説明

多軸センサ出力補正装置及び多軸センサ出力補正方法

【課題】物理量測定素子の感知方向と標準座標系の対応する標準軸とがずれても、標準軸の感度の直交性を有する物理量を求める多軸センサ出力補正装置及び方法を提供する。
【解決手段】本発明の多軸センサ出力補正装置は、一つの物理量における特定方向の成分を測定する軸センサを複数組み合わせて構成された多軸センサの軸センサ毎の軸センサ測定物理量を、標準座標系の標準軸に対する軸ずれを補正し、標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正する装置であり、軸センサ各々が測定する軸センサ測定物理量を、標準軸の軸センサ対応物理量に補正する補正係数が記憶された記憶部と、この記憶部の補正係数により、軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に補正する測定値補正部を有し、標準座標系における方向と強さとが自明の物理量である印加物理量を、軸センサに与えて軸センサ出力値を得て、印加物理量と軸センサ出力値から補正係数が求められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標準座標系の座標軸に対応して配置された磁気センサ及び加速度センサなどの物理量測定素子の検出値を補正し、標準座標系における各座標軸の物理量を求める多軸センサ出力補正装置、多軸センサ出力補正方法及び物理量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器に磁気センサが2軸方向あるいは3軸方向に配置され、それぞれの軸方向の地磁気を測定し、携帯機器がいずれの方向を向いているかを示す方位角θを検出する方位角検出装置が、ナビゲーションシステムなどに用いられている。
【0003】
上述した方位角検出装置は、この物理量測定素子から得られる物理量である磁気の向きとその磁気の大きさなどにより、標準座標系における自身の向いている方向としての方位を算出している。
この方位角検出装置は、方位の算出に用いる物理量として、x軸、y軸及びz軸各々の方向の磁気(物理量)を測定し、この測定された磁気のデータに含まれる、物理量測定素子が有するオフセット成分を除去する。その後、x軸、y軸及びz軸の測定感度(以降、感度)を補正し、方位の算出に用いるx軸、y軸及びz軸毎の物理量を求めている。また、複数の物理量測定素子毎に、測定時間をずらして複数回の測定を行い、測定値を平均化することにより、ノイズの低減を図ることもできる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、複数の磁気計測素子のチップを斜めに配置して搭載することにより、斜めに配置した磁気計測素子の測定値から、z軸方向の磁気を座標変換により求めることにより、同一設計の磁気計測素子を用いた多軸磁気センサを実現する構成もある(例えば、特許文献2参照)。
一般的には、x軸方向及びy軸方向の感度を有する磁気計測素子と、z軸方向の磁気計測素子とにおいて、z軸方向の磁気計測素子がx軸及びy軸からなる平面に対して、垂直に実装される。このため、z軸方向の磁気計測素子として、x軸及びy軸方向を測定する磁気計測素子と異なる設計の磁気計測素子が用いられる場合が多い。
しかし、この特許文献2においては、x軸及びy軸方向を測定する磁気計測素子のチップを物理量測定装置に斜めに配置することで、x軸及びy軸方向を測定する磁気計測素子のみで磁気計測素子を構成することができ、物理量測定装置を薄型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/032741号
【特許文献2】特開2004−125778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2においては、標準座標系の各標準軸における正しい物理量を測定するため、各物理量測定素子における物理量の感知方向を、標準座標系の対応する標準軸それぞれと向きが合うように配置する必要がある。例えば、標準座標系がx軸、y軸及びz軸の標準軸からなる座標系の場合、x軸に対応する感知方向Sx、y軸に対応する感知方向Sy、z軸に対応する感知方向Szを、感知方向がそれぞれ対応する標準軸の方向と合うように、物理量測定素子としての磁気センサを配置する必要がある。
しかしながら、物理量測定素子の実装においては、製造工程における加工ばらつきがあるため、物理量測定素子の感知方向が、標準座標系の標準軸に対して角度ずれ(以下、軸ずれ)を有して配置(実装)される場合がある。そして、特許文献1及び特許文献2においては、この軸ずれによる各標準軸方向の物理量の補償が行われていないため、標準座標系の標準軸各々における物理量を高い精度で得ることができない。
【0007】
特に、特許文献1及び特許文献2のような3次元の物理量測定装置においては、配置の設計が3次元空間内で成されている。このため、各物理量測定素子の感知方向を、3次元の標準座標系の標準軸の向きに対応させて、それぞれ定められた向きに配置しなければならない。このように、各物理量測定素子の配置する際の傾きまで考慮しなければならず、3軸センサの作成のための実装が困難である。
また、物理量測定素子を配置して作成した3軸センサが、個体毎に物理量測定素子の実装の傾きが異なり、個体毎の物理量が異なることが起こり、信頼性の面から軸ずれが問題として顕在化してしまう。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたもので、物理量測定素子の物理量の感知方向の各々が、標準座標系の対応する標準軸に対してずれていても、標準軸の感度の直交性を確保した物理量を求めることができる多軸センサ出力補正装置及び多軸センサ出力補正方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の多軸センサ出力補正装置は、一つの物理量における特定方向の成分を測定する軸センサを複数組み合わせて構成された多軸センサにおいて、前記軸センサ毎の軸センサ測定物理量を、標準座標系を構成する標準軸に対する軸ずれを補正することで、前記標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正する多軸センサ出力補正装置であり、前記軸センサ各々が測定する前記軸センサ測定物理量をそれぞれの標準軸の前記軸センサ対応物理量に補正する補正係数が記憶された補正係数記憶部と、前記補正係数記憶部から前記補正係数を読み出し、前記軸センサから入力される前記軸センサ測定物理量を、読み出した補正係数により補正した前記軸センサ対応物理量を求める測定値補正部とを有し、前記軸センサの各々に対して、前記標準座標系における方向と強さとが自明の物理量である印加物理量を与えて、前記軸センサ各々の軸センサ出力値を得て、前記印加物理量と前記軸センサ出力値とから、前記補正係数が求められたことを特徴とする。
【0010】
本発明の多軸センサ出力補正装置は、前記補正係数を求める際、前記測定軸の方向毎に、当該標準軸の方向と一致した方向に前記印加物理量を与えることを特徴とする。
【0011】
本発明の多軸センサ出力補正装置は、前記補正係数が、前記軸センサ測定物理量を前記軸センサ対応物理量に補正する際における、前記標準軸方向における前記軸センサ対応物理量の測定感度を合わせるための要素を、前記測定軸毎に含んでいることを特徴とする。
【0012】
本発明の多軸センサ出力補正装置は、前記補正係数が、前記印加物理量を前記軸センサ出力値に変換する行列の逆行列として求められた係数であり、前記測定値補正部が、前記軸センサ測定物理量に対して前記逆行列を乗算し、各測定軸の軸センサ対応物理量を求めることを特徴とする。
【0013】
本発明の多軸センサ出力補正装置は、前記補正係数が、前記印加物理量を前記軸センサ出力値に変換する行列をLU分解した上三角行列と下三角行列として求められた係数であり、前記測定値補正部が、前記上三角行列及び前記下三角行列とからなる連立方程式に、前記軸センサ測定物理量を代入して計算することで、各測定軸の前記軸センサ対応物理量を求めることを特徴とする。
【0014】
本発明の多軸センサ出力補正装置は、前記補正係数が、前記多軸センサの前記軸センサ測定物理量を、前記多軸センサにおける軸センサの数より少ない前記標準軸の前記軸センサ対応物理量に変換する係数として設定されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の多軸センサ出力補正装置は、複数の軸センサからなる多軸センサにおいて、前記軸センサ毎の軸センサ測定物理量を、標準座標系を形成する前記標準軸に対する軸ずれを補正することで、前記標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正する多軸センサ出力補正方法であり、測定値補正部が、当該軸センサ各々の検出する前記軸センサ測定物理量をそれぞれの測定軸の前記軸センサ対応物理量に補正する補正係数が記憶された補正係数記憶部から、前記補正係数を読み出し、前記軸センサから入力される前記軸センサ測定物理量を、読み出した補正係数により補正し、前記標準座標系を形成する前記標準軸に対する軸ずれを補正した前記軸センサ対応物理量を求め、前記補正係数が、前記軸センサの各々に対して、前記標準軸方向と強さとが自明の物理量である印加物理量を与えて、前記軸センサ各々の軸センサ出力値を検出し、前記印加物理量と前記軸センサ出力値とから求められたことを特徴とする。
【0016】
本発明の多軸センサ出力補正装置は、一つの物理量における特定方向の成分を測定する軸センサを複数組み合わせて構成された多軸センサにおいて、前記軸センサ毎の軸センサ測定物理量を、標準座標系を構成する標準軸に対する軸ずれを補正することで、前記標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正して出力する物理量測定装置であり、複数の軸センサからなる多軸センサと、前記軸センサ各々の検出する軸センサ測定物理量をそれぞれの前記標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正する補正係数が記憶された補正係数記憶部と、前記記憶部から前記補正係数を読み出し、前記軸センサから入力される前記軸センサ測定物理量を、読み出した補正係数により補正し、前記標準座標系を形成する標準軸に対する軸ずれを補正した前記軸センサ対応物理量を求める測定値補正部とを有し、前記補正係数が、前記軸センサの各々に対して、前記標準軸方向と強さとが自明の物理量である印加物理量を与えて、前記軸センサ各々の軸センサ出力値を検出し、前記印加物理量と前記軸センサ出力値とから求められたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、標準座標系における各座標軸(標準軸)の物理量を、この標準軸と感知すべき向きがずれている(軸ずれを有する)磁気センサ及び加速度センサなどの検出値を、予め軸ずれを補正する係数である補正係数、すなわち、「多軸センサに対して測定軸の方向毎に自明の印加物理量を与え、軸センサ各々の軸センサ出力値を検出し、印加物理量と、多軸センサの測定値である軸センサ出力値とから求めたものであり、軸センサ各々の測定した軸対測センサ定物理量をそれぞれ対応する測定軸に対応する軸センサ対応物理量に補正する補正係数」により補正するため、標準座標系を形成する測定軸に対する軸ずれを補正した軸センサ対応物理量を、高い精度により求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態による物理量センサ出力補正回路1を用いた物理量測定装置100の構成例を示す概略ブロック図である。
【図2】軸センサの感知方向と、物理量測定装置100の標準軸(x軸、y軸及びz軸)とが対応していない状態を説明する図である。
【図3】磁場を物理量として測定する場合に、物理量測定装置100における標準軸の各々の方向に、既知の磁場を印加し、補正係数を求める処理を説明する図である。
【図4】物理量センサ出力補正装置1が行う軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に線形補正する処理の動作例を示すフローチャートである。
【図5】軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数を求める処理の動作例を示すフローチャートである。
【図6】物理量測定装置100の標準座標系の標準軸と、物理量を印加する軸とが異なる場合の補正係数の算出について説明する図である。
【図7】物理量測定装置100における理想的な標準座標系におけるy軸に対し、印加した既知の物理量のy’軸が角度θ傾いた軸ずれを有している場合の補正係数の求め方を説明する図である。
【図8】物理量測定装置100における理想的な標準座標系における標準軸であるx軸、y軸、z軸に対して、物理量の印加する印加方向がずれている場合の補正係数を求める処理を説明する図である。
【図9】異なる感知方向に配置された軸センサが3つからなる3次元ベクトル空間から、より低次元の2次元ベクトル空間(2つの標準軸、感知方向が2つ)へ写像する補正係数を求める処理を説明する図である。
【図10】Nが4の場合であり、4個の軸センサの感知方向の各々が、正四面体の重心から、この正四面体の各頂点に向かうベクトルa、b、c、dである場合を説明する図である。
【図11】図10に示す正四面体の重心から各頂点に向かうベクトルa、b、c、dを、正四面体の重心を3次元座標系の原点とし、かつ各ベクトル間の角度及び各ベクトルがx軸及びy軸からなる2次元平面となす角度が同一となるように並び替えて配置した図である。
【図12】正四面体における重心から各頂点へ向かうベクトルを、図11に示す関係となるように、リードフレームを用いて配置した物理量測定装置100の構成例を示す図である。
【図13】(44)式における角度θの角度を変化させた補正係数毎の、線形補正による、物理量測定装置100における標準軸であるx軸、y軸及びz軸に重畳される白色ノイズの低減を示したテーブルである。
【図14】物理量測定装置100を用いて測定する物理量が加速度である場合、軸センサとしての加速度センサが出力する軸センサ測定物理量を、標準座標系の各標準軸に対応する軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数の求め方を説明する図である。
【図15】物理量測定装置100を用いて測定する物理量が角速度である場合、軸センサとしての角速度センサが出力する軸センサ測定物理量を、標準座標系の各標準軸に対応する軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数の求め方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、一つの物理量における特定方向の成分を測定する軸センサを複数組み合わせて構成された多軸センサ(物理量測定素子)において、標準座標系を構成する標準軸に対する各物理量測定素子の感知方向の軸ずれを補正することにより、軸センサ毎の感知方向における軸センサ測定物理量を、標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正する物理量センサ出力補正回路を備える多軸センサ出力補正装置に関するものである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明の一実施形態による物理量センサ出力補正回路1を用いた物理量測定装置100の構成例を示す概略ブロック図である。
【0020】
本実施形態による物理量測定装置100は、例えば、物理量センサ出力補正回路1と、x軸方向に印加される物理量を測定するX軸物理量測定部50xと、y軸方向に印加される物理量を測定するY軸物理量測定部50yと、z軸方向に印加される物理量を測定するZ軸物理量測定部50zとを備えている。このx軸、y軸及びz軸は、物理量測定装置100における標準軸であって互いに直交し、3次元の標準座標系を構成している。
すなわち、上述したX軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々は、それぞれ標準軸であるx軸、y軸、z軸方向に平行な物理量(すなわち、軸センサ対応物理量)を測定するように、物理量測定装置100に配置された軸センサである。
【0021】
次に、この図2は、軸センサの感知方向と、物理量測定装置100の標準軸(x軸、y軸及びz軸)とが対応していない状態を説明する図である。
しかしながら、対応する標準軸に対して、図2に示すように、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの物理量の感知方向が、各標準軸に対して傾くなどの軸ずれを起こしている場合がある。この場合、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々は、それぞれの感知方向が標準軸に対応しておらず、標準軸であるx軸、y軸及びz軸の物理量を含んだ測定値として、軸センサ測定物理量を出力している。
本実施形態においては、物理量センサ出力補正回路1が、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々が出力する軸センサ測定物理量を、各標準軸の軸方向に対応した軸センサ対応物理量に変換して出力する。
【0022】
図1に戻り、本実施形態による物理量センサ出力補正回路1は、入力信号制御部11と、測定値補正部12と、補正係数記憶部13とを備えている。
入力信号制御部11は、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zから入力されるアナログ値の軸センサ測定値を、デジタル値である軸センサ測定物理量に変換して出力する。ここで、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々は、自身の感知方向で検出した磁場に対応した、アナログ値である電圧値を軸センサ測定値として出力する。
また、入力信号制御部11は、アナログ値の軸センサ測定値をデジタル値の軸センサ測定物理量に変換する際、軸センサ測定物理量に含まれているオフセット値を除去するオフセット処理も行う(詳細は後述)。
【0023】
補正係数記憶部13には、軸センサであるX軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々が測定して出力する軸センサ測定物理量を、それぞれの標準軸であるx軸、y軸及びz軸に対応した軸対応センサ物理量に補正する補正係数(線形変換用係数)が記憶されている。この補正係数は、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々に対し、標準座標系における方向と強さとが自明の物理量である印加物理量を与えて、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50z各々の軸センサ出力値を得て、印加物理量と軸センサ出力値とから求めた係数である(求め方は後に詳述)。また、補正係数記憶部13には、軸センサのオフセット値が、対応する軸センサ毎に予め書き込まれて記憶されている。
測定値補正部12は、補正係数記憶部13から、軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数を読み出し、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々から入力される軸センサ測定物理量を、読み出した補正係数により補正し、補正結果として軸センサ対応物理量を出力する。
【0024】
次に、本実施形態における補正係数により、測定したい各標準軸の軸センサ対応物理量を、感知方向が標準軸とずれた各軸センサから出力する軸センサ測定物理量から求めるアルゴリズムについて説明する。以降、本実施形態においては、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々を磁気センサとして、測定する物理量を磁場の強度とその方向(ベクトル)として説明する。また、以下の説明において、磁場を物理量として説明する。
物理量測定装置100における理想的な標準座標系を構成する標準軸であるx軸、y軸及びz軸に沿った物理量の向きは、ベクトルで以下の(1)式で表される。ここで、aは物理量としての磁場を印加する方向の規定ベクトルBx、By、Bzの倍数としての係数である。
【0025】
【数1】

