多層配線基板及び電子機器
【課題】各絶縁層を構成する繊維の層間に生ずるひずみが低減された領域を形成することが可能な多層配線基板及び電子機器を提供する。
【解決手段】多層配線基板、複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第1の絶縁層21と、複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第2の絶縁層22と、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22とを接着する樹脂層23とを備え、第1の絶縁層21の繰り返しパターン及び第2の絶縁層22の繰り返しパターンは、向きが揃うように配置され、且つ、第1の絶縁層21の繰り返しパターンの位置が、第2の絶縁層22の繰り返しパターンの位置に対して、予め決められた距離ずれている。
【解決手段】多層配線基板、複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第1の絶縁層21と、複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第2の絶縁層22と、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22とを接着する樹脂層23とを備え、第1の絶縁層21の繰り返しパターン及び第2の絶縁層22の繰り返しパターンは、向きが揃うように配置され、且つ、第1の絶縁層21の繰り返しパターンの位置が、第2の絶縁層22の繰り返しパターンの位置に対して、予め決められた距離ずれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、複数の電子部品によって構成されている。これら電子部品は、多層配線基板によって固定され、配線される。その多層配線基板の一例としては、特許文献1に記載の多層プリント回路基板が挙げられる。この多層プリント回路基板は、複数のフッ素樹脂系基材層が積層されて形成され、内部に少なくとも1つの導電体層を備えている。多層プリント回路基板は、この導電体層を備えた基材層とこれに隣接する基材層とが、液晶ポリマーからなる接着層を介して接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−268365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、電子機器のON/OFF動作や周囲温度の変化等によって、冷熱サイクル負荷にさらされると、多層配線基板は膨張及び収縮する。特に、多層配線基板の厚み方向にひずみ(寸法変化)が生じる。
その結果、多層配線基板の導電体層の間を電気接続するために形成されるビア導体は、そのひずみにより疲労破壊して接合不良が生じる場合がある。
【0005】
従来、絶縁層及び樹脂層が積層されて構成される多層配線基板は、いずれの場所でも材質が実質的に均一である均質体とみなされていた。そのため、ビア導体の疲労破壊は、多層配線基板の厚み方向のひずみによっていずれの場所にも均等に生じうると考えられていた。
しかしながら、本願発明者らは、多層配線基板のいずれの場所においても均一なひずみが発生するものではない、と考えた。
本発明は、多層配線基板の各絶縁層を構成する繊維の層間に生ずるひずみが低減された領域を形成することが可能な多層配線基板及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第1の絶縁層と、
複数の繊維が前記予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とを接着する樹脂層とを備え、
前記第1の絶縁層の繰り返しパターン及び前記第2の絶縁層の繰り返しパターンは、向きが揃うように配置され、且つ、前記第1の絶縁層の繰り返しパターンの位置が、前記第2の絶縁層の繰り返しパターンの位置に対して、予め決められた距離ずれている多層配線基板が適用される。
【0007】
また、他の観点によれば、本発明に係る多層配線基板を用いた電子機器が適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多層配線基板の各絶縁層を構成する繊維の層間に生ずるひずみが低減された領域を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多層配線基板を有する電子機器の説明図である。
【図2】同多層配線基板の構造を示す断面図である。
【図3A】同多層配線基板の解析モデルを示す説明図である。
【図3B】同多層配線基板のガラス繊維の寸法を示す説明図である。
【図3C】同多層配線基板の各層の厚みを示す説明図である。
【図3D】同多層配線基板の解析モデルの材料定数である。
【図4】実施例1に係る多層配線基板に与える繰り返しの温度負荷を示すグラフである。
【図5】実施例1に係る多層配線基板の比率xとひずみの程度との関係を示すグラフである。
【図6】実施例1に係る多層配線基板に形成されたビアを示す説明図である。
【図7A】実施例2に係る多層配線基板の樹脂層の厚みtと、ひずみの程度の比sとの関係を示すグラフである。
【図7B】実施例2に係る多層配線基板の樹脂層の厚みtと、ひずみの程度の比sの近似式からの差との関係を示すグラフである。
