説明

多連開閉弁装置

【課題】常閉型のパイロット操作式開閉弁を直列に複数接続して構成した既存のアンド回路に新たな開閉弁を追加する場合に、その作業を容易且つ迅速に行うことのできる多連開閉弁装置を提供する
【解決手段】常閉型のパイロット操作式開閉弁2を複数有し、それら各開閉弁2同士を互いに直列に接続してなる多連開閉弁装置1において、各開閉弁2のうちの一つにその弁体13を開弁位置に保持するプラグ部材16を装着する。これにより、各開閉弁2のうちプラグ部材16の装着された開閉弁2を除くものによってアンド回路が構成される。そして、そのアンド回路に新たな開閉弁を加える場合には、開弁状態に保持された開閉弁2からプラグ部材16を取り外すことで、その開閉弁2をアンド回路の一部として利用可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常閉型のパイロット操作式開閉弁を複数有し、それら各開閉弁同士を互いに直列に接続してなる多連開閉弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体圧アクチュエータを駆動する場合には、例えば特許文献1に記載のように、複数のパイロット操作式開閉弁を組み合わせて構成した流体圧回路により、上記流体圧アクチュエータを駆動制御することが行われている。
【0003】
このような流体圧回路においては、例えばインターロックを目的として、常閉型のパイロット操作式開閉弁を直列に複数接続することにより、全ての開閉弁のパイロットポートに同時にパイロット圧が加えられた場合に作動流体を出力するいわゆるアンド回路を構成することがある。
【特許文献1】実開平3−103359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように上記開閉弁を直列に複数接続してアンド回路を構成すると、既存のアンド回路に新たな開閉弁を追加する必要が生じた場合に、上記アンド回路中に新たな開閉弁を介装する作業が非常に煩雑となるほか、新たな開閉弁の手配に時間が掛かるため、好ましくない。
【0005】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであって、特に、既存のアンド回路に新たな開閉弁を追加する場合に、その作業を容易且つ迅速に行うことのできる多連開閉弁装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、常閉型のパイロット操作式開閉弁を複数有し、それら各開閉弁同士を互いに直列に接続してなる多連開閉弁装置であって、上記各開閉弁に開弁保持部材を着脱可能になっているとともに、その開弁保持部材を装着した開閉弁の弁体が当該開弁保持部材によって開弁位置に保持されるようになっていることを特徴としている。
【0007】
つまり本発明では、当初は使用しない開閉弁を予め設け、その開閉弁に強制開弁治具を装着することにより、上記各開閉弁のうち強制開弁治具が装着された開閉弁を除くものをもってアンド回路が構成される。そして、そのアンド回路に新たな開閉弁を加える場合には、開弁状態に保持された開閉弁から強制開弁治具を取り外すことで、その開閉弁をアンド回路の一部として利用可能になる。
【発明の効果】
【0008】
したがって、本発明によれば、開弁状態に保持された開閉弁から強制開弁治具を取り外すことで、その開閉弁をアンド回路に追加することができるから、その作業を容易且つ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明のより具体的な実施の形態として多連開閉弁装置1を示す断面図であって、図2は図1におけるA−A断面図である。また、図3は、図1に示す多連開閉弁装置1が作動流体を出力している状態を示す図であって、図4は図3におけるB−B断面図である。
【0010】
多連開閉弁装置1は、図1,2に示すように、常閉型のパイロット操作式開閉弁2(以下、開閉弁と略称する。)を複数(図示の例では3つ)有している。各開閉弁2は、共通のバルブボディ3を母体としてそれぞれ構成されているとともに、そのバルブボディ3に形成された流体通路6をもって互いに直列に接続されている。つまり、多連開閉弁装置1は、流体通路6の一端に形成された入力ポート4から作動流体たる圧縮空気が供給されていて、図3,4に示すように、全ての開閉弁2が開弁状態にあるときに、流体通路6の他端に形成された出力ポート5から圧縮空気を出力するようになっている。なお、入力ポート4には入力配管であるチューブ7が管継手8を介して接続されている一方、出力ポート5には出力配管であるチューブ9が管継手10を介して接続されている。
【0011】
各開閉弁2は、流体通路6に略直交するように穿設された断面略円形状の弁孔11と、弁孔11内に収容配置され、弁孔11の開口端側の閉弁位置と弁孔11の底部側の開弁位置との間で軸方向に進退移動な略円柱形状の弁体13と、弁孔11の開口端に嵌着され、弁体13の閉弁方向側に開口する配管挿入孔24を有する管継手12と、弁孔11の底部に着座して弁体13を閉弁方向に付勢する付勢手段たるスプリング14と、をそれぞれ備えている。各開閉弁2の弁体13には、径方向に沿った貫通孔13aが軸方向の所定位置にそれぞれ穿設されていて、その弁体13が閉弁位置と開弁位置との間で軸方向に進退移動することにより、貫通孔13aと流体通路6とが連通または遮断され、流体通路6が開閉されるようになっている。