【0026】
一方、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々の感知方向の軸センサ出力値である軸センサ測定物理量が、標準軸であるx軸、y軸、z軸で構成される標準座標系において、それぞれb、b、bであるとする。
これにより、(1)式における物理量として磁場Bx(ベクトル )を物理量測定装置100に印加した場合、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々は、それぞれ軸センサ測定物理量bx1、by1、bz1を出力する。
【0027】
また、同様に、(1)式における物理量として磁場By(ベクトル )を物理量測定装置100に印加した場合、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々は、それぞれ軸センサ測定物理量bx2、by2、bz2を出力する。
また、(1)式における物理量として磁場Bz(ベクトル )を物理量測定装置100に印加した場合、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々は、それぞれ軸センサ測定物理量bx3、by3、bz3を出力する。
【0028】
上述したように、物理量測定装置100に対し、x軸の軸方向に物理量として磁場のベクトルBx、y軸の軸方向に物理量として磁場のベクトルBy、z軸の軸方向に物理量として磁場のベクトルBzというように測定毎に独立に軸センサに対して物理量を印加した結果、以下の(2)式の関係式が得られる。
【0029】
【数2】

【0030】
上述した(2)式に示す関係式において、行列Aは、以下の(3)式に示す行列式により表される。
【0031】
【数3】

【0032】
上記(3)式の示す行列により、軸センサであるX軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zから得られる軸センサ測定物理量としての以下の(4)式に示す軸センサ測定物理量である磁場のベクトルBsensと、測定軸に対応した軸センサ対応物理量である磁場のベクトルであるベクトルBとの関係は、以下の(5)式により表される。
【0033】
【数4】

【0034】
【数5】

【0035】
したがって、(3)式の行列Aの逆行列として、以下の(6)式に示す逆行列A−1を求める。
【0036】
【数6】

【0037】
この逆行列が、以下の(7)式に示すように、軸センサが出力する軸センサ測定物理量であるベクトルBsensから軸センサ対応物理量であるベクトルBを算出するため、すなわち線形補正するための補正係数として用いられる。
【0038】
【数7】

【0039】
また、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々の測定感度がそれぞれ異なる場合、すなわち|(bx1,bx2,bx3)|、|(by1,by2,by3)|、|(bz1,bz2,bz3)|の各々の大きさが異なる場合も、上述して求めた補正係数を用いることにより、軸センサ間の異なる測定感度も、軸ずれとともに補正することができる。
【0040】
次に、本実施形態による測定値補正部12で行われる軸センサ測定物理量から軸センサ対応物理量に補正する補正計算は、線形補正の計算として行われる。
上述と同様に、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの3つの軸センサが設けられた3軸の物理量測定装置100の場合を考えると、以下の線形補正の計算が行われる。
求める軸センサ対応物理量を以下の(8)式とした場合を考える。
【0041】
【数8】

【0042】
また、(6)式に示す補正係数としての逆行列A−1の要素を整理して、以下の(9)式により表す。
【0043】
【数9】

【0044】
そして、軸センサが出力する軸センサ測定物理量であるベクトルBsensから軸センサ対応物理量であるベクトルBを算出する以下の(10)式に対して、(4)式と、(9)式とを代入すると、(11)式の連立方程式を得ることができる。
【0045】
【数10】

