説明

多段部品搭載型の水晶発振器

【課題】多段の基板を用いる水晶発振器における当該多段の基板を支える新規な構造を採用し、半田固定やフランジなどの形成を必要としないでも強固に埋設して自立させることでリフロー処理での基板位置ずれを起こさず、各搭載部品の確実な固定の確保、組み付け作業の容易化、全体としての低コスト化を図った多段部品搭載型の水晶発振器を提供する。
【解決手段】メイン基板1とサブ基板2,3を所定間隔で保持する支柱4,5として多角形断面形状をもつ単純な棒状細線を採用し、この支柱4,5を埋設あるいは貫通させる基板側に丸穴41、あるいは貫通丸孔21,31を設け、これらの丸穴あるいは貫通丸孔に支柱を圧入する。丸穴41あるいは貫通丸孔21,31の内径をDとし、前記支柱の前記丸穴あるいは貫通丸孔の内側壁と当接する切断面における径方向外径の最大寸法をdとしたとき、d≧D+ΔDとした(ΔDは丸穴あるいは丸貫通孔を形成する際に許容される内径の公差「±ΔD」のうちの最大公差(+ΔD))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器に係り、特に複数の電子部品を複数段の基板に搭載した多段部品搭載型の水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
実装面積の制限に伴い、水晶振動子と発振回路を構成するICチップや抵抗、容量、インダクタンスなどのディスクリート部品を含む複数の回路部品を共通の基板に搭載した集合部品一体型とも言える水晶発振器が多用されている。その典型例として恒温槽付水晶発振器、電圧制御型水晶発振器、温度補償型水晶発振器などを挙げることができる。ここでは、この恒温槽付発振器を例として説明する。
【0003】
恒温槽付水晶発振器(OCXO)は、水晶振動子の動作温度を高精度に保持して安定発振可能であることから、周波数安定度が高く、ppb(1/10億)領域の周波数偏差の求められる移動通信基地局や放送局設備に多く適用されている。近年、移動通信基地局等にも発振器の小型化が浸透し、例えば熱線を巻回した旧来の恒温熱筒に代えて、チップ抵抗等を発熱素子としたものが実用化されている。
【0004】
水晶振動子とICチップ、およびその他のディスクリート部品を共通の基板に搭載して全体として一つの部品とするものにおいて、搭載部品の数が多く、決められたサイズの共通基板の主面(X−Y面)では搭載床面積不足から全ての部品を搭載することはできなくなる。そのような場合は、共通基板(以下、メイン基板)の主面(X−Y面)の上方(Z方向)に、さらに1枚または2枚あるいは3枚のサブ基板を設け、メイン基板とサブ基板の間に所定の間隔を持たせて保持し、メイン基板とサブ基板のそれぞれの主面に複数の部品を搭載する二階建て、あるいは三階建構造等の多段基板構造が採用される。なお、サブ基板をさらに多く積み重ねることも不可能ではないが、Z方向のサイズが大きくなり、低背化の観点からはサブ基板の数は制約される場合もある。
【0005】
恒温槽付水晶発振器では、水晶振動子と、発振出力回路を構成するICチップ、出力回路を構成するICチップ、抵抗や容量等のディスクリート部品をメイン基板の一主面上、および第1サブ基板および第2サブ基板の一主面上及び/又は他主面上に、発熱量や熱移動などを考慮して最適配置する。各回路素子やディスクリート部品の搭載後、帽子状の金属カバーの外縁をメイン基板の外周に固着し、封止して製品化される。この発振器に用いられる水晶振動子は、例えばATカットやSCカットとした水晶片を用いる。そして、いずれのカットの場合でも、常温25℃以上の高温側となる約80℃〜100℃を極値とし、温度よって振動周波数が変化する周波数温度特性を有する。この周波数温度特性は温度に対して弧を描くことを利用し、高温域の所定温度で温度傾斜がゼロになることを利用して振動周波数を安定化するものである。この所定温度を一定に保持する手段を備えたのが恒温層付水晶発振器である。この種の多部品搭載技術に関する従来技術を開示したものとしては、特許文献1―4を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−341191号公報
【特許文献2】特開2010−154227号公報
【特許文献3】特開2005−223395号公報
