説明

多層配線基板の製造方法および多層配線基板

【課題】白金を主成分とする貫通導体とアルミナ質焼結体からなるセラミック絶縁層との間の接合力を向上させ、これらの間に間隙(ボイド)が形成されてしまうことのない多層配線基板の製造方法および多層配線基板を提供する。
【解決手段】セラミックグリーンシートに形成された貫通孔に白金を主成分とする貫通導体用導体ペーストを充填するとともに、貫通孔に貫通導体用導体ペーストが充填されたセラミックグリーンシートのうちの一部に白金を主成分とする接続パッド用導体ペーストを塗布し、セラミックグリーンシート積層体を作製して焼成する多層配線基板の製造方法において、接続パッド用導体ペーストをセラミックグリーンシート積層体の厚みに対して5〜10%の厚みとなるような厚みに塗布し、接続パッド用導体ペーストの厚みの40〜60%がセラミックグリーンシート積層体に埋まるように、セラミックグリーンシート積層体を加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に埋設される体内埋設機器に用いられる多層配線基板の製造方法および多層配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体内に埋め込まれる体内埋設機器用途に、セラミックスからなる絶縁基体を備えた多層配線基板が用いられることが知られていて、その需要は近年高まってきている。
【0003】
この体内埋設機器用途の多層配線基板は、移動体通信分野などで用いられる多層配線基板と同様の基本構成であって、複数のセラミック絶縁層が積層された絶縁基体と、絶縁基体の内部に形成された内部配線層と、セラミック絶縁層を貫通する貫通導体と、絶縁基体の一方主面および他方主面に形成された接続パッドとを備えている。
【0004】
ところで、体内埋設機器用途の多層配線基板には生体適合性が求められることから、セラミック絶縁層の形成材料としてアルミナ質焼結体を用い、貫通導体および接続パッドの形成材料として白金を用いることが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−502403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、移動体通信分野などの多層配線基板に用いられる貫通導体の形成材料としてのモリブデンやタングステンは液相焼結するのに対し、生体内埋設用の多層配線基板に用いられる貫通導体の形成材料としての白金は固相焼結するものである。貫通導体の形成材料がモリブデンやタングステンのように液相焼結する場合は、焼結のためにアルミナ質焼結体に含まれる焼結助剤成分としてのガラスを必要とし、貫通導体とセラミック絶縁層との界面から貫通導体の内部にガラスが侵入するようにして焼結する。したがって、貫通導体とセラミック絶縁層との間の接合力は強く、これらの間に間隙(ボイド)は形成されにくい。
【0007】
これに対し、貫通導体の形成材料が白金のように固相焼結する場合は、アルミナ質焼結体に含まれる焼結助剤成分としてのガラスを必要としないことから、貫通導体とセラミック絶縁層との界面から貫通導体の内部にガラスが侵入するようにはならない。したがって、貫通導体とセラミック絶縁層との間の接合力は弱く、これらの間に間隙(ボイド)が形成されてしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、白金を主成分とする貫通導体とアルミナ質焼結体からなるセラミック絶縁層との間の接合力を向上させ、これらの間に間隙(ボイド)が形成されてしまうことのない多層配線基板の製造方法および多層配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の多層配線基板の製造方法は、Al粉末を主成分とし、SiO粉末、MgO粉末およびCaO粉末を混合して、セラミックグリーンシートを作製する第1工程と、該セラミックグリーンシートに貫通孔を形成し、該貫通孔に白金を主成分とする貫通導体用導体ペーストを充填する第2工程と、前記貫通孔に前記貫通導体用導体ペーストが充填された前記セラミックグリーンシートのうちの一部に接続パッド用導体ペーストを塗布する第3工程と、前記貫通孔に前記貫通導体用導体ペーストが充填され、または前記接続パッド用導体ペーストが塗布された前記セラミックグリーンシートを積層して加圧して、セラミックグリーンシート積層体を作製する第4工程と、該セラミックグリーンシート積層体を焼成する第5工程とを有しており、前記第3工程において、前記接続パッド用導体ペーストを前記セラミックグリーンシート積層体の厚みに対して5〜10%の厚みとなるような厚みに塗布し、前記第4工程において、前記接続パッド用導体ペーストの厚みの40〜60%が前記セラミックグリーンシート積層体に埋まるように、前記セラミックグリーンシート積層体を加圧することを特徴とするものである。
