説明

多段圧縮機の故障検出及び保護

【課題】圧縮機の部品の故障を早期に検出し、早い段階で故障を識別する。
【解決手段】システム10は、回転機械16,20の動翼の複数の段の間の段間位置でのパラメータを検知するように構成された段間センサ18,22を含む。システム10はまた、検知された段間パラメータに少なくとも部分的に基づいて、回転機械の故障を識別するように構成された制御装置14も含む。システム10は、多段圧縮機16の段の間の段間圧力測定18を取得するように構成された制御装置14を含む。制御装置14はまた、段間圧力測定18に少なくとも部分的に基づいて、多段圧縮機16の実際の損傷を識別するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の故障検出及び保護に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、多様な産業及びシステムにおいて、空気などの気体を圧縮するために使用される。例えば、ガスタービンエンジンは一般に、燃焼及び冷却のために、圧縮された空気を供給する圧縮機を含む。自明であろうが、圧縮機の正常性は、機械の性能、効率、ダウンタイム及び全体的な可用性に影響を及ぼす。圧縮機の部品(例えば、ブレード、シール等)が摩耗又は破損した場合、圧縮機は、目的のシステム(例えば、ガスタービンエンジン)に対して気体(例えば、空気)の十分な圧縮を行えないことがある。さらに、圧縮機の部品の破損は、目的のシステム(例えば、ガスタービンエンジン)に損傷を引き起こすことがあり、それによりダウンタイムが発生し、補修費用が増加する。これは、ガスタービンエンジンの連続的な運転を利用する発電所では、特に問題となる。その結果、圧縮機及び下流のガスタービンエンジン部品を損傷から保護するために、早い段階で故障を識別することが望ましい。残念なことに、既存のシステムは、圧縮機の故障を早期に検出するのに特に適しているわけではない。このことは、発電所のガスタービンエンジンで使用されるような多段圧縮機に特に当てはまる。例えば、既存のシステムでは、このような多段圧縮機の段間領域をモニタしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7409854号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明の幾つかの実施形態について要約する。これらの実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明の可能な形態を簡単にまとめたものである。実際、本発明は、以下に記載する実施形態と同様のものだけでなく、異なる様々な実施形態を包含する。
【0005】
第1の実施形態では、システムは、回転機械の動翼の複数の段の間の段間位置でのパラメータを検知するように構成された段間センサを含む。システムはまた、検知された段間パラメータに少なくとも部分的に基づいて、回転機械の故障を識別するように構成された制御装置も含む。
【0006】
第2の実施形態では、システムは、多段圧縮機の段の間の段間圧力測定を取得するように構成された制御装置を含む。制御装置はまた、少なくとも部分的に段間圧力測定に基づいて、多段圧縮機の実際の損傷を識別するように構成されている。
【0007】
第3の実施形態では、システムは、タービンエンジンを含む。タービンエンジンは、圧縮機、燃焼器及びタービンエキスパンダーを含む。圧縮機は、複数の圧縮機段を含む。システムはまた、タービンエンジン内の段間位置で複数のパラメータを測定するように構成された複数の段間センサを含む。システムはさらに、複数のパラメータに少なくとも部分的に基づいて、圧縮機段の1つにおける破損を識別するように構成された制御装置を含む。制御装置はまた、破損を示す警告を出力するか、破損に応答してタービンエンジンの運転パラメータを自動的に調整するか、破損に応答してタービンエンジンを自動的に停止するか、或いはこれらの組合せを実施するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ガスタービンエンジンの多段圧縮機の故障を識別するシステムを有する、ガスタービンエンジンの例示的な実施形態のブロック図である。
【図2】図1のガスタービンエンジンの側面断面図である。
【図3】多段圧縮機の故障を識別するための複数の段間センサを有する、図1及び2のガスタービンエンジンの多段圧縮機の例示的な実施形態の側面断面図である。
【図4】5つの個々の段を備えた多段圧縮機の例示的な実施形態の、正常及び異常な圧力プロファイルのグラフである。
【図5】当初の正常状態、及び圧縮機ハードウェアの故障によって悪化する際の、例示的な20段圧縮機の総合的な圧力増加と比較した、例示的な20段圧縮機の最初の15段の圧力増加割合のグラフである。
【図6】段間圧力増加比率を使用して多段圧縮機の故障を識別するための方法の例示的な実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点については、図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができるであろう。図面を通して、同様の部材には同様の符号を付した。
【0010】
以下、本発明の1以上の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態を簡潔に説明するため、現実の実施に際してのあらゆる特徴について本明細書に記載しないこともある。実施化に向けての開発に際して、あらゆるエンジニアリング又は設計プロジェクトの場合と同様に、実施毎に異なる開発者の特定の目標(システム及び業務に関連した制約に従うことなど)を達成すべく、実施に特有の多くの決定を行う必要があることは明らかであろう。さらに、かかる開発努力は複雑で時間を要することもあるが、本明細書の開示内容に接した当業者にとっては日常的な設計、組立及び製造にすぎないことも明らかである。
