説明

多相流体流を相分離するためのサイクロン分離器、サイクロン分離器を備える蒸気タービン設備、およびこれに対応する作動方法

本発明は、中心軸(M)を中心として実質的に回転対称に構成されて中空空間(3)を取り囲むハウジング(2)と、ハウジング内面(11)に対して実質的に接線方向に向く流体流の流入のために設計された、流体流のための少なくとも1つの供給配管(6)と、流体流の分離された気体成分のための少なくとも1つの排出配管(24)とを有する、多相流体流を相分離するためのサイクロン分離器(1)に関する。流体流の気体成分を加熱するのに適しており、材料と所要スペースに関する要求事項が低くなるように、このような種類のサイクロン分離器が改善されることが意図される。さらに、加熱段階へ入るときに、加熱されるべき蒸気の均等かつできる限り均一な流動分布が保証されるのが望ましい。そのために本発明によると、中空空間(3)は、中心軸(M)を起点として半径方向で見て実質的に円形の断面をもつ流出空間(16)と、次に掲げる順番でこれに後続するそれぞれ実質的に円形の断面をもつ加熱空間(14)と、中間空間(15)と、乾燥空間(13)と、流入空間(12)とを有しており、流入空間(12)は外方に向かってハウジング(2)により区切られており、加熱空間(14)は気体成分の加熱のために設計された加熱部材を含んでおり、乾燥空間(13)には少なくとも1つの微細分離器(28)とこれに付属する少なくとも1つの凝縮物捕集槽(32)とが配置されており、少なくとも1つの凝縮物捕集槽(32)は中間空間(15)に配置された少なくとも1つの凝縮物排出管(34)と接続されており、該凝縮物排出管によって、動作状態で少なくとも1つの微細分離器(28)に形成される凝縮物が中空空間(3)から排出されることが意図される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心軸を中心として実質的に回転対称に構成されて中空空間を取り囲むハウジングと、ハウジング内面に対して実質的に接線方向に向く流体流の流入のために設計された、流体流のための少なくとも1つの供給配管と、流体流の分離された気体成分のための少なくとも1つの排出配管とを有する、多相流体流を相分離するためのサイクロン分離器に関する。さらに本発明は、高圧タービンおよび低圧タービンと、このような種類のサイクロン分離器とを有する蒸気タービン設備に関する。さらに本発明は、このような種類の蒸気タービン設備を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所では、特にエネルギー生成ないしエネルギー変換のために蒸気が用いられる発電所では、通常、さまざまなに異なる蒸気圧で作動するさまざまなタービンが利用される。このとき発電所で生成される生蒸気は、たとえば高圧タービンへと送られ、そこで仕事をし、それに伴い減圧される。そして低い蒸気圧用として設計された低圧タービンへ蒸気が送られる前に、通常、その水成分が低減される。これに加えて、低圧タービンへ送られる前に蒸気の過熱が行われるのが通常である。このような方策により、一方では低圧タービンの効率が向上し、また、他方ではタービンの耐用寿命が長くなる。たとえば液滴に起因するコンポーネントの浸食ないし腐食によって生じる可能性がある損傷が、低減または回避されるからである。
【0003】
高圧タービンから出ていく減圧された蒸気をそのように前処理するために、通常、構造的に相並んでの設置または相前後しての設置で互いに組み合わされていてよい、流動方向で直列につながれた水分離器と中間過熱器が用いられる(複合型の水分離器/中間過熱器)。このとき通常、水分離器/中間過熱器の第1のコンポーネントで蒸気の水分割合が低減されてから、実質的に気体状の成分が第2のコンポーネントに導入され、そこで過熱される。このように過熱された蒸気が低圧タービンへと送られ、そこで減圧され、それによって仕事を行う。
【0004】
水成分を分離するために、さまざまな装置を使用することができる。これには、たとえば蒸気流が沿って案内される薄板が含まれる。さらに水成分を分離するために、いわゆるサイクロン分離器またはサイクロンも使用することができ、その実質的に回転対称のハウジングに、蒸気流がハウジング内面に対して接線方向に導入される。それにより、重たい水成分は遠心力により外方に向かって追いやられ、実質的に気体状の軽い成分は、サイクロンの中で生成される流動状況に基づき、ハウジングで取り囲まれた中空空間の内部に流れ込み、そこに溜まる。いずれのケースでも、蒸気の気体成分は流動方向で後置された、設計的/空間的に別個の複合型の水分離器/中間過熱器の第2のコンポーネントへと案内され、そこで過熱される。このことは通常、蒸気が熱伝達によって相応に加熱ないし過熱される加熱管に、蒸気が流れ込むことによって実現される。
【0005】
水成分の分離と蒸気の加熱とが同じハウジングの中で行われる複合型の水分離器/中間過熱器の一体化された設計態様は、特許文献1に記載されている。
【0006】
水の分離ないし蒸気の中間過熱を満足のいくように行えるようにするには、それぞれのコンポーネントが相応に大きな容積で寸法決めされていなくてはならず、相応の材料コストと空間的な設計スペースがそこから直接的に生じる。その一方で、発電所の設計にあたっては、できる限り少ない材料消費量と所要スペースが追求に値する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】出願人AREVA NP GmbH社のドイツ特許出願第DE 10 2009 015 260.1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、たとえば蒸気のような流体流の気体成分を加熱するのに適しており、材料と所要スペースに関わる要求事項が低い、多相流体流を相分離する装置を提供することにある。さらに、加熱段階へ入るときに、加熱されるべき蒸気の均等でできる限り均一な流動分布が意図される。さらに、このような種類のサイクロン分離器を格別に好ましく使用することができる、高圧タービンと低圧タービンとを備える蒸気タービン設備を提供することが意図される。さらに、このような蒸気タービン設備を作動させる方法を提供することが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
