説明

多数のセクションから成る管状部材を有するカテーテルとその製造方法

管状部材の第1のセクション(50A)と第2のセクション(50B)の間の継ぎ手を包囲して架橋するスリーブ(60)を含む多数のセクションから成る管状部材と、多数のセクションから成る管状部材の製造方法が開示される。高分子材のスリーブ(60)は第1のセクション(50A)の部分及び隣接する第2のセクション(50B)の部分を覆って延びる。熱収縮チューブの部分がスリーブ(60)を覆って配置されて加熱され、これにより熱収縮チューブをスリーブの周囲にて圧縮する。スリーブは続いて第1のセクション(50A)及び第2のセクション(50B)のそれぞれに対して熱結合される。熱収縮チューブ(70)は続いて第1のセクション及び第2のセクション(50A)を堅固に連結させるスリーブ(60)を残したまま取り除かれ、多数のセクション(50B)から成る管状部材を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関する。より詳細には本発明は多数のセクションから成る管状部材を含むカテーテル等の医療器具、及び管状部材の多数のセクションを連結させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺状医療器具は、通常、患者の体内組織内を案内すること、及び患者の体内組織内において治療を行うことのうち少なくともいずれか一方を促進するために使用される。カテーテル、内視鏡、ガイドワイヤ等の体内にて使用される様々な長尺状医療器具がここ数十年にわたって開発されてきた。患者の体内組織は著しく蛇行していることがあるため、このような器具においては、多数の性能特性を組み合わせることが通常望ましい。例えば、器具は特に基端部近傍において比較的高いレベルの押圧性およびトルク伝達性を有することが望ましい場合がある。また、器具が特に先端部近傍において比較的可撓性を有することが望ましい場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
様々な長尺状医療器具構造体及びアセンブリが公知であるが、これらはそれぞれ好都合な点と不都合な点とを有する。これらに代わる長尺状医療器具構造体、アセンブリ、及び方法が継続して要求されている。
【0004】
バルーンカテーテルは長く、且つ狭小なカテーテル体によって搬送される膨張可能且つ収縮可能なバルーンを備えることができる。バルーンは、最初の段階ではカテーテル本体に巻縮されており、これにより、バルーンカテーテルが体内に挿入しやすいように、バルーンカテーテルの径の大きさが縮小される。使用の際にバルーンは膨張され、体内の選択された部位にて後に収縮される。
【0005】
周知のバルーンカテーテルの設計は内側管状部材を外側管状部材により包囲する同軸の構成を含む。内側管状部材は通常ガイドワイヤに沿って器具を搬送するために使用可能なルーメンを含む。内側管状部材及び外側管状部材間の環状の間隙は通常バルーンと連通する膨張ルーメンを画定し、膨張流体がバルーンの膨張及び収縮において膨張ルーメンを通過する。膨張ルーメンはバルーンの膨張及び収縮において略開放されて妨害されない状態を保持し、これによりバルーンを確実にして、且つ好適に膨張及び収縮させることが重要である。
【0006】
これらのカテーテルの中には可撓性が異なる領域を形成すべく熱結合させることにより連結される異種物質の多数のセクションを有する管状部材を使用するものもある。カテーテルシャフトの好適な特性を妥協することなくカテーテルシャフトの多数のセクションを連結する新規な構造体及び方法を提供することが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は1つ以上の多数のセクションから成る管状部材を有するカテーテル等の長尺状をなす医療器具及びその製造方法に関する。1つ以上のセクションは高分子材の管状スリーブと一体的に結合されるが、管状部材は薄型に保持され、管状部材のその他の有利な特性が保持される。
【0008】
従って本発明の実施例においてバルーンカテーテルは外側管状部材と内側管状部材と膨張可能バルーンとを有する。内側管状部材は第1の基端側セクション及び第2の末端側セクションを備える。基端側セクションは末端側セクションに隣接する。高分子材のスリーブは基端側セクションを末端側セクションに固定するために使用され、これにより基端側セクション及び末端側セクションの間の継ぎ手を形成する。
【0009】
本発明の別の態様は長尺状をなす医療器具にて使用する多数のセクションから成る管状部材の製造方法に関する。管状部材の第1の管状セクション及び第2の管状セクションは端部同士が長手方向に配置され、これにより第1の管状部材の端部は第2の管状部材の端部に隣接する。隣接する領域は第1の管状部材及び第2の管状部材の間に結合部を画定する。高分子材の管状スリーブが続いて第1のセクション及び第2のセクションを覆うように配置され、これによりスリーブは第1の管状部材及び第2の管状部材の間の結合部から基端側及び末端側に延びる。
【0010】
熱収縮チューブ等のチューブの部分は高分子材のスリーブを覆って、スリーブを包囲するように配置される。熱エネルギーが熱収縮チューブに作用され、熱収縮チューブをスリーブ及び管状部材の周囲にて圧縮する。熱エネルギーが高分子材のスリーブに作用され、スリーブ及び隣接する管状部材の対応する部分の表面の温度を上昇させる。これにより高分子材のスリーブと、第1の管状部材及び第2の管状部材のそれぞれとの間を結合させる。熱収縮チューブは続いて管状部材及びスリーブから取り除かれる。
【0011】
本発明は、様々な変更物や代替物へ変更可能であるが、その詳細は図面において実施例として示されており、以下に詳述される。しかしながら、本発明は、記載された特定の実施例に限定されるものではない。本発明は、その趣旨及び範囲内に含まれる全ての変更物や均等物や代替物を包含するものである。
【0012】
本発明は、添付の図面に関して以下の様々な実施形態についての詳細な説明を鑑みてより深く理解されるであろう。
本発明は、様々な変更物や代替物へ変更可能であるが、その詳細は図面において実施例として示されており、以下に詳述される。しかしながら、本発明は、記載された特定の実施例に限定されるものではない。本発明は、その趣旨および範囲内に含まれる全ての変更物や均等物や代替物を包含するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に定義する用語については、請求項または本明細書のいずれかの個所に異なる定義がある場合を除き、以下の定義が適用されるものとする。
【0014】
本願に記載されるすべての数字は、明示的に記載されているか否かにかかわらず、「約(about)」という語を含んでいるものとされる。「約」という語は、通常、記載された数値と同等であると当業者が判断するであろう数値の範囲(すなわち、同一の機能または結果を生ずる数値の範囲)を指す。多くの場合において、「約」という語は、最も近い有効数字の周囲の数字を含むことを示す。
【0015】