【特許文献4】特開2008−28212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1−3に記載された複数基板を用いる回路素子やディスクリート部品の多部品搭載構造では、メイン基板とサブ基板とをピンあるいは支柱と称する金属細線を基板に植立して支えている。ピンあるいは支柱(以下、支柱と記す)は、メイン基板とサブ基板の間に所定の間隔を保持する機能を有する。これらの支柱は断面が円形であり、メイン基板あるいはサブ基板の面に支柱を埋設する円形の有底穴(丸穴)あるいは円形の貫通穴(貫通孔)を設け、これらの有底穴あるいは貫通穴に支柱を挿入あるいは貫通させて植立している。ここでは、円形の有底穴を丸穴(ピット)、円形の貫通穴を貫通丸孔(ホール)とも表記する。
【0008】
そして、基板の丸穴の周囲、貫通丸孔の周囲に半田層を設け、この半田層と支柱の間を半田で固定するのが普通である。しかしながら、製造工程におけるICチップやディスクリート部品の半田付けのためのリフロー処理での加熱温度により、基板と支柱を固着している半田が溶融し、あるいは熱膨張による支柱と基板の離脱で基板や部品の脱落が発生したり、製品となった後、客先でのリフロー工程や外部からの衝撃印加や経年変化により、これら基板と支柱の固定がガタついたり、半田固定部分が甘くなって、基板からの支柱の抜けや部品の位置移動により動作不良をもたらす場合がある。
【0009】
特許文献4では、サブ基板との貫通丸孔部分に係止突起を形成した支柱、あるいはメイン基板には穴を設けないで、支柱側の端部をL字に成型して半田により固定することで支柱の抜けによるサブ基板の位置移動を抑制している。
【0010】
また、支柱に鍔状の形状を形成して、基板からの支柱の抜けや位置移動を防止する考えもある。図10は、本願発明の開発途上で考慮された構造を備えた恒温槽付水晶発振器の一例を説明する模式図であり、図10(a)は概略断面図、図10(b)は図10(a)に示した支柱の拡大斜視図である。図10に示した発振器は、二階建て構造を有し、メイン基板1の一主面の上方(発振器の高さZ方向)に棒状の支柱4で支持したサブ基板2を設置している。メイン基板1の一主面には温度制御回路(ICチップ)11、出力回路(ICチップ)13が搭載されている。サブ基板2の一主面には水晶振動子33、抵抗等のディスクリート部品12が搭載され、他主面には温度監理のためのヒータ素子などが搭載されている。
【0011】
サブ基板2をメイン基板1に支えるための支柱4は少なくとも4本設けてある。この例では、支柱4の下端と上端付近にフランジ(鍔)40が形成されている。このフランジ40は支柱4と一体成形されたもので、下端のフランジはメイン基板1の他主面に支柱4が抜け出すのを防止する。これは、メイン基板の丸穴を他主面側に貫通させて貫通丸孔としたものにおいてより効果的である。また、上端付近のフランジはサブ基板2が支柱に沿って脱落するのを防止している。
【0012】
しかしながら、このようなフランジを有する金属細線の成形には余分なプロセスを要し、発振器のコストを押し上げる原因となると共に、この二階建て構造を、図示した姿勢と上下逆にしてリフロー処理する場合には、フランジの無い支柱を用いたものと同じように支柱と基板のずれが発生する畏れがあり、好ましいことではない。さらに、フランジ付きの支柱では、一つの支柱に同じ方向から基板を支えるフランジを3つ設けては2枚目のサブ基板を所定位置に挿通することができない。そのため、このようなフランジ付きの共通の支柱を多段構造に用いる場合は、サブ基板は二枚までに限られる。
【0013】
本発明の目的は、多段の基板を用いる水晶発振器における当該多段の基板を支える新規な構造を採用し、半田固定やフランジなどの形成を必要としないでも強固に埋設して自立させることでリフロー処理での基板位置ずれを起こさず、各搭載部品の確実な固定の確保、組み付け作業の容易化、全体としての低コスト化を図った多段部品搭載型の水晶発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、メイン基板とサブ基板を所定間隔で保持する支柱として多角形断面形状をもつ単純な棒状細線を採用すると共に、この支柱を埋設あるいは貫通させる基板側に丸穴あるいは貫通丸孔とし、これらの丸穴あるいは貫通丸孔に支柱を圧入する。
【0015】
