説明

多段変速遊星歯車列

【課題】前進8段の多段変速遊星歯車列において、動力伝達効率を上げて燃費をよくする。
【解決手段】入力軸10と出力軸12と、第1ピニオン24およびこれと噛み合ったフロントサンギヤ20a、リアサンギヤ20bを有する第1遊星歯車組14と、第2遊星歯車組16、第3遊星歯車組18、第4遊星歯車組19とを備え、入力軸10は第1キャリア28と連結されるとともに互いに一体的に連結された第2リングギヤ32および第3サンギヤ40と連結可能であり、出力軸12は第4キャリア58と連結されるとともに第2キャリア38と連結可能であり、フロントサンギヤ20aは静止部に固定可能であり、第3リングギヤ42は静止部に固定可能であり、第2遊星歯車組16を一体にするクラッチ66を備え、リアサンギヤ20bと第5サンギヤ50を連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用自動変速機に用いる、多段変速が可能な遊星歯車列に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用自動変速機に用いる遊星歯車列としては、車両の燃費、排気特性、加速性能等を向上することを主眼に、前進8段の多段変速が可能なものが実用化されている。
このような多段変速が可能な従来の遊星歯車列としては、1組のダブルピニオン型遊星歯車とラビニヨウ型と呼ばれる遊星歯車群と、6個の摩擦要素からなる多段変速遊星歯車列があり、この歯車列は、6個の摩擦要素のうち常に2個の摩擦要素を締結するように切り替えることにより前進8段の変速比を得ている。(特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、上記従来の遊星歯車列は、前進8段の自動車用として好ましい変速比を得るために、2セットのダブルピニオン型遊星歯車を必要とするため、いわゆるシングルピニオン型の遊星歯車と比べて製造コストが高くなるとともに、歯車の噛み合いが多いため動力伝達効率が悪いという問題がある一方、6個の摩擦要素のうち常に4個が遊転しているため、遊転している摩擦要素のドラッグトルクが大きくなり、前述の動力伝達効率が悪いという問題と相まって、自動車の燃費が悪いとともに発熱が多いという問題があった。
【0004】
また、他の方式として、3組シングルピニオン型遊星歯車組と5個の摩擦要素からなる歯車列が提案されており、常に3個の摩擦要素を締結することで前進8段の変速比を得ている。(特許文献2を参照)
しかし、上記提案の歯車列は入力軸と出力軸が平行に配置された構成であり、入力軸と出力軸が同軸上にある後輪駆動車用等の変速機には適さないという問題があった。
【特許文献1】特許第3777929号
【特許文献2】DE 10 2005 014 592 A1(ドイツ国)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、動力伝達効率が悪いダブルピニオン型遊星歯車を2セット必要とするとともに、常に4個の摩擦要素が遊転しているため、燃費が悪いとともに発熱が多い点であることや、後輪駆動車の変速機に適さないことである。
本発明の目的は、シングルピニオン型遊星歯車を用いて、自動車等の車両にとって好ましい変速比を確保しながら、常に遊転している摩擦要素の数を減らして、燃費と発熱を改善することが可能で、かつ後輪駆動車等の変速機に適するように入力軸と出力軸が同軸上にあるようにした多段変速遊星歯車列を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多段遊星歯車列は、
入力軸と、
出力軸と、
入力軸および出力軸と同軸に配置され、
フロントサンギヤと、リアサンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤ、フロントサンギヤおよびリアサンギヤに噛み合った第1ピニオンと、該第1ピニオンを回転自在に軸支する第1キャリアとを有する第1遊星歯車組と、
第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび第2サンギヤに噛み合った第2ピニオンと、該第2ピニオンを回転自在に軸支する第2キャリアとを有する第2遊星歯車組と、
第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび第3サンギヤに噛み合った第3ピニオンと、該第3ピニオンを回転自在に軸支する第3キャリアとを有する第3遊星歯車組と、
第4サンギヤと、第4リングギヤと、該第4リングギヤおよび第4サンギヤに噛み合った第4ピニオンと、該第4ピニオンを回転自在に軸支する第4キャリアとを有する第4遊星歯車組とを備え、