【0010】
また本発明の多層配線基板は、上記の製造方法によって製造され、実質的にSiO、MgOおよびCaOからなるガラスを含むアルミナ質焼結体からなる複数の絶縁層が積層されてなる絶縁基体と、該絶縁基体を貫通して形成された白金を主成分とする貫通導体と、前記絶縁基体の上面および下面にそれぞれ一部が埋まるように形成されて前記貫通導体と電気的に接続された白金を主成分とする一対の接続パッドとを含み、前記接続パッドの厚みが前記絶縁基体の厚みに対して5〜10%の厚みであり、前記接続パッドが前記絶縁基体に埋まっている深さが前記接続パッドの厚みの40〜60%であることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、前記アルミナ質焼結体は88〜96質量%のアルミナ粒子と残部の前記ガラスとからなり、前記貫通導体は3〜10質量%のアルミナ粒子を含むのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多層配線基板の製造方法によれば、接続パッド用導体ペーストをセラミックグリーンシート積層体の厚みに対して5〜10%の厚みとなるような厚みに塗布し、接続パッド用導体ペーストの厚みの40〜60%がセラミックグリーンシート積層体に埋まるように、セラミックグリーンシート積層体を加圧することで、貫通導体用導体ペーストが半径方向に押し出され、貫通導体用導体ペーストとセラミックグリーンシートとの界面におけるこれらの接触面積を増やすことができ、これにより、貫通導体と絶縁層との間の接合力が強化され、これらの間に間隙(ボイド)が形成されるのを抑制することができる。
【0013】
また上記の製造方法によって得られた本発明の多層配線基板によれば、接続パッドの厚みが絶縁基体の厚みに対して5〜10%の厚みであり、接続パッドが絶縁基体に埋まっている深さが接続パッドの厚みの40〜60%であることで、貫通導体と絶縁層との界面における接触面積を増やすことができ、これにより、貫通導体と絶縁層との間の接合力が強化され、これらの間に間隙(ボイド)が形成されるのを抑制することができる。
【0014】
特に、絶縁層を形成するアルミナ質焼結体は88〜96質量%のアルミナ粒子と残部のガラスとからなり、貫通導体は3〜10質量%のアルミナ粒子を含むことで、絶縁層から貫通導体の内部にガラスが侵入するような構造が形成され、より接合力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の多層配線基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】貫通導体と絶縁基体との接合強度を測定する方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の例について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の多層配線基板の実施形態の一例を示す概略断面図であり、図1に示す多層配線基板は、後述する本発明の多層配線基板の製造方法によって製造されたものであり、実質的にSiO、MgOおよびCaOからなるガラスを含むアルミナ質焼結体からなる複数の絶縁層11、12、13、14が積層されてなる絶縁基体1と、絶縁基体1を貫通して形成された白金を主成分とする貫通導体2と、絶縁基体1の上面および下面にそれぞれ一部が埋まるように形成されて貫通導体2と電気的に接続された白金を主成分とする一対の接続パッド31、32とを含む多層配線基板であって、接続パッド31、32の厚みが絶縁基体1の厚みに対して5〜10%の厚みであり、接続パッド31、32が絶縁基体1に埋まっている深さが接続パッド31、32の厚みの40〜60%であることを特徴とするものである。
【0018】