指標となる数値による範囲指定を行う場合、当該範囲のすべての数値を含むものとする。(例えば、1乃至5の場合、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4,5を含む。)
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、内容が明らかにそうではないものを示さない限りは、複数形の対象物を含むことに留意すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合において、「又は」という語は、内容が明らかにそうではないものを示さない限りは、「及び/又は」という意味で用いられる。様々な実施例の好適な寸法がここで開示されるが、当業者は所望の寸法が明確に言及されない場合に、明示的に開示されたものを逸脱することを理解するだろう。
【0017】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、各図面において、類似する要素には同じ符号が付されている。図面は必ずしも寸法比率が等しいものではなく、詳細な説明及び図面は、例示する実施例を表すためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。開示される実施例は例示のみを意図されている。例示する実施例の選択された特徴は明確に言及されない場合に付加的な実施例に組み込まれてもよい。
【0018】
図1は、本発明の実施例におけるカテーテル10を示す。カテーテル10は様々な異なるカテーテルの1つであるが、好適には血管内カテーテルである。これらの例示的な血管内カテーテルの例はマイクロカテーテル、薬物搬送カテーテル、診断用カテーテル、案内カテーテル、バルーンカテーテル、ステント搬送カテーテル、塞栓症のコイル搬送カテーテル、及びアテローム切除術用カテーテルを含む。図1は基端部15及び末端部17を有するバルーンカテーテルを示す。通常カテーテル10は長尺状シャフト12を含む。ハブアセンブリ18は長尺状シャフト12の基端側部分14に連結され膨張可能バルーン20は長尺状シャフト12の末端側部分16に連結されてもよい。
【0019】
長尺状シャフト12は例えば血管内への挿入及び案内が可能となるように所望の使用に適した長さ及び外径を有する。例えば実施例において長尺状シャフト12は約1cm乃至約300cmの範囲の、或いはそれ以上の長さを有してもよい。若しくは実施例において約20cm乃至約250cmの範囲にあり、外径は約1F(French)乃至約20F(約0.33mm乃至約6.67mm)、若しくは実施例において約1F乃至約10F(約0.33mm乃至約3.33mm)である。
【0020】
カテーテル10は例えばオーバーザワイヤ(OTW)タイプのカテーテルであってもよく、或いはカテーテル10はシングルオペレータエクスチェンジ(SOE)タイプのカテーテルであってもよい。通常OTWカテーテルはガイドワイヤが長尺状シャフト12のルーメン内をカテーテル10の略全長にわたって延びてもよい。一方SOEカテーテルは通常バルーン20より基端側だがカテーテル10の基端部15よりは末端側に位置する末端側ガイドワイヤポート25を備える(図1に示すガイドワイヤポート25は通常OTWカテーテルには設けられないことに留意する)。ガイドワイヤポート25は長尺状シャフト12の開口部であり、これによりガイドワイヤ(図示しない)は長尺状シャフト12のルーメン内をカテーテル10の末端領域を通過して延びるがカテーテル10の基端側部分にわたって長尺状シャフト12の外側に位置される。
【0021】
図2は長尺状シャフト12の部分の部分断面図である。図2に示す長尺状シャフト12の部分はバルーン20の基端側に設けられる長尺状シャフト12の一部である。しかしながら別例において図2に示すように長尺状シャフト12の部分はカテーテル10に沿った異なる位置に設けられてもよい。例えば図2に示す部分はバルーン20の基端側胴部の下方に設けられるか、バルーン20の中間部の下方に設けられてもよい。長尺状シャフト12は外側管状部材40、及び外側管状部材40の少なくとも一部を通過して延びる内側管状部材50を備える。
【0022】
オーバーザワイヤタイプ(OTW)カテーテルの場合において、内側管状部材50は外側管状部材40の略全長にわたって長尺状シャフト12の基端側部分から長尺状シャフト12の末端側部分まで延びる。従って、ガイドワイヤは内側管状部材50を通過して挿入され、長尺状シャフト12の略全長にわたって延びる。シングルオペレータエクスチェンジタイプ(SOE)のカテーテルの場合において、内側管状部材50は外側管状部材40の末端側部分を通過してガイドワイヤポート25からカテーテルの末端部まで延びる。従ってガイドワイヤはガイドワイヤポート25を介して内側管状部材50内に挿入され、長尺状シャフト12の末端部に向かって延びる。SOEカテーテルにおいて内側管状部材50は長尺状シャフト12の基端側部分には設けられない。
【0023】
実施例において外側管状部材40の末端部はバルーン20の基端側胴部に固定される。内側管状部材50は外側管状部材40に対して同軸に設けられバルーン20を通過して外側管状部材40の末端部の末端側に延び、これにより内側管状部材50の末端部はバルーン20の末端側胴部に固定される。バルーン20はレーザー接合、RF接合、接着剤、或いはその他の周知の手段により管状部材40,50に固定される。
【0024】
内側管状部材50は内側表面30及び外側表面32を有する。内側表面30は例えばガイドワイヤルーメンのようなルーメン34を画定する。内側管状部材50は外側管状部材40の同軸上にある。従って内側管状部材50は内側表面4050の外側表面32及び外側管状部材40の内側表面36の間の間隙は例えば環状膨張ルーメンのようなルーメン38を画定する。膨張ルーメン38はバルーン20及びハブアセンブリ18と連通する。
【0025】
内側管状部材50は第1の基端側セクション50A及び第2の末端側セクション50Bを備える。第1のセクション50Aを基端側セクションとして、第2のセクション50Bを末端側セクションとして記載する場合は第1のセクション50Aが第2のセクション50Bの基端側に設けられることを意図している。実施例において当てはまる場合もあるが、基端側セクション50Aはカテーテル10の基端側部分14に設けられることを必ずしも意図したものではない。基端側セクション50Aは単層又は多層の管状部材である。基端側セクション50Aは1、2、3、4、5、6、或いはそれ以上の層を含む。末端側セクション50Bは単層又は多層の管状部材である。末端側セクション50Bは1、2、3、4、5、6、或いはそれ以上の層を含む。更に内側管状部材50は2つの個別のセクションのみを有することを意図したものではないが、実施例において内側管状部材50は所望に応じて付加的なセクションを含み、ここで開示されるように同様に連結されても連結されなくてもよい。例えば内側管状部材50は連結された3つ、4つ、5つ、或いはそれ以上の個別の管状セクションを備えてもよい。
【0026】
