説明

多層配線基板

【課題】高強度でありかつ導体の位置精度の高い多層配線基板を提供する。
【解決手段】セラミックスからなる絶縁層1が複数積層された絶縁基板と、該絶縁基板の表面および内部に設けられた導体層3A・3Bとを具備してなる多層配線基板であって、前記絶縁基板がアルミニウムをAl換算で80〜98質量%含有する第1の絶縁層1Aと、アルミニウムをAl換算で35〜60質量%含有するとともに、主結晶相としてディオプサイド相を有する第2の絶縁層1Bとが交互に積層され、かつ前記第1の絶縁層1Aと前記第2の絶縁層1Bとの間にマンガン層1Cを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度かつ高寸法精度の多層配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より電子機器の内部に組み込まれたLSI等の半導体素子を環境的に保護するとともに、半導体素子の放熱性を高め、かつ動作特性を安定化させるための筐体として半導体素子収納用パッケージと呼ばれる多層配線基板が用いられている。
【0003】
半導体素子収納用パッケージ用の多層配線基板としては、例えば、アルミナセラミック製のものが知られているが、アルミナセラミック製の多層配線基板は、アルミナセラミックスの高絶縁性、高密度かつ高強度という利点から、ワークステーションやサーバー等、演算速度の速さを求められるCPUに止まらず、近年では、携帯電話等、小型の電子機器のCPUやメモリー用としても多用されている。
【0004】
例えば、本出願人は、近年、アルミナにマンガンなどの焼結助剤を所定量加えることにより、従来のアルミナセラミックスよりも焼結温度を低温下させ、導体材料としてタングステンに銅を複合した導体材料を適用し、導体材料がタングステンからなる場合に比べて導体抵抗を低くしたアルミナセラミック製の多層配線基板を提案した(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−22338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にも記載された多層配線基板は、表面配線層や内部配線層など、多層配線基板の表面や内部に形成された導体の位置精度を高くすることが困難である。これは、上記のような多層配線基板は、通常、主成分であるアルミナ粉末と焼結助剤との混合物を含むグリーンシート上に、表面配線層または内部配線層となる配線パターンを形成し、次いで、この配線パターンが形成されたグリーンシートを複数枚積層して積層体を形成し、これを焼結させて得られるものであるため、焼結時の収縮率が大きいことに起因するものである。
【0007】
従って本発明は、高強度でありかつ導体の位置精度の高い多層配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多層配線基板は、セラミックスからなる絶縁層が複数積層された絶縁基板と、該絶縁基板の表面および内部に設けられた導体とを具備してなる多層配線基板であって、前記絶縁基板がアルミニウムをAl換算で80〜98質量%含有する第1の絶縁層と、アルミニウムをAl換算で35〜60質量%含有するとともに、主結晶相としてディオプサイド相を有する第2の絶縁層とが交互に積層され、かつ前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との間にマンガン層を有していることを特徴とする。
【0009】
上記多層配線基板では、前記第1の絶縁層が、ケイ素をSiO換算で0.8〜11質量%、マグネシウムをMgO換算で0.1〜5.0質量%含有するものであり、前記第2
の絶縁層がケイ素をSiO換算で25〜40質量%、マグネシウムをMgO換算で5.0〜20.0質量%、カルシウムをCaO換算で10〜20質量%含有するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高強度でありかつ導体の位置精度の高い多層配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の多層配線基板の一実施形態を示す断面図である。
【図2】多層配線基板の最表面の絶縁層上に形成した寸法精度評価用パターンおよびピール強度評価用パターンを示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の多層配線基板の一実施形態を示す概略断面図である。
【0013】
