合体(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、エチレン・スチレン共重合体(ESI)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0009】
2.極性重合体
本発明の極性重合体で構成される基材層に使用する極性重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6,6、ナイロン4,6などの脂肪族ポリアミド、ポリフェニレンイソフタルアミド、ポリフェニレンテレフタルアミド、メタキシリレンジアミンなどの芳香族ポリアミド、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのアクリル系重合体、その他、芳香族ポリカーボネート、ポリメタクリロニトリル、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、セルロース誘導体、アルカリセルロース、セルロースエステル、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースザンテート、セルロースニトレート、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテルエステル、フッ素樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリイソブチルビニルエーテル、ポリメチルビニルエーテル、ポリフェニレンオキシドなどが挙げられる。その中でも芳香族又は脂肪族のポリエステルが好ましい。
【0010】
3.官能基含有水素添加ジエン系重合体
本発明で使用する官能基含有水素添加ジエン系重合体としては、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を重合して得られる共役ジエン系重合体のうち、共役ジエンに由来する二重結合の少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が水素添加(以下、水素添加を「水添」ともいう)された水添ジエン系重合体にカルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が含有するもので、たとえば、以下の重合体が挙げられる。
【0011】
(a)共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を有機アルカリ金属化合物の存在下でブロック共重合し、該重合体を水素添加した重合体に下記一般式(1)で表わせる(メタ)アクリロイル基含有化合物、下記一般式(2)で表せるエポキシ基含有化合物又は無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種を溶液中又は押し出し機等の混練機中で反応して得られる重合体。
(b)共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、アミノ基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下でブロック共重合し、その後、該重合体を水素添加した重合体。
(c)共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物と、アミノ基を有する不飽和単量体とを有機アルカリ金属化合物の存在下でブロック共重合し、その後、該重合体を水素添加した重合体。
(d)共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を有機アルカリ金属化合物の存在下でブロック共重合し、得られた重合体の活性点に、アルコキシシラン化合物を反応させた重合体とし、その後、該重合体を水素添加した重合体。
(e)共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を有機アルカリ金属化合物の存在下でブロック共重合し、得られた重合体の活性点に、エポキシ化合物又はケトン化合物又は下記一般式(3)〜(7)を除く含窒素化合物を反応させた重合体とし、その後、該重合体を水素添加した重合体。
【0012】
上記「共役ジエン化合物」としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。この中で、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
上記「芳香族ビニル化合物」としては、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられる。この中で、スチレン及びtert−ブチルスチレンが好ましい。
上記「有機アルカリ金属化合物」としては、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物等が挙げられ、特にn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物が好ましい。
尚、(a)〜(e)の重合体の中で、特に官能基としてアミノ基を含有する重合体が好ましい。
【0013】
(a)の方法で使用する(メタ)アクリロイル基含有化合物及びエポキシ化合物としては、下記一般式(1)及び(2)が挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
[上記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aはヘテロ原子を含んでも良い炭素数1〜20の炭化水素基、又は単結合であり、Xはアルコキシシリル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、又はオキサゾリン基であり、qはアミノ基の場合1〜3の整数、その他の基の場合1を示す。]
【0016】
【化2】

【0017】
[上記一般式(2)中、Rは炭素数2〜18のアルケニル基であり、Xはカルボニルオキシ基、メチレンオキシ基、又はフェニレンオキシ基を示す。]