末端側セクション50Bの基端部及び基端側セクション50Aの末端部は終端同士隣接して配置されるか、或いは別の連結の配向により配置される。基端側セクション50A及び末端側セクション50B間の境界は継ぎ手65を画定する。図2に示す継ぎ手65は隣接した継ぎ手だが、これに代えて継ぎ手は重合する継ぎ手や漸減する継ぎ手等であってもよい。重合体の管状スリーブ60は継ぎ手65を覆って設けられ、継ぎ手65の基端側に一定の長さ、継ぎ手65の末端側に一定の長さだけ延びる。従ってスリーブ60は継ぎ手65を架橋する。図示の実施例においてスリーブ60は好適には薄型である。従って環状膨張ルーメン38を明瞭に阻害するものではない。
【0027】
図1,2に示される継ぎ手65はバルーン20の基端側に設けられるが、実施例において内側管状部材50の2つのセクションを接続する継ぎ手65はバルーン20の基端側胴部の下方の位置に設けられてもよく、或いはバルーン20の本体の下方の位置に設けられてもよい。これに代えて継ぎ手65の位置はカテーテル10に沿った別の位置であってもよい。スリーブ60は好適には肉薄な熱可塑性材料から形成されてもよい。材料の例としてポリアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリウレタン、シリコンゴム、ナイロン、ポリエチレン、フッ素化炭化水素の高分子材等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。例えば実施例においてスリーブ60は100%のポリアミド6、ポリアミド12、或いは熱可塑性ポリウレタンである。スリーブ60における使用に適した高分子材は登録商標名PEBAX、PELLETHANE、登録商標名TEXIN、及び登録商標名VESTAMIDとして市場にて入手可能である。
【0028】
スリーブ60は押出成形、引き抜き型、射出成形、ブロー成形等により形成可能である。実施例においてスリーブ60は高配向の分子鎖を有する高分子材から形成されてもよい。実施例においてスリーブ60の分子鎖は長手方向において高配向であってもよい。換言すると、分子鎖はスリーブ60の長手方向の軸に沿って相互に長手方向に並べられてもよい。従って分子鎖は長手方向に配向され張引されてもよい。これらの配向によりスリーブ60は高い引っ張り強度を得られる。実施例においてスリーブ60の分子鎖は周方向において高配向であってもよい。換言すると、分子鎖はスリーブ60の周の周囲を相互に周方向に並べられてもよい。従って分子鎖は周方向に配向され張引されてもよい。これらの配向によりスリーブ60は高いフープ強度を得られる。実施例においてスリーブ60の分子鎖は螺旋方向において高配向であってもよい。換言すると、分子鎖はスリーブ60の部分に沿って螺旋形を形成するように相互に螺旋方向に並べられてもよい。従って分子鎖は螺旋方向に配向され張引されてもよい。これらの配向によりスリーブ60は高い捻れ強度を得られる。
【0029】
図3Aは図2の3A−3A線に沿ったカテーテルシャフト12の断面図である。図3Aに示す内側管状部材50の基端側セクション50Aは3つの層を有する三層セクションとして示される多層セクションであり、即ち、内側層52A、外側層54A、並びに内側層52A及び外側層54Aの間に設けられる中間の層又は連結する層56Aである。しかしながら別例において内側管状部材50の基端側セクション50Aは単層管状部材、二層管状部材、或いはその他の多層管状部材である。図3Bは図2の線3B−3Bに沿ったカテーテルシャフト12の断面図である。図3Bに示す内側管状部材50の末端側セクション50Bは3つの層を有する三層セクションとして示される多層セクションであり、即ち、内側層52B、外側層54B、並びに内側層52B及び外側層54Bの間に設けられる中間の層又は連結する層56Bである。しかしながら別例において内側管状部材50の末端側セクション50Bは単層管状部材、二層管状部材、或いはその他の多層管状部材である。
【0030】
両者において基端側セクション50A及び末端側セクション50B、内側層52A,52Bはガイドワイヤが通過して前進しやすいように低い摩擦係数を有する円滑な高分子材を含んでもよい。実施例において内側層52A,52Bはバルーン膨張において破裂に抵抗する径方向の高い強度を備えた硬質な低摩擦性の高分子材から形成され、カテーテルのガイドワイヤ上の動きを容易にする。好適な高分子材は高密度ポリエチレン(HDPE)や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)とテトラフルオロエチレンの共重合体(より詳細にはペルフルオロプロピルビニルエーテルやペルフルオロメチルビニルエーテル)等のフッ化炭素ベースの高分子材、或いは黒鉛を充填したナイロンを含む。高密度のポリエチレンの例はChevron Phillips社から販売されているMarlex4903(登録商標)である。
【0031】
内側管状部材50の基端側セクション50Aの中間層56A及び末端側セクション50Bの中間層56Bは基端側セクション50Aの内側層52A及び外側層52Aの間、並びに末端側セクション50Bの内側層52B及び外側層52Bの間を容易に連結させる連結層であってもよい。中間層56A,56Bの好適な高分子材は無水マレイン酸機能性線形低密度ポリエチレンを含む。これらの例はテキサス州ヒューストンに所在するEquistar社から販売されているPlexar PX−380(登録商標)である。
【0032】
内側管状部材50の外側層54A,54Bの材料は押圧性及び追従性(trackability)のうち少なくともいずれか一方等の個別の機械的特性に応じて選択可能である。基端側セクション50Aの外側層54Aのために選択された材料は末端側セクション50Bの外側層54Bのために選択された材料より剛性を備えた材料であってもよい。しかしながら実施例において、基端側セクション50Aの外側層54Aのために選択された材料は末端側セクション50Bの外側層54Bのために選択された材料より柔軟であることが望ましい。高分子材の可撓性や剛性はたわみ変形における応力対張力の比率である曲げ弾性率によって特徴付けられる。実施例において末端側セクション50Bの外側層54Bの曲げ弾性率は約75%前後であり、基端側セクション50Aの外側層54Aの曲げ弾性率以下である。実施例において、末端側の外側層54Bの曲げ弾性率は約15MPa乃至約500MPaであり、基端側外側層54Aの曲げ弾性率は約700MPa乃至約4000MPaである。
【0033】
好適な高分子材の例として、熱可塑性エラストマー等のエラストマー、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルブロックエステル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタンやポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミドやポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリスルフォン、ナイロン、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、ポリエーテルエステル、又はこれらの共重合体、混合物や組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例はポリアミド12等のポリアミド、及びこれらの混合物を含む。