【0046】
【数11】

【0047】
そして、(11)式の計算を行うことにより、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々の感知方向の軸センサ測定物理量から、物理量測定装置100における標準座標系の標準軸に対応する軸センサ対応物理量であるベクトル量B=(x、y、z)が求められる。
したがって、補正係数としての逆行列A−1さえ、予め求められていれば、積算(乗算)回数が9回であり、和算(加算)回数が6回の演算回数により、軸センサ測定物理量から軸センサ対応物理量の補正を行うことができる。
また、上述したように、補正係数を求める計算には、この求めた補正係数を用いて、軸センサ測定物理量から軸センサ対応物理量に線形補正するための計算と比較すると、計算量が多くなる。
【0048】
このため、本実施形態においては、上述したように、軸センサ測定物理量から軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数を求め、予め、補正係数記憶部13に書き込んで記憶させておく。そして、測定値補正部12は、線形補正を行う際に補正係数記憶部13から読み出す構成とし、計算量を線形補正のみを行う時間に抑制することで、軸センサ測定物理量から軸センサ対応物理量の線形補正を高速に行う構成となっている。
したがって、測定値補正部12は、軸センサ対応物理量を測定するタイミングにて、補正係数記憶部13から補正係数を読み出し、この読み出した補正係数により、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zから得られる軸センサ測定物理量を補正し、標準軸に対応する軸センサ対応物理量を求める。
【0049】
また、小型の物理量測定装置100を構成する場合、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々の感知方向の測定感度を、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50z全てで同様とすることが困難である。
この場合、従来であれば、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの出力する軸センサ測定物理量に対し、各標準軸に対する測定感度を補正する感度補正係数を、軸ずれを補正する補正係数と別に設定する必要があった。
これに対し、本実施形態においては、軸ずれをすでに説明した補正係数により、単純に線形補正している。
このため、本実施形態においては、軸ずれを補正する補正係数に対し、各軸センサの測定感度を補正する要素を含めておくことにより、軸ずれ及び測定感度の補正を、一度の線形補正の処理において行うことができる。
【0050】
また、本実施形態においては、予め既知の軸方向、かつ既知の物理量を印加物理量として物理量測定装置100に対して与え、この既知の物理量に対して乗算することにより、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの出力する軸センサ出力値となる行列Aを求めている。そして、この行列Aの逆行列を補正係数として用いている。
このため、この補正係数は、各軸センサの感知方向に対する測定感度の線形補正値も含んだ係数として求められることになり、軸ずれの補正と測定感度の補正とを一括して補正することができる。
【0051】
したがって、本実施形態によれば、多軸における標準軸間の測定感度を補正する必要がある物理量測定装置に応用することにより、軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に補正する補正係数を求める際、従来のように標準軸毎の測定感度の線形補正を行う必要がなくなる。
また、本実施形態によれば、各軸の測定感度を合わせる要素が補正係数に含まれるため、従来のように、物理量が測定される各標準軸の測定感度を補正するための感度補正係数を、軸ずれを補正する補正係数と別の係数として求める必要が無くなり、物理量測定装置100の検査工程に必要な計測を低減することができる。
【0052】
次に、図3は、軸センサが磁場を物理量として測定する磁気センサの場合において、ヘルムホルツコイルを用いて、物理量測定装置100における理想的な標準座標系を構成する標準軸(x軸、y軸、z軸)方向に、既知の磁場を印加し、補正係数を求める処理を説明する図である。この図3を用いて、軸センサ測定物理量から軸センサ対応物理量への線形変換を行う際に用いる補正係数を求める方法について説明する。
すでに述べたように、標準座標系における各標準軸方向に対して既知の物理量を与える際、例えば、図3に示すヘルムホルツコイルを用いた物理量印加装置により、物理量測定装置100に対して印加する必要がある。
【0053】
この既知の印加物理量を物理量測定装置100に対して印加する際、ヘルムホルツコイルにより、特定の向き、すなわち物理量測定装置100における標準軸方向に既知の強度の磁場を発生させる。
すなわち、図3において、(1)式に示すx軸方向に既知の磁場Bx、y軸方向に既知の磁場By、z軸方向に既知の磁場Bzをそれぞれ異なる測定タイミングにおいて発生させ、それぞれの測定タイミングにより、(2)式におけるX軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの出力する軸センサ出力値を得る。
【0054】
このとき、物理量測定装置100に設けられたX軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの物理量の感知方向と、ヘルムホルツコイルによって印加する物理量の方向(物理量測定装置100における理想的な標準軸方向)とを相対的に合わせて、物理量印加装置内に物理量測定装置100を配置する。
ここで、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの物理量の感知方向は、物理量測定装置100に配置されたている状態におけるX軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々が物理量を感知する方向を示している。
【0055】
次に、図1及び図4を用いて、本実施形態における軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に線形補正する処理について説明する。図4は、物理量センサ出力補正装置1が行う軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に線形補正する処理の動作例を示すフローチャートである。以下の説明において、軸センサとは、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zを軸センサを示している。
また、物理量測定装置100には、周囲の環境により、未知の物理量としての磁場が印加されている。そして、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々は、感知方向に対応した軸センサ測定物理量を出力する。
ステップS1:
入力信号制御部11は、一定の測定周期あるいは任意の測定タイミングにおいて、軸センサであるX軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zが出力している軸センサ測定物理量をサンプリングして読み込む。
【0056】
ステップS2:
そして、入力信号制御部11は、各軸センサから入力されたアナログ値である軸センサ測定値を、A/D変換(Analog/Digital Conversion)などの処理により、デジタル値の軸センサ測定物理量に変換して出力する。
このとき、入力信号制御部11は、デジタル値の軸センサ測定物理量を、時系列に各軸センサ毎に測定グループとして、自身内部の記憶部に書き込んで記憶させる。
【0057】
ステップS3:
次に、入力信号制御部11は、予め設定した数の測定回数、すなわち測定グループが予め内部に設定されているグループ数となると、その測定周期あるいは測定タイミングでの物理量の測定を終了する。
そして、入力信号制御部11は、全測定グループ間において、同一の感知方向の軸センサから読み込んだ軸センサ測定物理量を全て加算し、測定グループ数で除算することにより平均化し、この平均化した軸センサ測定物理量を軸センサ毎に内部記憶部に書き込んで記憶させる。
【0058】
ステップS4:
次に、入力信号制御部11は、内部記憶部から軸センサ毎に軸センサ測定物理量を読み出し、内部に軸センサ毎に設定されているオフセット値により、各軸センサに対応する軸センサ測定物理量のオフセット処理を行う。
このオフセット処理において、入力信号制御部11は、内部記憶部から読み出した軸センサ測定物理量からオフセット値を減算し、減算結果を最終的な軸センサ測定物理量として出力する。上記オフセット値は、各軸センサに物理量が印加されていない状態、例えば磁場が0である場合における、の各軸センサの出力する軸センサ測定物理量を予め測定した測定値であり、予め入力信号制御部11の内部に設定されたものである。
【0059】
ステップS5:
次に、測定値補正部12は、入力信号制御部11から軸センサ測定物理量が供給されると、補正係数記憶部13から、軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に補正するための補正係数を読み出す。
【0060】
ステップS6:
補正係数を読み出すと、測定値補正部12は、入力信号制御部11から供給された軸センサ測定物理量に対し、補正係数記憶部13から読み出した補正係数を、すでに説明した(7)式の計算式に示すように乗算する。
この乗算処理により、測定値補正部12は、軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に線形補正する処理を行う。
【0061】
ステップS7:
そして、測定値制御部12は、後段の図示しない外部回路に対して、補正結果として軸センサ対応物理量を出力する。
【0062】
次に、図1及び図5を用いて、本実施形態における軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数を求める処理について説明する。図5は、軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数を求める処理の動作例を示すフローチャートである。以下の説明において、軸センサは、図4のフローチャートの説明と同様に、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zを示している。
【0063】
この補正係数を求める際にも、予め軸センサ各々の出力する軸センサ出力値からオフセット値が除かれている必要がある。このため、ヘルムホルツコイルを用いた物理量測定装置内に物理量測定装置100を配置し、標準軸であるx軸、y軸及びz軸方向の磁場が0となるようにし、このときに軸センサから出力される軸センサ出力値をオフセット値とする。補正値を求める際に、印加した印加物理量により軸センサから出力される軸センサ出力値からオフセット値を除いて、補正係数を求める処理を行う。
【0064】
ステップS11:
ヘルムホルツコイルを用いた物理量印加装置内に物理量測定装置100を配置する。
このとき、磁場B、B、Bの各々を別々に独立して印加する方向と、物理量測定装置100の理想的な標準座標系における標準軸であるx軸、y軸、z軸の各々とが一致するように配置する。
そして、物理量印加装置は、物理量測定装置100に対して、この物理量測定装置100における理想的な標準座標系における標準軸であるx軸、y軸、z軸の各々に対して、(1)式に示す予め既知の軸方向、かつ既知の物理量を印加物理量として印加する。
【0065】
ステップS12:
そして、上述したように、物理量印加装置は、磁場B、B、Bを印加物理量として別々に独立して印加する。
そして、物理量印加装置は、それぞれの物理量を印加した際に、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y、Z軸物理量測定部50zの各々の軸センサが出力する(2)式に示す軸センサ出力値を、磁場B、B、Bの各々を印加物理量として印加する毎に測定する。
【0066】
この測定の際、物理量印加装置は、物理量測定装置100を補正係数を求めるための試験モードに設定する。すなわち、物理量印加装置は、測定値補正部12に対して外部から試験モードとする制御信号を印加する。この制御信号により、測定補正部12は、入力信号制御部11から入力する軸センサ出力値をそのままの状態で外部に出力する。ここで、入力信号制御部11は、A/D変換及びオフセット処理を行った軸センサ出力値を、測定値補正部12を介して外部に出力する。
【0067】
ステップS13:
次に、物理量印加装置は、物理量測定装置100から、デジタル値に変換され、かつオフセット処理が行われた軸センサ出力値を得る。
そして、物理量印加装置は、軸センサ出力値が入力されると、(2)式あるいは(5)式に示すように、既知の印加物理量に対して乗算することにより、入力した軸センサ出力値となる(3)式に示す行列Aを求める。
【0068】
ステップS14:
次に、物理量印加装置は、(6)式に示すように、求めた行列Aの逆行列A−1を算出し、この逆行列A−1を補正係数とする。
【0069】
ステップS15:
次に、物理量印加装置は、求めた逆行列A−1である補正係数を、補正係数記憶部13に書き込んで記憶させる。
【0070】
次に、補正係数を求める際、物理量測定装置100における理想的な標準座標系を形成する標準軸であるx軸、y軸、z軸と、物理量測定装置100に対して与えられる既知の物理量を印加する軸とが一致しない(すなわち、対応していない)場合での、補正係数を求めて補正処理を行う動作について説明する。この場合、すでに説明した方法で、各軸センサであるX軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y、Z軸物理量測定部50zの各々のオフセット値は求められている。
この標準座標系の標準軸と、物理量を印加する軸とが一致しない場合として、例えば、物理量測定装置100の長尺方向の長さが、物理量を印加するために用いるヘルムホルツコイルを配置した物理量印加装置に標準軸と物理量を印加する軸とを一致して配置できず、与える物理量の軸方向を変えたい場合がある。
【0071】
例えば、図3においては、物理量印加装置のヘルムホルツコイルで物理量を印可する空間内に物理量測定装置100を配置する際、ヘルムホルツの物理量である磁場を印可する座標系のx軸、y軸、z軸と、物理量測定装置100の理想的な標準座標系を構成する標準軸であるx軸、y軸、z軸とを合わせている。
しかしながら、物理量測定装置100の形状においては、磁場を印可する空間に斜めに配置することになり、物理量印加装置の物理量を印可する座標系と、物理量測定装置100の標準座標系との軸が一致しない場合が考えられる。
また、標準軸に対して物理量を印加する軸を変化させ、複数の異なる軸に対して物理量を印加し、得られた複数の測定結果から最終的に補正係数を求めたい場合などがある。
【0072】
以下、上述した補正係数を求める際に、物理量測定装置100の標準座標系の標準軸と、物理量を印加する印加方向とが異なる場合の補正係数の算出について説明する。図6は、物理量測定装置100の標準座標系の標準軸と、物理量を印加する軸とが異なる場合の補正係数の算出について説明する図である。
物理量測定装置100における理想的な標準座標系(直交座標系)として、図6(a)の座標系1における基底を、以下の(12)式に示すように設定する。
【0073】
【数12】