(a)で得られる重合体は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を有機アルカリ金属化合物の存在下でブロック共重合し、該重合体を水素添加した重合体に上記一般式(1)の(メタ)アクリロイル基含有化合物、上記一般式(2)のエポキシ化合物又は無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種を溶液中又は押出機等の混練り機中で反応して得られるもので、その重合体の具体例としては、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン・プロピレンースチレンブロック共重合体、無水マレイン酸変性スチレン−エチレン・ブチレン・プロピレンースチレンブロック共重合体、エポキシ変性スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、エポキシ変性スチレン−エチレン・プロピレンースチレンブロック共重合体、エポキシ変性スチレン−エチレン・ブチレン・プロピレンースチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0018】
(b)の方法で使用するアミノ基を有する有機アルカリ金属化合物としては、下記一般式(3)又は(4)が挙げられる。
【0019】
【化3】



【0020】
【化4】



【0021】
[上記一般式(3)中、R及びRは両方とも炭素数3〜18のトリアルキルシリル基であるか、又はどちらか一方が上記トリアルキルシリル基であり、他方が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基若しくは炭素数1〜100のオルガノシロキシ基である。また、上記一般式(3)及び(4)中のRは、炭素数1〜20のアルキレン基又はアルキリデン基である。更に、上記一般式(4)中のRは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数1〜100のオルガノシロキシ基である。]
【0022】
上記一般式(3)又は(4)で表される有機アルカリ金属化合物の具体例としては、3−リチオ−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノプロパン(CAS No.289719−98−8)、2−リチオ−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノエタン、3−リチオ−2,2−ジメチル−1−[N,N−ビス(トリメチルシリル)]アミノプロパン、2,2,5,5−テトラメチル−1−(3−リチオプロピル)−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、2,2,5,5−テトラメチル−1−(3−リチオ−2,2−ジメチル−プロピル)−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、2,2,5,5−テトラメチル−1−(2−リチオエチル)−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、3−リチオ−1−[N−(tert−ブチル−ジメチルシリル)−N−トリメチルシリル]アミノプロパン、3−リチオ−1−(N−メチル−N−トリメチルシリル)アミノプロパン、3−リチオ−1−(N−エチル−N−トリメチルシリル)アミノプロパンなどが挙げられる。
【0023】
(c)の方法で使用するアミノ基を有する不飽和単量体としては、下記一般式(5)又は(6)である。
【0024】
【化5】




【0025】
【化6】


【0026】
[上記一般式(5)及び(6)中、R及びRは、両方とも炭素数3〜18のトリアルキルシリル基であるか、又はどちらか一方が上記トリアルキルシリル基であり、他方が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基若しくは炭素数1〜100のオルガノシロキシ基である。また、上記一般式(6)中、Rは、炭素数1〜20のアルキレン基又はアルキリデン基である。更に、上記一般式(5)及び(6)中のnは1〜3である。]
【0027】
上記一般式(5)又は(6)で表される不飽和単量体の具体例としては、p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン、p−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノメチル]スチレン、p−{2−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチル}スチレン、m−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン、p−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノ)スチレン、p−(N−メチル−N−トリメチルシリルアミノメチル)スチレンなどが挙げられる。
【0028】
また、(d)の方法で使用するアルコキシシラン化合物としては、下記一般式(7)が挙げられる。
10(4−m−n)Si(OR11 (7)
[上記一般式(7)中、R10は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数1〜100のオルガノシロキシ基であり、R10が複数ある場合は、各R10は同じ基でも異なる基でもよい。R11は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基であり、R11が複数ある場合は、各R11は同じ基でも異なる基でもよい。XはN原子を含む極性基を有する置換基であり、Xが複数ある場合は、各Xは同じ基でも異なる基でもよく、また、各Xは独立の置換基でも環状構造を形成していてもよい。mは1、2又は3であり、nは1、2又は3の整数を示す。mとnの和は1〜4である。]
【0029】