本実施形態の多層配線基板Aは、複数のセラミックスからなる絶縁層1が積層された絶縁基板10と、この絶縁基板10の表層および内部に設けられた導体3とを有している。導体3は、半導体素子(図示せず)や外部回路基板(図示せず)との接続部となる表面配線層3Aと、絶縁基板10の内部において信号層やグランド層となる内部配線層3Bと、表面配線層3Aと内部配線層3Bとを接続するために絶縁層1を貫通して設けられたビア導体3Cとから構成されている。
【0014】
絶縁基板10は、少なくともアルミニウムをAl換算で80〜98質量%含有する第1の絶縁層1Aと、アルミニウムをAl換算で30〜60質量%含有するとともに、主結晶相としてディオプサイド(CaMgSi)相を有する第2の絶縁層1Bとが交互に積層された構造となっている。また、この絶縁基板10には、第1の絶縁層1Aと第2の絶縁層1Bとの間にマンガン層1Cを有している。
【0015】
本実施形態の多層配線基板Aでは、アルミナを主成分とするセラミックスからなる第1の絶縁層1Aが、主結晶相としてディオプサイド(CaMgSi)相を有するガラスセラミックスからなる第2の絶縁層1Bとマンガン層1Cを介して接合されているために、高強度でありかつ導体の位置精度の高い多層配線基板を得ることができる。なお、マンガン層1Cは酸化物の形態となっており、これにより、共にセラミックスからなる第1の絶縁層1Aおよび第2の絶縁層1Bとの間で強固な接合層となる。
【0016】
ここで、多層配線基板Aを構成している第1の絶縁層1Aと第2の絶縁層1Bとの界面に形成されているマンガン層1Cは、多層配線基板Aの縦断面をX線マイクロアナライザーを付設した走査型電子顕微鏡を用いてカラーマッピングによる画像解析を行って確認する。この場合、マンガン層1Cは第1の絶縁層1Aと第2の絶縁層1Bとの界面の全域にわたってほぼ同じ厚みで形成されているのが良く、その平均厚みは1〜5μm程度が良い。これにより第1の絶縁層1Aと第2の絶縁層1Bとの界面の接合を強固なものとすることができる。
【0017】
また、本実施形態の多層配線基板Aでは、第1の絶縁層1Aが、ケイ素をSiO換算で0.8〜11質量%、マグネシウムをMgO換算で0.1〜5.0質量%含有するものであり、第2の絶縁層1Bがケイ素をSiO換算で25〜40質量%、マグネシウムをMgO換算で5.0〜20.0質量%、カルシウムをCaO換算で10〜20質量%含有するものであることが望ましい。
【0018】
第1の絶縁層1Aおよび第2の絶縁層1Bが、それぞれ上記組成であると、絶縁基板1の機械的強度を向上できるとともに、絶縁基板1に形成されている表面配線層3Aの接合強度を高めることができる。
【0019】
なお、第2の絶縁層1Bに含まれるディオプサイド相は、第2の絶縁層1Bの焼成時における溶融を防止するとともにヤング率を高くするという理由からX線回折のリートベルト解析から求められる値で50質量%以上の割合で含まれていることが望ましい。
【0020】
第2の絶縁層1Bに含まれているディオプサイド相の割合はX線回折のリートベルト解析から結晶化度として求める。この場合、多層配線基板Aから切り出した第2の絶縁層1Bを粉砕して粉末の状態とし、この粉砕粉末についてX線回折を行い、回折データをリートベルト解析して求める。
【0021】
第1の絶縁層1Aおよび第2の絶縁層1Bのそれぞれの組成は、多層配線基板Aを研磨して採取した第1の絶縁層1Aのみまたは第2の絶縁層1Bのみの試料についてそれぞれICP(Inductively Coupled Plasma)分析を行って求める。
【0022】
また、本実施形態の多層配線基板Aを構成する表面配線層3A、内部配線層3Bおよびビア導体3Cなどの導体3は、タングステン、モリブデンおよび銅から選ばれる少なくとも1種の導体材料によって構成されているものがよく、特に、導体3の抵抗が低く、高周波特性に優れた配線層を形成できるという点で、少なくとも銅を含有するものが望ましい。
【0023】
次に、上記の多層配線基板の製造方法について具体的に説明する。
【0024】
まず、第1の絶縁層1A用の第1のグリーンシートを作製するために、主原料粉末として、いずれも純度が99質量%以上のアルミナ(Al)粉末およびMn粉末を準備する。次いで、アルミナ(Al)粉末を80〜98質量%とMn粉末を1〜10質量%とを配合して混合粉末を調製する。この場合、さらに、SiO粉末を0.8〜11質量%およびMgO粉末を0.1〜5.0質量%添加するのがよい。このSiO粉末およびMgO粉末の純度も99質量%以上であるのがよい。上記組成であると、還元雰囲気中、1300℃〜1400℃の温度において、緻密かつ高強度の第1の絶縁層1Aを得ることができる。