入力軸は第1キャリアと連結されるとともに互いに一体的に連結された第2リングギヤおよび第3サンギヤと連結可能であり、
出力軸は第4キャリアと連結されるとともに第2キャリアと連結可能であり、
フロントサンギヤは静止部に固定可能であり、
第3リングギヤは静止部に固定可能であり、
第2遊星歯車組を一体にするクラッチを備え、
リアサンギヤと第5サンギヤを連結した。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多段変速遊星歯車列は、上記のように構成したため、動力伝達効率の高いシングルピニオン型等を用いて自動車等用の変速機にとって好ましい変速比を得ながら、常に遊転している摩擦要素の数を2個と従来例より2個少なくできるので、燃費と発熱の改善が期待できるとともに、入力軸と出力軸とを同軸上に配置できるので、後輪駆動車等の変速機に適用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に係る多段変速遊星歯車列を、実施例に基づき図とともに説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例1の遊星歯車列を表すスケルトン図である。
図1に示した実施例の多段変速遊星歯車列では、エンジン1からトルクコンバータ2を介して駆動される入力軸10および出力軸12が、エンジン1の出力軸1aと同じ軸上にあり、これと同軸の出力軸12は図示しない駆動輪を駆動する。
【0010】
歯車列を構成する第1遊星歯車組14と第2遊星歯車組16と第3遊星歯車組18と第4遊星歯車組19のうち、第1遊星歯車組14は、フロントサンギヤ20aと、リアサンギヤ20bと、第1リングギヤ22と、該第1リングギヤ22と、フロントサンギヤ20aおよびリアサンギヤ20bに噛み合った複数の第1ピニオン24と、第1ピニオン24を回転自在に軸支する第1キャリア28といった回転メンバーで構成されている。
【0011】
第2遊星歯車組16と第3遊星歯車組18と第4遊星歯車組19とは、いずれも一般的にシングルピニオン型と呼ばれるものであり、それぞれが同じ構成になっている。
すなわち、第2遊星歯車組16は、第2サンギヤ30と、第2リングギヤ32と、第2リングギヤ32および第2サンギヤ30と噛み合った複数の第2ピニオン34と、第2ピニオン34を回転自在に軸支する第2キャリア38といった回転メンバーで構成されている。
【0012】
同様に、第3遊星歯車組18は、第3サンギヤ40、第3リングギヤ42、複数の第3ピニオン44、第3キャリア48といった回転メンバーで構成されており、第4遊星歯車組19は、第4サンギヤ50、第4リングギヤ52、複数の第4ピニオン54、第4キャリア58といった回転メンバーで構成されている。
【0013】
続いて、第1遊星歯車組14と、第2遊星歯車組16と、第3遊星歯車組18と、第4遊星歯車組19の連結関係につき、以下に説明する。
入力軸10は、第1キャリア28と連結されるとともに、第1クラッチ60を介して、互いに連結された第2リングギヤ32および第3サンギヤ40と連結可能である。
【0014】
フロントサンギヤ20aは、第1ブレーキ62により変速機のケース(静止部)64に固定可能である。
第1リングギヤ22は、第2サンギヤ30と連結されるとともに、第2クラッチ66を介して、互いに連結された第2リングギヤ32および第3サンギヤ40と連結可能である。
【0015】
なお、第2クラッチ66を締結すると第2サンギヤ30と第2リングギヤ32が連結されるため、第2遊星歯車組16は一体になる(第2遊星歯車組16の回転メンバーが一体となって回転可能となる)。
第3リングギヤ42は、第2ブレーキ68によりケース64に固定可能である。
第3キャリア48は、第4リングギヤ52と連結されている。
第4サンギヤ50は、リアサンギヤ20bと連結されている。
出力軸12は、第4キャリア58と連結されるとともに、第3クラッチ70を介して第2キャリア38と連結可能である。
【0016】
ここで、前述のようにフロントサンギヤ20aとリアサンギヤ20bとは、第1ピニオン24と噛み合っているので、フロントサンギヤ20aとリアサンギヤ20bの回転速度は常に同じである。
すなわち、第1ブレーキ62によりフロントサンギヤ20aをケース64に固定すると、リアサンギヤ20bも固定され、これと連結された第4サンギヤ50も固定されることになる。
【0017】
つぎに、図1に示した実施例の遊星歯車列の作動を、図2に示した作動表を参考にしながら説明する。
以下の説明では、クラッチやブレーキを摩擦要素と呼ぶ。
図2の作動表において、横方向の欄にはクラッチやブレーキといった摩擦要素が割り当ててあり、C−1は第1クラッチ60を、B−1は第1ブレーキ62をといった具合に、それぞれ表す。なお、これらの記号と各摩擦要素の符号との関係は、図1に記してある。