【0074】
すでに説明した標準座標系の標準軸と、補正係数を求める際に印加する物理量の軸とが一致した場合においては、補正係数を求める際に各軸センサに印加する物理量である磁場を、基底(ベクトル)B、B、Bのa倍としていた。
以下に説明する標準座標系の標準軸と、物理量を印加する軸とが異なる場合においては、任意の3つの物理量(ただし、この物理量を示すベクトルは互いに線形独立である)、すなわち3つの異なる方向に物理量を物理量測定装置100に印加し、各軸センサの軸センサ出力値を補正係数の算出に用いる。
また、行列Iを以下の(13)式に示すように設定する。
【0075】
【数13】

【0076】
また、印加する3つの既知の印加物理量である磁場のベクトルBbx、Bby、Bbzを以下に示す(14)式とする。ただし、この3つのベクトルBbx、Bby、Bbzは一次独立である。
【0077】
【数14】

【0078】
次に、(14)式の3つの既知の物理量を元に、以下の(15)式に示す行列Uを生成する。この(15)式において、Bbx、Bby、Bbzの各々は、磁場のベクトルBbx、Bby、Bbzを示す行列の転置行列である。
【0079】
【数15】

【0080】
この(15)式の行列Uに示す3つの物理量である磁場Bbx、Bby、Bbz(ベクトル)が印加された場合、各軸センサの軸センサ出力値を、ベクトル表示でBsensx、Bsensy、Bsenszとする。
そして、このベクトルBsensx、Bsensy、Bsenszを並べた行列を、以下に示す(16)式とする。
【0081】
【数16】

【0082】
なお、物理量測定装置100における理想的な標準座標系の各標準軸の基底と、物理量測定装置100に印加する物理量の軸との関係を示す(15)式の行列Uを、予め設定しておく必要がある。すなわち、補正係数を求める必要から、理想的な標準座標系の各標準軸x、y、zと、物理量測定装置100に印加する3つの物理量の軸との対応を予め決定しておく。
以上が、図6(a)及び図6(b)における座標系1における各ベクトルの定義である。
【0083】
次に、図6(a)において、印加した3つの物理量を磁場の基底(ベクトル)とした、すなわち物理量の印加方向を軸とした座標系2におけるベクトルを考える。ここで、印加した3つの磁場の基底が単位ベクトルとなるように、座標系1における行列Uの写像を行う。すなわち、図6(a)に示すように、座標系1における行列Uに対して行列U−1を左側から乗算する演算により、座標系2における行列Iが求められる。
【0084】
座標系1の各ベクトルと座標系2の各ベクトルとの対応を、以下に説明する。
図6(a)及び図6(b)の双方ともに、矢印の近傍に記述されている行列(ベクトル)を、矢印の起点に示す行列(ベクトル)に左側から乗算することにより、矢印の起点に位置する行列(ベクトル)が矢印の終点に位置する行列(ベクトル)に変換されることになる。
このため、図6(b)において、任意の物理量を行列B(ベクトル)とし、この行列であるベクトルBに対して左側から行列U−1を乗算して、行列Bを座標系2に写像した場合の磁場を以下の(17)式のB(ベクトル)とする。
【0085】
【数17】

【0086】
また、この磁場が印加された場合の、物理量測定装置100の各軸センサの出力する軸センサ出力値を、磁場を示すBsens(ベクトル)としている。
したがって、任意の物理量を行列B(ベクトル)は、以下に示す(18)のように、Bsens(ベクトル)に対し、左側から逆行列A−1を乗算することにより求まることになる。この逆行列A−1が求めたい補正係数としての逆行列となる。
【0087】
【数18】

【0088】
また、図6(b)の座標系2において、物理量測定装置100に印加する物理量である磁場B(ベクトル)と、各軸センサの軸センサ出力値Bsens(ベクトル)との関係が以下の(19)式に表すように得られる。
【0089】
【数19】

【0090】
(19)式に対して、(18)式を代入すると、以下に示す(20)式が得られる。
【0091】
【数20】

【0092】
この(20)式において、左辺と右辺とに左から行列Uを乗算することにより、以下の(21)式に示すように、補正係数としての逆行列A−1が得られる(Bsensが一次独立である3ベクトル(Bsensx,Bsensy,Bsensz)で、(20)式を満たすので、Bsensを除いた次式は成立する)。
【0093】
【数21】

【0094】
次に、補正係数を求める具体的な例を示す。
[2軸の軸センサの場合]
例えば、物理量測定装置100がX軸物理量測定部50x及びY軸物理量測定部50yを有している場合を考える。この場合、2軸の軸センサの測定する軸センサ測定物理量を、物理量測定装置100における2次元座標系である標準座標系の標準軸x、yにおける軸センサ対応物理量に補正する補正係数を求める。
【0095】
図7は、物理量測定装置100における理想的な標準座標系におけるy軸に対し、印加した既知の物理量のy’軸が角度θ傾いた軸ずれを有している場合の補正係数の求め方を説明する図である。
以下に示す(22)式は、既知の物理量として行列Bの示すベクトルの磁場を物理量測定装置100に対して印加した際に、軸センサの出力する軸センサ出力値である行列Bsensが出力される際における行列Bと行列Bsensの対応を示す式である。
【0096】
【数22】

【0097】
この(22)式を満足する行列Aは、y’軸がy軸に対して角度θ分だけ傾いているため、以下の(23)式として求められる。
【0098】
【数23】

【0099】
そして、上記(23)式の逆行列A−1を算出する。この結果、軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に補正する補正係数としての逆行列A−1が、以下の(24)式に示すように表される。
【0100】
【数24】

【0101】
[3軸の軸センサの場合]
以下の補正係数を求める処理は、物理量印加装置において行われる。
例えば、物理量測定装置100がX軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zを有している場合を考える。この場合、3軸の軸センサの測定する軸センサ測定物理量を、物理量測定装置100における理想的な標準座標系(3次元座標系)の標準軸であるx軸、y軸、z軸における軸センサ対応物理量に補正する補正係数を求める。
【0102】
図8は、物理量測定装置100における理想的な標準座標系における標準軸であるx軸、y軸、z軸に対して、物理量の印加する印加方向がずれている場合の補正係数を求める処理を説明する図である。
ここで、図8(a)は、標準軸であるx軸及びz軸からなる2次元座標系において、標準軸である軸zに対し、実際に配置された軸センサのz’軸が角度arctan(tanθ/cosφ)傾いた軸ずれを有していることを示す図である。
【0103】
また、図8(b)は、標準軸であるy軸及びz軸からなる2次元座標系において、標準軸である軸zに対し、実際に配置された軸センサのz’軸が角度φ傾いた軸ずれを有している場合の補正係数の求め方を説明する図である。
x軸方向用、y軸方向用及びz軸方向用の軸センサの向きは、以下の(25)式により表される。(25)式において、各(x y z)は、列ベクトルを示す行列を転置させた行ベクトルを示している。
【0104】
【数25】

【0105】
以下に示す(26)式は、既知の物理量として行列Bのベクトルを物理量測定装置100に対して印加した際に、軸センサの出力する軸センサ出力値である行列Bsens(ベクトル)が出力される際における行列Bと行列Bsensの対応を示す式である。
【0106】
【数26】

【0107】
この(26)式を満足する行列Aは、標準軸であるx軸及びz軸の2次元座標系において、z’軸(z軸物理量測定部50zの感知方向)がz軸に対して角度arctan(tanθ/cosφ)傾き(すなわち、標準軸からなる3次元座標系において、yz平面とyz’平面とのなす角度)、かつ標準軸y軸及びz軸の2次元座標系において、z’軸がz軸に対して角度φ(すなわち、標準軸からなる3次元座標系において、xy平面とxz’平面とのなす角度)傾いているため、以下の(27)式として求められる。
【0108】
【数27】

【0109】
そして、上記(27)式の逆行列A−1を算出する。この結果、軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に補正する補正係数としての逆行列A−1が、以下の(28)式に示すように表される。
この補正係数である逆行列A−1により、標準軸であるz軸に対して軸ずれを起こしているz’軸(Z軸物理量測定部50zの感知方向)の図8(a)及び図8(b)の左側の座標系の軸センサ測定物理量から、標準軸であるx軸、y軸、z軸の標準座標系(右側)における軸センサ対応物理量に変換することができる。
【0110】
【数28】

【0111】
この(28)式に示す補正係数である逆行列A−1により、標準軸であるz軸に対して軸ずれを起こしている軸z’の図8(a)及び図8(b)の左側の座標系の軸センサ測定物理量から、標準軸であるx軸、y軸、z軸の標準座標系における軸センサ対応物理量に変換することができる。
【0112】
[高次元ベクトル座標系から、より低次元の低次元ベクトル座標系に写像(変換)を行う処理を一般化した場合]
以下の補正係数を求める処理は、物理量印加装置において行われる。
例えば、物理量測定装置100が第1軸物理量測定部501、第2軸物理量測定部502、…、第n軸物理量測定部50nを有している場合を考える。ここで、nは4以上の整数である。この場合、n軸の軸センサの測定する軸センサ測定物理量を、物理量測定装置100における3次元座標系である標準座標系の標準軸x、y、zにおける軸センサ対応物理量に補正する補正係数を求める。
【0113】
この場合、物理量測定装置100における軸センサの数を増加させることで、S/N比を改善している。一般的には、同一の物理量を複数回計測して、例えばm回計測して、その物理量を平均化することにより、正規分布に従う種類の誤差は1/m1/2に低減され、S/N比が改善する。
一方、軸方向が異なる(すなわち感知方向が異なる)n個の軸センサにより同一の物理量を計測した場合、同一の物理量を複数回計測して平均化した場合に比較すると、単純に誤差が1/n1/2に低減される訳ではないが、ノイズの影響が軸によって異なるため、標準軸が3軸の場合に、軸センサを3つ用いる場合に比較して、標準軸が3軸の場合に、軸センサを4つ以上用いた場合、測定誤差が緩和されうる。
【0114】
上述したように、軸センサ測定物理量が各々線形独立な、例えば4つ以上の複数の軸センサを用いることにより、求める軸センサ対応物理量のS/N比を改善することが可能である。
例えば、N個の軸センサを用いる場合、以下に示すベクトル座標系の写像を用いた補正方法が有効である。すなわち、このN個の軸センサのN次元ベクトル座標系における軸センサ測定物理量を、補正係数により標準軸であるx軸、y軸、z軸の3次の標準座標系の軸センサ対応物理量に補正して出力する。
物理量測定装置100における理想的な標準座標系の標準軸であるx軸、y軸、z軸の軸方向に対し、物理量印加装置が、印加する物理量を、以下の(29)式に示すベクトルとする。
【0115】
【数29】

