説明

多連方向切換弁

【課題】下流側に位置する方向切換弁に接続されたアクチュエータが過負荷などで停止してしまった場合に、当該方向切換弁を中立位置に戻さなくても、上流側に位置する方向切換弁に接続されたアクチュエータを作動させることができる多連方向切換弁を提供すること。
【解決手段】多連方向切換弁1は、アンロード通路21に接続されたブーム用方向切換弁11(第1方向切換弁)、およびブーム用方向切換弁11よりも下流側でアンロード通路21に接続されたサービス弁13(第2方向切換弁)を有する。ブーム用方向切換弁11は、上流側のアンロード通路21とブーム用給排通路29・30の一方とが接続し、かつ、ブーム用給排通路29・30の他方と下流側のアンロード通路21とが接続する切換位置11a・11cにおいて、ブーム用給排通路29・30の他方とタンク通路22とを連通させるブーム弁用タンク戻通路27に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建設機械に適用され、複数のアクチュエータを制御するための多連方向切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された多連方向切換弁は、ブームシリンダに圧油を供給してブームを動作させたときに、ブームシリンダからの戻り圧油をバケットシリンダへ供給することにより、バケットを平行に保持するバケット平行移動機能を有する多連方向切換弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−299852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された多連方向切換弁において、操縦者が、サービス弁13を操作して当該サービス弁13にアクチュエータを介して接続されたアタッチメントを作動させた際に、当該アタッチメントが何かに当たるなどして停止してしまった場合、その後、ブーム用方向切換弁11やバケット用方向切換弁12を操作しても、ブーム、バケットが作動しない状態になる。
【0005】
ここで、上記のアタッチメントが停止してしまった場合に、操縦者がサービス弁13をその中立位置に戻すと、ブーム、バケットは作動するようになる。しかしながら、サービス弁13を中立位置に戻さないとブーム、バケットを作動させることができない、というのでは操作性が悪い。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、直列接続された複数の方向切換弁を備える多連方向切換弁において、その中の下流側に位置する方向切換弁に接続されたアクチュエータが過負荷などで停止してしまった場合に、当該方向切換弁を中立位置に戻さなくても、上流側に位置する方向切換弁に接続されたアクチュエータを作動させることができる多連方向切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、油圧ポンプに接続されるアンロード通路と、タンクに接続されるタンク通路と、前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第1アクチュエータへの圧油の供給を制御する第1方向切換弁と、前記第1方向切換弁と前記第1アクチュエータとの間をつなぐ一対の第1給排通路と、前記第1方向切換弁よりも下流側で前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第2アクチュエータへの圧油の供給を制御する第2方向切換弁と、前記第2方向切換弁と前記第2アクチュエータとの間をつなぐ一対の第2給排通路と、を具備してなり、前記第1アクチュエータを作動させると、前記第1給排通路から前記アンロード通路へ圧油が戻る多連方向切換弁において、前記第1方向切換弁は、当該第1方向切換弁の上流側の前記アンロード通路と前記第1給排通路の一方とが連通し、かつ、前記第1給排通路の他方と当該第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路および前記タンク通路とが連通する切換位置を備え、前記第1給排通路の他方と前記タンク通路とを連通させるタンク戻通路が前記第1方向切換弁に接続されている多連方向切換弁を提供する。
【0008】
この構成によると、第2方向切換弁が操作されている状態で第2アクチュエータが過負荷などで停止してしまったときに第1方向切換弁が操作されると、第1方向切換弁の下流側のアンロード通路へ戻ろうとする圧油はタンク戻通路を経由してタンクに戻る。これにより、第1方向切換弁に圧油が流れ、その結果、第1アクチュエータは作動する。
【0009】