【0025】
次に、第2の絶縁層1B用の第2のグリーンシートを作製するために、主原料粉末として、焼成時にディオプサイド相を生成するガラス粉末とセラミックフィラーとしてアルミナ粉末を準備する。この場合のガラス粉末としては、アルミナ(Al)粉末を30〜60質量%、ケイ素をSiO換算で25〜40質量%、マグネシウムをMgO換算で5.0〜20.0質量%およびカルシウムをCaO換算で10〜20質量%含有するものを用いるのが望ましい。上記組成であると、還元雰囲気中、1300℃〜1400℃の温度において、第2の絶縁層1Bが溶融すること無しに高い焼結性の第2の絶縁層1Bを得ることができる。
【0026】
次に、第1のグリーンシートの組成の混合粉末および第2のグリーンシートの組成の混合粉末のそれぞれの混合粉末に対して有機バインダ、可塑剤および溶媒を添加してスラリーを調整した後、これをプレス法、ドクターブレード法、圧延法、射出法などの成形方法によって、それぞれ第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートを作製する。なお、第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートの厚みは、例えば、50〜300μmとすることができるが、特に限定されない。
【0027】
次に、この第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートに対して、マイクロドリル、レーザー等により直径50〜250μmの貫通孔を形成する。
【0028】
次に、第1のグリーンシートおよび第2のグリーンシートに形成された貫通孔内にスクリーン印刷法により導体ペーストを充填する。貫通孔に充填する導体ペーストはタングステン粉末、モリブデン粉末および銅粉末から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を用いる。
【0029】
次に、貫通孔に導体ペーストを充填して生のビア導体が形成された第1、第2のグリーンシートに対して、それらの表面にスクリーン印刷、グラビア印刷などの方法により、導体ペーストを印刷塗布して表面配線層または内部配線層となる配線パターンを形成する。この配線パターン用の導体ペーストもタングステン粉末、モリブデン粉末および銅粉末から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を用いることが望ましい。
【0030】
次に、生のビア導体および配線パターンの形成された第1および第2のグリーンシートを交互に複数枚積層して積層体を形成した後、この積層体を還元性雰囲気(窒素雰囲気あるいは窒素と水素との混合雰囲気)中にて同時焼成する。焼成条件は、最高温度を1300℃〜1400℃とし、保持時間を1〜3時間とするのがよい。焼成中の最高温度を1300℃〜1400℃とし、保持時間を1〜3時間とすることにより、第2の絶縁層1B中にディオプサイド相を有し、また、第1の絶縁層1Aと第2の絶縁層1Bとの界面にマンガン層1Cが形成された多層配線基板Aを得ることができる。
【0031】
本実施形態の多層配線基板Aの製造に際しては、焼成工程における温度の低い初期段階では、アルミニウムをAl換算で30〜60質量%含有し、焼成時に主結晶相としてディオプサイド相を析出する組成を有する第2のグリーンシートが収縮し始めても、アルミニウムをAl換算で80〜98質量%、マンガンをMn換算で1〜10.0質量%含有する第1のグリーンシートが原形を維持している。このとき第2のグリーンシートではディオプサイド相が析出してくるためにヤング率の高い絶縁層となる。
【0032】
このため焼成時に主結晶相としてディオプサイド相を析出する第2のグリーンシートの収縮はアルミナを多く含む第1のグリーンシートによって抑制される。
【0033】
次に、さらに温度が上がるとアルミナを多く含む第1のグリーンシートの方が収縮し始めるが、この段階においては、主結晶相としてディオプサイド相を析出する第2のグリーンシートは既に収縮反応が実質的に終了して安定状態となっていることから、アルミナを多く含む第1のグリーンシートは、収縮反応が実質的に終了して安定状態となっている第2のグリーンシートの焼結体である第2の絶縁層1Bによって拘束されることになる。
【0034】
