説明

多糖シンターゼ

本発明は、一般的には多糖シンターゼに関する。より詳細には、本発明は(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼに関する。本発明は、とりわけ、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを制御する方法ならびに(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸およびアミノ酸配列を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には多糖シンターゼに関する。より詳細には、本発明は(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼに関する。
【背景技術】
【0002】
禾穀類の各種組織は、穀粒発育中、休眠中および発芽後において、多様な機能を有する。
【0003】
例えば、果皮膜および種皮は、発育中および休眠中に種を保護することに係わる。しかし、穀粒が成熟し、穀粒のこれらの外側組織が死んだ後、組織内残留物は、ほぼ全体が細胞壁残留物から構成される。種皮とアリューロン表面との間にある核組織は、穀粒成長のために栄養素の伝達に関与するが、成熟と同時にこの組織もまた、細胞壁断片を残すのみで崩壊する。成熟した穀粒のデンプン質の胚乳の薄い有壁細胞は死ぬが、デンプンと貯蔵タンパク質が充満する。対照的に、厚い有壁かつ有核のアリューロン細胞は、穀粒の成熟時点でも生きており、タンパク体および脂肪滴が充満している。デンプン質胚乳の接触面には胚盤があり、胚乳を発育させるための栄養素を運ぶ役割をすると共に、発芽中に消化産物を運び、発育する胚芽に対して沈着する。
【0004】
穀粒中の各組織の異なる構造と機能は、少なくとも1つには、これらの細胞種それぞれの細胞壁組成によって決まる。
【0005】
非セルロース多糖類は、禾穀類組織の細胞壁における主要な成分であり、例えば(1,3;1,4)−β−D−グルカン、ヘテロキシラン(主にアラビノキシラン)、グルコマンナン、キシログルカン、ペクチン多糖類およびカロースなどを含んでなる。これら非セルロース多糖類は、通常、穀粒全重量の10%未満を構成するにすぎないが、穀粒品質の主要な決定因子である。
【0006】
個々の非セルロース多糖類とその他の壁構成成分との正確な物理的関係は述べられてこなかったが、壁中で、セルロースの微小線維は非セルロース多糖類およびタンパク質のマトリックス相に組み込まれいる。壁の完全性は、主にマトリックス相と微小線維構成素との間の広範な非共有結合相互作用、特に水素結合によって維持される。ヘテロキシランの間にあるいくつかの穀粒組織の壁中に、共有結合性会合、リグニン、およびタンパク質が存在する。各成分間の共有結合性会合の範囲は、壁の種類および遺伝子型によっても異なる。
【0007】
非セルロース多糖類、特にヘテロキシランおよび(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、アリューロンおよびデンプン質胚乳の壁、また恐らくは、胚盤においても、比較的高い割合を占める。これらの組織において、セルロースの割合はそれに反比例して低くなる。該してセルロース含有量が低い壁は、リグニンを全く含まないという事実の他、穀粒の中央部の壁の構造的な硬さに関する限定的な要件、および穀粒の発芽後に壁成分を急速に脱重合するための要件に関係すると考えられている。
【0008】
対照的に、果皮膜の細胞壁は、胚芽および胚乳のための保護膜を提供し、発芽中に発動しないものであるが、同細胞壁中のセルロースおよびリグニンの含有量は非常に高く、非セルロース多糖類の濃度は、それに応じて低い。
【0009】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、混合結合もしくは穀類β−グルカンとも呼ばれる、非セルロース多糖類であるが、穀類および牧草が属する単子葉植物族イネ科の植物、および同類のイネ目に自然発生する。
【0010】
これらの非セルロース多糖類は、ほとんどの禾穀類のデンプン質胚乳およびアリューロン細胞壁において重要な構成物質であり、該壁重量のうち、最高で70%から90%までを占めることがよくある。
【0011】
オオムギ、オートムギおよびライムギは(1,3;1,4)−β−D−グルカンの宝庫であるが、これらに比べ、コムギ、イネおよびトウモロコシは、この多糖類濃度が低い。(1,3;1,4)−β−D−グルカンはまた、穀類および牧草の栄養組織にある細胞壁の比較的微量な構成要素である。栄養組織において比較的微量な構成要素として現れるが、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、例えば、動物による栄養組織の消化率の観点から、またバイオエタノール生産用に作物残滓を使用する観点からもなお重要である。
【0012】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、酒造および飼料製造業者を含む大規模食品加工活動において重要である。さらには、(1,3;1,4)−β−D−グルカンなど、穀類の非デンプン質多糖類は、ヒトの栄養素として潜在的に有効な効果があることから、近年新たな関心を引き寄せている。
【0013】
しかしながら、このような関心の高さにもかかわらず、(1,3;1,4)−β−D−グルカン生合成をはじめとして、禾穀類中の非セルロース多糖類生合成を制御する遺伝子および酵素の知識には大きな隔たりがある。
【0014】
穀粒中の(1,3;1,4)−β−D−グルカン濃度は、遺伝子型および環境の両者により影響されると考えられている。例えば、禾穀類中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの濃度は、遺伝子型、穂の穀粒の位置、植え付け場所、成長中の植え付け場所、気候条件および土壌窒素などの環境条件に左右される。
【0015】
しかしながら、穀粒中の(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量に寄与する遺伝子は、まだ特定されていない。
【0016】
典型的な生化学的アプローチを通じた(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする遺伝子の特定は、この酵素を均一にまで精製することができないため、著しく阻まれてきた。(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼは、膜結合型であるので、活性な形態で可溶化するのが困難である。さらに(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼは、細胞の破壊後に急速に活性を失うため、細胞内に極めて少量で存在している可能性が高い。数多くの試みにもかかわらず、均一なまでの(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの精製は達成されておらず、したがって酵素自体から得られたアミノ酸配列についての報告は一切ない。精製された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ酵素から部分的なアミノ酸配列でさえも得られないので、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする遺伝子を特定し、単離することも阻まれてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルの変化を促し、これによって穀粒または栄養組織の品質を変えられるので、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする遺伝子の特定は望ましいと言える。そこで、細胞内の(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルの変化を可能にし、それに伴う穀類または栄養組織品質の変化を可能にするため、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする遺伝子の特定は、是非とも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書における従来技術の参照は、従来技術がいかなる国においても共通する一般知識の一部を形成することの同意と、またはいかなる形態の示唆と解釈されるべきではない。
【0019】
本発明は、1つには、本明細書において「(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ」と称される、(1,3;1,4)−β−D−グルカンに関する生合成酵素をコードする遺伝子の特定に基づく。
【0020】
本発明により、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼはCslF遺伝子ファミリーのメンバーによってコードされることが明らかにされた。
【0021】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするヌクレオチド配列、および対応するアミノ酸配列の特定の結果として、本発明はとりわけ、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を制御し、それによって細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを制御する方法および組成物を提供する。
【0022】
したがって、第1の態様において、本発明は、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを制御する方法であって、該細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させるステップを含む方法を提供する。
【0023】
特に好ましい実施形態の1つとして、細胞は植物細胞、さらに好ましくは単子葉植物細胞および最も好ましくは禾穀類植物細胞である。
【0024】
第2の態様において、本発明は細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させる方法であって、該細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を変化させるステップを含む方法を提供する。
【0025】
第3の態様において、本発明は細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させる方法であって、該細胞中のCslF遺伝子またはその機能的ホモログの発現を変化させるステップを含む方法を提供する。
【0026】
第4の態様において、本発明は(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成方法であって、該細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸を発現させるステップを含む方法を提供する。
【0027】
第5の態様において、本発明は、本発明の第4の態様の方法により生成された、(1,3;1,4)−β−D−グルカンも提供する。
【0028】
第6の態様において、本発明は以下のもの:
(i)同じ分類群の野生型細胞と比較して変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンレベル;
(ii)同じ分類群の野生型細胞と比較して変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性;
(iii)同じ分類群の野生型細胞と比較して変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現
のうち、いずれか1以上を示す細胞を提供する。
【0029】
さらに、第7の態様において、本発明は、本発明の第6の態様による1以上の細胞を含んでなる、多細胞構造物を提供する。
【0030】
上記の通り、1つの好ましい実施形態において、細胞は植物細胞であり、したがって本発明は、本発明の第6の態様による1以上の植物細胞を含んでなる植物全体、植物組織、植物器官、植物断片、植物繁殖材料または培養植物組織を含む。さらに好ましい実施形態において、本発明は、本発明の第6の態様による1以上の細胞を含んでなる穀類植物を提供する。特に好ましい実施形態において、本発明は、本発明の第6の態様による1以上の植物細胞を含んでなる穀粒を提供する。
【0031】
したがって、第8の態様において、本発明は変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンレベルを示す穀粒であって、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの変化したレベルおよび/もしくは活性、および/または(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸分子の変化した発現を示す1以上の細胞を含んでなる、上記穀粒を提供する。
【0032】
第9の態様において、本発明は以下のもの:
(i)本発明の第8の態様に記載の穀粒を製粉することにより製造される穀粉;および
(ii)任意により、1以上の他の穀粒を製粉することにより製造されたる穀粉
を含んでなる穀粉も提供する。
【0033】
上記の通り、本発明は、1つには、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするヌクレオチドおよびアミノ酸配列の特定および単離に基づく。
【0034】
したがって、第10の態様において、本発明は(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする、単離された核酸分子を提供する。
【0035】
第11の態様において、本発明は以下のもの:
(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列;
(ii)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列に対して少なくとも50%同一なヌクレオチド配列;
(iii)低ストリンジェンシー、より好ましくは中程度のストリンジェンシーおよび最も好ましくは高ストリンジェンシー条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子にハイブリダイズするヌクレオチド配列;
(iv)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12のいずれかにより表されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(v)(i)〜(iv)のいずれか1つに記載のものの相補体であるヌクレオチド配列;
(vi)(i)〜(iv)のいずれか1つに記載のものの逆相補体であるヌクレオチド配列;
(vii)(i)〜(iv)のいずれか1つの断片
のうち、いずれか1以上を含む、単離された核酸分子も提供する。
【0036】
第12の態様において、本発明は、本発明の第11の態様に記載の単離された核酸分子を含む遺伝子構築物またはベクターを提供する。
【0037】
第13の態様において、本発明は、本発明の第10または第11の態様に記載の単離された核酸分子または本発明の第12の態様に記載の遺伝子構築物を含んでなる細胞にまで及ぶ。
【0038】
第14の態様において、本発明は、本発明の第13の態様に記載の細胞のうち1以上を含んでなる、多細胞構造物を提供する。
【0039】
上記の通り、本発明は同様に、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのアミノ酸配列を提供する。
【0040】
したがって、第15の態様において、本発明は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質をコードするアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを提供する。
【0041】
第16の態様において、本発明は以下のもの:
(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12のいずれかにより表されるアミノ酸配列;
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12のいずれかにより表されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列;
(iii)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列;ならびに/または
(iv)(i)、(ii)もしくは(iii)のいずれか1つの断片
のうち1以上を含む、単離されたポリペプチドを提供する。
【0042】
好ましい実施形態において、本発明の単離されたポリペプチドは、上記に定義の「(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ」を規定するアミノ酸配列を含む。
【0043】
上記の通り、本発明の第16の態様では、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを含む、単離されたポリペプチドの断片も提供する。
【0044】
本発明の第16の態様に記載の単離されたポリペプチドおよび(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを持ったポリペプチドは、例えば、単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質に結合する抗体の生成に有用である。
【0045】
したがって、第17の態様において、本発明は、上記に定義の単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質またはそのエピトープに対して生起された、抗体またはそのエピトープ結合性フラグメントを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本明細書を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの、その変化形は、記述された要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を示唆するが、 その他任意の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の排除を示唆するものではないと理解されよう。
【0047】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、本明細書において配列識別子番号(配列番号)により示される。配列番号は、配列識別子<400>1(配列番号:1)、<400>2(配列番号2)などに数値的に対応する。配列識別子の概要を表1に示す。配列のリストは、本明細書の巻末に示されている。
【表1】



【0048】
好ましい実施形態の説明
以下の説明は、特定の実施形態のみを説明することを目的とするが、上記の説明に関する限定であることを意図しないと理解されるべきである。
【0049】
本発明は、1つには、本明細書において「(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ」と称される(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生合成酵素をコードする遺伝子の特定に基づく。
【0050】
「(1,3;1,4)−β−D−グルカン」は、β−D−グルコピラノシル単量体が(1→4)結合および(1→3)結合の両者によって重合された直鎖、非分枝状の多糖類を含むと理解されるべきである。
【0051】
(1→4)結合および(1→3)結合の比率は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンが自然的に発生する際に、一般に2.2〜2.6:1の範囲である。ただし、比率はこの範囲以外のこともある。たとえば、ソルガム胚乳の(1,3;1,4)−β−D−グルカン中、同比率は、1.15:1である。2種類の結合は、規則的な繰り返し配列にはならない。(1→3)結合単位は、2以上の(1→4)結合により分離される。2ないし3つの隣り合う(1→4)結合の領域が優勢であるが、これら単位の配置には規則性がないことを重ねて述べる。結合配列は、2つのグルコース単位より、さらに前記結合への依存が薄く、二次マルコフ連鎖分布に従っている。さらに、10%以下の連鎖は、5から20の隣り合う(1→4)結合が拡張した領域からなる場合がある。したがって、穀類の(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、セロトリオシル(cellotriosyl)(G4G4GRed)、セロテトラオシル(cellotetraosyl)(G4G4G4GRed)単位の(1→3)−β−結合した共重合体とみなすことができる。
【0052】
内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカン中、三糖単位:四糖単位の比率は、穀物種によって異なる。例えば、コムギではその比率は3.0−4.5:1であるが、オオムギでは2.9−3.4:1、ライムギでは2.7:1およびオートムギでは1.8−2.3:1である。さらに、実際の比率は、(1,3;1,4)−β−D−グルカン抽出物の温度および条件によっても異なる可能性がある。
【0053】
穀類の(1,3;1,4)−β−D−グルカンについて報告されている平均分子量は、穀物種、細胞壁の種類、抽出手順および分子量判定に用いた手順によるが、48,000(DP〜300)から3,000,000(DP〜1850)に及ぶ。これらは、分子量に関して常に多分散であって、これはオオムギ(1,3;1,4)−β−D−グルカンに関し、数平均分子量(Mw/Mn)1.18に対する加重平均により説明される。ある種のオオムギ (1,3;1,4)−β−D−グルカンはまた、少量のタンパク質と共有結合しており、推定分子量40,000,000を有している。
【0054】
穀粒壁からの(1,3;1,4)−β−D−グルカン抽出率は、自己会合および他の細胞壁多糖類およびタンパク質との会合の関数である。特に抽出率は、(1,3;1,4)−β−D−グルカン連鎖における分子量および結合分布に依存する。 他のポリマーおよび高分子量との広範な会合が、(1,3;1,4)−β−D−グルカンを穀粒から抽出することをさらに困難にしている。
【0055】
例えば、オオムギ、オートムギおよびライムギの(1,3;1,4)−β−D−グルカンの一部は、pH7.0、40℃の水で抽出することができる。さらなるフラクションは、より高温で溶解度を高めることができる。40℃の水で溶解できる総(1,3;1,4)−β−D−グルカンの割合は、植物種によって異なる。例えば、ロウ質の多い(アミロース分が高い)オオムギは、通常のオオムギよりも水溶性の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの割合がより高い。40℃でオオムギから抽出された(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、65℃で抽出されたもの(2.0:1)より、三糖:四糖の比率がわずかに低い(1.7:1)。穀粒からの穀物(1,3;1,4)−β−D−グルカンを完全に抽出するためには、還元末端によるアルカリ性誘導の劣化を防ぐために、NaBHを含む4M NaOHまたは含水Ba(OH)などのアルカリ性抽出物を使用する必要がある。アルカリで抽出されたオオムギ(1,3;1,4)−β−D−グルカンのフラクションは、分子量が高く、(1→4):(1→3)結合の比率が高く、より多くの、接触してリンクした(1→4)結合したセグメントを有し、水による抽出物よりも三糖:四糖の比率が高い。ジメチルスルホキシド、高温の過塩素酸、トリクロロ酢酸、N−メチルモルフォリノ−N−酸化物およびジメチルアセトアミド−LiClなどの他の抽出剤も、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの溶解度を高めるために使用してもよい。しかしこれら抽出剤は、脱重合、またはポリマーの劣化を招く恐れがある。温水またはアルカリで一旦得られると、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、中性pHおよび室温でよく溶解するようになる。しかし、冷却すると同時に、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは会合し、沈着する可能性がある。
【0056】
