説明

多管式熱交換器

【課題】熱交換効率の維持、下部熱交換室の管板の廃止、長寿命化、設備費の低減を図ることができる多管式熱交換器を提供する。
【解決手段】高温排ガス導入室1と、内部に熱交換室2を形成する外筒2′と、外筒の下端に接続される排ガス排出室3と、排ガス導入室と熱交換室を隔てる高温側管板4と、排ガス排出室と熱交換室を隔てる低温側管板5と、熱交換室内に配管される多数本の伝熱管6と、熱交換室の中間部に取り付けられ、上部熱交換室2aと下部熱交換室2bを形成する仕切り板7と、交換室内に配設される数枚のバッフルプレート8と、上部予熱流体導入ヘッダー10と、下部予熱流体導入ヘッダー9と、熱交換室の中間に設けられる予熱流体排出ヘッダー11と、下部予熱流体導入ヘッダーに導入される予熱用低温空気P1から分岐されると共に上部予熱流体導入ヘッダーに導入される予熱用低温空気の流量を調整する流量調整弁12から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多管式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の多管式熱交換器としては、図2および図3に示すように、焼却炉S等の熱源装置の高温排ガスF1(例えば、850〜900℃)を導入する排ガス導入室1と、外筒2′内に形成されると共に高温排ガスF1と予熱用低温空気P1を熱交換する熱交換室2と、熱交換された低温排ガスF2を排出する排ガス排出室3から成り、上記排ガス導入室1と熱交換室2を隔てる高温側管板4と、上記熱交換室2と排ガス排出室3を隔てる低温側管板5と、上下端部が上記高温側管板4と低温側管板5にそれぞれ接続されて、上記排ガス導入室1および上記排ガス排出室3に連通する複数の伝熱管6と、上記熱交換室2に予熱用低温空気P1を導入する予熱空気導入口9aと、上記熱交換室2から予熱用高温空気P3(例えば、650〜700℃)を排出して上記焼却炉Sに供給する予熱空気排出口11aと、上記高温側管板4の上記熱交換室2側に設置される副室13から構成され、上記排ガス導入室1に導入される上記高温排ガスF1は、上記伝熱管6を通って上記排ガス排出室3から低温排ガスとして排出され、一方、送風器V1により上記予熱空気導入口9aから上記熱交換室2に導入される予熱用低温空気P1は、該熱交換室2において上記伝熱管6内を流れる高温排ガスと熱交換されて昇温され、予熱用高温空気P3として上記予熱空気排出口11aから上記焼却炉S等の熱源装置に供給される。なお、上記熱交換室2には数枚のバッフルプレート(邪魔板)14が設置されていて、導入された予熱用低温空気P1を上記伝熱管6に対して直交および並行の流れに整流して、熱交換効率を高めるようにしている。
また、上記予熱用低温空気P1から分岐される予熱用低温空気P2は、上記副室13に導入されて、上記高温側管板4を冷却し、リターンパイプ15を通って、上記熱交換室2内に流出し、上記予熱用低温空気P1と合流する。なお、図1に波線で示すように、上記予熱用低温空気P2は、予熱用低温空気P1から分岐されることなく、送風器V3により独立して副室13に導入する場合もある。
これに近い従来技術が特開2008−224173号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
また従来、図4および図5に示すように、主として高温排ガスF1の温度冷却を目的とする熱交換室2−aと、主として予熱用低温空気P1の回収温度を上昇させることを目的とする熱交換室2−bとを直列に接続し、上記熱交換室2−aの排ガス導入室1から導入される上記高温排ガスF1を、該熱交換室2−a内の伝熱管6および上記熱交換室2−b内の伝熱管6′を順次通過させて、該熱交換室2−bの排ガス排出室3から低温排ガスF2として排出する。一方、予熱空気導入口16から上記熱交換室2−aに導入される予熱用低温空気P1は、該熱交換室2−aにおいて上記伝熱管6内を流れる高温排ガスF1と熱交換されて昇温され、熱交換室2−aの排ガス排出口17から連通管18を通じて上記熱交換室2−bの予熱空気導入口19から上記熱交換室2−bに導入され、該熱交換室2−bにおいて上記伝熱管6内を流れる高温排ガスF1と熱交換されて更に昇温され、予熱用高温空気P3として上記熱交換室2−bの予熱空気排出口20から上記焼却炉S等の熱源装置に供給される、多感式熱交換器があった。
