説明

多方向入力装置

【課題】 電気的信号の出力の精度が良い多方向入力装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の多方向入力装置において、回転角度検出部材2の回転体7は、部品の加工のバラツキや第1,第2の駆動部材17,18との嵌合のバラツキがあっても、復帰手段26に影響されることなく、戻し部材9によって確実に初期位置に戻ることができ、従って、個々の装置における電気的信号の出力が一定し、且つ、精度の良いものが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーム機器等の電子機器に使用され、回転角度検出部材の電気的信号の出力の精度の良い多方向入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多方向入力装置の図面を説明すると、図39は従来の多方向入力装置の分解斜視図、図40は従来の多方向入力装置の要部断面図、図41は従来の多方向入力装置に係り、矢印A方向に操作部材を傾動動作した場合の動作説明図、図42は従来の多方向入力装置に係り、矢印B方向に操作部材を傾動動作する場合の動作説明図、図43は従来の多方向入力装置に係る操作部材の作動力を示すグラフである。
【0003】
次に、従来の多方向入力装置の構成を図39〜図42に基づいて説明すると、枠体51は、後方部が開放された状態で、互いに対向して設けられた2対の側板51aと、この側板51aの前方の一部を塞ぐように設けられた前面板51bと、この前面板51bの中央部に設けられた円形の開口部51cを有する。
【0004】
可変抵抗器からなる回転角度検出部材52は、ケース53と、このケース53内に収納され、図示しない抵抗体と導電体が同一の半径方向に並設された絶縁基板54と、抵抗体と導電体のそれぞれの端子部(図示せず)に接続された状態で、絶縁基板54の下方(後方)に取り付けられた端子板55と、絶縁基板54に回転可能に取り付けられた回転体56と、この回転体56に取り付けられ、抵抗体と導電体に摺接する摺動子57とで形成されている。即ち、抵抗体と導電体は、絶縁基板54の上方部に並設して設けられ、抵抗体と導電体のそれぞれの端子部(図示せず)が回転体56用の軸孔を挟んで絶縁基板54の下方部に位置して設けられ、この端子部に接続された端子板55が回転体56の下方位置から後方に突出すると共に、このような回転角度検出部材52は、枠体51の隣り合う側板51aにそれぞれ取り付けられている。
【0005】
底板部材58は、四角形の底板58aと、この底板58aから外方に突出し、底板部59a、及びこの底板部59aからコ字状に突出する3つの側板部59bからなる抱持部59とで形成されると共に、プッシュスイッチ60は、図示しない可動接点を収納したケース61と、可動接点が接離するように、ケース61に取り付けられた端子62を有する固定接点(図示せず)と、ケース61に上下動(前後動)可能に取り付けられて可動接点を操作するステム63とで形成され、このプッシュスイッチ60は、端子62が抱持部59外から後方に突出した状態で、ケース61が抱持部59内に収納、保持されて取り付けられる。このような構成を有する底板部材58は、側板51aの後方の開放部を塞いだ状態で枠体51に取り付けられる。
【0006】
弓状の第1の駆動部材64は、長手方向に設けられたスリット部64aと、長手方向の両端部に設けられた係合部64b、64cを有し、この第1の駆動部材64は、一方の係合部64bが一つの側板61aに係止されると共に、他方の係合部64cが一つの側板61aと対向する側板61aに取り付けられた回転角度検出部材52の回転体56に係止されて、第1の駆動部材64は矢印B方向に傾動可能(回動可能)であり、また、第1の駆動部材64の一部が前面板51bの開口部51c内に位置して、第1の駆動部材64の傾動動作は、枠体51の前面板51bに設けられた開口部51cによって許容されるようになっている。
【0007】
第2の駆動部材65は、中空部65aを有するロ字状の支持部65bと、支持部65bの長手方向の一端から突出する係合部65cと、支持部65bの長手方向の他端から突出し、係合部65cと同一線上に位置する押圧部65dと、係合部65cと押圧部65dを結ぶ線と直交する線上で、支持部65bに設けられた円形の孔部65eを有し、この第2の駆動部材65は、第1の駆動部材64と直交した状態に配置されて、係合部65cが回転角度検出部材52の回転体56に係止され、また、押圧部65dがプッシュスイッチ60のステム63上に当接した状態で側板51aに支持されて、第2の駆動部材65は矢印A方向に傾動可能(回動可能)であると共に、係合部65cを支点とした矢印C方向への移動が可能で、この矢印C方向の移動の際は、押圧部65dがステム63を押圧して、プッシュスイッチ60の操作が行われるようになる。また、第2の駆動部材65の傾動動作は、枠体51内の前面板51bまでの間に設けられた空間部によって許容されるようになっており、この空間部を設けるために、前面板51bは、第2の駆動部材65の前面から大きく前方に突出した状態となっている。
【0008】
操作部材66は、前方に位置した操作部66aと、この操作部66aから後方に突出した軸部66bと、操作部66aと軸部66bの間の位置から軸部66bを囲むように後方に延びる釣り鐘状の筒状部66cと、軸線方向に対して直交する方向に筒状部66cから突出形成された小判形の一対の軸支部66dを有し、この操作部材66は、第2の駆動部材65の中空部65aと第1の駆動部材64のスリット部64aを通って垂直に延びて、操作部66aが前面板51bの開口部51cから前方に突出している。また、操作部材66の軸支部66dは、第2の駆動部材65の孔部65eに嵌合されて、操作部材66は軸支部66dを支点(回動中心)として矢印A方向と矢印B方向に傾動可能(回動可能)となっており、この操作部材66の傾動動作(回動動作)によって、第1,第2の駆動部材64,65は傾動動作(回動動作)し、これによって、回転角度検出部材52の操作が行われ、更に、操作部材66を矢印C方向に押圧した際は、軸支部66dによって第2の駆動部材65が押されて、プッシュスイッチ60の操作が行われる。そして、軸支部66dと孔部65eは、回動中心からの半径を同じくして上下方向に延びる小判形の軸支部66dと、回動中心からの半径を同じくした円形の孔部65eとが嵌合した軸支構造となっている。
【0009】