また、この第1のグリーンシートが収縮する焼成段階では、第1のグリーンシート中に含まれているマンガンが第1のグリーンシートの表面に拡散してくることから、第1のグリーンシートが反応し始める焼成の後半において、第1のグリーンシートの焼結体である第1の絶縁層1Aと第2のグリーンシートの焼結体である第2の絶縁層1Bとの層間にマンガン層1Cが形成される。
【0035】
ここで、第1のグリーンシートが反応し始める焼成の段階においては、第1の絶縁層1Aと第2の絶縁層1Bとの層間に形成されたマンガン層1Cは、第1の絶縁層1Aと第2の絶縁層1Bとを接合する接着剤として機能する。このため第1のグリーンシートは、収縮反応が実質的に終了している第2の絶縁層1Bに強固に接合された状態となり、これにより第1の絶縁層1Aもまた収縮が抑制されることになる。
【0036】
こうして第1のグリーンシートからのマンガンの拡散と第2のグリーンシートにおけるディオプサイド相の析出の効果により、両グリーンシートの焼結時の収縮応力を平面的に互いに拘束し合い、第1および第2の絶縁層1A、1Bの平面方向における収縮率を小さくすることができる。
【0037】
なお、焼成雰囲気を水素および窒素を含む還元雰囲気とすると、内部配線層3Aからの銅の拡散を抑制でき、内部配線層3Aの長さ方法に対して垂直な方向の断面形状をより矩形状に保つことができるという利点がある。
【0038】
以上述べた方法により作製された多層配線基板Aは、第2の絶縁層中にディオプサイド相を有しており、また、第1の絶縁層1Aと第2の絶縁層1Bとの界面にマンガン層1Cを有していることから、高強度でありかつ導体の位置精度の高い多層配線基板となる。
【実施例】
【0039】
まず、表1および表2にそれぞれ示す組成を有する第1および第2のグリーンシート用の原料粉末を準備し、これに有機バインダ、可塑剤および溶媒を添加してスラリーを作製した。次に、このスラリーをドクターブレード法により成形し、面積が縦220mm、横220mmであり、平均厚みがいずれも0.20mmの第1、第2のグリーンシートを作製した。次に、作製した第1および第2のグリーンシートに、それぞれパンチングにより直径0.12mmの貫通孔を形成した。次に、銅粉末を50体積%、タングステン粉末を50体積%としたものに、さらに、アクリル樹脂とフタル酸ジブチル(DBP)を混合した有機ビヒクルを添加し混錬してビア導体用の導体ペーストを調製し、この導体ペーストをスクリーン印刷法によって、第1、第2のグリーンシートに形成された貫通孔に充填して生のビア導体を形成した。
【0040】
次に、ビア導体用の導体ペーストと金属成分の組成が同じの表面配線層用および内部配線層用の導体ペーストを作製し、これを生のビア導体が形成された第1,第2のグリーンシートの表面にスクリーン印刷法により形成して表面配線層用および内部配線層用となる配線パターンを形成した。なお、積層体の最表層に位置する第1のグリーンシートの表面には、多層配線基板の寸歩精度測定用のパターンとして、図2に示すように、グリーンシートの4角に四角形状の寸法精度評価用パターン(3AA)を形成した。
【0041】
また、この最表層に位置する第1のグリーンシートの表面には、表面配線層の絶縁基板に対する接合強度を測定するためのピール強度評価用パターン(図2の3AB)も同時に形成した(図2)。
【0042】
次に、生のビア導体および配線パターンが形成された第1、第2のグリーンシートを図1の構成になるように積層して積層体を作製した。この時、第1、第2のグリーンシート間に接着剤を均一に塗布し、40℃、20MPaの条件で加圧積層を行った。続いて、これらの積層体を切断し、均一な大きさに切断した後、還元雰囲気中、最高温度1350℃で1時間焼成を行った。積層体の寸法は50mm×50mmとした。焼成後においてもほとんど面方向にはほとんど収縮していない基板が得られた。
【0043】
次に、作製した多層配線基板について以下の評価を行った。
【0044】
基板強度については、作製した多層配線基板から、その外周部分を長さ20mm、幅3mm、厚み1mmに切り出した試料を作製し、オートグラフを用いて3点曲げ試験にて機械的強度の評価を行った。試料数は10個とし平均値を求めた。
【0045】
多層配線基板の寸歩精度については、多層配線基板の最表層の4角に形成した4辺の評
価パターン間の長さ(図2の矢印部分)を測定し、その標準偏差を求めた。測定数は40箇所(基板数10枚)とした。
【0046】