また本発明は、その第2の態様によれば、油圧ポンプに接続されるアンロード通路と、タンクに接続されるタンク通路と、前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第1アクチュエータへの圧油の供給を制御する第1方向切換弁と、前記第1方向切換弁と前記第1アクチュエータとの間をつなぐ一対の第1給排通路と、前記第1方向切換弁よりも下流側で前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第2アクチュエータへの圧油の供給を制御する第2方向切換弁と、前記第2方向切換弁と前記第2アクチュエータとの間をつなぐ一対の第2給排通路と、前記第1方向切換弁よりも下流側で且つ前記第2方向切換弁よりも上流側で前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第3アクチュエータへの圧油の供給を制御する第3方向切換弁と、前記第3方向切換弁と前記第3アクチュエータとの間をつなぐ一対の第3給排通路と、前記第1アクチュエータから前記第1給排通路へ戻ってくる圧油を、前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路と前記第3給排通路の一方とに分配制御するとともに、前記第3給排通路の他方と当該アンロード通路との間の連通遮断を制御する分流部と、を具備してなり、前記第1アクチュエータを作動させると、前記第1給排通路から前記アンロード通路へ圧油が戻り、前記第3アクチュエータを作動させると、前記第3給排通路から前記アンロード通路へ圧油が戻る多連方向切換弁において、前記分流部は、前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路へ戻ろうとする圧油を前記タンク通路に戻すタンク戻通路を備えている多連方向切換弁を提供する。
【0010】
この構成によると、第2方向切換弁が操作されている状態で第2アクチュエータが過負荷などで停止してしまったときに第1方向切換弁が操作されると、第1方向切換弁の下流側のアンロード通路へ戻ろうとする圧油はタンク戻通路を経由してタンクに戻る。これにより、第1方向切換弁に圧油が流れ、その結果、第1アクチュエータは作動する。
【0011】
また本発明において、前記分流部は、前記第1アクチュエータから前記第1給排通路へ戻ってくる圧油を、前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路と前記第3給排通路の一方とに分配制御する分流弁と、前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路と前記第3給排通路の他方との間の連通遮断を制御するシーケンス弁と、を有し、前記シーケンス弁は、前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路および前記タンク通路と前記第3給排通路の他方とが連通する切換位置を備えていることことが好ましい。
【0012】
この構成によると、第2方向切換弁が操作されている状態で第2アクチュエータが過負荷などで停止してしまったときに第1方向切換弁が操作されると、第1方向切換弁の下流側のアンロード通路へ戻ろうとする圧油はタンク戻通路を経由してタンクに戻る。これにより、第1方向切換弁に圧油が流れ、その結果、第1アクチュエータは作動する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の多連方向切換弁によれば、その中の下流側に位置する方向切換弁に接続されたアクチュエータが過負荷などで停止してしまった場合に、当該方向切換弁を操縦者が中立位置に戻さなくても、上流側に位置する方向切換弁に接続されたアクチュエータを作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る多連方向切換弁を示す油圧回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る多連方向切換弁を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(第1実施形態)
(多連方向切換弁の構成)
図1を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る多連方向切換弁1について説明する。多連方向切換弁1は、バケット平行移動機能を有する多連方向切換弁であって、主としてローダ(不図示)などの建設機械に適用される。このローダには、ローダの前部に起倒自在に取り付けられるブーム(不図示)、ブームの先端部に取り付けられるバケット(不図示)などの油圧作動部が設けられる。ブームは、ブームシリンダ3によって作動され、ブームシリンダ3のヘッド側室3aに圧油が供給されることで上昇し、ロッド側室3bに圧油が供給されることで下降する。バケットは、バケットシリンダ4によって作動され、バケットシリンダ4のヘッド側室4aに圧油が供給されることでダンプ(前傾方向)し、ロッド側室4bに圧油が供給されることですくい方向(後傾方向)に動作する。