多相流体流を相分離するためのサイクロン分離器に関して、この課題は本発明によると、中空空間が、中心軸を起点として半径方向で見て実質的に円形の断面をもつ流出空間と、次に掲げる順番でこれに後続するそれぞれ実質的に円形の断面をもつ加熱空間と、中間空間と、乾燥空間と、流入空間とを有しており、流入空間は外方に向かってハウジングにより区切られており、加熱空間は気体成分の加熱のために設計された加熱部材を含んでおり、乾燥空間には少なくとも1つの微細分離器とこれに付属する少なくとも1つの凝縮物捕集槽とが配置されており、少なくとも1つの凝縮物捕集槽は中間空間に配置された少なくとも1つの凝縮物排出管と接続されており、該凝縮物排出管によって、動作状態で少なくとも1つの微細分離器内において形成される凝縮物が中空空間から排出されることによって解決される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の対象物となっている。
【0011】
本発明の出発点をなす考察は、従来式の水分離器/中間過熱器の比較的大きい所要スペースは、特に、最初に高圧タービンから出てくる蒸気からの水の分離と、これに続く分離された気体成分の過熱とが、流動側の直列回路のような形式で相前後して配置された、空間的に互いに分断された2つの空間領域または装置コンポーネントで時間的に連続して行われることに原因があるというものである。そのために、比較的大きい取付スペースをシステム上必要とする、水分離器/中間過熱器の構造上の設計に関して特別な要求事項が課される。
【0012】
しかし今回認識されたように、これら2つの空間領域は必ずしも設計的に相前後して別々の空間に配置されなければならないわけではない。つまり適当な流動状況を前提条件としたうえで、これらの空間領域を単一のハウジングの中で互いに入れ子式に配置することもでき、このとき液体の分離、および流体の所与の体積要素についての気体の流体成分の過熱は、時間的に見て実質的に同時に、ないしはすぐに連続して行われる。
【0013】
このような好適な流動状況は、サイクロン型式の水分離器によってもたらされる。サイクロンのハウジング内面への接線方向での流入により、流れに対して作用する遠心力によって、たとえば水などの重い成分の分離が、ハウジングで取り囲まれた中空空間の外側領域でハウジング内面に行われる。このとき当初の流体流の軽い気体成分、たとえば水蒸気は、中空空間の内部へと流れる。そして中空空間の内部領域または中心領域に、特に加熱空間に、気体成分の加熱ないし過熱をするための加熱部材を配置して、内部領域への軽い相の移行が引き続き可能になるようにしておけば、気体成分が内部領域への移行中に直接加熱ないし過熱される。それにより、水分離のために設計された外側の空間領域の内部に、過熱された蒸気を実質的に含む内側の空間領域が生じる。そして過熱された気体成分を内側の空間領域から導出して、必要に応じて引き続き利用することができる。このように機能的に相違する2つの空間領域の入れ子構造により、複合型の水分離器/中間過熱器を明らかにコンパクトな設計形態で具体化することができる。これに加えて、両方のプロセスについて単一のハウジングしか必要ないので、材料コストを削減することができる。
【0014】
特に、微細分離器と加熱部材の間での凝縮物排出管の同心的な配置によって、加熱空間へ流れ込むときに良好に調整された圧力損失が得られ、このような圧力損失は、ハウジングに沿った蒸気の均等な分布につながり、そのようにして、加熱部材へ流れ込むときの最適化された流動分布を保証する。したがって、流動を誘導するための穴あき板や、これに類似する装置を省略することができる。
【0015】
このような種類の設計は水蒸気の処理だけに限定されるものではなく、多成分の流体流から1つまたは複数の相を重い粒子ないし成分から分離し、当初の流体流の1つまたは複数の軽い成分を加熱しようとする場合には、常に適用することができる。
【0016】
中心軸に対して垂直に位置する少なくとも1つの平面に、1つの凝縮物捕集槽リングを少なくとも近似的に共同で形成する、乾燥空間に配置された複数の凝縮物捕集槽が設けられているのが好ましく、各々の凝縮物捕集槽は、それぞれ中間空間に配置された付属の凝縮物排出管と接続されている。
【0017】
このとき各々の凝縮物捕集槽は、1つまたは複数の微細分離器ないし乾燥器に付属していてよい。その別案として、各々の平面に、またはこれらの平面のいくつかに、ちょうど1つの環状の凝縮物捕集槽を使用することも考えられる。
【0018】
環状に配分された凝縮物捕集槽およびこれに付属する凝縮物排出管の好ましい個数、ならびにその寸法決め(たとえば長さや直径)は、たとえばハウジングの寸法決め、サイクロン分離器の作動状態のときに凝縮物排出管を通って運ばれる凝縮物の処理量、ならびに、凝縮物排出管の構造を流体流が貫流するときに行われるべき所望の圧力損失など、複数の要因に依存して決めることができる。
【0019】
1つの好ましい実施形態では、第1の凝縮物捕集槽リングを備える第1の平面と、第2の凝縮物捕集槽リングを備える少なくとも1つの第2の平面とが設けられており、第1の凝縮物捕集槽リングには第1の群の凝縮物排出管が付属しており、第2の凝縮物捕集槽リングには第2の群の凝縮物排出管が付属している。
【0020】
このようにして、乾燥器の中でハウジングの中心軸に沿ってさまざまな個所に目に見えるように形成される凝縮物が、凝縮物の流動方向でそれぞれ次の凝縮物捕集槽に流れ出ることができる。ハウジングの中心軸に沿って見たとき、第1および第2の平面の凝縮物捕集槽はそれぞれ対をなして相上下して配置されていてよい。ハウジングの長さや、サイクロンの作動状態のときの凝縮物の処理量に応じて、3つまたはそれ以上の平面が設けられていてもよい。
【0021】