上記の通り、本発明は、1つには(1,3;1,4)−β−D−グルカンの合成を触媒する生合成酵素の特定およびコード遺伝子に基づく。本明細書において用いられる場合、この酵素は本明細書において「(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ」と称される。
【0057】
本発明は、発現配列標識ライブラリーおよびセルロースシンターゼ(CesA)遺伝子を含む他の配列データベースの分析に、一部起因する。さらに具体的には、CesA遺伝子は、これにはCesA遺伝子およびセルロースシンターゼ様(Csl)遺伝子ファミリーの両者を含む、事実上、非常に大きな遺伝子スーパーファミリーの一員であることが、これら研究において確認された。
【0058】
しかし、著しい研究努力にもかかわらず、個々のCsl遺伝子は大部分が未知である。Csl遺伝子は、さらにCslA〜CslHまでの8グループに区分される。しかし、具体的な生化学的機能が決定されているCsl遺伝子は、グアルおよびシロイヌナズナから得られたCslA遺伝子のみである。
【0059】
セルロースおよび(1,3;1,4)−β−D−グルカンの構造の類似性を前提とし、本発明者らは、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする遺伝子が、Csl遺伝子ファミリーのメンバーであると仮定した。
【0060】
しかし、ほとんどの線維束植物のCsl遺伝子ファミリーは非常に大きく、CslAからCslHまでのいくつかのグループに分類されている。シロイヌナズナでは、29のCsl遺伝子が知られており、イネにおいては37の同遺伝子が知られている。シロイヌナズナのゲノムは、細胞壁代謝に係わる700超の遺伝子を含むと概ね考えられている。しかし、基本的に、これら遺伝子の具体的な機能は定かではない。例えば、ペクチン生合成に係わる170超の遺伝子のうち、2つの具体的な機能が特定されているのみである。さらに、CesA遺伝子とは対照的に、Csl遺伝子の機能を特定することは困難であることが分かっている。事実、高等植物の複数のCsl遺伝子のうち、CslAグループのみに、一定の機能が割り当てられている。
【0061】
本発明では、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする、ヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列を特定するため遺伝的アプローチを用いた。本発明によって、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼが、CslF遺伝子ファミリーのメンバーによりコードされることが明らかにされた。
【0062】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする、ヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列の特定の結果、本発明はとりわけ、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を制御し、それによって細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを制御する方法および組成物を提供する。
【0063】
したがって、第1の態様において、本発明は、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを制御する方法であって、該細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させるステップを含む方法を提供する。
【0064】
「細胞」は、任意の適当な真核細胞または原核細胞とすることができる。したがって、本明細書において言及される「細胞」とは、酵母細胞もしくは菌糸真菌細胞などの真菌細胞;哺乳動物細胞などの動物細胞もしくは昆虫細胞;または植物細胞をはじめとする真核細胞とすることができる。あるいは、細胞は、大腸菌(E. coli)細胞を含む細菌細胞または古細菌細胞などの原核細胞とすることもできる。
【0065】
好ましくは、細胞は植物細胞、さらに好ましくは、単子葉植物もしくは双子葉被子植物細胞または裸子植物細胞を含む線維束植物細胞である。さらに好ましい実施形態において、植物は単子葉植物細胞である。
【0066】
1つの特に好ましい実施形態において、単子葉植物細胞は、禾穀類植物細胞である。
【0067】
本明細書において用いられる「禾穀類植物」という用語は、ヒトまたは動物の食料用の食用穀類を作出するイネ目(イネ科植物属)のメンバーを含む。イネ目禾穀類植物の例としては、決して本発明を限定するものではないが、コムギ、イネ、トウモロコシ、キビ、ソルガム、ライムギ、トリチカレ、オートムギ、オオムギ、テフ、野生米、スペルトコムギなどが挙げられる。しかしながら、禾穀類植物という用語は同様に、アマランス、ソバ、キノアなどの、食用穀類を作出しかつ偽穀類(pseudocereal)としても公知の非イネ目種の植物を含むと理解されるべきである。
【0068】
禾穀類植物は、特に好ましくは単子葉植物であるものの、特にロリウム種(Lolium spp)などの牧草を含むイネ目の他の非穀類植物などの、他の単子葉植物も好ましい。
【0069】
上記の通り、本発明は、1つには、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させることに基づく。
【0070】
「(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ」は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの合成を触媒し、任意により、グルコピラノシル単量体の重合を触媒することができる任意のタンパク質と見なされるべきである。
【0071】
好ましくは、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32および配列番号34のいずれかにより表されるアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも40%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0072】
さらに好ましくは、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32および配列番号34のいずれかに対して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも60%のアミノ酸配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも70%のアミノ酸配列同一性、なおいっそう好ましくは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性および最も好ましくは少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を含む。特に好ましい実施形態においては、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32および配列番号34のいずれかに表されているアミノ酸配列を含む。
【0073】
アミノ酸配列を比較する場合に、比較される配列は、少なくとも100個のアミノ酸残基、より好ましくは少なくとも200個のアミノ酸残基、さらに好ましくは少なくとも400個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも800個のアミノ酸残基、最も好ましくは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32および配列番号34のいずれかの全長を超える比較ウィンドウと比較されることが望ましい。比較ウィンドウは、二個の最適アライメントの配列の基準配列(付加または欠失を含まない)と比較して、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含む場合がある。比較ウィンドウをアラインするための最適アライメントの配列は、Altschul、他が開示したプログラムのBLASTファミリーのようなアルゴリズムをコンピュータに実装して実施される場合もある(Nucl. Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)。配列分析の詳細な検討は、Ausubel、他のUnit 19.3に記載されている("Current Protocols in Molecular Biology" John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15,1998)。
【0074】
さらに好ましい実施形態において、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼは、CslF遺伝子またはその機能的ホモログ(後に定義される)によりコードされる。
【0075】
本明細書に記載の通り、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの「レベル」の変化は、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ転写産物および/またはポリペプチドのレベルの変化を含むと理解されるべきである。(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの「活性」の変化は、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの総体的活性、特異的活性、半減期および/または安定性の変化を含むと理解されるべきである。
【0076】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性に関する「変化」によって、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を減少させることまたは増加させることを意図する。「減少させる」とは、例えば、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルまたは活性の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の低下を意図する。「増加させる」とは、例えば、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルまたは活性の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍の増加を意図する。「変化」とは同様に、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼを、この導入される酵素を通常は発現していない細胞に導入すること、またはそのような活性を通常有する細胞における(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの実質的に完全な阻害を含む。
【0077】
1つの好ましい実施形態において、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルは、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を増加させることにより増加される。別の好ましい実施形態において、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルは、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を減少させることにより減少される。
【0078】
本発明の方法は、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させることができる、当技術分野において公知の任意の手段を包含する。これには、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼアゴニストもしくはアンタゴニストの適用のような、細胞中での(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの活性を変化させる薬剤の適用、細胞中での(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ活性を擬態する薬剤の適用、細胞中での(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現の変化、または特異的活性、半減期および/もしくは安定性の増加したもしくは減少した(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼが細胞によって発現されるような、細胞中での改変型または変異型(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現の達成などが含まれる。
【0079】
好ましい実施形態において、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性は、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を変化させることにより変化される。
【0080】
したがって、第2の態様において、本発明は細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させる方法であって、該細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を変化させるステップを含む方法を提供する。
【0081】
本明細書に記述のように、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼがCslF遺伝子ファミリーのメンバーによりコードされることが特定された。したがって、好ましい実施形態において、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸は、CslF遺伝子またはその機能的ホモログである。
【0082】
したがって、第3の態様において、本発明は細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させる方法であって、該細胞中のCslF遺伝子またはその機能的ホモログの発現を変化させるステップを含む方法を提供する。
【0083】
本明細書において用いられる「CslF遺伝子またはその機能的ホモログ」という用語は、以下:
(i)本明細書において定義される(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸分子;ならびに
(ii)好ましくは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31および配列番号33のいずれかにより表されるヌクレオチド配列に対して少なくとも50%同一なヌクレオチド配列を含む、核酸分子;ならびに/または
(iii)好ましくは、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31および配列番号33のいずれかにより表されるヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子にハイブリダイズする、核酸分子
を含むと理解されるべきである。
【0084】
より好ましくは、CslF遺伝子またはその機能的ホモログは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31および配列番号33のいずれかに対して少なくとも54%同一であるヌクレオチド配列を含み、さらに好ましくは、CslF遺伝子またはその機能的ホモログは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31および配列番号33のいずれかに対して少なくとも70%同一であるヌクレオチド配列を含み、ならびに最も好ましくは、CslF遺伝子またはその機能的ホモログは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31および配列番号33のいずれかに対して少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0085】
特に好ましい実施形態において、CslF遺伝子またはその機能的ホモログは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31および配列番号33のいずれかに表されているヌクレオチド配列を含む。
【0086】
同一性の割合を計算するために、ヌクレオチド配列を配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31および配列番号33のいずれかと比較する際に、比較されるヌクレオチド配列は、少なくとも300個のヌクレオチド残基、より好ましくは少なくとも600個のヌクレオチド残基、さらに好ましくは1200個のヌクレオチド残基、さらにより好ましくは2400個のヌクレオチド残基、最も好ましくは、配列番号1の全長を超える比較ウィンドウに対して比較されるべきである。比較ウィンドウは、二個の最適アライメントの配列のための基準配列(付加または欠失を含まない)に対して比較したときに、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含む場合がある。比較ウィンドウをアラインするための最適アライメントの配列は、Altschul、他が開示したプログラムのBLASTファミリーのようなアルゴリズムをコンピュータに実装して実施する場合がある(Nucl. Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)。配列分析の詳細な検討は、Ausubel、他のユニット19.3に記載されている("Current Protocols in Molecular Biology" John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15,1998)。
【0087】
上記に示したように、CslF遺伝子またはその機能的ホモログは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31および配列番号33のいずれかに記載されるヌクレオチド配列からなる核酸分子に対してハイブリダイズする核酸を含みうる。本明細書において用いられる「ストリンジェントな」ハイブリダイズ条件とは、塩濃度が約1.5 M Naイオン未満であり、通常は約0.01から1.0M Naイオン濃度(または 他の塩)、pH7.0〜8.3であって、温度は少なくとも30℃を条件とする。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によっても達成できる。ストリンジェントなハイブリダイズ条件は、低ストリンジェンシー条件、より好ましくは、中程度のストリンジェンシー条件、および最も好ましくは、高ストリンジェンシー条件であってもよい。典型的な低ストリンジェンシー条件には、37℃の30%〜35%のホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液、および50〜55℃の1×〜2×SSC中での洗浄(20×SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)を使用するハイブリダイゼーションを含む。典型的な中程度のストリンジェンシー条件には、37℃の40%〜45%のホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝溶液、および55℃〜60℃の0.5×〜1×SSC中での洗浄でのハイブリダイゼーションを含む。典型的な高ストリンジェンシー条件には、37℃の50%のホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝溶液、および60℃〜65℃での0.1×SSCの洗浄中でのハイブリダイズを含む。任意に、洗浄緩衝溶液は、約0.1%から約1%のSDSからなる場合もある。ハイブリダイゼーションの時間は、一般に約24時間未満であり、通常は約4時間〜12時間である。
【0088】
ハイブリダイゼーションの特異性は、通常、ハイブリダイゼーション後の洗浄の働きに依存し、重要な要因は最終洗浄液のイオン強度および温度である。DNA−DNAハイブリッドの場合、TはMeinkothおよびWahlの式(Anal. Biochem. 138: 267-284, 1984)から概算される。すなわち、T=81.5℃+16.6(log M)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/Lである。ここでMは、一価の陽イオンのモル濃度、%GCは、DNA中の グアノシンおよびシトシンヌクレオチドの割合、%formは、ハイブリダイズ溶液中のホルムアミドの割合であり、Lは、塩基対中のハイブリッド長さである。Tは、相補的なターゲット配列の50%が完全にマッチするプローブに対してハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度およびpHに基づく)である。Tは、1%のミスマッチごとに約1℃下がる。したがって、T、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件は、異なる度合いの相補性を持つ配列に対してハイブリダイズするために調整することができる。例えば、90%の同一性を有する配列は、Tを約10℃下げることによりハイブリダイズできる。一般に、ストリンジェントな条件は、特定の配列および定義されたイオン強度およびpHにおけるその相補体の熱融解点(T)よりも5℃低くなるよう選択される。しかし、高ストリンジェンシー条件では、熱融解点(T)よりも、例えば1、2、3または4℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。中程度のストリンジェンシー条件では、熱融解点(T)よりも、例えば6、7、8、9または10℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。低ストリンジェンシー条件では、熱融解点(T)よりも、例えば12、13、14、15または20℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。該式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成および望ましいTを使用することにより、一般的なスキルであるこれらにより、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーにおけるバリエーションが、基本的に説明されることが分かる。望ましい程度のミスマッチは、45℃未満(水溶性溶液)または32℃未満(ホルムアミド溶液)のTの結果になるとすれば、より高温を利用できるようにSSC濃度を高めることが好ましい。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範なガイドは、Tijssen(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes, Pt I, Chapter 2, Elsevier, New York, 1993)、Ausubel、他、編者(Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 2, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1995)およびSambrook、他(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, NY, 1989)に述べられている。
【0089】
CslF遺伝子またはその機能的ホモログは、1以上の非タンパク質領域または1以上のイントロン領域を含むことがある、生物由来のゲノムヌクレオチド配列からなってもよい。典型的なゲノムヌクレオチド配列は、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17および配列番号18のいずれかに記載されるHordeum vulgare(野生オオムギ)ゲノムヌクレオチド配列をはじめとするCslF遺伝子を含む。
【0090】
上記の通り、本発明は細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を変化させる方法を提供する。本発明は、細胞中の核酸分子をコードする(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの発現を変化させることができる任意の方法を包含する。
【0091】
