説明

多軸混練オーガ機及びソイルセメント柱列山留め壁構築工法

【課題】ソイルセメント柱列同士をラップさせずに止水機能を確保する、多軸混練オーガ機及びソイルセメント柱列山留め壁構築工法を提供する。
【解決手段】3軸混練オーガ機10は、鉛直方向に向けて一列に並べられた3本の掘削ロッド12を備えている。掘削ロッド12の下端には地盤を掘削する掘削ヘッド14が取付けられ、両端の掘削ロッド12A、12Cには、掘削土を攪拌する攪拌翼26が突設されている。攪拌翼26の上方には、掘削ロッド12を連結する連結部材18が横方向に設けられ、連結部材18の上方には、螺旋状に突設されたスクリュー羽根16が設けられている。連結部材18の両端部には、外方に向けてセメントミルク22を噴射する噴射ノズル20が設けられ、噴射ノズル20には、セメントミルク22を供給する配管材24が接続されている。配管材24は、掘削ロッド12A、12Cに沿って取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸混練オーガ機及びソイルセメント柱列山留め壁構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
山留め壁には止水機能が要求されるため、ソイルセメント柱列山留め壁構築工法では、従来、完全ラップ工法若しくはセミラップ工法を採用して止水機能を確保していた。
【0003】
完全ラップ工法は、図6(A)に示すように、第1掘削工程で、一定の距離を離して第1ソイルセメント柱列80を構築する。次いで、第1ソイルセメント柱列80と第1ソイルセメント柱列80の間に、第2掘削工程で第2ソイルセメント柱列82を構築する。このとき、第1ソイルセメント柱列80の端部の柱80C、80Aと、第2ソイルセメント柱列82の端部の柱82A、82Cを完全にラップさせる(斜線部分)工法である。なお、便宜上、第2ソイルセメント柱列82の柱径を第1ソイルセメント柱列80の柱径より大きく図示している。
【0004】
しかし、完全ラップ工法は、斜線で示したように、第1ソイルセメント柱列80と第2ソイルセメント柱列82の端部の柱80Cと82A、及び80Aと82Cをそれぞれ完全にラップさせるため、施工効率が悪く工費も高騰する。
【0005】
これに対しセミラップ工法は、図6(B)に示すように、第1ソイルセメント柱列80の端部の柱80Cの一部と、第2ソイルセメント柱列80の端部の柱82Aの一部のみ(斜線部)をラップさせる工法である。
【0006】
このため、先に構築した第1ソイルセメント柱列80が既に固まっている場合には、第2ソイルセメント柱列82が第1ソイルセメント柱列80から離れて構築される傾向がある。また、第1ソイルセメント柱列80が未だ固まっていない場合には、第2ソイルセメント柱列82が第1ソイルセメント柱列80に寄って構築される傾向がある。
【0007】
このため、掘削鉛直精度の確保が困難で、傾いて構築された場合には、ラップされない部分が生じて止水機能が損なわれる欠点がある。
そこで、セミラップ工法において、傾いて構築されても止水機能が確保される技術が提案されている(特許文献1)。
【0008】
特許文献1のソイルセメント柱列山留め壁構築工法は、図7に示す多軸混練オーガ機84を使用して山留め壁を構築する。
【0009】
3軸混練オーガ機84には3本の掘削ロッド88(88A、88B、88C)が取付けられ、掘削ロッド88のそれぞれの先端には、固結剤を注入しながら地盤を掘削する掘削ヘッド94が取り付けられている。掘削ヘッド94の上方には、3本の掘削ロッド88を連結する連結部材96が設けられ、連結部材96の上方の掘削ロッド88の周壁には、掘削土と固結剤を攪拌するスクリュー羽根90が突設されている。スクリュー羽根90の上方には、連結軸受け部92が設けられている。連結軸受け部92には固結剤を側方へ噴射させる噴射口86が横向きに2箇所設けられている。噴射口86には、掘削ロッド88Bに沿って取付けた配管部材98により固結剤が供給される。
【0010】