【0034】
例えば実施例において基端側外側層54Aは約40重量%乃至約70重量%、或いは約45重量%乃至約60重量%の非晶質ポリアミド12等の非晶質ポリアミドと約30重量%乃至約55重量%、或いは約40重量%乃至約55重量%の結晶質ポリアミド12等の結晶質ポリアミドとの混合物であってもよい。実施例において基端側外側層54Aは45%の非晶質ポリアミド12と55%の結晶質ポリアミド12の混合物である。混合物の曲げ弾性率は約1000MPa乃至約2000MPa、或いは約1400MPa乃至約1600MPaである。別例において基端側外側層54Aは60%の非晶質ポリアミド12と40%の結晶質ポリアミド12の混合物である。混合物の曲げ弾性率は約1000Mpa乃至約2000MPa、或いは約1400MPa乃至約1600MPaである。
【0035】
実施例において末端側外側層54Bはポリエーテルブロックアミド樹脂の混合物であってもよい。例えば末端側外側層54Bは約40重量%乃至約80重量%にして、且つ約60D乃至約80DのショアD硬度を有するポリエーテルブロックアミドと、約20重量%乃至約60重量%にして、且つ約50D乃至約65DのショアD硬度を有するポリエーテルブロックアミドとの混合物であってもよい。実施例において混合物の曲げ弾性率は約300MPa乃至約500MPaである。実施例において、末端側外側層54Bは75重量%にして、且つ約70DのショアD硬度を有するポリエーテルブロックアミドと、25重量%にして、且つ約55DのショアD硬度を有するポリエーテルブロックアミドとの混合物である。混合物の曲げ弾性率は約400MPaである。別例において、末端側外側層54Bは40重量%にして、且つ約70DのショアD硬度を有するポリエーテルブロックアミドと、60重量%にして、且つ約63DのショアD硬度を有するポリエーテルブロックアミドとの混合物である。混合物の曲げ弾性率は約390MPaである。基端側セクション50A及び末端側セクション50Bは共押し出し成形等により個別に製造可能であり、続いてここで開示するような高分子材のスリーブと連結される。
【0036】
図4乃至8を参照して、内側管状部材50の基端側セクション50A及び末端側セクション50Bを、基端側セクション50A及び末端側セクション50Bのそれぞれの一部の上に設けられるスリーブを使用して終端同士にて配向される長手方向にて連結させる方法が開示される。しかしながら開示される連結方法から内側管状部材50の基端側セクション50A及び末端側セクション50Bの連結方法の別例が得られることに留意する必要がある。
【0037】
図4に示すように基端側セクション50A及び末端側セクション50Bは終端同士が隣接した関係にて配置され、これにより基端側セクション50Aの末端部51は末端側セクション50Bの基端部53と継ぎ手65にて隣接する。継ぎ手65は本明細書にわたって開示されるように突き合わせ継ぎ手であってもよいが、実施例において継ぎ手はこれに代えて重合する継ぎ手、漸減する継ぎ手等であってもよい。基端側セクション50Aの末端部51は末端側セクション50Bの基端部53と接触するか、或いは実施例において小さな空隙や間隙が端部51,53間に保持されてもよい。実施例においてポリテトラフルオロエチレン(例、テフロン(登録商標))によりコーティングされたマンドレル等のマンドレルが基端側セクション50A及び末端側セクション50Bのルーメン34を通過して挿入されてもよい。セクション50A,50Bはマンドレルに沿って摺動自在であり、管状部材50の構造体を保持し製造工程にわたって管状ルーメン34の開放性を確保するために内側から支持する。
【0038】
管状セクション50A,50Bは周知の技術により好適な寸法に形成される。例えば実施例において基端側セクション50Aは約0.01インチ乃至約0.05インチ(約0.0254cm乃至約0.127cm)の外径、或いは約0.02インチ乃至約0.04インチ(約0.0508cm乃至約0.1016cm)の外径、若しくは約0.02インチ(約0.0508cm)の外径を有する。実施例において基端側セクション50Aは約0.002インチ乃至約0.005インチ(約0.00508cm乃至約0.0127cm)の壁厚を形成する好適な内径を有する。実施例において末端側セクション50Bは基端側セクション50Aの寸法と同様の寸法を有してもよい。実施例において末端側セクション50Bは減少された径を有する末端側部分を有してもよい。基端側部分は基端側セクション50Aの寸法と同様の寸法を有してもよい。末端側部分は約0.01インチ乃至約0.04インチ(約0.0254cm乃至約0.1016cm)の外径、約0.01インチ乃至約0.03インチ(約0.0254cm乃至0.0762cm)の外径、約0.01インチ乃至約0.02インチ(約0.0254cm乃至約0.0508cm)の外径及び約0.002インチ乃至約0.005インチ(約0.00508cm乃至約0.0127cm)の壁厚を形成する内径のうち少なくともいずれか一方を有する。末端側セクション50Bは基端側部分及び径を減少された末端側部分の間に遷移部を形成するように基端側部分及び末端側部分の間に漸減する部分を有してもよい。
【0039】
図5は高分子材の管状スリーブ等のスリーブ60が基端側セクション50A及び末端側セクション50Bの間の継ぎ手上に設けられることを示す。実施例において押し出し成形や引き抜き型等により予め形成されるスリーブ60は管状セクション50A,50B上を摺動自在であり、これによりスリーブ60の一部は継ぎ手の基端側に設けられスリーブ60の一部は継ぎ手65の末端側に設けられる。換言すると、スリーブ60は管状セクション50A,50B間の継ぎ手65を架橋するように、各管状セクション50A,50Bの一部の上に設けられる。実施例においてスリーブ60は継ぎ手65上の略中心に設けられてもよい。スリーブ60はいかなる所望の長さであってもよい。例えば実施例においてスリーブ60は約2mm乃至約20mmの長さ、約3mm乃至約10mmの長さ、約4mm乃至約6mmの長さ、約5mmの長さであってもよい。
【0040】
スリーブ60は好適な寸法に設けられてもよい。例えばスリーブ60の内径は継ぎ手65に隣接する管状セクション50A,50Bの外径に非常に近づくように選択可能である。実施例においてスリーブ60は約0.0002インチ乃至約0.005インチ(約0.000508cm乃至約0.0127cm)、約0.0005インチ乃至約0.002インチ(約0.00127cm乃至約0.00508cm)、約0.0002インチ乃至約0.001インチ(約0.000508cm乃至約0.00254cm)、或いは約0.0005インチ(約0.00127cm)の壁厚を有してもよい。実施例においてスリーブ60は継ぎ手65の近傍の内側管状部材50の外径を計測できる程に増加させないような寸法に形成される。従って、管状セクション50A,50Bに接合される場合にスリーブ60は膨張ルーメン38を感知できる程度まで阻害しない。
【0041】