【0017】
ここで、ブームシリンダ3およびバケットシリンダ4は、いずれも、本発明の請求項1に係る第1アクチュエータに相当する。また、バケットシリンダ4は、本発明の請求項2に係る第3アクチュエータにも相当する。
【0018】
図1に示すように、多連方向切換弁1は、ブーム用方向切換弁11と、バケット用方向切換弁12と、サービス弁13と、上昇用分流弁14と、上昇用解除切換弁19と、下降用分流弁15と、下降用解除切換弁20と、上昇用シーケンス弁16と、下降用シーケンス弁17とを備えている。そして多連方向切換弁1は、油圧ポンプ2、ブームを作動させるブームシリンダ3、バケットを作動させるバケットシリンダ4、オプションのアタッチメント(油圧作動部)を作動させるオプションシリンダ6、および油が戻るタンク5と、それぞれ、ポート51、ポート52・53、ポート54・55、ポート58・59、およびポート60にて接続されている。また多連方向切換弁1は、これらポートの他に、ポート63などのポートを有している。
【0019】
ここで、ブーム用方向切換弁11およびバケット用方向切換弁12は、いずれも、本発明の請求項1に係る第1方向切換弁に相当し、サービス弁13は本発明に係る第2方向切換弁に相当する。オプションシリンダ6は、本発明に係る第2アクチュエータに相当する。なお、バケット用方向切換弁12は、本発明の請求項2に係る第3方向切換弁にも相当する。
【0020】
また、ポート51を介して油圧ポンプ2にアンロード通路21が接続され、ポート60を介してタンク5にタンク通路22が接続されている。アンロード通路21の最下流側に設けられたポート63には、必要に応じて他の方向切換弁(不図示)が直列接続される。
【0021】
(ブーム用方向切換弁)
ブーム用方向切換弁11は、アンロード通路21に接続されており、油圧ポンプ2からブームシリンダ3への圧油の供給を制御する方向切換弁である。ブーム用方向切換弁11とブームシリンダ3との間は、一対のブーム用給排通路29・30でつながれている。また、ブーム用方向切換弁11にはブーム弁用タンク戻通路27が接続されている。ブーム弁用タンク戻通路27は、ブーム用給排通路29・30のいずれかとタンク通路22とを連通させるための通路である。
【0022】
ここで、ブーム用方向切換弁11は、その上流側のアンロード通路21と、一対のブーム用給排通路29・30と、下流側のアンロード通路21との接続関係を変更して、油圧ポンプ2からブームシリンダ3への圧油の給排(供給)を制御する。
【0023】
(バケット用方向切換弁)
バケット用方向切換弁12は、ブーム用方向切換弁11よりも下流側でアンロード通路21に接続されており、油圧ポンプ2からバケットシリンダ4への圧油の供給を制御する方向切換弁である。バケット用方向切換弁12とバケットシリンダ4との間は、一対のバケット用給排通路33・34でつながれている。また、バケット用方向切換弁12にはバケット弁用タンク戻通路28が接続されている。バケット弁用タンク戻通路28は、バケット用給排通路33・34のいずれかとタンク通路22とを連通させるための通路である。
【0024】
ここで、バケット用方向切換弁12は、その上流側のアンロード通路21と、一対のバケット用給排通路33・34と、下流側のアンロード通路21との接続関係を変更して、油圧ポンプ2からバケットシリンダ4への圧油の給排(供給)を制御する。
【0025】
(サービス弁)
サービス弁13は、バケット用方向切換弁12よりも下流側でアンロード通路21に接続されており、油圧ポンプ2からオプションシリンダ6への圧油の供給を制御する方向切換弁である。サービス弁13とオプションシリンダ6との間は、一対のオプション用給排通路35・36でつながれている。
【0026】
ここで、サービス弁13は、その上流側のアンロード通路21と、一対のオプション用給排通路35・36と、タンク通路22との接続関係を変更して、油圧ポンプ2からオプションシリンダ6への圧油の給排(供給)を制御する。
【0027】
なお、ブーム用方向切換弁11、バケット用方向切換弁12、およびサービス弁13は、アンロード通路21により直列に接続されている。前記した、一対のブーム用給排通路29・30および一対のバケット用給排通路33・34は、いずれも、本発明に係る一対の第1給排通路に相当し、一対のオプション用給排通路35・36は本発明に係る一対の第2給排通路に相当する。
【0028】