絶縁基体1は、アルミナ質焼結体からなる複数の絶縁層11、12、13、14からなるもので、それぞれの絶縁層11、12、13、14は、88〜96質量%のアルミナ粒子(Al)と残部のガラス(焼結助剤成分)とで形成されている。このアルミナ粒子の含有量は、X線回折の回折メインピーク強度からリートベルト解析により求められたものである。なお、アルミナ粒子の平均結晶粒径は、例えば1〜5μm程度であって、この平均結晶粒径は、測定試料(アルミナ質焼結体)の表面を鏡面研磨し、例えば燐酸を用いてエッチングを行って粒界を溶かした後、SEM(走査型電子顕微鏡)による例えば1000倍の画像の所定領域について複数の線を引いて各線の粒界との交点の数を数える、いわゆるインタセプト法により求めることができる。また、残部のガラスとしては、実質的にSiO、MgOおよびCaOからなるもので、アルミナ粒子の粒界に非晶質相として存在しているものである。
【0019】
なお、複数の絶縁層11、12、13、14の厚みは通常50〜250μm程度、絶縁基体1の厚みは通常0.5〜2mm程度で、縦横それぞれ50〜100mm程度に形成されたものであり、絶縁基体1(複数の絶縁層11、12、13、14)がこのようなアルミナ質焼結体からなることで、絶縁基体1の生体適合性は良好なものとなる。
【0020】
絶縁基体1の内部には、絶縁基体1を貫通して形成された白金を主成分とする貫通導体2と、絶縁層11、12、13、14をそれぞれ貫通し、全体として絶縁基体1を貫通して形成された貫通導体2が設けられている。貫通導体2は、白金粉末を主成分とする貫通導体用導体ペーストの焼結によって、直径100〜200μm程度に形成されたものである。
【0021】
ここで、貫通導体2は、絶縁層11、12、13、14の形成材料と同種の材料であるアルミナ粒子を3〜10質量%含むのが好ましい。貫通導体2を形成する白金は、通常固相焼結するため、焼結にガラスを必要としないが、この割合でアルミナ粒子を含むことで、製造時に絶縁層11、12、13、14に含まれるガラスが貫通導体2の内部に侵入するようにして焼結するようになる。すなわち、貫通導体2には、絶縁層11、12、13、14から伸びて形成されたガラスによる侵入網目構造が形成されている。したがって、後述の接続パッド31、32の厚みが絶縁基体1の厚みに対して5〜10%の厚みであり、接続パッド31、32が絶縁基体1に埋まっている深さが接続パッド31、32の厚みの40〜60%であることにより界面における接触面積が増えたうえで、このような侵入網目構造が形成されることで、より接合力が向上する。なお、アルミナ粒子が3質量%未満であると接合力を十分に上昇させるほどにガラスが侵入しないおそれがあり、10質量%を超えると貫通導体2の電気抵抗が上昇して導体として機能しないおそれがある。
【0022】
絶縁基体1の上面および下面には、貫通導体2と電気的に接続された白金を主成分とする一対の接続パッド31、32が、それぞれ一部が埋まるように形成されている。
【0023】
接続パッド31、32は、白金粉末を主成分とする導体ペーストが焼結されて形成されたものである。貫通導体2が白金を主成分としており、この接続パッド31、32が白金を主成分とするものであるから、絶縁基体1の生体適合性が良好であるのに加え、接続パッド31、32の生体適合性も良好なものとなる。
【0024】
そして、接続パッド31、32の厚みが絶縁基体1の厚みに対して5〜10%の厚みであり、接続パッド31、32が絶縁基体1に埋まっている深さが接続パッド31、32の厚みの40〜60%であることが重要である。
【0025】
一般に用いられる接続パッドの厚みは絶縁基体1の厚みに対して0.5〜2%の厚みであるのに対し、本発明においては、接続パッド31、32の厚みが絶縁基体1の厚みに対して5〜10%の厚みである。この厚みは、後述する製造時に貫通導体用導体ペーストとセラミックグリーンシートとの界面におけるこれらの接触面積を増やすことを目的として、貫通導体用導体ペーストを半径方向に押し出すために、接続パッド用導体ペーストの塗布厚みが厚く設定されたものである。接続パッド31、32は、厚く塗布された接続パッド用導体ペーストが焼結してなるものであり、このような厚みとなっている。
【0026】
また、接続パッド31、32が絶縁基体1に埋まっている深さが接続パッド31、32の厚みの40〜60%であるのは、後述する製造時に、接続パッド用導体ペーストの厚みの40〜60%がセラミックグリーンシート積層体に埋まるように、セラミックグリーンシート積層体を加圧するからである。
【0027】
ここで、接続パッド31、32の厚みが絶縁基体1の厚みに対して5%未満であり、接続パッド31、32が絶縁基体1に埋まっている深さが接続パッド31、32の厚みの40%未満であると、貫通導体2と絶縁層3との界面の接触面積が小さくなり、これらの間の接合力が十分ではなくなるおそれがあり、接続パッド31、32の厚みが絶縁基体1の厚みに対して10%を超え、接続パッド31、32が絶縁基体1に埋まっている深さが接続パッド31、32の厚みの60%を超えると、製造時における塑性変形量が大きく、絶縁基体1にクラックが発生してしまうおそれがある。