図6に示すように熱収縮チューブ70等のチューブの部分はスリーブ60及び各管状セクション50A,50Bの部分を覆って配置され、これにより熱収縮チューブ70はスリーブ60の範囲を越えて延びる。実施例において熱収縮チューブ70は約10mm乃至約50mm、約20mm乃至約40mm、或いは約30mmの長さを有する。
【0042】
熱収縮チューブ70はスリーブ60、基端側セクション50Aの外側層54A、末端側セクション50Bの外側層54Bのそれぞれと比較してより高い融点を有するように選択可能である。例えばスリーブ60は約350°F(約176.7℃)の融点を有する約100%のポリアミド12の高分子材であってもよく、基端側外側層54Aは約350°F乃至約375°F(約176.7℃乃至約190.6℃)の融点を有する非晶質ポリアミド12及び結晶質ポリアミド12の高分子材の混合物であってもよく、末端側外側層54Bは約340°F乃至約350°F(約171.1℃乃至約176.7℃)の融点を有するポリエーテルブロックアミドの高分子材の混合物であってもよい。従って実施例において、熱収縮チューブ70は375°F(約190.6℃)よりも高い融点を有する。
【0043】
実施例において熱収縮チューブ70は375°F(約190.6℃)より感知できる程度に高い融点を有してもよい。例えば熱収縮チューブ70は通常スリーブ60、基端側セクション50Aの外側層54A、及び末端側セクション50Bの外側層54Aのうち最も高い融点より高い融点を有してもよい。例えば実施例において熱収縮チューブ70の融点はスリーブ60、基端側セクション50Aの外側層54A、末端側セクション50Bの外側層54Aのうち最も高い融点の少なくとも1.2倍以上、1.5倍以上、2倍以上、或いは2.5倍以上、若しくは3倍以上であってもよい。通常熱収縮チューブ70はカテーテル10の結合領域の一体性を損なったり、損壊したりすることのない融点を有する。
【0044】
図7は熱エネルギーが熱収縮チューブ70に作用され、これにより熱収縮チューブ70がスリーブ60、並びに基端側セクション50A及び末端側セクション50Bのそれぞれの部分の周囲にて収縮されることを示す。熱収縮チューブ70の収縮によりスリーブ60、並びに基端側セクション50A及び末端側セクション50Bのうち少なくともいずれか一方の内側に径方向に指向する圧縮力が得られる。熱収縮チューブ70により作用される圧縮力はスリーブ60及び管状部材50のセクション50A,50Bを所望の方向に固定し、スリーブ60が管状部材50の基端側セクション50A及び末端側セクション50Bのそれぞれに対して接合することを補助する。熱収縮チューブ70により基端側セクション50A及び末端側セクション50Bを固定するために充分な圧力が得られ、結合部位から材料が過剰に流出することなく基端側セクション50A及び末端側セクション50Bの間に円滑な遷移部を形成する。熱収縮チューブ70は熱に暴露された場合に熱収縮チューブ70の収縮によって高レベルの圧縮力が生じるように選択可能である。実施例において熱収縮チューブ70は約20グラム以上、約25グラム以上、或いは約30グラム以上の圧縮力を下方に位置するスリーブ60に作用させるように選択可能である。実施例において圧縮力は約25グラム乃至約32グラムであってもよい。
【0045】
同時に、或いはこれらに続く工程にて熱エネルギーがスリーブ60と、管状部材50の基端側セクション50A及び管状部材50の末端側セクション50Bのうち少なくともいずれか一方に作用される。熱エネルギーはスリーブ60と、基端側セクション50A及び末端側セクション50Bのうち少なくともいずれか一方の温度を上昇させて、スリーブ60の基端側セクション50A及び末端側セクション50Bのそれぞれに対する接合を促進する。例えば作用される熱エネルギーはスリーブ60と、スリーブ60の下方に位置する基端側セクション50Aの外側層54Aの部分及びスリーブ60の下方に位置する末端側セクション50Bの外側層54Bの部分のうち少なくともいずれか一方の温度をそれぞれの融点に、或いは融点より高く上昇させる。
【0046】
熱収縮チューブ70によって生じる圧縮力及び材料をそれぞれの融点より高く加熱する熱エネルギーの組み合わせによりスリーブ60は基端側セクション50A及び末端側セクション50Bのそれぞれに対して接合可能である。熱収縮チューブ70により生ずる高レベルの圧縮力により材料の接合性が促進されて増す。実施例において外側層54A,54B及びスリーブ60の材料は相溶性を備えるか、溶融による混和性を備えてもよい。従って、基端側外側層54A、末端側外側層54B及びスリーブ60のうち少なくともいずれか一方の材料は混合されて強力な結合をなす。実施例においてイオン結合、共有結合及び鎖の絡み合い(chain entanglements)のうち少なくともいずれか1つがスリーブ60、並びに基端側セクション50A及び末端側セクション50Bのそれぞれの間に形成されてもよい。
【0047】
熱エネルギーはYAGレーザー、COレーザー、ダイオードレーザー等やこれらの組み合わせのレーザー80を使用してレーザー溶接工程によって作用されてもよい。通常10.6ミクロンにて作用されるCOレーザーにより多くの高分子材に容易に吸収される熱エネルギーを得られる。レーザーエネルギーは通常外側表面から内側表面に被加工材料を加熱する。従ってCOレーザー等のレ―ザーにより生じる熱エネルギーは材料の内側層の温度を大きく上昇させることなく外側層の温度を上昇可能である。例えばCOレーザーを使用することによりスリーブ60及び内側管状部材50の外側層54A,54Bはそれぞれの融点まで、或いは融点より高い温度まで、内側層52A,52B及び中間層56A,56Bのうち少なくともいずれか一方をそれぞれの融点より高い温度まで加熱することなく、加熱可能である。従ってレーザーによって形成される加熱により作用される領域はスリーブ60、並びにスリーブ60の下方に位置するセクション50A,50Bの外側層54A,54Bのそれぞれの外側表面の境界部に制限可能である。従って管状セクション50A,50Bは管状セクション50A,50Bの寸法や一体性に悪影響を付与することなくスリーブ60と結合可能である。使用可能な作用する熱エネルギーの付加的な源はRF加熱、電磁誘導加熱、加熱した顎状器具によるクランプ等を含む。
【0048】
実施例においてレーザー80の通路はアセンブリの選択部分に対して適量の熱エネルギーを作用させるために操作可能である。アセンブリの要素が異なる融点を有するため、異なる量の熱エネルギーがアセンブリの異なる部分に作用されてもよい。例えば熱エネルギーは末端側セクション50Bと末端側セクション50Bを覆って位置するスリーブ60の部分とに作用される量よりも大きな量が基端側セクション50Aと基端側セクション50Aを覆って位置するスリーブ60の部分に作用されてもよい。これらはレーザー80の出力を変化させ、レーザー80の移動速度を変化させ、及び/又は選択部分を通過するレーザー80に付加的な通路を形成することにより可能である。
【0049】