【0011】
本発明の様々な実施形態の構成要素について紹介する際、単数形で記載したものは、その構成要素が1以上存在することを意味する。「含む」、「備える」及び「有する」という用語は内包的なものであり、記載した構成要素以外の追加の要素が存在していてもよいことを意味する。作動パラメータ及び/又は環境条件の例は、開示した実施形態以外のパラメータ/条件を除外するものではない。さらに、本発明の「一実施形態」又は「実施形態」という場合、その実施形態に記載された特徴をもつ別の実施形態が存在することを除外するものではない。
【0012】
開示された実施形態は、多段回転機械内の故障を識別するために、多段回転機械(例えば、圧縮機、タービン等)の複数の段からの段間センサ測定(例えば、圧力、温度、音声、光学等)を使用するためのシステム及び方法を含む。簡略性のために、本明細書で開示される多段回転機械は、主に多段圧縮機について述べる。しかし、自明であろうが、本明細書で開示されるシステム及び方法は、複数の段を含む他のタイプの回転機械の故障を識別するために利用することもできる。
【0013】
正常運転中、多段圧縮機の各段は、作動流体の圧力及び温度を一定の量だけ、徐々に増加させる。多段圧縮機の各段における圧力及び温度の増加量は、速度、入口境界条件(例えば、流量、圧力、温度、組成等)、出口境界条件(例えば、流動抵抗等)及び段効率など、特定の運転条件によることができる。多段圧縮機での圧力及び温度の全体的な増加は、一般に個々の段の圧力及び温度増加の合計となる。したがって、1以上の段が標準より低い働きをする場合、多段圧縮機を出る作動流体の状態(例えば、圧力、温度、等)が影響を受ける。
【0014】
理想的には、多段圧縮機の吐出測定は、予測される性能又は過去の性能からの逸脱を検出できるほど十分に正確である。しかし、多段圧縮機内には数百又は数千の翼があることがあるため、個々の翼の1つの又はいくつかが故障しても、多段圧縮機の全体的な性能は、測定ノイズのレベルを超えて上昇するほど十分に、著しく変化をしないことがある。さらに、多段圧縮機の性能は、運転条件(例えば、案内翼位置、入口温度及び圧力、下流抵抗等)によって著しく異なることがあり、時間の経過とともに悪化することがあり(例えば、付着物、ブレード浸食、間隙の変化等による)、さらに故障検出を複雑にしている。
【0015】
開示される実施形態は、多段圧縮機の故障検出への異なるアプローチをとることによって、これらの困難に取り組む。部品が多段圧縮機内で損傷又は故障したとき、多段圧縮機内の個々の段での圧力及び温度分布も変化する。多段圧縮機の全体的な性能の変化は容易に検出可能でないこともあるが、各段又は段のグループの相対的な性能をより明白にすることができ、したがって、部品の損傷又は故障をより確実に示すことができる。開示される実施形態は、多段圧縮機内の複数の位置(例えば、多段圧縮機の入口及び出口に加えて、1以上の段間位置)でのセンサ測定(例えば、圧力、温度、音声、光学等)を利用する。これらの段間センサ測定が、予測される値から逸脱している場合、段の1つで故障が起きていることを示すことができる。簡略性のために、本明細書で開示される段間センサ測定は、主に圧力センサ測定について述べる。しかし、自明であろうが、本明細書で開示されるシステム及び方法はまた、温度センサ測定、音声センサ測定、光学センサ測定又は多段圧縮機などの多段回転機械内の故障を示すことができる他のタイプのセンサ測定も含む。
【0016】
連続する測定位置間の圧力の増加を、多段圧縮機での全体的な圧力の増加と比較することができ、それにより、圧力増加比率が測定される。これらの測定された圧力増加比率は、一般に多段圧縮機の性能に影響を及ぼすと考えられる、関連するいくつかの運転条件(例えば、シャフトの速度、案内翼位置、入口条件、出口条件等)の関数として扱うことができる。測定された圧力増加比率はまた、モデリング、他の多段圧縮機の測定又は同じ多段圧縮機の過去の測定によって判断された予測圧力増加比率と比較することもできる。測定された圧力増加比率が、予測される圧力増加比率から、あらかじめ定められた量以上に逸脱している場合、アラームの開始、多段圧縮機の停止等の適切な制御応答を開始することができる。
【0017】
或いは、上述したように、ある実施形態では、圧力測定及び圧力増加比率に代えて或いはそれらと共に、温度測定及び温度増加比率を使用することができる。圧力測定又は温度測定のいずれかを使用するかの選択は、測定の不確実性及びそれによって得られる故障検出の感度によることができる。言い換えると、特定の多段圧縮機の圧力増加比率を使用することによってより信頼性の高い故障検出が得られる場合、圧力増加比率が温度増加比率より好ましいことがあり、逆もまた同様である。さらに、ある実施形態では、各々の多段圧縮機セクションの圧力及び温度の両方の増加を、他のそのようなセクションと比較することが、多段圧縮機での全体的な圧力及び/又は温度増加との比較に代えて或いはそれらと共に、有利となることがある。
【0018】