好ましくは、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現に関して「変化させる」という用語は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の転写および/または翻訳を増加または減少させることを包含する。「減少させる」とは、例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の転写および/または翻訳の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の低下を包含している。「増加させる」とは、例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の転写および/または翻訳の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍以上の増加を包含している。変化させることはまた、通常特定の細胞中では発見されない(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を導入すること、もしくは通常当該活性を有する細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現の事実上、完全な阻害(例、ノックアウト)を含む。
【0092】
細胞中の特定の核酸分子の発現を変化させる方法は、当技術分野において公知であり、本発明ではそのような任意の方法を包含する。(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を変化させる典型的な方法は、内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの発現をアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションさせるような細胞の遺伝的改変、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸での形質転換による遺伝的改変、細胞中での内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を変化させる細胞への核酸分子の投与などを含む。
【0093】
1つの好ましい実施形態において、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を、細胞の遺伝子的改変により変化させる。本明細書において用いられる「遺伝的に改変された」という用語は、細胞の遺伝的に改変されていない形態に比べて、遺伝的に改変された細胞中での(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現の変化に影響を及ぼす任意の遺伝的改変を含むと理解されるべきである。本明細書において包含される遺伝的改変の典型的なタイプとしては、内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸を過剰発現または過小発現する変異体の選別と共に、トランスポゾン、化学物質、紫外線およびファージ突然変異生成などのランダム突然変異生成;細胞中での(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現および/または過剰発現を指令する1以上の核酸分子の、細胞への一過的または安定的導入;内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の部位特異的突然変異誘発による内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの阻害;細胞中での内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を阻害する1以上の核酸分子、例えば、コサプレッション構築物またはRNAi構築物の導入などが挙げられる。
【0094】
特に好ましい実施形態において、遺伝的改変は対象となる細胞への核酸の導入を含む。
【0095】
核酸は、例えば、SambrookおよびRussell(Molecular Cloning - A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2000)に述べられたものなど、使用される細胞種に適した、当技術分野において公知の任意の方法を用いて導入されてもよい。
【0096】
本発明の好ましい実施形態において、前記した通り、細胞は植物細胞であり、核酸分子の導入のための適切な方法には、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性の形質転換、マイクロプロジェクタイル法に基づく形質転換方法および直接的DNA取り込みに基づく方法を含んでよい。Roa-Rodriguez、他(Agrobacterium-mediated transformation of plants, 3rd Ed. CAMBIA Intellectual Property Resource, Canberra, Australia, 2003)は、広範な植物種について、適切なアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性の植物形質転換方法を総説している。マイクロプロジェクタイル法は、植物組織を形質転換したり、植物、特に穀類植物の形質転換方法に用いられたりするために使用されてもよい。また、当該方法は、Casas、他(Plant Breeding Rev. 13: 235-264, 1995)により総説されている。プロトプラスト形質転換およびエレクトロポレーションなどの直接的なDNA取り込みによる形質転換プロトコルは、Galbraith、他(編)(Methods in Cell Biology Vol. 50, Academic Press, San Diego, 1995)に詳しく述べられている。上記方法に加えて、さまざまな 他の形質転換プロトコルが用いられてもよい。これらは、浸潤、細胞および組織のエレクトロポレーション、胚芽のエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、花粉管経路、炭化ケイ素およびリポソーム媒介による形質転換を含む。これらのような方法は、Rakoczy-Trojanowska(Cell. Mol. Biol. Lett. 7: 849-858, 2002)により総説されている。他のさまざまな植物形質転換方法もまた、当業者にとって明らかなものであってよい。
【0097】
導入される核酸は、一本鎖または二本鎖でもよい。核酸は、mRNAに転写され、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼまたは別のタンパク質に翻訳されてもよい。また、RNAi構築物、コサプレッション構築物、アンチセンスRNA,tRNA、miRNA、siRNA,ntRNAなどのような非翻訳RNAをコードしてもよく、あるいは、直接細胞中で作用してもよい。導入された核酸は、ヌクレオチド塩基、糖、リン酸骨格に対する改変を含むが、核酸に対する機能的等価性を保持する、未改変のDNAまたはRNA、もしくは改変されたDNAまたはRNAの場合がある。導入された核酸は、細胞中に任意に複製されてもよい。細胞の染色体または染色体外エレメントに組み込まれてもよい。および/または、細胞により転写されてもよい。導入された核酸はまた、宿主細胞に関して同種または異種のいずれかでよい。すなわち、導入された核酸は、遺伝的に改変された細胞と同じ生物種の細胞から得られるか(すなわち同種)、もしくは導入された核酸は、異なる生物種から得られる(すなわち異種)。トランスジーンは、合成トランスジーンでもよい。
【0098】
1つの好ましい実施形態において、本発明は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸を細胞に導入することにより、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを増加させることを包含する。より好ましくは、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸は、CslF遺伝子またはその機能的ホモログを含む。
【0099】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするヌクレオチド配列を特定することにより、さらなる実施形態において、本発明は細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現をダウンレギュレーションする方法も提供する。
【0100】
例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸配列の特定は、本発明によれば、以下:
(i)ノックアウト構築物との相同組み換えによる細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸のノックアウトまたはノックダウンを含む、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の挿入突然変異(植物での標的遺伝子破壊の例としては、Terada他、Nat. Biotechnol. 20: 1030-1034, 2002を参照);
(ii)細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の転写後遺伝子抑制(PTGS)またはRNAi(PTSGおよびRNAiの総説については、Sharp, Genes Dev. 15(5): 485-490, 2001、およびHannon, Nature 418: 244-51, 2002を参照);
(iii)細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸を標的とするアンチセンス構築物を有する細胞の形質転換(植物のアンチセンス抑制の例については、v van der Krol、他、Nature 333: 866-869、van der Krol、他、BioTechniques 6: 958-967、 およびvan der Krol、他、Gen. Genet. 220: 204-212を参照);
(iv)細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸に方向付けられたコサプレッション構築物を有する細胞の形質転換(植物のコサプレッションの例については、van der Krol、他、Plant Cell 2(4): 291-299を参照);
(v)細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸を標的とする二本鎖RNAをコードする構築物を有する細胞の形質転換(dsRNA介在遺伝子抑制の例については、Waterhouse、他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 13959-13964, 1998を参照);および
(vi)細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸を標的とするsiRNAまたはヘアピンRNAをコードする構築物を有する細胞の形質転換(siRNAまたはヘアピンRNA介在遺伝子の例については、Lu、他、Nucl. Acids Res. 32(21): e171、doi:10.1093/nar/gnh170, 2004を参照)
などの方法による細胞中での内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸のノックアウトまたはノックダウンなどの方法を容易にする。
【0101】
本発明は、細胞に投与される細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸を標的とするsiRNAまたはマイクロRNAなどの合成オリゴヌクレオチドの利用を介して、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸のダウンレギュレーションも促進するものである(合成siRNA介在抑制の例については、Caplen、他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 9742-9747, 2001、Elbashir、他、Genes Dev. 15: 188-200, 2001、Elbashir、他、Nature 411: 494-498, 2001、Elbashir、他、EMBO J. 20: 6877-6888, 2001、およびElbashir、他、Methods 26: 199-213, 2002を参照)。
【0102】
上記例の他に、導入された核酸は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ配列に直接関係しないヌクレオチド配列を含むこともあるが、それでも、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を直接的または間接的に変化させることがある。例としては、細胞中の核酸分子をコードする(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの発現を促進する、または抑制する転写因子または他のタンパク質をコードする核酸分子、直接的または間接的に内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼを促進または抑制するほかの非翻訳型RNAなどがある。
【0103】
遺伝的に改変された細胞中での導入核酸の発現を達成するため、必要に応じ、導入核酸は1以上の制御配列に機能的に連結されてもよい。「制御配列」とは、機能的に連結された核酸またはそれによりコードされる転写産物またはタンパク質の転写、翻訳およびまたは翻訳後修飾に必要なまたは有利な、当技術分野において公知の全ての構成要素を含むと理解されるべきである。各制御配列は、機能的に連結された核酸に対し生来的でもまたは外来性でもよい。制御配列は、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、エンハンサーまたは上流の活性化配列、シグナルペプチド配列、および転写ターミネーターを含むが、これらに限定されない。典型的には、制御配列はプロモーターを少なくとも含む。
【0104】
本明細書において用いられる「プロモーター」という用語は、細胞中の核酸分子の発現を実現する、活性する、または促進する任意の核酸をいう。プロモーターは、一般的に、プロモーターが制御する遺伝子の5'(上流)に位置させる。異種プロモーター/構造遺伝子の組み合わせである構築物において、プロモーターと遺伝子(該プロモーターが自然環境において制御する遺伝子、すなわち該プロモーターが由来する遺伝子)との間の距離にほぼ等しい遺伝子転写開始部位からの距離に、プロモーターを配置することが、一般的に好ましい。当技術分野において周知の通り、この距離の変更は、プロモーター機能を失うことなく収めることができる。同様に、異種遺伝子に関する調節塩基配列エレメントの好ましい配置は、自然環境における配置、すなわち抽出を行う遺伝子中のエレメントの配置により決定される。繰り返し述べるが、当技術分野において周知の通り、この距離も変更することができる。
【0105】
プロモーターは、物理応力、病原体または特に金属イオンなどの外部刺激に反応して、もしくは1以上の転写活性化因子に反応して発現が発生する細胞、組織、器官または発生段階に関し、構成的に、または特異的に、機能的に連結したヌクレオチドの発現を制御してもよい。つまり、本発明の方法に従って使用されるプロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的のプロモーターまたは活性化プロモーターを含んでもよい。
【0106】
本発明は、対象となる細胞で活性な任意のプロモーターを使用することを包含している。つまり、細菌、菌類、動物細胞または植物細胞のいずれかで活性な多様なプロモーターは、当業者がすぐに分かるであろう。しかし、特に好ましい本発明の実施形態においては、植物細胞を使用する。したがって、植物で活性な構成的、誘導可能な、組織特異的または活性可能なプロモーターが、特に望ましい。
【0107】
植物の構成的プロモーターは、通常植物のほぼ全ての組織での発現を指令し、環境および発生的要因からは、概ね独立している。本発明に従い使用することができる構成的プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルス35Sおよび19S(CaMV35SおよびCaMV19S)プロモーターなどの植物ウイルス由来のプロモーター、例えばアグロバクテリウム(Agrobacterium)から得られるノパリンシンターゼ(nos)プロモーターなど、アグロバクテリウム種(Agrobacterium spp.)より得られるオパインプロモータなどの細菌性植物病原体由来のプロモーター、およびルビスコ小サブユニット遺伝子(rbcS)プロモーター、植物ユビキチンプロモーター(Pubi)およびイネアクチンプロモーター(Pact)などの植物由来のプロモーターが含まれる。
【0108】
「誘導可能な」プロモーターには、化学的に誘導可能なプロモーターおよび物理的に誘導可能なプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。化学的に誘導可能なプロモーターは、アルコール、抗生物質、ステロイド、金属イオンまたは他の化合物などの化学化合物により制御される活性を有するプロモーターを含む。化学的に誘導可能なプロモーターの例には、アルコール制御プロモーター(例、欧州特許第637339号参照)、テトラサイクリン制御プロモーター(例、米国特許第5,851,796号および米国特許第5,464,758号参照)、グルココルチコイド受容体プロモーター(例、米国特許第5,512,483号参照)などのステロイド反応プロモーター、エストロゲン受容体プロモーター(例、欧州特許出願第1 232 273号参照)、エクジソン受容体プロモーター(例、米国特許第6,379,945号参照)など、メタロチオネインプロモーター(例、米国特許4,940,661、米国特許第4,579,821号および米国特許第4,601,978号参照)などの金属応答プロモーター、およびキチナーゼプロモーターおよびリゾチームプロモーター(例、米国特許第5,654,414号参照)またはPRタンパク質プロモーター(例、米国特許第5,689,044号、米国特許第5,789,214号、豪州特許第708850号、米国特許第6,429,362号参照)などの病因関連プロモーターを含む。
【0109】
誘導性プロモーターは、温度(高温、低温とも)、光などの非化学的環境要因により制御される物理的に制御されるプロモーターである場合もある。物理的に制御されるプロモーターの例には、ヒートショックプロモーター(例、米国特許第5,447858号、豪州特許第732872号、カナダ国特許出願第1324097号参照)、低温誘導性プロモーター(例、米国特許第6,479,260号、米国特許第6,084、08号、米国特許第6,184,443号および米国特許第5,847,102号)、光誘導性プロモーター(例、米国特許第5,750,385号およびカナダ国特許第1321563号参照)を含む。
【0110】
「組織特異的プロモーター」には、優勢にまたは特異的に、生物中の1以上の特定の細胞、組織または器官で発現するプロモーターが含まれる。組織特異的プロモーターは、構成的または誘導性のいずれかでもよい。
【0111】
植物の組織特異的プロモーターの例には、米国特許出願第2001047525号に記載された通りの根特異的プロモーター、欧州特許第316441号、米国特許第5,753,475号および欧州特許出願第973922号に記載の通りの子房および花托組織特異的プロモーターをはじめとする果実特異的プロモーター、および豪州特許第612326号および欧州特許出願第0781849号および豪州特許第746032号に記載の通りの種子特異的プロモーターが含まれる。
【0112】
1つの好ましい実施形態において、組織特異的プロモーターは、種子および/または穀類特異的プロモーターである。種子または穀類特異的プロモーターの例には、puroindoline−b遺伝子プロモーター(例えば、Digeon、他、Plant Mol. Biol. 39: 1101-1112, 1999を参照)、Pbf 遺伝子プロモーター(例えば、Mena、他、Plant J. 16:53-62, 1998)、GS1−2 遺伝子プロモーター(例えば、Muhitch、他、Plant Sci. 163:865-872, 2002)、グルテリンGt1遺伝子プロモーター (例えば、Okita et al., J. Biol. Chem. 264: 12573-12581, 1989、heng、他、Plant J. 4: 357-366, 1993、Sindhu、他、Plant Sci. 130: 189-196, 1997、 Nandi、他、Plant Sci. 163: 713-722, 2002を参照) 、 Hor2−4遺伝子プロモーター (例えば、KnudsenおよびMuller, Planta 195: 330-336, 1991、Patel、他、Mol. Breeding 6: 113-123, 2000、Wong、他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 16325-16330, 2002を参照)、 リポキシゲナーゼ1遺伝子プロモーター (例えば、Rouster、他、Plant J. 15: 435-440, 1998を参照)、Chi26遺伝子プロモーター(例えば、Leah、他、Plant J. 6: 579-589, 1994を参照)、Glu−D1−1遺伝子プロモーター (例えば、Lamacchia、他、J. Exp. Bot. 52: 243-250, 2001、 Zhang、他、Theor. Appl. Genet. 106: 1139-1146, 2003を参照)、Hor3−1遺伝子プロモーター(例えば、Sorensen、他、Mol. Gen. Genet. 250: 750-760, 1996、Horvath、他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 1914-1919, 2000を参照)およびロウ質(Wx)遺伝子プロモーター(例えば、Yao、他、Acta Phytophysiol. Sin. 22: 431-436, 1996、Terada、他、Plant Cell Physiol. 41: 881-888, 2000、Liu、他、Transgenic Res. 12: 71-82, 2003を参照)を含む。特に好ましい実施形態において、種子特異的プロモーターは胚乳特異的プロモーターである。
【0113】
プロモーターは、本明細書において「活性化可能プロモーター」と呼ばれる、1以上の転写活性化因子により活性化可能であるプロモーターでもよい。例えば、活性化可能プロモーターは、上流活性化配列(UAS)に機能的に連結された最小プロモーターを含む場合がある。これはとりわけ、1以上の転写活性化因子のDNA結合部位を含む。
【0114】
本明細書に記載の通り、「最小プロモーター」という用語は、少なくともRNAポリメラーゼ結合部位ならびに、好ましくはTATAボックスおよび転写開始部位および/または1以上のCAATボックスを組み入れた任意のプロモーターを含むと理解されるべきである。さらに好ましくは、細胞が植物細胞である場合、最小プロモーターは、カリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV 35S)に由来することができる。好ましくは、CaMV 35S由来の最小プロモーターは、CaMV 35Sプロモーターの(転写開始部位の)−90位から+1位(−90 CaMV 35S最小プロモーターとも称される)、CaMV 35Sプロモーターの−60位から+1位(−60 CaMV 35S最小プロモーターとも称される)またはCaMV 35Sプロモーターの−45位から+1位(−45 CaMV 35S最小プロモーターとも称される)に相当する配列を含むことができる。
【0115】