次に、ブーム用方向切換弁11には上昇用合流通路23が接続されている。上昇用合流通路23は、ブームシリンダ3のロッド側室3bからブーム用方向切換弁11を介して、戻り圧油の一部をバケットシリンダ4のヘッド側室4aへ供給する通路である。ヘッド側室4aへ供給されない戻り圧油は、ブーム用方向切換弁11の下流側のアンロード通路21へ上昇側戻通路37から流れ込む。
【0029】
上昇用合流通路23には、バケットシリンダ4のヘッド側室4aに供給される圧油の流量を制御する上昇用分流弁14が設けられている。上昇用分流弁14の上流側の上昇用合流通路23には可変絞り31が設けられ、この可変絞り31と上昇用分流弁14の絞りとにより、バケットシリンダ4のヘッド側室4aに供給される圧油の流量と、アンロード通路21へ流れる圧油の流量との間の分流比が調整される。
【0030】
上昇用分流弁14は、ブームシリンダ3からブーム用給排通路29へ戻ってくる圧油を、ブーム用方向切換弁11の下流側のアンロード通路21とバケット用給排通路33とに分配制御する分流弁である。
【0031】
また、多連方向切換弁1には上昇用合流通路23から分岐して上昇側戻通路37を介してアンロード通路21に接続する上昇用分岐通路24が設けられ、この上昇用分岐通路24には、当該上昇用分岐通路24を遮断または連通する上昇用解除切換弁19が設けられている。上昇用解除切換弁19は、レベリング動作位置19aで上昇用分岐通路24を遮断し、レベリング解除位置19bで上昇用分岐通路24を連通状態とする。
【0032】
さらに、上昇用分流弁14よりも下流側の下降用合流通路25には、上昇用シーケンス弁16が接続されている。上昇用シーケンス弁16は、バケット平行移動の精度を高めるために設けられる弁であり、バケットシリンダ4のロッド側室4bから流出する圧油の流量を制御する。
【0033】
上昇用シーケンス弁16は、ブーム用方向切換弁11の下流側の前記アンロード通路21とバケット用給排通路34との間の連通遮断を制御するシーケンス弁である。
【0034】
ここで、上昇用分流弁14と上昇用シーケンス弁16とで上昇用分流部7(分流部)を構成する。図1において、二点鎖線で上昇用分流部7を囲っている。
【0035】
また、ブーム用方向切換弁11には下降用合流通路25が接続されている。下降用合流通路25は、ブームシリンダ3のヘッド側室3aからブーム用方向切換弁11を介して、戻り圧油の一部をバケットシリンダ4のロッド側室4bへ供給する通路である。ロッド側室4bへ供給されない戻り圧油は、ブーム用方向切換弁11の下流側のアンロード通路21へ下降側戻通路38から流れ込む。
【0036】
下降用合流通路25には、バケットシリンダ4のロッド側室4bに供給される圧油の流量を制御する下降用分流弁15が設けられている。下降用分流弁15の上流側の下降用合流通路25には可変絞り32が設けられ、この可変絞り32と下降用分流弁15の絞りとにより、バケットシリンダ4のロッド側室4bに供給される圧油の流量と、アンロード通路21へ流れる圧油の流量との間の分流比が調整される。
【0037】
下降用分流弁15は、ブームシリンダ3からブーム用給排通路30へ戻ってくる圧油を、ブーム用方向切換弁11の下流側のアンロード通路21とバケット用給排通路34とに分配制御する分流弁である。
【0038】
また、多連方向切換弁1には下降用合流通路25から分岐して下降側戻通路38を介してアンロード通路21に接続する下降用分岐通路26が設けられ、この下降用分岐通路26には、当該下降用分岐通路26を遮断または連通する下降用解除切換弁20が設けられている。下降用解除切換弁20は、レベリング動作位置20aで下降用分岐通路26を遮断し、レベリング解除位置20bで下降用分岐通路26を連通状態とする。
【0039】
さらに、下降用分流弁15よりも下流側の上昇用合流通路23には、下降用シーケンス弁17が接続されている。下降用シーケンス弁17は、バケット平行移動の精度を高めるために設けられる弁であり、バケットシリンダ4のヘッド側室4aから流出する圧油の流量を制御する。
【0040】
下降用シーケンス弁17は、ブーム用方向切換弁11の下流側の前記アンロード通路21とバケット用給排通路33との間の連通遮断を制御するシーケンス弁である。
【0041】
ここで、下降用分流弁15と下降用シーケンス弁17とで下降用分流部8(分流部)を構成する。図1において、二点鎖線で下降用分流部8を囲っている。
【0042】
なお、多連方向切換弁1内の通路には、所定箇所にリリーフ弁41,42a〜42fが設けられ、各通路の油の圧力が調整されている。
【0043】
(多連方向切換弁の作動)