丸穴あるいは貫通丸孔に支柱を圧入するためにつぎのような寸法関係とする。すなわち、丸穴あるいは貫通丸孔の内径をDとし、前記支柱の前記丸穴あるいは貫通丸孔の内側壁と当接する切断面における径方向外径の最大寸法をdとしたとき、d≧D+ΔDとしたことを特徴とする。なお、ΔDは丸穴あるいは丸貫通孔を形成する際に許容される内径の公差「±ΔD」のうちの最大公差(+ΔD)である。
【0016】
本発明は、メイン基板、サブ基板に形成した丸穴あるいは貫通丸孔に、当該丸穴あるいは貫通丸孔の内径以上の外径寸法を持つ多角径断面の支柱を、当該基板の内壁を支柱の角部で切り込んで変形させつつ強制的に嵌挿(圧入)して構成するものである。すなわち、基板と支柱の強固な位置の固定保持は、基板材料の弾発力と基板内壁への支柱の食い込み力による両者間の摩擦錨着効果を利用するものである。
【0017】
なお、本発明に採用される支柱は、三角柱、四角柱、五角柱、・・の断面を持つ多角柱とする。基板の丸穴あるいは貫通丸孔の内径に食い込む効果の観点からは、角の角度が鋭い三角柱又は四角柱が望ましい。製造の容易性、作業の容易性を考えれば、四角柱が好適である。なお、この支柱は正多角形に限らない。非正多角形であっても、その角が鋭く、基板との固定効果が十分であれば、必ずしも正多角形断面でなくともよい。
【0018】
なお、メイン基板に形成する丸穴に代えて、貫通丸穴としてもよいことは勿論である。この種の表面実装型の電子部品では、実装機器の基板に実装した際に、貫通丸穴から支柱がつき出ていると、当該実装機器の基板の回路パターンや配線パターンとの間で短絡が発生する虞がある。しかし、本発明による支柱の植立構造によれば、下記の効果に記載したように、基板に対する圧入量を任意に制御できるので、メイン基板も貫通丸穴とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、メイン基板とサブ基板の間隔を任意かつ強固に設定して固着ことができると共に、メイン基板とサブ基板を上下逆にしてリフロー処理しても支柱は強固な植立を維持できる。また、半田溶融による基板間の間隔が変化したり、搭載した部品などが脱落することもない。そして、係止突起やL字状折り曲げ構造、フランジなどの位置規制構造を有しないので、発振器の機種ごとに支柱を用意する必要もないので、共通の支柱で多種の多段基盤構造の発振器を組み立てることができる。また、メイン基板に設ける支柱埋設のための丸穴に変えてサブ基板と同じ貫通丸孔とした場合でも、メイン基板への支柱に対する支柱の圧入量(基板の厚み方向の圧入距離)を任意に決めることができるので、表面実装型の発振器では避けなければならない実装面からの支柱の突き出しによる実装側基板の回路パターンや配線パターンとの短絡を防止することができる。なお、支柱と基板の配線・回路パターンとは、電気的接続を必要とする部分では半田による接続を行う。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例1を説明する模式断面図である。
【図2】図1のカバーを取り去って示す本発明の実施例1を説明する内部斜視図である。
【図3】図2の一部を拡大して支柱と基板の植立状態を詳細に示す要部斜視図である。
【図4】本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例1を説明する支柱と基板の嵌合錨着の説明図である。
【図5】本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例2を説明する模式図である。
【図6】本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例3を説明する模式図である。
【図7】本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例4を説明する模式図である。
【図8】本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器におけるメイン基板の丸孔と支柱のより強固な嵌合錨着の一例を説明する要部断面図である。
【図9】本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器におけるメイン基板の丸孔と支柱の嵌合錨着の他例を説明する要部断面図である。