図8(A)に示すように、多軸混練オーガ機84でセミラップ工法に従い山留め壁を構築した場合、第1ソイルセメント柱列80と角度θだけ傾いて、第2ソイルセメント柱列82が構築されることがある。この場合には、第1ソイルセメント柱列80と第2ソイルセメント柱列82の端部に、ラップされていない部分(斜線部分)104が生じてしまう。
【0011】
このような場合でも、A−A断面図である図8(C)に示すように、噴射口86から噴射された固結剤により、第1ソイルセメント柱列80及び第2ソイルセメント柱列82の両側の柱に、それぞれソイルセメント拡大部100が形成されており止水機能が確保される。
【0012】
しかし、ソイルセメント拡大部の大きさには限界がある。セミラップ工法で掘削を行う限り、上述の理由で第2ソイルセメント柱列82が傾斜いて構築される可能性があり、第2ソイルセメント柱列82の傾斜角度θが大きい場合には、ラップされていない部分が大きくなり、ソイルセメント拡大部100で止水機能を確保できなくなる。
【0013】
また、止水機能を確保するためには、ソイルセメント拡大部104の底面を不透水層まで到達させる必要がある。一般的にはスクリュー羽根90の高さは5m程度あり、特許文献1の方法では、スクリュー羽根90の上方からソイルセメント拡大部104が構築されるため、スクリュー羽根90の上端部が不透水層の中に埋まる深さまで深く掘削しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−228361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事実に鑑み、第1ソイルセメント柱列と第2ソイルセメント柱列をラップさせずに止水機能を確保する、多軸混練オーガ機及びソイルセメント柱列山留め壁構築工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明に係る多軸混練オーガ機は、先端に掘削ヘッドが取付けられた複数の掘削ロッドと、少なくとも1本の前記掘削ロッドの周壁に螺旋状に突設されたスクリュー羽根と、前記スクリュー羽根の下部に設けられ、複数の前記掘削ロッドを連結する連結部材と、前記連結部材の両端部に設けられ、前記掘削ロッドのそれぞれの中心を結ぶ線上に向けて固結剤を噴射する噴射口を備えた噴射部材と、前記掘削ロッドに沿って設けられ、一方の端部が前記噴射部材に接続され、前記噴射部材に前記固結剤を供給する配管部材と、を有することを特徴としている。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも1本の掘削ロッドにはスクリュー羽根が突設され、スクリュー羽根の下部には連結部材が設けられ、連結部材で複数の掘削ロッドが連結されている。この連結部材には固結剤を噴射する噴射口を備えた噴射部材が設けられ、噴射部材には固結剤を供給する配管部材の一端が接続され、噴射口からは、掘削ロッドのそれぞれの中心を結ぶ線上に向けて固結剤が噴射される。
【0018】
これにより、ソイルセメント柱列の両側の柱に、スクリュー羽根の下端の位置までソイルセメント拡大部を構築できる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多軸混練オーガ機において、前記配管部材を沿わせた前記掘削ロッドの前記連結部材と前記掘削ヘッドの間には、前記掘削ロッドの周壁から攪拌翼が突設されていることを特徴としている。
これにより、攪拌翼が突設された掘削ロッドからスクリュー羽根を取り除いても、攪拌翼の攪拌作用で、掘削土と固結剤の攪拌機能を維持できる。
【0020】
請求項3に記載の発明に係るソイルセメント柱列山留め壁構築工法は、多軸混練オーガ機に取付けた掘削ロッドの先端から固結剤を注入しながら掘削し、第1ソイルセメント柱列を構築すると共に、複数の前記掘削ロッドを連結する連結部材の両端部に設けた噴射部材の噴射口から固結剤を噴射して、前記第1ソイルセメント柱列の両側の柱から外方に、第1ソイルセメント拡大部を構築する第1掘削工程と、前記第1ソイルセメント柱列とラップさせずに、前記掘削ロッドの先端から固結剤を注入しながら掘削し第2ソイルセメント柱列を構築すると共に、前記噴射口から固結剤を噴射して、前記第2ソイルセメント柱列の両側の柱から外方に、前記第1ソイルセメント拡大部とラップさせて第2ソイルセメント拡大部を構築する第2掘削工程と、を有することを特徴としている。
