説明

多段カスケードポンプ

【課題】揚水性能が高く、適正な送水量が得られ、しかも騒音や振動の発生を抑制できる多段カスケードポンプを提供すること。
【解決手段】第1ポンプ本体20等の複数のカスケードポンプを、各ポンプ本体20等の回転羽根32の回転軸18に沿って積層し、積層した順に各ポンプ本体20等の吸込口と吐出口とを連結させるとともに、回転軸18周りに各吸込口と各吐出口を均等に配置して多段カスケードポンプ10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カスケードポンプを同軸上に複数組み合わせ、高い揚水性能を、適切な送水量と高い静粛性で実現させた多段カスケードポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高層ビルなどの高層階に給水する必要性から、揚水性能の高い高圧の送水ポンプが求められている。従来高圧ポンプとしては、複数のポンプを組み合わせた多段の渦巻きポンプやタービンポンプ、プランジャーポンプなどが広く一般に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平4−68480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらプランジャーポンプは、高揚程を得るため作動速度を上昇させると、プランジャーが高速で往復動し、騒音や振動が大きくなるという問題があった。一方遠心ポンプを多段に組み合わせた場合、揚水性能を高めるため出力を上昇させると、出力の上昇に伴い送水水量が増大して、大規模のビルでなければ過剰な送水設備となることがあった。
【0005】
本発明は、揚水性能が高く、適正な送水量が得られ、しかも騒音や振動の発生を抑制した多段カスケードポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多段カスケードポンプを次のように構成した。
【0007】
複数のカスケードポンプを、カスケードポンプの回転羽根の回転軸に沿って積層し、積層した順にカスケードポンプの吸込口と吐出口とを連結させるとともに、回転軸周りに吸込口と吐出口を均等に配置して多段カスケードポンプを構成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、揚水性能が高く、適正な送水量が得られ、しかも騒音や振動の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる多段カスケードポンプを示す正面図である。
【図2】同多段カスケードポンプを示す側面図である。
【図3】同多段カスケードポンプの第1ポンプ本体を示す断面図である。
【図4】同多段カスケードポンプの第2ポンプ本体を示す断面図である。
【図5】同多段カスケードポンプの第3ポンプ本体を示す断面図である。
【図6】多段カスケードポンプの第2の実施形態を示す正面図である。
【図7】同多段カスケードポンプを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施形態にかかる多段カスケードポンプ10について説明する。図1〜図5は、多段カスケードポンプ10を示す図である。図1に、多段カスケードポンプ10の全体を示す。多段カスケードポンプ10は、ポンプ部12と、ポンプ部12に連結された電動モータ(駆動部)14と、制御装置62などを備えて構成されている。
【0011】
電動モータ14には、アクチュエータ64を介して電源線60が接続してある。アクチュエータ64は、制御装置62からの指示に従い作動し、電源線60から電動モータ14に所定の電流を供給する。制御装置62は、センサ等からの水圧や水量などの値に基づき、アクチュエータ64に指示を送り出す。回転駆動軸16は、ポンプ部12の回転軸18に連結しており、所定の回転数で回転駆動してポンプ部12を作動させる。
【0012】
ポンプ部12は、第1ポンプ本体20と、第2ポンプ本体22と、第3ポンプ本体24とを備え、第1ポンプ本体20側に主吸込口26、第3ポンプ本体24側に主吐出口28が設けられている。各第1ポンプ本体20、第2ポンプ本体22、第3ポンプ本体24は、いずれもほぼ同一の構成を有する3台のカスケードポンプであり、回転軸18に沿って直線的に配置されている。以下、第1ポンプ本体20について説明する。