【0116】
そして、上述した印加物理量に対するN個の軸センサからの軸センサ出力値を、それぞれcm1、cm2、…、cmNと表す。
例えば、物理量Bを物理量測定装置100に印加することにより、N個の軸センサの各々は、それぞれ自身の感知方向に対応してc11、c12、…、c1Nを軸センサ出力値として出力する。
同様に、物理量Byを物理量測定装置100に印加することにより、N個の軸センサの各々は、それぞれ自身の感知方向に対応してc21、c22、…、c2Nを軸センサ出力値として出力する。
また、物理量Bzを物理量測定装置100に印加することにより、N個の軸センサの各々は、それぞれ自身の感知方向に対応してc31、c32、…、c3Nを軸センサ出力値として出力する。
以下の(30)式に、物理量を物理量測定装置100に対して印加した際の、N個の軸センサにおけるk番目の軸センサの出力する軸センサ出力値を示す。
【0117】
【数30】

【0118】
物理量印加装置は、この(30)式のベクトルN個から、線形独立である3個のベクトルを選択する。この選択において、ベクトルの方向が平行に近いベクトルの組み合わせ、あるいは特定方向(x軸方向、y軸方向あるいはz軸方向のいずれか)の感度が予め設定した閾値より低い組み合わせは、この組み合わせから除外する。
この選択の具体的な方法としては、例えば、N個のベクトルの中から3個のベクトルを任意に選択する。
【0119】
まず、物理量印加装置は、第1選択処理として、この任意に選択した3個のベクトルが平行に近いか否かを、例えばベクトルck+1、c、ck−1の3個のベクトルにおいて、2軸の外積と残りの1軸との内積の絶対値がt未満(tは0に近い正の数であり、実験により測定精度が保たれる値に任意に決定)であるか否かにより判定し、3個のベクトルが平行に近い、すなわち3個のベクトルが同一平面に存在することを検出する。物理量印加装置は、任意に選択した3個のベクトルにおいて、この平行に近いと判定された2個、あるいは3個のベクトルが検出された場合、他のベクトルをN−3個の中から抽出し、新たな3個の組み合わせの中に平行に近いベクトルがあるか否かの判定を行う。
【0120】
そして、物理量印加装置は、第2選択処理として、第1選択処理で選択された3個のベクトルに対して、(12)式から(21)式の計算により、補正係数(3×3行列)を求め、3個のベクトルの補正処理(軸センサ出力値を軸センサ対応物理量への補正処理)を行う。そして、物理量印加装置は、3個のベクトルの全てが同一の特定方向(x軸方向、y軸方向あるいはz軸方向のいずれか)の感度が悪い場合、精度の高い補正係数が得られないとして、この組み合わせにおけるいずれかのベクトルを入れ替え、再度第1選択処理、第2選択処理を行う。
【0121】
物理量印加装置は、第1選択処理及び第2選択処理の結果として選択された3個のベクトルをグループ化し、それぞれのベクトルに対応する軸センサのセンサ識別番号と、得られた補正係数と、グループを識別するグループ識別番号に対応させ、内部の記憶部に書き込んで記憶させる。
そして、物理量印加装置は、3個のベクトルの中からいずれか1個のベクトルを除き、残りの2個のベクトルと、N−3個の中から新たに1個のベクトルを任意に選択して3個のグループとし、上述した第1選択処理及び第2選択処理を行い、順次グループ化を行う。
【0122】
次に、物理量印加装置は、この3個のベクトルの1個のベクトルの入れ替えを行うため、新たなベクトルを抽出する際、グループから除外したベクトルと、残った2個のベクトルに対し平行に近いと判定されたベクトルは除く。
そして、物理量印加装置は、上述した処理を繰り返し、N個のベクトルのグループ化が終了した後、すなわちN個全てのベクトルがいずれかのグループに属したことを、グループ化されたベクトルに対応する軸センサのセンサ識別番号と、予め記憶されているN個の軸センサのセンサ識別番号とを比較して検出する。
そして、物理量印加装置は、各グループの3×3行列の補正係数を合成して、3×Nの行列の補正係数を以下の(31)式として算出する。
【0123】
【数31】

【0124】
しかしながら、第1選択処理及び第2選択処理により、最後までグループ化できないベクトルに対応する軸センサは、最終的な物理量を検出するために用いない。
この場合、物理量印加装置は、物理量の検出に用いないとした軸センサのセンサ識別番号を入力信号制御部11の不可センサ識別番号記憶部に、書き込んで記憶させる。
これにより、入力信号制御部11は、不可センサ識別番号記憶部に書き込まれているセンサ識別番号に対応する軸センサが接続されている端子からの物理量の入力を行わない。
【0125】
この(31)式を用いることにより、N個の物理量測定素子の出力する軸センサ測定物理量から、物理量測定装置100における理想的な標準座標系における標準軸に対応する軸センサ対応物理量への変換が可能となる。
上記(31)式において、f11+f12+f13+…+f1N=0の関係が成り立つとき、N個全ての軸センサに一律に与えられる同相のノイズ成分(同相ノイズ)は線形補正後の標準軸であるx軸の軸センサ対応物理量から除くことができる。
【0126】
また、同様に、f21+f22+f23+…+f2N=0の関係が成り立つとき、N個全ての軸センサに一律に与えられる同相のノイズ成分は線形補正後の標準軸であるy軸の軸センサ対応物理量から除くことができる。
また、f31+f32+f33+…+f3N=0の関係が成り立つとき、N個全ての軸センサに一律に与えられる同相のノイズ成分は線形補正後の標準軸であるz軸の軸センサ対応物理量から除くことができる。
【0127】
高次元ベクトル空間からより低次元の低次元ベクトル空間への写像を行う補正係数でなく、同次元ベクトル空間、例えば3次元ベクトル空間から3次元ベクトル空間への写像を行う場合、標準軸におけるx軸、y軸、z軸全ての同相のノイズ成分を除去しつつ、各標準軸の直交座標を求めることができない。すなわち、標準軸のx軸、y軸、z黒全ての同相のノイズ成分を除く処理が可能な3ベクトルは、同一平面(2次元平面上)上の3ベクトルであるため、各標準軸の直交座標を求めることができない。
【0128】
また、例えば4次元以上の高次元ベクトル空間から、より低次元の3次元ベクトル空間への写像の処理を行うため、上述した第1選択処理及び第2選択処理を用いた補正係数の算出以外にも無数の方法が考えられる。
例えば、特定の1軸のみ分解能が他より大きい特定軸センサを用いて、3次元ベクトル空間への写像を行う際、この特定センサの出力する軸センサ測定物理量の特定の1軸の寄与を大きくしたい場合、補正係数におけるこの1軸に対応する逆行列(補正係数)の要素が他の要素に対して大きくなるように決定して設定することにより、特定の1軸の寄与を大きくすることができる。
【0129】
また、特定の方向(特定の標準軸の方向)のみのS/N比を、計算量を増加させずに改善したい場合、軸センサを新たに複数追加する。そして、この複数の軸センサの出力するベクトルが、S/N比を改善したい特定の方向である場合、このベクトルを補正係数を求める処理に用い、一方、ベクトルが特定方向と異なる方向である場合、この異なるベクトルを用いない構成としても良い。
上述した補正係数の計算量は、用いる軸センサの数の増加に伴い、指数関数的に増加することになる。しかしながら、物理量印加装置が補正係数の計算を行い、物理量測定装置100は、内部の補正係数記憶部13に記憶されている補正係数を読み出し、線形補正の計算を行うのみである。このため、物理量測定装置100における線形補正の計算は、軸センサの数の増加に伴い線形的に増加する。したがって、物理量測定装置100における計算負荷は大きく増加することはない。
【0130】
次に、補正処理において、高次元ベクトル空間からより低次元の低次元ベクトル空間への写像を行う、物理量印加装置が補正係数を求める処理の具体例として、物理量測定装置100が、理想的な標準座標系が2次元、すなわち2つのx軸及びz軸の標準軸からなる標準座標系での物理量を測定する場合について説明する。
図9は、軸センサが3つある(感知方向が各々異なる3方向である)3次元ベクトル空間から、より低次元の2次元ベクトル空間(2つの標準軸からなる標準座標系)へ写像する補正係数を求める処理を説明する図である。この図9において、左側の座標系が3次元ベクトル空間であり、右側の標準座標系が2次元ベクトル空間である。
3次元ベクトル空間におけるb_a軸、b_b軸、b_c軸の各々の成す角は120°(ラジアン表示で2π/3rad)である。また、b_b軸は、例えば、写像(線形補正)における基準の軸として用いるため、2次元ベクトル空間である2次元の標準座標系の標準軸であるy軸に一致させる。
2次元ベクトル空間における軸センサ対応物理量を、以下の(32)式として表す。
【0131】
【数32】

【0132】
また、3次元ベクトル空間を構成する3つの軸センサ各々の感知方向の磁場のベクトルBsensを以下の(33)式として表す。
【0133】
【数33】

【0134】
以下の(34)式は、3つの軸センサにより測定された軸センサ測定物理量である磁場Bsensと、2つの標準軸における軸センサ対応物理量と、線形補正(写像)する補正係数(行列f_db)との対応を示している。
【0135】
【数34】

【0136】
まず、(12)式から(21)式の計算により、b_a軸とb_b軸とをグループとして選択すると、補正係数(2×2行列)が、以下の(35)式として求められる。ここで、b_a軸とb_b軸とのベクトルは第1選択処理及び第2選択処理の条件を満足している。
【0137】
【数35】

【0138】
次に、(12)式から(21)式の計算により、b_b軸とb_c軸とをグループとして選択すると、補正係数(2×2行列)が、以下の(36)式として求められる。ここで、b_b軸とb_c軸とのベクトルは第1選択処理及び第2選択処理の条件を満足している。
【0139】
【数36】

【0140】
ここで、上記(34)式と(35)式との2軸ずつの補正係数を用い、2×3行列である補正係数f_abを求める。
ここで、実数βと実数γとを用い、(34)式と(35)式とを合成して得られる、2×3の行列である補正係数f_abを、以下の(37)式として示す。
【0141】
【数37】

【0142】
上記(37)式において、例えば、β=γ=1/2である場合、補正係数f_abは以下の(38)式に示す行列となる。
【0143】
【数38】

【0144】
(38)式における補正係数f_abの行列における要素、すなわち補正係数の係数のうち3個が0となるため、線形補正の処理における計算量が少なくなる。例えば、補正係数を異なる軸センサの組み合わせから複数求め、最も計算量の少なくなる補正係数を選択して、実際に物理量センサ出力補正装置1における補正係数記憶部13に書き込み記憶させるように、物理量印加装置を構成しても良い。
また、(12)式から(21)式の計算により、b_a軸とb_c軸とをグループとして選択すると、補正係数(2×2行列)が、以下の(39)式として求められる。ここで、b_a軸とb_c軸とのベクトルは第1選択処理及び第2選択処理の条件を満足している。
【0145】
【数39】

【0146】
次に、実数βと実数γとを用い、この(39)式と(35)式のb_a軸とb_c軸とから求めた補正係数(2×2行列)とを合成して得られる、2×3行列である補正係数f_abを、以下の(40)式として示す。
【0147】
【数40】