【図8】実施例3に係る多層配線基板を構成する樹脂層の厚みのばらつきを示すグラフである。
【図9】実施例3に係る多層配線基板の比率xとひずみの程度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る多層配線基板10は、図1に示すように、例えば電子機器12に内蔵されている。
多層配線基板10は、図2に示すように、少なくともy軸方向に積層される第1の絶縁層21、第2の絶縁層22及び樹脂層23を有している。第1の絶縁層21の上側には、樹脂層25が積層されている。第2の絶縁層22の下側には、樹脂層27が積層されている。
多層配線基板10は、例えば、FR−4である。
【0012】
同図2に示すように、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22は、それぞれ例えばガラス繊維を束ねた繊維束の経糸fxと緯糸fzとが、例えば平織りにより織られ、樹脂が含浸されて板状に形成されている。即ち、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22は、それぞれ、複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られて形成されている。1回分の繰り返しパターンに対応する長さλは、例えば、0.5〜2.0mmとすることができる。
第2の絶縁層22のガラス繊維は、第1の絶縁層21のガラス繊維が延びる方向に延びている。つまり、第1の絶縁層21のガラス繊維及び第2の絶縁層22のガラス繊維は、それぞれ同方向に延びるように配置されている。ここで、「同方向」とは、厳密な意味ではない。即ち、「同方向」とは、設計上、製造上の誤差が許容され、「略同方向」という意味である。具体的には、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22を平面視して、それぞれのガラス繊維が、例えば±5度の範囲内で互いに立体的に交差(以下、単に「交差」という。)していてもよい。なお、互いに5度の角度で交差したとしても、ずれの誤差への影響は、1回分の繰り返しパターンに対応する長さλの1%以下であり、製造誤差に含まれるので特に問題はない。
【0013】
第1の絶縁層21のガラス繊維及び第2の絶縁層22のガラス繊維は、互いに、経糸fxが延びるx軸方向又は緯糸fzが延びるz軸方向に距離δずれている。
即ち、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の繰り返しパターンは、そのパターンの向きが揃うように配置され、且つ、第1の絶縁層21の繰り返しパターンの位置が、第2の絶縁層22の繰り返しパターンの位置に対して、予め決められた距離δずれている。
樹脂層23は、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22とを接着することができる。樹脂層23の厚みtは、製造時に生じるばらつきを考慮すると、例えば、10〜30μmとすることができる。
【0014】
次に、実施例(シミュレーションによる解析例)を示し、本発明の一実施の形態に係る多層配線基板10について更に説明する。
【実施例1】
【0015】
一般に、多層配線基板には、多くのビア導体が形成されている。金属膜等により形成されるビア導体は、多層配線基板において特に疲労破壊しやすい部分である。また、ビア導体の疲労破壊の大半は、各絶縁層を構成するガラス繊維の層間の部分(樹脂層の部分)で起こっている。そのため、ビア導体をモデルとしてその挙動を解析することにより、絶縁層を構成するガラス繊維の層間に生ずるひずみの程度を把握することができると考えられる。
そこで、上記ビア導体、多層配線基板の各絶縁層を構成するガラス繊維、及びガラス繊維の層間に介在し、各ガラス繊維を接着する樹脂を含むモデルを作成し、このモデルに対する解析を行った。
具体的には、多層配線基板10の解析モデルに繰り返しの温度負荷を加え、前述の繰り返しパターンのずれ量(距離)δと多層配線基板10に形成されたビア導体に生じるひずみとの関係について、有限要素法によるシミュレーションを行い解析した。
このシミュレーションに用いたソフトウェアは、「ANSYS mechanical Ver.12.1」(ANSYS社)である。
解析条件は、以下の通りである。
【0016】
(1)要素タイプ及び要素寸法
要素タイプは、4面体要素である。
要素寸法は、図3Aに示すように、上方(y軸の正方向)からみて、略円形のビア導体の中央を中心とする一辺の長さが1.4〜1.5mmの四角形の範囲を、図3Cに示すコア材厚み400μmの厚さまで、約30μmのピッチで分割したものである。
【0017】
(2)解析モデル
解析モデルは、多層配線基板(FR−4)10のガラス繊維の経糸fx及び緯糸fzの形状をモデル化し、任意の位置に非貫通ビアIVHを形成したモデルである。ここで、非貫通ビア(以下、単に「ビア」という。)IVHは、第1の絶縁層21の表面から第2の絶縁層22まで貫通したビアである(図6参照)。
詳細には、解析モデルは、図3Aに示すように、ガラス繊維が平織りされたガラスクロスに樹脂を含浸させた板状の第1及び第2の絶縁層21、22が、樹脂層23を介して積層されたモデルである。多層配線基板10に形成されたビアIVHは銅めっきにより形成されている。