【0028】
したがって、接続パッド31、32の厚みが絶縁基体1の厚みに対して5〜10%の厚みであり、接続パッド31、32が絶縁基体1に埋まっている深さが接続パッド31、32の厚みの40〜60%である必要がある。
【0029】
なお、接続パッド31、32の厚みは70〜100μm程度に形成され、接続パッド31、32の直径は貫通導体2の直径よりも100〜200μm程度大きく形成される。
【0030】
このような多層配線基板によれば、貫通導体1と絶縁層11、12、13、14との界面における接触面積を増やすことができ、これにより、貫通導体2と絶縁層11、12、13、14との間の接合力が強化され、これらの間に間隙(ボイド)が形成されるのを抑制することができる。
【0031】
次に、上記構成の多層配線基板を製造するための本発明の多層配線基板の製造方法について説明する。
【0032】
本発明の多層配線基板の製造方法は、まず、第1工程として、Al粉末を主成分とし、SiO粉末、MgO粉末およびCaO粉末を混合して、セラミックグリーンシートを作製する。
【0033】
例えば、平均粒径1〜5μmのAl粉末を88〜96質量%に、2〜8質量%のSiO粉末、0.5〜2質量%のMgO粉末および0.1〜2質量%のCaO粉末を混合し、この混合粉末に例えばアクリル系の有機バインダ、可塑剤、トルエンなどの有機溶剤を添加してスラリーを調整した後、プレス法、ドクターブレード法、圧延法、射出法などの成形方法によってセラミックグリーンシートを作製する。セラミックグリーンシートの厚みは、例えば100〜200μm程度に形成される。
【0034】
次に、第2工程として、セラミックグリーンシートに貫通孔を形成し、貫通孔に白金を主成分とする貫通導体用導体ペーストを充填する。
【0035】
貫通孔は、マイクロドリル、レーザ等により直径100〜300μm程度に形成されたものである。そして、貫通孔に充填する貫通導体用導体ペーストとしては、白金粉末を主成分とし、これにアクリル系、セルロース系などの有機バインダ、アルコールなどの有機溶剤などを添加してなるもので、例えば白金粉末100質量部に、外添で有機バインダを1〜5質量部、有機溶剤を5〜15質量部添加してなるものが用いられる。この貫通導体用導体ペーストはプレス法やスクリーン印刷法等の方法によって貫通孔に充填される。
【0036】
ここで、白金粉末にアルミナ粉末を混合するのが好ましく、具体的には白金粉末90〜97質量%でアルミナ粉末3〜10質量%とするのが好ましい。白金粉末は、通常固相焼結するため、焼結にガラスを必要としないが、この割合でアルミナ粒子を含むことで、セラミックグリーンシートに含まれる焼結助剤成分(SiO粉末、MgO粉末およびCaO粉末)が貫通導体用導体ペーストの内部によく侵入して焼結するようになる。そして、貫通導体用導体ペーストが焼結してなる貫通導体2には、絶縁層11、12、13、14から伸びて形成されたガラスによる侵入網目構造が形成されることとなる。このような侵入網目構造が形成されることで、より接合力が向上する。なお、アルミナ粉末が3質量%未満であると接合力を十分に上昇させるほどにガラスが侵入しないおそれがあり、10質量%を超えると貫通導体2の電気抵抗が上昇して導体として機能しないおそれがある。また、白金粉末にSiO粉末、MgO粉末およびCaO粉末を予め混合してしまうと、セラミックグリーンシートに含まれる焼結助剤成分(SiO粉末、MgO粉末およびCaO粉末)の貫通導体用導体ペーストの内部への侵入を阻害して接合力の低下を招いてしまう。
【0037】
次に、第3工程として、貫通孔に貫通導体用導体ペーストが充填されたセラミックグリーンシートのうちの一部に白金を主成分とする接続パッド用導体ペーストを塗布する。
【0038】
接続パッド用導体ペーストは、貫通導体用導体ペーストと同様に、白金粉末を主成分とし、これにアクリル系、セルロース系などの有機バインダ、アルコールなどの有機溶剤などを添加してなるもので、例えば白金粉末100質量部に、外添で有機バインダを1〜5質量部、有機溶剤を5〜15質量部添加してなるものが用いられる。この接続パッド用導体ペーストは、貫通孔に貫通導体用導体ペーストが充填されたセラミックグリーンシートのうちの一部のセラミックグリーンシートにスクリーン印刷、グラビア印刷などの方法により塗布される。
【0039】