上記一般式(7)で表されるアルコキシシラン化合物の具体例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルジメチルエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(メチルジメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(メチルジメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(メチルジメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(メチルジメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(メチルジメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(メチルジエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(メチルジエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(メチルジエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(メチルジエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(メチルジエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(ジメチルメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(ジメチルメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(ジメチルメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(ジメチルメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(ジメチルメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(ジメチルエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(ジメチルエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(ジメチルエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(ジメチルエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(ジメチルエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどが挙げられる。
【0030】
(e)の方法で使用するエポキシ化合物としてはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が、ケトン化合物としてはアセトン、ベンゾフェノン等が、上記一般式(3)〜(7)を除く含窒素化合物としては下記一般式(8)で表せる化合物
1213C=N−Y (8)
[上記一般式(8)中、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数1〜100のオルガノシロキシ基である。また、Yは水素原子、炭素数3〜18のトリアルキルシリル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又は炭素数1〜100のオルガノシロキシ基である。]で具体例としてN−ベンジリデンメチルアミン、N−ベンジリデンエチルアミン、N−ベンジリデンブチルアミン、N−ベンジリデンアニリンなどが挙げられる。
【0031】
また、官能基含有水素添加ジエン系重合体における芳香族ビニル化合物の重合単位と共役ジエン化合物の重合単位との含有量の割合は、質量比で0/100〜80/20、好ましくは0/100〜60/40の範囲である。
【0032】
官能基含有水素添加ジエン系重合体は、次に例示する構成単位からなる重合体ブロック(A)、(B)及び(C)によって構成されるものとすることができ、少なくとも1種の重合体ブロック(B)並びに、少なくとも1種の重合体ブロック(A)及び/又は少なくとも1種の重合体ブロック(C)を有するものが好ましく用いられる。
(A):芳香族ビニル化合物が50質量%を超えて含有する重合体ブロック
(B):共役ジエン化合物が50質量%を超えて含有し、その1,2−及び3,4−結合含量が30%以上90%以下である重合体ブロック
(C):共役ジエン化合物が50質量%を超えて含有し、その1,2−及び3,4−結合含量が30%未満である重合体ブロック
また、(A),(B),(C)の重合体ブロックが2種以上の化合物からなる共重合体ブロックであるときは、得られる熱可塑性樹脂組成物の目的に応じて、芳香族ビニル化合物又は共役ジエン化合物の含有量が共重合体ブロック中で連続的に変化するいわゆるテーパー型、若しくはランダム型にすることができる。
【0033】
上記「(A)〜(C)の重合体ブロックの中から選ばれた2以上の重合体ブロックを含むブロック共重合体」の例としては、(A)−(B)、(A)−(C)、[(A)−(B)]x―Y、[(A)−(C)]x―Y、(A)−(B)−(C)、(C)−(B)−(C)、(A)−(B)−(A)、(A)−(B)−(A)、[(A)−(B)−(C)]x―Y、[(A)−(B)−(A)]x―Y、[(A)−(C)−(A)]x―Y、(A)−(B)−(A)−(B)、(B)−(A)−(B)−(A)、(A)−(C)−(A)−(C)、(C)−(A)−(C)−(A)、[(A)−(B)−(A)−(B)]x―Y、(A)−(B)−(A)−(B)−(A)、[(A)−(B)−(A)−(B)−(A)]x―Y、[(B)−(A)]x―Y、[(C)−(A)]x―Y、(B)−(A)−(B)−(C)、(B)−(A)−(B)−(A)、(B)−(A)−(C)−(A)、[(C)−(A)−(B)−(C)]x―Y、などが挙げられる(但し、x≧2であり、Yはカップリング剤の残基である)。ペレット形状にする場合は、水添ジエン系重合体の外側のブロック成分として少なくとも1つ以上の(A)及び/又は(C)重合体ブロックを含むことが好ましい。