作動部材67は、筒部67aと、この筒部67aの下部(後部)に設けられた皿状の鍔状部67bを有し、この作動部材67は、操作部材66の筒状部66c内に筒部67aを位置させ、鍔状部67bを底板58a上に当接した状態で、筒部67a内に軸部66bが挿入されて、軸部66bに対して上下動(前後動)可能に取り付けられると共に、等間隔のピッチで筒状に巻き回されたコイルバネからなる復帰手段68は、筒状部67c内に配置された状態で、操作部材66と作動部材67との間に配設されており、この復帰手段68は、鍔状部67bを底板58aに付勢すると共に、操作部材66を上方(前方)に付勢して、操作部材66が底板58aに対して垂直状態にある中立状態(未作動)を維持するようになっている。また、操作部材66が傾動動作した際、操作部材66に伴って作動部材67は、鍔状部67bが底板58aに対して当接位置を変えながら傾動動作と上方(前方)への移動が行われ、その結果、操作部材66には復帰手段68によって作動力が得られると共に、操作部材66の傾動動作のストッパ構造は、操作部材66が前面板51bの内縁(開口部51cの周縁)に衝合して、それ以上の傾動動作が阻止される構成となって、従来の多方向入力装置が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
次に、このような構成を有する従来の多方向入力装置の動作を説明すると、図40に示すように中立状態にある操作部材66を復帰手段68の付勢力に抗して矢印A方向に傾動(回動)すると、図41に示すように、操作部材66によって第2の駆動部材65が回動され、その結果、回転体56の回転によって回転角度検出部材52の操作が行われて、電気的信号が出力され、また、操作部材66の傾動動作(回動動作)を解除すると、操作部材66と第2の駆動部材65は、復帰手段68によって図40に示すような中立状態に戻る。
【0011】
そして、操作部材66の傾動動作(回動動作)時、復帰手段68の付勢力(バネ圧)と、作動部材67の傾動動作時の前方への移動に伴う復帰手段68の付勢力(バネ圧)の変化、及び操作部材66の回動中心(軸支部66d)から作動部材67の鍔状部67bの底板68aへの作用点との間の長さを腕部とした回転トルクとによって、操作部材66の作動力が得られるようになり、次に、この操作部材66の作動力について説明すると、図43は操作部材66の傾動角度(回動角度)と作動力の関係を示すグラフで、図43に示すように、傾動の初期時には復帰手段68の付勢力(バネ圧)による大きな作動力が働いて急峻な第1の変化カーブH1となり、次に、傾動動作を続け、操作部材66の作動領域では、作動部材67の前方への移動に伴う復帰手段68の付勢力(バネ圧)の変化と、操作部材66の回動中心から鍔状部67bの底板68aへの作用点との間の腕部の長さが漸次短くなることによる回転トルクの変位とによって、図43に示す変位量(作動領域におけるグラフの傾き)の一定の第2の変化カーブH2となる。また、復帰手段68であるコイルバネは、作動部材67の前方への移動によって、等間隔のピッチで形成された巻き回部間が縮まって、有効バネ長が変わらない状態で圧縮された状態となっている。
【0012】
次に、図42に示すように中立状態にある操作部材66を復帰手段68の付勢力に抗して矢印B方向に傾動(回動)すると、図41に示すように、操作部材66によって第1の駆動部材64が回動され、その結果、回転体56の回転によって回転角度検出部材52の操作が行われて、電気的信号が出力され、また、操作部材66の傾動動作(回動動作)を解除すると、操作部材66と第1の駆動部材64は、復帰手段68によって中立状態に戻る。この操作においても、操作部材66は前記と同様な原理によって作動力が得られると共に、操作部材66の作動力は、図43に示すように、第1,第2の変化カーブH1,H2となっている。
【0013】
次に、図40,図42に示す状態で操作部材66を復帰手段68の付勢力に抗して矢印C方向に押圧すると、軸支部66dによって第2の駆動部材65が押されて、第2の駆動部材65は係合部65cを支点とした矢印C方向へ移動し、その結果、押圧部65dがステム63を押圧して、プッシュスイッチ60の操作(ONまたはOFF)が行われ、また、操作部材66の押圧を解除すると、操作部材66と第2の駆動部材65は復帰手段68によって元の状態に戻ると共に、プッシュスイッチ60のステム63も元の状態に戻る(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−112552号公報(第3−第6頁、図1、図8〜図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の多方向入力装置において、回転角度検出部材52の回転体57は、第1,第2の駆動部材64,65によって回転され、且つ、戻されるようになっているため、部品の加工のバラツキや回転体57と第1,第2の駆動部材64,65の嵌合のバラツキによって、個々の装置によって初期位置が変わり、電気的信号の出力の精度が悪くなるという問題がある。
【0015】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、電気的信号の出力の精度が良い多方向入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、操作部材と、互いに直交し前記操作部材によって回動される第1,及び第2の駆動部材と、前記第1,第2の駆動部材のそれぞれに連結され、前記操作部材の傾動動作によって操作される回転角度検出部材とを備え、前記操作部材を中立位置へ復帰させる復帰手段が設けられると共に、前記回転角度検出部材の回転体を初期位置に戻すための戻し部材が前記復帰手段とは別に設けられたことを特徴としている。
【0017】
このように構成した本発明において、回転角度検出部材の回転体は、部品の加工のバラツキや第1,第2の駆動部材との嵌合のバラツキがあっても、復帰手段に影響されることなく、戻し部材によって確実に初期位置に戻ることができ、従って、個々の装置における電気的信号の出力が一定し、且つ、精度の良いものが得られる。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、前記戻し部材は、前記回転角度検出部材のケースに掛止めされて保持されたことを特徴としている。このように構成した本発明は、戻し部材の保持が簡単で、小型のものが得られる。
【0019】