凝縮物排出管は、高い処理量を保証するために、それぞれ1つの凝縮物捕集槽とのみ接続されているのが好ましい。別案の実施形態では、少なくともいくつかの凝縮物排出管は、1つを超える凝縮物捕集槽と接続される。
【0022】
第1の群の凝縮物排出管と第2の群の凝縮物排出管が両方とも延びている中間空間の縦方向区域において、これらの凝縮物排出管はサイクロン分離器の円周方向で見て交互に配置されているのが好ましい。このような中間空間の縦方向区域は中間区域の長さ全体に延びているのが好ましく、すべての凝縮物排出管がハウジングの長さ全体にわたって案内される。このようにして、たとえば加熱されるべき蒸気のような流体流の気体相にとっての流入状況が、中心軸に沿って見たときに、どの個所でも同じになる。このとき、特定の縦方向区域のいくつかの凝縮物排出管は、流動案内の役目だけを果たすのに対して、他の縦方向区域では、微細分離器で形成される凝縮物のための排出部として追加的に機能する。
【0023】
このような種類の配置は2つを超える平面にも一般化することができ、その場合、円周方向でたとえば各群に属する凝縮物排出管の周期的な配置を行うことができる。
【0024】
凝縮物排出管は中心軸と平行に向いているのが好ましく、それにより、蒸気が流れ込むときに、実質的にハウジングの中心軸に対して垂直方向に速度減少が生じる。
【0025】
中心軸に対して垂直方向に位置する横断面を通るすべての凝縮物排出管の通過点が実質的に1つの円上に位置していると、半径方向で均等な流れ込みが実現される。その場合、これらの管はすべて半径方向でハウジング内面および中心軸から等しい距離を有しており、その結果、望ましくない圧力の不均一性がハウジングの円周方向に沿って生じることがない。
【0026】
それぞれの凝縮物捕集槽は、引込配管によってそれぞれの凝縮物排出管と接続されているのが好ましい。引込配管は、中間片のような形式で、流動側で凝縮物捕集槽をそれぞれの凝縮物排出管と接続し、動作状態のときに凝縮物は相応の凝縮物捕集槽から引込配管を通って凝縮物排出管の中に流れることができる。引込配管は、たとえば溶接結合によって、凝縮物捕集槽および/または凝縮物排出管と接続されていてよい。引込配管は、凝縮物捕集槽または凝縮物排出管の一体化された構成要素として構成されていてもよい。
【0027】
好ましい実施形態では、加熱空間は、流体流の気体成分が貫流するための加熱部材を備えるように設計されている。このとき加熱空間は中空空間を、ハウジング内面と加熱空間との間に位置する各領域すなわち中間空間、乾燥空間、および流入空間と、加熱空間の内部に位置する流出空間とに分割する。両方の空間領域の明確な分割は、連続する両方のプロセスの分離を最適化された形で可能にする。加熱のためのエネルギーを節減するために、流入空間に流れ込んでくる流体流の部分が、できる限り少ない割合の重い成分を有していると特に好ましい。蒸気タービン設備で適用する場合、それによってタービンの効率と耐用寿命ないし保守整備インターバルを向上させることができる。
【0028】
加熱ないし過熱された蒸気をできる限り直接的な経路で低圧タービンへ流入させるために、サイクロン分離器がちょうど2つの排出配管を有していると好ましく、両方の排出配管は、中心軸の方向で見て反対向きのハウジングの端部で、流出空間と流動側で接続されている。
【0029】
多成分の流体流の組成に応じて、回転対称のハウジングのそれぞれ異なる実施形態が好ましい。たとえばハウジングは1つの方向に向かって、特に排出配管(流動出口)に向かう方向に向かって、その断面積に関して先細になっていてよい。水蒸気流/水流からの水の分離は、実質的に中空円筒状に構成されたハウジングの中で実施されるのが好ましい。
【0030】
多相流体流の重い成分を分離するための重力を最適化された形で活用するために、ハウジングの中心軸は実質的に垂直方向の向きを有しているのが好ましい。そうすれば流体流の重い成分がハウジング内面に沿って下方に向かって動き(流れ)、そこで収集ないし排出することができる。一般に、サイクロン分離器の垂直方向の設置が好ましい。その場合、重力が渦流に不均衡を引き起こさないからである。
【0031】
高圧タービンと低圧タービンとを有する蒸気タービン設備で本装置を使用するために、高圧タービンから取り出された蒸気が低圧タービンへ過熱状態で供給されることが意図される。そのために加熱部材はその加熱出力に関して、特に水蒸気である流体流の気体成分を過熱させるように設計されていることが意図される。
【0032】
多相流体流が複数の供給配管を通って供給されると、できる限り効率的な本装置の利用が実現される。供給配管が、少なくともそのハウジング接続部の領域で、ハウジングの中心軸に対して実質的に垂直方向の平面に位置しているとき、供給配管は、中空空間に流入する流体流の速度ベクトルが、当該平面から外に出るように向く成分を有するように設計されているのが好ましい。ここでは、流体流の個々の構成要素を通じて平均した平均の速度ベクトルが含意されている。それにより、異なる供給配管を通って流入する流体流が互いに衝突するのを防止することができ、流体流は中心軸の方向の主方向を維持する。このとき流体流は、中心軸に対して垂直方向の平面に対して10°から30°の角度で、特に約15°で、流入するのが好ましい。すなわち、壁部の幾何学形状の結果として生じる渦流に、主として中心軸の方向の速度成分が重ね合わされ、それによって、全体としてつる巻線状の流れが形成される。分離装置が垂直方向に設置されているとき、中心軸の方向を向く速度成分は主として下方を向いている。
【0033】
流体流の流入のために、ハウジングの円周にわたって均等かつ対称に配分されて配置された4つの供給配管が使用されるのが好ましい。このようにして、ハウジングを適切に寸法決めすれば、個々の流れがぶつかってその際に乱れることなく、流入する流体流を等しい大きさのハウジング内面の4つの流域に分割できるという利点がある。
【0034】