【0018】
作動表の縦方向の欄には、図示しない操作レバーの「P」「R」「N」「D」「L」などのレンジのうち「Dレンジ」「Rレンジ」を取り上げて、Dレンジは前進第1速(1st)乃至第8速(8th)の、Rレンジは後進の、各変速段を割り当ててある。
図2の作動表中、○印は各締結要素の締結を、空欄は各締結要素の解放を、それぞれ表す。
【0019】
ここで、変速比に関係する各遊星歯車組の歯数比を、リングギヤの歯数(Zr)に対するサンギヤの歯数(Zs)の比(Zs/Zr)をαで表現し、第1遊星歯車組14ではα1、第2遊星歯車組16ではα2、第3遊星歯車組18ではα3、第4遊星歯車組19にあってはα4として説明する。
【0020】
ここでは、各変速比の計算に用いるそれぞれの歯数比を、α1を0.470、α2を0.618、α3を0.380、α4を0.320とした場合について例示する。
なお、変速比は入力軸10の回転速度と出力軸12の回転速度の比(入力軸10の回転速度/出力軸12の回転速度)で表す。
また、計算式を簡素化するため、α1・α2/(1+α2)をAとし、α4(1+A)をBとして説明する。
上記した歯数比においては、Aが0.180に、Bが0.377になる。
【0021】
はじめに、前進第1速(1st)の駆動は、図2に示した作動表に見るように、第1クラッチ60(C−1)、第1ブレーキ62(B−1)、第2ブレーキ68(B−2)の締結で行われる。
以降の変速で第2ブレーキ68の締結は第5速まで維持される。
第1速の変速比は、(1+α3)(1+α4)/α3になり、上記の値に設定した歯数比においては4.794である。
【0022】
つぎに、第2速(2nd)への変速は、第1速での第1クラッチ60の締結を解除して、第2クラッチ66(C−2)を締結することで行われる。
第2速の変速比は、(1+α3)(1+α4)/{α3(1+α1)}になり、上記した歯数比においては3.261である。
【0023】
つぎに、第3速(3rd)への変速は、第2速での第1ブレーキ62の締結を解除して再び第1クラッチ60を締結することで行われる。
変速比は、{1+α4+α3(1+α4)}/{α4+α3(1+α4)}になる。
上記した歯数比においては2.217である。
【0024】
つぎに、第4速(4th)への変速は、第3速での第1クラッチ60の締結を解除して、第3クラッチ70(C−3)を締結することで行われる。
第4速の変速比は、{α1+α4(1+α1)(1+α3)}/{α4(1+α1)(1+α3)}になる。上記した歯数比においては1.724である。
【0025】
つぎに、第5速(5th)への変速は、第4速での第2クラッチ66の締結を解除して、再び第1クラッチ60を締結することで行われる。
第5速の変速比は、{A+B+α3(A+B)}/{B+α3(A+B)}になる。上記した歯数比においては1.305である。
【0026】
つぎに、第6速(6th)への変速は、第5速までにおける第2ブレーキ68の締結を解除して、第2クラッチ66を締結することで行われる。
これにより、遊星歯車列全体が一体になり、入力軸10と出力軸12とは直結されるので、第6速の変速比は歯数比に関係なく1になる。
【0027】
つぎに、第7速(7th)への変速は、第6速における第2クラッチ66の締結を解除して、第1ブレーキ62を締結することで行われる。
これにより、変速比は(1+α2)/(1+α2+α1・α2)になり、上記した歯数比においては0.848の増速である。
【0028】
つぎに、第8速(8th)への変速は、第7速における第1クラッチ60の締結を解除して、再び第2クラッチ66を締結することで行われる。
これにより、変速比は1/(1+α1)になり、上記した歯数比においては0.680の増速である。
【0029】
つぎに、Rレンジの後進の変速は、第3クラッチ70と第1ブレーキ62と第2ブレーキ68を締結することで行われる。
これにより、変速比は(1+α2)/{α2(1+α1)}−(1+α3)(1+α4)/{α2・α3(1+α1)}になって、上記した歯数比においては−3.496である。
【0030】
以上で説明した前進の変速比を並べてみると以下になる。なお、左側の値が変速比であり、右側括弧内の値は当該変速比と1段上位の変速比との間の比(段間比)である。
第1速 4.794 (1.470)
第2速 3.261 (1.471)
第3速 2.217 (1.286)
第4速 1.724 (1.321)
第5速 1.305 (1.305)
第6速 1.000 (1.180)
第7速 0.848 (1.246)
第8速 0.680
【0031】