【0018】
ガラス繊維の寸法(ガラス繊維の厚さA、ガラス繊維の幅B、1回分の繰り返しパターンに対応する長さλ、及びガラス繊維のピッチλ/2)は、図3Bに示す通りである。また、第1の絶縁層21、第2の絶縁層22及び各樹脂層23、25、27の厚みは図3Cに示す通りである。
なお、ガラス繊維は、繊維一本の直径が9μmであり、経糸及び緯糸ともに、この繊維を400本束ねたものとした。また、ビアIVHの穴の外径は500μm、長さ(高さ)は400μmとした。銅めっきの厚さは20μmとした。
【0019】
(3)拘束条件
図3Aの○印で示す点P1〜P3をそれぞれ拘束した。点P1、P2は、多層配線基板10の底面の2つの角点である。点P3は、点P1、P2により固定された辺と対向する辺の中点である。各点P1〜P3の拘束方向は、同図3Aの△印で示している。
【0020】
(4)材料定数
材料定数は、図3Dに示す値である。
【0021】
(5)温度負荷
解析モデルに対し、図4に示す繰り返しの温度負荷(−60℃〜120℃)を均一に与えた。
【0022】
第1の絶縁層21の繰り返しパターンの位置を、第2の絶縁層22に対して、繰り返しパターンに対応する長さλの1/2の距離まで、x軸方向にずらして解析した。このとき、z軸方向の繰り返しパターンは、ずれ量を0として固定した。また、xz平面上の任意の位置にビアIVHを複数形成し、それぞれ、ビアIVHに生じるひずみの程度を求めた。
なお、1回分の繰り返しパターンに対応する長さλの1/2の距離までずらして解析することにより、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22の相対的な位置関係を全て網羅することができる。例えば、x軸方向に+1/4λずらしたときと−1/4λずらしたときの第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の相対的な位置関係は、互いに逆方向からみれば同様とみなすことができる。
【0023】
解析結果を図5に示す。同図5に示すグラフの横軸は、長さλ(1回分の繰り返しパターンに対応する長さ)に対するずれ量(距離)δの比率x(=δ/λ)を示している。つまり、比率xは、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の繰り返しパターンのずれの程度を示している。グラフの縦軸は、ビアIVHに生じるひずみの程度である。ここで、ひずみの程度とは、繰り返しの温度負荷における2サイクル目の間に生ずるひずみの累積値の1/2の値(一般には、塑性ひずみ振幅ともいう。)である。ひずみの程度は、相対的なひずみの大きさを示している。
【0024】
同グラフ中、○印は、各ビアIVHにそれぞれ生じたひずみのうち、最も小さい最低ひずみに関するひずみの程度であり、前述のように相対的なひずみの大きさを示している。□印は、各ビアIVHにそれぞれ生じたひずみのうち、最も大きい最高ひずみに関するひずみの程度を示している。
同グラフから分かるように、第1の絶縁層21の繰り返しパターンの位置を、第2の絶縁層22の繰り返しパターンの位置に対して、任意の距離ずらすことによって、ビアIVHに生ずるひずみの程度をコントロールすることができる。
以下、明示しない限り、「ひずみの程度」は最低ひずみに関するひずみの程度を示すものとして説明する。
【0025】
同図5に示すように、0≦x≦0.15又は0.37≦x≦0.50の範囲(ハッチング領域)については、ひずみの程度は、従来のように第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22のずれ量を全く管理しない場合の平均値以下となっている。つまり、0≦x≦0.15又は0.37≦x≦0.50の範囲であれば、ビアIVHに生ずる最低ひずみが低減された領域を形成することができる。
【0026】
ずれの程度(比率x)を同図5に示すハッチング領域に設定することによって、例えば、図6に示すように、多層配線基板には領域A及び領域Bが形成される。
領域Aは、経糸fxと緯糸fzが交差する部分におけるガラス繊維の端部(同図6に示した○印)が含まれる領域である。ただし、領域Aは、経糸fx及び緯糸fzの頂点(同図6に示した△印)が含まれない領域である。
領域Bは、経糸fxと緯糸fzが交差する部分において少なくともいずれかの頂点が含まれる領域である。
【0027】
領域Aは、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の各ガラス繊維の層がともに薄くなり、各ガラス繊維間に介在する樹脂の層(樹脂層)が厚くなる。このように、ガラス繊維の層が薄く、樹脂の層が厚くなると、ガラス繊維によってビアIVHが拘束される影響が小さくなり、樹脂によってビアIVHに加わる応力を分散する効果が高くなる。すなわち、ビアIVHに生じるひずみが低減されるものと考えられる。
一方、領域Bは、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の各ガラス繊維の層がともに厚くなり、各ガラス繊維間に介在する樹脂の層が薄くなる。この領域では、領域Aと異なり、ビアIVHに加わる応力を分散する効果が小さくなり、ひずみが増大する。