本装置のハウジングの中で形成される流動状況は、流体流の気体成分が、ハウジングで取り囲まれた中空空間の内部へと流れるように作用する。そこで気体成分は加熱部材に流れ込み、その際に加熱ないし過熱される。加熱部材が流れ込みをうける方向は、任意選択で、流入空間に配置された案内板ないし案内羽根によって最適化することができる。たとえばこのようにして、加熱管が実質的に前面から流れ込みをうけるようにすることができ、ないしは、接線方向成分を減らすことができる。その一方で、このような案内部材は流入空間を狭めるので、案内部材を使用するかどうか、およびどのような寸法で使用するか、用途に応じて決めるのがよい。
【0035】
サイクロン分離器は、1段階の過熱にも多段階の過熱(中間過熱)にも適している。2段階ないし多段階の過熱のために、たとえば加熱空間には、中心軸に対して垂直方向で見て2つないしそれ以上の群の加熱部材が相前後して配置されていてよい。このとき個々の群に付属する加熱部材は、それぞれ異なる加熱出力ないし加熱温度のために設計されていてよい。
【0036】
本装置の好ましい実施形態では、加熱部材は管状に構成されている。気体成分を加熱ないし過熱するために、加熱部材を流体の加熱媒体によって、特に水蒸気によって、貫流させることができる。多段階の加熱のために、たとえばそれぞれ異なる群の加熱部材で、異なる圧力および/または異なる温度の蒸気を使用することができる。
【0037】
できる限り効率的な気体成分の加熱のために、ハウジングの中心軸と平行に向く直線状の管が加熱部材として利用される。そのために加熱空間には、用途に応じて別様に構成されていてよい複数の管が配置されていてよい。たとえば平滑管やリブ付き管、あるいはこれらの型式の管の好都合な組み合わせを採用することができる。個々の管は、流体流から分離された気体相が、外側に位置する流入空間から内側に位置する流出空間へと、できる限りスムーズな移行を残された中間空間を通じて行えるように、互いに間隔をおいているのが好都合である。その一方で、求められる加熱作用を実現するために、ある程度の管の「密度」も当然ながら必要である。
【0038】
加熱管は管の束をなすようにまとめられているのが好ましい。このとき、管が程度の差こそあれ均等に配分された状態で加熱空間に配置される、いわゆる環状束を適用することができる。その別案または組み合わせとして、いわゆる個別束を適用することができる。このとき、それぞれ互いに隣接する複数の加熱部材が1つの束にまとめられる。個別束は予備組み付けされていてよく、全体として取り扱うことができる。必要な場合に個別管として容易に組み付け、取り外し、ないしは取り換えることができる。
【0039】
蒸気タービン設備に関して、上に挙げた課題は本発明によると、上に説明した分離装置の1つの供給配管またはすべての供給配管が高圧タービンの蒸気出口と接続されており、1つの排出配管またはすべての排出配管が低圧タービンの蒸気入口と接続されていることによって解決される。このようにして、蒸気は高圧タービンから分離装置へ導入され、そこで、一方では水成分が蒸気から分離され、他方では気体成分が過熱される。次いで、過熱された蒸気が低圧タービンへ導入され、そこで以後のエネルギー取得のために利用される。
【0040】
方法に関して、上に挙げた課題は本発明によると、高圧タービンの蒸気出口から流れ出る蒸気が、中心軸を中心として実質的に回転対称のハウジングで取り囲まれた中空空間へと案内され、それによって蒸気が回転し、その気体成分が液体成分から分離されてハウジングの内部領域に集められ、実質的に気体の成分は内部領域へ移行するときに微細分離器を通るように案内され、その液体成分がさらに低減され、次いで環状に配分された凝縮物排出管の構造を通るように案内され、引き続いて加熱部材によって加熱され、次いで低圧タービンの蒸気入口に供給されることによって解決される。
【0041】
本方法の好ましい態様では、少なくともいくつかの加熱部材は管状に構成されており、すなわち加熱管を形成する。蒸気生成器により生成される生蒸気は、少なくともいくつかの加熱管の中へ案内され、それにより、分離装置に導入された流体流の加熱管の外面と接触する気体成分が加熱ないし過熱される。その別案または組み合わせとして、抽気蒸気を高圧タービンから取り出すことができ、次いで、これが少なくともいくつかの加熱装置へ案内される。このようにして、流体流の気体成分の特に2段または多段の過熱を実現することができる。
【0042】
本発明により得られる利点は、特に、サイクロン分離器の内部での加熱部材の巧みな配置によって、多相流体流の重い成分ないし液体相の分離を、同時に流体流の気体成分を加熱ないし過熱しながら、明らかに省スペースに、かつ材料と設計コストを引き下げる仕方で、具体化することができるという点にある。それにより本装置は、特に、狭いスペースに建設しなくてはならない設備での採用に適している。流体流の重い成分もしくは相の一次分離のために、サイクロン原理が利用される。微細分離器を組み込むことは、重い成分のいっそうの低減を可能にする。微細分離器と加熱部材の間の環状スペースに凝縮物排出管を配置することで、的確な圧力損失により、最適化された流動分布が実現される。このことは、いっそうの材料削減につながる。凝縮物排出管の二重機能に基づき、穴付き板やこれに類似するコンポーネントを(ほぼ)省略できるからである。
【0043】
このような種類の分離装置が高圧タービンと低圧タービンの間に介在している蒸気タービン設備は、特別にコンパクトかつ材料保全的な設計形態で具体化することができる。このとき本装置は、基本的に、垂直方向に設置されたハウジングの中で、高圧タービンのすぐ下に取り付けることができ、それにより、ガスは高圧タービンの蒸気出口からハウジングの上側端部のところで本装置に流入することができる。そして、ハウジングの下側端部および/または上側端部にある排出配管により、過熱した蒸気を低圧タービンへと供給することができる。
【0044】
次に、本発明のさまざまな実施例について図面を参照しながら説明する。そこには著しく模式化された図面で次のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】中心軸を中心として実質的に回転対称に構成されたハウジングを備える、多相流体流を相分離するためのサイクロン分離器の考えられる2つの異なる実施形態を示す、互いに接する2つの異なる半円形の部分断面図であり、それぞれの切断平面は中心軸に対して垂直に選択されている。