図1は、ガスタービンエンジン12全体での段間測定に少なくとも部分的に基づいて、故障を初期に検出するように構成されている故障検出及び保護システム10の例示的な実施形態のブロック図である。ある実施形態では、故障検出及び保護システム10は、ガスタービンエンジン12の損傷及びダウンタイムが拡大する可能性が減少するように、検出された故障に早期に応答するように構成された制御装置14を含む。故障検出及び保護システム10は、モニタリングシステム18を介して、多段圧縮機16の全体にわたる複数の位置(例えば、入口、出口及び段間)での故障の検知に使用することができる。故障検出及び保護システム10はまた、モニタリングシステム22を介して、多段タービン20の全体にわたる複数の位置(例えば、入口、出口及び段間)での故障の検知に使用することもできる。ある実施形態では、モニタリングシステム18及び22は、単一のモニタリングシステムとして、ともに組合せることができる。以下で詳細に述べるように、段間測定(例えば、圧力、温度、音声、光学、流速、振動等)によって、制御装置14が圧縮機16及びタービン20における故障をより迅速に識別することが可能になり、それにより、損傷及びダウンタイムがより拡大する可能性が減少する。このことは、圧縮機16及びタービン20の段数が多くなると特に有利である。例えば、圧縮機16及びタービン20は、複数の段(例えば、5、10、15、20、25、30又はそれ以上の段)をそれぞれ有することができる。モニタリングシステム18及び22は、各段に配設された1以上のセンサを含むことができる。以下の説明は、主にガスタービンエンジン12との関連において圧縮機16について述べるが、開示される実施形態は、例えば、ガスタービン、蒸気タービン、水力タービン、別の動力源によって駆動される圧縮機等、動翼を有するどのような多段システムでも使用することができる。
【0019】
ある実施形態では、ガスタービンエンジン12は、圧縮された空気を液体又は気体燃料(天然ガス及び/又は水素に富んだ合成ガスなど)と混合することができる。図示するように、複数の燃料ノズル24が燃料供給を取り込み、燃料を空気と混合し、空気/燃料混合物を燃焼器26へと送り込む。空気/燃料混合物は燃焼器26内の室内で燃焼し、それにより、高温の加圧された排気ガスが生成される。燃焼器26は、排気ガスを、タービン20を通って排気出口28へと向かわせる。排気ガスがタービン20を通過すると、ガスによって、1以上のタービン動翼が、ガスタービンエンジン12の軸32に沿ってシャフト30を回転させる。図示するように、シャフト30は、多段圧縮機16を含む、ガスタービンエンジン12の様々な部品に連結されている。以下でより詳細に説明するように、多段圧縮機16は、シャフト30に連結することができる複数の動翼を備えた複数の段を含むことができる。したがって、シャフト30が回転すると、多段圧縮機16内の複数の動翼が回転し、それにより、空気取入口34から多段圧縮機16を通って燃料ノズル24及び/又は燃焼器26へと、空気を圧縮する。シャフト30はまた、車両或いは発電所内の発電機又は航空機のプロペラなどの固定負荷とすることができる、負荷36に連結されている。負荷36は、ガスタービンエンジン12の回転出力によって電力供給されるように構成された適切なデバイスを含むことができる。
【0020】
図2は、図1のガスタービンエンジン12の側面断面図である。図示されているように、ガスタービンエンジン12は、1以上の燃焼器26の内部にある1以上の燃料ノズル24を含む。動作に際しては、空気が空気取入口34を通ってガスタービンエンジン12に入り、空気を多段圧縮機16で加圧することができる。次いで、圧縮された空気を、燃焼器26内で燃焼するために、燃料と混合することができる。例えば、燃料ノズル24は、燃料/空気混合物を、最適な燃焼、排出、燃料消費及び出力に適した比率で、燃焼器26へと噴射することができる。燃焼によって高温の加圧された排気ガスが生成され、次いで、排気ガスはタービン20内の1以上の動翼列38を駆動して、シャフト30を回転させ、したがって多段圧縮機16及び負荷36を回転させる。また、シャフト30の回転によって、多段圧縮機16内の1以上の動翼40が、取入口34で受け取った空気を引き込み、加圧する。
【0021】
ある実施形態では、図1の故障検出及び保護システム10は、圧縮機16の全体にわたる段間位置及びタービン20の全体にわたる段間位置を含む、タービンエンジン12全体にわたる入口、出口及び段間位置で、1以上のパラメータを測定するように構成されている。例えば、故障検出及び保護システム10は、入口44及び/又は出口48の圧縮機センサ42を含むだけでなく、圧縮機入口44、複数の段間圧縮機位置46、及び圧縮機出口48に配設された1以上の圧縮機センサ42を含むことができる。したがって、以下でより詳細に説明するように、圧縮機センサ42は、故障検出の時間及び場所が実質的に改善されるように構成されており、すなわち、より迅速な応答時間及びより正確な故障位置の識別が得られる。他の例では、故障検出及び保護システム10は、入口52及び/又は出口56のタービンセンサ50を含むだけでなく、タービン入口52、複数の段間タービン位置54及びタービン出口56に配設された1以上のタービンセンサ50を含むことができる。したがって、以下でより詳細に説明するように、タービンセンサ50は、故障検出の時間及び場所が実質的に改善されるように構成されており、すなわち、より迅速な応答時間及びより正確な故障位置の識別が得られる。自明であろうが、センサ42及び50は、圧力センサ、温度センサ、振動センサ、音声センサ、光学センサ又はそれらの組合せを含むことができる。これらのセンサ42及び50は、ケーシングの外周の周りの複数の位置、各段の上流及び下流側の複数の軸方向位置等に配置することができる。段間センサ42及び50は、段間センサ42及び50を備えていないシステムと比較して、故障が起きた場合に、応答時間を大幅に改善し、損傷が拡大する可能性が減少するように構成されている。
【0022】