従って、従来のように第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22のずれ量を管理しない場合の多層配線基板に対し、上記のように、互いの絶縁層を予め決められた距離ずらして、上記の領域Aにビア(非貫通ビア以外のビアを含む)を形成すると、多層配線基板の信頼性が向上する。
【0028】
ただし、領域Aに必ずしもビア(非貫通ビア以外のビアを含む)を形成しない場合、即ち、領域Aを考慮せずに任意の位置に同ビアを形成する場合には、最低ひずみに関するひずみの程度が平均値よりも大きく、かつ最高ひずみに関するひずみの程度が小さくなる0.15<x<0.37の範囲の方が、それ以外の範囲よりも多層配線基板の信頼性が向上する。
【実施例2】
【0029】
多層配線基板10の樹脂層23の厚みtを変更し、樹脂層23の厚みtと前述のひずみの程度との関係について解析した。
基礎となる解析モデルは実施例1で用いたモデルである。
【0030】
解析結果を図7Aに示す。同図7Aに示すグラフの横軸は、樹脂層23の厚みtを示している。グラフの縦軸は、ひずみの程度の比sを示している。このひずみの程度の比sとは、樹脂層23の厚みtが20μmの場合の歪みの程度を基準とした際の、ひずみの程度の相対的な大きさを示す。
同図7Aに示すように、少なくとも樹脂層23の厚みが30μm以下の範囲では、樹脂層23の厚みtとひずみの程度の比sとの相関が高い。
なお、得られたデータについて最小二乗法により直線近似すると、次式の関係が得られる。
【0031】
s=0.012916t+0.7518 (式1)
【0032】
ここで、s:ひずみの程度の比、t:樹脂層23の厚みである。なお、図7A中、点線は、近似式(式1)により求めたひずみの程度の比の±3%に対応するデータを示している。
【0033】
図7Bは、図7Aから求めたグラフである。図7Bに示すグラフの横軸は、樹脂層23の厚みtを示している。グラフの縦軸は、前述の近似式(式1)から求められたひずみの程度の比sからの差を示している。
同図7Bから、樹脂層23の厚みが30μm以下であって、0≦x≦0.15又は0.37≦x≦0.50の範囲(○印と△印と□印を含む範囲)について、ビアIVHのひずみの程度の比は、前述の式1により求まるひずみの程度の比の±3%の範囲に収まることが分かる。なお、±3%の範囲であれば、解析誤差と同等であり、実用に影響しない。
【実施例3】
【0034】
一般的に用いられる多層配線基板(FR−4)の樹脂層23の厚みを実測すると、図8に示すように、10〜30μmの間でばらつく。データの中央値は、20μmとなる。
そこで、樹脂層23の厚みtのばらつきの最大値(27μm:1σ)以下の範囲において、ひずみの程度を、ずれ量δを考慮しない場合の平均値以下に抑えられる比率x(ずれの程度)の範囲を解析した。
解析モデルは実施例1のモデルを用い、図3Cに示す樹脂層23の厚みを変更して解析した結果である。
【0035】
解析結果を図9に示す。同図9に示すグラフの横軸は、1回分の繰り返しパターンに対応する長さλに対する予め決められた距離δの比率x(=δ/λ)を示している。グラフの縦軸は、ビアIVHに生じるひずみの程度を示している。
同図9に示すように、樹脂層23の厚みtが20μmの場合における、第1及び第2の絶縁層21、22の繊維の繰り返しパターンのずれによって生ずるひずみの程度の平均値の大きさをMとすると、樹脂層23の厚みtが27μm以下の範囲において、ひずみの程度をこの平均値M以下とすることができる比率x(ずれの程度)の範囲は、ハッチングにて示した0.03≦x≦0.10又は0.43≦x≦0.46となる。
【0036】
本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
前述の実施の形態に係る多層配線基板10を用いた電子機器として、電源回路や駆動回路にスイッチングを行うための半導体素子が備えられたインバータ装置、工作機械、産業用ロボットの制御装置等が挙げられる。また、その他の電子機器として、航空、宇宙機器用電子機器等、任意の電子機器が挙げられる。
また、前述の実施の形態において、経糸と緯糸の織り方は平織りに限定されるものではなく、例えば、綾織であっても良い。
【符号の説明】
【0038】
10:多層配線基板、12:電子機器、21:第1の絶縁層、22:第2の絶縁層、23、25、27:樹脂層
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線基板及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、複数の電子部品によって構成されている。これら電子部品は、多層配線基板によって固定され、配線される。その多層配線基板の一例としては、特許文献1に記載の多層プリント回路基板が挙げられる。この多層プリント回路基板は、複数のフッ素樹脂系基材層が積層されて形成され、内部に少なくとも1つの導電体層を備えている。多層プリント回路基板は、この導電体層を備えた基材層とこれに隣接する基材層とが、液晶ポリマーからなる接着層を介して接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−268365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、電子機器のON/OFF動作や周囲温度の変化等によって、冷熱サイクル負荷にさらされると、多層配線基板は膨張及び収縮する。特に、多層配線基板の厚み方向にひずみ(寸法変化)が生じる。