【0034】
上記カップリング剤としては、例えば、ハロゲン化合物、エポキシ化合物、カルボニル化合物、ポリビニル化合物等が挙げられる。上記カップリング剤として具体的には、例えばメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、ジブロモエタン、エポキシ化大豆油、ジビニルベンゼン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、テトラクロロゲルマニウム、ビス(トリクロロシリル)エタン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、ジメチルテレフタル酸、ジエチルテレフタル酸、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
官能基含有水素添加ジエン系重合体の分子量は特に限定されないが、GPC法におけるポリスチレン換算による重量平均分子量で3万〜200万、好ましくは4万〜100万、更に好ましくは5万〜50万である。
尚、官能基含有水素添加ジエン系重合体の官能基含量は、好ましくは重合体一分子鎖あたりの平均個数で0.01〜100個、特に好ましくは0.1〜10個である。官能基含有水素添加ジエン系重合体には官能基のない水素添加ジエン系重合体が含有してもよい。
【0036】
本発明の多層積層体を構成する上記非極性重合体、極性重合体及び官能基含有水素添加ジエン系重合体(以下「各層の重合体」ともいう)の各層には、特性を損なわない限り必要に応じて他の重合体、例えば非極性重合体、極性重合体に官能基含有水素添加ジエン系重合体等をブレンドして使用することもできる。
また各層の重合体は必要に応じてブロッキング防止剤、有機系抗菌剤、無機系抗菌剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を配合される。前記ブロッキング防止剤としては、例えばシリカ、ゼオライト等が好適であり、これらは天然、合成の何れでもよい。またアクリルなどの真球状架橋ポリマー粒子はフィルムの傷つきが小さくなるので好ましい場合がある。また前記帯電防止剤としては、炭素数12〜18のアルキル基を有するN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アルキルアミン類やグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。さらに、前記滑剤としては、脂肪酸アミドが好ましく、具体的にはエルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等が挙げられる。
【0037】
また必要により、内容物の透視性を向上させるための防曇剤や、積層体に帯電防止を付与するための帯電防止剤や、積層体粘着性を付与するための粘着剤を配合することができる。
かかる防曇剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ジ乃至ポリグリセリン脂肪酸エステル系、エチレンオキサイド付加物系などを挙げることができる。防曇剤は、各層の重合体100質量部当たり0.1〜10質量部の量で配合することができる。
帯電防止剤としては、例えば、ベタイン誘導体のエチレンオキサイド付加物、第4級アミン系化合物、アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸グリセリド、ポリアミドエラストマー、ポリエーテルエラストマーなどを挙げることができる。帯電防止剤は、各層の重合体100質量部当たり0.1〜3質量部の量で配合することができる。
粘着剤としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族共重合炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、合成テルペン系炭化水素樹脂、テルペン系炭化水素樹脂、クマロンインデン系炭化水素樹脂、低分子量スチレン系樹脂、ロジン系炭化水素樹脂或いはこれらの組み合わせを挙げることができるが、勿論上に例示したものに限定されない。粘着剤は、各層の重合体100質量部当たり0.1〜10質量部の量で配合することができる。
【0038】
本発明の多層積層体は、例えば(a)非極性重合体及び/又は極性重合体をインフレーション法、Tダイ法等の通常の方法でフィルムあるいはシートに成形したのち、官能基含有水素添加ジエン系重合体容液を塗布、乾燥させる方法、(b)各層の重合体をインフレーション法、Tダイ法等の通常の方法でフィルムあるいはシートに成形したのち、熱貼合する方法、(c)共押出しタイプのインフレーション成形機やTダイ押出し成形機により直接各層の重合体を積層成形する方法等の公知の方法で積層して製造することができる。これらの方法のうち、(c)の方法が高生産という点で好ましく、最も好ましい方法は共押出しタイプのTダイ押出し成形機を用いる方法である。尚(c)の方法に使用されるTダイ押出し成形機のTダイは、マルチマニホールドタイプ又はフィードブロックタイプの何れでもよい。
【0039】
前記(c)の方法により、非極性重合体で構成する基材層(イ−1)又は極性重合体で構成する基材層(イ−2)のいずれかの基材層に、官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成する重合体層(ロ)(以下「接着層」ともいう)を積層する2層共押出し、非極性重合体で構成する基材層(イ−1)及び極性重合体で構成する基材層(イ−2)の面に官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成する重合体層(ロ)を積層する3層共押出しのほか、4層以上の多層押出しが効率よく製造することができる。具体的な構造体の例として(イ−1)/(ロ)、(イ−2)/(ロ)、(ロ)/(イ−1)/(ロ)、(ロ)/(イ−2)/(ロ)、(イ−1)/(ロ)/(イ−2)、(イ−1)/(ロ)/(イ−2)/(ロ)/(イ−1)、(イ−2)/(ロ)/(イ−1)/(ロ)/(イ−2)、(ロ)/(イ−1)/(ロ)/(イ−2)、(イ−1)/(ロ)/(イ−2)/(ロ)等の構造体が挙げられる。