例えば、開示された故障検出及び保護システム10と比較して、センサが圧縮機入口44及びタービン出口56にしか置かれていない場合、故障モニタリングは特に遅くなり、場所に対して応答しない。これらの位置は、センサが容易にアクセス可能であるが、これらの入口44と出口位置56との間にセンサ42及び50がないと、大部分の空間がモニタされない。言い換えると、センサが入口44及び出口56にしか置かれていない場合、変化はタービンエンジン12の全体にわたって平均化され、それにより、圧縮機16又はタービン20のいずれかにおける故障を識別することが困難になる。圧縮機16又はタービン20の1つの特定の段で重大な故障があると、その特定の段の温度及び/又は圧力に変化が起きるが、この変化の影響は、入口44及び出口56のセンサのみでは、検出不可能なことがある。同様に、圧縮機16が圧縮機入口44及び圧縮機出口48のセンサのみによってモニタされる場合、故障は、より局所的に測定可能な影響と比較して、測定可能な出口条件の変動がより小さいため、容易に検出できないことがある。さらに、タービン入口52及びタービン出口56のセンサのみによってタービン20がモニタされる場合、複数の段にわたって平均化され、及び/又は例えば選択された出力を維持するように補償制御動作が行われるために、故障を容易に検出することができない。
【0023】
回転ターボ機械における故障検出の一般的な手段は、軸受け58、60における振動モニタリングである。この手段は、動翼が損傷又は故障した場合に回転子に不均衡が生じることを利用する。故障した部品が静翼である場合、遊離した部品が下流の動翼を検出可能な不均衡を引き起こすほど十分に損傷しない限り、一般に検出可能な不均衡は生じない。同様に、機械が非常に大きく、故障した動翼が非常に小さい場合、やはりこの手段では問題が検出不可能なことがある。したがって、小さい問題であっても、一般に、制御部又はオペレータによって保護動作が必要であると気付く前に、(例えば、下流部品への付随的損傷によって)軸受け振動を通して検出可能な大きさにならざるを得ない。さらに、この手段によって故障が検出される場合、振動の特徴から得られる診断情報は、故障の位置及びその進行履歴について、大雑把なガイダンスしか提供することができない。一般に、限られた位置(すなわち、段間ではない位置)での上記の測定は故障を早期に十分に検出せず、それにより、重大な損傷が起きる前に是正措置をとることのできる能力が低くなる。
【0024】
また、故障検出及び保護システム10の開示された実施形態では、圧縮機16、タービン20又はそれらの組合せの1以上の段間位置でセンサを利用することによって、故障検出の時間及び場所の感度が高くなる。以下の説明では、故障検出及び保護システム10を、圧縮機16に関して説明するが、故障検出及び保護システム10はタービン20及び他の多段システムにも同じく適応可能であることが理解されよう。様々な段間位置46及び54で、センサ42及び50は、圧力、温度、振動、音声又はそれらの組合せをモニタすることができる。これらの測定されたパラメータは、他の段(すなわち、上流及び/又は下流)、入口44及び52、出口48及び56又はそれらの組合せと比較することができる。例えば、開示された実施形態は、故障を示す異常を識別するために、ベースライン比率をリアルタイム比率と比較することができる。比率は、段間パラメータ対入口パラメータ、段間パラメータ対出口パラメータ、第1段間パラメータ対第2段間パラメータ又はそれらの組合せを含むことができる。また、パラメータは、温度、圧力、振動、音声又はそれらの組合せを含むことができる。
【0025】
図3は、図1及び2のガスタービンエンジン12の多段圧縮機16の、例示的な実施形態の側面断面図である。図示されているように、多段圧縮機16は、多段圧縮機16の長さに沿って置かれた複数のセンサを含むことができる。特に、多段圧縮機16の図示された実施形態は、多段圧縮機16の入口44付近の入口センサ62及び多段圧縮機16の出口48付近の出口センサ64を含む。さらに、多段圧縮機16は、多段圧縮機16の段の間に置かれた1以上の段間センサ66を含む。段間センサ66は、ケーシングの外周の周りの複数の位置、各段の上流及び下流側の複数の軸方向位置等に配置することができる。段間センサ66の正確な数は、実施例ごとに異なることができる。例えば、ある実施形態では、多段圧縮機16は、多段圧縮機16のすべての段の間に1以上の段間センサ66を含むことができる。しかし、他の実施形態では、いくつかの段は、段間センサ66を含まないことができる。段間センサ66の数は、多段圧縮機16に固有の条件にしたがって決めることができる。例えば、ある段は、センサを置くのに適切な位置を含まないことができる。さらに、場合によっては、費用の制限によって使用される段間センサ66の数が限られることがある。
【0026】
上述のように、ある実施形態では、入口センサ62、出口センサ64、及び複数の段間センサ66は、圧力センサ、温度センサ、振動センサ、音声センサ、光学センサ、流速センサ等を含むことができる。特定の段内に故障又は他のタイプの損傷がある場合、損傷を受けている段における圧力及び温度の上昇が、大きく影響を受けることがある。実際、故障が十分に大きい場合、損傷を受けている段における圧力及び温度の上昇は、ゼロ又は少なくとも無視できる大きさにまで減少することがある。例えば、圧力低下及び温度上昇は、予測値の10、20、30、40、50、60、70、80、90%以上又は予測値の100%、変化することがある。したがって、段間圧力及び温度をモニタすることによって、多段圧縮機16内の故障をより容易に検出することができる。言い換えると、故障が1つの段又は数段で起きたために多段圧縮機16全体の性能の変化が容易に検出可能でない場合であっても、各段又は段のグループの相対的性能がより明白になり、部品の損傷又は故障がより確実に示される。
【0027】