これを見ると、自動車用の変速比として好ましい段間比の8段の変速比が得られるのが分かる。
【0032】
このように、本発明の実施例1に係る多段遊星歯車列は、前進8段、後進1段において自動車にとって好ましい変速比が得られるとともに、歯車列を上記のように構成したため、4組の遊星歯車組14、16、18、19は、第1遊星歯車組14だけがフロントサンギヤ20aとリアサンギヤ20bを有する構成ではあるが、ダブルピニオン型をまったく用いずにすべて構造が簡単で重量も軽く動力伝達効率の高いシングルピニオン型を用いることができるとともに、常に遊転している摩擦要素の数が2個であり、従来例より2個少ないので遊転している摩擦要素の引きずり抵抗(ドラッグトルク)を減らすことができる。
これらの結果、燃費が優れ、発熱の少ない前進8段の自動変速機を得ることができる。また、入力軸10と出力軸12を同軸上に配置できるので、後輪駆動車等の変速機に適用可能となる。
【実施例2】
【0033】
図3は、本発明における第2の実施例に係る多段遊星歯車列のスケルトン図を表している。
ここでは、実施例1と異なる部分を中心に説明し、実施例1と実質的に同じ部分については同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0034】
実施例2における実施例1との違いは、第1遊星歯車組14の歯数比が2種類になっていることである。
すなわち、ピニオン24が、フロントサンギヤ20aと噛み合う大径部24aと、リアサンギヤ20bが相手噛み合う小径部24bの、2段になっており、第1リングギヤ22は大径部24aと噛み合っている。
【0035】
実施例2の作動は、基本的に実施例1と同様であるが、上記のように第1遊星歯車組14の歯数比が2種類であるので、第1ブレーキ62の締結でフロントサンギヤ20aの回転を止めても、リアサンギヤ20bおよび第4サンギヤ50は、入力軸10の回転に伴ってわずかに回転する。
その他の作動は、作動表も含めて実施例1と同じであるので、詳細な説明を省略するが、変速比の計算式が実施例1と異なる。
【0036】
ここでは、第1リングギヤ22に対するフロントサンギヤ20aの歯数比をα1aとし、第1リングギヤ22に対するリアサンギヤ20bの歯数比をα1bとする。
α1aは実施例1で説明したのと同様に第1リングギヤの歯数をZr1として、フロントサンギヤ20aの歯数をZsaとすると、α1aはZsa/Zr1で単純に算出するが、α1bは以下のように算出する。
第1ピニオン24の大径部24aの歯数をZpa、と小径部の歯数をZpb、リアサンギヤ20bの歯数をZsbとしたとき、α1bは(Zsb・Zpa)/(Zr1・Zpb)になる。
【0037】
ここで、変速比の計算式を示すと以下になる。なお、計算式を簡素化するため、α4{α1a(1+α3)−α1b}/{α1b(1+α3)(1+α4)}をC、α4{(1+α2)+α1b・α2}/α1bをDとする。
第1速:(1+α3)/{α3−C(1+α3)}
第2速:(1+α3)/〔(1+α1a){α3−C(1+α3)}〕
第3速:{1+α4+α3(1+α4)}/{α4+α3(1+α4)}
第4速:{α1b+α4(1+α1b)(1+α3)}/{α4(1+α1b)(1+α3)}
第5速:{α2+D+α3(D+α2)}/{D+α3(D+α2)}
第6速:1
第7速:(1+α2)/{1+α2(1+α1a)}
第8速:1/(1+α1a)
後進:(1+α2)/{α2(1+α1a)}−(1+α3)/〔α2(1+α1a){α3−C(1+α3)}〕
【0038】
それぞれの歯数比を、α1aを0.480、α1bを0.550、α2を0.618、α3を0.350、α4を0.430とした場合について変速比を例示すると以下になる。なお、左側の値が変速比であり、右側括弧内の値は段間比である。
C 0.040
D 1.531
第1速 4.554 (1.480)
第2速 3.077 (1.483)
第3速 2.075 (1.288)
第4速 1.611 (1.268)
第5速 1.271 (1.271)
第6速 1.000 (1.183)
第7速 0.845 (1.251)
第8速 0.676
後進 −3.210
【0039】
これを見ると、実施例1に比べて段間比に違いがあり、自動車用の変速比として好ましい8段の変速比が得られるのが分かる。
【0040】
このように、本発明の実施例2に係る多段遊星歯車列も、前進8段、後進1段において自動車にとって好ましい変速比が得られるとともに、歯車列を上記のように構成したため、4組の遊星歯車組14、16、18、19は、第1遊星歯車組14だけがフロントサンギヤ20aとリアサンギヤ20bを有する構成ではあるが、ダブルピニオン型をまったく用いずにすべて構造が簡単で重量も軽く動力伝達効率の高いシングルピニオン型を用いることができるとともに、常に遊転している摩擦要素の数が2個であり、従来例より2個少ないので遊転している摩擦要素の引きずり抵抗(ドラッグトルク)を減らすことができる。