次に、多連方向切換弁1の作動について説明する。まず、ブーム用方向切換弁11は、上昇位置11a、中立位置11b、および下降位置11cの3つの切換位置に切り換え可能になっている。中立位置11bでは、アンロード通路21を連通させ、上昇用合流通路23および下降用合流通路25とブームシリンダ3とを遮断する。上昇位置11aでは、油圧ポンプ2からの圧油をブームシリンダ3のヘッド側室3aに供給し、ロッド側室3bを上昇用合流通路23に連通させる。これにより、ブームシリンダ3のヘッド側室3aに圧油を供給しブームを上昇させたときに、バケットシリンダ4のヘッド側室4aにブームシリンダ3のロッド側室3bからの戻り圧油を供給し、バケットが平行に保持されることになる。このとき、ブーム用給排通路29からの圧油の一部は、上昇側戻通路37を経由してアンロード通路21へ戻る。
【0044】
なお、上昇位置11aは、ブーム用方向切換弁11の上流側のアンロード通路21とブーム用給排通路30とが連通し、かつ、ブーム用給排通路29とブーム用方向切換弁11の下流側のアンロード通路21およびブーム弁用タンク戻通路27とが連通する切換位置である(後述するバケット用方向切換弁12のすくい位置12aについても同様)。
【0045】
このブーム上昇時のバケット平行移動機能は、上昇用分岐通路24が遮断された状態、すなわち、上昇用解除切換弁19がレベリング動作位置19aである場合に作動される。一方、上昇用解除切換弁19がレベリング解除位置19bに切り換えられると、上昇用分岐通路24がアンロード通路21と連通状態となり、ブームシリンダ3のロッド側室3bからブーム用方向切換弁11を介して上昇用合流通路23に圧送された圧油が上昇用分岐通路24から流されて、バケットシリンダ4のヘッド側室4aへの圧油の供給が止められる。すなわち、バケット平行移動機能が解除される。
【0046】
また、ブーム用方向切換弁11が下降位置11cに切り換えられると、油圧ポンプ2からの圧油をブームシリンダ3のロッド側室3bに供給し、ヘッド側室3aを下降用合流通路25に連通させる。これにより、ブームシリンダ3のロッド側室3bに圧油を供給しブームを下降させたときに、バケットシリンダ4のロッド側室4bにブームシリンダ3のヘッド側室3aからの戻り圧油を供給し、バケットが平行に保持されることになる。このとき、ブーム用給排通路30からの圧油の一部は、下降側戻通路38を経由してアンロード通路21へ戻る。
【0047】
なお、下降位置11cは、ブーム用方向切換弁11の上流側のアンロード通路21とブーム用給排通路29とが連通し、かつ、ブーム用給排通路30とブーム用方向切換弁11の下流側のアンロード通路21およびブーム弁用タンク戻通路27とが連通する切換位置である。(後述するバケット用方向切換弁12のダンプ位置12cについても同様)。
【0048】
このブーム下降時のバケット平行移動機能は、下降用分岐通路26が遮断された状態、すなわち、下降用解除切換弁20がレベリング動作位置20aである場合に作動される。一方、下降用解除切換弁20がレベリング解除位置20bに切り換えられると、下降用分岐通路26がアンロード通路21と連通状態となり、ブームシリンダ3のヘッド側室3aからブーム用方向切換弁11を介して下降用合流通路25に圧送された圧油が下降用分岐通路26から流されて、バケットシリンダ4のロッド側室4bへの圧油の供給が止められる。すなわち、バケット平行移動機能が解除される。
【0049】
次に、バケット用方向切換弁12は、すくい位置12a、中立位置12b、およびダンプ位置12cの3つの切換位置に切り換え可能になっている。すくい位置12aでは、バケットシリンダ4のロッド側室4bを油圧ポンプ2に、ヘッド側室4aをアンロード通路21に接続し、バケットをすくい方向に作動させる。中立位置12bでは、アンロード通路21を連通させる。ダンプ位置12cでは、ヘッド側室4aを油圧ポンプ2に、ロッド側室4bをアンロード通路21に接続し、バケットをダンプさせる。
【0050】
次に、サービス弁13は、第1切換位置13a、中立位置13b、および第2切換位置13cの3つの切換位置に切り換え可能になっている。第1切換位置13aでは、オプションシリンダ6のロッド側室6bを油圧ポンプ2に、ヘッド側室6aをタンク通路22に接続し、オプションのアタッチメントを所定方向に作動させる。中立位置13bでは、アンロード通路21を連通させる。第2切換位置13cでは、ヘッド側室6aを油圧ポンプ2に、ロッド側室6bをタンク通路22に接続し、オプションのアタッチメントを所定方向に作動させる。
【0051】
ここで、操縦者が、サービス弁13を操作してオプションシリンダ6を介してオプションのアタッチメントを作動させた際に、当該アタッチメントが何かに当たるなどして停止してしまった場合(オプションシリンダ6が停止してしまった場合)を仮定する。このとき、ブーム用方向切換弁11を操作すると、上昇側戻通路37または下降側戻通路38を経由してアンロード通路21へ戻ろうとする圧油は、ブーム用方向切換弁11に接続されたブーム弁用タンク戻通路27を介してタンク5に戻る。これにより、ブーム用方向切換弁11に圧油が流れ、その結果、ブームシリンダ3は作動する。