上記に示した通り、活性化可能プロモーターは、上流活性化配列(UAS)に融合される最小プロモーターを含むことがある。UASは、最小プロモーターを活性化するために転写活性因子を結合することが可能な任意の配列でありうる。転写活性因子の例として、例えば、Gal4、Pdr1、Gcn4およびAce1などの酵母由来の転写活性因子、VP16、Hap1 (Hach 、他、J Biol Chem 278: 248-254, 2000)、Gaf1(Hoe、他、Gene 215(2): 319-328, 1998)、E2F(Albani、他、J Biol Chem 275: 19258-19267, 2000)、HAND2(Dai and Cserjesi, J Biol Chem 277: 12604-12612, 2002)、NRF−1およびEWG(Herzig、他、J Cell Sci 113: 4263-4273, 2000)、P/CAF (Itoh、他、Nucl Acids Res 28: 4291 - 4298, 2000)、MafA(Kataoka、他、J Biol Chem 277: 49903-49910, 2002)、ヒト活性転写因子4(LiangおよびHai、J Biol Chem 272: 24088 - 24095, 1997)、Bcl10(Liu、他、Biochem Biophys Res Comm 320(1): 1-6, 2004)、CREB−H(Omori、他、Nucl Acids Res 29: 2154 - 2162, 2001)、ARR1およびARR2(Sakai、他、Plant J 24(6): 703-711, 2000)、Fos(Szuts and Bienz, Proc Natl Acad Sci USA 97: 5351-5356, 2000)、HSF4(Tanabe、他、J Biol Chem 274: 27845 - 27856, 1999)、MAML1(Wu、他、Nat Genet 26: 484-489, 2000)などのウイルス由来の転写活性因子を含む。
【0116】
1つの好ましい実施形態において、UASは、少なくともGAL4転写活性因子のDNA結合ドメインと結合可能なヌクレオチド配列を含む。UAS配列は、少なくともGAL4DNA結合ドメインを含む転写活性因子を結合する配列であり、本明細書において、UASGと呼ぶ。特に好ましい実施形態において、UASGは、配列5’−CGGAGTACTGTCCTCCGAG−3’またはその機能的ホモログを含む。
【0117】
本明細書に記載の通り、UASG配列の「機能的ホモログ」は、少なくともGAL4 DNA結合ドメインを結合でき、かつ好ましくはUASGヌクレオチド配列と好ましくは50%の同一性、より好ましくは少なくとも65%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも80%の同一性および最も好ましくは少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む任意のヌクレオチド配列をいうと理解されるべきである。
【0118】
活性化可能プロモーター中のUAS配列は、DNA結合ドメイン標的配列の多数のタンデムリピートを含んでもよい。例えば、UASGはその天然の状態においては、DNA結合ドメイン標的配列の4つのタンデムリピートを含む。したがって、DNA結合ドメイン標的配列のタンデムリピートの数に関して本明細書において用いられる「多数」という用語は、少なくとも2つのタンデムリピート、より好ましくは少なくとも3つのタンデムリピート、およびさらにより好ましくは少なくとも4つのタンデムリピートを含むと理解されるべきである。
【0119】
上記の通り、制御配列は、ターミネーターも含むことがある。「ターミネーター」とは、転写終了を示す転写ユニットの終端にあるDNA配列をいう。ターミネーターは、一般にポリアデニル化シグナルを含む3’非翻訳DNA配列であって、一次転写産物の3’末端に対してポリアデニル配列の追加を促進する。プロモーター配列と同様に、ターミネーターは、使用しようとする細胞、組織または器官で機能的な任意のターミネーター配列であってもよい。植物細胞中で有用でありうる適切なターミネーター配列の例には、ノパリンシンターゼ(nos)ターミネーター、CaMV35Sターミネーター、オクトピンシンターゼ(ocs)ターミネーター、pinIIおよびpinIIIターミネーターなどのジャガイモのプロテイナーゼ阻害遺伝子(pin)ターミネーターが含まれる。
【0120】
当業者によって理解されるように、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させることにより、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルを変化させる本発明の方法には、いくつかの産業上の用途がある。
【0121】
例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、粘性溶液を形成することで知られている。水溶性穀類(1,3;1,4)−β−D−グルカンのの粘性を生じる物性は穀類加工の多くの局面において重要な決定因子である。例えば、オオムギ麦芽および穀類添加物由来の不完全に分解された(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、麦汁およびビールの粘性に寄与できるが、麦汁分離およびビールのろ過における問題を伴う(例、Bamforth、Brew. Dig. 69 (5): 12-16, 1994を参照)。したがって、例えば1つの実施形態において、本発明は、ビール製造への適性を高めるため、オオムギ粒の1以上の細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼレベルおよび/または活性を減じることにより、オオムギ粒中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンレベルを減じるために適用することもできる。
【0122】
水溶性穀類の(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、ブタや家禽などの単胃動物に対してアンチニュートリティブな効果をもたらすとも考えられている。「アンチニュートリティブ」な効果は、胃内容物の粘度を高め、消化酵素の放散および酵素作用の分解産物の吸収を遅らせることである。言い換えれば、これは成長率を遅らせることにつながる。
【0123】
さらに、家禽の飼料配合において、高い(1,3;1,4)−β−D−グルカン濃度は、「粘性の」糞に関係しており、これは(1,3;1,4)−β−D−グルカンの消化性が低いことを示し、かつ生産者にとって主要な取扱いおよび衛生上の問題になりうる。したがって、別の実施形態において、本発明は、動物飼料としての植物の適合性を改善するため、動物飼料に使用される植物の1以上の細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを低下させるのに適用することができる。
【0124】
しかしながら、穀類の(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、ヒトおよび動物の食事における食物繊維の重要な構成要素である。本明細書において用いられる「食物繊維」という用語は、大腸における完全なもしくは部分的な発酵とともにヒト小腸での消化および吸収に抵抗性を示す植物の可食部または類似の炭水化物を含むと理解されるべきである。「食物繊維」は、多糖類(特に(1,3;1,4)−β−D−グルカンを含む)、オリゴ糖、リグニンおよび関連する植物物質を含む。少なくともヒトの食事において、食物繊維は、全般的な腸の調子、便通、血中コレステロールの低減、および/または血中グルコールの低減を含めた有益な生理的効果を促進する。
【0125】
ヒトおよび単胃動物は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンを分解する酵素を作らないが、いくぶんかの脱重合が胃および小腸で発生していることが示されている。これは、片利共生微生物によるものと推測される。水溶性(1,3;1,4)−β−D−グルカンと 他の非デンプン質の多糖類を比較すると、腸内細菌により容易に発酵し、可消化エネルギーにわずかながら寄与する。単胃動物におけるアンチニュートリティブ効果とは対照的に、ヒトの食物中の高濃度のオートムギおよびオオムギの(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、特に食事後の血糖値およびインスリン反応を抑えることにより、非インスリン依存の糖尿病にとって有益な効果をもたらす。食物中高濃度の(1,3;1,4)−β−D−グルカン(20%w/v)は、食物から食物コレステロールまたは胆汁酸の吸収を抑えることにより、血中コレステロール濃度を下げることにも関連付けられている。
【0126】
したがって、別の実施形態において、本発明は植物またはその断片中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンレベルを高めることにより、食用植物または食用植物断片の食物繊維含有量を増加させることに適用することもできる。特に好ましい実施形態において、食用植物または植物の可食部断片は、禾穀類植物またはその一部である。
【0127】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、特に(1→3)−β−D−グルカンにおいて、他のいくつかの多糖類と同じく、細網内系統の細胞の受容体との結合により媒介されるプロセスにより、ヒトの免疫反応を変化させるとも考えられている。さらに、血中の抗体が産生される前に、最初の防衛線として発動するシステムである、ヒトの補体経路のタンパク質を活性する能力を有することがある。
【0128】
本発明の第1の態様である方法は、組み換え発現系中の(1,3;1,4)−β−D−グルカン形成も促進する。例えば、プロモーター制御下にあって、本明細書に記載のトリヌクレオチド配列をコードする(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼを細胞に導入することにより、組み換え技術によって形成されてもよい。前記した通り、細胞が引き続き(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼを発現させるとともに、(1,3;1,4)−β−D−グルカンを形成する。
【0129】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸を発現させるために使用することができる多様な組み換え発現系は当技術分野において周知である。組み換え発現系の例は、大腸菌発現系などの細菌発現系(Baneyx, Curr. Opin. Biotechnol. 10: 411-421, 1999 おいて総説されている。例:Gene expression in recombinant microorganisms, Smith (Ed.), Marcel Dekker, Inc. New York, 1994、およびProtein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, Baneyx (Ed.), Chapters 2 and 3, Horizon Bioscience, Norwich, UK, 2004も参照)、バシラス属spp.発現系 (例:Protein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, 前記, chapter 4を参照)、およびストレプトミセスspp.(例:Practical Streptomyces Genetics, Kieser 、他、(Eds.), Chapter 17, John Innes Foundation, Norwich, UK, 2000を参照)、サッカロミセスspp.、シゾサッカロミセスポンベ、Hansenula polymorphaおよび ピチア属spp.および糸状菌発現系などの酵母発現系を含む菌性発現系(例:Protein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, 前記, chapters 5, 6および7、Buckholz and Gleeson, Bio/Technology 9(11): 1067-1072, 1991、Cregg、他Mol. Biotechnol. 16(1): 23-52, 2000、CereghinoおよびCregg, FEMS Microbiology Reviews 24: 45-66, 2000、Cregg 、他、Bio/Technology 11: 905 - 910, 1993を参照)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞発現系(例:Protein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, 前記, chapter 9を参照)、バキュロウイルス発現系を含む昆虫細胞培養(例:Protein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, 前記, chapter 8、KostおよびCondreay, Curr. Opin. Biotechnol. 10: 428-433, 1999、Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual WH Freeman & Co., New York, 1992、およびThe Baculovirus Expression System: A Laboratory Manual, Chapman & Hall, London, 1992を参照)、タバコ、ダイズ、イネおよびトマト細胞発現系などの植物細胞発現系(例:Hellwig、他、Nat Biotechnol 22: 1415-1422, 2004を参照)などを含む。
【0130】
したがって、第4の態様において、本発明は(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成方法であって、該細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸を発現させるステップを含む方法を提供する。
【0131】
1つの好ましい実施形態において、細胞は、先に定義された通りの組み換え発現系から得られる細胞である。
【0132】
別の好ましい実施形態において、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸は、CslF遺伝子またはその機能的ホモログである。
【0133】
第5の態様において、本発明は、本発明の第4の態様の方法により生成された(1,3;1,4)−β−D−グルカンも提供する。
【0134】
第6の態様において、本発明は以下のもの:
(i)同じ分類群の野生型細胞と比較して変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンレベル;
(ii)同じ分類群の野生型細胞と比較して変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性;
(iii)同じ分類群の野生型細胞と比較して変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現
のうち、いずれか1以上を示す細胞を提供する。
【0135】
好ましい実施形態において、本発明の第6の態様である細胞は、本明細書に記載された第1、第2または第3の態様の方法で作製されている。別の好ましい実施形態において、細胞は植物細胞であり、より好ましくは単子葉植物細胞であり、最も好ましくは禾穀類植物細胞である。
【0136】
さらに、第7の態様において、本発明は、本発明の第6の態様による1以上の細胞を含んでなる、多細胞構造物を提供する。
【0137】
本明細書では、「多細胞構造物」は、1以上の細胞の任意の凝集物を含む。したがって、多細胞構造物は特に組織、器官、生物全体およびその一部を包含する。さらに、多細胞構造物は同様に、コロニー、植物カリ(plant calli)、浮遊培養物などの培養細胞の多細胞凝集物を包含すると理解されるべきである。
【0138】
上記の通り、1つの好ましい実施形態において、細胞は植物細胞であり、したがって本発明は、本発明の第6の態様による1以上の植物細胞を含んでなる植物全体、植物組織、植物器官、植物断片、植物繁殖材料または培養植物組織を含む。
【0139】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、本発明の第6の態様による1以上の細胞からなる穀粒を提供する。
【0140】
特に好ましい実施形態において、本発明は、本発明の第6の態様による1以上の細胞からなる穀類植物を提供する。
【0141】
したがって、第8の態様において、本発明は変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンレベルを示す穀粒であって、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの変化したレベルおよび/もしくは活性、および/または(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸分子の変化した発現を示す1以上の細胞を含んでなる穀粒を提供する。
【0142】
1つの実施形態において、本発明の第8の態様である穀粒は、同種と野生型穀粒を比較した場合に、(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルが高くてもよい。代替の実施形態において、穀粒は、同種と野生型穀粒を比較した場合に、(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルが低くてもよい。
【0143】
第9の態様において、本発明は以下のもの:
(i)本発明の第8の態様に記載の穀粒を製粉することにより製造される穀粉;および
(ii)任意により、1以上の他の穀粒を製粉することにより製造される穀粉
を含んでなる穀粉も提供する。
【0144】
したがって、本発明の第8の態様である穀粒を製粉して生産される穀粉は、例えば、本発明の第9の態様の穀粉重量の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%から構成されてもよい。
【0145】
本明細書に述べられた通り、「製粉」は、Brennan、他(Manual of Flour and Husk Milling, Brennan、他(編)、 AgriMedia, ISBN: 3-86037-277-7)に述べられた製粉などの、穀粒を製粉する当技術分野において周知の任意の方法を包含する。
【0146】
好ましくは、本発明の第9の態様である穀粉に使用される本発明の第8の態様である穀粒を製粉して製造される穀粉は、野生型と比較した場合により高いレベルの(1,3;1,4)−β−D−グルカンを含む。
【0147】
「1以上の別の穀粒を製粉して製造される穀粉」は、先に定義されたいずれの穀類植物から得られる穀粒を製粉して製造される穀粉でもよい。本発明の第8の態様である穀粉の構成要素は、例えば重量の0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%を構成してもよい。
【0148】
好ましい実施形態において、1以上の他の穀粒を製粉して製造される穀粉は、小麦粉である。また、これにより本発明の第9の態様である穀粉は、パン、ケーキ、ビスケットなどを調理するのに適しているものでもよい。
【0149】
上記に示した通り、本発明は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするヌクレオチドおよびアミノ酸配列の特定と単離に基づいている。
【0150】
したがって、第10の態様において、本発明は(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする、単離された核酸分子を提供する。
【0151】
本発明において、「単離された」とは、元の環境(例えば、それが天然に存在するならば天然の環境)から取り出された物質をいい、したがって、「人の手によって」その天然の状態から改変されている。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、ベクターもしくは物質の組成物の一部とすることができ、細胞内に含まれることができ、そのベクター、物質の組成物、または特定の細胞は該ポリヌクレオチドの元の環境ではないので、依然として「単離され」ている。「単離された」核酸分子は同様に、当技術分野において公知の方法を用いた化学合成によりまたはインビトロでの増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応などの)により作出されるものを含めて、合成核酸分子を含むと理解されるべきである。
【0152】
本発明の単離された核酸分子は、ポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドから構成されてもよい。これは、未修飾のRNAもしくはDNA、または修飾されたRNAもしくはDNAでもよい。例えば、発明の単離された核酸分子は、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖および二本鎖領域の混合であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、および一本鎖および二本鎖領域の混合であるRNA、DNAからなる混成分子および一本鎖、またはより通常では二本鎖、もしくは一本鎖および二本鎖領域の混合でよいRNAにより構成されてもよい。さらに、単離された核酸分子は、RNAまたはDNA,もしくはRNAおよびDNAの両者からなる三本鎖領域から構成されてもよい。単離された核酸分子は、安定性または他の理由により修飾された1以上の塩基、もしくはDNAまたはRNA骨格を含んでよい。「修飾」塩基は、例えば、イノシンなどのトリチル塩基および通常のものでない塩基を含む。さまざまな修飾は、DNAおよびRNAに対して実施することができることから、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態を含む。
【0153】
第11の態様において、本発明は以下のもの:
(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列;
(ii)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列に対して少なくとも50%同一なヌクレオチド配列;
(iii)低ストリンジェンシー、より好ましくは中程度のストリンジェンシーおよび最も好ましくは高ストリンジェンシー条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子にハイブリダイズするヌクレオチド配列;
(iv)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12のいずれかにより表されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(v)(i)〜(iv)のいずれか1つに記載のものの相補体であるヌクレオチド配列;
(vi)(i)〜(iv)のいずれか1つに記載のものの逆相補体であるヌクレオチド配列;
(vii)(i)〜(vi)のいずれか1つの断片
のうち、いずれか1以上を含む、単離された核酸分子も提供する。
【0154】
本発明の第11の態様に記載の通り、「少なくとも50%同一な」という用語は、50%を超えるヌクレオチド配列の同一性の割合も含むと理解されるべきである。例えば、「少なくとも50%同一な」という用語は、少なくとも60%の同一性、少なくとも70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性および少なくとも95%の同一性を包含することが好ましい。
【0155】
好ましい実施形態において、単離された核酸分子またはその断片は、本明細書において先に定義されるように、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするヌクレオチド配列を含む。より好ましい実施形態において、本明細書において先に定義されるように、単離された核酸分子は、CslF遺伝子を規定するヌクレオチド配列、またはその機能的ホモログを含む。
【0156】
上記の通り、本発明の第11の態様は、ヌクレオチド配列の断片を提供する。ヌクレオチド配列の「断片」とは、長さが少なくとも15ヌクレオチド(nt)、およびより好ましくは少なくとも20nt、さらにより好ましくは少なくとも30nt、なおいっそう好ましくは、少なくとも40、50、100、150、200、250、300、325、350、375、400、450、500、550または600ntとすべきである。これらの断片には、以下に限定されないが、診断用プローブおよびプライマーを含む多数の用途がある。もちろん、長さが601〜3000ntのものなどの、より大きな断片も、全てではないが、ヌクレオチド配列の配列番号1の大部分に対応する断片と同様、本発明によって有用である。例えば、長さが少なくとも20ntの断片とは、例えば、配列番号1のヌクレオチド配列由来の20以上の隣接する塩基を含んだ断片を意図する。