さらに本発明の多層積層体は上記構造体に綿、布、紙、合板、金属などに貼り合わせたものでも良い。
【0040】
本発明の多層積層体の厚さは、多層積層体の所望の特性や用途に応じて適宜選択されるが、成形性および強度の観点から、例えばフィルムの場合、1〜500μmが好ましく、より好ましくは10〜300μmである。また、シートの場合、0.1〜5mmが好ましく、より好ましくは0.5〜3mmである。また、本発明の多層積層体における基材層と接着層との厚さの比率は、多層積層体の所望の特性や用途に応じて適宜選択されるが、例えば2層積層体である場合は、基材層/接着層=1/0.01〜10の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは基材層/接着層=1/0.01〜5の範囲である。
また、3層積層体である場合は、基材層の厚さが異なる場合、厚い層の基材層の厚さを1とした場合、基材層/接着層/基材層=1/0.01〜10/0.1〜1の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは基材層/接着層/基材層=1/0.01〜5/0.1〜1の範囲である。
【0041】
本発明の多層積層体は接着層が表層の場合、印刷インクとの濡れ性が良く、また、接着剤との濡れ性や反応性が良いために印刷を行ったり、鋼板や合板に貼り合わせて鋼板化粧フィルムや合板化粧フィルムとして好適に使用することができる。
本発明の多層積層体は、包装材、容器、医療用材、建材、電気・電子機用部材、情報記録用などのフィルム、シート材料として、各種の用途が期待できる。
尚、本発明の多層積層体をラベル、粘着テープの基材として使用する場合、粘着剤を塗布するにあたり、必要により予めコロナ処理や、各種下塗り処理などを行っても良い。粘着剤としては、溶剤型であってもよく、エマルション型、ホットメルト型、紫外線照射型などの無溶剤型であってもよく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
なお、実施例、比較例中の部及び%は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例、比較例に用いられる各種成分及び各種測定は、下記の方法に拠った。
【0043】
〔1〕各種成分
(イ−1)層の重合体;
・ポリプロピレン(PP):(チッソ石油化学社製、商品名XF1800)
・ポリエチレン(PE):(日本ポリエチレン社製、商品名UF331)
・ポリスチレン(PS):(日本ポリスチレン社製、商品名G590)
(イ−2)層の重合体
・ポリエチレンテレフタレート(PET):(日本ユニペット社製、商品名RT523C)
(ロ)層の重合体;
下記の製造例により得られた官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−1〜重合体−6)
その他の重合体;
・スチレン−ブタジエンブロック共重合体水添物(SEBS):(JSR社製、商品名「DYNARON8601P」)
・無水マレイン酸変性エチレン・プロピレンゴム(MAH−EP):(JSR社製、商品名「T7761」)
【0044】
〔2〕官能基含有水素添加ジエン系重合体の評価方法
水添ジエン系共重合体の物性値を以下の方法で測定した。
(1)ビニル結合含量(1,2−及び、3,4−結合含量)
赤外分析法を用い、ハンプトン法により算出した。
(2)結合スチレン含量
四塩化炭素溶液を用い、270MHz、H−NMRスペクトルから算出した。
(3)重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製、HLC−8120)を用いてポリスチレン換算で求めた。
(4)MFR(メルトフローレート)
JIS K7210に従い、230℃、21.2N荷重の条件で測定した。
(5)官能基含量(個/ポリマー)
重合体中の官能基の割合であり、下記の式により表される。
官能基含量=官能基(個)/ポリマー(一分子鎖)
Analy.Chem.564(1952)記載のアミン滴定法による定量により求めた。即ち、官能基含有水素添加ジエン系重合体を精製後、有機溶剤に溶解し、指示薬としてメチルバイオレットを用い、溶液の色が紫から水色に変化するまでHClO/CHCOOHを滴定することにより求めた。
(6)共役ジエンの水添率
四塩化炭素を溶媒に、270MHz、H−NMRスペクトルから算出した。
【0045】
製造例1 官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−1)の製造
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(750g)、スチレン(2,000g)、及び3−リチオ−1−N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロパン(14.4g)を加え、50℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を20℃として1,3−ブタジエン(2,500g)を添加して断熱重合した。30分後、スチレン(500g)を添加し、さらに重合を行った。重合が完結したのち、水素ガスを0.4MPa−Gの圧力で供給し、20分間撹拌し、リビングアニオンとして生きているポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。反応溶液を90℃にし、チタノセンジクロリドを使用して水添反応を行った。水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、次いで反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒を水蒸気蒸留により除去することによって、構造がA−B−A型の官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−1)を得た。
得られた官能基含有水素添加ジエン系重合体の水添率は98%、重量平均分子量は10万、水添前ポリマーの結合スチレン含量は50重量%、ポリブタジエンブロックのビニル結合含量は80%、MFRは2.7g/10分、官能基含量は1.00個/ポリマーであった。