【図2】さまざまな空間領域が模式的に示された、図1のサイクロン分離器の中心軸に対して垂直方向の切断平面である。
【図3】サイクロン分離器を示す縦断面図であり、中心軸の左右の両方の半分はそれぞれ異なる好ましい実施形態に対応している。
【図4】引込配管を介して凝縮物排出管と接続された凝縮物排出槽を含む、鎖線の円で図示する図3の詳細部の詳細図である。
【図5】図1から図3のサイクロン分離器の複数の凝縮物排出管と1つの凝縮物捕集槽であり、ここでは中心軸の方向の視線方向による横断面で示されている。
【図6】高圧タービンと、低圧タービンと、蒸気生成器と、図1から図5の実施形態に基づく中間過熱器が組み込まれた、多相流体流を相分離するためのサイクロン分離器とを有する蒸気タービン設備の模式化したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
同じ部分にはどの図面でも同じ符号が付されている。
【0047】
多相流体流を相分離するための図1に示すサイクロン分離器1は、中心軸Mを中心として実質的に回転対称かつ中空円筒状に構成されたハウジング2を含んでおり、ハウジングは中空空間3を取り囲むとともに、4つの供給配管6が穿設されている。ここで図1の左半分と右半分はサイクロン分離器の考えられる構成にそれぞれ対応しており、実際にはそれぞれ両方の半分が、ここに示す2つの態様のいずれかで具体化される。実質的に垂直方向を向く中心軸Mを備えるハウジング2は、好ましい実施形態では約6メートルの直径を有している。
【0048】
多相流体流(図示せず)は、ハウジング内面11に対して実質的に接線方向の流入方向10で、ハウジング2により取り囲まれた中空空間3に流入する。この流体流は、たとえば蒸気タービン設備に設置された高圧タービンの蒸気出口から供給配管6を通って、サイクロン分離器1のハウジング2へ案内される蒸気であってよい。ハウジング2は鋼材ないし特殊鋼で製作されているのが好ましいが、利用分野に応じて、これ以外の材料が好ましい場合もある。
【0049】
このとき流体流が回転し、流体流に作用する遠心力が、このケースでは水である流体流の重い成分を外方に向かってハウジング内面11へ引き寄せる。流体流の気体成分は、中空空間3の中で形成される流動状況に基づき、流入空間12から乾燥空間13と中間空間15を通って加熱空間14に入る。断面が環状の加熱空間14は、ハウジング2の内部にある円筒状の流出空間16を空間的に取り囲んでいる。
【0050】
流出空間16、加熱空間14、中間空間15、乾燥空間13、および流入空間12の(中心軸Mから半径方向外側に向かっての)空間的な配置が、図2に模式的に図示されている。流出空間16は円筒状に成形されているのに対し、ハウジング2内のさらに外側に位置する各空間は、それぞれ円環状の断面をもついわばシェルを形成する。その断面で見たときの仮想的な内側および外側の区切りは、共通の中心点が中心軸Mに位置する同心円を形成する。
【0051】
図1に示すサイクロン分離器1の実施形態の加熱空間14には、加熱出力に関して流体流の気体成分を過熱するために設計された加熱部材が配置されている。全体としていわば環状束を形成する、個々の加熱管18を使用することができる。環状束で用いられる管の長さが約11.5mでハウジング直径が6mの場合、束の外径が約3.6m、リブ付き管の心材直径がそれぞれ約22.4mm、管の総数が約7900本であれば、約22,000m2の加熱面積を提供することができる。その別案または加熱管18との組み合わせとして、個別束20を使用することができる。加熱管18ないし個別束20は流動方向22で、流体流の気体成分の流れ込みをうける。気体成分は加熱空間14で過熱され、引き続いて流出空間16へとさらに流れる。そこから排出配管24(図1には図示せず)を通って、低圧タービンへとさらに案内される。
【0052】
流体流によって加熱部材が直接の流れ込みをうける場合、これまでの経験に基づき、最大で約80%の水の分離効率を実現することができる。このことは、加熱管18ないし個別束20に流れ込む蒸気が、まだ約2.6%の水成分を有することを意味している。
【0053】
水成分をいっそう引き下げるために、乾燥空間13には微細分離器28が取り付けられている。たとえば微細分離器28としては、さまざまに異なる構成の薄板を利用することができる。波形の薄板のパッケージからなる、いわゆる積層液滴分離器を使用することもできる。通常、このような分離部材はフレームに取り付けられており、ないしは定着されている。微細分離器28には凝縮物捕集槽32(図1には図示せず)が付属しており、動作状態のときに微細分離器28で形成される凝縮物がその中に流出する。凝縮物捕集槽32は、乾燥空間13に配置されているのが好ましい。凝縮物捕集槽は、それぞれの微細分離器28から出る凝縮物が付属の凝縮物捕集槽32で捕集されるように、それぞれの微細分離器28に取り付けられている(たとえば溶接されている)。凝縮物捕集槽32は、流動側で、中間空間15に配置された凝縮物排出管34と接続されており、この凝縮物排出管によって凝縮物が中空空間3から排出される。凝縮物排出管34は、中心軸Mと平行に実質的に直線状に延びるとともに、ハウジング2の長さ全体にわたって延びている。凝縮物排出管はハウジング2の2つの端部に、それぞれプレート90によって定着されている。ハウジングの下側に配置されたプレート90と、ハウジング内面11との間には、間隙94ないし環状隙間が設けられており、ハウジング内面11に溜まった水を、これを通して下方へ流出させることができる。
【0054】
凝縮物排出管34は二重の機能を果たす。一方ではこれにより、微細分離器28で形成される凝縮物が下方に向かって中空空間3から運び出される。他方では、微細分離器28と加熱管18との間におけるその空間的配置が、流入空間12から流出空間16へと移行して流れる流体流の好ましい圧力損失を生じさせ、それにより、加熱空間14における垂直方向の流動分布が改善される。特に、中空空間3の下側領域での動圧が回避され、ないしは大幅に低減される。さらに凝縮物排出管34の配置によって、加熱管18への流れ込み方向にも影響を及ぼすことができる。それにより生成される乱流によって、束の第1の管列への流体流の熱移行が改善される。