図7に示すようにレーザー80の通路は基端側セクション50A及び末端側セクション50Bの間の継ぎ手65の基端側に向かって熱収縮チューブ70の中間位置Aが起点となる。レーザー80はスリーブ60及び熱収縮チューブ70の基端部に向かって基端側方向Bに移動する。続いてレーザー80は方向転換し、スリーブ60及び熱収縮チューブ70の末端部に向かって末端側方向Cに移動する。レーザー80は継ぎ手65並びにスリーブ60及び熱収縮チューブ70の末端部の間の通路ACから成る末端側部分と比較して、継ぎ手65並びにスリーブ60及び熱収縮チューブ70の基端部の間の基端側通路ABに沿ってより大きな熱エネルギーを放出可能である。これらは例えばレーザー80の出力を上昇させること、及び/又はレーザー80の通路ABを通過する移動速度を減少させることにより可能である。
【0050】
実施例においてレーザーは継ぎ手65の基端側に向かって中間位置Aに配置可能である。レーザー80は高出力にて発しながら位置B及び熱収縮チューブ70の基端部に向かって基端側の方向に移動可能である。レーザー80は続いて位置Bから位置Aに向かって低出力にて発する。レーザー80はレーザーが継ぎ手65の基端側の中間位置Aから末端側の位置C及び熱収縮チューブ70の末端部に向かって末端側に移動する場合に再び高出力にて発する。従って、継ぎ手65及びスリーブ60の基端部の間に位置するアセンブリの基端側部分は、継ぎ手65及びスリーブ60の末端部の間に位置するアセンブリの末端側部分と比較してより高いレベルの熱エネルギーに暴露される。
【0051】
別例においてレーザー80は異なる選択された通路を進行可能である。実施例においてレーザー80はアセンブリの基端側の一端から放射を開始し、アセンブリの他端に向かって移動可能である。実施例においてレーザー80は継ぎ手65の末端側のアセンブリの部分と比較して、継ぎ手65の基端側のアセンブリの部分により多くの熱エネルギーを放出可能である。アセンブリの特定部分に応じて作用させる熱エネルギーを変化させることは、例えばレーザーの出力及び特定部分を通過するレーザーの速度のうち少なくともいずれか一方を調整することにより操作可能である。
【0052】
実施例においてレーザー80は結合工程にわたって要素の上昇させる温度を正確に操作するために温度に閉ループ制御を使用してもよい。例えば赤外線(IR)フィードバック技術がアセンブリの要素の温度を監視することに使用可能である。従って、IRフィードバックを使用するレーザー80やその他の閉ループ制御は特定部分の高分子材の融点等の所望の既定の温度に、或いは規定の温度以上に特定部分の温度を正確に上昇させることができる。従ってIRフィードバック技術やその他の閉ループ温度制御はレーザー80のエネルギーレベル及び速度のうち少なくともいずれか一方を正確に制御可能であり、これによりアセンブリの各部分を所望の温度に上昇させ、材料の充分な結合を促進することができる。
【0053】
図8は管状部材50の基端側セクション50A及び末端側セクション50Bの両者に堅固に接合されたスリーブ60を残したまま熱収縮チューブ70が管状部材50から取り除かれることを示す。熱収縮チューブ70はスリット、切り欠き、溝、開口部、脆弱な領域等を含み、これらにより熱収縮チューブがアセンブリから取り除かれることが促進される。
【0054】
スリーブ60は基端側セクション50A及び末端側セクション50Bの間の継ぎ手65を、2つのセクションを一体的に結合させるべく架橋する。熱収縮チューブ80の圧縮力によりスリーブ60は減少した外径となるまで充分に圧縮されるため、内側管状部材50の外径は感知できる程度まで拡径されるものではない。従ってスリーブ60は図2に示すように内側管状部材50の外側表面及び外側管状部材40の内側表面の間に画定される膨張ルーメン38を阻害するものではない。
【0055】
図9は基端側セクション50A及び末端側セクション50Bの両者に堅固に結合されたスリーブ60を含む内側管状部材50の断面図である。実施例においてスリーブ60は基端側セクション50A及び末端側セクション50Bに堅固に結合される。基端側セクション50Aの端部51及び末端側セクション50Bの端部53は相互に結合されないままの状態を保持する。これらはレーザーにより放出された集中的な加熱による。レーザーの集中光線により加熱により影響を受ける領域をスリーブ60及びスリーブ60の下方に位置する管状部材54A,54Bの外側層の部分に制限可能である。実施例において小さな間隙や空間が熱結合工程にて基端側セクション50Aの末端部51及び末端側セクション50Bの基端部53の間に設けられてもよい。
【0056】
従ってRFエネルギーを使用して突き合わせ継ぎ手にて2つ管状セクションの端部を結合するために通常使用される長手方向の圧力は必ずしも本明細書に開示される結合方法によらなくてもよい。長手方向の圧力は継ぎ手近傍の管状部材の寸法に悪影響を付与する場合もある。管状部材の端部が加熱により柔軟になると長手方向の圧縮力により管状部材の端部が変形したり湾曲したりしてしまい、多くの応用において必要とされる厳密な寸法許容差を越えてしまう場合がある。2つの管状セクションの間の継ぎ手における溶解した高分子材の貯留が本明細書に開示される結合方法により減少されるか、或いは除去される場合もある。
【0057】
高分子材のスリーブ及び高い圧縮性能を有する熱収縮チューブを使用する本明細書に開示される結合方法により多くの応用において必要とされる厳密な寸法許容差が保持される。従って本明細書に開示される方法により一貫した結果が得られる。スリーブ60により各管状セクション50A,50B間は強力に結合される。スリーブ60及び管状セクション50A,50Bの間の結合領域の表面領域はスリーブを使用せずに突き合わせ継ぎ手を使用する上述した2つのセクションの結合方法と比較してより大きい。
【0058】
上述した方法がここでカテーテルシャフトの内側管状部材に関して開示されたが、本発明はこれらに限定されるものではない。方法は長尺状をなす医療器具の多数のセクションから成る管状部材の2つのセクションを堅固に結合するために使用可能であると考えられる。
【0059】
当業者には、本発明は、本願に記載され、意図される特定の実施例以外にも、様々な形態で実施できることが理解されるであろう。したがって、請求の範囲に記載される本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形態および詳細を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明によるバルーンカテーテルを示す平面図。
【図2】図1のバルーンカテーテルの一部を示す断面図。
【図3A】図2の3A−3A線における断面図。
【図3B】図2の3B−3B線における断面図。
【図4】本発明の実施例において2つの管状セグメントを連結する方法を示す図。
【図5】本発明の実施例において2つの管状セグメントを連結する方法を示す図。
【図6】本発明の実施例において2つの管状セグメントを連結する方法を示す図。
【図7】本発明の実施例において2つの管状セグメントを連結する方法を示す図。
【図8】本発明の実施例において2つの管状セグメントを連結する方法を示す図。
【図9】本発明においてスリーブと連結される2つの管状セグメントを示す断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部と第2の端部とを有する第1の管状部材を提供する工程と、
第1の端部と第2の端部とを有する第2の管状部材を提供する工程と、