【0046】
製造例2 官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−2)の製造
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(750g)、スチレン(500g)、及び2,2,5,5−テトラメチル−1−(3−リチオプロピル)−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン(14.5g)を加え、重合開始温度50℃にて断熱重合した。反応完結後、温度を20℃として1,3−ブタジエン(4,250g)を添加して断熱重合した。30分後、スチレン(250g)を添加し、さらに重合を行った。重合が完結したのち、製造例1と同様に水添反応及び溶媒除去することによって、構造がA−B−A型の官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−2)を得た。
得られた官能基含有水素添加ジエン系重合体の水添率は97%、重量平均分子量は12万、水添前ポリマーの結合スチレン含量は15重量%、ポリブタジエンブロックのビニル結合含量は78%、MFRは22.1g/10分、官能基含量は0.98個/ポリマーであった。
【0047】
製造例3 官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−3)の製造
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(750g)、スチレン(500g)、n−ブチルリチウム(4.5g)を加え、50℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を20℃として1,3−ブタジエン(4250g)を添加して断熱重合した。30分後、スチレン(250g)を添加し、さらに重合を行った。活性点に4−{2−[N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチル}スチレン(37g)を加え、30分反応させた。反応完結後、製造例1と同様に水添反応及び溶媒除去することによって、構造がA−B−A型の官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−3)を得た。得られた官能基含有水素添加ジエン系重合体の水添率は99%、重量平均分子量は12万、水添前ポリマーの結合スチレン含量は15重量%、ポリブタジエンブロックのビニル結合含量は79%、MFRは17.4g/10分、官能基含量は1.77個/ポリマーであった。
【0048】
製造例4 官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−4)の製造窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(750g)、スチレン(500g)、及びn−ブチルリチウム(4.2g)を加え、50℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を20℃として1,3−ブタジエン(4,250g)を添加して断熱重合した。30分後、スチレン(250g)を添加し、さらに重合を行った。活性点にベンジリデンエチルアミン(7.8g)を加え、30分反応させた。そして、反応溶液を80℃以上にして系内に水素を導入した。次いで、Pd−BaSO触媒(13g)を加え、水素圧2.0MPaを保つようにして1時間反応させた。反応後、反応溶液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、次いで、反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒を水蒸気蒸留除去することによって、構造がA−B−A型の官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−4)を得た。得られた官能基含有水素添加ジエン系重合体の水添率は98%、重量平均分子量は13万、水添前ポリマーの結合スチレン含量は15重量%、ポリブタジエンブロックのビニル結合含量は80%、MFRは4.4g/10分、官能基含量は0.84個/ポリマーであった。
【0049】
製造例5 官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−5)の製造窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン(25kg)、テトラヒドロフラン(1.25g)、1,3−ブタジエン(1,500g)、及びn−ブチルリチウム(4.3g)を加え、70℃からの断熱重合を行った。反応完結後、温度を20℃としてテトラヒドロフラン(750g)及び1,3−ブタジエン(3,500g)を添加して断熱重合した。次いで、この系内にN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン(8g)を加えて30分間反応させた。反応完結後、製造例1と同様に水添反応及び溶媒除去することによって、構造がC−B−C型の官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−5)を得た。 得られた官能基含有水素添加ジエン系重合体の水添率は97%、重量平均分子量は30万、水添前ポリマーの重合1段目ポリブタジエンブロックのビニル結合含量は14%、重合2段目ポリブタジエンブロックのビニル結合含量は80%、MFRは0.7g/10分、官能基含量は0.83個/ポリマーであった。
【0050】