【0148】
この(40)式に示す行列である補正係数f_abも、(37)式と同様に、3次元ベクトル空間における軸センサの出力する軸センサ測定物理量を写像し、2次元ベクトル空間における標準軸に対応する軸センサ対応物理量に線形変換を行う補正係数となる。
(40)式において、例えば、β=γ=1/2である場合、補正係数f_abは以下の(41)式に示す行列となる。
【0149】
【数41】

【0150】
この(41)式の補正係数f_abは、3個全ての軸センサの軸センサ測定物理量が、標準軸であるx軸及びy軸の軸センサ対応物理量の双方に影響する。したがって、(38)式に示す補正係数f_abに比較すると、物理量測定装置100の線形補正の処理におけるノイズ成分の除去がより有効となり、S/N比を向上させることができる。
また、(40)式において、β=1、γ=0である場合、補正係数f_abは以下の(42)式に示す行列となる。
【0151】
【数42】

【0152】
この(42)式に示す補正係数f_abは、b_c軸の軸センサの測定結果を使用せず、軸センサ対応物理量のベクトルBを求めることになる。
このように、高次元ベクトル空間からより低次元の低次元ベクトル空間への写像を行う場合、特定の軸センサを使用しないという選択も可能である。このことは、複数の軸センサを用いた物理量測定装置100を製造した際、検査により不具合のある軸センサが検出された場合、この軸センサを使用しないことで、正常な物理量測定装置100として使用できることを意味している。これにより、不良品となる物理量測定装置100を低減させることができ、製造原価を低下させることができる。
【0153】
例えば、上述した各々が異なる感知方向に配置された3つの軸センサを有する物理量測定装置100を、2軸の感知方向を有する2つの軸センサを有する物理量測定装置として使用する場合を考える。この場合、物理量測定装置100において、軸センサに1個の余裕があるため、1軸分の軸センサが不良であっても、3つの軸センサを有する物理量測定装置100を、容易に2軸の感知方向を有する物理量測定装置100として使用することができる。
このように、本実施形態によれば、多軸センサを搭載する物理量測定装置100において、軸センサの感知方向の軸センサ測定物理量から、物理量測定装置100における理想的な標準座標系における軸センサ対応物理量に線形補正(写像)する際に用いる補正係数の作成には自由度があり、物理量測定装置の使用目的に応じ、補正係数を調整することが可能である。
【0154】
次に、軸センサが4個以上(N>3)の場合を説明する。ここで、同相のノイズ成分を除去することが可能な線形補正が行える補正係数を求めることが可能な、軸センサの感知方向を示すベクトルの組み合わせの例として、次の条件を満たす組み合わせがある。軸センサの各々の物理量の大きさに対する感度が同一であるならば、正N面体の重心から、当該正N面体の各頂点へ向かうベクトルが使用できる。
図10は、Nが4の場合であり、すなわちそれぞれが異なる感知方向に配置された4個の軸センサからなる場合であり、4個の軸センサの感知方向の各々が、正四面体の重心から、この正四面体の各頂点に向かうベクトルa、b、c、dである場合を説明する図である。
【0155】
また、図11は、図10に示す正四面体の重心から各頂点に向かうベクトルa、b、c、dを、正四面体の重心を3次元座標系の原点とし、かつ各ベクトル間の角度及び各ベクトルがx軸及びy軸からなる2次元平面となす角度が同一となるように並び替えて配置した図である。
ここで、図11(a)は、正四面体の重心から各頂点に向かうベクトルa、b、c、dを、x軸及びy軸とからなる2次元平面において並べ替えた図である。図11(b)は、正四面体の重心から各頂点に向かうベクトルa、b、c、dを、x軸及びz軸とからなる2次元平面に並び替えた図である。図11において、x軸とy軸とが成す2次元平面と、各ベクトルとの角度θは約35.26°である。
【0156】
また、正N面体の重心から、当該正N面体の各頂点へ向かうN個のベクトルを使用することにより、各軸センサに加わる白色ノイズ(軸センサ間のノイズ成分の相関はない)が、線形補正の処理により、標準軸であるx軸、y軸、z軸の全てにおいて低減する補正係数が作成できる。例えば、(31)式の補正係数f_abの行列において、各行における要素の絶対値が近い場合に有効となる。したがって、複数作成した補正係数のなかから、補正係数の行列において、各行及び各列における要素の絶対値が最も近い補正係数を選択することにより、白色ノイズを低減させる補正係数を得ることができる。ここで、補正係数f_abを複数作成する方法としては、すでに3次元ベクトル空間から2次元ベクトル空間に線形補正する補正係数を複数作成した際と同様の手法を用いる。すなわち、補正係数f_abを作成する際に、ベクトルの組み合わせを変えて補正係数(2×2行列に相当)を複数作成し、この複数作成した補正係数(2×2行列に相当)の構成する組み合わせを変えて、複数の補正係数f_abを作成する。
【0157】
次に、図12は、正四面体における重心から各頂点へ向かうベクトルを、図11に示す関係となるように、4つの軸センサ、軸センサ(物理量測定部)201a、201b、201c、201dの各々をリードフレームを用いて配置した物理量測定装置100の構成例を3方向(平面視(z軸方向からx軸とy軸とが構成する2次元平面方向)、第1側面(例えば、y軸方向からx軸とz軸とが構成する2次元平面の方向)、第2側面(例えば、x軸方向からy軸とz軸とが構成する2次元平面の方向))から見た図である。リードフレーム200は、フレーム部200a、200b、200c、200d、200eから構成されている。フレーム部200a及びフレーム部200cは長尺方向が平面視で平行に配置され、フレーム部200b及びフレーム部200dは長尺方向が平面視で平行に配置されている。また、フレーム部200a及びフレーム部200cの長尺方向に対し、フレーム部200b及びフレーム部200dの長尺方向が直交する様に配置されている。
【0158】
軸センサ201aは、フレーム部200a面上において、感知方向がフレーム部200aの長尺方向と同一となるように配置されている。
また、フレーム部200aは、軸センサ201aが配置されている部分の面が、平面Sに対して35.26°の角度を有している。
軸センサ201bは、フレーム部200b面上において、感知方向がフレーム部200bの長尺方向と同一となるように配置されている。
また、フレーム部200bは、軸センサ201bが配置されている部分の面が、平面Sに対して35.26°の角度を有している。
軸センサ201cは、フレーム部200c面上において、感知方向がフレーム部200cの長尺方向と同一となるように配置されている。
また、フレーム部200cは、軸センサ201cが配置されている部分の面が、平面Sに対して35.26°の角度を有している。
軸センサ201dは、フレーム部200d面上において、感知方向がフレーム部200dの長尺方向と同一となるように配置されている。
また、フレーム部200dは、軸センサ201dが配置されている部分の面が、平面Sに対して35.26°の角度を有している。
上述したように、図12の構成において、x軸及びy軸からなる2次元平面に対し、軸センサ201a、201b、201c、201dの各々の感知方向がなす角度が35.26°となっている。
フレーム部300eには、物理量センサ出力補正回路1を構成する信号処理のIC(Integrated Circuit)チップが配置されている。
【0159】
次に図12に示す物理量測定装置における4軸の軸センサの配置による補正係数について説明する。すなわち、図11に示す正四面体の重心からこの正四面体の各頂点に向かうベクトルの方向と、感知方向とが同様となるよう配置された4軸の軸センサに対する、同相ノイズを除去し、かつ白色ノイズを低減する補正係数について以下に説明する。
図11において、各ベクトル、すなわち各軸センサの感知方向と、x軸及びy軸からなる2次元平面との成す角は、それぞれおよそ35.26°である。この場合、感度の等しい軸センサの感知方向(測定軸)により測定される物理量、すなわち軸センサが測定する物理量のベクトルは、以下の(43)式と表され、この(43)式においてα≒0.433(後述)の場合である。
【0160】
【数43】

【0161】
この(43)式の行列において、各行における要素の和(加算結果)は「0」となり、すでに述べたように、線形補正を行う際に、軸センサ測定物理量の各々に重畳している同相のノイズ成分を除去するように設定される。
また、(43)式の行列において、各行及び各列の要素、すなわち行列の全要素の絶対値は全てαであるため、物理量測定装置100における各軸センサに対して標準偏差が「1」である白色ノイズ(軸センサ同士に相関がない)を印加し、得られた軸センサ測定物理量の線形補正を行うと、線形補正後のx軸、y軸、z軸の各々の軸センサ対応物理量の各々に、後述する白色ノイズの標準偏差を求めるシミュレーション結果から、標準偏差0.87程度の白色ノイズが重畳されて得られる。このため、3つの軸センサから、3次元の標準座標系の各標準軸の軸センサ対応物理量を求める場合に比較して、白色ノイズの重畳を抑制することができる。
【0162】
白色ノイズの標準偏差を求めるシミュレーションは、磁場を物理量測定装置100に印可し、軸センサ毎に得られた軸センサ測定物理量の各々に対し、それぞれ他の軸センサに対して互いに独立である白色ノイズのノイズ成分を加算して、ノイズ成分を重畳させる。そして、ノイズ成分が加算された軸センサ測定物理量を(43)式の補正係数により補正し、標準軸毎に、線形補正後の軸センサ対応物理量から、結果物理量印加装置が物理量測定装置100に対して印可した物理量を減算して差分を求める。この処理を、物理量測定装置100に対して、物理量印加装置が異なる強度で異なる方向の物理量を、例えば5000回、すなわち5000種類の磁場を印可する。そして、線形補正後の軸センサ対応物理量と、結果物理量印加装置が物理量測定装置100に対して印可した物理量との差分を、異なる物理量の印加毎に求め、5000回分の差分の標準偏差を各標準軸ごとに求めた。
【0163】
(43)式の行列の要素αの算出は、以下のように行われる。図11に示す4つの軸センサの感知方向から構成される4軸により、物理量測定装置100の理想的な標準座標系である直交座標における磁場を計測する場合を考える。また、図11において、標準座標系におけるx軸及びy軸からなる2次元平面に対して、4つの軸センサの感知方向のなす角度θがすべて同一である。このθを全て同一とすることにより、各行の要素の加算結果が「0」となるため、同相ノイズは除去されることになる。
このとき、(43)式において、行列の1行目(x軸)及び2行目(y軸)におけるαを1/(4l)とし、3行目(z軸)におけるαを1/(4m)とした(44)式を、以下に示す。この(44)式において、l=cosθ/22/1であり、m=sinθである。
【0164】
【数44】