また、本発明は、上記発明において、前記戻し部材はバネで形成され、前記バネの一対の腕部は、それぞれ前記回転体と前記ケースに掛止めされ、前記回転体は、一対の前記腕部の間隔を狭める方向に回転可能としたことを特徴としている。このように構成した本発明は、戻し部材の戻し構成が簡単で、安価で、組立性の良好なものが得られる。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、前記戻し部材は捻りコイルバネで形成されたことを特徴としている。このように構成した本発明は、戻し部材の構成が簡単で、安価なものが得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、回転角度検出部材の回転体は、部品の加工のバラツキや第1,第2の駆動部材との嵌合のバラツキがあっても、復帰手段に影響されることなく、戻し部材によって確実に初期位置に戻ることができ、従って、個々の装置における電気的信号の出力が一定し、且つ、精度の良いものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の多方向入力装置の平面図、図2は図1の2−2線における断面図、図3は図1の3−3線における断面図、図4は本発明の多方向入力装置に係り、矢印B方向に操作部材を傾動動作した場合の動作説明図、図5は本発明の多方向入力装置に係り、矢印A方向に操作部材を傾動動作した場合の動作説明図、図6は本発明の多方向入力装置に係り、回転角度検出部材を組み込んだ状態の枠体の斜視図、図7は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の正面図、図8は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の要部断面図、図9は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の絶縁基体の正面図、図10は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の絶縁基体の側面図、図11は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材のケースの正面図、図12は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材のケースの要部断面図である。
【0023】
また、図13は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の回転体の正面図、図14は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の回転体の要部断面図、図15は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の絶縁基体と回転体を組み合わせた状態の正面図、図16は本発明の多方向入力装置に係り、底板部材とプッシュスイッチの斜視図、図17は本発明の多方向入力装置に係る第1の駆動部材の平面図、図18は本発明の多方向入力装置に係る第1の駆動部材の側面図、図19は本発明の多方向入力装置に係る第2の駆動部材の平面図、図20は本発明の多方向入力装置に係る第2の駆動部材の正面図、図21は本発明の多方向入力装置に係る第2の駆動部材の要部断面図、図22は図19の22−22線における断面図、図23は本発明の多方向入力装置に係る操作部材の正面図、図24は本発明の多方向入力装置に係る操作部材の要部断面図、図25は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材と第2の駆動部材を組み合わせた状態の正面図、図26は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材と第2の駆動部材を組み合わせた状態の要部断面図、図27は本発明の多方向入力装置に係る作動部材の要部断面図、図28は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を説明するための概要図、図30は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を説明するための説明図、図30は本発明の多方向入力装置に係る操作部材の作動力を示すグラフである。
【0024】
また、図31は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第1の他の実施形態を示す説明図、図32は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第2の他の実施形態を示す説明図、図33は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第2の他の実施形態の動作説明図、図34は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第3の他の実施形態を示す説明図、図35は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第3の他の実施形態の動作説明図、図36は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第4の他の実施形態の動作説明図、図37は本発明の多方向入力装置に係り、第4の他の実施系における操作部材の作動力を示すグラフ、図38は本発明の多方向入力装置に係り、操作部材と第2の駆動部材の軸支構造の他の実施形態を示す説明図である。
【0025】
次に、本発明の多方向入力装置に係る構成を図1〜図27に基づいて説明すると、
(枠体の構成)
特に図6に示すように、金属板等からなる筒状の枠体1は、後方部が開放された状態で、互いに対向して設けられた2対の側板1aと、前方の隅部に設けられ、隣り合う側板1aを結合する連結部1bと、前面板を無くして、前方のほぼ前面を開放するように設けられた開口部1cと、1つの側板1aに設けられた下方からの切り込み部1dと、上方側に位置した状態で、切り込み部1dの両側に設けられた一対の押さえ片1eと、側板1aの下方部に設けられた複数の取付片1fと、側板1aの中央部に設けられた複数の孔1gを有する。
【0026】
(回転角度検出部材の構成)
図7〜図15に示すように可変抵抗器からなる回転角度検出部材2は、一対の係止部3a、及び軸孔3bを有する箱形のケース3と、このケース3内に埋設等によって取り付けられ、軸孔4aを有する絶縁基体(絶縁基板)4と、軸孔4aを挟んで絶縁基体4の下方(後方)に設けられた円弧状の抵抗体5,及び絶縁基体4の上方(前方)に設けられた円弧状の導電体6と、軸孔3b、4aに保持された筒状の軸7a、及び一対の掛止め部7bを設けた筒状の収納部7cを有する回転体7と、この回転体7に取り付けられ、抵抗体4と導電体6に摺接する摺動子8と、回転体7を初期位置に戻すための捻りコイルバネからなる戻し部材9を有する。
【0027】
この戻し部材9は、巻き回部9aと、この巻き回部9aの両端から延び、互いに離反する方向に付勢する一対の腕部9bを有し、戻し部材9は、図7に示すように、巻き回部9a内に軸7aを位置させた状態で、一対の腕部9bがケース3の係止部3aと回転体7の掛止め部7bに係止されており、回転体7の初期位置(未作動の状態)では、一対の腕部9bのそれぞれが係止部3aと掛止め部7bに係止された状態にあって、回転体7が回転した時、掛止め部7bによって一方の腕部9bの付勢力に抗して一方の腕部9bを移動させ、また、回転体7の回転を解除した時、一方の腕部9bと共に回転体7が初期位置に戻され、また、一方の腕部9bは、ケース3の係止部3aに係止されて、それ以上の移動が阻止されるようになると共に、回転体7の回転によって摺動子8が回転し、摺動子8が抵抗体5と導電体6を摺接して、電気的信号を出力するようになっている。