【0004】
しかしながら、図2および図3に開示されている従来の熱交換器は、冷却空気として投入される流体は、予熱用空気の一部が分岐されるため予熱用空気の絶対量が少ない場合には、分岐される予熱用空気も少量化してしまうので、管板冷却の効果が低減してしまうという問題点があった。
【0005】
また、図4および図5に開示されている従来の熱交換器は、熱交換の効率上、排ガスの入口温度の下限値に限界があり、十分な延命対策とはならないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−224173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上部の高温側管板への予熱用低温空気の導入量を調整することで、如何なる流量条件においても高温側管板の冷却効果を維持し、下段側熱交換器の入口温度も同時に制御することで熱交換効率を維持し、また、下部熱交換室の管板を廃止し、上下熱交換器の一体化による長寿命化と、設備費の低減を実現することができる多管式熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の多管式熱交換器は、焼却炉等の熱源装置から高温排ガスを導入する排ガス導入室と、該排ガス導入室に上端が接続されると共に内部に熱交換室を形成する外筒と、該外筒の下端に接続される排ガス排出室と、上記排ガス導入室と熱交換室を隔てる高温側管板と、上記排ガス排出室と熱交換室を隔てる低温側管板と、上記熱交換室内に配管されると共に上記排ガス導入室内に流入する高温排ガスを上記排ガス排出室に流通させる多数本の伝熱管と、上記熱交換室の中間部に取り付けられると共に熱交換室を上部熱交換室と下部熱交換室に二分する仕切り板と、該上部熱交換室および下部熱交換室内に配設される数枚のバッフルプレートと、上記上部熱交換室の上部に設けられる上部予熱流体導入ヘッダーと、上記下部熱交換室の下部に設けられる下部予熱流体導入ヘッダーと、上部熱交換室の下部および下部熱交換室の上部に設けられる予熱流体排出ヘッダーと、上記下部予熱流体導入ヘッダーに導入される予熱用低温空気から分岐されると共に上記上部予熱流体導入ヘッダーに導入される予熱用低温空気の流量を調整する流量調整弁と、から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多管式熱交換器は、下記の効果を奏する。
1)上部の高温側管板への予熱用低温空気の導入量を調整することで、如何なる流量条件においても高温側管板の冷却効果を維持し、下段側熱交換器の入口温度も同時に制御することで熱交換効率を維持することができる。
2)下部熱交換室の管板を廃止することができる。
3)従来の2段式上下熱交換器を一体化し長寿命化を図ることができる。
4)設備費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の多管式熱交換器の一実施例を示す説明図である。
【図2】従来の多管式熱交換器を焼却炉に組み合わせた説明図である。
【図3】図2の多管式熱交換器の構成および作用の説明図である。
【図4】従来の別の多管式熱交換器を焼却炉に組み合わせた説明図である。
【図5】図4の多管式熱交換器の構成および作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の多管式熱交換器の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0012】
図1において、1は排ガス導入室、2は熱交換室、2′は外筒、3は排ガス排出室、4は高温側管板、5は低温側管板、6は伝熱管、7は仕切り板、8はバッフルプレート、9は下部予熱流体導入ヘッダー、9aは低温側予熱空気導入口、10は上部予熱流体導入ヘッダー、10aは高温側予熱空気導入口、11は予熱流体排出ヘッダー、11aは予熱空気排出口、12は流量調整弁、F1は高温排ガス、F2は低温排ガス、P1は予熱用低温空気、P2は予熱用低温空気、P3は予熱用高温空気である。
【0013】
上記排ガス導入室1には、焼却炉S(図2参照)等の熱源装置からの高温排ガスF1(例えば、850〜900℃)が導入される。該排ガス導入室1の下方には外筒2′の上端が一体的に接続されると共に、該外筒2′の下端には上記排ガス排出室3が一体的に接続される。該外筒2′内には熱交換室2が形成されている。