圧力及び温度測定は、多段圧縮機16内の故障の検出に使用することのできる唯一のタイプの段間測定ではない。例えば、ある実施形態では、段間センサ66に音声センサを使用することができる。多段圧縮機16の個々の段内の音声特徴を使用して、故障を検出することもできる。さらに、他の実施形態では、段間センサ66に光学センサを使用することもできる。光学センサによって検出された光の変化によって、多段圧縮機16内の故障を示すことができる、多段圧縮機16を流れる作動流体の流れの変化を示すことができる。さらに、多段圧縮機16内の故障を示すことのできる、どのようなタイプのセンサ(例えば、振動センサ、流速センサ等)を使用することもできる。
【0028】
図4は、5つの個々の段を備えた多段圧縮機16の例示的な実施形態の圧力プロファイルのグラフである。図示されたグラフは、正常運転中の第1の圧力プロファイル68及び多段圧縮機16の第3段が故障中の第2の圧力プロファイル70を表す。図示されているように、正常状態では、第1の圧力プロファイル68は、個々の段での圧力増加が比較的一定となることができる。しかし、この正常な圧力上昇プロファイルは、機械に固有のものであることに注意されたい。例えば、正常運転状態で、ある個々の段は、他の段より大きい圧力増加を生じさせることができる。ともかく、多段圧縮機16での総合的な圧力増加は、5つの図示された段での圧力増加の合計と等しくなることができる。
【0029】
図示されているように、多段圧縮機16の第3段に故障が起きたというシナリオでは、多段圧縮機16の第3段での圧力増加が大幅に減少することがある。他の4つの段は、第3段での圧力の損失を、ある程度まで補償することができる。例えば、第1段及び第2段での圧力増加は、第1の圧力プロファイル68(例えば、正常運転)から第2の圧力プロファイル70(第3段が故障している)へ増加することが示されている。さらに、第4段及び第5段での圧力増加もまた、第1の圧力プロファイル68(例えば、正常運転)から第2の圧力プロファイル70(第3段が故障している)へと増加することが示されている。
【0030】
ある実施形態では、多段圧縮機16の各段での圧力増加を、多段圧縮機16での全体的な圧力増加と比較することができる。例えば、正常状態における多段圧縮機16が図4に示されていると想定すると(第1の圧力プロファイル68)、多段圧縮機16の個々の段は、全く同じ量の圧力増加を生じさせる。これらの正常状態では、個々の段はそれぞれ、多段圧縮機16の総合的な圧力増加の20%を生じさせる。しかし、図4に図示されるように、第3段で部品の故障又は損傷が起きているシナリオであると想定すると(第2の圧力プロファイル70)、第3段での圧力増加はゼロにまで減少している一方で、他の4つの段が第3段での圧力増加の減少を完全に補償している。この故障シナリオでは、第3段が多段圧縮機16の総合的な圧力増加の0%を生じさせる一方、他の4つの段はそれぞれ、多段圧縮機16の総合的な圧力増加の25%を生じさせる。多段圧縮機16の個々の段のそれぞれでの圧力増加のこれらの変化をモニタすることによって、部品の故障又は損傷をより迅速に検出し、より正確に故障の場所を特定することが可能になる(この例では多段圧縮機16の第3段)。例えば、特定の段又は少なくとも少数の段内で、部品の損傷又は故障の場所を特定することができる。この例では、実際の機械では一般的であるように、圧縮機の出口圧力は故障による影響をほぼ受けておらず、したがって出口圧力はそれ自体で、又は入口圧力と組合せても、故障を示していないことにも注意されたい。
【0031】
多段圧縮機16の各段での圧力増加を多段圧縮機16での全体的な圧力増加と比較することに加えて、多段圧縮機16の各段での圧力増加を、正常運転中の各段での圧力増加と比較することができ、又は多段圧縮機16の他の段の圧力増加と比較することができる。この方法によって、測定された変化を拡大することができ、部品の故障又は損傷がより容易に検出可能になる。例えば、図4に示すように、多段圧縮機16の第3段は、正常運転中(第1の圧力プロファイル68)、多段圧縮機16の総合的な圧力増加の20%を生じさせることができる。しかし、第3段の部品が故障又は損傷中(第2の圧力プロファイル70)、第3段は、多段圧縮機16の総合的な圧力増加の0%を生じさせることがある。したがって、第3段の部品が故障又は損傷中、第3段によって生じる圧力増加は、図示された例では、100%減少することができる。反対に、図4に示すように、多段圧縮機16の他の4つの段もまた、正常運転中(第1の圧力プロファイル68)、多段圧縮機16の総合的な圧力増加の20%を生じさせることができる。しかし、第3段の部品が故障又は損傷中(第2の圧力プロファイル70)、他の4つの段は、多段圧縮機16の総合的な圧力増加の25%を生じさせることができる。したがって、第3段の部品が故障又は損傷中、他の4つの段によって生じる圧力増加は、図示された例では、25%増加することができる(例えば、(25%〜20%)を20%で割る)。
【0032】
多段圧縮機16の個々の段での圧力増加を測定しモニタすることに加えて、多段圧縮機16の他のセクションでの圧力増加を測定しモニタすることもできる。セクションは、多段圧縮機16の複数の個々の段を含むことができる。例えば、図4に示す例では、多段圧縮機16の第1のセクションは、多段圧縮機16の第1、第2及び第3の段を含むことができ、多段圧縮機16の第2のセクションは、多段圧縮機16の第4及び第5の段を含むことができる。実際、段のどのような組合せも、多段圧縮機16内の故障を検出するためのセクションとして使用することができる。
【0033】