【0028】
また、抵抗体5と導電体6のそれぞれには、端部から引き出され、軸孔4aよりも下方に位置した状態で端子部5a、6aが設けられ、この端子部5a、6aは、特に図15に示すように、回転体7の横方向の外周外に配置されると共に、端子板10が端子部5a、6aに接続された状態で絶縁基体4に取り付けられて、端子板10は、絶縁基体4から下方に突出している。このような回転角度検出部材2は、枠体1の隣り合う側板1aにそれぞれ取り付けられている。なお、回転角度検出部材2は、可変抵抗器の他に、回転形エンコーダ等の電気信号出力手段を用いても良い。
【0029】
(底板部材の構成)
合成樹脂の成型品からなる底板部材11は図16に示すように、四角形の底板11aと、この底板11aの中央部に設けられた球面状の突出部11bと、この底板11aから外方に突出し、複数の孔12cを有する底板部12a、及びこの底板部12aの両側部に設けられた2つの側板部12bからなる抱持部12とで形成されると共に、プッシュスイッチ13は、図示しない可動接点を収納したケース14と、可動接点が接離するように、ケース14に取り付けられた端子15を有する固定接点(図示せず)と、ケース14に上下動(前後動)可能に取り付けられて可動接点を操作するステム16とで形成され、このプッシュスイッチ13は、ケース14が2つの側板部12bにガイド、抱持された状態で、図2に示すように、端子15が底板部12aの孔12cに圧入されて取り付けられた構成となっていることか、側板部12bは従来に比して少なくできると共に、このプッシュスイッチ13が抱持部12に取り付けられた際、ケース14の最外側面が底板部12aの端面と面一状態となって、取付の小型化が図れる。このような構成を有する底板部材11は、プッシュスイッチ13が切り込み部1dに位置した状態で、底板11aが側板1aの後方の開放部を塞ぐように配置され、底板11aを抱持するように取付片1fを折り曲げて枠体1に取り付けられると共に、取付が完了した際は、ケース14が押さえ片1eによって押圧された状態となっている。
【0030】
(第1の駆動部材の構成)
弓状の第1の駆動部材17は、図17,図18に示すように、長手方向に設けられたスリット部17aと、長手方向の両端部に設けられた係合部17b、17cを有し、この第1の駆動部材17は、図3に示すように、一方の係合部17bが一つの側板1aの孔1gに係止されると共に、他方の係合部17cが一つの側板1aと対向する側板1aに取り付けられた回転角度検出部材2の回転体7に係止されて、第1の駆動部材17は矢印B方向に傾動可能(回動可能)であり、また、第1の駆動部材17の前方部は、枠体1の大きな開口部1cから外方に突出して、第1の駆動部材17の傾動動作は、枠体1の大きな開口部1cによって許容されるようになっている。
【0031】
(第2の駆動部材の構成)
合成樹脂の成型品からなる第2の駆動部材18は、図19〜図22に示すように、中空部18aを有するロ字状の軸受け部19と、この軸受け部19の長手方向の一端から突出する係合部18bと、軸受け部19の長手方向の他端から突出し、係合部18bと同一線上に位置する押圧部18cを有する。また、軸受け部19は、係合部18bと押圧部18cを結ぶ線と平行な状態で互いに間隔をおいて一対配置された孔部21と、その孔部21の上縁部(前縁部)を形成する第1の支持体20aと、下縁部(後縁部)を形成する第2の支持体20bを有する。また、各孔部21の下側には後述する操作部材23の軸支部24を孔部21に案内するための凹状のガイド溝22が形成されている。
【0032】
そして、孔部21は、係合部18bと押圧部18cを結ぶ線と直交する線上に設けられ、前方(上方)に位置する第1の支持体20a側に設けられた円弧状部からなる第1のガイド内面21aと、後方(下方)に位置する第2の支持体20b側に設けられた円弧状部からなる第2のガイド内面21bを有すると共に、第1のガイド内面21aと第2のガイド内面21bとは、回動中心Kからの半径が異なり、第1のガイド内面21aは、第2のガイド内面21bよりも回動中心Kからの半径が大きくなっている。更に、第2の支持体20bは、第1の支持体20aよりも外側に出っ張った状態で形成されており、これによって、第1と第2のガイド内面21a、21bは、内側と外側にずれた状態になっている。
【0033】
このような構成を有する第2の駆動部材18は、図2に示すように、第1の駆動部材64と直交した状態で第1の駆動部材17よりも内側に配置されて、係合部18bが回転角度検出部材2の回転体7に係止され、また、押圧部18cがプッシュスイッチ13のステム16上に当接した状態で側板1aの切り込み部1dの上端で支持されて、第2の駆動部材18は矢印A方向に傾動可能(回動可能)であると共に、係合部18bを支点とした矢印C方向への移動が可能で、この矢印C方向の移動の際は、押圧部18cがステム16を押圧して、プッシュスイッチ13の操作が行われるようになる。また、第2の駆動部材18が枠体1に取り付けられた際、枠体1の前端部(上端部)は、第2の駆動部材18の前面(上面)と面一、或いは若干後方(下方)に位置した状態となって、第2の駆動部材18の傾動動作は、枠体1内の前方に設けられた大きな開口部1cによって第1の駆動部材17と共に許容されるようになっている。
【0034】
(操作部材の構成)
合成樹脂の成型品からなる操作部材23は、図23,図24に示すように、前方に位置した操作部23aと、この操作部23aから後方に突出した軸部23bと、操作部23aと軸部23bの間の位置から軸部23bを囲むように後方に延びる釣り鐘状の筒部23cと、軸線方向に対して直交する方向に筒部23cから突出形成された一対の軸支部24を有する。この軸支部24は、上方(前方)側に設けられた円弧状部からなる前部側軸部24aと、下方(後方)側に設けられた円弧状部からなる後部側軸部24bとを有すると共に、前部側軸部24aと後部側軸部24bは、回動中心Kからの半径が異なり、前部側軸部24aは、後部側軸部24bよりも回動中心Kからの半径が大きくなっている。また、軸支部24には、突出側の上部がテーパ状に切り欠かれて軸支部24を孔部21へ案内するための案内面24cを形成している。
【0035】