【0055】
微細分離器28を援用すれば、水分割合を<0.5%から1%までに引き下げることができる。ただし、乾燥空間13への微細分離器28の取付は圧力損失を伴い、また、微細分離器28のない実施形態に比べて流入空間12が狭くなる。本実施例では、微細分離器28は乾燥空間13で、中心軸Mを中心とする直径約4mの外側円の上に配置されており、約70m2の流れ込み面積を提供する。加熱部材への流れ込みを改善するために、ないしは流れ込み速度の接線方向成分を低減し、ないしは全面的に排除するために、案内板、穴付き板、ないし案内羽根が流入空間12に配置されていてよく、あるいは、さらに内側に位置する空間に配置されていてよい。ただし、このような方向転換装置により、流入空間12がそのサイズに関して減少する。案内板、穴付き板、および案内羽根は、サイクロン分離器1でそれぞれ単独で、またはさまざまに異なる相互の組み合わせとして、適用することができる。
【0056】
加熱部材としては、特に熱交換器で用いられるような管束を利用することができる。できる限り広い加熱面積を提供するために、リブ付き管ないしスリット入りのリブ付き管を使用することができる。また、場合によりこれらとの組み合わせで、平滑管を使用することもできる。このとき管は、たとえば生蒸気により約70バールで貫流され、および/または(多段式の加熱の場合には)高圧タービンの抽気蒸気により約30バールで貫流される。加熱管18は、加熱されるべき流体流にできる限り少ない流動抵抗しか与えないために、円形の断面形状を外面に有しているのが好ましい。
【0057】
図1に示すサイクロン分離器1が、図3では左側と右側の縦断面図として、それぞれ考えられる実施形態で示されている。いずれの実施形態でも、サイクロン分離器1のハウジング2は実質的に垂直方向に設置されている。ハウジング2は実質的に中空円筒状に構成されており、中心軸Mを中心として回転対称である。ハウジング2の円周にわたって均等に配分され、特に1400mmの直径を有する、それぞれ4つの供給配管6が設けられている。高圧タービンから出てくる蒸気は、(重力の作用を超えて)下方に向かう速度成分をもって約15°の勾配で中空空間3に流入し、それにより、希望される実質的に螺旋状またはつる巻線状の流動案内がサポートされる。蒸気は供給配管6を通ってハウジング2の中へ案内され、ハウジング内面11へ接線方向で流れ込む。このとき蒸気の水成分が、ハウジング内面11で析出される。サイクロン分離器1で形成される流動状況に基づき、および場合により案内板、案内羽根、ないし穴付き板を利用して、主として蒸気の気体成分が乾燥空間13へと流れ、さらに中間空間15、加熱空間14、および引き続いて流出空間16へと流れる。
【0058】
ハウジング2の上側端部と下側端部には、排出空間16と流動側でそれぞれ接続された、直径約1800mmの排出配管24がそれぞれ設けられている。このようにして蒸気は加熱された後に、上方に向かっても下方に向かってもハウジング2から外へ流れ出し、引き続いて、排出配管24により低圧タービン(図示せず)まで案内される。サイクロン分離器1は、流出空間16と流動側で上方に接続された排出配管24を、低圧タービンの取込口と実質的に直接接続することができるように、低圧タービンに対して空間的に配置されるのが好都合である。流出空間16の下側端部に連通する排出配管24は、低圧タービンの取込口に向かって上方へ方向転換される。
【0059】
左側の図面部分に示すサイクロン分離器1の実施形態は、蒸気の2段階の加熱ないし過熱のために設計されている。環状スペースとして構成された加熱空間14には、加熱管18が環状束の形態で組み付けられている。蒸気(流動方向22で図示)はまず微細分離器28を通り、次いで、蒸気にいわば抵抗を与え、そのようにして圧力損失を生じさせる凝縮物排出管34の構造を通る。このようにして、蒸気が垂直方向で不均等に分散し、そのために状況によっては加熱管18をその長さ全体にわたって加熱に利用できなくなるのを防ぐことができる。
【0060】
そして蒸気は加熱空間14の中で中心軸Mを中心として同心的に位置する第1の段階36ないし第1の群の加熱管18を通って流れる。引き続いて蒸気は、流出空間16にまで至る経路で、第1の段階36の内部で同心的に配置された第2の段階37ないし第2の群の加熱管18を通って流れる。外側に位置する第1の段階36は、抽気蒸気引込配管40により、高圧タービンから約30バールで抽気蒸気の供給をうける。内側に位置する加熱管18の第2の段階37は、生蒸気引込配管38により、蒸気生成器66(図示せず)から約70バールで生蒸気の供給をうける。それぞれ異なる蒸気が供給される各群の加熱管18のそれぞれの取込集合部の間には、それぞれの蒸気を分断するために分断板82が設けられていてよい。このことは、吐出集合部についても同様に当てはまる。2つの管束を入れ子式に配置する代わりに、分断された管底面を備える1つの管束を使用することもできる。
【0061】
このように2段階で加熱された蒸気が流出空間16へと流れ、そこからさらに排出配管24を通って低圧タービンへと流れる。こうして気体成分は、流出空間16の内部に入っていく経路で連続的に加熱される。このような形式の2段階の加熱は、追加の蒸気引込配管と管群とを用いた多段階の加熱へと、自明な仕方で一般化することができる。
【0062】
図3の右側の図面部分には、1段階の加熱が行われる実施形態が示されている。加熱管18はすべて生蒸気引込配管38を介して、生蒸気の供給をうける。
【0063】
微細分離器28は凝縮物捕集槽32と接続されており、そこから凝縮物は凝縮物排出管34を介して、凝縮物放出配管46によりハウジング2から外へ案内される。
【0064】
ハウジング内面11に沿って下方へ流れる凝縮物は、本例では水は、凝縮物排出部43の中に入り、凝縮物放出配管46を通ってハウジング2から出ていく。さらに第2の凝縮物排出部42が、ハウジング2のさらに低い底面領域に設けられており、これを介して、下側の部分空間に溜まった凝縮物を凝縮物放出配管46から排出することができる。