【0157】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチド断片は、本明細書に定義される通りの(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの機能的活性を有するポリペプチドをコードする。
【0158】
これらポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドまたはタンパク質もまた、本発明に含まれる。
【0159】
第12の態様において、本発明は、本発明の第11の態様に記載の単離された核酸分子を含む遺伝子構築物またはベクターを提供する。
【0160】
本発明の第11の態様である核酸の他、本発明の第12の態様であるベクターまたは構築物は、好ましくは、さらに1以上の宿主の複製起点、1以上の宿主中で活性である選択可能なマーカー遺伝子、または細胞中で単離された核酸分子の転写を可能にする1以上の制御配列のうちの複数を含む。
【0161】
本明細書において用いられる「選択可能なマーカー遺伝子」という用語には、発明の遺伝子構築物で感染させたかもしくは形質転換した細胞の特定および/または選択を促進するために、それが発現される細胞に表現型を与える任意の遺伝子が含まれる。
【0162】
「選択可能なマーカー遺伝子」は、細胞により発現される場合に、これら形質転換された細胞の特定および/または選択を促進する表現型を細胞に与える任意のヌクレオチド配列を含む。適切な選択的標識をコードするヌクレオチド配列の範囲は、当技術分野において周知である。選択的標識をコードするヌクレオチド配列の例は、アンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、抗真菌性抗生物質オーレオバシジンAに耐性を与えるAURI−C遺伝子、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(例:nptlおよびnptll)およびハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(例:hpt)、グルホシネート(glufosinate)、ホスフィノトリシンまたはビアラホス耐性遺伝子をコードするホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼなどのグルホシネート(glufosinate)、ホスフィノトリシンまたはビアラホス耐性遺伝子を含む除草剤耐性遺伝子(例:bar)、3−エノイルピルビルシキミ酸(shikimate)5−リン酸塩シンターゼをコードする遺伝子をはじめとするグリホサート耐性遺伝子(例:aroA)、ブロミキシニル(bromyxnil)ニトリラーゼをコードする遺伝子をはじめとするブロミキシニル(bromyxnil)耐性遺伝子、ジヒドロプテレート(dihydropterate)シンターゼをコードする遺伝子をはじめとするスルホンアミド(salfonamide)耐性遺伝子(例:sul)およびアセトラクテートシンターゼをコードする遺伝子をはじめとするスルホニル尿素耐性遺伝子、GUSおよびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする遺伝子などの酵素コードレポーター遺伝子、緑色蛍光タンパクコード遺伝子などの蛍光レポーター遺伝子、および、とりわけルシフェラーゼ遺伝子などの発光に基づくレポーター遺伝子を含む。
【0163】
さらに、選択可能なマーカー遺伝子は、構築物中の独立したオープンリーディングフレームであるか、あるいは(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質との融合タンパク質として発現する場合もあることに注目すべきである。
【0164】
本発明の第12の態様は、本明細書に記載の通り、原核生物または真核生物中の遺伝子構築物の維持および/または複製、および/または遺伝子構築物もしくはその一部分を原核生物または真核生物細胞のゲノムに組み込ませるために包含されたヌクレオチド配列をはじめとする、本質的に全ての遺伝子構築物に及ぶ。
【0165】
1つの好ましい実施形態において、本発明の第12の態様である構築物は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介により植物細胞に少なくとも一部移入されるようにつくられる。したがって、特に好ましい実施形態において、本発明の第12の態様による構築物は、左および/または右T−DNA境界配列を含む。
【0166】
適切なT−DNA境界配列は、当業者によって容易に確認されよう。しかしながら、「T−DNA境界配列」という用語は、アグロバクテリウム属の種(Agrobacterium sp)の細胞からアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性の形質転換を受けやすい植物細胞に移入される核酸分子の範囲を定める、実質的に相同のおよび実質的に直接反復性のヌクレオチド配列を包含すると理解されるべきである。例証としては、PeraltaおよびReamによる論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82(15): 5112-5116, 1985)およびGelvinの概説(Microbiology and Molecular Biology Reviews, 67(1): 16-37, 2003)を参照されたい。
【0167】
1つの好ましい実施形態において、本発明の第12の態様である構築物は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換を介して植物に移入するためにつくられているにせよ、本発明は、Broothaerts、他(Nature 433: 629-633, 2005)に述べられた通り、アグロバクテリウム属の種(Agrobacterium sp.)以外の細菌を介して、細菌媒介による植物細胞への導入を促進する遺伝子構築物に対する任意の適切な改変も包含している。
【0168】
当業者は、望むならば、本明細書に記載された構築物をどのように作製するか、また、所望の条件下で特定の細胞または細胞タイプでその発現を得るための必要条件を知るであろう。特に、本発明を実施するために必要な遺伝子操作は、大腸菌細胞などの原核細胞または植物細胞または動物細胞での、本明細書に記載の遺伝子構築物またはその誘導体の増殖を必要とすることが、当業者にとって知られるであろう。核酸分子をクローニングするための方法例は、Sambrook 、他(2000, 前記)に述べられている。
【0169】
第13の態様において、本発明は、本発明の第10または第11の態様に記載の単離された核酸分子または本発明の第12の態様に記載の遺伝子構築物を含んでなる細胞を提供する。
【0170】
本発明の第10または第11の態様の単離された核酸分子、または本発明の第12の態様の遺伝子構築物は、当技術分野において周知の任意の手段を介して細胞中に導入されてもよい。
【0171】
上記に言及される単離核酸分子または構築物は、エピソーム(例:プラスミド、コスミド、人工染色体または同様のもの)の一部分として、DNA分子として細胞中に維持されてもよいし、または細胞のゲノムDNAに組み込まれてもよい。
【0172】
本明細書において用いられる「ゲノムDNA」という用語は、その最も広義な背景において、細胞の遺伝子相補体を構成するあらゆるDNAを含むと理解されるべきである。したがって、細胞のゲノムDNAは、染色体、ミトコンドリアDNA、色素体DNA 、葉緑体DNA、内在性プラスミドDNAなどを含むと理解されるべきである。したがって、「ゲノムに組み込まれた」という用語は、染色体への組み込み、ミトコンドリアDNAへの組み込み、プラスチドDNAへの組み込み、葉緑体DNAへの組み込み、内在性プラスミドへの組み込みなどを包含する。
【0173】
好ましくは、単離された核酸分子は、とりわけ、細胞が単離された核酸分子を発現するように、プロモーターに機能的に連結される。
【0174】
本発明の第13の態様である細胞は、原核細胞または真核細胞でありうる。したがって、細胞は大腸菌細胞またはアグロバクテリウム属の種(Agrobacterium spp.)の細胞、または古細菌細胞を含む細菌細胞などの原核細胞でもよい。該細胞は、酵母細胞または真菌細胞、菌糸真菌細胞、哺乳類細胞または昆虫細胞などの動物細胞、または植物細胞を含む真核細胞であってもよい。好ましい実施形態において、細胞は植物細胞である。より好ましい実施形態において、植物細胞は単子葉植物細胞である。もっとも好ましい実施形態において、植物細胞は穀物植物細胞である。
【0175】
第14の態様において、本発明は、本明細書に定義される通り、本発明の第13の態様に記載の細胞のうち1以上を含んでなる、多細胞構造物を提供する。
【0176】
上記の通り、1つの好ましい実施形態において、細胞は植物細胞であり、したがって本発明は、本発明の第13の態様の1以上の細胞を含んでなる植物全体、植物組織、植物器官、植物断片、植物繁殖材料または培養植物組織を特に含むと理解されるべきである。
【0177】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、本発明の第13の態様の1以上の細胞からなる穀類植物またはその断片を提供する。
【0178】
特に好ましい実施形態において、本発明の第14の態様は、本発明の第13の態様の1以上の細胞から構成される穀粒を提供する。
【0179】
上記の通り、本発明は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのためのアミノ酸配列も提供する。
【0180】
したがって、第15の態様において、本発明は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質をコードするアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを提供する。したがって、本発明は、単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質を提供する。
【0181】
本明細書において用いられる「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸の任意の長さの多量体を含むと理解されるべきである。したがって、「ポリペプチド」という用語はペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質を包含すると理解されるべきである。
【0182】
第16の態様において、本発明は以下のもの:
(i)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12のいずれかにより表されるアミノ酸配列;
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12のいずれかにより表されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列;
(iii)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列;ならびに/または
(iv)(i)、(ii)もしくは(iii)のいずれか1つの断片
のうち1以上を含む、単離されたポリペプチドを提供する。
【0183】
本発明の第16の態様に記載の通り、「少なくとも50%同一な」という用語は、50%を超えるアミノ酸配列の同一性の割合も含むと理解されるべきである。例えば、「少なくとも50%同一な」という用語は、少なくとも60%の同一性、少なくとも70%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも90%の同一性および少なくとも95%の同一性を包含することが好ましい。
【0184】
好ましい実施形態において、本発明の単離されたポリペプチドは、本明細書に定義される通りの「(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ」を含む。
【0185】
第16の態様の単離されたポリペプチドは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわちペプチドイソスター(isostere)によって互いに連結されたアミノ酸から構成されてもよく、20種の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。本発明の単離されたポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの天然のプロセス、または当技術分野において周知である化学的修飾技術により修飾されてもよい。そのような修飾は、基礎的なテキストにおよびさらに詳細な研究論文に、ならびに文献に十分に記述されている。
【0186】
修飾はペプチド骨格、アミノ酸側鎖および/または末端を含めて、単離されたポリペプチドのどこで行われてもよい。同じ種類の修飾は、与えられた単離されたポリペプチドの複数部位で同程度または種々の程度で存在してもよいことは、高く評価されるだろう。また、本発明の単離されたポリペプチドは、多数の種類の修飾を含んでもよい。
【0187】
該タンパク質は、例えばユビキチン化の結果として分岐しても、および/または、分岐の有無にかかわらず環状でもよい。環状の、分岐した、および分岐した環状ポリペプチドは、翻訳後自然プロセスの結果であっても、あるいは合成方法により作成されてもよい。
【0188】
修飾には、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトール共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合、脱メチル反応、共有結合性架橋結合、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グルコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ポリエチレングリコール(PEG)付加、タンパク質分解プロセシング、プレニル化、ラセミ化、セレノイレーション、硫酸化、アルギニル化およびユビキンチン化などのトランスファーRNA媒介によるタンパク質へのアミノ酸添加物を含む(例としては、Proteins--Structure And Molecular Properties 2nd Ed., Creighton (ed.), W. H. Freeman and Company, New York, 1993、Posttranslational Covalent Modification Of Proteins, Johnson (Ed.), Academic Press, New York, 1983、Seifter et al., Meth Enzymol 182: 626-646, 1990、Rattan et al., Ann NY Acad Sci 663: 48-62,1992を参照)。
【0189】
上記の通り、本発明の第16の態様では、単離されたポリペプチドの断片も提供する。ポリペプチド断片は、該断片が「自立」または一部または領域を形成する大きなポリペプチド内に含まれてもよい。
【0190】
タンパク質断片は、長さが少なくとも3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150アミノ酸でありうる。1つの好ましい実施形態において、断片は配列番号2に記載の配列の一部であるアミノ酸配列を含む。
【0191】
1つの好ましい実施形態において、断片は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの機能的活性を含む。しかしながら、該断片は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質の1以上の生物学的機能を保有しないにもかかわらず、 他の機能的活性は依然として保有されてもよい。例えば、該断片は(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの機能的活性を欠くが、単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質の完全型または成熟形態に結合する抗体に対して導入する、および/または、結合する能力を保有する。単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質の完型または成熟形態を結合させる抗体を誘導するか、かつ/またはそれに結合する能力を有するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質断片は、本明細書において「(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープ」と呼ぶ。
【0192】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープは、3〜4個の少ないアミノ酸残基を含み、好ましくは5個のアミノ酸およびより好ましくは10個のアミノ酸残基を含んでもよい。単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質の特定のエピトープが当該免疫学的活性を保有しているかどうかは、当技術分野で周知の方法により容易に判定することができる。したがって、1つの好ましい(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質断片は、1以上の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを含むポリペプチドである。
【0193】
1以上の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープからなるポリペプチドは、当技術分野で周知の合成および組み換え方法を含むポリペプチドを作成する従来の手段により作製してもよい。1つの実施形態において、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを持つポリペプチドは、化学合成の周知の方法を用いて合成されてもよい。例えば、Houghtenは、多数のペプチドを合成する単純な方法を述べている(Houghten, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 5131-5135, 1985)。
【0194】
単離されたポリペプチド、および本発明の第16の態様である(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを持つポリペプチドは、例えば、発明の単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質を結合する抗体の生成において有用である。
【0195】
当該抗体は、とりわけ(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質の検出および局在決定において、また、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質のアフィニティ精製において有用である。抗体は、当技術分野において周知の方法を用いて、多様な定性的または定量的イムノアッセイにおいて、日常的に使用することができる。例えば、Harlow、他、Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press 2nd Ed., 1988)を参照されたい。
【0196】
したがって、第17の態様において、本発明は、上記に定義の単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質またはそのエピトープに対して生起された、抗体またはそのエピトープ結合性フラグメントを提供する。
【0197】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリーにより産生される断片および上記のいずれかのエピトープ結合性フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0198】
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、抗原に対して免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子をいう。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意の種類(例、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例、IgG1、IgE2、IgG3、IgG4,IgA1およびIgA2)およびサブクラスでありうる。
【0199】
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性またはより多特異性でもよい。多特異性抗体は、本発明のポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であるか、または異種ポリペプチドまたは固相担体材料などの異種エピトープと、本発明のポリペプチドとの両者に対して特異的であってよい。例えば、PCT公開WO93/17715、WO92/08802、WO91/00360、WO92/05793、Tutt、他、J. Immunol. 147: 60-69, 1991、米国特許第4,474,893号、同第4,714,681号、同第4,925,648号、同第5,573,920号、同第5,601,819号、およびKostelny 、他、J. Immunol. 148: 1547-1553, 1992を参照されたい。
【0200】
1つの実施形態において、本発明の抗体は(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用してもよい。別の実施形態において、本発明の抗体は、例えばインビトロおよびインビボ診断および治療方法の両者をはじめとする本発明のポリペプチドの精製、検出および標的化のために使用されてもよい。例えば、抗体は、生体サンプル中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルを定性的にかつ定量的に測定するためのイムノアッセイにおいて使用されている。例として、Harlow、他、Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)を参照されたい。
【0201】
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、例えば、共有結合によって抗体が(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼまたはそのエピトープに結合するのを妨げないような任意のタイプの分子の共有結合により、修飾されている誘導体を包含すると理解されるべきである。例えば、抗体の誘導体は、例えばグルコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との結合などにより修飾されている抗体を含む。さらに、多くの化学的修飾のいずれを公知の技術によって行ってもよい。これらは特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む。さらに、該誘導体は1以上の非古典的アミノ酸を含んでもよい。
【0202】
抗体は、体外免疫法、体内免疫法およびファージディスプレイ法など、当技術分野で周知の方法を用いて生成してもよい。例えば、Bittle、他(J. Gen. Virol. 66: 2347-2354, 1985)を参照されたい。
【0203】
インビボ免疫法を使用する場合、動物を遊離ペプチドで免疫してもよいが、抗ペプチド抗体力価は、キーホールリンペットヘモシアニンまたは破傷風トキソイドなどの、高分子キャリアにペプチドを結合することにより、増加させることができる。例えば、システイン残基を含むペプチドは、マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド(maleimidobenzoyl-N-hydroxysuccinimide)エステル(MBS)法などのリンカーを用いてキャリアに結合させてもよく、一方他のペプチドは、グルタールアルデヒドなどのより一般的な架橋剤を用いてキャリアに結合させてもよい。
【0204】
ウサギ、ラット、マウスなどの動物は、例えば遊離またはキャリアを結合したペプチドを用いて、約100マイクログラムのペプチドまたはキャリアタンパク質およびフロイントアジュバントを含むエマルジョンを腹腔内および/または皮内注射することにより、免疫される。例えば固体表面に吸着する遊離ペプチドを用いるELISA分析により、約2週間毎に、検出可能な抗ペプチド抗体の有用な力価を提供するために、何回かの追加免疫注射が必要とされてもよい。免疫された動物の結成中の抗ペプチドの力価は、抗ペプチド抗体の選別により、例えば、当技術分野で周知の方法により選択された抗体の固相担体および溶出のペプチドに吸着することにより、増加させてもよい。