これらの結果、燃費が優れ、発熱の少ない前進8段の自動変速機を得ることができる。また、入力軸10と出力軸12を同軸上に配置できるので、後輪駆動車等の変速機に適用可能となる。
【0041】
以上説明したように、本発明の各実施例に係る多段遊星歯車列は、自動車にとって好ましい前進8段の変速比が得られ、燃費が優れ、発熱の少ない自動変速機を得ることが可能になる。
【0042】
上記の各実施例では、エンジン1と入力軸10との間にトルクコンバータ2を設けているが、これに代えてフルードカップリングまたは摩擦クラッチを用いてもよいことは言うまでもない。
また、各遊星歯車組および各摩擦要素の配列は、変速機のレイアウトに応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
前進8段の変速比を得るとともに、燃費が優れ、発熱の少ない自動変速機を得ることが可能になるので、燃費が重視される小型乗用車から中型商用車などに幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の多段変速遊星歯車列を示したスケルトン図である。(実施例1)
【図2】実施例1の多段変速遊星歯車列の作動表を示す図である。
【図3】本発明の多段変速遊星歯車列を示したスケルトン図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン
2 トルクコンバータ
10 入力軸
12 出力軸
14 第1遊星歯車組
16 第2遊星歯車組
18 遊星歯車群
18 第3遊星歯車組
19 第4遊星歯車組
20a フロントサンギヤ
20b リアサンギヤ
22 第1リングギヤ
24 第1ピニオン
28 第1キャリア
30 第2サンギヤ
32 第2リングギヤ
34 第2ピニオン
38 第2キャリア
40 第3サンギヤ
42 第3リングギヤ
44 第3ピニオン、アウターピニオン
46 インナーピニオン
48 第3キャリア
50 第4サンギヤ
52 第4リングギヤ
54 第4ピニオン
58 第4キャリア
60 第1クラッチ
62 第1ブレーキ
64 ケース
66 第2クラッチ
68 第2ブレーキ
70 第3クラッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と、
出力軸と、
前記入力軸および前記出力軸と同軸に配置され、
フロントサンギヤと、リアサンギヤと、第1リングギヤと、該第1リングギヤ、前記フロントサンギヤおよび前記リアサンギヤに噛み合った第1ピニオンと、該第1ピニオンを回転自在に軸支する第1キャリアとを有する第1遊星歯車組と、
第2サンギヤと、第2リングギヤと、該第2リングギヤおよび前記第2サンギヤに噛み合った第2ピニオンと、該第2ピニオンを回転自在に軸支する第2キャリアとを有する第2遊星歯車組と、
第3サンギヤと、第3リングギヤと、該第3リングギヤおよび前記第3サンギヤに噛み合った第3ピニオンと、該第3ピニオンを回転自在に軸支する第3キャリアとを有する第3遊星歯車組と、
第4サンギヤと、第4リングギヤと、該第4リングギヤおよび前記第4サンギヤに噛み合った第4ピニオンと、該第4ピニオンを回転自在に軸支する第4キャリアとを有する第4遊星歯車組と、を備え、
前記入力軸は、前記第1キャリアと連結されるとともに互いに一体的に連結された前記第2リングギヤおよび前記第3サンギヤと連結可能であり、
前記出力軸は、前記第4キャリアと連結されるとともに前記第2キャリアと連結可能であり、
前記フロントサンギヤは静止部に固定可能であり、
前記第3リングギヤは静止部に固定可能であり、
前記第2遊星歯車組を一体にするクラッチを備え、
前記リアサンギヤと前記第5サンギヤを連結したことを特徴とする多段変速遊星歯車列。
【請求項2】
前記第1遊星歯車組の、前記第1リングギヤに対する前記フロントサンギヤの歯数比と、前記第1リングギヤに対する前記リアサンギヤの歯数比とが、異なる値であることを特徴とする請求項1に記載の多段変速遊星歯車列。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−299763(P2009−299763A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154080(P2008−154080)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(594008626)協和合金株式会社 (49)
【Fターム(参考)】