【0065】
図3に示すサイクロン分離器1の実施形態は、環状束ないし個別束20を備える図1に示す実施形態と組み合わせることができる。
【0066】
図3に鎖線の円39で図示する詳細部が、図4に拡大して示されている。乾燥器ないし微細分離器28は凝縮物捕集槽32と接続されており、サイクロン分離器1の動作状態のときに乾燥器ないし微細分離器28で形成される凝縮物がその中に入る。凝縮物は1つまたは複数の引込配管41を通って、それぞれ引込配管41と接続された凝縮物排出管34により下方へと流れる。凝縮物捕集槽32は、必要に応じて異なる構成となっていてよい。各々の微細分離器28に、凝縮物捕集槽32が付属しているのが好ましい。すべての微細分離器28から凝縮物が流れ入ることができる、単一の環状の凝縮物捕集槽32を使用することも可能である。
【0067】
凝縮物捕集槽32は、さまざまに異なる高さでハウジング2に取り付けられるのが好ましい。図3では、ハウジング2の凝縮物捕集槽32は2つの異なる平面内に組み付けられている。図5は、上側のレベルの凝縮物捕集槽32を、図3に示すサイクロン分離器1の平面図で示している。図5では、流動側でこれと接続された2つの引込配管41と、これと接続された凝縮物排出管34とが示されている。さらに別の2組の引込配管41および凝縮物排出管34を見ることができ、これらの各組は、図示された凝縮物捕集槽32と流動側で接続されているのではなく、むしろ、さらに下側に位置する、本例では上側の凝縮物捕集槽32で隠された凝縮物捕集槽と接続されている。異なる高さで相上下して位置する2つの凝縮物捕集槽32に付属する凝縮物排出管34は、それが組み付けられた円周に沿って交互に取り付けられている。円の湾曲はあくまでも模式化されており、図5から正しい縮尺で見てとることはできない。
【0068】
各々の凝縮物排出管34がちょうど1つの凝縮物捕集槽32と接続されるこのような設計態様は、動作状態のときに凝縮物の高い処理量が保証されるという利点がある。あるいはその別案として、複数の凝縮物捕集槽32が同じ凝縮物排出管34と流動側で接続されていてもよい。
【0069】
蒸気タービン設備62の好ましい実施形態が図6に示されている。この蒸気タービン設備は、蒸気生成器66と、高圧タービン70と、低圧タービン74とを含んでいる。サイクロン分離器1は、高圧タービン70と低圧タービン74の間で流動側に介在している。蒸気生成器66で生成された生蒸気は、仕事を行うために高圧タービン70へ送られる。蒸気は仕事を行って高圧タービン70で減圧され、それによって水分割合が高くなる。低圧タービン74で蒸気をできる限り効率的にエネルギー生成に利用できるようにするには、適当な仕方で前処理をしなくてはならない。そのために水分割合が低減されてから、引き続いて過熱状態へと移行させられる。この理由により、高圧タービン70の蒸気出口から出ていく蒸気は、分配器を介して、供給配管6によりサイクロン分離器1のハウジング2の中へ案内される。そこで蒸気はハウジング内面11に対して接線方向で流入し、それによって回転する。蒸気の気体成分はハウジング内面へと流れ入り、そこで加熱部材によって、特に加熱管によって、過熱状態にされる。そこから過熱した蒸気は排出配管24を通って低圧タービン74の蒸気入口に送られる。そこで、このようにして前処理された蒸気を、再びエネルギー取得のために利用することができる。サイクロン分離器1の加熱管(ここには図示せず)は、本実施例では、加熱引込配管78によって蒸気生成器66から生蒸気を供給される。その別案または代替として、高圧タービン70からこの目的のために抽気蒸気を取り出すことができる。
【0070】
サイクロン分離器1は、当然ながら、蒸気タービン設備での適用に限定されるものではない。サイクロン分離器は基本的に、多相流体流から重い成分または相が分離され、気体成分が加熱ないし過熱されることが意図されるところでは常に適用することができる。流体流の重い成分は、上に説明したとおり水であってよい。あるいは、重い成分が固体粒子からなっている用途も考えられる。これは、たとえばすすや汚れ粒子であってよい。
【符号の説明】
【0071】
1 サイクロン分離器
2 ハウジング
3 中空空間
6 供給配管
10 流入方向
11 ハウジング内面
12 流入空間
13 乾燥空間
14 加熱空間
15 中間空間
16 流出空間
18 加熱管
20 個別束
22 流動方向
24 排出配管
28 微細分離器
32 凝縮物捕集槽
34 凝縮物排出管
36 第1の段階
37 第2の段階
38 生蒸気引込配管
39 鎖線の円
40 抽気蒸気引込配管
41 引込配管
42,43 凝縮物流出部
46 凝縮物放出配管
62 蒸気タービン設備
66 蒸気生成器
70 高圧タービン
74 低圧タービン
78 加熱引込配管
82 分断板
90 プレート
94 間隙
M 中心軸
E 平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸(M)を中心として実質的に回転対称に構成されて中空空間(3)を取り囲むハウジング(2)と、ハウジング内面(11)に対して実質的に接線方向に向く流体流の流入のために設計された、流体流のための少なくとも1つの供給配管(6)と、流体流の分離された気体成分のための少なくとも1つの排出配管(24)とを有する、多相流体流を相分離するためのサイクロン分離器(1)において、前記中空空間(3)は前記中心軸(M)を起点として半径方向で見て実質的に円形の断面をもつ流出空間(16)と、次に掲げる順番でこれに後続するそれぞれ実質的に円形の断面をもつ加熱空間(14)と、中間空間(15)と、乾燥空間(13)と、流入空間(12)とを有しており、前記流入空間(12)は外方に向かって前記ハウジング(2)により区切られており、前記加熱空間(14)は気体成分の加熱のために設計された加熱部材を含んでおり、前記乾燥空間(13)には少なくとも1つの微細分離器(28)とこれに付属する少なくとも1つの凝縮物捕集槽(32)とが配置されており、少なくとも1つの前記凝縮物捕集槽(32)は前記中間空間(15)に配置された少なくとも1つの凝縮物排出管(34)と接続されており、該凝縮物排出管によって、動作状態で少なくとも1つの前記微細分離器(28)に形成される凝縮物が前記中空空間(3)から排出されるサイクロン分離器。