該第1の管状部材及び第2の管状部材の終端同士が長手方向に配置されるように第1の管状部材の第1の端部を第2の管状部材の第2の端部に隣接させる工程と、
高く配向された分子鎖を有する高分子材から成るスリーブが第1の管状部材の第1の端部及び第2の管状部材の第2の端部を覆って延びるように同スリーブを第1の管状部材の部分及び第2の管状部材の部分を覆うように配置する工程と、
同高分子材のスリーブを覆って熱収縮チューブを配置する工程と、
熱収縮チューブを加熱してこれにより熱収縮チューブを高分子材のスリーブの周囲にて圧縮する加熱工程と、
該高分子材のスリーブを第1の管状部材及び第2の管状部材に熱結合させる工程と、
熱収縮チューブを取り除く工程とを含むことを特徴とするカテーテルシャフトの遷移領域の形成方法。
【請求項2】
前記高分子材のスリーブを第1の管状部材及び第2の管状部材に熱結合させる工程はレーザーを使用して熱エネルギーを放出する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザーはCOレーザーであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記高分子材のスリーブを第1の管状部材及び第2の管状部材に熱結合させる工程においてレーザーに制御された温度フィードバックを提供する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分子鎖は長手方向に高く配向されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分子鎖は周方向に高く配向されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分子鎖は螺旋方向に高く配向されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の管状部材及び第2の管状部材はそれぞれ内側層と、外側層と、同内側層及び外側層の間に設けられる中間層とから成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の管状部材の外側層は曲げ弾性率を有し、第2の管状部材の外側層は第1の管状部材の外側層の曲げ弾性率とは異なる曲げ弾性率を有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の管状部材の外側層の曲げ弾性率は第1の管状部材の外側層の曲げ弾性率より低い約75%前後であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記熱収縮チューブは約25グラム乃至約32グラムの圧力を備える高分子材のスリーブから成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第1の端部と第2の端部とを有する第1の管状部材を提供する工程と、
第1の端部と第2の端部とを有する第2の管状部材を提供する工程と、
該第1の管状部材及び第2の管状部材の終端同士が長手方向に配置されるように第1の管状部材の第1の端部を第2の管状部材の第2の端部に隣接させる工程と、
高分子材のスリーブが第1の管状部材の第1の端部及び第2の管状部材の第2の端部を覆って延びるように同スリーブを第1の管状部材の部分及び第2の管状部材の部分を覆うように配置する工程と、
同高分子材のスリーブを覆って熱収縮チューブを配置する工程と、
同熱収縮チューブがスリーブ上に約20グラム以上の圧縮力を作用させるように、熱収縮チューブを加熱してこれにより熱収縮チューブを高分子材のスリーブの周囲にて圧縮する加熱工程と、
該高分子材のスリーブを第1の管状部材及び第2の管状部材のそれぞれに熱結合させる工程と、
熱収縮チューブを取り除く工程とを含むことを特徴とするカテーテルシャフトの遷移領域の形成方法。
【請求項13】
前記圧縮力は約25グラム以上であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記圧縮力は約30グラム以上であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
内側層と、外側層と、同内側層及び外側層の間に設けられる中間層とを有する第1の管状部材を提供する工程と、
内側層と、外側層と、同内側層及び外側層の間に設けられる中間層とを有する第2の管状部材を提供する工程と、
終端同士が長手方向に並べられるように第1の管状部材の端部と第2の管状部材の端部とを隣接させる工程と、
高分子材のスリーブが第1の管状部材の部分及び第2の管状部材の部分を覆って延びるように、同スリーブを第1の管状部材及び第2の管状部材に沿って摺動させる工程と、
同高分子材のスリーブを覆って熱収縮チューブを配置する工程と、
同熱収縮チューブがスリーブ上に約25グラム以上の圧縮力を作用させるように、熱収縮チューブを加熱してこれにより熱収縮チューブを高分子材のスリーブの周囲にて圧縮する加熱工程と、
該高分子材のスリーブを第1の管状部材及び第2の管状部材のそれぞれにレーザー結合させる工程と、
熱収縮チューブを取り除く工程とを含むことを特徴とするカテーテルシャフトの遷移領域の形成方法。
【請求項16】
前記第1の管状部材の外側層は曲げ弾性率を有し、第2の管状部材の外側層は第1の管状部材の外側層の曲げ弾性率とは異なる曲げ弾性率を有することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の管状部材の外側層の曲げ弾性率は第1の管状部材の外側層の曲げ弾性率より低い約75%前後であることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の管状部材の外側層は非晶質ポリアミド及び結晶質ポリアミドの高分子材の混合物から成ることと、第2の管状部材の外側層はショアD硬度を有する第1のポリエーテルブロックアミド及び同第1のポリエーテルブロックアミドのショアD硬度とは異なるショアD硬度を有する第2のポリエーテルブロックアミドから成ることと、スリーブはポリアミド12から成ることとを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記高分子材のスリーブを第1の管状部材及び第2の管状部材のそれぞれにレーザー結合させる工程においてレーザーに制御された温度フィードバックを提供する工程を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の管状部材及び第2の管状部材の隣接する端部は一体的に結合されないことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記スリーブは長手方向に配向された分子鎖を有する高分子材から成ることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記スリーブは周方向に配向された分子鎖を有する高分子材から成ることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記スリーブは螺旋方向に配向された分子鎖を有する高分子材から成ることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項24】