【0052】
バケットシリンダ4についても同様であり、バケット用方向切換弁12を操作すると、アンロード通路21へ戻ろうとする圧油は、バケット用方向切換弁12に接続されたバケット弁用タンク戻通路28を介してタンク5に戻る。これにより、バケット用方向切換弁12に圧油が流れ、その結果、バケットシリンダ4は作動する。
【0053】
なお、ブーム弁用タンク戻通路27に接続されるブーム用方向切換弁11内の通路に、絞り46、絞り47を設けるとともに、バケット弁用タンク戻通路28に接続されるバケット用方向切換弁12内の通路に、絞り39、絞り40を設けることで、オプションシリンダ6が停止してしまった場合であっても、バケット平行移動機能を確保しつつ、ブームシリンダ3およびバケットシリンダ4を作動させることができる。
【0054】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る多連方向切換弁102を示す油圧回路図である。第1実施形態に係る多連方向切換弁1と、本実施形態に係る多連方向切換弁102との相違点は、ブーム用方向切換弁11の上昇位置11aの構成と、上昇用シーケンス弁16の構成とである。
【0055】
本実施形態では、ブーム用方向切換弁11を操作して上昇位置11aに切り換えたとしても、ブーム用給排通路29からの戻り圧油はタンク通路22へ流れない。
【0056】
ここで、本実施形態の上昇用シーケンス弁16は、バケット用給排通路34と上昇側戻通路37(ブーム用方向切換弁11の下流側のアンロード通路21)およびタンク通路22とが連通する切換位置16b・16cを備えている。また、上昇用シーケンス弁16にはシーケンス弁用タンク戻通路45が接続されている。
【0057】
これにより、サービス弁13が操作されている状態でオプションシリンダ6が過負荷などで停止してしまったときにブーム用方向切換弁11が操作されると、ブーム用方向切換弁11の下流側のアンロード通路21へ戻ろうとする圧油はシーケンス弁用タンク戻通路45を経由してタンク5に戻る。これにより、ブーム用方向切換弁11に圧油が流れ、その結果、ブームシリンダ3は作動する。
【0058】
なお、シーケンス弁用タンク戻通路45に接続される上昇用シーケンス弁16内の通路に、絞り43、絞り44を設けることで、オプションシリンダ6が停止してしまった場合であっても、バケット平行移動機能を確保しつつ、ブームシリンダ3およびバケットシリンダ4を作動させることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、ブーム用方向切換弁11、サービス弁13、およびバケット用方向切換弁12が、それぞれ、本発明に係る第1方向切換弁、第2方向切換弁、および第3方向切換弁に相当する。また、ブームシリンダ3、オプションシリンダ6、およびバケットシリンダ4が、それぞれ、本発明に係る第1アクチュエータ、第2アクチュエータ、および第3アクチュエータに相当する。さらに、一対のブーム用給排通路29・30、一対のオプション用給排通路35・36、および一対のバケット用給排通路33・34は、それぞれ、本発明に係る一対の第1給排通路、一対の第2給排通路、および一対の第3給排通路に相当する。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【0061】
例えば、第2実施形態において、上昇用分流部7のうち上昇用シーケンス弁16にシーケンス弁用タンク戻通路45を設けているが、上昇用分流部7のうち上昇用分流弁14にタンク戻通路を設けて、アンロード通路21へ戻ろうとする圧油を、上昇用分流弁14に設けられたタンク戻通路を経由させてタンク5に戻してもよい。
【0062】
また、第2実施形態において、ブーム用方向切換弁11の上昇位置11aの構成と下降位置11cの構成とを入れ替え、かつ、上昇用シーケンス弁16の構成と下降用シーケンス弁17の構成とを入れ替えてもよい。
【0063】
さらには、バケット平行移動機能を有する多連方向切換弁について例示したが、本発明は、バケット平行移動機能を有さない多連方向切換弁についても適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1:多連方向切換弁
2:油圧ポンプ
3:ブームシリンダ(第1アクチュエータ)
4:バケットシリンダ
5:タンク
6:オプションシリンダ(第2アクチュエータ)
11:ブーム用方向切換弁(第1方向切換弁)
12:バケット用方向切換弁