その結果、多層配線基板の導電体層の間を電気接続するために形成されるビア導体は、そのひずみにより疲労破壊して接合不良が生じる場合がある。
【0005】
従来、絶縁層及び樹脂層が積層されて構成される多層配線基板は、いずれの場所でも材質が実質的に均一である均質体とみなされていた。そのため、ビア導体の疲労破壊は、多層配線基板の厚み方向のひずみによっていずれの場所にも均等に生じうると考えられていた。
しかしながら、本願発明者らは、多層配線基板のいずれの場所においても均一なひずみが発生するものではない、と考えた。
本発明は、多層配線基板の各絶縁層を構成する繊維の層間に生ずるひずみが低減された領域を形成することが可能な多層配線基板及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第1の絶縁層と、
複数の繊維が前記予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とを接着する樹脂層とを備え、
前記第1の絶縁層の繰り返しパターン及び前記第2の絶縁層の繰り返しパターンは、向きが揃うように配置され、且つ、前記第1の絶縁層の繰り返しパターンの位置が、前記第2の絶縁層の繰り返しパターンの位置に対して、予め決められた距離ずれている多層配線基板が適用される。
【0007】
また、他の観点によれば、本発明に係る多層配線基板を用いた電子機器が適用される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多層配線基板の各絶縁層を構成する繊維の層間に生ずるひずみが低減された領域を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る多層配線基板を有する電子機器の説明図である。
【図2】同多層配線基板の構造を示す断面図である。
【図3A】同多層配線基板の解析モデルを示す説明図である。
【図3B】同多層配線基板のガラス繊維の寸法を示す説明図である。
【図3C】同多層配線基板の各層の厚みを示す説明図である。
【図3D】同多層配線基板の解析モデルの材料定数である。
【図4】実施例1に係る多層配線基板に与える繰り返しの温度負荷を示すグラフである。
【図5】実施例1に係る多層配線基板の比率xとひずみの程度との関係を示すグラフである。
【図6】実施例1に係る多層配線基板に形成されたビアを示す説明図である。
【図7A】実施例2に係る多層配線基板の樹脂層の厚みtと、ひずみの程度の比sとの関係を示すグラフである。
【図7B】実施例2に係る多層配線基板の樹脂層の厚みtと、ひずみの程度の比sの近似式からの差との関係を示すグラフである。
【図8】実施例3に係る多層配線基板を構成する樹脂層の厚みのばらつきを示すグラフである。
【図9】実施例3に係る多層配線基板の比率xとひずみの程度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る多層配線基板10は、図1に示すように、例えば電子機器12に内蔵されている。
多層配線基板10は、図2に示すように、少なくともy軸方向に積層される第1の絶縁層21、第2の絶縁層22及び樹脂層23を有している。第1の絶縁層21の上側には、樹脂層25が積層されている。第2の絶縁層22の下側には、樹脂層27が積層されている。
多層配線基板10は、例えば、FR−4である。
【0012】
同図2に示すように、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22は、それぞれ例えばガラス繊維を束ねた繊維束の経糸fxと緯糸fzとが、例えば平織りにより織られ、樹脂が含浸されて板状に形成されている。即ち、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22は、それぞれ、複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られて形成されている。1回分の繰り返しパターンに対応する長さλは、例えば、0.5〜2.0mmとすることができる。
第2の絶縁層22のガラス繊維は、第1の絶縁層21のガラス繊維が延びる方向に延びている。つまり、第1の絶縁層21のガラス繊維及び第2の絶縁層22のガラス繊維は、それぞれ同方向に延びるように配置されている。ここで、「同方向」とは、厳密な意味ではない。即ち、「同方向」とは、設計上、製造上の誤差が許容され、「略同方向」という意味である。具体的には、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22を平面視して、それぞれのガラス繊維が、例えば±5度の範囲内で互いに立体的に交差(以下、単に「交差」という。)していてもよい。なお、互いに5度の角度で交差したとしても、ずれの誤差への影響は、1回分の繰り返しパターンに対応する長さλの1%以下であり、製造誤差に含まれるので特に問題はない。
【0013】
第1の絶縁層21のガラス繊維及び第2の絶縁層22のガラス繊維は、互いに、経糸fxが延びるx軸方向又は緯糸fzが延びるz軸方向に距離δずれている。