ここで、接続パッド用導体ペーストは、セラミックグリーンシート積層体の厚みに対して5〜10%の厚みとなるような厚みに塗布される。接続パッド用導体ペーストの塗布厚みが5%未満であったり10%を超えたりすると、後述の接続パッド用導体ペーストにおけるセラミックグリーンシート積層体に埋まる部分の厚みとの関係で、作製された多層配線基板における貫通導体2と絶縁層3との界面の接触面積が小さくなったり、絶縁基体1にクラックが発生してしまうおそれがある。接続パッド用導体ペーストの塗布厚みは、通常50〜150μm程度とされる。なお、この接続パッド用導体ペーストの厚みのセラミックグリーンシート積層体の厚みに対する割合は、焼成後の接続パッドの厚みの絶縁基体1の厚みに対する割合と同じであり、焼成前後で同じ割合となる。
【0040】
次に、第4工程として、貫通孔に貫通導体用導体ペーストが充填され、または前記接続パッド用導体ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを積層して加圧して、セラミックグリーンシート積層体を作製する。
【0041】
積層する方法は、積み重ねたセラミックグリーンシート積層体に熱と圧力を加えて熱圧着する方法や、有機バインダ、可塑剤、溶剤等からなる密着剤をセラミックグリーンシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。このとき、例えば30〜100℃の温度で加熱し、接続パッド用導体ペーストの厚みの40〜60%がセラミックグリーンシート積層体に埋まるように、セラミックグリーンシート積層体を、例えば2〜5MPa程度の圧力で加圧する。これにより、接続パッド用導体ペーストの塗布厚みが厚いことも関係して、接続パッド用導体ペーストがセラミックグリーンシート積層体に埋まるとともに、貫通導体用導体ペーストが半径方向に押し出され、貫通導体用導体ペーストとセラミックグリーンシートとの界面におけるこれらの接触面積を増やすことができる。なお、接続パッド用導体ペーストの厚みのうちのセラミックグリーンシート積層体に埋まる部分の割合は、焼成後の接続パッドが絶縁基体に埋まっている深さの割合と同じであり、焼成前後で同じ割合となる。
【0042】
最後に、第5工程として、セラミックグリーンシート積層体を焼成する。
【0043】
具体的には、大気雰囲気中にて1500から1600℃の温度で約1時間程度保持することにより、焼成がなされる。
【0044】
このような多層配線基板の製造方法によれば、得られた多層配線基板における貫通導体と絶縁層との間の接合力が強化され、これらの間に間隙(ボイド)が形成されるのを抑制することができる。
【実施例】
【0045】
平均粒径2μmのAl粉末92質量%に、SiO粉末6質量%、MgO粉末1質量%およびCaO粉末1質量%を混合し、この混合粉末にアクリル系有機バインダおよびトルエンを添加してスラリーを調整した後、ドクターブレード法によってセラミックグリーンシートを作製する。なお、セラミックグリーンシートの厚みは、100μmとした。
【0046】
次に、セラミックグリーンシートに直径200μmの貫通孔を形成し、この貫通孔に白金を主成分とする貫通導体用導体ペーストをプレス方法にて充填した。ここで、貫通導体用導体ペーストは、表1に示す原料粉末100質量部に、外添でアクリル系有機バインダを2質量部、テルピネオールを10質量部添加したものである。
【0047】
また、貫通孔に貫通導体用導体ペーストが充填されたセラミックグリーンシートのうちの一部のセラミックグリーンシートに接続パッド用導体ペーストを塗布した。ここで、接続パッド用導体ペーストは、表1に示す原料粉末100質量部に、外添でアクリル系有機バインダを3質量部、テルピネオールを15質量部添加したものである。なお、表1において、原料粉末を構成する焼結助剤とは、SiO粉末、MgO粉末、CaO粉末が6:1:1の割合で含まれるものである。
【0048】
ここで、接続パッド用導体ペーストは、セラミックグリーンシート積層体の厚みに対して表1に示す割合(厚み割合)となる厚みに塗布した。
【0049】
次に、貫通孔に貫通導体用導体ペーストが充填され、または前記接続パッド用導体ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを7層積層して加圧して、セラミックグリーンシート積層体を作製した。
【0050】
ここで、接続パッド用導体ペーストがセラミックグリーンシート積層体の厚みに対して、表1に示す割合(深さ割合)の厚みだけ埋まるように、加圧の際の圧力を制御した。
【0051】
最後に、セラミックグリーンシート積層体を、大気雰囲気にて1580℃で1時間かけて焼成して、多層配線基板を作製した。