【0205】
例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質または1以上の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープからなるポリペプチドに対するポリクローナル抗体は、当技術分野で周知の様々な手順により生成することができる。例えば、本発明のポリペプチドは、抗原固有のポリクローナル抗体を含む血清の生産を誘発するため、限定するものではないが、ウサギ、マウス、ラット等を含む様々な宿主動物に投与することができる。例えばフロイントアジュバント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメットゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバムなど潜在的に有用なヒトのアジュバントなど、様々なアジュバントは、宿主動物種によるが、免疫反応を高めるために使用されてもよい。当該アジュバントもまた、当技術分野において周知である。
【0206】
別の例として、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、遺伝子組み換えおよびファージディスプレイ技術、またはその組み合わせの利用をはじめとする当技術分野で周知の多様な技術を使用して準備することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で周知であって、例えば、Harlow、他、 Antibodies: A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed., 1988)およびHammerling、他、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas (Elsecier, NY, 1981)などに教示されているものを含むハイブリドーマ技術を用いて生産することができる。本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により生産される抗体に限定されるものではない。「モノクローナル抗体」は、真核生物、原核生物およびファージクローンを含む任意の単一クローンから誘導され、また抗体が生成される方法以外に由来する抗体をいう。
【0207】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を生成し、選別する方法は、日常的に行われ、当技術分野で周知である。例えば、マウスは、本発明のポリペプチドまたは当該ペプチドを発現する細胞により免疫することができる。免疫応答が検出されると、例えば、抗原に固有の抗体がマウスの血清中で検出されるとすぐに、マウスの脾臓が摘出され、脾細胞が単離される。脾細胞は、周知の技術により、例えばATCCから入手可能な細胞株SP20由来の細胞など、適切な骨髄腫細胞に融合させる。ハイブリドーマを選択し、限界希釈によりクローン化する。ハイブリドーマクローンは、本発明のポリペプチドを結合することのできる抗体を分泌する細胞のための、当技術分野で周知の方法によりアッセイされる。一般に高レベルの抗体を含む腹水は、陽性ハイブリドーマクローンを有するマウスを免疫することにより生成することができる。
【0208】
1以上の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを認識する抗体断片は、公知の技術によって作出されてもよい。例えば、FabおよびF(ab’)2断片は、(Fab断片を生産するため)パパインなどの酵素、またはペプシン(F(ab’)2断片を作出するため)を用いて、免疫グロブリン切断により作出されてもよい。F(ab’)2断片は、多様な領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。
【0209】
本発明の抗体は、当技術分野において周知のファージディスプレイ法を用いて生成することもできる。ファージディスプレイ法において、機能的抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子の表面に提示(ディスプレイ)される。特定の実施形態において、当該ファージはレパートリーまたは組み合わせ抗体ライブラリー(例:ヒトまたはマウス)から発現する抗原結合ドメインを提示するために使用することができる。対象とする抗原を結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、例えば標識化された抗原、または固体表面かビーズに結合された、あるいは捕捉された抗原などを使い、選択または特定することができる。これら方法に使用されるファージは、典型的には、該ファージにより発現されるfdおよびM13結合性ドメインを、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組み換え技術によって融合されたFab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインととこに含む、線状ファージである。
【0210】
本発明の抗体を作製するために使用することのできるファージディスプレイ法の例としては、Brinkman、他(J. Immunol. Methods 182: 41-50, 1995)、Ames、他(J. Immunol. Methods 184: 177-186, 1995)、Kettleborough、他(Eur. J. Immunol. 24: 952-958, 1994)、Persic、他(Gene 187: 9-18, 1997)、Burton、他(Advances in Immunology 57: 191-280, 1994)、PCT公開WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401および米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号および同第5,969,108号により開示された方法が挙げられる。
【0211】
ファージ選択後、ファージ由来の領域をコードする抗体は、全抗体または断片を結合する任意の望ましい他の抗原を精製するために単離され、使用することができ、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌および細菌を含む、任意の望ましい宿主で発現させることができる。例えば、組み換え技術によりFab、Fab’およびF(ab’)2断片を生産するための技術はまた、PCT公開WO92/22324、Mullinax、他BioTechniques 12(6): 864-869, 1992)およびSawai、他(AJRI 34:26-34, 1995)およびBetter、他(Science 240: 1041-1043, 1988)に開示された方法など当技術分野で周知の方法を用いて、使用することも可能である。
【0212】
一本鎖Fvを生産するために使用可能な技術の例は、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号、Huston、他(Methods in Enzymology 203: 46-88, 1991)、Shu、他(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 7995-7999, 1993)およびSkerra、他(Science 240: 1038-1040, 1988)に記載されている。
【実施例】
【0213】
本発明をさらに、以下の非限定的な例により説明する。
【0214】
実施例1
オオムギ穀粒の(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量の自然変動による候補遺伝子の特定
比較マッピングの研究により、イネ科の種の染色体に沿う遺伝子順序の高レベルの保存があることが明らかにされてきたが、このレベルでのマクロな直線性から、遺伝子の存在または順序を必ずしも予測できるわけではない。それにもかかわらず、メガ塩基対レベルでの共直線性は、遺伝子のポジショナルクローニングのために、分子マーカーの開発のために、モデル生物種のシンテニー領域を基準とすることにより、1つの種における当該形質に影響を及ぼす候補遺伝子を特定するために不可欠である。したがって、このアプローチを、穀類の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの候補遺伝子を特定するために採用した。
【0215】
量的形質遺伝子座(QTL)マッピングおよび比較ゲノミクスは、トウモロコシ(Zea mays)での細胞壁生合成に係わる遺伝子を特定するために使用されてきた。麦芽処理および醸造特性において(1,3;1,4)−β−D−グルカンが果たす中心的な役割のため、穀粒の(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量のQTL分析が利用可能である。図1に示された通り、穀粒の(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量に最大の影響を有するQTLは、Adh8およびABG019マーカーの間にあるオオムギ染色体2H上に位置することが分かった。
【0216】
第2H染色体のオオムギQTLに隣接する2つのDNAマーカーの配列を用いて、シンテニー領域は、イネの第7染色体に位置することが分かった。ここで、6個のセルロースシンターゼ様(Csl)遺伝子のクラスターは、染色体の21.59−21.72 Mb領域に相当する119Kbの区画内で検出された(図1)。
【0217】
それぞれの遺伝子は、イネのCslFグループに分類され、これらはOsCslF1(配列番号19)、OsCslF2 (配列番号21)、OsCslF3(配列番号23)、OsCslF4(配列番号25)、OsCslF8(配列番号31)およびOsCslF9(配列番号33)と命名された。イネ第7染色体のこの区画における他の周知の遺伝子は、偽遺伝子を表すと思われる切断型OsCslF遺伝子を含む。
【0218】
OsCSslF5(配列番号27)およびOsCslF7(配列番号29)遺伝子は、イネゲノムの他の場所に位置する(データは示さない)。
【0219】
これに基づき、比較ゲノミクスアプローチは、穀類の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの潜在的な候補遺伝子として、CslFグループの遺伝子の特定を可能にした。Csl遺伝子のCslFグループは、イネ目の細胞壁中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの排他的発生に一致して、単子葉植物にのみ見出されているのは注目に値する。
【0220】
材料および方法
(i)植物組織
組織は、高湿度、光強度300umol/m/sおよび11/13時間の昼夜レジームのもと、日中28℃および夜間22℃の温度で成長させた、成熟させたイネ(Oryzae sativa cv Nippon Bare)から収集された。材料は、シャーレのなかで湿ったろ過紙上で28℃にて発芽させた成長5日目の苗からも収集された。
【0221】
(ii)シンテニー分析
オオムギ (1,3;1,4)−β−D−グルカンのQTLに基づくマーカーのDNA配列は、GrainGenesデータベース(http://wheat.pw.usda.gov)から得た。Barley−Consensus2(Qi、他、Genome 39: 379-394, 1996)およびBarley−Consensus2003(Karakousis、他、Australian Journal of Agricultural Research 54: 1173-1185, 2003)マップも調査に含まれた。イネゲノム上のマーカーのシンテニーの染色体位置は、GRAMENEウェブサイト(http://www.gramene.org)BLASTN分析により判定された。シンテニー領域は、細胞壁多糖類の合成をコードする酵素の遺伝子注釈について調べられた。オオムギ第2H染色体上の(1,3;1,4)−β−D−グルカンのQTLピークに相当するイネ第7染色体上の領域について徹底的な分析を行い、さらに分析した結果、6個の同一箇所に位置するCslF遺伝子が同定された。
【0222】
実施例2
イネCslF遺伝子でのシロイヌナズナの形質転換
(1,3;1,4)−β−D−グルカン合成におけるイネOsCslF遺伝子の考えられる役割は、トランスジェニックシロイヌナズナ植物体でのゲイン・オブ・ファンクションにより試験された。シロイヌナズナ細胞壁は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンを含んでおらず、シロイヌナズナゲノムは、既知のCslF遺伝子を含んでいない。したがって、イネOsCslF遺伝子を有するトランスジェニックシロイヌナズナの細胞壁での(1,3;1,4)−β−D−グルカンの沈着は、導入された遺伝子が(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードすることを示唆する。このアプローチは、(1,3;1,4)−β−D−グルカン合成に必要な任意の前駆体、中間体、補因子または補助酵素のシロイヌナズナ中の利用可能性を前提とし、これに依存している。
【0223】
よって、イネCslF1、2、3、4、8遺伝子を、PCRによりcDNAからうまく増幅し、図2に示された通り、35Sプロモーターの下流に、pAJ22バイナリーベクターにクローニングした。
【0224】
次に、プラスミドベクターを、標準的な花浸漬法(CloughおよびBent, Plant J. 16: 735, 1998)によりシロイヌナズナの形質転換を行うために使用される、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に挿入した。複数のOsCslF遺伝子が(1,3;1,4)−β−D−グルカン合成に必要とされる場合、形質転換は、単一遺伝子構築物ばかりではなく、OsCslF遺伝子を様々に組み合わせて実施した。
【0225】
除草剤BASTAによる選択後、DNAおよびRNAを選択されたトランスジェニック植物から単離し、トランスジーンの有無を確認し、リアルタイム定量的PCR(Burton、他(2005, 前記)に記載されたQ−PCR)によりトランスジーンの転写をモニタリングした。
【0226】
サザンハイブリダイゼーション分析により、トランスジーンの存在を確認した(図3)。図4に示した通り、少なくともいくつかの株は、様々なOsCslF遺伝子の単一コピーを含むことが発見された。シロイヌナズナを複数のOsCslF遺伝子で形質転換した場合には、これら全ての遺伝子を検出することができた(図3)。
【0227】
トランスジェニック株の14日齢の葉でのOsCslF遺伝子の転写も確認された。標準化したmRNAレベルを、選択されたトランスジェニック植物について図5に示した。ここで、トランスジーンの転写活性における大きな相違は、植物株間で明らかであり、また、同様に大きな相違が、複数のトランスジーンを有する株の個々のOsCslF遺伝子の間に観察される。例えば、OsCslF2、OsCslF4およびOsCslF8遺伝子により形質転換された株において、OsCslF4の転写産物は、通常最も量が多い。この結果は、35Sプロモーターは、多くの株で明らかに高レベルの転写を促進したことを示している。
【0228】
材料および方法
(i)植物
シロイヌナズナは、長い12/12時間の昼夜条件か、または短い8時間/16時間の昼夜条件で、栽培チャンバーで23℃にてシロイヌナズナ土壌ミックスで生育させた。トランスジェニック植物から収集した種を乾かし、清浄化し、2日間4℃で春化処理し、選択のための25mg/lのBialophosを含む固体MS培地に播種した。その中で残ったものを、第5葉期の時点で土壌に移植し、上記条件の下で、栽培室で栽培した。
【0229】
(ii)バイナリーベクター構築
バイナリーベクターpAJ22(図2)は、Andrew Jacobs博士(アデレード大学)より頂戴したものであり、pAMPAT−MCSバックボーン(登録番号AY436765)に基づいている。これは、pNOSターミネーター領域を有する二重35Sプロモーターを含むが、該プロモーターは本実施例では使用されないトリプルHAエピトープを組み込んでいる改変されたマルチクローニング部位により、分離されている。上記の通り増幅されたイネOsCslF cDNAに対応する完全長PCR産物は、TEASYベクター(Promega)にクローニングした。正しいサイズのインサートを担持するクローンを、適切な制限酵素(表2)およびTEASYバックボーンを二分割するための酵素で消化した。反応物を、アガロースゲル電気泳動法により分離し、CslF断片を切り出し、QIAquick(QIAGEN)ゲル抽出キットを製造元の説明書に従って使用して精製した。バイナリーベクターpAJ22は、対応する一対の制限酵素により消化され、CslF断片は、pAJ22ベクターにライゲーションした。プラスミドDNAを、QIAquickミニプレップキットを用いて陽性クローンから抽出し、インサートを、アプライドバイオシステムズ社製ABI3700キャピラリーシーケンサーでBigDye3.1化学(ABI)を用いて、配列決定した。確認済みインサートを含むプラスミドDNA調製物は、Mersereau、他 (Gene 90: 149, 1990)の方法を用いて、エレクトロポレーションを介してアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)cvGV3101に形質転換され、陽性コロニーを、25mg/lのリファンピシン、48mg/lのカルベリシニン、50mg/lのカナマイシンを含む培地で選択した。
【0230】
(iii)シロイヌナズナ形質転換
シロイヌナズナ形質転換体は、CloughおよびBent(Plant J. 16: 735, 1998)の花浸漬法により作製した。
【0231】
(iv)DNA抽出およびサザンハイブリダイゼーション分析
ゲノムDNAを、Qiagenミニプレッププラントキットを用いて若葉および花芽から抽出した。植物体ごとに約5μgのゲノムDNAを該当する制限酵素により消化し、1%のアガロースTAEゲルで分離した。DNAを、Highbond+メンブレンにトランスファーした。メンブレンにプレハイブリダイズおよびハイブリダイズを施し、プローブ断片を、Rediprimeラベリングキット(Amersham, High Wycome, UK)を製造元の説明書に従って用いて標識化した。
【0232】
(v)RNA抽出、cDNA合成およびRT−PCR
全てのRNA抽出およびcDNA合成は、Burton、他(Plant Physiol. 134: 224-236, 2004)に記載された通りに行った。適切な組織から得たcDNAのサンプルは、Elongase Taqポリメラーゼ(インビトロジェン社製)を用いて、PCRにより完全長CslF配列を増幅するために、鋳型として用いた。表2に挙げられたプライマーペアは、製造元が提案する標準的レシピに従い、PCR中で使用した。ジメチルスルホキシド(DMSO,5% v/v、Sigma, St Louis, MO, USA)を添加し、PCRを、94℃で30秒間、50℃〜58℃(個々のプライマーのTによる)で30秒間、68℃で3分間を40サイクルとして実施した。プライマーは、表2に示した通り、増幅された断片をバイナリーベクターに対するクローニングを促進するための各末端の制限酵素部位を含んでいた。
【表2】

【0233】
(vi)定量的リアルタイムPCR(Q−PCR)分析
対照遺伝子および特異的CslF遺伝子のプライマーペアを表3に示した通り使用した。希釈系列調製物用のPCR産物の原液は、イネまたはシロイヌナズナ組織のcDNAの成分のいずれかに由来するcDNAからPCRにより調製し、精製し、次にBurton、他(2004, 前記)に記載された通り、HPLCにより定量化した。7桁にわたる希釈系列は、以下の通り109コピー/μl原液から調製した。原液1マイクロリットルを99μlの水に加え、6つの1:10の段階希釈物を調製し、107コピー/μlから101コピー/μlにわたる合計7種類の溶液を作製した。7つの標準溶液のそれぞれについて3つずつの複製を、最低3つの鋳型を含まない対照とともに、各Q−PCR実験ごとに含めた。全ての遺伝子について、cDNAの1:20希釈液は、許容範囲の標準偏差を有する発現データを作成するには十分であった。各cDNAの3つの複製PCRを、各実験に含めた。全てのQ−PCR反応混合物は、CAS−1200ロボット(Corbett Robotics, Brisbane, Australia)で調製した。
【0234】
2マイクロリットルの希釈cDNA溶液を、5μlのQuantiTectSYBR Green PCR試薬、4μMにて各1μlのフォワードおよびリバースプライマー、水に0.3μlの10×SYBR(BioWhittaker Molecular Applications, Rockland, USA、DMSO中10,000×を500μlの水に0.5μl加えて毎日調製する)および0.7μlの水を含む反応液中で用いた。各Q−PCR反応系列の総量は10μlである。反応は、RG3000 Rotor−Geneリアルタイムサーマルサイクラー(Corbett Research, Sydney, Australia)において、95℃にて15分間保持後、95℃30秒間、55℃30秒間、72℃30秒間、表3に記載の通りの最適アクイジション温度(AT)15秒間を45サイクルとして実施した。融解曲線は、70℃〜99℃で加熱することにより、増幅終了時の産物から得た。実験後、最適なサイクル閾値(CT)は、希釈系列から判定され、生の発現データが得られた。各cDNAの3つの複製の各セットについて、平均発現レベルおよび標準偏差を求めた。
【0235】
外来性CslF遺伝子の生の発現データは、Vandesompele、他(Genome Biol. 3: 1-11, 2002)のアプローチを用いてスケール化された。4種類のシロイズナズナ対照遺伝子のうち最良の3種類に由来する標準化係数を、Genormソフトウェア(Vandesompele、他、前記, 2002)を用いて導いた。各cDNA中の外来性CslF遺伝子の生の発現データを、特定のcDNAに関する標準化係数で生の発現値を除算することによりスケール化した。
【表3】

【0236】
実施例3
トランスジェニックシロイヌナズナ株の免疫学的特徴
OsCslF転写産物レベルが最も高いトランスジェニックシロイヌナズナ株を、特に細胞壁中の(1,3;1,4)−β−D−グルカン沈着に関してさらに詳細な分析を行うために選択した。第1の例において、(1,3;1,4)−β−D−グルカンに特異的なモノクローナル抗体および電子顕微鏡法を含む免疫細胞化学的方法を、シロイヌナズナ株における多糖類の存在について、トランスジェニック株を選別するために使用した。使用した抗体は、セロオリゴ糖または(1→3)−β−D−グルカン、カロースとは結合しない。阻害研究により、(1,3;1,4)−β−D−オリゴグルコシドに対して比較的弱く結合することが示された。
【0237】
14日齢および28日齢の葉の小片を、モノクローナル抗体でのプローブ付けのために切断し、抗体は、市販のオオムギ(1,3;1,4)−β−D−グルカンを用いて、プレインキュベーションにより組織の切片ごとにルーチンでチェックした。多糖類とのプレインキュベーションは、金標識二次抗体の結合をブロックする。(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、図7に示された通り、特異的なモノクローナル抗体によりいくつかのトランスジェニックシロイヌナズナ植物(シロイヌナズナ株A28、A29およびA18など)の細胞壁において、検出された。図7、パネルBにおいて、トランスジェニックシロイヌナズナ株A18からの葉の表皮層から得た細胞壁は、約14日をかけて(1,3;1,4)−β−D−グルカンが沈着したことを示している。多糖類は、この株のほかの組織では検出されなかった。最後に、パネルCは、バックグラウンドの標識が通常は最小限であるか全く観察されないWTシロイヌナズナ葉表皮細胞壁の切片の代表的な対照パネルを示している。
【0238】
材料および方法
(i)電子顕微鏡法のための形質転換したシロイヌナズナ葉の調製
シロイヌナズナ葉を、pH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の4%(v/v)のグルタールアルデヒド(EMグレード)で固定し、4℃で保存した。サンプルはPBS中で3回洗浄し、PBS中で2%の四酸化オスミウム中で室温にて1時間、後固定した。MilliQ水中で3回すすいだ後、サンプルをエタノール系列で脱水し、数日間をかけて徐々にLR White樹脂を浸潤させた。個々の葉を、未使用の樹脂が満たされたゼラチンカプセル中に入れ、65℃で一晩、重合させた。