【0021】
これにより、第1ソイルセメント柱列とラップさせて第2ソイルセメント柱列を構築する必要がなくなるため、第2ソイルセメント柱列の掘削鉛直精度が向上する。
また、第1ソイルセメント拡大部、及び第2ソイルセメント拡大部が高い掘削鉛直精度で構築されるため、全範囲に渡り、第1ソイルセメント拡大部と第2ソイルセメント拡大部をラップさせることができ、止水機能が確保される。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のソイルセメント柱列山留め壁構築工法において、少なくとも1本の前記掘削ロッドの周壁には、螺旋状に突設されたスクリュー羽根が設けられ、前記スクリュー羽根の下部には前記連結部材が設けられ、複数の前記掘削ロッドのそれぞれの中心を結ぶ線上に向けて前記噴射口から前記固結剤を噴射することを特徴としている。
【0023】
これにより、第1ソイルセメント拡大部と第2ソイルセメント拡大部の下端部を、スクリュー羽根の下端まで構築できる。
この結果、止水機能確保のための余分な掘削を必要とせず、効率よくソイルセメント柱列山留め壁を構築できる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載のソイルセメント柱列山留め壁構築工法において、前記第1ソイルセメント拡大部及び前記第2ソイルセメント拡大部を、任意に設定した第1の深さから第2の深さの間を連続して構築することを特徴としている。
【0025】
これにより、止水機能が必要な範囲にのみ、第1ソイルセメント拡大部及び第2ソイルセメント拡大部を構築できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記構成としてあるので、第1ソイルセメント柱列と第2ソイルセメント柱列をラップさせずに止水機能を確保する、多軸混練オーガ機及びソイルセメント柱列山留め壁構築工法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る3軸混練オーガ機の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る3軸混練オーガ機でのソイルセメント柱列の構築要領、及び構築したソイルセメント柱列を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る3軸混練オーガ機でソイルセメント柱列を連続して構築する要領を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る3軸混練オーガ機でソイルセメント柱列を連続して構築する他の構築要領を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る3軸混練オーガ機の基本構成を示す図である。
【図6】従来例のソイルセメント柱列山留め壁構築工法の構築工法を示す図である。
【図7】従来例の3軸混練オーガ機の基本構成を示す図である。
【図8】従来例の3軸混練オーガ機によるソイルセメント柱列山留め壁構築工法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態に係る多軸混練オーガ機10は、鉛直方向に一列に並べられた3本の掘削ロッド12(12A、12B、12C)を備えている。これにより、同時に3本のソイルセメント柱列山留め壁を構築できる。
【0029】
掘削ロッド12の下端には、セメントミルク(図示せず)を噴射しながら地盤を掘削する掘削ヘッド14がそれぞれ取付けられている。両端の掘削ロッド12A、12Cには、掘削ヘッド14の上方に、掘削土を攪拌する攪拌翼26が周壁からそれぞれ突設されている。
【0030】
攪拌翼26の上方には、3本の掘削ロッド12を連結する連結部材18が横方向に設けられ、掘削ロッド12が連結部材18で一体化されている。