即ち、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の繰り返しパターンは、そのパターンの向きが揃うように配置され、且つ、第1の絶縁層21の繰り返しパターンの位置が、第2の絶縁層22の繰り返しパターンの位置に対して、予め決められた距離δずれている。
樹脂層23は、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22とを接着することができる。樹脂層23の厚みtは、製造時に生じるばらつきを考慮すると、例えば、10〜30μmとすることができる。
【0014】
次に、実施例(シミュレーションによる解析例)を示し、本発明の一実施の形態に係る多層配線基板10について更に説明する。
【実施例1】
【0015】
一般に、多層配線基板には、多くのビア導体が形成されている。金属膜等により形成されるビア導体は、多層配線基板において特に疲労破壊しやすい部分である。また、ビア導体の疲労破壊の大半は、各絶縁層を構成するガラス繊維の層間の部分(樹脂層の部分)で起こっている。そのため、ビア導体をモデルとしてその挙動を解析することにより、絶縁層を構成するガラス繊維の層間に生ずるひずみの程度を把握することができると考えられる。
そこで、上記ビア導体、多層配線基板の各絶縁層を構成するガラス繊維、及びガラス繊維の層間に介在し、各ガラス繊維を接着する樹脂を含むモデルを作成し、このモデルに対する解析を行った。
具体的には、多層配線基板10の解析モデルに繰り返しの温度負荷を加え、前述の繰り返しパターンのずれ量(距離)δと多層配線基板10に形成されたビア導体に生じるひずみとの関係について、有限要素法によるシミュレーションを行い解析した。
このシミュレーションに用いたソフトウェアは、「ANSYS mechanical Ver.12.1」(ANSYS社)である。
解析条件は、以下の通りである。
【0016】
(1)要素タイプ及び要素寸法
要素タイプは、4面体要素である。
要素寸法は、図3Aに示すように、上方(y軸の正方向)からみて、略円形のビア導体の中央を中心とする一辺の長さが1.4〜1.5mmの四角形の範囲を、図3Cに示すコア材厚み400μmの厚さまで、約30μmのピッチで分割したものである。
【0017】
(2)解析モデル
解析モデルは、多層配線基板(FR−4)10のガラス繊維の経糸fx及び緯糸fzの形状をモデル化し、任意の位置に非貫通ビアIVHを形成したモデルである。ここで、非貫通ビア(以下、単に「ビア」という。)IVHは、第1の絶縁層21の表面から第2の絶縁層22まで貫通したビアである(図6参照)。
詳細には、解析モデルは、図3Aに示すように、ガラス繊維が平織りされたガラスクロスに樹脂を含浸させた板状の第1及び第2の絶縁層21、22が、樹脂層23を介して積層されたモデルである。多層配線基板10に形成されたビアIVHは銅めっきにより形成されている。
【0018】
ガラス繊維の寸法(ガラス繊維の厚さA、ガラス繊維の幅B、1回分の繰り返しパターンに対応する長さλ、及びガラス繊維のピッチλ/2)は、図3Bに示す通りである。また、第1の絶縁層21、第2の絶縁層22及び各樹脂層23、25、27の厚みは図3Cに示す通りである。
なお、ガラス繊維は、繊維一本の直径が9μmであり、経糸及び緯糸ともに、この繊維を400本束ねたものとした。また、ビアIVHの穴の外径は500μm、長さ(高さ)は400μmとした。銅めっきの厚さは20μmとした。
【0019】
(3)拘束条件
図3Aの○印で示す点P1〜P3をそれぞれ拘束した。点P1、P2は、多層配線基板10の底面の2つの角点である。点P3は、点P1、P2により固定された辺と対向する辺の中点である。各点P1〜P3の拘束方向は、同図3Aの△印で示している。
【0020】
(4)材料定数
材料定数は、図3Dに示す値である。
【0021】
(5)温度負荷
解析モデルに対し、図4に示す繰り返しの温度負荷(−60℃〜120℃)を均一に与えた。
【0022】
第1の絶縁層21の繰り返しパターンの位置を、第2の絶縁層22に対して、繰り返しパターンに対応する長さλの1/2の距離まで、x軸方向にずらして解析した。このとき、z軸方向の繰り返しパターンは、ずれ量を0として固定した。また、xz平面上の任意の位置にビアIVHを複数形成し、それぞれ、ビアIVHに生じるひずみの程度を求めた。
なお、1回分の繰り返しパターンに対応する長さλの1/2の距離までずらして解析することにより、第1の絶縁層21と第2の絶縁層22の相対的な位置関係を全て網羅することができる。例えば、x軸方向に+1/4λずらしたときと−1/4λずらしたときの第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の相対的な位置関係は、互いに逆方向からみれば同様とみなすことができる。
【0023】
解析結果を図5に示す。同図5に示すグラフの横軸は、長さλ(1回分の繰り返しパターンに対応する長さ)に対するずれ量(距離)δの比率x(=δ/λ)を示している。つまり、比率xは、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の繰り返しパターンのずれの程度を示している。グラフの縦軸は、ビアIVHに生じるひずみの程度である。ここで、ひずみの程度とは、繰り返しの温度負荷における2サイクル目の間に生ずるひずみの累積値の1/2の値(一般には、塑性ひずみ振幅ともいう。)である。ひずみの程度は、相対的なひずみの大きさを示している。