【0239】
(ii)透過電子顕微鏡法の免疫学的標識
シロイヌナズナ葉の切片(80nm)は、Leica UltracutRミクロトームで、ダイアモンドナイフを用いて作製し、100および200メッシュ、Formvarコーティング済ゴールドグリッドに回収した。超薄切片は、PBS中の1%ウシ血清アルブミン中で30分間ブロッキングし、その後、オオムギ(1,3;1,4)−β−D−グルカンに対して生起されたマウスのモノクローナル抗体(1:500に希釈;Biosupplies Australia, Parkville, VIC 3052, Australia)中、室温で1時間および4℃で一晩インキュベートした。グリッドを、PBS中で2回洗浄し、ブロッキングバッファー中で3回洗浄し、18nmのコロイド金−AffiniPureヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., PA, USA)中で1時間インキュベートした。全てのグリッドを、PBS中で2回洗浄し、MilliQ中で数回洗浄した後、2%の含水酢酸ウラニル中で染色し、続いてクエン酸鉛三重染色を施した。切片を、Philips BioTwin透過電子顕微鏡で観察し、Gatan Multiscan CCDカメラで撮像した。
【0240】
一部の実験では、一次抗体をはぶいて、非特異的な二次抗体の結合の対照とした。他の対照実験では、抗体の特異性を確認するために一次抗体をそれぞれの多糖類に予め吸収させた。オオムギ(Biosupplies Australia)から得た(1,3;1,4)−β−D−グルカン溶液(1mg/ml)を、同量のそれぞれの希釈した一次抗体と混合した。これらの陰性対照実験のいずれにおいても、標識は観察されなかった。
【0241】
本実験に関する補助データは、Burton、他、Science 311: 1940-1942, 2006に述べられている。
【0242】
実施例4
オオムギのCslF配列の特定
入手できる場合、部分ESTオオムギ配列を、ガイドとしてイネのCslF配列を用いて、完全CslF配列に組み立てた。
【0243】
オオムギEST配列が入手できなかった場合、推定コムギCslF配列を特定した。これは、対応するオオムギ配列に高い相同性があると思われる。コムギEST配列に基づきプライマーを設計し、対応するオオムギ配列を増幅するために、オオムギcDNA集団に対して使用した。3’および 5’RACEアプローチを用いてオオムギ配列を伸長させた。
【0244】
少数のケースで、対応するコムギESTのない密接に関連したオオムギ遺伝子の追加的な一部分が増幅され、RACEを使用して、これらも伸長させた。合計で、6つの異なるオオムギCslF配列が特定され、これらは、HvCslF1、HvCslF2、HvCslF3、HvCslF4、HvCslF5およびHvCslF6と命名された。
【0245】
実施例5
イネおよびオオムギのCslF DNA配列およびアミノ酸配列のアライメント
イネおよびオオムギ両者のCslF配列のDNA配列およびアミノ酸配列のアライメントを行った。結果を図8に示す。
【0246】
タンパク質配列はNCBIのbl2seqペアワイズアライメントプログラム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/wblast2.cgi)のデフォルトパラメーターを用いて、アライメントし、比較した。DNAアライメントに関し、EMBOSSペアワイズアライメントアルゴリズム(http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/)をwater(local)法とともに用いた。
【0247】
Thompson、他(Nucl Acids Res 25: 4876-4882, 1997)に記載されたClustalXプログラムを用いてマルチプル配列アライメントおよび系統樹作成を行った。得られた系統樹を図9に示す。
【0248】
実施例6
オオムギCslF遺伝子のマッピング
穀粒(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量に最大の影響を及ぼすQTLは、Adh8およびABG019マーカーの間のオオムギ第2H染色体上に位置し、マーカーは、Han、他(Theor. Appl. Genet. 91: 921, 1995)によるSteptoe×Morex倍加半数体(DH)においてマッピングされた通りである。
【0249】
PCRにより生成した6つのオオムギCslF cDNAの特異的遺伝子断片を放射性標識し、コムギ・オオムギ付加株のセットから得られたDNAに対してプローブとして使用した(それぞれの染色体位置を最初に確立し、遺伝子の精細マッピングを行うためのIslamおよびCliper×SaharaオオムギDH集団)。
【0250】
コムギ・オオムギ付加株の使用により、HvCslF2、4、5および6が、第2H染色体上に発見され、HvCslF1は、第7Hに、HvCslF3は第1HSにそれぞれ発見された。HvCsl2、4、5および6のためのCliperおよびSaharaオオムギ栽培品種(親株)の間での多型の特定、および、続くこれら親株から作出したDHマッピング集団のスクリーニングにより、定義される遺伝子の正確なマップ位置決定が可能になった(図10)。したがって、これら4つのオオムギCslF遺伝子は、オオムギ第2H染色体上の穀粒(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量のメジャーなQTLに一致することが分かった。これは、1以上のこれらの遺伝子が、オオムギ粒(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量に直接影響を及ぼす可能性があることを示唆している。
【0251】
材料および方法
コムギ・オオムギ付加株(Islam、他、Heredity 46: 161-174 1981)の消化済みゲノムDNAのフィルターを、染色体レベルで遺伝子をマッピングするために使用した。オオムギDHマッピング集団Clipper×Saharaを、HvCslF遺伝子を精細にマッピングするために使用した(Karakousis、他、Aust. J. Ag. Res. 54: 1137-1140, 2003)。標準的方法を使うサザンハイブリダイゼーション分析のための、消化済みゲノムDNAフィルターの両方のセットは、Peter Langridge教授(Australian Centre for Plant Functional Genomics, University of Adelaide)から提供して頂いた。遺伝子座は、Map Manager QTXソフトウェア(Manly et al., Mammalian Genome 12: 930-932, 2001)を用いて位置決定した。
【0252】
実施例7
トランスジェニックオオムギ植物でのオオムギCslF遺伝子の過剰発現
(1,3;1,4)−β−D−グルカン合成でのオオムギCslF遺伝子ファミリーの個々のメンバーの役割を、強力な構成的プロモーターであるCaMV 35Sの制御下に遺伝子をGolden Promiseオオムギ植物のゲノムに挿入することにより調べた。オオムギ遺伝子CslF1、CslF4およびCslF6の完全cDNAは、表4に示したプライマーおよび高フィデリティーポリメラーゼを用いてPCRにより増幅し、配列決定して、PCR導入エラーを含まないことを確認した。PCR断片は、図11に示したバイナリーベクターpMDC32にクローニングした。
【0253】
プラスミドベクターは、次にアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に挿入し、これを標準的な形質転換手法(Tingay、他、Plant J. 11: 1369-1376, 1997、 Matthews、他、Mol. Breeding 7: 195-202, 2001)によりオオムギ栽培品種であるGolden Promiseを形質転換するために使用した。
【0254】
ハイグロマイシンでの選択に続き、トータルRNAをトランスジェニック苗から抽出し、Q−PCRにより内在性および組み込まれたトランスジーンの転写をモニタリングした(Burton 、他、Plant Phys. 134: 224-236, 2004)。表5に示されたプライマーを使用した選択可能なマーカー遺伝子ハイグロマイシンの転写についてのQPCRの結果を、図12に示す。野生型、非形質転換対照植物(株WT1−3)のcDNA中にはハイグロマイシンに関するPCR産物は見られないが、CslFファミリーと無関係の遺伝子を含む形質転換された対照(G89株)を含む、ハイグロマイシントランスジーンについてのトランスジェニックである全ての植物は、陽性レベルのハイグロマイシンQPCR産物(図2)を示している。
【0255】
3つのHvCslF遺伝子の転写についても、表5に記載のプライマーを使用して、これらの植物について試験した。標準化mRNAレベルを、トランスジェニック集団全体および対照植物にわたってHvCslF1、HvCslF4およびHvCslF6について示す。35S:HvCslF1により形質転換した植物はG98と記され、これらの株のHvCslF1遺伝子の過剰発現は、WTC、G89、G99およびG103群(図13)中の内在性遺伝子の過剰発現を超える有意なレベルで顕著である。特に高いレベルの転写産物は、植物98−10、98−11および98−24に見られる(図13)。35S:HvCslF4により形質転換した植物は、G103と記され、これらの株のHvCslF4遺伝子の過剰発現は、WTC、G89、G99およびG99群(図14)中の内在性遺伝子の過剰発現を超える有意なレベルで顕著である。最も高いレベルの転写産物は、植物103−5に見られる(図14)。最後に、35S:HvCslF6により形質転換した植物は、G99と記され、これらの株のHvCslF6遺伝子の過剰発現は、WTC、G89、G98およびG103群(図15)中の内在性遺伝子の過剰発現を超える有意なレベルで顕著であり、株99−6および99−11に見られる最も高いレベルの転写産物を伴う(図15)。
【0256】
材料および方法
(i)バイナリーベクター構築
バイナリーベクターpMDC32は、マーク・カーティス博士、チューリッヒ大学(http://www.unizh.ch/botinst/Devo_Website/curtisvector/index_2.html)から頂戴したものであるが、ハイグロマイシン耐性遺伝子、および遺伝子過剰発現が望まれるオオムギ形質転換実験における使用に適したCaMV35Sプロモーターを有する、Gateway可能な(Invitrogen社)バイナリーベクターである(Curtis and Gossniklaus, Plant Phys 133: 462-469, 2003)。表4に示されたプライマーで増幅されたオオムギHvCslF cDNAに相当する完全長PCR生成物は、Applied Biosystems ABI3700キャピラリーシーケンサーでBigDye 3.1化学(ABI)を用いて配列決定された。正しいcDNAは、GatewayエントリーベクターpDENTR−Topo(Invitrogen社製)に再結合された。cDNAの向きは、制限酵素消化により確認し、次にエントリークローンを、デスティネーションベクターとしてpMDC32とのLR再結合反応(Invitrogen社)中で使用した。pMDC32への挿入の成功は、制限酵素消化により確認され、確認されたインサートを含むプラスミドDNA調製物で、Mersereau、他(Gene 90: 149, 1990)の方法を用いるエレクトロポレーションを介してアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)cvAGL0を形質転換し、陽性コロニーを、25mg/lのリファンピシンおよび25mg/lのカナマイシンを含む培地上で選択した。
【0257】
(ii)オオムギ形質転換
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)媒介形質転換実験は、Tingay、他(1997, 前記)により開発され、Matthews、他(2001, 前記)により改変された手法を用いて実施した。発育中の穂を、未成熟の胚芽が直径約1〜2mmになった時点で、温室で育てたドナー植物(cv. Golden Promise)から採取した。未成熟の胚芽を、表面消毒した穀粒から無菌的に切除し、胚盤は胚軸を取り除いて単離した。WanおよびLemauxのレシピに基づき(Plant Phys. 104: 37-48, 1994)、単離されたばかりの25個の胚盤を、切断面を上にして、カルス誘導培地の入った90mm×10mmのペトリ皿の中央において培養した。この培地は、MSマクロ栄養素(MurashigeおよびSkoog, Physiologia Plant. 15: 473-497, 1962)、30g/Lのマルトースを添加したFHGミクロ栄養素、1mg/Lのチアミン−HCI、0.25g/Lのミオイノシトール、1g/Lのカゼイン加水分解物、0.69g/LのL−プロリン、10μMのCuSO、2.5mg/Lのジカンバ(3,6−ジクロロ−o−アニス酸)から構成され、3.5g/LのPhytagel(商標)(Sigma Chemicals, St. Louis, MO, USA)により固形化した。アグロバクテリウム(Agrobacterium)懸濁液(50μl)を、胚盤上に分配し、ペトリ皿を45度の角度に傾けて、余分な細菌懸濁液を除いた。外植片を裏返し、ペトリ皿の端に培地の表面を片寄せた。胚盤は、カルス導入培地の新しいプレートに移動し、切断面を上にして22℃〜24℃の暗所で3日間培養した。共培養後、胚盤を95μMハイグロマイシンB(Becton Dickinson Biosciences, Palo Alto, CA, USA)を含む新しいカルス導入培地に移し、暗所で培養した。個々の胚盤の全カルスは、さらに6週間、二晩ごとに新しい選択培地へ移し換えた。カルス選択期間終了と同時に、各処理された胚盤から得られたカルスをシュート再生培地に移し換えた。この培地は、WanおよびLemaux(1994, 前記)のFHGレシピに基づいている。これは、FHGマクロ栄養素およびミクロ栄養素、1mg/Lチアミン−HCI、1mg/Lのベンジルアミノプリン、0.25g/Lのミオイノシトール、0.73g/LのL−グルタミン、62g/Lのマルトース、10μMのCuSO、38μMハイグロマイシンBを含み、3.5g/LのPhytagel(商標)により固形化した。培養物は、22〜24℃で3週間から4週間光曝露(昼16時間/夜8時間の光周期)した。再生シュートを、カルスから切り離し、95μMハイグロマイシンBを添加したホルモン不含のカルス誘導培地が入った培養ボックス(Magenta Corporation, Chicago, IL, USA)に移し換えて、根形成を誘導した。活発に育っている組織培養で得た植物を土壌に定着させ、成熟させた(Singh、他、Plant Cell, Tissue and Organ Culture 49:121-127 1997)。全ての培地は、共培養後にアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の成長を阻害するために、150mg/LのTimentin(登録商標)(SmithKline Beecham, Pty. Ltd., Melbourne, Australia)を含んでいた。
【0258】
(iii)RNA抽出物およびcDNA合成
トータルRNAは、TRIZOLを用いて、上記の通りMagentaボックスで成長している苗の葉から抽出し、cDNAを、Burton、他(Plant Phys 134: 224-236, 2004)に記載のように逆転写酵素Superscript III(Invitrogen社)を用いて合成した。
【0259】
(iv)定量的リアルタイムPCR(Q−PCR)解析
対照遺伝子のプライマーペア(Burton、他、2004, 前記)および特異的CslF遺伝子のプライマーペアは、表5に示した通り使用した。希釈系列の調製物用のPCR産物の原液は、オオムギ組織cDNAのいずれかの成分に由来するcDNAからPCRにより調製し、次にBurton、他(2004, 前記)により記載された通り、HPLCにより精製および定量化を行った。7桁にわたる希釈系列を、 以下の通り10コピー/μl原液から調製した:1μlの原液を99μlの水に加え、6つの1:10系列希釈液を調製して、10コピー/μlから10コピー/μlにわたる合計7つの溶液を作製した。各Q−PCR実験ごとに7つの標準溶液のそれぞれについて3つの複製を、最低3つの鋳型を含まない対照と共に含めた。すべての遺伝子について、cDNAの1:20の希釈物は、許容範囲の標準偏差を有する発現データを得るのに十分であった。各cDNAの3つの複製PCRを、各実験に含めた。全てのQ−PCR反応混合物は、CAS−1200ロボット(Corbett Robotics, Brisbane, Australia)で調製した。
【0260】
2μlの希釈されたcDNA溶液を、5μlのQuantiTect SYBR Green PCR試薬、4μMにて1μlのフォワードおよびリバースプライマー、0.3μlの10×SYBR Green(水中;10,000x in DMSO, BioWhittaker Molecular Applications, Rockland, USA;500μlの水に0.5μlを添加して毎日調製)、および0.7μlの水を含む反応液中で使用した。各Q−PCR反応混合物の総量は、10μlである。反応は、以下の通りRG 3000 Rotor−Gene リアルタイムサーマルサイクラー(Corbett Research, Sydney, Australia)で実施した:95℃にて15分間保持後、95℃で20秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間および最適アクイジション温度(AT)で15秒間を45サイクル行った。融解曲線は、70℃〜99℃に加熱することにより、増幅後に産物から得た。実験後、最適サイクル閾値(CT)を、希釈系列から判定し、生の発現データを得た。各cDNAの3つの複製セットについて、平均発現レベルおよび標準偏差を算出した。
【0261】
HvCslF遺伝子の生の発現データは、Vandesompele、他(Genome Biol. 3: 1-11, 2002)のアプローチを用いてスケール化した。4種類のオオムギ対照遺伝子のうち最良の3種類からの標準化係数を、Genormソフトウェア(Vandesompele et al., 前記, 2002)を用いて導いた。各cDNA中の外来性CslF遺伝子の生の発現データは、特定のcDNAについての標準化係数で生の発現値を除算することによりスケール化した。
【表4】

【表5】

【0262】
実施例8
光学顕微鏡のレベルでのトランスジェニックオオムギ株中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの免疫学的検出
35Sプロモーターにより制御されるHvCslF1、HvCslF4またはHvCslF6転写産物レベルが最も高い、実施例7に記載のトランスジェニックオオムギ株は、細胞壁中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの沈着に関してさらに分析するために、選択された。葉の切片は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンに特異的なモノクローナル抗体を蛍光団コンジュゲート二次抗体により検出し、それを光学顕微鏡により観察する免疫学的方法を用いて、オオムギ株における多糖類の存在についてスクリーニングされた。内在性CslF遺伝子の発現により、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、葉などの栄養組織の細胞壁に通常沈着する。また、オオムギ苗の新生組織中でのその存在と分布は、TretheweyおよびHarris(New Phytologist 154: 347-358, 2002)によりTEMレベルで報告されている。対照葉切片における内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンの分布パターンを、オオムギCslF遺伝子を過剰発現するトランスジェニック葉のサンプルにより示されたパターンと対比させる。
【0263】
実施例7に記載の植物群を代表する葉小片を、固定し、パラフィンに包埋した。スライドにマウントした切片は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンに結合する特異的モノクローナル抗体(一次抗体)で処理し、洗浄後、蛍光団コンジュゲートAlexa488(二次抗体)を添加した。切片をバッファーですすぎ、封入剤を添加し、適切な蛍光フィルターにより顕微鏡を使用して撮像した。全ての画像は、7秒の標準曝露時間で撮像した。全体的な形態および様々な細胞タイプの位置は、全ての細胞壁材料に非特異的に蛍光を生じさせる、UVフィルターを使って特定された(図16)。特異的抗体シグナルは、I3フィルターを用いて観察された(図17および18)。
【0264】
一次抗体、二次抗体または両方の抗体なしで処理したサンプルから採集した全ての対照切片は、400×倍率で非常に低いレベルの蛍光を示した(図17)。一次抗体および二次抗体による標識は、I3フィルターを用いると緑色のシグナルとして現れる(図18)。両方の抗体を用いて予想される通り、内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、野生型(WT、図18E)およびトランスジェニック対照(G89、図18F)から得られた組織切片上で明らかであり、シグナルは、主に葉肉細胞および切片の中間領域の維管束に集中していた。UVの下で、全切片中の全細胞が存在し、無傷であることは確かであった。一方で、トランスジェニックG98およびG103植物は、G98−10(図18A)、G98−24(図18B)およびG103−5(図18C)などのように、シグナル強度の増加傾向を示し、表皮細胞および厚壁線維細胞は、非常に強く標識化されている。圧壁細胞は、肥厚した二次細胞壁を有し、TretheweyおよびHarris(2002, 前記)は、野生型苗から採取したこれら細胞ではTEMレベルで希薄な標識化しか検出しなかった。G99−12など、G99植物により示された標識化パターン(図18D)は、野生型およびトランスジェニック対照により示されたパターン、およびG98およびG103植物とも異なる。この場合、蛍光は、気孔細胞および維束管の一部分にのみ見られる。
【0265】
これらの結果は、個々のオオムギCslF遺伝子の過剰発現が、上昇したタンパク質レベルのグルカンシンターゼ酵素を導く可能性があり、したがって、これらトランスジェニック植物の細胞壁中、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの沈着増加を導くことを示している。
【0266】
材料および方法
(i)光学顕微鏡法のための形質転換したオオムギ葉の調製
オオムギ葉小片を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.2中の、0.25%(v/v)のグルタールアルデヒド、4%(v/v)パラホルムアルデヒド(EMグレード)および4%のスクロースで固定し、4℃で一晩保存した。サンプルは、PBS中で3回洗浄し、エタノール系列中で脱水し、ゆっくり数日間をかけてパラフィンを浸潤させた。ブロックをトリミングし、6μmに切片化した。
【0267】
(ii)蛍光団コンジュゲート抗体による光学顕微鏡のための免疫標識化
切片は、キシレン中で脱パラフィンし、100%、90%、70%のエタノール溶液により徐々に再水和させた。1×リン酸緩衝食塩水(PBS)により2回すすいだ後、残留アルデヒド基を不活性化するために、切片を20分間0.05Mグリシンとインキュベートした。切片を、非特異的結合を防ぐために、インキュベーションバッファー(1×PBS中、1%ウシ血清アルブミン(BSA))で2×10分間ブロッキングした。スライドの水気を切り、特異的一次抗体BG1(BioSupplies, Melbourne, Australia)を、1:50の希釈比率で添加し、湿チャンバーで1時間インキュベートした。未結合一次抗体を、インキュベーションバッファーで3×10分間すすいで除去し、二次抗体Alexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗体マウスIgG(Molecular Probes, Eugene, USA)を添加した。スライドを、光を除くために、アルミホイルで包み、室温で2時間インキュベートした。未結合二次抗体は、インキュベーションバッファーで3×10分間すすぐことにより除去し、封入剤(90%グリセロール:10%水)を数滴載せ、切片にカバーガラスをかけた。対照では、一次抗体、二次抗体または両方の抗体のいずれかを除いた。DFC480CCDカメラを使い、フィルターD(UV、励起355〜425nm)またはフィルターI3(青、励起450〜490nm)の下で、Leica AS LMD顕微鏡で撮像した。示した全てのイメージは、蛍光強度を標準化するために、7秒の曝露時間で400×倍率で撮影した。