連結部材18の上方であり、中央の掘削ロッド12Bの周壁には、螺旋状に突設されたスクリュー羽根16が設けられている。
【0031】
連結部材18の両端部には、3本の掘削ロッド12のそれぞれの中心を結ぶ線上に、外方に向けてセメントミルク22を噴射する噴射口を備えた噴射ノズル20が設けられている。
【0032】
噴射ノズル20には、噴射ノズル20にセメントミルク22を供給する配管材24の一端が接続されている。配管材24は、スクリュー羽根16が設けられていない掘削ロッド12A、12Cに沿って、それぞれ1本ずつ取り付けられている。
【0033】
なお、配管24を沿わせた掘削ロッド12A、12Cには、連結部材18の上方にスクリュー羽根16が突設されていない。しかし、掘削ヘッド14と連結部材18の間に攪拌翼26が突設されており、攪拌翼26の攪拌作用で、掘削土とソイルセメントを攪拌する攪拌機能が維持される。
【0034】
また、掘削ロッド12Bには、攪拌翼26が突設されていない。しかし、連結部材18の上方にスクリュー羽根16が突設されており、スクリュー羽根16の攪拌作用で、掘削土とソイルセメントを攪拌する攪拌機能が維持される。
【0035】
これにより、掘削ヘッド14の先端からセメントミルク22を注入しながら土壌を掘削し、同時に噴射ノズル20から掘削ロッド12のそれぞれの中心を結ぶ線上を外方に向けて、セメントミルク22を噴射することができる。
【0036】
次に、具体的に、多軸混練オーガ機10を使用したソイルセメント柱列30の構築要領を示す。図2(A)に示すように、3本の掘削ロッド12A、12B及び12Cで地盤34を掘削しながら、噴射ノズル20から、掘削ロッド12のそれぞれの中心を結ぶ線上を外方に向けてセメントミルク22を噴射してソイルセメント拡大部31(31A、31C)を構築する(斜線部分)。
【0037】
これにより、図2(B)の断面図に示すように、3本のソイルセメント柱列30A、30B及び30Cが構築される。そして、柱列30A、30Cの外側には、噴射ノズル20から噴射されたセメントミルク22によりソイルセメント拡大部31(31A、31C)が同時に構築される。
【0038】
ソイルセメント拡大部31の幅W1、厚さT1は、止水機能を確保するのに必要な強度を確保するために、地盤条件等から定まる値である。即ち、幅W1は、高い止水機能が要求される場合は、ソイルセメント柱列30の連接部の幅W2に近い値となるように広く構築するのが望ましい。厚さT1は、後述する隣に構築されるソイルセメント柱列32の拡大部33と必要な強度を確保して重なり合うよう、0〜10cmの範囲内で構築するのが望ましい。
【0039】
ソイルセメント柱列30の深さH1は、不透水層36まで到達する深さとされており、ソイルセメント拡大部31Aと31Cも同様に、不透水層36まで到達する深さH1で構築される。これにより、止水機能が発揮される。
【0040】
続いて、図3に示すように、多軸混練オーガ機10を移動させ、既に構築されたソイルセメント柱列30の隣に、ソイルセメント柱列32(32A、32B、32C)を同じ要領で構築する。このとき、ソイルセメント柱列30Cと32Aはラップさせずに、ソイルセメント拡大部33Cと、33Aがラップする位置にソイルセメント柱列32を構築する。
【0041】
これにより、ソイルセメント柱列30Cと32Aをラップさせずにソイルセメント柱列32を構築できるため、ソイルセメント柱列32を精度よく構築でき、作業性が向上する。また、ラップ部が、ソイルセメント拡大部33Cと33Aのみとなり少ないため、発生する汚泥が減少する。
【0042】
そして、重ね合わされたソイルセメント拡大部31Cと33Aを、止水機能を発揮する寸法に構築することで止水性能が確保される。
【0043】
以下、要求される長さに渡り、同じ手順で、順次ソイルセメント柱列を構築すれば、止水機能を備えたソイルセメント柱列山留め壁が構築される。
【0044】
なお、以上の説明は3軸混練オーガ機10を用いて説明したが、3軸混練オーガ機10に限定されることはなく、例えば5軸混練オーガ機等、軸数の異なる混練オーガ機にも、連結部材の両端部からセメントミルクを噴射する構成とすることで適用できる。