このような構成を有する操作部材23は、図2,図3に示すように、第2の駆動部材18の中空部18aと第1の駆動部材17のスリット部17aを通って垂直に延びて、操作部23aが開口部1cから前方に突出している。また、操作部材23の軸支部24は、案内面24cが第2の駆動部材18の第2の支持体20bに当接してガイドされながら、この第2の支持体20bを押し広げて、図25,図26に示すように、第2の駆動部材18の孔部21に嵌合されて、操作部材23は軸支部24を支点(回動中心)として矢印A方向と矢印B方向に傾動可能(回動可能)となっており、この操作部材66の傾動動作(回動動作)によって、第1,第2の駆動部材17,18は傾動動作(回動動作)し、これによって、回転角度検出部材2の操作が行われ、更に、操作部材23を矢印C方向に押圧した際は、軸支部24によって第2の駆動部材18が押されて、プッシュスイッチ13の操作が行われる。
【0036】
また、軸支部24と軸受け部19の軸支構造は、図25,図26に示すように、軸支部24が孔部21に嵌合して、前部側軸部24aが第1の支持体20aに設けられた第1のガイド内面21aで支持され、後部側軸部24bが第2の支持体20bに設けられた第2のガイド内面21bで支持されており、これによって、軸支部24は、軸線方向に内側と外側にずれた第1と第2のガイド内面21a、21bで支持されている。更に、第2の駆動部材18への操作部材23の組み込みは、先ず、中空部18aの下側から操作部材23を挿通し、一対の第2の支持体20b間に一対の軸支部24を位置させた状態で、操作部材23を上方に押圧すると、軸支部24はガイド溝22にガイドされながら一対の第2の支持体20bを外方の押し開き、そして、軸支部24が孔部21に合致すると、一対の第2の支持体20bがバネ性によって戻ると、軸支部24が孔部21に嵌合されてスナップ止めされた状態となる。
【0037】
(作動部材の構成)
合成樹脂の成型品からなる作動部材25は、図27に示すように、筒部25aと、この筒部25aの下部(後部)に設けられた皿状の鍔状部25bを有し、この作動部材25は、図2,図3に示すように、操作部材23の筒部23c内に筒部25aを位置させ、鍔状部25bを底板11a上に当接した状態で、筒部25a内に軸部23bが挿入されて、軸部23bに対して上下動(前後動)可能に取り付けられると共に、コイルバネからなる復帰手段26は、筒部23c内に配置された状態で、操作部材23と作動部材25との間に配設されており、この復帰手段26は、鍔状部25bを底板11aに付勢すると共に、操作部材23を上方(前方)に付勢して、操作部材23が底板11aに対して垂直状態にある中立状態(未作動)を維持するようになっている。
【0038】
また、操作部材23が傾動動作した際、操作部材23に伴って作動部材25は、鍔状部25bが突出部11b上を乗り上げながら底板11aに対して当接位置を変えながら傾動動作と上方(前方)への移動が行われ、その結果、操作部材23には復帰手段26によって作動力が得られると共に、操作部材23の傾動動作のストッパ構造は、図4,図5に示すように、操作部材23が電子機器のパネル27に衝合して、それ以上の傾動動作が阻止される構成となっている。なお、この操作部材23のストッパ構造は、装置が電子機器に組み込まれる前にあっては、操作部材23を最大の傾倒動作を行ったとしても、操作部材23が枠体1の前端部に衝合することが無く、作動部材25等の部材が枠体1内で動きが阻止された阻止構成となっており、従って、ストッパ構造は、パネル27に代えて、枠体1内の作動部材25等の部材を利用して、枠体1内での操作部材23の傾動動作の阻止構成としても良い。更に、復帰手段26について説明すると、復帰手段26を形成するコイルバネは、図29に示すように、筒状に巻き回され、巻き回部間のピッチが上部から下部に行くに従って漸次大きくなるように形成され、操作部材23の所定の傾動角度の傾倒動作時からは、隣り合う巻き回部同士が順次重なり合うようになって、本発明の多方向入力装置が形成されている。
【0039】
(操作部材の矢印A方向の動作)
次に、このような構成を有する本発明の多方向入力装置の動作を説明すると、図3に示すように中立状態にある操作部材23を復帰手段26の付勢力に抗して矢印A方向に傾動(回動)すると、図5に示すように、操作部材23によって第2の駆動部材18が回動され、その結果、回転体7の回転によって回転角度検出部材2の操作が行われて、電気的信号が出力され、また、操作部材23の傾動動作(回動動作)を解除すると、操作部材23と第2の駆動部材18は、復帰手段26によって図3に示すような中立状態に戻る。この操作時において、傾動動作時には、回転体7が戻し部材9の付勢力に抗して回動されるが、中立状態に戻った際は、復帰手段26とは別の戻し部材9の働きによって、回転体7は初期位置に確実に戻されるようになっている。
【0040】
(操作部材の作動力)
そして、操作部材23の傾動動作(回動動作)時、復帰手段26の付勢力(バネ圧)と、作動部材25の傾動動作時の前方への移動に伴う復帰手段26の付勢力(バネ圧)の変化、及び操作部材23の回動中心Kから作動部材25の鍔状部25bの底板11aへの作用点との間の長さを腕部(この腕部の長さは操作部材23の傾動角度が大きくなるに従って短くなる)とした回転トルクとによって、操作部材23には作動力が得られるようになり、次に、この操作部材23の作動力について説明すると、図28は操作部材23の作動力を説明するための概要図、図29は操作部材23の作動力を説明するための説明図、図30は操作部材23の傾動角度(回動角度)と作動力の関係を示すグラフで、先ず、図29A、及び図30に示すように、操作部材23の傾動の初期時には、復帰手段26の付勢力(バネ圧)による大きな作動力が働いて急峻な第1の変化カーブH1となる。
【0041】
次に、傾動動作を続け、操作部材23の作動領域では、図29Aから図29Bにおいて、作動部材25の前方への移動に伴う復帰手段26の付勢力(バネ圧)の変化と、操作部材23の回動中心Kから鍔状部25bの底板11aへの作用点との間の腕部の長さが漸次短くなることによる回転トルクの変位とによって、図30に示す変位量(作動領域におけるグラフの傾き)の一定の第2の変化カーブH2となる。この第2の変化カーブH2における復帰手段26であるコイルバネは、作動部材25の前方への移動によって、間隔の異なるピッチで形成された巻き回部間が縮まって、有効バネ長が変わらない状態で圧縮された状態となっている。
【0042】
そして更に傾動動作を続けると、図29Bから図29Cに示すように、操作部材23の所定の傾動角度からは、最上部に位置する巻き回部から次の巻き回部へと順次重なり合うようになって、図30に示す第2のカーブH2の変位量が増加する方向に可変(変化)して第3の変化カーブH3となる。この第3の変化カーブH3における復帰手段26であるコイルバネは、作動部材25の前方への移動によって、巻き回部間が順次重なり合うようになると共に、有効バネ長が短くなるように漸次変化し、これによって、付勢力(バネ圧)が大きくなって第3の変化カーブH3となる。このように、操作部材23の作動領域における作動力は、変位量の一定の第2のカーブH2と、この第2のカーブH2の変位量が増加する方向に可変した第3のカーブH3と、変位量の一定の第3のカーブH3となり、従って、作動力は、第2,第3の変化カーブH2,H3間で大きく変化するようになる。なお、このコイルバネは、取付形態を逆にして、下方側の巻き回部から順次上方へと重なり合うようにしても良い。