【図10】本願発明の開発途上で考慮された構造を備えた恒温槽付水晶発振器の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照した実施例により説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例1を説明する模式断面図である。図1に示した多部品搭載型の水晶発振器は、所謂三階建て構造としたものである。同図において、符号1はメイン基板、2は第1のサブ基板(2F基板)、3は第2のサブ基板(3F基板)を示す。本実施例では、第1のサブ基板2はメイン基板1に植立した支柱4で保持し、第2のサブ基板3は第1のサブ基板2に植立した支柱5で保持している。
【0023】
本実施例は、支柱の使用態様を詳しく説明するため、第1のサブ基板2と第2のサブ基板3を、それぞれ別々の支柱で保持する構造を示したが、第2のサブ基板3のサイズを第1のサブ基板2と同等の大きさとして、支柱4のみで第1と第2のサブ基板を保持してもよいことは言うまでもない。
【0024】
メイン基板1の一主面(図の上面)には、温度制御回路(ICチップ)11、出力回路(ICチップ)13、ディスクリート部品12が搭載されている。第1のサブ基板2の一主面と他主面(図の下面)、第2のサブ基板3の一主面と他主面にも複数の部品が搭載されている。第2のサブ基板2の一主面には水晶振動子33が、他主面にはヒータ素子32が搭載されている。なお、図示の部品配置はあくまで説明のための例に過ぎない。これらの部品(ICチップを含む)は、その機能、温度の影響、発熱の移動などを考慮して最適に配置される。
【0025】
部品を配置したメイン基板1第1のサブ基板2、第2のサブ基板3を覆って、金属カバー6を設け、その開放端縁をメイン基板の外周に設けた金属層(又は金属板)を介して固着し、封止される。メイン基板1の他主面(背面)には表面実装方式の実装端子14が複数個設けてあり、実装機器のマザーボード7の端子パッド(図示せず)に適宜の手段で固着されるようになっている。
【0026】
図2は、図1の多部品搭載型の水晶発振器における金属カバーを取り去って示す本発明の実施例1を説明する内部斜視図である。図2において、図1と同一符号は同一機能部分に対応する。なお、符号10は実装端子と導電接続するサイドキャステレーションであるが、このサイドキャステレーションに代えてメイン基板の内層に設けたビアホール、スルーホールで実装端子との導電接続を構成してもよい。図2に示したように、本実施例では、第2のサブ基板3のサイズが第1のサブ基板2よりもかなり小さいものを使用したため、この第2のサブ基板3を第1のサブ基板2上に支柱4とは別個の支柱5を用いて支持している。
【0027】
図3は、図2の一部を拡大して支柱と基板の植立状態を詳細に示す要部斜視図である。図3においても、図1、図2と同一符号は同一機能部分に対応する。メイン基板1の1主面に搭載された部品11以外、メイン基板1、第1のサブ基板2および第2のサブ基板3の搭載部品は図示を省略した。図3に示されたように、支柱4は第1のサブ基板2に設けた貫通丸孔21に圧入して挿通され、下端をメイン基板1に設けた丸穴41に圧入して植立されている。そして、支柱5は第2のサブ基板3に設けた丸穴31に圧入されると共に、第1のサブ基板2に設けた貫通丸孔22に圧入して植立されている。
【0028】
このように、本実施例では、第1のサブ基板2は支柱4を4本用い、第2のサブ基板3は支柱5を4本用いてメイン基板1の一主面上(Z方向)に積み重ねて基板1に一体的に保持されている。なお、図3のメイン基板1に植立された支柱4の根元、すなわち、メイン基板1に設けた丸穴41の周囲にたとえば接地に接続する半田パターン42を設けて、支柱4と半田により接続することで、サブ基板の接地路(アースライン)の確保に加えて、支柱の更なる強固着が得られる。また、多の支柱と各基板の間を必要に応じて半田接続する。
【0029】
図4は、本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例1を説明する支柱と基板の嵌合錨着の説明図である。図4では、(a)メイン基板に設けた丸穴と支柱4との嵌合錨着、(b)第1のサブ基板と支柱4との嵌合錨着、(c)第2のサブ基板と支柱5との嵌合錨着について示してあるが、丸穴41のサイズ(直径)、貫通丸孔21、31のサイズが同じであれば、(a)の図示で十分である。また、メイン基板に設けた丸穴41の周囲に半田パターン42があるものとして示したが、この半田パターンは必須ではない。