【0045】
続いて、図4に示す他の実施例について説明する。
ソイルセメント拡大部31及び33は、噴射ノズル20からのセメントミルク22の噴射を制御すれば、任意の位置に構築できる。即ち、ソイルセメント柱列30、32と常に同じ深さまで構築しなくても良い場合には、必要な部分にのみ構築することも可能である。
【0046】
例えば、地下水の上面46が、地盤34の表面から深い位置にあるときは、ソイルセメント柱列30、32は不透水層36まで到達する深さ(H1)で構築しても、ソイルセメント拡大部31、33は、地下水が存在する深さ(H2)で構築すれば止水機能を確保できる。これにより、経済的にソイルセメント柱列山留め壁が構築される。
【0047】
(第2の実施の形態)
図5に示すように、第2の実施の形態に係る3軸混練オーガ機40は、鉛直方向に一列に並べられた3本の掘削ロッド42(42A、42B、42C)を有している。この3本の掘削ロッド42で、同時に3本のソイルセメント柱列が構築される。
【0048】
中央の掘削ロッド42Bには、地盤を掘削する掘削ヘッド14の上方に、掘削土を攪拌する攪拌翼26が周壁から突設されている。そして、連結部材18の上方であり、両端の掘削ロッド42A、42Cの周壁には、螺旋状に突設されたスクリュー羽根16が設けられている。
【0049】
また、連結部材18の上方であり、中央の掘削ロッド42Bに沿って、2本の配管材44が設けられている。配管材44の下端は、連結部材18の両端に設けられた噴射ノズル20に接続され、配管44を通して供給されたセメントミルク22が、噴射ノズル20から外方に向けて2方向に噴射される。
他の構成は第1の実施の形態と同じであり、説明は省略する。
【0050】
これにより、掘削ヘッド14の先端からセメントミルク(図示せず)を注入しながら土壌を掘削し、同時に噴射ノズル20から掘削ロッド42のそれぞれの中心を結ぶ線上を外方に向けて、セメントミルク22を噴射することができる。
【0051】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係るソイルセメント柱列山留め壁構築工法は、第1の実施の形態で説明した多軸混練オーガ機10を用いて、ソイルセメント柱列山留め壁を構築する工法である。
【0052】
先ず、多軸混練オーガ機10を用いて、第1ソイルセメント柱列30を構築する。即ち、図1に示す多軸混練オーガ機10に取付けた掘削ヘッド14の先端から、セメントミルク(図示せず)を注入しながら掘削し、図2に示す第1ソイルセメント柱列30A、30B及び30Cを構築する。
【0053】
同時に、3本の掘削ロッド12を連結する連結部材18の両端部に設けた噴射ノズル20からセメントミルク22を噴射して、第1ソイルセメント柱列30の両側の柱30A、30Cから外方に、第1ソイルセメント拡大部31A、31Cを構築する。
【0054】
次に、図3に示すように、第1ソイルセメント柱列30の隣に、第2ソイルセメント柱列32を同じ要領で構築する。このとき、第1ソイルセメント柱列30Cと第2ソイルセメント柱列32Aはラップさせず、第1ソイルセメント拡大部31Cと第2ソイルセメント拡大部33Aをラップさせる。
【0055】
また、多軸混練オーガ機10を用いることにより、第1ソイルセメント拡大部31A、31Cと第2ソイルセメント拡大部33A、33Cの下端部を、スクリュー羽根16の下端まで構築できる。
この結果、止水機能確保のための余分な掘削を必要とせず、効率よくソイルセメント柱列山留め壁を構築できる。
【0056】
継続してソイルセメント柱列山留め壁を構築する場合には、第2ソイルセメント柱列32の隣に、順次、同じ要領でソイルセメント柱列を構築すればよい。
これにより、第1ソイルセメント柱列30にラップさせて第2ソイルセメント柱列32を構築する必要がないため、第2ソイルセメント柱列32の掘削鉛直精度が向上する。このとき、ラップ部がソイルセメント拡大部のみと少ないため、発生する汚泥が減少する。
【0057】