また、作製した多層配線基板について表面配線層の絶縁基板に対する接合強度を評価した。用いた試料は以下の方法により作製した。まず、多層配線基板の最表面に形成された接合強度用の評価パターンの表面に、ニッケルめっき膜および金めっき膜をこの順に形成した。次に、金めっき膜の表面に銀ろう(Ag−Cu合金)を用いて厚み0.2mmのコバール(Fe−Co−Ni系金属)の板を接着し、次いで、窒素−水素の還元雰囲気中、800℃の温度に加熱してコバールの板を多層配線基板の表面配線層の表面に接合させた。このとき、コバールの板には銀ろうを塗布していない部分を残すようにし、この部分を試験治具で保持できるようにした。次に、作製した評価試料のコバールの板を垂直方向に引き剥がすようにして接合強度を測定した。このとき引きはがし速度は100mm/min.とした。
【0047】
なお、表2には、第2の絶縁層に含まれているアルミナのフィラーおよび析出したディオプサイド相の割合から求めた値を結晶化度として示した。これは多層配線基板から切り出した第2の絶縁層を粉砕して粉末の状態とし、この粉砕粉末についてX線回折を行い、回折データをリートベルト解析して求めたものである。また、得られた多層配線基板からそれぞれ切り出した第1の絶縁層および第2の絶縁層をICP分析して組成を求めたところ、第1の絶縁層中に含まれるアルミニウム、ケイ素およびマグネシウムの含有量ならびに第2の絶縁層中に含まれるアルミニウム、ケイ素、マグネシウムおよびカルシウムの含有量はいずれも表1および表2に示す組成に一致した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
表1〜3より明らかなように、試料No.1〜10、12〜20、22〜30、32〜40、42〜50、52、55および56は、寸歩精度として求めた標準偏差がいずれも0.1%以下であり導体の位置精度に優れており、また、絶縁基板の機械的強度(3点曲げ強度)がいずれも390MPa以上であった。また、表面配線層の接合強度がいずれも
25N/mm以上であった。
【0052】
特に、第1の絶縁層として、さらに、ケイ素をSiO換算で0.8〜11質量%、マグネシウムをMgO換算で0.1〜5.0質量%含有するものと、第2の絶縁層として、さらに、ケイ素をSiO換算で25〜40質量%、マグネシウムをMgO換算で5.0〜20.0質量%、カルシウムをCaO換算で10〜20質量%含有するものとで作製した試料(試料No.1〜6、8〜10、12〜20、22〜30、32〜40および42〜50)は、いずれも寸歩精度として求めた標準偏差がいずれも0.09%以下、絶縁基板の機械的強度(3点曲げ強度)が400MPa以上であった。
【0053】
これに対し、試料No.11、21、31、41、51、53および54は、いずれも寸歩精度として求めた標準偏差がいずれも0.1%より大きく導体の位置精度が悪いか、または絶縁基板の機械的強度(3点曲げ強度)が390MPaより低い値であった。
【符号の説明】
【0054】
A・・・・多層配線基板
1・・・・絶縁層
1A・・・第1の絶縁層
1B・・・第2の絶縁層
1C・・・マンガン層
3・・・・導体
3A・・・表面配線層
3B・・・内部配線層
3C・・・ビア導体
10・・・絶縁基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなる絶縁層が複数積層された絶縁基板と、該絶縁基板の表面および内部に設けられた導体層とを具備してなる多層配線基板であって、前記絶縁基板がアルミニウムをAl換算で80〜98質量%含有する第1の絶縁層と、アルミニウムをAl換算で35〜60質量%含有するとともに、主結晶相としてディオプサイド相を有する第2の絶縁層とが交互に積層され、かつ前記第1の絶縁層と前記第2の絶縁層との間にマンガン層を有していることを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記第1の絶縁層が、ケイ素をSiO換算で0.8〜11.0質量%、マグネシウムをMgO換算で0.1〜5.0質量%含有するものであり、
前記第2の絶縁層が、ケイ素をSiO換算で25〜40質量%、マグネシウムをMgO換算で5.0〜20.0質量%、カルシウムをCaO換算で10〜20質量%含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−156380(P2012−156380A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15426(P2011−15426)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】