【0165】
次に、図13は、(44)式における角度θの角度を変化させた補正係数毎の、線形補正によるx軸、y軸及びz軸に重畳される白色ノイズの低減を示したテーブルである。図13においては、x軸及びy軸からなる2次元平面に対し、4つの軸センサの感知方向のなす角度θを、10°、25°、30°、35.26°、40°、45°、55°、80°と変化させ、すでに述べた白色ノイズの標準偏差を求めるシミュレーションを行い、角度θ毎のx軸、y軸における軸センサ対応物理量における白色ノイズ成分の標準偏差と、z軸の軸センサ対応物理量における白色ノイズ成分の標準偏差とを示している。
この図13のテーブルにおいて、角度θが35.26°の場合、標準軸のx軸、y軸及びz軸の全てで標準偏差が0.78となり、角度θの他の値に比較して、x軸、y軸及びz軸の全てで白色ノイズの影響が減少することが判る。
【0166】
一方、4つの軸センサの感知方向が、x軸及びy軸からなる2次元平面と同一平面に近くなる、例えば角度θが10°になると、白色ノイズの影響(標準偏差)がx軸及びy軸に対して減少するが、z軸に対して大きくなる。
また、4つの軸センサの感知方向がz軸と平行に近づくと、例えば角度θが80°になると、白色ノイズの影響がz軸において減少するが、x軸及びy軸に対して増加する。
上述した結果から、角度θが30°から45°の範囲内、特に角度θが32.25°とした軸センサの配置として場合の補正係数により、軸センサ測定物理量に重畳した白色ノイズを、線形補正により低減することができる。
【0167】
また、3個の軸センサを用い、3つの感知方向に対応して得られた3個の軸センサ測定物理量から、3次元の標準座標系におけるx軸、y軸及びz軸の各々に対応する軸センサ対応物理量に線形変換するために用いる補正係数はただ一つに決定されてしまう。しかしながら、N個の軸センサを用い、N個の感知方向に対応して得られたN個の軸センサ測定物理量からから、3次元の標準座標系におけるx軸、y軸及びz軸の各々に対応する軸センサ対応物理量に線形変換するために用いる補正係数は、すでに述べたように高い自由度を有する。したがって、軸センサの配置を考慮することにより、角度θを32.25°としてα≒0.433の場合の(43)式の補正係数のように、補正に対して都合の良い行列として補正係数を作成することができる。
【0168】
具体的には、すでに述べたように、N個の軸センサから任意の3個の軸センサのベクトルを順次抽出し、抽出した3個のベクトルに対して第1選択処理及び第2選択処理の結果として選択された3個のベクトルのグループ毎に補正係数を求める。
そして、3個のベクトル単位のグループ毎に求めた補正係数を、すでに説明したように合成して最終的な補正係数を求める。この合成処理において、補正係数の行列における行毎に独立に要素の絶対値が近くなるよう、かつ要素の和が0となるように線形結合することにより求める。このとき、各軸センサの感度が近いものであれば、上述した条件にて選択することができるが、感度を考慮する場合、各軸センサの重み付けを行う処理を付加する必要がある。
【0169】
例えば、4個の軸センサの軸センサ測定物理量から、3次元の標準座標系における軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数の算出について説明する。
4個の軸センサの感知方向が、以下に示す(45)式のベクトルa、b、c、dとして表されるとする。
【0170】
【数45】

【0171】
ここで、各ベクトルa、b、c、dは、物理量測定装置100における標準座標系の標準軸であるx軸、y軸及びz軸により表されている。各行列の示すベクトルは、軸センサ各々の感知方向を示している。4個のベクトルa、b、c、dから、順次3個のベクトルを抽出し、それぞれ抽出した3個のベクトルを用いた補正係数を、以下の(46)式に示すように求める。
【0172】
【数46】

【0173】
(46)式において、行列aは行列aの転置行列であり、行列bは行列bの転置行列であり、行列cは行列cの転置行列であり、行列dは行列dの転置行列である。
グループ化されたベクトルは、(46)式に示す逆行列の左から、ベクトルa、b、cと、ベクトルb、c、dと、ベクトルa、c、dと、ベクトルa、b、dとである。
次に、(46)式の各逆行列を線形結合させるため、それぞれの逆行列の行毎に線形和を取る。一例として、各逆行列の1行目の線形和を取り生成した最終的な補正係数の行列の1行目を以下の(47)式に示す。ここで、p、q、r、sの各々は、実数であり、数値を自由に設定して良い。また、σ(式(47)ではスティグマ)、τ、ζ、γは、逆行列の要素であり、実数である。
【0174】
【数47】

【0175】
また、最終的な補正係数の行列の2行目及び3行目についても、1行目と同様に、(46)式に示す逆行列の2行目、3行目の各々の線形和を取る。
(47)式に示すように、それぞれのベクトルa、b、c、dの逆行列は、最終的な補正係数の合成の際、3回ずつ線形結合に用いられている。
また、(47)式に示す、行列の各要素に乗算される実数であるp、q、r、sの各々は、最終的な補正係数の行列の他の行とは無関係に決定することができる。この手法により、(44)式の補正係数の行列を生成した。
【0176】
上述した本実施形態の説明において、軸センサ対応物理量を軸センサ測定物理量に変換する行列Aの逆行列A−1を、軸センサ測定物理量から軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数として用いる手法を説明してきた。
しかしながら、軸センサ対応物理量を軸センサ測定物理量に変換する行列Aの逆行列A−1ではなく、軸センサ測定物理量を軸センサ対応物理量に線形補正する他の方法もある。以下に、上記逆行列A−1を補正係数とせずに、LU(エルユー)分解の手法を用いて、軸センサ測定物理量から軸センサ対応物理量に線形補正する方法について説明する。
このLU分解の手法により、以下の(48)式における磁場のベクトルBを、磁場のベクトルBsensから求めることになる。
【0177】
【数48】

【0178】
この(48)式は、各軸センサから得られる磁場のベクトルBsensと、軸センサ対応物理量を軸センサ測定物理量に変換する行列Aとの要素を明確とすると、以下の(49)式として表される。
【0179】
【数49】

【0180】
次に、物理量測定装置100に対して印加した既知の印加物理量を軸センサ対応物理量の磁場のベクトルBとし、この既知の印加物理量に対する各軸センサの出力値である軸センサ出力値(磁場)のベクトルをBsensとして、(49)式に代入して、行列Aの各要素を算出する。
そして、(49)式に既知の印加物理量とこの既知の印加物理量に対して出力される軸センサ出力値を代入して求めた行列Aを、以下の(50)式に示すように、下三角行列Lと上三角行列UとにLU分解する。
【0181】
【数50】

【0182】
(50)式の下三角行列Lの要素α21、α31及びα32と、上三角行列Uの要素β11、β12、β13、β22、β23及びβ33との9つの要素を補正係数記憶部13に対して書き込み、予め記憶させておく。また、後述する(51)式及び(52)式も補正係数記憶部13に予め記憶されている。
そして、物理量測定装置100において、未知の物理量が印加された際、各軸センサから軸センサ測定物理量として磁場のベクトルBが得られると、物理量センサ出力補正回路1は、以下のように、軸センサ測定物理量の磁場のベクトルBsensを、標準座標系における軸センサ対応物理量の磁場のベクトルBに線形補正する処理を行う。
ここで、物理量センサ出力補正回路1において、測定値補正部12は、以下に示す(51)式及び(52)式を用いて、軸センサ測定物理量の磁場のベクトルBsensを、軸センサ測定物理量の磁場のベクトルBに線形補正する。
【0183】
【数51】