【0012】
各開閉弁2のうち図1中右側および左右方向中間に位置する両開閉弁2の管継手12には、その開閉弁2にパイロット圧を導入するためのパイロット配管であるチューブ15がそれぞれ接続されている。詳細には、管継手12の配管挿入孔24にチューブ15の端部が挿入され、その管継手12をもってチューブ15が抜け止めされている。つまり、弁孔11の開口部をパイロットポートとしてその弁孔11内にパイロット圧を導入することにより、弁体13がスプリング14の付勢力に抗して開弁位置に移動し、流体通路6が開かれることとなる。
【0013】
図5はチューブ15が接続された開閉弁2を示す拡大図である。
【0014】
管継手12は、図5に示すように、継手本体17と、その継手本体17の内周側に設けられたシール部材18と、配管挿入孔24に挿入したチューブ15の端部を保持するチューブ保持機構19と、から構成されている。
【0015】
継手本体17は、一端に内向きのフランジ部17aを有する略円筒形状のものであって、フランジ部17a側の端部を弁孔11の底部側に向けた状態でその弁孔11の開口部に嵌着されている。そして、その継手本体17のうちフランジ部17a側にシール部材18が収容されている一方、継手本体17のうち反フランジ部17a側にチューブ接続機構19が収容されている。
【0016】
チューブ保持機構19は、配管挿入孔24に挿入したチューブ15の外周面に係止する爪部20aを有する配管抜け止め手段たるチャック20と、そのチャック20に外挿されて当該チャック20を保持する略円筒形状のコレット21と、チャック20内に先端が挿入され、そのチャック20の爪部20aを押し広げて当該爪部20aのチューブ15に対する係止を解除する略円筒形状のリリース操作部材22と、を備えていて、継手本体17の内周側に嵌着するガイド部材23によって、チャック20とコレット21およびリリース操作部材22の継手本体17からの抜け止めがなされている。
【0017】
チャック20の爪部20aは、略円筒形状のチャック20の一端を先端が先細りとなる方向に屈曲させ、その先端を配管挿入孔24に臨ませたものであって、その爪部20aが配管挿入孔24に挿入したチューブ15の外周面に食い込むことにより、当該チューブ15が抜け止めされるようになっている。
【0018】
コレット21は、継手本体17の開口端側の端部に、チャック20の反爪部20a側端部を係止する係止部21aが内向きに突出形成されていて、この係止部21aによってチャック20をチューブ15の引き抜き方向で係止している。
【0019】
リリース操作部材22は、チャック20の内周側に挿入された先細り形状の押入部22bが一端に形成されている一方、継手本体17の外部に突出するフランジ状の押圧部22aが他端に形成されていて、押入部22bの根本側端面である環状の段部とコレット21の係止部21aとの係合によって継手本体17からの抜け止めがなされている。また、このリリース操作部材22は、ガイド部材23をもって軸方向で進退移動可能に案内されており、当該リリース操作部材22の押圧部22aを押圧して押入部22bをチャック20の爪部20a内周側に押し込むことにより、その爪部20aが拡開して当該爪部20aによるチューブ15の係止が解除されるようになっている。
【0020】
一方、図1に示すように、各開閉弁2のうち図1中左側の開閉弁2の管継手12には開弁保持部材たるプラグ部材16が装着されていて、そのプラグ部材16が、管継手12の開口を閉蓋しつつ開閉弁2を開弁状態に保持している。
【0021】
図6はプラグ部材16が装着された開閉弁2を示す拡大図である。
【0022】
プラグ部材16は、図6に示すように、略円柱状の軸部16aの一端にその軸部16aよりも大径な頭部16bを形成したものであって、軸部16aを配管挿入孔24に挿入し、その軸部16a先端によって弁体13を開弁位置まで押圧した状態で、チャック20をもって保持されている。つまり、配管挿入孔24が開弁保持部材であるプラグ部材16を挿入するための保持部材挿入孔を兼ねているとともに、チャック20がプラグ部材16をスプリング14の付勢力に抗して抜け止めする保持部材抜け止め手段を兼ねている。換言すれば、プラグ部材16は各開閉弁2の管継手12に対して着脱可能であって、そのプラグ部材16が当該プラグ部材16を装着した開閉弁2の弁体13を開弁位置に保持するようになっている。なお、軸部16aの直径はチューブ15の外径と略同一に設定されている。
【0023】