【0268】
実施例9
透過電子顕微鏡を用いたトランスジェニックオオムギ中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの免疫学的検出
35Sプロモーターにより制御されるHvCslF1、4または6の転写産物レベルが最も高い、実施例7および8に記載のトランスジェニックオオムギ株は、細胞壁中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの沈着に関し、さらに分析を行うために選択された。実施例3に記載の、(1,3;1,4)−β−D−グルカンに特異的なモノクローナル抗体および電子顕微鏡法を使用する免疫細胞化学的な方法を用いて、オオムギ株中の多糖の存在について葉の切片をスクリーニングした。内在性CslF遺伝子の発現により、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは葉などの栄養組織の細胞壁に通常沈着する。また、オオムギ苗の新生組織中での存在と分布は、TretheweyおよびHarris(New Phytologist 154: 347-358, 2002)によって、TEMレベルで報告されている。光学顕微鏡レベルで対照材料中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの分布を、実施例7でのオオムギCslF遺伝子を過剰発現する苗の葉切片に示されるものと比較した。特異的なモノクローナル抗体およびTEMを用いる同じ株のサブセットの繰り返し分析は、個々の細胞壁をより精密に試験することができるものであり、ここで説明する。
【0269】
実施例7で述べた植物群を代表する葉小片を採取し、固定し、LR White樹脂中に包埋した。封入した切片を、(1,3;1,4)−β−D−グルカンに結合する特異的モノクローナル抗体およびコロイド金を用いて処理した。
【0270】
内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンの存在は、野生型(WT)およびトランスジェニック対照(G89)葉から得た切片で、予想通り明らかに顕著であった。対照的に、G98−10およびG103−5などのトランスジェニックG98およびG103植物から得た切片は、非常に強い標識化を示す。対照G89の標識化した表皮細胞壁を図19Aに示した。トランスジェニックG98−10およびG103−5の同等の表皮細胞壁を図19B(G98−10)および図19C(G103−5)に示した。図中標識量が増えているのが明らかである。図20Aは、軽度に標識化されたG89対照中の厚壁線維細胞壁を示している。かかる細胞は、厚みを増した二次細胞壁を有しているが、TretheweyおよびHarris(2002, 前記)もまた野生型苗から採取したこれら線維中でTEMレベルでわずかながら標識化を検出した。それに比べて、図20Bおよび20Cにそれぞれ示された、G98−10およびG103−5から得た線維細胞壁は、より強く標識化されている。これらの結果は、個々のCslF遺伝子の過剰発現が、トランスジェニック植物の細胞壁中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの沈着を増加させている可能性があることを示している。これは、光学顕微鏡レベル(実施例7)でのグルカン検出のために蛍光団を用いること、および本実施例で実証された通り、TEMレベルで免疫金標識化を採用することの両者により実証された。
【0271】
材料および方法
(i)電子顕微鏡法のための形質転換したオオムギ葉の調製
オオムギ苗葉の小片は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.2中の、0.25%(v/v)のグルタールアルデヒド、4%(v/v)パラホルムアルデヒド(EMグレード)および4%のスクロースで固定し、4℃で一晩保存した。MilliQ水中で3回洗浄した後、サンプルをエタノール系列中で脱水し、ゆっくり数日間をかけてLR White樹脂を浸潤させた。個々の葉の小片を、新しい樹脂を満たしたゼラチンカプセルに入れ、65℃で一晩重合させた。
【0272】
(ii)透過電子顕微鏡法のための免疫標識化
オオムギ葉の切片(80nm)は、ダイヤモンドナイフを用いてLeica Ultracut Rミクロトームで作製し、100および200のメッシュ、Formvarコーティングしたゴールドグリッドに回収した。超薄断片は、PBS中1%ウシ血清アルブミンにて30分間ブロッキングし、続いてオオムギ(1,3;1,4)−β−D−グルカンに対して生起したマウスのモノクローナル抗体中(希釈率1:5000、Biosupplies Australia, Parkville, VIC 3052, Australia)で1時間室温および一晩4℃でインキュベートした。グリッドを、PBS中で2回洗浄し、3回ブロッキングバッファーで洗浄した後、18nmのコロイド金AffiniPureヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., PA, USA)中で1時間インキュベートした。全てのグリッドを、PBSで2回、MilliQ水で数回洗浄した後、Philips BioTwin透過電子顕微鏡で観察し、Gatan Multiscan CCDカメラで撮像した。
【0273】
当業者であれば、本明細書に記述されている本発明が、具体的に記述されているもの以外の変形および変更を許容することを理解するであろう。本発明はそのような全ての変形および変更を含むと理解されるべきである。本発明は同様に、個別的にまたは集合的に、本明細書において述べられ、または示されているステップ、特徴、組成物および化合物の全て、ならびに該ステップまたは特徴のいずれか2つ以上の任意のおよび全ての組合せを含む。
【0274】
同様に、本明細書において用いられる単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上既に特段の指示がないかぎり、複数の態様を含むことに留意しなければならない。すなわち、例えば、「トランスジーン(a transgene)」への言及は、単一のトランスジーンだけでなく2つ以上のトランスジーンを含む;「植物細胞(a plant cell)」は単一の細胞だけでなく2つ以上の細胞を含む、など。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】オオムギ第2H染色体の一定領域にシンテニーであるイネの第7染色体上の領域を示す。6つのセルロースシンターゼ様(Csl)遺伝子のクラスターが、染色体の21.59−21.72 Mbに対応する119Kbの区画で検出された。
【図2】シロイヌナズナでCslF遺伝子を発現させるために使用されるpAJ22ベクターのベクターマップを示す。
【図3】OsCslF2、OsCslF4およびOsCslF8からの断片を用いてプローブされた形質転換シロイヌナズナ植物由来のXbaIおよびScaI消化DNAを示すサザンブロットである。これらについてハイブリダイズした断片は、図面上でF2、F4およびF8と、記号が付されている。レーン番号1〜14は、それぞれ植物株A2、A3、A7、A12、A16、A18、A21、A23、A28、A29、A31、A33、A41およびA42であり、レーン15は、野生型Columbia植物由来のDNAを示す。
【図4】BAR遺伝子の断片でプローブされた、形質転換シロイヌナズナ植物由来のXbal消化DNAを示すサザンブロット法ある。トラック番号1〜14は、それぞれ植物株A2、 A3、A7、A12、A16、A18、A21、A23、A28、A29、A31、A33、A41およびA42であり、トラック15は、野生型Columbia植物由来のDNAを示す。
【図5】OsCslF2、OsCslF4またはOsCslF8の1以上を発現する14日齢のトランスジェニックシロイヌナズナ植物の葉での、Q−PCRにより判定された、標準化mRNAレベルを示す。
【図6−1】オオムギ(Hordeum vulgare)およびイネ(Oryza sativa)由来のCslFアミノ酸配列のClustalWマルチプル配列アライメントを示す。
【図6−2】オオムギ(Hordeum vulgare)およびイネ(Oryza sativa)由来のCslFアミノ酸配列のClustalWマルチプル配列アライメントを示す。
【図6−3】オオムギ(Hordeum vulgare)およびイネ(Oryza sativa)由来のCslFアミノ酸配列のClustalWマルチプル配列アライメントを示す。
【図6−4】オオムギ(Hordeum vulgare)およびイネ(Oryza sativa)由来のCslFアミノ酸配列のClustalWマルチプル配列アライメントを示す。
【図6−5】オオムギ(Hordeum vulgare)およびイネ(Oryza sativa)由来のCslFアミノ酸配列のClustalWマルチプル配列アライメントを示す。
【図6−6】オオムギ(Hordeum vulgare)およびイネ(Oryza sativa)由来のCslFアミノ酸配列のClustalWマルチプル配列アライメントを示す。
【図7】特異的モノクローナル抗体を使ったいくつかのトランスジェニックシロイヌナズナ植物の細胞壁中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの検出を図示する透過電子顕微鏡写真である。パネルAは、形質転換シロイズナズナ株A28およびA29中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの検出を示す。パネルBでは、トランスジェニックシロイヌナズナ株A18の葉の表皮層からの細胞壁を示し、約14日間で(1,3;1,4)−β−D−グルカンが沈着していることを示している。最後に、パネルCは、通常、バックグラウンド標識化が最小限しかないか、または全く見られないWTシロイヌナズナ葉表皮細胞壁の代表的な切片を示している。
【図8】イネ(Oryza sativa)およびオオムギ(Hordeum vulgare)由来のCslF配列間のヌクレオチド配列同一性、タンパク質配列同一性および、タンパク質配列の類似性を示している。
【図9】オオムギ(Hordeum vulgare)およびイネ(Oryza sativa)由来の完全および部分CslFアミノ酸配列の関係を示す系統樹である。
【図10】Steptoe × Morexの第2H染色体(SxM 2H)BINマップ上のHvCslF2、4、5および6遺伝子の位置を示している。主要マーカー(図1の通り)は、右側に示されており、センチモルガンでの染色体頂部からの距離は、左側に表されている。
【図11】pMDC32ベクターのマップを示す。
【図12】対照およびトランスジェニックオオムギ植物におけるハイグロマイシン転写産物レベルのQPCR分析結果を示す。
【図13】対照およびトランスジェニックオオムギ植物におけるHvCslF1転写産物レベルのQPCR分析結果を示す。
【図14】対照およびトランスジェニックオオムギ植物におけるHvCslF4転写産物レベルのQPCR分析結果を示す。
【図15】対照およびトランスジェニックオオムギ植物におけるHvCslF6転写産物レベルのQPCR分析結果を示す。
【図16】細胞形態を実証するためにUV下の葉の自己蛍光を示す。ab=背軸面、ad=向軸面、bs=線維束鞘細胞、bul=機動細胞(bulliform cell)、e=表皮細胞、m=葉肉細胞、p=師部、scl=圧膜組織線維、st=気孔、x=木質部。
【図17】一次抗体と二次抗体の両方を標識化手順から除外した、I3フィルターでの7秒間の曝露で撮影されたG98−10を示す。
【図18−1】対照植物(EおよびF)と比較したトランスジェニック植物(A、B、C、D)を示す。全てI3フィルターに7秒間曝露して撮影したものである。(A)G98−10および(B)G98−24の両者は、対照切片と比較すると、葉先端の表皮細胞および厚膜組織線維の増加した蛍光を示している。
【図18−2】対照植物(EおよびF)と比較したトランスジェニック植物(A、B、C、D)を示す。全てI3フィルターに7秒間曝露して撮影したものである。(C)G103−5:対照切片と比較して、全ての細胞タイプにおいて増加した蛍光を示す。(D)G99−12:対照切片と比較して、気孔および線維束組織中の増加した蛍光を示す。
【図18−3】対照植物(EおよびF)と比較したトランスジェニック植物(A、B、C、D)を示す。全てI3フィルターに7秒間曝露して撮影したものである。(E)WT対照:内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンからの蛍光シグナルを示す。(F)トランスジェニック対照G89−1:内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカンからの蛍光シグナルを示す。
【図19−1】透過電子顕微鏡写真を示す。パネルAは、内在性レベルの(1,3;1,4)−β−D−グルカンの標識化を表す、トランスジェニック対照G89−1の代表的な表皮細胞壁を示す。パネルBは、これら植物の細胞壁中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの有意に強い標識化を表すトランスジェニック対照G89−1の代表的な表皮細胞壁を示す。
【図19−2】透過電子顕微鏡写真を示す。パネルAは、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの内在性レベルの標識化を示す、トランスジーン対照G89−1の代表的な表皮細胞壁を示す。パネルCは、これら植物の細胞壁中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの有意に強い標識化を示すトランスジェニック対照G103−5の代表的な表皮細胞壁を示す。
【図20−1】透過電子顕微鏡写真を示す。パネルAは、内在性レベルの(1,3;1,4)−β−D−グルカンの標識化を表すトランスジェニック対照G89−1からの代表的な厚膜組織線維細胞壁である。パネルBは、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの比較的強い標識化を示すトランスジェニックG98−10からの代表的な厚膜組織線維細胞壁を示す。
【図20−2】透過電子顕微鏡写真を示す。パネルCは(1,3;1,4)−β−D−グルカンの比較的強い標識化を示す、トランスジェニックG103−5からの厚膜組織線維細胞壁を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを制御する方法であって、該細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させるステップを含む、上記方法。
【請求項2】
細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させる方法であって、該細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現を変化させるステップを含む、上記方法。
【請求項3】
細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を変化させる方法であって、該細胞中のCslF遺伝子またはその機能的ホモログの発現を変化させるステップを含む、上記方法。
【請求項4】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成方法であって、単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸で細胞を形質転換するステップ、および該細胞に該単離された核酸を発現させるステップを含む、上記方法。
【請求項5】
前記細胞が植物細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が単子葉植物細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が禾穀類植物細胞である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
請求項4に記載の方法により生成された、(1,3;1,4)−β−D−グルカン。
【請求項9】
以下のもの:
(i)同じ分類群の野生型細胞と比較して変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンレベル;
(ii)同じ分類群の野生型細胞と比較して変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性;
(iii)同じ分類群の野生型細胞と比較して変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸の発現
のうち、いずれか1以上を示す細胞。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により作製された、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
植物細胞である、請求項9または10に記載の細胞。
【請求項12】
単子葉植物細胞である、請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
禾穀類植物細胞である、請求項10または11に記載の細胞。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1項に記載の1以上の細胞を含んでなる、多細胞構造物。
【請求項15】
植物全体、植物組織、植物器官、植物断片、植物繁殖材料、または培養植物組織からなるリストから選択される、請求項14に記載の多細胞構造物。
【請求項16】
禾穀類植物、またはその組織、器官もしくは断片である、請求項14または15に記載の多細胞構造物。
【請求項17】
穀粒を含んでなる、請求項16に記載の多細胞構造物。
【請求項18】
変化した(1,3;1,4)−β−D−グルカンレベルを示す穀粒であって、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの変化したレベルおよび/もしくは活性、および/または(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸分子の変化した発現を示す1以上の細胞を含んでなる、上記穀粒。
【請求項19】
以下のもの:
(i)請求項17または18に記載の穀粒を製粉することにより製造される穀粉;および
(ii)任意により、1以上の他の穀粒を製粉することにより製造される穀粉
を含んでなる穀粉。
【請求項20】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする、単離された核酸分子。
【請求項21】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項22】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列に対して少なくとも50%同一なヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項23】
低ストリンジェンシー条件下で請求項21に記載の核酸分子にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項24】
中程度のストリンジェンシー条件下で請求項21に記載の核酸分子にハイブリダイズする、請求項23に記載の単離された核酸分子。
【請求項25】
高ストリンジェンシー条件下で請求項21に記載の核酸分子にハイブリダイズする、請求項23または24に記載の単離された核酸分子。
【請求項26】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12のいずれかにより表されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項27】
請求項20〜26のいずれか1項に記載の単離された核酸分子のヌクレオチド配列の相補体であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項28】
請求項20〜26のいずれか1項に記載の単離された核酸分子のヌクレオチド配列の逆相補体であるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項29】
請求項20〜28のいずれか1項に記載の単離された核酸分子のうちのいずれか1つの断片。
【請求項30】
請求項20〜29のいずれか1項に記載の単離された核酸分子を含む遺伝子構築物またはベクター。
【請求項31】
請求項20〜29のいずれか1項に記載の単離された核酸分子または請求項30に記載の遺伝子構築物を含んでなる細胞。
【請求項32】
植物細胞である、請求項31に記載の細胞。
【請求項33】
単子葉植物細胞である、請求項32に記載の細胞。
【請求項34】
禾穀類植物細胞である、請求項32または33に記載の細胞。
【請求項35】
請求項31〜34のいずれか1項に記載の細胞のうち1以上を含んでなる、多細胞構造物。
【請求項36】
植物全体、植物組織、植物器官、植物断片、植物繁殖材料、または培養植物組織からなるリストから選択される、請求項35に記載の多細胞構造物。
【請求項37】
禾穀類植物、またはその組織、器官もしくは断片である、請求項35または36に記載の多細胞構造物。
【請求項38】
穀粒を含んでなる、請求項37に記載の多細胞構造物。
【請求項39】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼタンパク質をコードするアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項40】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12のいずれかにより表されるアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項41】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10および配列番号12のいずれかにより表されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項42】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9および配列番号11のいずれかにより表されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項43】
請求項39〜42のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチドの断片。
【請求項44】
請求項40〜43のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチドまたはその断片であって、そのアミノ酸配列が(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする、上記ポリペプチドまたはその断片。
【請求項45】
1以上の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを含む、単離されたポリペプチド。
【請求項46】
請求項39〜45のいずれか1項に記載の単離されたポリペプチドまたはその断片に対して生起された、抗体またはそのエプトープ結合性フラグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図18−3】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【公表番号】特表2009−502180(P2009−502180A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524314(P2008−524314)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001107
【国際公開番号】WO2007/014433
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(508034901)アデレイド リサーチ アンド イノベーション ピーティーワイ リミテッド (2)
【出願人】(508034912)グレインズ リサーチ アンド ディベロップメント コーポレーション (2)
【出願人】(507170262)ザ ユニバーシティー オブ メルボルン (8)
【Fターム(参考)】