上述したように、図4に示す第1の圧力プロファイル68は、多段圧縮機16の正常運転状態を表す。第1の圧力プロファイル68は、多段圧縮機16の複数の段での性能の適切な表現を使用して、測定することができる。例えば、ある実施形態では、多段圧縮機16の予測される圧力プロファイルは、多段圧縮機16の過去の性能に基づいて測定することができる。他の実施形態では、多段圧縮機16の予測される圧力プロファイルは、予測モデルを使用して測定することができる。さらに他の実施形態では、多段圧縮機16の予測される圧力プロファイルは、過去の性能、予測モデル、及び使用されている特定の多段圧縮機16又は別の同程度の多段圧縮機16のいずれかに関して実証又は計算された他の方法の組合せを組み込むことができる。さらに、多段圧縮機16の予測される圧力プロファイルは、一般に性能に影響を及ぼすと予測される、多段圧縮機16の関連する運転条件の関数とすることができる。例えば、ある実施形態では、予測される圧力プロファイルは、シャフトの速度、案内翼位置、入口条件、出口条件等の関数とすることができる。ともかく、予測される圧力プロファイルは、(例えば、段間センサ66によって検知される)段間パラメータと比較することのできるベースラインということができる。
【0034】
特定の段又は段のセクションの圧力増加比率が、段又は段のセクションの予測される圧力増加比率から、あらかじめ定められた量以上に逸脱している(例えば、増加又は減少)と判断されると、適切な制御応答を開始することができる。例えば、ある環境では、適切な制御応答は、圧力増加比率が、予測される圧力増加比率からあらかじめ定められた量以上に逸脱していることを多段圧縮機16のオペレータに警告することとすることができる。例えば、予測される圧力増加比率からの逸脱が少量に過ぎないとき、又は逸脱が短期間に起きただけであるときも、オペレータに警告することができる。警告は、音声警告(例えば、ビープ音)、振動、光(例えば、発光ダイオードから)、表示メッセージ(例えば、表示スクリーンに)、電子メールメッセージ、テキストメッセージ等を含むことができる。しかし、予測される圧力増加比率からの逸脱が、より大きい値になる、又は長期間にわたって連続して起きると、多段圧縮機16の運転パラメータは、自動的に調整することができる。例えば、ある環境では、多段圧縮機16は、予測される圧力増加比率からの逸脱に応答して、停止することができる。
【0035】
多段圧縮機16内の段数が増加すると、圧力増加比率の比較を使用する故障検出の感度は、幾分低下することがある。例えば、図4には5つの段のみを有すると図示されているが、多段圧縮機16は、より多くの段を含むことができる。例えば、ある実施形態では、多段圧縮機16は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30又はそれ以上の段を含むことができる。図4に示した例では、正常運転中(例えば、第1の圧力プロファイル68)、個々の段が多段圧縮機16の総合的な圧力増加の約20%を生じさせる。しかし、例えば、30段を有する多段圧縮機16では、正常運転中(例えば、第1の圧力プロファイル68)、個々の段によって生じる圧力増加は、多段圧縮機16の総合的な圧力増加のわずかに3%のオーダとすることができる。さらに、図4に示された例は、第3段の部品が故障又は損傷中(例えば、第2の圧力プロファイル70)、第3段での圧力増加はゼロ又は少なくとも無視できる大きさにまで減少することを想定している。しかし、実際には、多段圧縮機16の段内で部品が故障又は損傷している場合であっても、影響を受ける段は、実際は、ある程度の量の圧力増加を生成することは依然として可能である。これらの両方の理由から、より多くの段数を有する多段圧縮機16では、圧力増加比率の比較を使用して多段圧縮機16内で故障を検出する能力は、モニタリングの範囲及び感度によって決まる。
【0036】
例えば、図5は、例示的な20段圧縮機16の総合的な圧力増加と比較した、例示的な20段圧縮機16の最初の15段の圧力増加割合のグラフである。20段圧縮機16は、多段圧縮機16内の故障の検出に使用される感度の程度を例示するために、単に多段圧縮機16の例示的な実施形態としたに過ぎない。図示されているように、圧力増加比率72(例えば、例示的な20段圧縮機16の総合的な圧力増加に対する、最初の15段での圧力増加)は、例示的な20段圧縮機16の段の1つが故障中、4つの個別の運転段階を経験することができる。例えば、時間tでは、例示的な20段圧縮機16は、定常状態(例えば、故障が起きる前、及び明らかな問題がない状態)に達しているものとすることができる。図示されているように、圧力増加比率72は、約74%のほぼ定常状態値に達しているものとすることができる。しかし、時間tでは、圧力増加比率72の初期の逸脱を検出することができる。図示されているように、圧力増加比率72は新しい定常状態値に達することができ、その増加は、わずかに1%のオーダとすることができる(例えば、約74%から約75%)。しかし、以前の定常状態値からのそのような急な増加は、例示的な20段圧縮機16内で故障が起きていることを示すことができる。より詳細には、1〜15段で生じる圧力増加が増加しているということは、1〜15段の下流(例えば、16〜20段)で故障が起きていることを示すことができる。次に、時間tでは、圧力増加比率72の漸進的な悪化が見られる(例えば、約75%から約76%へ漸増)。次いで、時間tでは、悪化の最終段階によって、急激に増加し(例えば、約76%から約83%)、時間tのほぼ100%に向かって急に進行することがある。この最終的な悪化期間に、例示的な20段圧縮機16への過度の損傷のほとんどが起きることがある。
【0037】