【0043】
(操作部材の矢印B方向の動作)
次に、図2に示すように中立状態にある操作部材23を復帰手段26の付勢力に抗して矢印B方向に傾動(回動)すると、図4に示すように、操作部材23によって第1の駆動部材17が回動され、その結果、回転体7の回転によって回転角度検出部材2の操作が行われて、電気的信号が出力され、また、操作部材23の傾動動作(回動動作)を解除すると、操作部材23と第1の駆動部材17は、復帰手段26によって中立状態に戻る。この操作時において、傾動動作時には、回転体7が戻し部材9の付勢力に抗して回動されるが、中立状態に戻った際は、復帰手段26とは別の戻し部材9の働きによって、回転体7は初期位置に確実に戻されるようになっている。更に、この操作においても、操作部材23は前記と同様な原理によって作動力が得られると共に、操作部材23の作動力は、図30に示すように、第1,第2、第3の変化カーブH1,H2、H3が得られるようになっている。なお、上記の説明では、矢印A方向と矢印B方向での傾動動作について述べたが、矢印A方向と矢印B方向以外の全ての傾動範囲においても、操作部材23の傾動動作が可能であること勿論である。
【0044】
(操作部材の矢印C方向の動作)
次に、図2,または図3に示す状態で操作部材23を復帰手段26の付勢力に抗して矢印C方向に押圧すると、軸支部24によって第2の駆動部材18が押されて、第2の駆動部材18は係合部18bを支点とした矢印C方向へ移動し、その結果、押圧部18cがステム16を押圧して、プッシュスイッチ13の操作(ONまたはOFF)が行われ、また、操作部材23の押圧を解除すると、操作部材23と第2の駆動部材18は復帰手段26によって元の状態に戻ると共に、プッシュスイッチ13のステム16も可動接点等によって元の状態に戻る。
【0045】
(操作部材の作動力の他の実施形態)
また、図31は本発明の操作部材の作動力を得るための第1の他の実施形態を示す説明図で、この第1の他の実施形態について説明すると、復帰手段26であるコイルバネは、円錐状に巻き回されたものであって、その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0046】
また、図32,図33は本発明の操作部材の作動力を得るための第2の他の実施形態を示す説明図で、この第2の他の実施形態について説明すると、復帰手段26は、等間隔の巻き回部間のピッチを有したコイルバネからなる第1,第2の弾性部材26a、26bを有すると共に、第1の弾性部材26aは第1のコイルバネで形成されており、第2の弾性部材26bは第2のコイルバネで形成されており、第1のコイルバネである第1の弾性部材26aは、作動部材25が嵌合される操作部材23の筒部23c内の前端部(上端部)と、作動部材25の前端部(上端部)との間に配設され、また、第2のコイルバネである第2の弾性部材26bは、操作部材23の筒部23cの後部に設けられた段差部23dと、作動部材25の後端部との間で、段差部23dと所定の間隔を隔てて配設されており、第1の弾性部材26aは、操作部材23を上方に常時付勢した状態にあるが、第2の弾性部材26bは、操作部材23と作動部材25間に遊び(操作部材23を付勢しない状態)のある状態で配置されている。
【0047】
そして、操作部材23の傾動の初期時には、第1の弾性部材26aの付勢力(バネ圧)による大きな作動力が働いて、図30に示す急峻な第1の変化カーブH1となり、次に、傾動動作を続け、操作部材23の作動領域では、図32から図33において、作動部材25の前方への移動に伴う第1の弾性部材26aの付勢力(バネ圧)の変化と、操作部材23の回動中心Kから鍔状部25bの底板11aへの作用点との間の長さを腕部とした回転トルクの変位とによって、図30に示す変位量(作動領域におけるグラフの傾き)の一定の第2の変化カーブH2となる。この第2の変化カーブH2における第1の弾性部材26aである第1のコイルバネは、作動部材25の前方への移動によって、間隔の等しいピッチで形成された巻き回部間が縮まって、有効バネ長が変わらない状態で圧縮された状態となっている。
【0048】
そして更に傾動動作を続けると、操作部材23の所定の傾動角度からは、図33に示すように、第1の弾性部材26aの漸次の圧縮に加えて、第2の弾性部材26bが段差部23dによって圧縮されて、図30に示す第2のカーブH2の変位量が増加する方向に可変(変化)して第3の変化カーブH3となる。この第3の変化カーブH3における第2の弾性部材26bである第2のコイルバネは、作動部材25の前方への移動によって、間隔の等しいピッチで形成された巻き回部間が縮まって、有効バネ長が変わらない状態で圧縮された状態となっている。このように、操作部材23の作動領域における作動力は、第1の弾性部材26aの付勢力による変位量の一定の第2のカーブH2と、この第2のカーブH2の変位量が第2の弾性部材26bの付勢力の付加によって増加する方向に可変した第3のカーブH3と、変位量の一定の第3のカーブH3となり、従って、作動力は、第2,第3の変化カーブH2,H3間で大きく変化するようになる。なお、この実施例では、等間隔の巻き回部間のピッチを有したコイルバネで説明したが、例えば、第1の弾性部材26aである第1のコイルバネには、ピッチの異なるコイルバネを使用し、図30に示す変化量の大きな第3の変化カーブH3となった後に、操作部材23の傾動によって、巻き回部間が順次重なり合うようにして、図30に示す第3のカーブH3の変位量を可変(変化)して第4の変化カーブH4を得るようにし、これによって、作動力の変位量を複数の可変にしても良い。
【0049】
また、図34,図35は本発明の操作部材の作動力を得るための第3の他の実施形態を示す説明図で、この第3の他の実施形態について説明すると、復帰手段26は、第1の弾性部材26aとこの第1の弾性部材26aより弾発力の高い第2の弾性部材26bとから構成され、作動部材25には、上下動(変位)可能な受け部材28が配置され、第1の弾性部材26aは操作部材23の筒部23c内の前端部(上端部)と受け部材28の一端部との間に配設され、また、第2の弾性部材26bは作動部材25と受け部材28の他端部との間に配設されると共に、筒部23cには、受け部材28の他端部との間に所定の距離を隔てて段差部23eが設けられ、操作部材23は第1の弾性部材26aによって上方に付勢されると共に、受け部材28は、第1,第2の弾性部材26a、26bのバネ圧が均等な位置で止まっている。
【0050】