【0184】
【数52】

【0185】
上述した(51)式は、上三角行列Uと、求めたい軸センサ対応物理量との乗算結果を、行列yとした式である。
また、(51)式を、(48)式に代入すると、軸センサ測定物理量のベクトルBsensは(52)式のように表される。
そして、測定値補正部12は、入力信号制御部11から軸センサ測定物理量のベクトルBが供給されると、補正係数として記憶されている下三角行列Lと上三角行列Uとの要素と、(51)式及び(52)式を、補正係数記憶部13から読み出す。
【0186】
次に、測定値補正部12は、(52)式において、補正係数記憶部13から読み出した下三角行列Lの要素α21、α31及びα32により、供給された軸センサ測定物理量のベクトルBsensを除算して求められた連立方程式を解いて、行列yを求める。
行列yが求まると、測定値補正部12は、(51)式において、得られた行列yを、上三角行列Uの要素β11、β12、β13、β22、β23及びβ33により除算して得られる連立方程式により、軸センサ対応物理量のベクトルBを求める。
上述したように、補正係数記憶部13は、下三角行列Lの要素α21、α31及びα32と、上三角行列Uの要素β11、β12、β13、β22、β23及びβ33と、(51)式及び(52)式とにより、軸センサ測定物理量Bsensを軸センサ対応物理量Bとする線形補正を行う。
【0187】
上述した下三角行列Lと上三角行列Uとを補正係数の行列とした際、補正係数記憶部13に下三角行列L及び上三角行列Uとを記憶させる場合、下三角行列L(対角要素(値は1)と0とを除いた要素が3個)と上三角行列U(0を除いた要素が6個)との9個の要素を記憶させれば良い。このため、補正係数記憶部13に下三角行列L及び上三角行列Uとを記憶させる場合と、行列Aの逆行列A−1を記憶させる場合とは、記憶させる要素の数は同一である。
一方、上述したように、下三角行列Lと上三角行列Uとを補正係数の行列とすると、(51)式及び(52)式から判るように、除算を含め、連立方程式を解くための計算回数が、逆行列A−1を補正係数とした場合の線形補正の処理に比較して増加する。
しかしながら、逆行列A−1を補正係数とした場合と同様に、軸センサ測定物理量から軸センサ対応物理量に線形変換する処理を実行させることが可能である。
【0188】
本実施形態においては、物理量測定装置100で測定する物理量の一例として、標準座標系における磁場の強度の測定における線形補正の処理について説明した。
次に、図14は、物理量測定装置100を用いて測定する物理量が加速度である場合、軸センサとしての加速度センサが出力する軸センサ測定物理量を、標準座標系の各標準軸に対応する軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数の求め方を説明する図である。この図14において、アクチュエータ50は固定面51に対して固定されている。アクチュエータ50には、自身の発生する駆動力をステージ53に伝達する駆動軸52が設けられている。
このアクチュエータ50は、予め任意の電圧を印加し、この印加した電圧に対応した既知の数値の加速度を発生する。そして、アクチュエータ50は、発生する加速度を駆動軸52を介してステージ53に配置された物理量測定装置100に対して印加する。ここで、アクチュエータ50は、印加した電圧により、既知の印加物理量として加速度を、ステージ53に対して印加できるように、予め与える電圧と加速度との関係が校正されている。
【0189】
以下の説明において、加速度を測定する物理量測定装置100も、測定する物理量を、標準軸であるx軸、y軸及びz軸の3つからなる、3次元の標準座標系における加速度として測定する構成で説明する。
次に、図14(a)は、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々として用いる軸センサのオフセット値を求める処理を説明する図である。軸センサの感知方向と、アクチュエータ50で物理量を印加する方向とが同一となるように、ステージ53に対して軸センサを固定する。ステージ53のステージ表面53Sは、既知の印加物理量を印加する対象の物理量測定装置100を配置するため、水準器を用いて水平(重力のベクトルに対して直角な面)を取ってある。
【0190】
そして、アクチュエータ50を用いて、P方向に加速度を印加した際の軸センサの軸センサ出力値Fpを測定し、またM方向に加速度を印加した際の軸センサの軸センサ出力値Fmを測定する(ただし、重力加速度を加えた場合に、物理量測定装置に印加される加速度の絶対値が等しくなるようにする)。
軸センサ出力値Fpと軸センサ出力値Fmとを加算し、加算結果にを1/2を乗じた数値を、軸センサである加速度センサのオフセット値とする。このオフセット値の算出を、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々として用いる軸センサの各々に対して行う。
【0191】
次に、オフセット値を算出した加速度センサを各標準軸に対応する軸センサとし、物理量測定装置100を構成する。物理量測定装置100に印加する印加物理量は、基準加速度センサ200を用いて行う。
すなわち、図14(b)に示すように、校正対象の物理量測定装置100と基準加速度センサ200とを、ステージ53のステージ表面53Sに対して固定する。このとき、基準加速度センサ200は、加速度の感知方向と、アクチュエータ50がステージ53に対して印加する加速度の方向と同一となるように、物理量測定装置100を搭載する。
【0192】
そして、物理量測定装置100の理想的な標準座標系における各標準軸方向に、アクチュエータ50により加速度を印加物理量として与える。
x軸、y軸及びz軸の各々の方向に印加物理量を印加し、それぞれの軸毎に、各軸センサの出力する軸センサ出力値を測定する。
次に、物理量測定装置100の加速度が印加された方向の標準軸に対応する加速度センサの軸センサ出力値からオフセット値を減算して、オフセット値を除去する。
そして、(1)式から(9)式における各行列の要素を、磁場の強度から加速度に換え、補正係数を求める。
また、(13)式から(21)式における各行列の要素を、磁場の強度から加速度に換え、補正係数を求めても良い。
【0193】
次に、図15は、物理量測定装置100を用いて測定する物理量が角速度である場合、軸センサとしての角速度センサが出力する軸センサ測定物理量を、標準座標系の各標準軸に対応する軸センサ対応物理量に線形補正する補正係数の求め方を説明する図である。この図15において、回転アクチュエータ60は固定面61に対して固定されている。回転アクチュエータ60には、自身の発生する回転力を回転ステージ63に伝達する回転軸62が設けられている。
この回転アクチュエータ60は、予め任意の電圧を印加し、この印加した電圧に対応した既知の数値の回転力を発生する。そして、回転アクチュエータ60は、発生する回転力を回転軸62を介して回転ステージ63に配置された物理量測定装置100に対して印加する。ここで、回転アクチュエータ60は、印加した電圧により、既知の印加物理量として回転力を、回転ステージ63に対して印加できるように、予め与える電圧と回転力との関係が校正されている。
【0194】
以下の説明において、角速度を測定する物理量測定装置100も、測定する物理量を、標準軸であるx軸、y軸及びz軸の3つの回転軸からなる、3次元の標準座標系における角速度として測定する構成で説明する。例えば、この3軸からなる物理量測定装置100は、航空機、船舶や自動車などに搭載され、姿勢検知を行う際のヨー軸、ピッチ軸、ロール軸に対応する。
次に、図15(a)は、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々として用いる軸センサのオフセット値を求める処理を説明する図である。軸センサの感知方向(角速度センサの場合、軸センサを回転軸とした回転方向)と、回転アクチュエータ60で物理量を印加する方向とが同一となるように、回転ステージ63に対して軸センサを固定する。回転ステージ63のステージ表面63Sは、既知の印加物理量を印加する対象の物理量測定装置100を配置するため、水準器を用いて水平(重力のベクトルに対して直角な面)を取ってある。
【0195】
そして、回転アクチュエータ60を用いて、L方向(反時計回り)に回転力を印加した際の軸センサの軸センサ出力値Fpを測定し、またR方向(時計回り)に回転力を印加した際の軸センサの軸センサ出力値Fmを測定する。
軸センサ出力値Fpと軸センサ出力値Fmとを加算し、加算結果にを1/2を乗じた数値を、この軸センサである角速度センサのオフセット値とする。このオフセット値の算出を、X軸物理量測定部50x、Y軸物理量測定部50y及びZ軸物理量測定部50zの各々として用いる軸センサの各々に対して行う。
【0196】
次に、オフセット値を算出した角速度センサを各標準軸に対応する軸センサとし、物理量測定装置100を構成する。物理量測定装置100に印加する印加物理量は、基準角速度センサ300を用いて行う。
すなわち、図15(b)に示すように、校正対象の物理量測定装置100と基準角速度センサ300とを、回転ステージ63のステージ表面63Sに対して固定する。このとき、基準角速度センサ300は、回転力の感知方向と、回転アクチュエータ60が回転ステージ63に対して印加する回転力の方向と同一となるように、物理量測定装置100を搭載する。
【0197】
そして、物理量測定装置100の理想的な標準座標系における各標準軸を回転軸とした方向に、回転アクチュエータ60により回転力を印加物理量として与える。
x軸、y軸及びz軸の各々を回転軸とした回転方向に印加物理量である回転力を印加し、それぞれの軸毎に、各軸センサの出力する軸センサ出力値を測定する。
次に、物理量測定装置100の加速度が印加された方向の標準軸に対応する角速度センサの軸センサ出力値からオフセット値を減算して、オフセット値を除去する。
そして、(1)式から(9)式における各行列の要素を、磁場の強度から角速度に換え、補正係数を求める。
また、(13)式から(21)式における各行列の要素を、磁場の強度から角速度に換え、補正係数を求めても良い。
【0198】
上述したように、本実施形態は、磁気センサのみでなく、加速度センサ及び角速度センサなどからなる物理量測定装置100の出力値の補正に用いることができる。
【0199】
また、図1における物理量センサ出力補正回路1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより磁気センサ出力補正処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0200】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを使用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークにおいて、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、例えばサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0201】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0202】
1…物理量センサ出力補正回路
11…入力信号制御部
12…測定値補正部
13…補正係数記憶部
50x…X軸物理量測定部
50y…Y軸物理量測定部
50z…Z軸物理量測定部
50…アクチュエータ
51,61…固定面
52…駆動軸
53…ステージ
53s,63s…ステージ表面
60…回転アクチュエータ
62…回転軸
63…回転ステージ
100…物理量測定装置
200…標準加速度センサ
300…標準角速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの物理量における特定方向の成分を測定する軸センサを複数組み合わせて構成された多軸センサにおいて、前記軸センサ毎の軸センサ測定物理量を、標準座標系を構成する標準軸に対する軸ずれを補正することで、前記標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正する多軸センサ出力補正装置であり、
前記軸センサ各々が測定する前記軸センサ測定物理量をそれぞれの標準軸の前記軸センサ対応物理量に補正する補正係数が記憶された補正係数記憶部と、
前記補正係数記憶部から前記補正係数を読み出し、前記軸センサから入力される前記軸センサ測定物理量を、読み出した補正係数により補正した前記軸センサ対応物理量を求める測定値補正部と
を有し、
前記軸センサの各々に対して、前記標準座標系における方向と強さとが自明の物理量である印加物理量を与えて、前記軸センサ各々の軸センサ出力値を得て、前記印加物理量と前記軸センサ出力値とから、前記補正係数が求められたことを特徴とする多軸センサ出力補正装置。
【請求項2】
前記補正係数を求める際、前記測定軸の方向毎に、当該標準軸の方向と一致した方向に前記印加物理量を与えることを特徴とする請求項1に記載の多軸センサ出力補正装置。
【請求項3】
前記補正係数が、前記軸センサ測定物理量を前記軸センサ対応物理量に補正する際における、前記標準軸方向における前記軸センサ対応物理量の測定感度を合わせるための要素を、前記測定軸毎に含んでいることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多軸センサ出力補正装置。
【請求項4】
前記補正係数が、前記印加物理量を前記軸センサ出力値に変換する行列の逆行列として求められた係数であり、
前記測定値補正部が、前記軸センサ測定物理量に対して前記逆行列を乗算し、各測定軸の軸センサ対応物理量を求めることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多軸センサ出力補正装置。
【請求項5】
前記補正係数が、前記印加物理量を前記軸センサ出力値に変換する行列をLU分解した上三角行列と下三角行列として求められた係数であり、
前記測定値補正部が、前記上三角行列及び前記下三角行列とからなる連立方程式に、前記軸センサ測定物理量を代入して計算することで、各測定軸の前記軸センサ対応物理量を求めることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多軸センサ出力補正装置。
【請求項6】
前記補正係数が、前記多軸センサの前記軸センサ測定物理量を、前記多軸センサにおける軸センサの数より少ない前記軸の前記軸センサ対応物理量に変換する係数として設定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多軸センサ出力補正装置。
【請求項7】
複数の軸センサからなる多軸センサにおいて、前記軸センサ毎の軸センサ測定物理量を、標準座標系を形成する前記標準軸に対する軸ずれを補正することで、前記標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正する多軸センサ出力補正方法であり、
測定値補正部が、当該軸センサ各々の検出する前記軸センサ測定物理量をそれぞれの測定軸の前記軸センサ対応物理量に補正する補正係数が記憶された補正係数記憶部から、前記補正係数を読み出し、前記軸センサから入力される前記軸センサ測定物理量を、読み出した補正係数により補正し、前記標準座標系を形成する前記標準軸に対する軸ずれを補正した前記軸センサ対応物理量を求め、
前記補正係数が、前記軸センサの各々に対して、前記標準軸方向と強さとが自明の物理量である印加物理量を与えて、前記軸センサ各々の軸センサ出力値を検出し、前記印加物理量と前記軸センサ出力値とから求められたこと
を特徴とする多軸センサ出力補正方法。
【請求項8】
一つの物理量における特定方向の成分を測定する軸センサを複数組み合わせて構成された多軸センサにおいて、前記軸センサ毎の軸センサ測定物理量を、標準座標系を構成する標準軸に対する軸ずれを補正することで、前記標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正して出力する物理量測定装置であり、
複数の軸センサからなる多軸センサと、
前記軸センサ各々の検出する軸センサ測定物理量をそれぞれの前記標準軸に対応する軸センサ対応物理量に補正する補正係数が記憶された補正係数記憶部と、
前記記憶部から前記補正係数を読み出し、前記軸センサから入力される前記軸センサ測定物理量を、読み出した補正係数により補正し、前記標準座標系を形成する標準軸に対する軸ずれを補正した前記軸センサ対応物理量を求める測定値補正部と
を有し、
前記補正係数が、前記軸センサの各々に対して、前記標準軸方向と強さとが自明の物理量である印加物理量を与えて、前記軸センサ各々の軸センサ出力値を検出し、前記印加物理量と前記軸センサ出力値とから求められたことを特徴とする物理量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−237682(P2012−237682A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107579(P2011−107579)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】