【請求項2】
前記中心軸(M)に対して垂直に位置する少なくとも1つの平面(E)に、1つの凝縮物捕集槽リングを少なくとも近似的に共同で形成する、前記乾燥空間(13)に配置された複数の凝縮物捕集槽(32)が設けられており、各々の前記凝縮物捕集槽(32)はそれぞれ前記中間空間(15)に配置された付属の前記凝縮物排出管(34)と接続されている、請求項1に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項3】
第1の凝縮物捕集槽リングを備える第1の平面(E)と、第2の凝縮物捕集槽リングを備える少なくとも1つの第2の平面(E)とが設けられており、前記第1の凝縮物捕集槽リングには第1の群の凝縮物排出管(34)が付属しており、前記第2の凝縮物捕集槽リングには第2の群の凝縮物排出管(34)が付属している、請求項2に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項4】
前記第1の群の凝縮物排出管(34)と前記第2の群の凝縮物排出管(34)が両方とも延びている前記中間空間(15)の縦方向区域において、これらの凝縮物排出管は前記サイクロン分離器(1)の円周方向で見て交互に配置されている、請求項3に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項5】
それぞれの前記凝縮物排出管(34)は前記中心軸(M)と平行に向いている、請求項1から4のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項6】
前記中心軸(M)に対して垂直方向に位置する切断平面を通るすべての凝縮物排出管(34)の通過点は実質的に1つの円上に位置している、請求項1から5のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項7】
それぞれの前記凝縮物捕集槽(32)は引込配管(41)によってそれぞれの前記凝縮物排出管(34)と接続されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項8】
ちょうど2つの排出配管(24)を有しており、両方の前記排出配管(24)は前記中心軸(M)の方向で見て反対向きの前記ハウジング(2)の端部で前記流出空間(16)と流動側で接続されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項9】
前記ハウジング(2)は実質的に中空円筒状に構成されている、請求項1から8のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項10】
前記中心軸(M)の実質的に垂直方向の向きを有している、請求項1から9のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項11】
1つまたは各々の前記供給配管(6)は前記中空空間(3)に流入する流体流の速度ベクトルが前記ハウジング(2)の前記中心軸(M)の方向の成分を有するように設計されている、請求項1から10のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項12】
前記ハウジング(2)の円周にわたって均等に配分されて配置された4つの供給配管(6)を有している、請求項1から11のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項13】
前記加熱部材は管状に構成されており、特に水蒸気である流体の加熱媒体により貫流されるように設計されている、請求項1から12のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)。
【請求項14】
高圧タービン(70)と、低圧タービン(74)と、請求項1から13のいずれか1項に記載のサイクロン分離器(1)とを備える蒸気タービン設備(62)において、少なくとも1つの前記供給配管(6)が前記高圧タービン(70)の蒸気出口と接続されており、少なくとも1つの前記排出配管(24)が前記低圧タービン(74)の蒸気入口と接続されている蒸気タービン設備。
【請求項15】
高圧タービン(70)と低圧タービン(74)とを備える蒸気タービン設備(62)を作動させる方法において、前記高圧タービン(70)の蒸気出口から流れ出る蒸気が、中心軸(M)を中心として実質的に回転対称のハウジング(2)で取り囲まれた中空空間(3)へと案内され、それによって蒸気が回転し、その気体成分が液体成分から分離されて前記ハウジング(2)の内部領域に集められ、実質的に気体の成分は内部領域へ移行するときに微細分離器(28)を通るように案内され、その液体成分がさらに低減され、次いで環状に配分された凝縮物排出管(34)の構造を通るように案内され、引き続いて加熱部材によって加熱され、次いで前記低圧タービン(74)の蒸気入口に供給される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−508133(P2013−508133A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534575(P2012−534575)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006407
【国際公開番号】WO2011/047849
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(501315289)アレヴァ エンペー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (61)
【Fターム(参考)】