【0013】
図3に第1ポンプ本体20を示す。図3は、図1に示す多段カスケードポンプ10のF3−F3線断面である。第1ポンプ本体20は、ケーシング30と回転羽根32とライナ29を備えている。ケーシング30は、金属からなる扁平な円筒状の枠体で、外周部分に第1吸込口36と第1吐出口38が、回転軸18を中心とした120度の挟み角の位置に設けられている。
【0014】
第1吸込口36は、ポンプ部12の主吸込口26として形成してあり、給水管37が連結されている。給水管37は、外部に接続し、第1ポンプ本体20に水を供給する。回転羽根32は、ケーシング30の内部に回転自在に設けられている。回転羽根32は、円板状で、中心に回転軸18が固定してあり、外周に溝40が直径方向に多数形成されている。
【0015】
ライナ29は、大径部34と小径部35とを備えた異径の円盤で、回転羽根32との間にわずかな間隙をもってケーシング30に固定されている。大径部34は、ケーシング30の内面の径とほぼ等しい径に形成されている。小径部35は、溝40の中心側の端部の位置より若干中心側を通る径を外径にして形成されている。
【0016】
更に大径部34は、第1吸込口36と第1吐出口38の端縁であって、第1吸込口36と第1吐出口38とを結ぶ円弧の短い円弧側に位置する端縁の間に形成されている。小径部35は、第1吸込口36と第1吐出口38とを結ぶ円弧の長い円弧側に形成されている。
【0017】
第1ポンプ本体20の内部には、ライナ29の小径部35により、ケーシング30の内側に沿って第1吸込口36と第1吐出口38とを結ぶ水通路42が円弧状に形成される。そして、回転羽根32が図3の矢印の方向に回転駆動すると、水通路42内を溝40が通過し、第1吸込口36側の圧力より第1吐出口38側の水圧が高くなる。これにより、第1ポンプ本体20は第1吸込口36から水を吸引し、吸引した水の圧力を高めて第1吐出口38から吐出する。
【0018】
第1吐出口38は、第2ポンプ本体22の第2吸込口44に対応した位置に設けられており、第2吸込口44に連結している。図4に第2ポンプ本体22を示す。図4は、図1に示す多段カスケードポンプ10のF4−F4線断面図である。第2ポンプ本体22は、第2吸込口44の形状が第1ポンプ本体20の第1吸込口36と異なる以外は、第1ポンプ本体20と基本的に同等な構成を有している。第2吸込口44と第2吐出口46は、回転軸18を中心とした120度の挟み角で設けられ、ライナ29はその箇所に上述したように大径部34が形成されている。第2吐出口46は、第3ポンプ本体24の第3吸込口48と同じ位置に設けてあり、第3吸込口48に連結されている。
【0019】
図5に第3ポンプ本体24を示す。図5は、図1に示す多段カスケードポンプ10のF5−F5線断面図である。第3ポンプ本体24は、第3吐出口50の形状が第2ポンプ本体22の第2吐出口46と異なる以外は、第2ポンプ本体22と基本的に同等な構成を有している。第3吸込口48と第3吐出口50は、回転軸18を中心とした120度の挟み角で設けられ、ライナ29はその箇所に上述したように大径部34が形成されている。
【0020】
第2吐出口46は、第3ポンプ本体24の第3吸込口48と同じ位置に設けてあり、第3吸込口48に連結されている。第3吐出口50は、ポンプ部12の主吐出口28として形成してあり、需要者に給水する送水管52に連結されている。
【0021】
次に、多段カスケードポンプ10の作用、効果について説明する。
【0022】
電動モータ14に制御装置62からの指示により通電が行われ、回転駆動軸16が駆動されると、回転軸18により第1ポンプ本体20と第2ポンプ本体22と第3ポンプ本体24の各回転羽根32が各ケーシング30、31、33内で回転される。第1ポンプ本体20では、回転羽根32の回転により、第1吸込口36、すなわち主吸込口26からケーシング30の内部に水が吸引され、吸引された水が所定の圧力に高められた後第1吐出口38から吐出される。
【0023】
第1ポンプ本体20の第1吐出口38から吐出された水は、第1吐出口38に接続した第2ポンプ本体22の第2吸込口44を通って第2ポンプ本体22内に流入する。第2吸込口44から第2ポンプ本体22内に吸引された水は、第2ポンプ本体22の回転羽根32の回転により圧力がより高められ、第2吐出口46から吐出される。