以上のように構成した多連開閉弁装置1では、当該多連開閉弁装置1に当初は使用しない開閉弁2を予め組み込んでおき、その開閉弁2をプラグ部材16によって弁開状態に保持しておくことにより、各開閉弁2のうちチューブ15が接続された両開閉弁2をもってアンド回路が構成される。つまり、チューブ15が接続された両開閉弁2に同時にパイロット圧が加わったときに、チューブ7からチューブ9へ作動流体が流れるようになる。そして、そのアンド回路を構成する開閉弁の数を増加する場合には、開弁状態に保持されている開閉弁2からプラグ部材16を取り外し、その開閉弁2の管継手12に新たなチューブ15を接続することで、当該開閉弁2をアンド回路の一部として利用可能となる。一方、開閉弁2の管継手12からチューブ15を取り外し、その開閉弁2の管継手12にプラグ部材16を装着することで、アンド回路を構成する開閉弁の数を減ずることができる。
【0024】
したがって、本実施の形態によれば、開閉弁2からプラグ部材16を取り外してチューブ15を接続することにより、アンド回路を構成する開閉弁2の数を増加できる一方、開閉弁2からチューブ15を取り外してプラグ部材16を装着することにより、アンド回路を構成する開閉弁2の数を減ずることができるから、既存のアンド回路を構成する開閉弁2の数を増減するための作業を容易且つ迅速に行えるようになる。
【0025】
また、配管挿入孔24が保持部材挿入孔を兼ねているとともに、チャック20が保持部材抜け止め手段を兼ねているため、各開閉弁2が簡易な構成となり、コスト的に有利となるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態として多連開閉弁装置を示す断面図。
【図2】図1におけるA−A断面図。
【図3】図1に示す多連開閉弁装置が作動流体を出力している状態を示す図。
【図4】図2におけるB−B断面図。
【図5】図1におけるチューブが接続された開閉弁を示す拡大図。
【図6】図1におけるプラグ部材が装着された開閉弁を示す拡大図。
【符号の説明】
【0027】
1…多連開閉弁装置
2…パイロット操作式開閉弁
12…管継手
14…スプリング(付勢手段)
15…チューブ(配管)
16…プラグ部材(開弁保持部材)
20…チャック(保持部材抜け止め手段)
24…配管挿入孔(保持部材挿入孔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常閉型のパイロット操作式開閉弁を複数有し、それら各開閉弁同士を互いに直列に接続してなる多連開閉弁装置であって、
上記各開閉弁に対して着脱可能な開弁保持部材を備えていて、その開弁保持部材が当該開弁保持部材を装着した開閉弁の弁体を開弁位置に保持するようになっていることを特徴とする多連開閉弁装置。
【請求項2】
上記各開閉弁は、当該開閉弁の弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段と、上記弁体の閉弁方向側に開口形成され、開弁保持部材を挿入可能な保持部材挿入孔と、その保持部材挿入孔に挿入した開弁保持部材が上記弁体を開弁位置まで押圧した状態で、当該開弁保持部材を上記付勢手段の付勢力に抗して抜け止めする保持部材抜け止め手段と、をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1に記載の多連開閉弁装置。
【請求項3】
上記各開閉弁が当該開閉弁にパイロット圧を導入するための配管を接続可能な管継手をそれぞれ備えているとともに、その各開閉弁の管継手は、上記配管を挿入可能な配管挿入孔と、その配管挿入孔に挿入した配管を抜け止めする配管抜け止め手段と、をそれぞれ有していて、
上記配管挿入孔が保持部材挿入孔を兼ねているとともに、上記配管抜け止め手段が保持部材抜け止め手段を兼ねていることを特徴とする請求項2に記載の多連開閉弁装置。
【請求項4】
常閉型のパイロット操作式開閉弁を複数有し、それら各開閉弁同士を互いに直列に接続してなる多連開閉弁装置であって、
上記各開閉弁が、当該開閉弁の弁体を閉弁方向に付勢する付勢手段と、上記弁体の閉弁方向側に開口形成され、当該弁体を開弁位置に保持するための開弁保持部材を挿入可能な保持部材挿入孔と、その保持部材挿入孔に挿入した開弁保持部材が上記弁体を開弁位置まで押圧した状態で、当該開弁保持部材を上記付勢手段の付勢力に抗して抜け止めする保持部材抜け止め手段と、をそれぞれ備えていることを特徴とする多連開閉弁装置。
【請求項5】
上記各開閉弁が当該開閉弁にパイロット圧を導入するための配管を接続可能な管継手をそれぞれ備えているとともに、その各開閉弁の管継手は、上記配管を挿入可能な配管挿入孔と、その配管挿入孔に挿入した配管を抜け止めする配管抜け止め手段と、をそれぞれ有していて、
上記配管挿入孔が保持部材挿入孔を兼ねているとともに、上記配管抜け止め手段が保持部材抜け止め手段を兼ねていることを特徴とする請求項4に記載の多連開閉弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−293751(P2009−293751A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150012(P2008−150012)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】