【0052】
得られた多層配線基板について、図2に示す方法で貫通導体2と絶縁基体1との間の接合強度を測定した。
【0053】
具体的には、治具5で固定された多層配線基板の上面の接続パッド31に、表面が金めっきされたFeNiCo合金からなる直径0.4mmのピン41を金錫半田42で接合し、このピン41を上方向に10mm/秒のスピードにて引っ張り、接続パッド31および貫通導体2が絶縁基体1から剥がれたときの強度(接合強度)を精密荷重測定器(アイコーエンジニアリング社製)で測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
また、絶縁基体1の断面におけるクラックの有無を走査型電子顕微鏡(SEM)による1000倍画像で測定した。その結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1によれば、本発明の試料である試料No.1〜4、9〜12は、本発明範囲外の試料である試料No.5、7に比べて接合強度が高くなっていることがわかる。
【0057】
また、貫通導体用ペーストにアルミナ粉末を3〜10質量%含むことで試料No.10、11では、接合強度が向上していることがわかる。
【0058】
これに対し、接続パッド厚みの絶縁基体厚みに対する割合が5%未満である試料No.5および接続パッドの絶縁基体に埋まっている深さの割合が40%未満である試料No.7では、接合強度が低いことがわかる。また、接続パッド厚みの絶縁基体厚みに対する割合が10%を超えている試料No.6、接続パッドの絶縁基体に埋まっている深さの割合が60%を超えている試料No.8では、絶縁基体1にクラックが生じていて、このクラックの進展によって破断して接合強度が低い値となった。
【符号の説明】
【0059】
1:絶縁基体
11、12、13、14:絶縁層
2:貫通導体
31、32:接続パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al粉末を主成分とし、SiO粉末、MgO粉末およびCaO粉末を混合して、セラミックグリーンシートを作製する第1工程と、該セラミックグリーンシートに貫通孔を形成し、該貫通孔に白金を主成分とする貫通導体用導体ペーストを充填する第2工程と、前記貫通孔に前記貫通導体用導体ペーストが充填された前記セラミックグリーンシートのうちの一部に白金を主成分とする接続パッド用導体ペーストを塗布する第3工程と、前記貫通孔に前記貫通導体用導体ペーストが充填され、または前記接続パッド用導体ペーストが塗布された前記セラミックグリーンシートを積層して加圧して、セラミックグリーンシート積層体を作製する第4工程と、該セラミックグリーンシート積層体を焼成する第5工程とを有しており、前記第3工程において、前記接続パッド用導体ペーストを前記セラミックグリーンシート積層体の厚みに対して5〜10%の厚みとなるような厚みに塗布し、前記第4工程において、前記接続パッド用導体ペーストの厚みの40〜60%が前記セラミックグリーンシート積層体に埋まるように、前記セラミックグリーンシート積層体を加圧することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多層配線基板の製造方法によって製造された多層配線基板であって、
実質的にSiO、MgOおよびCaOからなるガラスを含むアルミナ質焼結体からなる複数の絶縁層が積層されてなる絶縁基体と、該絶縁基体を貫通して形成された白金を主成分とする貫通導体と、前記絶縁基体の上面および下面にそれぞれ一部が埋まるように形成されて前記貫通導体と電気的に接続された白金を主成分とする一対の接続パッドとを含み、前記接続パッドの厚みが前記絶縁基体の厚みに対して5〜10%の厚みであり、前記接続パッドが前記絶縁基体に埋まっている深さが前記接続パッドの厚みの40〜60%であることを特徴とする多層配線基板。
【請求項3】
前記アルミナ質焼結体は88〜96質量%のアルミナ粒子と残部の前記ガラスとからなり、前記貫通導体は3〜10質量%のアルミナ粒子を含むことを特徴とする請求項2に記載の多層配線基板。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−134844(P2011−134844A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292212(P2009−292212)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】