また、高い掘削鉛直精度で、第1ソイルセメント拡大部31Aと31C、及び第2ソイルセメント拡大部33Aと33Cを構築できるため、第1ソイルセメント拡大部31Cと第2ソイルセメント拡大部33Aを、深さ方向の全範囲に渡りラップさせることができる。この結果、止水機能を確保できる。
【0058】
他の実施の形態として、ソイルセメント柱列山留め壁構築工法において、第1ソイルセメント拡大部31A、31C、及び第2ソイルセメント拡大部33A、33Cを、任意に設定した第1の深さから第2の深さの間を連続して構築することができる。
【0059】
これにより、図4に示すように、止水機能が必要な範囲にのみ第1ソイルセメント拡大部31及び第2ソイルセメント拡大部33を構築でき、経済的にソイルセメント柱列山留め壁が構築される。
【0060】
なお、以上は3軸混練オーガ機10を用いて説明したが、これに限定されることはなく、第2の実施の形態で説明した3軸混練オーガ機40を用いて、ソイルセメント柱列山留め壁を構築してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 3軸混練オーガ機(多軸混練オーガ機)
12 掘削ロッド
14 掘削ヘッド
16 スクリュー羽根
18 連結部材
20 噴射ノズル(噴射部材)
22 セメントミルク(固結剤)
24 配管材(配管部材)
26 攪拌翼
30 第1ソイルセメント柱列
31 第1ソイルセメント拡大部
32 第2ソイルセメント柱列
33 第2ソイルセメント拡大部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削ヘッドが取付けられた複数の掘削ロッドと、
少なくとも1本の前記掘削ロッドの周壁に螺旋状に突設されたスクリュー羽根と、
前記スクリュー羽根の下部に設けられ、複数の前記掘削ロッドを連結する連結部材と、
前記連結部材の両端部に設けられ、前記掘削ロッドのそれぞれの中心を結ぶ線上に向けて固結剤を噴射する噴射口を備えた噴射部材と、
前記掘削ロッドに沿って設けられ、一方の端部が前記噴射部材に接続され、前記噴射部材に前記固結剤を供給する配管部材と、
を有する多軸混練オーガ機。
【請求項2】
前記配管部材を沿わせた前記掘削ロッドの前記連結部材と前記掘削ヘッドの間には、前記掘削ロッドの周壁から攪拌翼が突設されている請求項1に記載の多軸混練オーガ機。
【請求項3】
多軸混練オーガ機に取付けた掘削ロッドの先端から固結剤を注入しながら掘削し、第1ソイルセメント柱列を構築すると共に、複数の前記掘削ロッドを連結する連結部材の両端部に設けた噴射部材の噴射口から固結剤を噴射して、前記第1ソイルセメント柱列の両側の柱から外方に、第1ソイルセメント拡大部を構築する第1掘削工程と、
前記第1ソイルセメント柱列とラップさせずに、前記掘削ロッドの先端から固結剤を注入しながら掘削し第2ソイルセメント柱列を構築すると共に、前記噴射口から固結剤を噴射して、前記第2ソイルセメント柱列の両側の柱から外方に、前記第1ソイルセメント拡大部とラップさせて第2ソイルセメント拡大部を構築する第2掘削工程と、
を有するソイルセメント柱列山留め壁構築工法。
【請求項4】
少なくとも1本の前記掘削ロッドの周壁には、螺旋状に突設されたスクリュー羽根が設けられ、前記スクリュー羽根の下部には前記連結部材が設けられ、複数の前記掘削ロッドのそれぞれの中心を結ぶ線上に向けて前記噴射口から前記固結剤を噴射する請求項3に記載のソイルセメント柱列山留め壁構築工法。
【請求項5】
前記第1ソイルセメント拡大部及び前記第2ソイルセメント拡大部を、任意に設定した第1の深さから第2の深さの間を連続して構築する請求項3又は請求項4に記載のソイルセメント柱列山留め壁構築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−117336(P2012−117336A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270045(P2010−270045)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】