13:サービス弁(第2方向切換弁)
21:アンロード通路
22:タンク通路
27:ブーム弁用タンク戻通路
28:バケット弁用タンク戻通路
29・30:ブーム用給排通路(第1給排通路)
35・36:オプション用給排通路(第2給排通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプに接続されるアンロード通路と、
タンクに接続されるタンク通路と、
前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第1アクチュエータへの圧油の供給を制御する第1方向切換弁と、
前記第1方向切換弁と前記第1アクチュエータとの間をつなぐ一対の第1給排通路と、
前記第1方向切換弁よりも下流側で前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第2アクチュエータへの圧油の供給を制御する第2方向切換弁と、
前記第2方向切換弁と前記第2アクチュエータとの間をつなぐ一対の第2給排通路と、
を具備してなり、
前記第1アクチュエータを作動させると、前記第1給排通路から前記アンロード通路へ圧油が戻る多連方向切換弁において、
前記第1方向切換弁は、当該第1方向切換弁の上流側の前記アンロード通路と前記第1給排通路の一方とが連通し、かつ、前記第1給排通路の他方と当該第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路および前記タンク通路とが連通する切換位置を備え、
前記第1給排通路の他方と前記タンク通路とを連通させるタンク戻通路が前記第1方向切換弁に接続されていることを特徴とする、多連方向切換弁。
【請求項2】
油圧ポンプに接続されるアンロード通路と、
タンクに接続されるタンク通路と、
前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第1アクチュエータへの圧油の供給を制御する第1方向切換弁と、
前記第1方向切換弁と前記第1アクチュエータとの間をつなぐ一対の第1給排通路と、
前記第1方向切換弁よりも下流側で前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第2アクチュエータへの圧油の供給を制御する第2方向切換弁と、
前記第2方向切換弁と前記第2アクチュエータとの間をつなぐ一対の第2給排通路と、
前記第1方向切換弁よりも下流側で且つ前記第2方向切換弁よりも上流側で前記アンロード通路に接続され、前記油圧ポンプから第3アクチュエータへの圧油の供給を制御する第3方向切換弁と、
前記第3方向切換弁と前記第3アクチュエータとの間をつなぐ一対の第3給排通路と、
前記第1アクチュエータから前記第1給排通路へ戻ってくる圧油を、前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路と前記第3給排通路の一方とに分配制御するとともに、前記第3給排通路の他方と当該アンロード通路との間の連通遮断を制御する分流部と、
を具備してなり、
前記第1アクチュエータを作動させると、前記第1給排通路から前記アンロード通路へ圧油が戻り、前記第3アクチュエータを作動させると、前記第3給排通路から前記アンロード通路へ圧油が戻る多連方向切換弁において、
前記分流部は、前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路へ戻ろうとする圧油を前記タンク通路に戻すタンク戻通路を備えていることを特徴とする、多連方向切換弁。
【請求項3】
請求項2に記載の多連方向切換弁において、
前記分流部は、
前記第1アクチュエータから前記第1給排通路へ戻ってくる圧油を、前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路と前記第3給排通路の一方とに分配制御する分流弁と、
前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路と前記第3給排通路の他方との間の連通遮断を制御するシーケンス弁と、
を有し、
前記シーケンス弁は、前記第1方向切換弁の下流側の前記アンロード通路および前記タンク通路と前記第3給排通路の他方とが連通する切換位置を備えていることを特徴とする、多連方向切換弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−208693(P2011−208693A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75359(P2010−75359)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】