基端部及び先端部を有する基端側管状部材を提供する工程と
基端部及び末端部を有する末端側管状部材を提供する工程と、
基端側管状部材の末端部を末端側管状部材の基端部に連結させ、これにより基端側管状部材及び末端側管状部材の間に継ぎ手を画定する結合工程と、
基端部及び末端部を有する高分子材のスリーブが基端側管状部材の末端部及び末端側管状部材の基端部を覆って延びるように同スリーブを基端側管状部材の部分及び末端側管状部材の部分を覆うように配置する工程と、
同高分子材のスリーブを覆って熱収縮チューブを配置する工程と、
熱収縮チューブを加熱してこれにより熱収縮チューブを高分子材のスリーブの周囲にて圧縮する加熱工程と、
レーザーを既定の通路を通過させて前進させることにより該スリーブを基端側管状部材及び末端側管状部材に熱結合させる工程と、
熱収縮チューブを取り除く工程とを含むことと、該通路は継ぎ手の基端側から始まり、スリーブに基端部に向かって基端側に移動し、続いてスリーブの末端部に向かって末端側に移動することとを特徴とするカテーテルシャフトの遷移領域の形成方法。
【請求項25】
前記レーザーは基端方向に移動する場合に第1の強度の熱エネルギーを放出し、レーザーが末端方向に移動する場合に第2の強度の熱エネルギーを放出することと、同第1の強度の熱エネルギーは第2の強度の熱エネルギーとは異なることとを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記スリーブの下方に位置する基端側管状部材の部分はスリーブの下方に位置する末端側管状部材の部分とは異なる温度に至ることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記スリーブを基端側管状部材及び末端側管状部材のそれぞれに熱結合させる工程においてレーザーに制御された赤外線フィードバックを提供する工程を更に含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項28】
基端部及び末端部を有する長尺状をなす医療器具であって、
基端部と、末端部と、同基端部及び末端部の間を延びるルーメンとを有する外側管状部材と、
基端部と、末端部と、同基端部及び末端部の間を延びるルーメンとを有する内側管状部材と、内側管状部材は外側管状部材のルーメン内に設けられることと、
該内側管状部材は基端側セグメントと、同基端側セグメントに隣接する末端側セグメントと、基端側セグメントと末端側セグメントを覆って延び基端側セグメントと末端側セグメントとを結合させる高分子材のスリーブとを含むことと、
該外側管状部材の末端部に取り付けられる膨張可能部材とを備えることを特徴とする長尺状をなす医療器具。
【請求項29】
前記膨張可能部材の基端側、且つ前記長尺状をなす医療器具の基端部の末端側にて外側管状部材に形成されるガイドワイヤポートを更に含むことと、前記内側管状部材は長尺状をなす医療器具の末端部の基端側の末端側開口部から該ガイドワイヤポートに向かって延び、これによりガイドワイヤポートから長尺状をなす医療器具の末端側開口部に向かって延びるガイドワイヤルーメンを画定することとを特徴とする請求項28に記載の長尺状をなす医療器具。
【請求項30】
前記内側管状部材の基端側セグメントは第1の材料から成ることと、内側管状部材の末端側セグメントは同第1の材料とは異なる第2の材料から成ることと、スリーブは第1の材料及び第2の材料とは異なる第3の材料から成ることとを特徴とする請求項28に記載の長尺状をなす医療器具。
【請求項31】
前記第1の材料は非晶質ポリアミド及び結晶質ポリアミドの高分子材の混合物から成ることと、第2の材料はショアD硬度を有する第1のポリエーテルブロックアミド及び同第1のポリエーテルブロックアミドのショアD硬度とは異なるショアD硬度を有する第2のポリエーテルブロックアミドから成ることと、第3の材料はポリアミド12から成ることとを特徴とする請求項30に記載の長尺状をなす医療器具。
【請求項32】
前記内側管状部材の基端側セグメントは内側層と、外側層と、同内側層及び外側層の間に設けられる中間層から成ることと、内側管状部材の末端側セグメントは内側層と、外側層と、内側層及び外側層の間に設けられる中間層から成ることとを特徴とする請求項28に記載の長尺状をなす医療器具。
【請求項33】
前記スリーブは高く配向された分子鎖を有する高分子材から成ることを特徴とする請求項28に記載の長尺状をなす医療器具。
【請求項34】
前記分子鎖は長手方向に高く配向されることを特徴とする請求項33に記載の長尺状をなす医療器具。
【請求項35】
前記分子鎖は周方向に高く配向されることを特徴とする請求項33に記載の長尺状をなす医療器具。
【請求項36】
前記分子鎖は螺旋方向に高く配向されることを特徴とする請求項33に記載の長尺状をなす医療器具。
【請求項37】
末端部を有する基端側の高分子材のセグメントと、同基端側の高分子材のセグメントは外側層と、内側層と、外側層及び内側層の間に設けられる中間層とを含むことと、
基端側の高分子材のセグメントの末端部に隣接する基端部を有する末端側の高分子材のセグメントと、同末端側の高分子材のセグメントは外側層と、内側層と、外側層及び内側層の間に設けられる中間層とを含むことと、
同基端側の高分子材のセグメントの末端側部分及び末端側の高分子材のセグメントの基端側部分を覆って延びる管状の高分子材のスリーブとを備えることを特徴とするカテーテルシャフトの遷移領域。
【請求項38】
前記スリーブは高く配向された分子鎖を有する高分子材から成ることを特徴とする請求項37に記載の遷移領域。
【請求項39】
前記分子鎖は長手方向に高く配向されることを特徴とする請求項38に記載の遷移領域。
【請求項40】
前記分子鎖は周方向に高く配向されることを特徴とする請求項38に記載の遷移領域。
【請求項41】
前記分子鎖は螺旋方向に高く配向されることを特徴とする請求項38に記載の遷移領域。
【請求項42】
前記基端側セグメントの外側層は非晶質ポリアミド及び結晶質ポリアミドの高分子材の混合物から成ることと、末端側セグメントの外側層はショアD硬度を有する第1のポリエーテルブロックアミド及び同第1のポリエーテルブロックアミドのショアD硬度とは異なるショアD硬度を有する第2のポリエーテルブロックアミドから成ることと、スリーブはポリアミド12から成ることとを特徴とする請求項37に記載の遷移領域。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−533200(P2009−533200A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506659(P2009−506659)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/064172
【国際公開番号】WO2007/121019
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】