【0024】
第2吐出口46から吐出された水は、第2吐出口46に接続された第3ポンプ本体24の第3吸込口48を通って第3ポンプ本体24内に流入する。第3ポンプ本体24内に流入した水は、第3ポンプ本体24の回転羽根32の回転により圧力が一層高められ、第3吐出口50、すなわち主吐出口28から吐出され送水管52を通して需要者等に圧送される。
【0025】
したがって、多段カスケードポンプ10は、第1ポンプ本体20と第2ポンプ本体22と第3ポンプ本体24の3台のカスケードポンプにより順次水圧が高められ、十分な揚水高さが得られる。
【0026】
多段カスケードポンプ10は、第1ポンプ本体20と第2ポンプ本体22と第3ポンプ本体24の各吸込口と各吐出口の回転軸18を中心とした挟み角が120度で、各ポンプ本体の積層数が3であるので、挟み角の数値と積層数との積が360となり、各吸込口と各吐出口がそれぞれ回転軸18を中心として軸周りに均等に配置されるので、多段カスケードポンプ10に生じる力が径方向で互いに相殺され、作動に伴う振動や騒音の大きさが低減され、静粛性を高くできる。
【0027】
多段カスケードポンプ10は、第1ポンプ本体20と第2ポンプ本体22と第3ポンプ本体24が直列に連結されているため、多段カスケードポンプ10から吐出される水量は第1ポンプ本体20一台で作動させた場合の水量と大きな差はなく、送水量を変えることなく揚水高さを高くできる。
【0028】
多段カスケードポンプ10は、回転軸18にかかる負荷が軸周りほぼ均等に分散されるので、回転軸18や回転軸18を支持する軸受機構等を小型化、簡素化でき、多段カスケードポンプ10を小型、軽量化し、コストを低減できる。
【0029】
尚上記例では、第1ポンプ本体20と第2ポンプ本体22と第3ポンプ本体24の3台のカスケードポンプの第1吸込口36等と第1吐出口38等とを、回転軸18を中心として挟み角120度の位置に設け、各カスケードポンプの吸込口と吐出口とを軸周りに均等に配置したが、本発明は、吸込口と吐出口とのなす角度はこれに限るものではなく、各カスケードポンプを回転軸18に沿って積層した際、各吸込口と吐出口が回転軸18の周囲に均等に配置されればよい。また各吸込口と吐出口は、吸込口と吐出口のなす角度、および各吸込口と吐出口の回転軸18からの距離などが等しく均等に配置されていることが好ましい。
【0030】
次に、多段カスケードポンプの第2の実施形態について説明する。図6に、多段カスケードポンプ11を示す。多段カスケードポンプ11は、第1多段カスケードポンプ13と第2多段カスケードポンプ15の2台の多段カスケードポンプを組み合わせた構造となっている。
【0031】
第1多段カスケードポンプ13と第2多段カスケードポンプ15は共に、上述した多段カスケードポンプ10とほぼ同様の構成で、第1ポンプ本体20と第2ポンプ本体22と第3ポンプ本体24の3台のカスケードポンプから構成されている。
【0032】
そして第1多段カスケードポンプ13の第1吸込口36が給水管37に接続し、多段カスケードポンプ11の上部で、第1多段カスケードポンプ13の第3吐出口50が第2多段カスケードポンプ15の第1吸込口36に接続し、第2多段カスケードポンプ15の第3吐出口50が送水管52に接続している。
【0033】
そして更に、多段カスケードポンプ11は、図7に示すように第1多段カスケードポンプ13の各吸込口と吐出口に対して、第2多段カスケードポンプ15の各吸込口と吐出口がそれぞれ同じ角度位置に、回転駆動軸16を中心とした軸周りに均等に配置されている。
【0034】
これにより多段カスケードポンプ11は、多段カスケードポンプ10と送水量が変わることなく、揚水能力がほぼ2倍となる。更に多段カスケードポンプ11は、回転軸18の軸周りのバランスが第1多段カスケードポンプ13と第2多段カスケードポンプ15の双方で取れており、振動や騒音の発生を低減できる。
【0035】
尚、第1多段カスケードポンプ13と第2多段カスケードポンプ15は、吸込口と吐出口の回転軸18を中心とした挟み角の数値と各ポンプ本体の積層数との積が360としたが、これに限るものではない。例えば挟み角を60度としたポンプ本体を3台積層した多段カスケードポンプを、2段の段数に積層してもよい。このようにしても、挟み角の数値と積層数と積層段数との積が360となり、振動や騒音の発生を低減できる。