したがって、図5に示すように、故障が起きたとき、(例えば、t後に)損傷が過度になる前に、実質的にリアルタイムで、又は迅速に応答して故障を検出するためには、悪化の最初の数段階(例えば、時間tから時間tの間)を検出する能力が重要である。ある実施形態では、実質的にリアルタイムで故障を検出することは、10、20、30、40、50又は60秒未満の時間内に故障を検出することを含むことができる。ある実施形態では、迅速に応答して故障を検出することは、5、10、15又は20分未満の時間内に故障を検出することを含むことができる。故障を検出することができる時間の長さは、特定の多段圧縮機16の運転条件及び部品の故障状態によることができる。例えば、図5に示すように、多段圧縮機16がより多くの数の段を含むとき、圧力増加比率72では比較的少ない増加量を検出可能とすることができる。したがって、多段圧縮機16がより少ない段を含むとき、又はより深くモニタされるとき、故障を検出するための時間は、より長くなることができる。
【0038】
図6は、段間圧力増加比率を使用して、多段圧縮機16の故障を識別する方法74の例示的な実施形態である。段階76では、多段圧縮機16の段の間で1以上の段間パラメータを検知することができる。上述したように、検知される段間パラメータは、多段圧縮機16内の故障を識別するためのどのような適切なパラメータとすることもできる。例えば、ある実施形態では、検知される段間パラメータは、段間圧力とすることができ、又はより詳細には、段間圧力センサによって検知される段間圧力増加とすることができる。他の実施形態では、検知される段間パラメータは、段間温度とすることができ、又はより詳細には、段間温度センサによって検知される段間温度増加とすることができる。さらに、他のタイプの段間センサを利用することもできる。例えば、多段圧縮機16内の故障を示す音声パラメータを検知するために、段間音声センサを利用することができる。さらに、やはり多段圧縮機16内の故障を示す光学パラメータを検知するために、段間光学センサを使用することもできる。さらに、多段圧縮機16内の故障を示すどのようなタイプの段間センサ(例えば、振動センサ、流速センサ等)を使用することもできる。
【0039】
段階78では、検知された段間パラメータに少なくとも部分的に基づいて、多段圧縮機16の故障を識別することができる。識別される故障は、多段圧縮機16内のいくつかの異なるタイプの問題を含むことができる。例えば、故障は、多段圧縮機16内の部品の1つの実際の故障(例えば、破損又は他の物理的及び/又は構造的故障)を含むことができる。しかし、故障は、他のタイプの損傷(例えば、ブレードの不均衡及び浸食、間隙の変化による許容できない摩擦等)を含むこともできる。上述したように、故障の識別は、(例えば、予測モデルによって生成された)予測値、過去の値(例えば、同じ多段圧縮機16又は別の同程度の多段圧縮機16の以前の運転データ)又はそれらの組合せに対する、検知された段間パラメータの比較を含むことができる。
【0040】
段階80では、故障が識別されると、故障を示す警告を適宜出力することができる。例えば、警告は、音声警告(例えば、ビープ音)、振動、光(例えば、発光ダイオードから)、表示メッセージ(例えば、表示スクリーンに)、電子メールメッセージ、テキストメッセージ等を含むことができる。さらに、段階82では、故障が識別されると、多段圧縮機16の運転パラメータを故障に応答して適宜調整することができる。ある状況では、多段圧縮機16の運転パラメータの調節を、故障に応答して自動的に実行することができる。しかし、他の状況では、多段圧縮機16の運転パラメータの調節を、多段圧縮機16のオペレータが手動で実行することができる。
【0041】
多段圧縮機16の運転パラメータの調節は、最小限の調整(例えば、多段圧縮機16の運転速度又は負荷を低減する)から、より大きな調整(例えば、多段圧縮機16を停止する)まで、様々とすることもできる。実行される調整の量は、例えば、段間パラメータの予測値からの逸脱の程度によることができる。例えば、検知された段間パラメータの予測値からの逸脱が、第1の低閾値より高く第2の高閾値より低い場合、多段圧縮機16の運転速度又は負荷を低減することができる。しかし、検知された段間パラメータの予測値からの逸脱が、第1の低閾値及び第2の高閾値の両方より高い場合、多段圧縮機16を完全に停止することができる。
【0042】
さらに、ある実施形態では、故障の識別と警告の出力又は多段圧縮機16の運転パラメータの調整との間に、時間遅延を設けることができる。例えば、ある実施形態では、故障を識別した検知された段間パラメータの逸脱が単に統計上の異常ではないことを確認するために、5、10、15又は20分の時間遅延を使用することができる。他の実施形態では、時間遅延を使用しないこともできる。時間遅延を使用しないことは、実質的にリアルタイムで適切な応答を可能にするために有利である。時間遅延に加えて、ある実施形態では、多段圧縮機16の運転パラメータを調整する前に複数の警告を出力することができる。複数の警告を出力することによって、多段圧縮機16の運転パラメータを自動又は手動で調整する前に、さらなる分析を実行することができる。
【0043】