【0014】
上記排ガス導入室1と熱交換室2は、高温側管板4により隔てられると共に、上記排ガス排出室3と熱交換室2は、上記低温側管板5により隔てられる。熱交換室2内には多数本の伝熱管6が配管され、その上下端は、上記高温側管板4および上記低温側管板5にそれぞれ接続されている。上記排ガス導入室1内に流入する高温排ガスF1は、上記伝熱管6を通って、上記排ガス排出室3に流れる。
【0015】
また、上記熱交換室2の中間部には、仕切り板が取り付けられていて、該熱交換室2を、上部熱交換室2aと下部熱交換室2bに二分する。これら上部熱交換室2aと下部熱交換室2b内には、数枚のバッフルプレート(邪魔板)8が配設されている。
【0016】
上記上部熱交換室2aの上部には上部予熱流体導入ヘッダー10が設けられていて、これに上部予熱流体導入口10aが開設されている。また、上記下部熱交換室2bの下部には下部予熱流体導入ヘッダー9が設けられていて、これに下部予熱流体導入口9aが開設されている。さらに、上部熱交換室2aの下部および下部熱交換室2bの上部であって、上記仕切り板7が設けられている付近の熱交換室2には、予熱流体排出ヘッダー11が設けられていて、これに予熱流体出口11aが開設されている。
【0017】
上記下部予熱流体導入口9aには予熱用低温空気P1が供給され、バッフルプレート(邪魔板)8により整流されながら伝熱管6内を流れる高温排ガスF1と熱交換を行い、昇温されて予熱流体出口11aから、上記熱源装置(図示せず)の空気導入口に供給される。
【0018】
一方、上記予熱用低温空気P1から分岐される予熱用低温空気P2は、流量調整弁12により流量が調整されて、上記上部予熱流体導入口10aから上部熱交換室2a内に供給され、バッフルプレート8(邪魔板)により整流されながら伝熱管6内を流れる高温排ガスF1と熱交換を行い、上記予熱流体排出ヘッダー11内で昇温された上記予熱用低温空気P1と合流し、予熱流体出口11aから上記熱源装置の空気導入口に供給される。
【符号の説明】
【0019】
1 排ガス導入室
2 熱交換室
2a 上部熱交換室
2b 下部熱交換室
2′ 外筒
3 排ガス排出室
4 高温側管板
5 低温側管板
6 伝熱管
7 仕切り板
8 バッフルプレート
9 下部予熱流体導入ヘッダー
9a 低温側予熱空気導入口
10 上部予熱流体導入ヘッダー
10a高温側予熱空気導入口
11 予熱流体排出ヘッダー
11a予熱空気排出口
12 流量調整弁
F1 高温排ガス
F2 低温排ガス
P1 予熱用低温空気
P2 予熱用低温空気
P3 予熱用高温空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉等の熱源装置から高温排ガスを導入する排ガス導入室と、該排ガス導入室に上端が接続されると共に内部に熱交換室を形成する外筒と、該外筒の下端に接続される排ガス排出室と、上記排ガス導入室と熱交換室を隔てる高温側管板と、上記排ガス排出室と熱交換室を隔てる低温側管板と、上記熱交換室内に配管されると共に上記排ガス導入室内に流入する高温排ガスを上記排ガス排出室に流通させる多数本の伝熱管と、上記熱交換室の中間部に取り付けられると共に熱交換室を上部熱交換室と下部熱交換室に二分する仕切り板と、該上部熱交換室および下部熱交換室内に配設される数枚のバッフルプレートと、上記上部熱交換室の上部に設けられる上部予熱流体導入ヘッダーと、上記下部熱交換室の下部に設けられる下部予熱流体導入ヘッダーと、上部熱交換室の下部および下部熱交換室の上部に設けられる予熱流体排出ヘッダーと、上記下部予熱流体導入ヘッダーに導入される予熱用低温空気から分岐されると共に上記上部予熱流体導入ヘッダーに導入される予熱用低温空気の流量を調整する流量調整弁と、から構成されることを特徴とする多管式熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−169326(P2010−169326A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12735(P2009−12735)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】