【0036】
更に、第1多段カスケードポンプ13の第1吸込口36と第1吐出口38のなす角度と、第2多段カスケードポンプ15の第1吸込口36と第1吐出口38のなす角度とを異ならせてもよい。例えば、第1多段カスケードポンプ13の第1吸込口36と第1吐出口38の挟み角を120度とし、第2多段カスケードポンプ15の第1吸込口36と第1吐出口38の挟み角を180度などとしてもよい。
【0037】
この場合は、少なくとも第1多段カスケードポンプ13と第2多段カスケードポンプ15は、それぞれにおいて回転軸18を中心とした軸回りのバランスが実現できるように構成するとともに、多段カスケードポンプ11として全体で回転軸18を中心とした軸回りのバランスが実現できるように第1多段カスケードポンプ13と第2多段カスケードポンプ15を積層する。
【0038】
更に、多段カスケードポンプの他の例としては、第1多段カスケードポンプ13と第2多段カスケードポンプ15の吸込口等の軸方向の位置を一致させず、第1多段カスケードポンプ13の各吸込口と各吐出口との中間の角度の位置に、第2多段カスケードポンプ15の各吸込口や各吐出口が位置するように配置させてもよい。すると、変動がより細かな角度で発生し、回転駆動軸周りのバランスが良好となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、揚水性能が高く、適正な送水量が得られ、しかも騒音や振動の発生を抑制した多段カスケードポンプを提供できる。
【符号の説明】
【0040】
10…多段カスケードポンプ、12…ポンプ部、14…電動モータ、16…回転駆動軸、18…回転軸、20…第1ポンプ本体、22…第2ポンプ本体、24…第3ポンプ本体、30…ケーシング、32…回転羽根、36…第1吸込口、38…第1吐出口、40…溝、42…水通路、44…第2吸込口、46…第2吐出口、48…第2吸込口、50…第3吐出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカスケードポンプを、前記カスケードポンプの回転羽根の回転軸に沿って積層し、積層した順に前記カスケードポンプの吸込口と吐出口とを連結させるとともに、前記回転軸周りに前記吸込口と前記吐出口を均等に配置したことを特徴とする多段カスケードポンプ。
【請求項2】
複数のカスケードポンプを、前記カスケードポンプの回転羽根の回転軸に沿って積層し、積層した順に前記カスケードポンプの吸込口と吐出口とを連結させるとともに、前記回転軸を中心とした前記吸込口と前記吐出口が形成する挟み角の数値と前記カスケードポンプの積層数との積を360とし、かつ前記回転軸周りに前記吸込口と前記吐出口を均等に配置したことを特徴とする多段カスケードポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多段カスケードポンプを、前記回転軸に沿って整数倍の段数に積層し、かつ積層した前記カスケードポンプの前記吸込口と前記吐出口とを前記回転軸周りに均等に配置したことを特徴とする多段カスケードポンプ。
【請求項4】
複数のカスケードポンプを、前記カスケードポンプの回転羽根の回転軸に沿って積層し、積層した順に前記カスケードポンプの吸込口と吐出口とを連結させるとともに、前記積層した前記カスケードポンプを整数倍の段数に積層し、
前記吸込口と前記吐出口が形成する前記回転軸を中心とした挟み角の数値と、前記カスケードポンプの積層数と、前記積層した前記カスケードポンプの積層段数との積を360とし、かつ前記回転軸周りに前記吸込口と前記吐出口を均等に配置したことを特徴とする多段カスケードポンプ。
【請求項5】
前記多段カスケードポンプのポンプ本体部が、金属製、もしくは高剛性樹脂製であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多段カスケードポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2303(P2013−2303A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131374(P2011−131374)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【Fターム(参考)】