【0030】
図4において、メイン基板の穴孔41、あるいは第1のサブ基板に設けた貫通丸孔21、第2のサブ基板に設けた貫通丸孔31と圧入する支柱4または5の寸法関係は次のとおりとする。すなわち、図4の(a)において、丸穴41の内径をD1とし、支柱4の丸穴41の内側壁と当接する切断面における径方向外径の最大寸法をd1としたとき、d1≧D1+ΔD1とする。ΔD1は丸穴を形成する際に許容される内径の加工公差「±ΔD1」のうちの最大公差(+ΔD1)である。
【0031】
同様に、第1のサブ基板の貫通丸孔21の内径をD2とし、支柱4に設けた貫通丸孔21の内側壁と当接する切断面における径方向外径の最大寸法をd2としたとき、d2≧D2+ΔD2とする。D2は貫通丸孔21を形成する際に許容される内径の加工公差「±ΔD2」のうちの最大公差(+ΔD2)である
【0032】
そして、第2の貫通丸孔31の内径をD3とし、支柱5の貫通丸孔31の内側壁と当接する切断面における径方向外径の最大寸法をd3としたとき、d3≧D3+ΔD3とする。なお、ΔD3は貫通丸孔を形成する際に許容される内径の公差「±ΔD3」のうちの最大公差(+ΔD3)である。
【0033】
このように基板の丸穴や貫通丸孔のサイズと支柱のサイズを設定することにより、メイン基板や第1.第2サブ基板に対する支柱の圧入による当該基板への支柱の食い込み力が確保でき、圧入部での基板材料の弾発力と相俟って両者間に大きな摩擦錨着が発生し、これを確保できる。
【0034】
図5は、本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例2を説明する模式図である。実施例2も三階建て構造であり、メイン基板1の一主面上に第1のサブ基板2と第2のサブ基板3を、メイン基板1に植立した共通の支柱4で保持したものである。
【0035】
図6は、本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例3を説明する模式図である。実施例3も三階建て構造であり、メイン基板1の一主面上に第1のサブ基板2を支柱4で保持し、第2のサブ基板3の一部は第1のサブ基板2を保持する支柱で保持し、他の一部を第1のサブ基板2に植立した支柱5で保持したものである。なお、実施例3では、メイン基板1に形成する丸穴ではなく、貫通丸孔41’を形成し、支柱4をこの貫通丸孔41’の途中まで圧入してある。このような植立も図4で説明した寸法関係の設定で可能となる。この貫通丸孔は、上記した図5の実施例、後述する図7の実施例にも適用できる。本実施例により、支柱4の各基板に対する圧入部での基板材料の弾発力と相俟って両者間に大きな摩擦錨着が発生し、これを確保できる。
【0036】
図7は、本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器の実施例4を説明する模式図である。実施例4は二階建て構造であり、メイン基板1の一主面上にサブ基板2を支柱4で保持したものである。本実施例によっても、支柱4、5の各基板に対する圧入部での基板材料の弾発力と相俟って両者間に大きな摩擦錨着が発生し、これを確保できる。
【0037】
図8は、本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器におけるメイン基板の丸孔と支柱のより強固な嵌合錨着の一例を説明する要部断面図である。本発明の各実施例におけるメイン基板1に植立する支柱4を当該メイン基板1に設けた丸穴41に圧入する。その後、丸穴の周囲に形成した半田膜(あるいはプリント配線層)15と半田16で溶着する。この構成により、前記実施例1でも説明したように、二階部分に搭載した部品で構成される回路、あるいは三階部分に搭載した部品で構成される回路の接地端子を、接地線(アースライン)を設けることなくメイン基板の接地回路に接続することができる。
【0038】
図9は、本発明に係る多部品搭載型の水晶発振器におけるメイン基板の丸孔と支柱の嵌合錨着の他例を説明する要部断面図である。図9では、メイン基板1に設けた丸穴(貫通丸孔でも同様)に支柱4を圧入した状態を強調して示す。基板はガラス繊維を母材とし、これにエポキシ樹脂を含浸させて平板状とした、所謂ガラスエポキシ基板である。ガラスエポキシ基板はセラミック基板に比べて弾力性に富み、植立する支柱の最大径よりも比較的小さい直径の丸穴であっても、当該支柱の圧入の際、丸穴の縁を変形させながらその内壁を押し広げながら嵌入する。こうして植立した支柱は、大きな力で摩擦錨着し、その状態を保持する。