開示された実施形態の技術的効果は、多段圧縮機16の段の間で検知された段間パラメータから判断することができる、圧力増加比率を使用して、多段圧縮機16内の故障を識別するためのシステム及び方法を提供することを含む。ある実施形態では、検知された段間パラメータに少なくとも部分的に基づいて多段圧縮機16内の故障を識別するため、故障を示す警告を出力するため、及び故障に応答して多段圧縮機16の運転パラメータを調整するために、図6に示された方法74を、検知された段間パラメータを取得する(例えば、受信する)ように構成された制御装置14によって実行することができる。制御装置14は、ある実施形態では、検知された段間パラメータに少なくとも部分的に基づいて多段圧縮機16内の故障を識別するため、故障を示す警告を出力するため、及び故障に応答して多段圧縮機16の運転パラメータを調整するために、検知された段間パラメータを取得する(例えば、受信する)ように特に構成された物理的計算デバイスとすることができる。より詳細には、制御装置14は、検知された段間パラメータを受信するため、警告を出力するため、及び多段圧縮機16の運転パラメータを調整するように信号を送信するための、入力/出力(I/O)デバイスを含むことができる。さらに、制御装置14は、記憶デバイス及び検知された段間パラメータに少なくとも部分的に基づいて故障を識別するための符号化された命令を含む機械読取可能な媒体を含むことができる。例えば、命令は、検知された段間パラメータを、予測値、過去の値又はそれらの組合せと比較するために、機械読取可能な符号を含むことができる。したがって、制御装置14は、過去の値を記録するための記録媒体等を含むこともできる。
【0044】
本明細書で開示された実施形態は、多段圧縮機16の個々の段の器具、及び問題の発生時又はその付近で、多段圧縮機16が過度に損傷する前に制御装置14が警告を発行し、及び/又は多段圧縮機16の運転パラメータを調整することができるように、多段圧縮機16の異常行動を検出するための関連する制御方法を提供する。開示された実施形態は、多段圧縮機16の段が損傷を受けると段の性能が低下するという事実を利用している。性能の低下は、損傷した段から他の損傷していない段への圧縮率の変化として現れることができる。多段圧縮機16内の圧力分布においてこの変化を検出することができる。故障検出のための圧力増加比率を使用することによって、より改善された多段圧縮機16の劣化の評価をすることができ、それにより、多段圧縮機16への望まない損傷に関連するコスト及びダウンタイムが低減される。本明細書で開示されたシステム及び方法は、新しいガスタービンエンジン12に適用することができ、又は既存のガスタービンエンジン12の器具及び制御システムの強化として改良可能とすることができる。
【0045】
本明細書は、ベストモードを含めて、本発明を開示するために、並びにまた、当業者が、任意のデバイス又はシステムを作成及び使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、本発明を実施できるようにするために、例を使用している。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲に記載された文字通りの同じ構成要素を有する場合、又は特許請求の範囲に記載された文字通りの要素とごくわずかに異なる均等な構成要素を含む場合、本発明の範囲内であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械(16、20)の動翼(38、40)の複数の段の間の段間位置(46、54)でパラメータを検知するように構成された段間センサ(66)と、
少なくとも部分的に検知された段間パラメータに基づいて回転機械(16、20)の故障を識別するように構成された制御装置(14)と
を備えるシステム。
【請求項2】
段間センサ(66)が圧力センサを含み、制御装置(14)が回転機械(16、20)の1以上の段に関連する圧力の異常変化を識別するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
制御装置(14)が、パラメータを、予測値、過去の値又はそれらの組合せに対して比較するように構成されている、請求項1又は請求項2記載のシステム。
【請求項4】
制御装置(14)が、パラメータのベースライン比率をリアルタイム比率に対して、段間位置(46、54)対異なる測定位置で比較するように構成されている、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
パラメータが圧力、温度、振動、音声又はそれらの組合せを含み、異なる測定位置が入口位置(44、52)、出口位置(48、56)又は異なる段間測定位置を含む、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
回転機械(16、20)を含み、回転機械(16、20)が、複数の動翼(38、40)を有する、圧縮機(16)、タービン(20)又はそれらの組合せを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
制御装置(14)が、故障を示す警告を出力するように構成されている、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
制御装置(14)が、故障に応答して、回転機械(16、20)の運転パラメータを調整するように構成されている、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
制御装置(14)が、故障に応答して、回転機械(16、20)を自動的に停止するように構成されている、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
圧縮機(16)の動翼(40)の複数の段の間の段間位置(46)に配設された複数の段間センサ(66)を有するタービンエンジン(12)を含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−261459(P2010−261459A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106071(P2010−106071)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】