製造例6 官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−6)の製造 窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、脱気・脱水したシクロヘキサン(30kg)、1,3−ブタジエン(1,000g)を仕込んだ後、テトラヒドロフラン(1.5g)及びn−ブチルリチウム(4g)を加え、60℃からの断熱重合を40分行った。反応終了後、反応液を30℃とした後、テトラヒドロフラン(60g)、1,3−ブタジエン(3,750g)を加え断熱重合を行った。転化率がほぼ100%になった後、さらにスチレン(250g)を加え、ジエン系重合体の重合を行った。ついでN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン(17g)を加え、上記ジエン系重合体の活性点に30分反応させた。反応完結後、製造例1と同様に水添反応及び溶媒除去することによって、構造がC−B−A型の官能基含有水素添加ジエン系重合体(重合体−6)を得た。 得られた官能基含有水素添加ジエン系重合体の水添率は99%、重量平均分子量は14万、水添前ポリマーの結合スチレン含量は5重量%、重合1段目ポリブタジエンブロックのビニル結合含量は15%、重合2段目ポリブタジエンブロックのビニル結合含量は42%、MFRは2.4g/10分、官能基含量は0.89個/ポリマーであった。
【0051】
〔3〕積層体の評価層間接着強度の測定:押出し機の流れ方向を長軸とし、巾25mm、長さ250mmに切出した積層体の試験片を作成し、押出し成形後24時間経過した時点で、この試験片の(イー1)層と(イー2)層の接着界面を長さ方向に20mmにわたって剥離した後、東洋精機(株)製オートストレイン型引張試験機を使用して、300mm/分の引張速度で180度剥離した時の剥離強度を測定し、層間接着強度を評価した。
【0052】
実施例1、比較例1、2単軸押出し機を3台有するフィードブロックタイプの共押出しTダイ成形機を用い、表1に示した層構成により、押出し温度を270℃、冷却ロール温度70℃として3層共押出しを行い(イ−1)層/接着層/(イ−2)層の順に積層された積層体を得た。積層体の各層の厚さはいずれの場合も、ほぼ(イ−1)層30μm、接着層10μm、(イ−2)層30μmとした。得られた積層体の層間接着強度を第1表に示す。
【0053】
実施例2〜5、比較例3、4
冷却ロール温度を130℃とした以外は、実施例1と同様にして層間接着強度を測定した。結果を第1表に示す。
【0054】
実施例6、7、比較例5、6
冷却ロール温度を100℃とした以外は、実施例1と同様にして層間接着強度を測定した。結果を第1表に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1より、本発明の多層積層体は、層間接着強度に優れることが分かる。一方、比較例は接着層が本願の発明から外れるもので、いずれも接着強度が劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の多層積層体は、包装材、容器、医療用材、建材、電気・電子機用部材、情報記録用などのフィルム、シート材料、ラベル、粘着テープの基材として、各種の用途が期待できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成する重合体層と、で構成される多層積層体であって、官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成する重合体層が、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基含有水素添加ジエン系重合体であることを特徴とする多層積層体。
【請求項2】
非極性重合体で構成される基材層(イ−1)と極性重合体で構成される基材層(イ−2)とが、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基含有水素添加ジエン系重合体で構成される重合体層(ロ)を介して積層されることを特徴とする多層積層体。
【請求項3】
上記重合体層(ロ)を構成する官能基含有水素添加ジエン系重合体が、下記重合体ブロックB、並びに、下記重合体ブロックA及び/又は下記重合体ブロックCを有し、且つ、共役ジエン部分の二重結合の少なくとも80%が水素添加された水素添加ジエン系重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の多層積層体。
A:芳香族ビニル化合物単位が50質量%を超えて含有する重合体ブロック
B:共役ジエン化合物単位が50質量%を超えて含有し、その1,2−及び3,4−結合含量が30%以上90%以下である重合体ブロック
C:共役ジエン化合物単位が50質量%を超えて含有し、その1,2−及び3,4−結合含量が30%未満である重合体ブロック
【請求項4】
上記重合体層(ロ)を構成する官能基含有水素添加ジエン系重合体の官能基含量が、0.01〜100個/ポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層積層体。
【請求項5】
上記重合体層(ロ)を構成する官能基含有水素添加ジエン系重合体の官能基が、アミノ基を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層積層体。
【請求項6】
上記基材層(イ−1)を構成する非極性重合体が、オレフィン系重合体又はスチレン系重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層積層体。
【請求項7】
上記基材層(イ−2)を構成する極性重合体が、ポリエステル重合体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層積層体。
【請求項8】
非極性重合体及び極性重合体と、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、及びオキサゾリン基の官能基群から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基含有水素添加ジエン系重合体と、を共押出して積層することを特徴とする多層積層体の製造方法。


【公開番号】特開2006−51632(P2006−51632A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233369(P2004−233369)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】