【0039】
以上説明した本発明の各実施例により、メイン基板とサブ基板の間隔を任意かつ強固に固着ことができると共に、メイン基板とサブ基板を上下逆にしてリフロー処理しても支柱は強固な植立を維持できると共に、半田溶融による基板間の間隔が変化したり、搭載した部品などが脱落することもない多部品搭載型の水晶発振器を提供できる。
【0040】
本発明は、上記で説明した多部品搭載型の水晶発振器に限るものではなく、複数の部品を共通基板に搭載して一個の電子部品とするものであれば、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1・・メイン基板、11・・温度制御回路、12・・ディスクリート部品、13・・出力回路(ICチップ)、14・・実装端子、2・・サブ基板(第1のサブ基板)、21,31・・貫通丸孔、32・・ヒータ素子、33・・水晶振動子、
4,5・・支柱、40・・フランジ、41・・丸穴、42・・半田パターン、6・・金属カバー、61・・金属層、7・・マザーボード、10・・サイドキャステレーション。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン基板の一主面に1又は複数枚のサブ基板を前記メイン基板から所定の間隔をもって離間させて設置し、前記メイン基板と前記1又は複数枚のサブ基板の一主面及び/又は他主面に複数の電子部品を搭載し、前記メイン基板の他主面に表面実装端子を設けてなる多段部品搭載型の水晶発振器であって、
前記メイン基板に設けた丸穴に一端を圧入して植立された多角形断面形状をもつ棒状細線からなる複数の支柱を有し、
前記サブ基板には、前記複数の支柱のそれぞれに対応して、それぞれの支柱を他端より圧入して貫通させる複数の貫通丸孔を形成してなり、
前記丸穴あるいは貫通丸孔の内径をDとし、前記支柱の前記丸穴あるいは貫通丸孔の内側壁と当接する切断面における径方向外径の最大寸法をdとしたとき、
d≧D+ΔD
ただし、ΔDは丸穴あるいは丸貫通孔を形成する際に許容される内径の公差「±ΔD」のうちの最大公差(+ΔD)
としたことを特徴とする多段部品搭載型の水晶発振器。
【請求項2】
請求項1において、
前記メイン基板及び前記サブ基板は、ガラスエポキシ基板であり、前記支柱は金属線を多角形断面に成形したものであることを特徴とする多段部品搭載型の水晶発振器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記サブ基板の一主面に搭載した電子部品には水晶振動子を含み、他主面に搭載した電子部品には前記水晶振動子を加熱するヒータ素子を含み、
前記メイン基板の前記一主面に、他の構成部品を搭載してなることを特徴とする多段部品搭載型の水晶発振器。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記メイン基板の前記1主面と前記サブ基板とに搭載された電子部品を覆って当該メイン基板の外周に固着して封止する金属製のカバーを備えたことを特徴とする多段部品搭載型の水晶発振器。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかにおいて、
前記サブ基板は、第1のサブ基板と第2のサブ基板からなり、前記支柱は前記第1のサブ基板と第2のサブ基板に共通であることを特徴とする多段部品搭載型の水晶発振器。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れかにおいて、
前記サブ基板は、第1のサブ基板と第2のサブ基板からなり、前記第1のサブ基板と第2のサブ基板に設ける貫通丸孔の内径は異なり、
前記支柱の最大外径は前記第1のサブ基板と第2のサブ基板に設ける貫通丸孔の内径に応じて異なることを特徴とする多段部品搭載型の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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