【0024】
同グラフ中、○印は、各ビアIVHにそれぞれ生じたひずみのうち、最も小さい最低ひずみに関するひずみの程度であり、前述のように相対的なひずみの大きさを示している。□印は、各ビアIVHにそれぞれ生じたひずみのうち、最も大きい最高ひずみに関するひずみの程度を示している。
同グラフから分かるように、第1の絶縁層21の繰り返しパターンの位置を、第2の絶縁層22の繰り返しパターンの位置に対して、任意の距離ずらすことによって、ビアIVHに生ずるひずみの程度をコントロールすることができる。
以下、明示しない限り、「ひずみの程度」は最低ひずみに関するひずみの程度を示すものとして説明する。
【0025】
同図5に示すように、0≦x≦0.15又は0.37≦x≦0.50の範囲(ハッチング領域)については、ひずみの程度は、従来のように第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22のずれ量を全く管理しない場合の平均値以下となっている。つまり、0≦x≦0.15又は0.37≦x≦0.50の範囲であれば、ビアIVHに生ずる最低ひずみが低減された領域を形成することができる。
【0026】
ずれの程度(比率x)を同図5に示すハッチング領域に設定することによって、例えば、図6に示すように、多層配線基板には領域A及び領域Bが形成される。
領域Aは、経糸fxと緯糸fzが交差する部分におけるガラス繊維の端部(同図6に示した○印)が含まれる領域である。ただし、領域Aは、経糸fx及び緯糸fzの頂点(同図6に示した△印)が含まれない領域である。
領域Bは、経糸fxと緯糸fzが交差する部分において少なくともいずれかの頂点が含まれる領域である。
【0027】
領域Aは、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の各ガラス繊維の層がともに薄くなり、各ガラス繊維間に介在する樹脂の層(樹脂層)が厚くなる。このように、ガラス繊維の層が薄く、樹脂の層が厚くなると、ガラス繊維によってビアIVHが拘束される影響が小さくなり、樹脂によってビアIVHに加わる応力を分散する効果が高くなる。すなわち、ビアIVHに生じるひずみが低減されるものと考えられる。
一方、領域Bは、第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22の各ガラス繊維の層がともに厚くなり、各ガラス繊維間に介在する樹脂の層が薄くなる。この領域では、領域Aと異なり、ビアIVHに加わる応力を分散する効果が小さくなり、ひずみが増大する。
従って、従来のように第1の絶縁層21及び第2の絶縁層22のずれ量を管理しない場合の多層配線基板に対し、上記のように、互いの絶縁層を予め決められた距離ずらして、上記の領域Aにビア(非貫通ビア以外のビアを含む)を形成すると、多層配線基板の信頼性が向上する。
【0028】
ただし、領域Aに必ずしもビア(非貫通ビア以外のビアを含む)を形成しない場合、即ち、領域Aを考慮せずに任意の位置に同ビアを形成する場合には、最低ひずみに関するひずみの程度が平均値よりも大きく、かつ最高ひずみに関するひずみの程度が小さくなる0.15<x<0.37の範囲の方が、それ以外の範囲よりも多層配線基板の信頼性が向上する。
【実施例2】
【0029】
多層配線基板10の樹脂層23の厚みtを変更し、樹脂層23の厚みtと前述のひずみの程度との関係について解析した。
基礎となる解析モデルは実施例1で用いたモデルである。
【0030】
解析結果を図7Aに示す。同図7Aに示すグラフの横軸は、樹脂層23の厚みtを示している。グラフの縦軸は、ひずみの程度の比sを示している。このひずみの程度の比sとは、樹脂層23の厚みtが20μmの場合の歪みの程度を基準とした際の、ひずみの程度の相対的な大きさを示す。
同図7Aに示すように、少なくとも樹脂層23の厚みが30μm以下の範囲では、樹脂層23の厚みtとひずみの程度の比sとの相関が高い。
なお、得られたデータについて最小二乗法により直線近似すると、次式の関係が得られる。
【0031】
s=0.012916t+0.7518 (式1)
【0032】
ここで、s:ひずみの程度の比、t:樹脂層23の厚みである。なお、図7A中、点線は、近似式(式1)により求めたひずみの程度の比の±3%に対応するデータを示している。
【0033】
図7Bは、図7Aから求めたグラフである。図7Bに示すグラフの横軸は、樹脂層23の厚みtを示している。グラフの縦軸は、前述の近似式(式1)から求められたひずみの程度の比sからの差を示している。
同図7Bから、樹脂層23の厚みが30μm以下であって、0≦x≦0.15又は0.37≦x≦0.50の範囲(○印と△印と□印を含む範囲)について、ビアIVHのひずみの程度の比は、前述の式1により求まるひずみの程度の比の±3%の範囲に収まることが分かる。なお、±3%の範囲であれば、解析誤差と同等であり、実用に影響しない。
【実施例3】
【0034】
一般的に用いられる多層配線基板(FR−4)の樹脂層23の厚みを実測すると、図8に示すように、10〜30μmの間でばらつく。データの中央値は、20μmとなる。
そこで、樹脂層23の厚みtのばらつきの最大値(27μm:1σ)以下の範囲において、ひずみの程度を、ずれ量δを考慮しない場合の平均値以下に抑えられる比率x(ずれの程度)の範囲を解析した。