そして、操作部材23の傾動の初期時には、第1の弾性部材26aの付勢力(バネ圧)による大きな作動力が働いて、図30に示す急峻な第1の変化カーブH1となり、次に、傾動動作を続け、操作部材23の作動領域では、図34から図35において、作動部材25の前方への移動に伴う第1の弾性部材26aの付勢力(バネ圧)の変化と、操作部材23の回動中心Kから鍔状部25bの底板11aへの作用点との間の腕部の長さが漸次短くなることによる回転トルクの変位とによって、図30に示す変位量(作動領域におけるグラフの傾き)の一定の第2の変化カーブH2となる。この第2の変化カーブH2における第1の弾性部材26aであるコイルバネは、作動部材25の前方への移動によって、間隔の等しいピッチで形成された巻き回部間が縮まって、有効バネ長が変わらない状態で圧縮された状態となっている。
【0051】
そして更に傾動動作を続けると、操作部材23の所定の傾動角度からは、図35に示すように、第1の弾性部材26aの圧縮に加えて、段差部23eが受け部材28を介して弾発力の高い第2の弾性部材26bを圧縮するようになって、図30に示す第2のカーブH2の変位量が増加する方向に可変(変化)して第3の変化カーブH3となる。この第3の変化カーブH3における第2の弾性部材26bであるコイルバネは、作動部材25の前方への移動によって、間隔の等しいピッチで形成された巻き回部間が縮まって、有効バネ長が変わらない状態で圧縮された状態となっている。このように、操作部材23の作動領域における作動力は、第1の弾性部材26aの付勢力による変位量の一定の第2のカーブH2と、この第2のカーブH2の変位量が第2の弾性部材26bの付勢力の付加によって増加する方向に可変した第3のカーブH3と、変位量の一定の第3のカーブH3となり、従って、作動力は、第2,第3の変化カーブH2,H3間で大きく変化するようになる。
【0052】
また、図36,図37は本発明の操作部材の作動力を得るための第4の他の実施形態を示す説明図で、この第4の他の実施形態について説明すると、復帰手段26は、巻き回部間の異なるピッチを有したコイルバネからなり、例えば、このコイルバネは、上方部から中間部に向かって漸次ピッチが大きくなると共に、その中間部に続く下方部のピッチは、中間部のピッチよりも大きなピッチで形成されている。
【0053】
そして、図36Aに示す操作部材23の傾動の初期時には、復帰手段26の付勢力(バネ圧)による大きな作動力が働いて、図37に示す急峻な第1の変化カーブH1となり、次に、傾動動作を続け、操作部材23の作動領域では、図36Aから図36Bにおいて、作動部材25の前方への移動に伴う復帰手段26の付勢力(バネ圧)の変化と、操作部材23の回動中心Kから鍔状部25bの底板11aへの作用点との間の腕部の長さが漸次短くなることによる回転トルクの変位とによって、図30に示す変位量(作動領域におけるグラフの傾き)の一定の第2の変化カーブH2となる。この第2の変化カーブH2における復帰手段26であるコイルバネは、作動部材25の前方への移動によって、間隔の異なるピッチで形成された巻き回部間が縮まって、有効バネ長が変わらない状態で圧縮された状態となっている。
【0054】
そして更に傾動動作を続けると、図36Bから図36Cに示すように、操作部材23の所定の傾動角度からは、最上部に位置する巻き回部から次の巻き回部へと順次重なり合うようになって、図30に示す第2のカーブH2の変位量が急に増加する方向に可変(変化)して第3の変化カーブH3となる。この第3の変化カーブH3における復帰手段26であるコイルバネは、作動部材25の前方への移動によって、巻き回部間が順次重なり合うようになると共に、有効バネ長が短くなるように漸次変化し、これによって、付勢力(バネ圧)が大きくなって第3の変化カーブH3となる。このように、操作部材23の作動領域における作動力は、変位量の一定の第2のカーブH2と、この第2のカーブH2の変位量が急に増加する方向に可変した第3のカーブH3と、変位量の一定の第3のカーブH3となり、従って、作動力は、第2,第3の変化カーブH2,H3間で大きく変化するようになる。
【0055】
そして更にまた、傾動動作を続けると、図36Cから図36Dにおいて、巻き回部間の重なりが無く、有効バネ長が変わらない状態で下部側の付勢力(バネ圧)によって、図37に示す第3の変化カーブH3の変位量が軽くなるように可変(変化)して第4の変化カーブH4が得られるようになる。これによって、作動部材23の作動力の変位量が複数の可変となっている。なお、上記実施例のコイルバネの構成以外に、種々の変形構成が適用できること勿論である。
【0056】
(軸支構造の他の実施形態)
また、図38は操作部材23と第2の駆動部材18の軸支構造の他の実施形態を示す説明図で、この他の実施形態について説明すると、軸支部24の前部側軸部24aを薄くし、且つ、復帰手段26による上方への付勢力を受けない後部側軸部24bの先端部の丸みを小さくして、軸支部24の小型化を図ると共に、後部側軸部24bに対応する第2のガイド内面21bの円弧状部を小さくして、孔部21の小型化を図ったもので、その他の構成は、前記実施例と同様の構成を有し、同一部品に同一番号を付し、ここではその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の多方向入力装置の平面図である。
【図2】図1の2−2線における断面図である。
【図3】図1の3−3線における断面図である。
【図4】本発明の多方向入力装置に係り、矢印B方向に操作部材を傾動動作した場合の動作説明図である。
【図5】本発明の多方向入力装置に係り、矢印A方向に操作部材を傾動動作した場合の動作説明図である。
【図6】本発明の多方向入力装置に係り、回転角度検出部材を組み込んだ状態の枠体の斜視図である。
【図7】本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の正面図である。
【図8】本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の要部断面図である。
【図9】本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の絶縁基体の正面図である。
【図10】本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の絶縁基体の側面図である。
【図11】は本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材のケースの正面図である。
【図12】本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材のケースの要部断面図である。
【図13】本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の回転体の正面図である。