解析モデルは実施例1のモデルを用い、図3Cに示す樹脂層23の厚みを変更して解析した結果である。
【0035】
解析結果を図9に示す。同図9に示すグラフの横軸は、1回分の繰り返しパターンに対応する長さλに対する予め決められた距離δの比率x(=δ/λ)を示している。グラフの縦軸は、ビアIVHに生じるひずみの程度を示している。
同図9に示すように、樹脂層23の厚みtが20μmの場合における、第1及び第2の絶縁層21、22の繊維の繰り返しパターンのずれによって生ずるひずみの程度の平均値の大きさをMとすると、樹脂層23の厚みtが27μm以下の範囲において、ひずみの程度をこの平均値M以下とすることができる比率x(ずれの程度)の範囲は、ハッチングにて示した0.03≦x≦0.10又は0.43≦x≦0.46となる。
【0036】
本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
前述の実施の形態に係る多層配線基板10を用いた電子機器として、電源回路や駆動回路にスイッチングを行うための半導体素子が備えられたインバータ装置、工作機械、産業用ロボットの制御装置等が挙げられる。また、その他の電子機器として、航空、宇宙機器用電子機器等、任意の電子機器が挙げられる。
また、前述の実施の形態において、経糸と緯糸の織り方は平織りに限定されるものではなく、例えば、綾織であっても良い。
【符号の説明】
【0038】
10:多層配線基板、12:電子機器、21:第1の絶縁層、22:第2の絶縁層、23、25、27:樹脂層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第1の絶縁層と、
複数の繊維が前記予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とを接着する樹脂層とを備え、
前記第1の絶縁層の繰り返しパターン及び前記第2の絶縁層の繰り返しパターンは、向きが揃うように配置され、且つ、前記第1の絶縁層の繰り返しパターンの位置が、前記第2の絶縁層の繰り返しパターンの位置に対して、予め決められた距離ずれている多層配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の多層配線基板において、1回分の前記繰り返しパターンに対応する長さに対する前記予め決められた距離の比率をxとしたとき、0≦x≦0.15又は0.37≦x≦0.50となるように設定されている多層配線基板。
【請求項3】
請求項2記載の多層配線基板において、前記樹脂層の厚さが30μm以下である多層配線基板。
【請求項4】
請求項2又は3記載の多層配線基板において、前記複数の繊維は、経糸及び緯糸により構成され、
ビア導体が、平面視して前記経糸と前記緯糸が交差する部分にて、前記経糸及び前記緯糸のそれぞれの頂点を含まない領域に形成されている多層配線基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層配線基板を用いた電子機器。
【請求項1】
複数の繊維が予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第1の絶縁層と、
複数の繊維が前記予め決められた繰り返しパターンで織られ、樹脂が含浸されて板状に形成された第2の絶縁層と、
前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層とを接着する樹脂層とを備え、
前記第1の絶縁層の繰り返しパターン及び前記第2の絶縁層の繰り返しパターンは、向きが揃うように配置され、且つ、前記第1の絶縁層の繰り返しパターンの位置が、前記第2の絶縁層の繰り返しパターンの位置に対して、予め決められた距離ずれている多層配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の多層配線基板において、1回分の前記繰り返しパターンに対応する長さに対する前記予め決められた距離の比率をxとしたとき、0≦x≦0.15又は0.37≦x≦0.50となるように設定されている多層配線基板。
【請求項3】
請求項2記載の多層配線基板において、前記樹脂層の厚さが30μm以下である多層配線基板。
【請求項4】
請求項2又は3記載の多層配線基板において、前記複数の繊維は、経糸及び緯糸により構成され、
ビア導体が、平面視して前記経糸と前記緯糸が交差する部分にて、前記経糸及び前記緯糸のそれぞれの頂点を含まない領域に形成されている多層配線基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層配線基板を用いた電子機器。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−30560(P2013−30560A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164652(P2011−164652)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【Fターム(参考)】
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