【図14】本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の回転体の要部断面図である。
【図15】本発明の多方向入力装置に係る回転角度検出部材の絶縁基体と回転体を組み合わせた状態の正面図である。
【図16】本発明の多方向入力装置に係り、底板部材とプッシュスイッチの斜視図である。
【図17】本発明の多方向入力装置に係る第1の駆動部材の平面図である。
【図18】本発明の多方向入力装置に係る第1の駆動部材の側面図である。
【図19】本発明の多方向入力装置に係る第2の駆動部材の平面図である。
【図20】本発明の多方向入力装置に係る第2の駆動部材の正面図である。
【図21】本発明の多方向入力装置に係る第2の駆動部材の要部断面図である。
【図22】図19の22−22線における断面図である。
【図23】本発明の多方向入力装置に係る操作部材の正面図である。
【図24】本発明の多方向入力装置に係る操作部材の要部断面図である。
【図25】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材と第2の駆動部材を組み合わせた状態の正面図である。
【図26】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材と第2の駆動部材を組み合わせた状態の要部断面図である。
【図27】本発明の多方向入力装置に係る作動部材の要部断面図である。
【図28】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を説明するための概要図である。
【図29】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を説明するための説明図である。
【図30】本発明の多方向入力装置に係る操作部材の作動力を示すグラフである。
【図31】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第1の他の実施形態を示す説明図である。
【図32】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第2の他の実施形態を示す説明図である。
【図33】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第2の他の実施形態の動作説明図である。
【図34】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第3の他の実施形態を示す説明図である。
【図35】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第3の他の実施形態の動作説明図である。
【図36】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材の作動力を得るための第4の他の実施形態の動作説明図である。
【図37】本発明の多方向入力装置に係り、第4の他の実施系における操作部材の作動力を示すグラフである。
【図38】本発明の多方向入力装置に係り、操作部材と第2の駆動部材の軸支構造の他の実施形態を示す説明図である。
【図39】従来の多方向入力装置の分解斜視図である。
【図40】従来の多方向入力装置の要部断面図である。
【図41】従来の多方向入力装置に係り、矢印A方向に操作部材を傾動動作した場合の動作説明図である。
【図42】従来の多方向入力装置に係り、矢印B方向に操作部材を傾動動作する場合の動作説明図である。
【図43】従来の多方向入力装置に係る操作部材の作動力を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1 枠体
1a 側板
1b 連結部
1c 開口部
1d 切り込み部
1e 押さえ片
1f 取付片
1g 孔
2 回転角度検出部材
3 ケース
3a 係止部
3b 軸孔
4 絶縁基体
4a 軸孔
5 抵抗体
5a 端子部
6 導電体
6a 端子部
7 回転体
7a 軸
7b 掛止め部
7c 収納部
8 摺動子
9 戻し部材
9a 巻き回部
9b 腕部
10 端子板
11 底板部材
11a 底板
11b 突出部
12 抱持部
12a 底板部
12b 側板部
12c 孔
13 プッシュスイッチ
14 ケース
15 端子
16 ステム
17 第1の駆動部材
17a スリット部
17b、17c 係合部
18 第2の駆動部材
18a 中空部
18b 係合部
18c 押圧部
19 軸受け部
20 支持部
20a 第1の支持体
20b 第2の支持体
21 孔部
21a 第1のガイド内面
21b 第2のガイド内面
22 ガイド溝
23 操作部材
23a 操作部
23b 軸部
23c 筒部
23d 段差部
23e 段差部
24 軸支部
24a 前部側軸部
24b 後部側軸部
24c 案内面
25 作動部材
25a 筒部
25b 鍔状部
26 復帰手段
26a 第1の弾性部材
26b 第2の弾性部材
27 パネル
28 受け部材
K 回動中心
H1〜H4 第1〜第4の変化カーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材と、互いに直交し前記操作部材によって回動される第1,及び第2の駆動部材と、前記第1,第2の駆動部材のそれぞれに連結され、前記操作部材の傾動動作によって操作される回転角度検出部材とを備え、前記操作部材を中立位置へ復帰させる復帰手段が設けられると共に、前記回転角度検出部材の回転体を初期位置に戻すための戻し部材が前記復帰手段とは別に設けられたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
前記戻し部材は、前記回転角度検出部材のケースに掛止めされて保持されたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項3】
上記請求項2記載の発明において、
前記戻し部材はバネで形成され、前記バネの一対の腕部は、それぞれ前記回転体と前記ケースに掛止めされ、前記回転体は、一対の前記腕部の間隔を狭める方向に回転可能としたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項4】
上記請求項1から3の何れか1項記載の発明において、
前記戻し部材は捻りコイルバネで形成されたことを特徴とする多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【公開番号】特開2007−59159(P2007−59159A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241785(P2005−241785)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】